添付一覧
○採血に係る健康被害の補償のための措置について
(平成18年9月20日)
(薬食発第0920001号)
(日本赤十字社血液事業本部長あて厚生労働省医薬食品局長通知)
今般、「採血の業務の管理及び構造設備に関する基準の一部を改正する省令」(平成十八年厚生労働省令第百六十二号)が公布され、本年十月一日から施行されることとなった。
厚生労働省では、平成十六年九月より安全で安心な献血の在り方に関する懇談会を設置し、献血者の健康被害の救済の在り方等について検討を重ねてきたが、今回の省令の制定は、その検討結果を受けて、採血事業者が、採血に係る献血者等に生じた健康被害の補償のために、必要な措置を講じること等を法令上明確に位置づけるために行うものである。献血者等の健康被害の補償は、献血者等が安心して献血できる環境を整備する意味で重要であり、採血事業者においては、この趣旨を踏まえて速やかに体制の整備を行うことが期待される。
ついては、献血者等の健康被害の補償のために講ずべき措置について、今般、厚生労働省において、別添のとおり「献血者等の健康被害の補償に関するガイドライン」を策定したので、貴職におかれては、貴管下各血液センターに対し本ガイドラインの周知を図るとともに、これに基づく補償措置の実施に遺漏なきよう特段の御尽力を賜りたい。
また、本ガイドラインに基づく措置の実施状況については、必要に応じて報告を求めることがあるので、御了知ありたい。
なお、別添写しのとおり、各都道府県知事あて通知した旨、申し添える。
献血者等の健康被害の補償に関するガイドライン
第一 趣旨及び目的
採血による献血者等の健康被害は、軽微なものも含めると総献血件数の約1%(5~6万件/年)に発生しており、中には神経損傷や意識喪失に起因する広範な外傷など長期の医療を要する例や重篤な障害を負う例もある。
こうした献血者等の健康被害に伴って生じた医療費等の費用については、従来、採血事業者が民間保険等を利用して支払ってきたが、その運用については、より透明性、公平性を高めるべきであるとの指摘もなされていたところである。
万が一採血によって健康被害を生じた場合、公平性、透明性及び迅速性に配慮した補償の体制が整備されていることは、献血者等が安心して献血に参加できる環境を整える観点から非常に重要である。
このため、採血事業者が献血者等の健康被害の補償のために講ずべき措置についての標準的事項を示すものとして、今般、本ガイドラインを定めるものである。
第二 一般的留意事項
採血事業者は、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和31年法律第160号)第6条において、献血者等の保護に努めなければならないこととされており、献血者等の健康被害に関しては、被害の発生の予防、再発防止に努めるとともに、実際に発生した被害の対応に当たって中心的な役割を果たすことが期待されている。
献血者等の健康被害の補償を行うに当たっては、採血事業者は、献血者等が善意に基づき無償で一定のリスクを有する行為を行っていることに留意し、誠意をもって対応することが重要である。また、迅速性はもとより、公平性及び透明性を確保することが献血者等の信頼を得る観点から重要であり、補償のための体制整備はこうした点を踏まえて行われることが必要である。
第三 補償措置について
採血事業者は、採血によって健康が害された献血者等の補償のため、下記の内容を基本とした補償の体制の整備を行うこととする。その際、健康被害の補償に要する資金を安定的に調達することができるよう、保険の加入等の措置を講じることが望ましい。
1 給付の項目及び対象者について
採血による健康被害の補償は、次表の上欄に掲げる給付の項目について、それぞれ次表の下欄に掲げる者になされることを基本とする。
項目 |
対象者 |
医療費・医療手当 |
採血によって生じた健康被害について医療を受ける献血者等 |
障害給付 |
採血によって生じた健康被害により一定の障害の状態にある献血者等 |
死亡給付 |
採血によって生じた健康被害により死亡した献血者等の遺族 |
葬祭料 |
採血によって生じた健康被害により死亡した献血者等の葬祭を行う者 |
2 給付の額等について
健康被害に対する給付の額等は次のとおりとすることを基本とする。
(1) 医療費
採血によって健康被害を生じた献血者等が病院又は診療所を受診した場合、その医療に要した費用を補填するもの。ただし、当該献血者等が、各種公的医療保険等による給付を受けることができる場合は、当該医療に要した費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額を限度とすることを原則とする。
(2) 医療手当
採血によって健康被害を生じた献血者等が病院又は診療所を受診した場合に要する医療費以外の費用を補填するもの。日を単位として支給するものとし、その額は、一日につき4,480円、月ごとの上限を35,800円とする。
(3) 障害給付
