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○新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について

(平成15年6月24日)

(医薬審発第0624001号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局審査管理課長通知)

新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関する取扱いについては、「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」(平成9年6月23日薬審第539号薬務局審査課長通知)により定められているところですが、今般、日米EU医薬品規制調和国際会議(以下「ICH」という。)での合意に基づき、別添のとおり「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」を改め、下記により取り扱うこととしたので、ご了知の上、貴管下関係業者に対し周知徹底方ご配慮願いたい。

なお、本通知の写しを、日本製薬団体連合会会長ほか、関連団体の長あてに発出することとしているので申し添える。

1.適用

平成16年11月1日以降に申請される新有効成分含有医薬品のうち製剤については、別添「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」に基づいた資料を添付されたい。

2.留意事項

(1) 構造確認及び安全性確認の閾値が変更されたこと、また、四捨五入をすべての場合に適用することとされたことから、閾値との比較、規格設定等、製造承認申請資料作成の際の分析値の取扱いに留意すること。

(2) 製剤の不純物規格に関しては、「新医薬品の規格及び試験方法の設定について」(平成13年5月1日医薬審発第568号医薬局審査管理課長通知)にも規格設定に当たっての考え方が記載されているので、参照すること。

別添

新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン

目次

1.はじめに

1.1 ガイドラインの目的

1.2 背景

1.3 ガイドラインの適用範囲

2.分解生成物管理の根拠となるデータの記載

3.分析法

4.ロット中の分解生成物量の報告

5.規格に設定すべき分解生成物

6.分解生成物の安全性の確認

7.用語の定義

別紙1:新製剤中の分解生成物の閾値

別紙2:報告データと構造決定ならびに安全性確認の要/不要の判定の例示

別紙3:分解生成物の構造決定ならびに安全性の確認のためのフローチャート

新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン

1.はじめに

1.1 ガイドラインの目的

本ガイドラインは、新有効成分含有医薬品のうち、化学的合成法により製造される原薬(以下「新原薬」という。)を用いて製造される製剤(以下「新製剤」という。)中の不純物の量及びその安全性の確認に関する承認申請に際しての指針を示している。

1.2 背景

本ガイドラインは、「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン」(平成14年12月16日医薬審発第1216001号)(以下「ICH―Q3A(R)ガイドライン」という。)を補完するものであり、基本的な考え方については同ガイドラインを参照すること。必要に応じて、「医薬品の残留溶媒ガイドライン」(平成10年3月30日医薬審第307号)(以下「ICH―Q3Cガイドライン」という。)も参照すること。

1.3 ガイドラインの適用範囲

本ガイドラインは、新製剤中の不純物のうち原薬の分解生成物又は原薬と医薬品添加物若しくは直接容器/施栓系との反応による生成物(以下、両者をあわせて「分解生成物」という。)のみを対象としている。新原薬中に存在する不純物については、その不純物が分解生成物でなければ本ガイドラインの対象として個別規格を設定する必要はない(「新医薬品の規格及び試験方法の設定」(平成13年5月1日医薬審発第568号)(以下「ICH―Q6Aガイドライン」という。)を参照のこと。)。

新製剤中に認められる医薬品添加物由来の不純物、あるいは容器/施栓系から溶出する不純物については、本ガイドラインの対象とはしない。また、本ガイドラインは、臨床試験段階で使用する新製剤に適用することを意図したものではない。以下に挙げるタイプの製剤も本ガイドラインの対象としない:生物学的製剤、バイオテクノロジー応用医薬品、ペプチド、オリゴヌクレオチド、放射性医薬品、醗酵生成物、醗酵生成物を原料とした半合成医薬品、生薬及び動植物由来の医薬品。さらに、(1)新製剤中に本来含まれるはずのない外部からの混入物質でGMPの問題として扱う方がより適切なもの、(2)結晶多形、ならびに(3)原薬の対掌体(エナンチオマー)である不純物も本ガイドラインの対象としない。

