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○信越化学工業株式会社直江津工場の爆発火災事故による一部の医薬品添加物の出荷停止に対応するための緊急措置について

(平成19年4月23日)

(薬食発第0423004号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医薬食品局長通知)

信越化学工業株式会社(以下「信越化学」という。)の直江津工場のメチルセルロース製造部門において、平成19年3月20日、爆発火災事故が発生し、この事故によって、同部門で製造していたメチルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの5つの医薬品添加物について、4月23日現在、同社での製造が停止されています。信越化学によると、安全対策工事案の関係省庁の了解及び近隣住民の御理解を得てから工場の整備を開始し、できる限り5月末の製造再開、6月中旬の出荷を目指しているものの、未だその見通しを確約できる状況ではないとのことです。信越化学によると、これらの添加物は、信越化学が国内シェアのほとんどを占めており、また、医薬品製造販売業者によると、これらの添加物について、海外からの入手も困難とのことです。

したがって、信越化学の製造・出荷が再開されない限り、これらの5つの添加物を使うものとして承認された医薬品製剤(以下「通常製剤」という。)については、その製造・出荷が困難となる状況です。

これらの添加物にかえて同様の機能を有する添加物を使用した医薬品製剤(以下「代替製剤」という。)を製造、出荷するために承認事項一部変更承認申請を行う場合等には相当の時間が必要となりますが、製造販売業者における医薬品の在庫はそれよりも短期間のものもあることから、医療上必要な医薬品の供給ができなくなるおそれがあります。医療現場に必要な医薬品を安定して供給することは、医療上必要不可欠であることから、本件事故に関する緊急的な措置を下記のとおりとりまとめましたので、貴管下関係業者に対し周知徹底方御配慮願います。

1.緊急措置の必要性とその基本的な考え方

(1) 事故によって当該添加物が入手できない、在庫が切れてしまう医薬品がある、また、薬事法(昭和35年法律第145号)第14条第9項に基づく一部変更承認申請を行った上で代替製剤を製造・出荷するにはいとまがないという状況に鑑み、医療の混乱を招かないよう、医療現場に必要な医薬品を継続して提供することは必要不可欠であることから、本件事故に対し、緊急的な措置を講じることはやむを得ないものと考えられる。

(2) 具体的には、医療に必要な医薬品について、時間的、技術的に可能な範囲で代替製剤の製造・出荷を検討することとし、手続としては、代替製剤への切替えを薬事法第14条第10項の軽微変更届の対象とする。その際、軽微変更の範囲を定めた薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第47条第5号における「製品の品質、有効性及び安全性に影響を与えるおそれのあるもの」については、今回の措置が本件事故に対する緊急措置であることに鑑み、それぞれの医薬品ごとの医療上の必要性並びにその品質、有効性及び安全性がどの程度実質的に確保されているかを勘案し、各製造販売業者が適切に判断することとする。

なお、一般的には、有効成分との相互作用への配慮、溶出性の検討、安定性の経時的な検査等によって、代替製剤の品質、有効性及び安全性を一定程度確保することは可能であると考えられる。

(3) 代替製剤の製造・出荷は、その趣旨に鑑み、必要最低限の期間とする。

(4) 代替製剤の製造を出荷している期間においては、副作用情報の収集等の安全対策を入念に講じることとする。

(5) 今回の措置については、厚生労働省、機構及び各製造販売業者のホームページ等を通じて、医療関係者はもちろん広く国民に必要な情報を逐次提供することとする。

2.具体的な方策

(1) 代替製剤の検討

① 代替製剤に用いる添加物については、既承認の他の医薬品に用いられている添加物の中から選定することとし、その量も既承認の範囲とすること。また、選定に当たっては、有効成分との化学的な相互作用等に配慮すること。

② 代替製剤については、溶出性を指標とした通常製剤との比較検討を行うとともに、それぞれのロットごとに、通常製剤の製品規格への適合を試験して、その出荷の適否を判断すること。なお、通常製剤の製品規格に適合しない項目があった場合には、添加物の変更に伴うものか否か、必要な検討を行うこと。

③ 代替製剤については、出荷後、保存サンプルをもとに、その安定性を経時的にチェックすること。

(2) 代替製剤の製造及び出荷

① 代替製剤の製造・出荷は、必要最低限の期間とし、信越化学からの添加物の出荷が再開された場合には、速やかに通常製剤に切り替えること。

② 代替製剤の出荷に当たっては、緊急に代替の添加物を使用して製造した旨(使用した添加物の名称を含む。)を記載した文書を添付文書とともに製品に添付するなど、情報の確実な伝達を図ること。

③ 代替製剤を出荷している期間においては、副作用情報の収集等の安全対策を入念に講じること。

④ 通常製剤の出荷を再開した場合は、速やかに、代替製剤の市場在庫(いわゆる卸在庫)の回収を行うこと。

(3) 情報の提供及び軽微変更届の提出

① 代替製剤の出荷開始、通常製剤の出荷再開及び代替製剤の回収終了については、各製造販売業者のホームページ等を通じて、広く情報を提供すること。また、代替製剤の検査結果及びその出荷を適当と判断した理由についても、各製造販売業者のホームページ等に公表すること。

② 軽微変更届は、薬事法施行規則第48条第2項により、「軽微な変更をした後30日以内」に提出することとされているが、本件については、出荷前に提出することとし、また、通常製剤の出荷を再開する場合も出荷前に軽微変更届を提出すること。さらに、代替製剤の回収着手及び終了についても報告すること。

(4) 厚生労働省及び機構の役割

① 本緊急措置が適切に実施され、医療上必要な医薬品が適切に提供されるよう、必要な指導監督を行うこと。特に、代替製剤が出荷され、回収が終了するまでの期間においては、代替製剤に関する副作用報告に特段の注意を払うなど、その安全確保に努めること。

② 上記(3)②の届出及び報告について、機構のホームページ等でまとめて公表するなど、医療関係者はもちろん広く国民への情報提供を図ること。