採血によって生じた健康被害が治癒した場合において、別表に定める程度の身体障害が存する時に、その障害の等級に応じ、(6)に規定する給付基礎額に同表に定める倍数を乗じて得た金額を給付するもの。
(4) 死亡給付
採血によって生じた健康被害により死亡した献血者等の遺族に対して(6)に規定する給付基礎額の千倍に相当する金額を給付するもの。
遺族の範囲は次に掲げるとおりとし、給付を受ける順位は当該各号に掲げる順位による。
一 配偶者
二 子、父母、孫及び祖父母であって、当該死亡者の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの
三 前二号に掲げる者のほか、当該死亡者の死亡当時主としてその収入により生計を維持していたもの
四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で前二号に該当しないもの
(5) 葬祭料
葬祭を行うことに伴う出費に着目して、採血によって生じた健康被害により死亡した献血者等の葬祭を行う者に対して給付するもの。その額は、199,000円とする。「葬祭を行う者」は、実際に葬祭を行う者を指し、必ずしも遺族に限定されない。
(6) 障害給付及び死亡給付の給付基礎額
(3)及び(4)に掲げる給付基礎額は、8,800円とする。
(7) 医療費及び医療手当の給付に係る留意事項
医療費、医療手当の給付を受ける者が、支給開始後三年を経過しても負傷又は疾病が治癒しないときは、その時点の状況を勘案し、引き続き支給を行うか、その後の支給を一括して行うか選択することができる。
3 給付決定手続について
採血によって生じた健康被害に対する給付は、これら被害の大半が軽度のものであることを踏まえ、採血事業者が、一定の基準の下に、迅速に対応することを基本とする。このため、原則として、別添1及び2に示す基準及び診断書を活用して採血事業者が迅速に給付を行うことが望ましいが、因果関係、給付の額等の決定について判断が困難な事例については、第三者の意見を聴くことにより、公平性、透明性の確保を図ることが適当である。採血事業者においては、例えば検討会を置くなどにより、自ら公平性、透明性の向上に取り組むことが望ましい。
また、採血事業者は、上記判断困難事例について、第三者の意見を聴くなどした上で、給付の決定に先立ち、厚生労働省医薬食品局に対し協議することができる。採血事業者から申出があった場合は、同局は医学の専門家等の意見を踏まえて、対象事案について意見を述べることとする。
採血事業者は、支給不支給の決定の際は、献血者等に対し、決定の根拠を適切に説明するとともに、決定の結果に不服がある場合は厚生労働省医薬食品局に対して申し出ることができる旨を併せて説明する。
4 不服への対応について
採血事業者は、献血者等から支給不支給の決定について不服の申出があった場合は、誠実に献血者等の訴えに対応するものとする。
5 損害賠償との調整
採血事業者は、給付を受けるべき者が同一の事由について損害賠償を受けた時は、その価額の限度において、給付を行わないことができる。
採血事業者は、給付を受けた者が同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、その受けた給付の額に相当する金額を返還させることができる。
第四 業務の実施体制の整備
1 手順書の作成
採血事業者は、献血者等に健康被害が発生した場合の初期対応及び本ガイドラインに基づく補償措置等について、その内容及び手続に関する手順書を作成し、採血所に備え付けるとともに、献血者等から求めがあった場合は、その内容について、適切に情報提供を行う。また、採血事業者において手順書を作成する際は厚生労働省医薬食品局に対し、協議することとする。
2 記録の保管
採血事業者は、初期対応及び補償措置等に関する記録をその完結の日から五年間、保存することとする。記録の保存を電子的に行う場合には、記録を改ざんできない状態で、かつ、常に書面での記録の確認ができる状態であることが確保されている必要がある。また、補償措置の公平性及び透明性の向上に資するため、必要に応じて過去の類似例を参照することができるよう、検索の容易性の確保を図る。
3 相談・苦情受付体制の整備
採血事業者は、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和三十一年法律第百六十号)に定める採血事業者の責務を踏まえ、献血者等に誠実に対応することとする。このため、補償業務を統括する部門を設置するなどして、相談・苦情受付体制の整備に努めることとする。
4 秘密保持
採血事業者は、補償の実施に当たって知り得た個人の秘密の管理を徹底すること。
別表
等級 |
倍数 |
身体障害 |
一級 |
一、三四〇 |