2.分解生成物管理の根拠となるデータの記載

新製剤の製造中あるいは安定性試験において認められた分解生成物に関する要約を添付資料に記載する。記載に際しては、新製剤中での原薬の推定される分解経路及び医薬品添加物や直接容器/施栓系との相互作用から生じる不純物についての化学的な評価に基づいて要約を行う。さらに、新製剤中の分解生成物を検出するために実施した試験研究の要約を添付資料に記載する。この要約には、開発段階で製造されたロット及び実生産を反映した工程で製造された代表的なロットの試験結果を含める。分解生成物でない不純物、例えば、原薬由来の不純物ならびに医薬品添加物に起因する不純物をこの報告の対象から除外する場合は、その根拠を記載する。開発段階で製造されたロットの不純物プロファイルと実生産を反映した工程で製造された代表的なロットのプロファイルとを比較し、それらの相違について考察する。

承認申請書に貯蔵方法として記載される保存条件で行われた安定性試験において認められた分解生成物が、別紙1に示す構造決定の必要な閾値を超えて(>)存在する場合は、その構造決定を行う。構造決定ができなかった分解生成物については、不成功に終わった研究の要約を添付資料に記載する。

構造決定の必要な閾値以下(≦)のレベルの分解生成物については、通例、構造決定する必要はない。しかしながら、作用が異常に強く、構造決定の必要な閾値以下(≦)のレベルでも毒性又は薬理作用を示すことが懸念される分解生成物については、その分解生成物を分析し得る方法を開発する必要がある。技術的な要因(例えば、製造能力の高さ、医薬品添加物に対する原薬の比率が低い場合、又は動物若しくは植物基原の未精製の物質を医薬品添加物として使用している場合)も、実生産を反映した工程での製造の経験を基にして別紙1と異なる閾値を選択する理由となりうる。

3.分析法

承認申請書に記載する分析法がバリデートされたものであり、分解生成物の検出や定量に適切であることを示すデータを添付資料に記載する(「分析法バリデーションに関するテキスト(実施項目)」(平成7年7月20日薬審第755号)及び「分析法バリデーションに関するテキスト(実施方法)」(平成9年10月28日薬審第338号)(以下、「ICH―Q2A及びQ2Bガイドライン」という。)を参照のこと。)。分析法のバリデーションにおいては、特に、分解生成物を、個別規格を設定するものも個別規格を設定しないものも、特異的に分析できることを示す必要がある。このバリデーションには、光、熱、湿度、酸/塩基による加水分解ならびに酸化のうち、その製剤に適切な苛酷条件に曝した試料を用いる。分析の結果、分解生成物のピーク以外にもピーク(例えば、原薬、原薬の合成の際に生じた不純物、医薬品添加物とそれに由来する不純物のピーク)が認められたときには、クロマトグラム中においてそのピークに識別名を付けるとともに、添付資料の分析法バリデーションに関する記載の中でその由来について考察する必要がある。

分析法の定量限界は、報告の必要な閾値以下(≦)である必要がある。

分解生成物の含量は、種々の方法で測定することができるが、その一つとして、ある分析法における分解生成物のレスポンスを適切な標準物質又は新原薬自身のレスポンスと比較する方法がある。分解生成物の分析に用いる標準物質は、その使用目的に適していることを確認しておく。分解生成物の含量を見積もるために原薬を標準として用いてもよい。分解生成物の感度係数が原薬の感度係数に近い値を示さない場合であっても、補正係数が適用できるか、あるいは分解生成物が実際に存在する量よりも多めに見積もられるようであれば、原薬を標準として用いて分解生成物の含量を見積もってもよい。構造既知又は未知の分解生成物の判定基準及び分析法では、例えば、感度係数が等しいといった仮定をする場合がよくあるが、その場合にはそうした仮定の妥当性に関する考察を添付資料に記載する。