一 両眼が失明したもの 二 咀嚼及び言語の機能が失われたもの 三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 五 両上肢をそれぞれひじ関節以上で失つたもの 六 両上肢が用をなさなくなつたもの 七 両下肢をそれぞれひざ関節以上で失つたもの 八 両下肢が用をなさなくなつたもの |
二級 |
一、一九〇 |
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下に減じたもの 二 両眼の視力がそれぞれ〇・〇二以下に減じたもの 三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 五 両上肢をそれぞれ手関節以上で失つたもの 六 両下肢をそれぞれ足関節以上で失つたもの |
三級 |
一、〇五〇 |
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下に減じたもの 二 咀嚼又は言語の機能が失われたもの 三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 五 両手のすべての指を失つたもの |
四級 |
九二〇 |
一 両眼の視力がそれぞれ〇・〇六以下に減じたもの 二 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 三 両耳の聴力が全く失われたもの 四 一上肢をひじ関節以上で失つたもの 五 一下肢をひざ関節以上で失つたもの 六 両手のすべての指が用をなさなくなつたもの 七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
五級 |
七九〇 |
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下に減じたもの 二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 四 一上肢を手関節以上で失つたもの 五 一下肢を足関節以上で失つたもの 六 一上肢が用をなさなくなつたもの 七 一下肢が用をなさなくなつたもの 八 両足のすべての指を失つたもの |
六級 |
六七〇 |
一 両眼の視力がそれぞれ〇・一以下に減じたもの 二 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度に減じたもの 四 一方の耳の聴力が全く失われ、他方の耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの 五 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 六 一上肢の三大関節のうちのいずれか二関節が用をなさなくなつたもの 七 一下肢の三大関節のうちのいずれか二関節が用をなさなくなつたもの 八 片手のすべての指を失つたもの又はおや指をあわせ片手の四本の指を失つたもの |
七級 |
五六〇 |
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下に減じたもの 二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの 三 一方の耳の聴力が全く失われ、他方の耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの 四 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 五 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 六 おや指をあわせ片手の三本の指を失つたもの又はおや指以外の片手の四本の指を失つたもの 七 片手のすべての指が用をなさなくなつたもの又はおや指をあわせ片手の四本の指が用をなさなくなつたもの 八 片足をリスフラン関節以上で失つたもの 九 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 一〇 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 一一 両足のすべての指が用をなさなくなつたもの 一二 女子の外貌が著しく醜くなつたもの 一三 両側の睾丸を失つたもの |
八級 |
四五〇 |
一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下に減じたもの 二 脊柱に運動障害を残すもの 三 おや指をあわせ片手の二本の指を失つたもの又はおや指以外の片手の三本の指を失つたもの 四 おや指をあわせ片手の三本の指が用をなさなくなつたもの又はおや指以外の片手の四本の指が用をなさなくなつたもの 五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 六 一上肢の三大関節のうちのいずれか一関節が用をなさなくなつたもの 七 一下肢の三大関節のうちのいずれか一関節が用をなさなくなつたもの 八 一上肢に偽関節を残すもの 九 一下肢に偽関節を残すもの 一〇 片足のすべての指を失つたもの |