開発段階で用いた分析法と承認申請書記載の分析法とが異なる場合は、その相違点について考察し、添付資料に記載する。

4.ロット中の分解生成物量の報告

臨床試験、安全性試験及び安定性試験に使用された新製剤の関連するすべてのロット及び実生産を反映した工程で製造された代表的なロット中の分解生成物の分析結果を添付資料に記載する。定量的な試験の結果は数値で記載し、「適合」、「限度値以下」などのような一般的な表記により記載すべきではない。これらのロット中に報告の必要な閾値(別紙1参照)を超える(>)レベルで認められたすべての分解生成物について、それぞれの量及びその総量を、用いた分析法とともに報告する。1.0%未満の場合、結果は該当する報告の必要な閾値と同じ桁数まで(例えば、0.06%のように)報告する;1.0%以上の場合、結果は小数第1位まで(例えば、1.3%のように)報告する。結果は通常の数値の丸め方のルールにより四捨五入する(別紙2参照)。これらのデータは表形式で示すことが望ましい。分解生成物は、コード番号あるいは保持時間等の適切な識別名を使って区別する。別紙1の報告の必要な閾値よりも高い閾値を用いる場合には、その妥当性を十分に説明する必要がある。報告の必要な閾値を超える(>)レベルにあるすべての分解生成物の量を合計し、分解生成物総量として示す。

各ピークに識別名を付けた代表的なロットのクロマトグラム(クロマトグラフ法以外の分析法が用いられた場合には、これと同等のデータ)を分析法バリデーションを行った際の試験や長期保存試験及び加速試験のクロマトグラムとともに、添付資料に記載する。申請者は、個々のロットの分解生成物プロファイル(例えば、クロマトグラム)を、要求されれば、提出できるようにしておく。

添付資料で取り上げた新製剤の各ロットについて、次に掲げる項目を記載する。

◎ ロット番号、有効成分の配合量、ならびに製造スケール

◎ 製造年月日

◎ 製造場所

◎ 製造工程

◎ 直接容器/施栓系

◎ 分解生成物含量(個々の分解生成物の量ならびに分解生成物総量)

◎ ロットの用途(例えば、臨床試験、安定性試験)

◎ 使用した分析法への参照

◎ 新製剤の製造に用いられた原薬のロット番号

◎ 安定性試験の保存条件

5.規格に設定すべき分解生成物

新製剤の規格には、市販製品の製造中ならびに承認申請書に貯蔵方法として記載された保存条件において生成すると考えられる分解生成物をリストアップする。安定性試験、分解経路に関する知見、製剤の開発研究及びロット分析の結果などに基づいて、分解生成物のプロファイルを明らかにする。新製剤の規格に個別に判定基準を設定する分解生成物は、実生産を反映した工程で製造されたロットにおいて認められた分解生成物に基づいて選択する。これらの個別に判定基準を設定する分解生成物を、本ガイドラインでは構造既知のものも未知のものも含め、「個別規格設定分解生成物」という。

各分解生成物に個別規格を設定するか否かの判断根拠を示す。この根拠には、安全性試験及び臨床試験に用いられた開発段階のロットならびに安定性試験において認められた分解生成物プロファイルに関する考察とともに、実生産を反映した工程で製造されたロットの分解生成物プロファイルに関する考察も記載する。別紙1に示す構造決定の必要な閾値を超える(>)レベルで存在すると見積もられる構造未知の分解生成物も、構造既知の分解生成物と同様に、個別規格設定分解生成物として規格に設定する。作用が異常に強いか、あるいは毒性又は予期せぬ薬理作用のあることが知られている分解生成物については、その分解生成物をコントロールすべきレベルまで分析可能な定量限界/検出限界を持つ分析法を用いる必要がある。構造未知の分解生成物については、分解生成物の含量を見積もるためにどのような分析法を用いたか、また、どのような仮定を置いたかを明確に示す。個別規格を設定する構造未知の分解生成物は、定性的な特性に基づく適切な識別名(例えば、「未知物質A」、「相対保持時間0.9の未知物質」等)を用いて記載する。個別規格を設定しない分解生成物については、その一般的な判定基準を構造決定の必要な閾値(別紙1)以下(≦)とする。分解生成物の総量についても判定基準を設定する。

分解生成物の判定基準は、原薬中における当該物質の判定基準(該当する場合)、安全性が確認されたレベル、安定性試験中における増加量、ならびに新製剤の承認申請において設定しようとしている保存条件及び有効期間を考慮に入れて設定する。また、各判定基準はその分解生成物に関して安全性が確認されたレベルよりも高く設定することがあってはならない。