九級 |
三五〇 |
一 両眼の視力がそれぞれ〇・六以下に減じたもの 二 一眼の視力が〇・〇六以下に減じたもの 三 両眼にそれぞれ半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 四 両眼のまぶたにそれぞれ著しい欠損を残すもの 五 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 六 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 七 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの 八 一方の耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度に減じ、他方の耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度に減じたもの 九 一方の耳の聴力が全く失われたもの 一〇 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一一 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一二 片手のおや指を失つたもの又はおや指以外の片手の二本の指を失つたもの 一三 おや指をあわせ片手の二本の指が用をなさなくなつたもの又はおや指以外の片手の三本の指が用をなさなくなつたもの 一四 第一足指をあわせ片足の二本以上の指を失つたもの 一五 片足のすべての指が用をなさなくなつたもの 一六 生殖器に著しい障害を残すもの |
一〇級 |
二七〇 |
一 一眼の視力が〇・一以下に減じたもの 二 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 三 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 四 十四本以上の歯に歯科補綴を加えたもの 五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度に減じたもの 六 一方の耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度に減じたもの 七 片手のおや指が用をなさなくなつたもの又はおや指以外の片手の二本の指が用をなさなくなつたもの 八 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 九 片足の第一足指又は他の四本の指を失つたもの 一〇 一上肢の三大関節のうちのいずれか一関節の機能に著しい障害を残すもの 一一 一下肢の三大関節のうちのいずれか一関節の機能に著しい障害を残すもの |
一一級 |
二〇〇 |
一 両眼の眼球にそれぞれ著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 四 十本以上の歯に歯科補綴を加えたもの 五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度に減じたもの 六 一方の耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度に減じたもの 七 脊柱に変形を残すもの 八 片手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの 九 第一足指をあわせ片足の二本以上の指が用をなさなくなつたもの 一〇 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
一二級 |
一四〇 |
一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 三 七本以上の歯に歯科補綴を加えたもの 四 一方の耳の耳殼の大部分を欠損したもの 五 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 六 一上肢の三大関節のうちのいずれか一関節の機能に障害を残すもの 七 一下肢の三大関節のうちのいずれか一関節の機能に障害を残すもの 八 長管状骨に変形を残すもの 九 片手のこ指を失つたもの 一〇 片手のひとさし指、なか指又はくすり指が用をなさなくなつたもの 一一 片足の第二足指を失つたもの、第二足指をあわせ片足の二本の指を失つたもの又は片足の第三足指以下の三本の指を失つたもの 一二 片足の第一足指又は他の四本の指が用をなさなくなつたもの 一三 局部に頑固な神経症状を残すもの 一四 男子の外貌が著しく醜くなつたもの 一五 女子の外貌が醜くなつたもの |
一三級 |
九〇 |