安全性について懸念がない場合には、分解生成物の判定基準は、実生産を反映した工程で製造された新製剤のロットについて得られるデータに基づいて、通常の製造上及び分析上の変動、ならびに保存中における変化に対応し得るような幅で設定する。製造工程においても、通常、一定の変動は起こり得るが、ロット間で分解生成物の含量にかなり大きな変動が起こる場合には、新製剤の製造工程が適切に管理運用されておらず、バリデートされていない可能性がある(ICH―Q6Aガイドラインの“フローチャート#2:新製剤中の分解生成物の判定基準の設定”を参照のこと。)。本ガイドラインにおいて閾値(別紙1参照)を小数第2位までの数値で示した場合、それは必ずしも個別規格設定分解生成物及び分解生成物総量に関して適否の判定を行う際にこのレベルまでの精度を求めることを意味するものではない。

以上をまとめると、新製剤の規格には、次に掲げる項目のうちの該当するものについて判定基準を設定する。

◎ 構造既知の各個別規格設定分解生成物

◎ 構造未知の各個別規格設定分解生成物

◎ 個別規格を設定しない他のあらゆる分解生成物(それぞれの分解生成物の判定基準は構造決定の必要な閾値以下(≦)とする)

◎ 分解生成物の総量

6.分解生成物の安全性の確認

安全性の確認とは、規格に設定された限度値のレベルでの個々の分解生成物又は分解生成物全体の安全性を立証するために必要なデータを集めて評価する作業のことである。設定した分解生成物の判定基準の妥当性について、安全性の側面からの考察を含めて、添付資料に記載する。既に安全性試験や臨床試験で十分安全であることが確かめられた新製剤のロット中に認められた分解生成物については、試験に用いられたロット中に存在するレベルまでは安全性が確認されたものと考えることができる。このため、安全性試験や臨床試験に用いられた時点における当該ロット中の分解生成物の実際の含量に関する情報が得られているような場合には、その情報を添付資料に記載することは分解生成物の安全性を確認する上で有用である。分解生成物が、動物やヒトでの試験で認められた主要な代謝物と同一である場合についても、一般に安全性が確認されたものと考えることができる。安全性試験や臨床試験に用いられた新製剤のロット中に存在するよりも高いレベルの分解生成物を含む場合についても、その安全性試験において実際に投与された分解生成物の量と新製剤の規定された用量において実際に投与される分解生成物の量との比較に基づいて考察することにより、安全性を確認することが可能である。そうした高いレベルの分解生成物を含んでいても問題がないことを論証する際には、次のような諸要因を踏まえて考察を行う必要がある:(1)既に行われた安全性試験や臨床試験で投与され、安全であることが確かめられている分解生成物の量;(2)分解生成物の増加量;ならびに(3)その他の安全性に関連する要因(該当する場合)。

ある分解生成物について、その判定基準が別紙1に示す安全性確認の必要な閾値を超えているにもかかわらず、規格に設定しようとする判定基準のレベルにおける安全性を確認できるデータがない場合には、安全性を確認するための追加の試験を行う必要があろう(別紙3参照)。

医薬品によっては、薬効分類別の薬理作用に関する知識や臨床経験を含む科学的な根拠及び安全性に関する懸念の度合いに基づいて、安全性確認の必要な閾値をより高くしたり低くしたりするのが適切な場合もある。例えば、安全性確認の対象となる分解生成物が、ある医薬品群あるいは類似薬効群の医薬品中に含まれていて、これまでに患者に副作用に関与したことがある場合には、安全性の確認は特に重要であり、安全性確認の必要な閾値を低くするのが適切である。逆に、同様な考察(例えば、投薬の対象となる患者群、薬効分類別の薬理作用に関する知識、ならびに臨床経験)から、安全性に関する懸念が通常の医薬品より低い場合には、安全性確認の必要な閾値はより高くてもよい。別紙1と異なる閾値を採用する場合には、その妥当性はケースバイケースで判断される。

「分解生成物の構造決定ならびに安全性の確認のためのフローチャート」(別紙3)は、分解生成物の量が別紙1の閾値を超えた場合に、その分解生成物の安全性の確認をどのように行うのかを示している。場合によっては、分解生成物の量を閾値以下(≦)に減らすこと(例えば、より保護的な容器/施栓系を用いる、あるいは保存条件を変更することによって)の方が、安全性データを作成するよりも簡単なこともある。あるいは、分解生成物の安全性を確認するために十分なデータが科学文献から得られることもある。いずれの方法によっても安全性の確認ができない場合には、安全性試験を追加して行うことを考慮する。分解生成物の安全性を確認するのにどのような試験が適切かは、投薬の対象となる患者群、1日当たりの投薬量、投与経路及び投与期間など、多くの要因に依存する。試験は、対象とする分解生成物を含む新製剤(あるいは新原薬)を用いて行うが、単離した分解生成物を用いて行うのが適切な場合もある。