一 一眼の視力が〇・六以下に減じたもの 二 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 三 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 四 両眼のまぶたにそれぞれ一部の欠損又はまつげはげを残すもの 五 五本以上の歯に歯科補綴を加えたもの 六 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 七 片手のこ指が用をなさなくなつたもの 八 片手のおや指の指骨の一部を失つたもの 九 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 一〇 片足の第三足指以下の一本又は二本の指を失つたもの 一一 片足の第二足指が用をなさなくなつたもの、第二足指をあわせ片足の二本の指が用をなさなくなつたもの又は片足の第三足指以下の三本の指が用をなさなくなつたもの |
一四級 |
五〇 |
一 一眼のまぶたの一部に欠損又はまつげはげを残すもの 二 三本以上の歯に歯科補綴を加えたもの 三 一方の耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度に減じたもの 四 上肢の露出面にてのひら大以上の大きさの醜いあとを残すもの 五 下肢の露出面にてのひら大以上の大きさの醜いあとを残すもの 六 片手のおや指以外の指の指骨の一部を失つたもの 七 片手のおや指以外の指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの 八 片足の第三足指以下の一本又は二本の指が用をなさなくなつたもの 九 局部に神経症状を残すもの 一〇 男子の外貌が醜くなつたもの |
(別添1)
血管迷走神経反応(VVR)および失神(VVS)の診断基準
献血による血管迷走神経反応(VVR、vasovagal reaction)は、献血者の心理的不安や緊張と共に脱血による低容量が関与し、悪心、不安、顔面蒼白などの症候が、主に献血後早期に起こる神経循環反応である。重症例では意識を失い(血管迷走神経性失神、VVS、vasovagal syncope)、転倒や外傷の原因となる。献血後、比較的時間が経過した後にVVRやVVSが発生することがあり、便宜上、遅発性VVR、あるいは遅発性VVSと呼ぶ。診断は、発作時の観察に基づいて行う。遅発性VVRや遅発性VVSについては、献血後、原則として当日中に発作が出現したことを示す病歴により診断する。なお、近年はVVSを含む神経反射による失神を神経調節性失神(NMS、neurally mediated syncope)と一括して呼ぶことがある。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
備考 |
[血管迷走神経反応(VVR)] |
必ずしも記録されないことあり |
|
※献血の最中及び終了後に急激に発症(数時間後に発症することがある。) ※不安や疼痛が誘因となることが多い。 ※仰臥位にすると、全身状態は改善する。 |
<自覚症状> |
|
||
気分不快、めまい、冷汗、悪心等 |
|
◎ |
|
<他覚所見> |
|
|
|
顔面蒼白 |
|
◎ |
|
血圧低下 |
|
|
|
徐脈 |
|
|
|
[血管迷走神経性失神(VVS)] |
必ずしも記録されないことあり |
|
|
<自覚症状> |
|
||
前駆症状として、VVRの症状を認める場合が多い。 |
|
◎ |
|
<他覚所見> |
|
|
|
顔面蒼白 |
|
◎ |
|
血圧低下 |
|
|
|
徐脈 |
|
|
|
意識消失、転倒、痙攣、失禁など |
|
◎ |
|
<確定診断> |
|
|
|
Head-up tilt test・頚動脈洞マッサージ試験 |
|
|
|
<除外診断> |
|
|
|
心電図、ホルター心電図、心エコー図、脳波、脳CT等 |
|
|
|
神経損傷の診断基準
神経損傷は、注射針による神経の穿刺により引き起こされる。診断は、重症や特異な場合を除いて、確定診断に必要な神経伝導速度検査をすることなく、以下の「診断に必要な項目」に該当することを原則とする。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
<臨床症状> |
|
|
穿刺時の疼痛(電撃様) |
|
◎ |
<他覚所見> |
|
|
運動障害 (例) 指の運動障害や握力の低下 |
神経学的検査において、損傷したと思われる神経の支配領域に一致した所見があること |
◎ |
知覚障害 (例) しびれ感、感覚障害(触覚、痛覚等) |
損傷部の叩打で、神経支配領域に疼痛が放散 |
◎ |
<確定診断> |
|
|
神経伝導速度 |
低下していることもある |
|
Complex Regional Pain Syndrome(CRPS)タイプ2/カウザルギーの診断基準