本ガイドラインは、臨床試験段階で使用する新製剤に適用することを意図したものではないが、本ガイドラインに示した閾値は、開発の後期の段階において実生産を反映した工程で製造された新製剤のロット中に認められた新たな分解生成物を評価する上でも有用である。開発の後期の段階において認められた新たな分解生成物についても、別紙1の構造決定が必要な閾値を超える(>)レベルのものについてはすべて構造決定を行う必要がある(別紙3の「分解生成物の構造決定ならびに安全性の確認のためのフローチャート」を参照のこと)。同様に、新たに認められた分解生成物のレベルが別紙1の安全性の確認が必要な閾値を超える(>)場合には安全性の確認を行う必要がある。

分解生成物の安全性を確認するための試験は、通常、代表的なレベルの新たな分解生成物を含んだ新製剤(あるいは新原薬)のロットと既に安全性が確認されたロットとを比較する形で行う。単離した分解生成物を用いて試験を行ってもよい。

7.用語の定義

安全性確認の必要な閾値(Qualification Threshold):分解生成物の量がその値を超える(>)と安全性の確認が必要とされる限度値。

安全性の確認(Qualification):規格に設定された限度値のレベルでの個々の分解生成物又は分解生成物全体の安全性を立証するために必要なデータを集めて評価する作業。

構造既知の分解生成物(Identified Degradation Product):構造決定された分解生成物。

構造決定の必要な閾値(Identification Threshold):分解生成物の量がその値を超える(>)と構造の決定が必要とされる限度値。

構造未知の分解生成物(Unidentified Degradation Product):構造決定できず、クロマトグラフ法の相対保持時間のような定性的特性によってのみ特定される分解生成物。

個別規格を設定しない分解生成物(Unspecified Degradation Product):新製剤の規格において、独自の判定基準が設定されて個別にリストアップされるのではなく、一般的な判定基準により規制される分解生成物。

個別規格設定分解生成物(Specified Degradation Product):新製剤の規格において、独自の判定基準が設定されて個別にリストアップされ、規制される分解生成物。規格設定分解生成物には、構造が既知のものも、未知のものもある。

新原薬(New Drug Substance):ある地域又は国において以前に承認されたことがない医療用の物質。new molecular entity又はnew chemical entityとも言う。以前に承認された原薬の錯体、簡単なエステル体又は塩類であることもある。

製剤の開発研究(Development Studies):製剤の製造工程をスケールアップし、最適化し、バリデートするために行われる研究。

不純物(Impurity):製剤に含まれる物質のうち、原薬あるいは医薬品添加物以外の成分。

不純物プロファイル(Impurity Profile):製剤中に存在する構造既知又は未知の不純物の全体像。

分解生成物(Degradation Product):光、熱、pH及び水の作用、あるいは医薬品添加物や直接容器/施栓系との反応により、新製剤の製造中あるいは保存中に原薬が化学変化を起こして生成した不純物。

分解生成物のプロファイル(Degradation Profile):原薬又は製剤中に認められる分解生成物の全体像。

報告の必要な閾値(Reporting Threshold):分解生成物の量がその値を超える(>)と報告が必要とされる限度値。

別紙1:新製剤中の分解生成物の閾値

報告が必要とされる閾値

最大1日投与量1)

報告の必要な閾値2,3)

≦1g

0.1%

>1g

0.05%

構造決定が必要とされる閾値

最大1日投与量1)

構造決定の必要な閾値2,3)

<1mg

1.0%あるいは1日総摂取量5・のいずれか低い方

1mg~10mg

0.5%あるいは1日総摂取量20・のいずれか低い方

>10mg~2g

0.2%あるいは1日総摂取量2mgのいずれか低い方

>2g

0.10%

安全性の確認が必要とされる閾値

最大1日投与量1)

安全性確認の必要な閾値2,3)