Complex Regional Pain Syndrome(CRPS)は、神経や骨・軟部組織の損傷後に起こる症候群で、従来はRSD(Refrex Sympathetic dystrophy)という名称が用いられていた。1994年からは、世界疼痛学会(IAPS:International Association for the Study of Pain)によって診断基準が作成され、CRPSという名称が用いられている。臨床症状は単一の末梢神経領域に限らず広がり、原因となった外傷の程度に比して重症である。持続的な痛み、アロディニア(allodynia:通常では疼痛刺激にならないような「そよ風」のような些細な刺激によっても疼痛を感じる)や痛覚過敏(hyperpathia)が認められるほか、ある時期には疼痛部位における浮腫や皮膚血流の異常、発汗異常などの交感神経機能不全症状が出現する。組織損傷後に起こるものをタイプ1、神経の損傷に起因するものをタイプ2(従来のカウザルギーに相当する)と定義される。献血時に発症するものは、採血針による末梢神経損傷に起因するため後者である。診断上重要なのは、患者の疼痛や機能不全を説明できるほかの病態が存在しないことである。初期治療の良否が予後に大きく影響するため、最終診断は専門医に委ねるべきである。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
1 神経損傷があって、その後に持続する自発痛(灼熱痛)、アロディニアあるいは痛覚過敏があること |
損傷された神経の支配領域に限らない |
◎ |
2 経過中、疼痛部位に一致して、浮腫、皮膚血流の変化(皮膚の色調や発毛の変化、皮膚温の変化)、発汗異常のいずれかがあること |
時間経過例では、手指の萎縮や関節拘縮を認める。骨萎縮は、単純X線像や骨シンチグラフィーで判断する。 |
◎ |
3 疼痛や機能不全を説明できるほかの病態がないこと |
|
◎ |
過換気症候群の診断基準
過換気症候群とは、循環器・呼吸器・神経系などの器質的疾患がなく、過呼吸をきっかけとして 多彩な臨床症状を呈するものをいう。精神的ストレス(不安、興奮、緊張)や身体的ストレス(疼痛、過激な運動、疲労など)が誘因となる。
診断は、確定診断に必要な検査を実施する必要はなく、以下の「診断に必要な項目」に該当することを原則とする。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
<臨床症状> |
|
|
呼吸器症状 |
過換気による呼吸性アルカローシスに基づく臨床症状・所見 |
◎ |
呼吸困難 |
|
|
過呼吸 |
|
|
神経精神症状 |
|
◎ |
呼吸困難に伴う不安、恐怖などの精神症状 |
|
|
四肢のしびれや筋硬直等のテタニー症状 |
|
|
循環器症状 |
|
○ |
胸部絞扼感 |
|
|
動悸 |
|
|
<確定診断> |
呼吸性アルカローシス(Paco2の低下とpHの上昇) |
|
血液ガス分析 |
|
|
|
鑑別:心原性や肺性の呼吸困難を除外する |
|
皮下出血及び血腫の診断基準
刺針の失敗、採血後の不適切な止血により起こる。診断は、以下の「診断に必要な項目」に該当することを原則とする。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
採血部位周囲の所見 |
採血針の刺入部位に一致した症状・所見 |
◎ |
腫脹、血腫、出血班、疼痛 |
|
|
神経障害様症状 |
※採血翌日以降になって、顕著になることもある。 |
|
|
※神経損傷を伴うこともある。 |
|
血栓性静脈炎の診断基準
穿刺・採血した静脈に起こる。不完全な消毒や消毒薬による炎症等が原因と考えられる。診断は、以下の「診断に必要な項目」に該当することを原則とする。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
疼痛、圧痛、腫脹、熱感 |
症状が穿刺部位から静脈の走行に沿い、上行性に出現する。 |
◎ |
線状又は索状の硬結 |
|
|
リンパ節の腫脹 |
|
|
牽引痛 |
|
|
クエン酸中毒の診断基準
成分採血時、使用した抗凝固剤ACD―A液に含まれるクエン酸による低カルシウム血症に関連した症状。診断は、以下の「診断に必要な項目」に該当することを原則とする。
臨床症状・他覚所見 |
診断の目安 |
診断に必要な項目 |
<臨床症状> |
|
|
口唇周囲、指先のしびれ感で始まる。 |
低カルシウム血症に起因した症状・所見 |
◎ |
手指筋の攣縮、けいれんなどのテタニー症状が出現することがある。 |
|
○ |
意識消失に至ることもある。 |
|
|
<確定診断> |
低下 |
|
血漿イオン化カルシウム濃度 |
|
|
|
※ACD―Aが相当量入らないと起こらない |
|
|
※成分採血中のVVRは早期に発現することが多いが、クエン酸反応は後半に発症することが多い |
|