<10mg

1.0%あるいは1日総摂取量50・のいずれか低い方

10mg~100mg

0.5%あるいは1日総摂取量200・のいずれか低い方

>100mg~2g

0.2%あるいは1日総摂取量3mgのいずれか低い方

>2g

0.15%

注1) 1日に投与される原薬の量。

注2) 分解生成物の閾値は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率、あるいは分解生成物の1日総摂取量(TDI)で表されている。分解生成物の毒性が非常に強い場合には、これより低い閾値を用いるのが適切であろう。

注3) これより高い閾値を用いる場合は、その科学的妥当性を示すこと。

新製剤中の分解生成物の報告、構造決定ならびに安全性の確認の閾値を1日最大投与量を横軸にとって図示したもの1)

拡大図:

注1) 実際の閾値の数値は、前ページの閾値の表から求めること。

別紙2:報告データと構造決定ならびに安全性確認の要/不要の判定の例示

この別紙は、単に例を示したもので、分解生成物の試験結果を承認申請資料に記載する際の様式を示すことを意図したものではない。通常、生データは申請資料には添付されない。

例1:最大1日投与量 50mg

報告の閾値:0.1%

構造決定の閾値:0.2%

安全性確認の閾値:200μg

生データ(%)

報告データ(%)

(報告の閾値=0.1%)

分解生成物の1日総摂取量(TDI)

(μgに四捨五入した値)

判定

構造決定の閾値0.2%を超えているか?

安全性の確認の閾値200μgTDIを超えているか?

0.04

報告不要

20

不要

不要

0.2143

0.2

100

不要

不要

0.349

0.31)

150

不要1)

0.550

0.61)

300

1)

例2:最大1日投与量 1.9g

報告の閾値:0.05%

構造決定の閾値:2mg

安全性確認の閾値:3mg

生データ(%)

報告データ(%)

(報告の閾値=0.05%)

分解生成物の1日総摂取量(TDI)

(mgに四捨五入した値)

判定

構造決定の閾値2mgTDIを超えているか?

安全性の確認の閾値3mgTDIを超えているか?

0.049

報告不要

1

不要

不要

0.079

0.08

2

不要

不要

0.183

0.181)

3

不要1,2)

0.192

0.191)

4

1)

1) 構造決定後に、その分解生成物の感度係数を求めたとき、その値が仮定した値とかなり違っている場合には、実際に存在する分解生成物の量を求め直し、安全性の確認が必要かどうかの判断をやり直すのが適切と考えられる(別紙1参照)。

2) 閾値を超えているかどうかを確かめるためには、次のようにして試験結果を閾値と比較して判断する:閾値が%で記載されている場合には、試験結果を閾値と同じ桁数に四捨五入した後、直接閾値と比較して判断する。一方、閾値がTDI値で記載されている場合には、試験結果をTDI値に換算し、閾値と同じ桁数に四捨五入した後、閾値と比較して判断する。例えば、分解生成物の試験結果が0.18%とすると、不純物の絶対量(TDI)としては3.4mgに相当し、これを安全性確認の閾値と同じ桁数に四捨五入すると3mgになる。この値は、安全性確認の閾値3mgTDIを超えていないので、安全性の確認は不要と判定される。

別紙3:分解生成物の構造決定ならびに安全性の確認のためのフローチャート

注a) 必要に応じ、最小限のスクリーニング試験(例えば、遺伝毒性のための試験)を実施する.突然変異を検出する試験及び染色体異常を検出する試験は、いずれもinvitroの試験であるが、最小限のスクリーニング試験として差し支えない.

注b) 一般毒性試験を実施する場合には、安全性の未確認のものと安全性の確認済みのものの比較ができるような1つあるいはそれ以上の試験の計画を立てる.試験期間は入手できる関連情報に基づいて決定し、分解生成物の毒性を最も検出しやすいと考えられる動物種で試験を実施する.ケースバイケースではあるが、特に単回投与医薬品の試験を行う場合には、単回投与試験も許容されよう.通例、最短14日間、最長90日間の試験期間が適切と考えられる.

注c) 毒性の非常に強い分解生成物については、これよりも低い閾値が適当な場合もある.

注d) 例えば、この分解生成物は、既知の安全性データあるいは化学構造から見て存在する濃度ではヒトへの安全性が懸念されることのないようなものか?