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○品質リスクマネジメントに関するガイドライン

(平成18年9月1日)

(/薬食審査発第0901004号/薬食監麻発第0901005号/)

(都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)

近年、優れた医薬品の国際的な研究開発の促進及び患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的なハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されています。このような要請に応えるため、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)が組織され、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われています。

今般、ICHの合意に基づき、「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)が別添のとおりとりまとめられたので、下記事項を御了知の上、貴管内関係業者等に対し周知方御配慮願います。

1.背景

リスクマネジメントの原則は、多くの産業活動や行政活動、及びこれらの企業を規制管轄する機関において有効に活用されている。医薬品の品質においても、品質リスクマネジメントは、効果的な品質システムにおける重要な構成要素であるということが明らかになりつつあることから、本ガイドラインが制定された。

2.本ガイドラインの要点及び留意事項

(1) 本ガイドラインは、医薬品の品質の様々な側面に適用できるリスクマネジメントの原則及び手法の具体例を示したものであること。これらの側面には、原薬、製剤、生物由来医薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品(製剤、生物由来医薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品への原料、溶剤、添加剤、包装及び表示材料の使用を含む)のライフサイクル全般における、開発、製造、配送、査察及び承認申請/審査が含まれる。

(2) 本ガイドラインは、その他のICH品質ガイドラインとは独立しているものの、それらを支持し、また承認申請者と規制当局において使われている既存の品質管理の実践、要求事項、基準、ガイドライン等を補完するものであること。製剤開発については、平成18年9月1日付け薬食審査発第0901001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「製剤開発に関するガイドライン」を参考にされたい。

(3) 本ガイドラインは、現行の規制要件を超え新たな要件を創出するものではないこと。

別添:

品質リスクマネジメントに関するガイドライン

目次

1 序文

2 適用範囲

3 品質リスクマネジメントの原則

4 一般的な品質リスクマネジメントプロセス

4.1 責任

4.2 品質リスクマネジメントプロセスの開始

4.3 リスクアセスメント

4.4 リスクコントロール

4.5 リスクコミュニケーション

4.6 リスクレビュー

5 リスクマネジメントの方法論

6 企業及び規制当局の業務への品質リスクマネジメントの統合

7 定義

8 参照文献

付属書Ⅰ:リスクマネジメントの方法と手法

Ⅰ.1 リスクマネジメントを促進する基本的な方法

Ⅰ.2 欠陥モード影響解析(FMEA)

Ⅰ.3 欠陥モード影響致命度解析(FMECA)

Ⅰ.4 故障の木解析(FTA)

Ⅰ.5 ハザード分析と重要管理点(HACCP)

Ⅰ.6 潜在危険及び作動性の調査(HAZOP)

Ⅰ.7 予備危険源分析(PHA)

Ⅰ.8 リスクランキングとフィルタリング

Ⅰ.9 支援統計手法

付属書Ⅱ:品質リスクマネジメントの潜在用途

Ⅱ.1 統合された品質マネジメントの一環としての品質リスクマネジメント

Ⅱ.2 規制当局の業務活動の一環としての品質リスクマネジメント

Ⅱ.3 開発の一環としての品質リスクマネジメント

Ⅱ.4 施設、設備、ユーティリティのための品質リスクマネジメント

Ⅱ.5 資材管理の一環としての品質リスクマネジメント

Ⅱ.6 生産の一環としての品質リスクマネジメント

Ⅱ.7 試験検査室管理及び安定性試験の一環としての品質リスクマネジメント

Ⅱ.8 包装及び表示の一環としての品質リスクマネジメント

1 序文

リスクマネジメントの原則は、金融、保険、労働安全、公衆衛生、医薬品安全性監視を含む多くの産業活動や行政活動、及びこれらの企業を規制管轄する機関において有効に活用されている。現在の製薬企業においても若干の品質リスクマネジメントの実施例はあるが、それらの事例は限定されたものであり、リスクマネジメントが本来果たすべき貢献の全てを示すものではない。加えて、製薬企業においても品質システムの重要性は認識されてきており、品質リスクマネジメントは、効果的な品質システムにおける重要な構成要素であるということが明らかになりつつある。

一般に、リスクとは危害の発生する確率とそれが顕在化した場合の重大性の組み合わせであると認識されている。しかし、利害関係者ごとに認識している潜在的危害が異なっているかもしれず、またそれぞれの危害の発生に対し異なる確率を想定するかもしれず、また、それぞれの危害に対し異なる重大性がもたらされると考えるかもしれないため、多様な利害関係者の間でリスクマネジメントの適用について共通の認識を得ることは困難である。医薬品に関して言えば、患者、医療従事者、行政、企業等多様な利害関係者が存在しているものの、品質に対するリスクマネジメントを適用することにより患者を保護するということが最優先されるべきである。

医薬品及びその成分の製造や使用には、必然的に、ある程度のリスクが伴う。品質に関するリスクは、その全体のリスクの一部分である。医薬品の品質を維持するための要素は、臨床試験で使用された時のものと一貫していなければならないというように、医薬品の品質は、その製品ライフサイクルを通して維持されなければならないという認識は重要である。有効な品質リスクマネジメントのアプローチは、開発及び製造中に潜在する品質問題を特定し、コントロールする予防的な手段を提供し、より高品質の医薬品を患者に提供することを可能とする。さらに品質リスクマネジメントを実施することで、品質問題が生じた場合の意思決定を改善させることができる。有効な品質リスクマネジメントにより、より良好な多くの情報に基づいた決定を下すことが容易になり、企業に潜在リスクへの対応能力があることを規制当局に対して確信させうることになり、かつ、それが規制当局の薬事監視の範囲や厳格さに好影響を与えうる。

本文書の目的は品質リスクマネジメントの体系的なアプローチを提供することである。本文書は、その他のICH品質文書とは独立しているものの、それらを支持し、また製薬企業と規制当局において使われている既存の品質管理の実践、要求事項、基準、ガイドラインを補完する基礎文書又は資料となる。特に品質リスクマネジメントの原則や手法についての手引きとなり、その品質リスクマネジメントによって製薬企業と規制当局の両者が製品ライフサイクルにわたり、原薬及び製剤の品質に関して、リスクに基づくより有効で一貫した決定ができるようになる。本文書により、現行の規制要件を越えた新たな要件を創出することは意図していない。

常に形式に従ったリスクマネジメントプロセス(認知された手法及び/又は標準操作手順等の内部的な手順の使用を指す)の運用が適切であるとは限らず、また必要というわけでもない。形式にとらわれないリスクマネジメントプロセス(経験的な手法及び/又は内部的な手順の使用を指す)も許容される。品質リスクマネジメントを適切に使用すれば、規制要件の遵守が容易になるが、製薬企業が遵守すべき規制要件がなくなったり、企業と規制当局間の適切なコミュニケーションに置き換わったりするものではない。

2 適用範囲

本ガイドラインは、医薬品品質の様々な側面に適用できる品質リスクマネジメントの原則及び手法の具体例を示したものである。これらの側面には、原薬、製剤、生物由来医薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品(製剤、生物由来医薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品への原料、溶剤、添加剤、包装及び表示材料の使用を含む)のライフサイクル全般における、開発、製造、配送、査察及び承認申請/審査が含まれる。

3 品質リスクマネジメントの原則

品質リスクマネジメントの2つの主要原則は以下のとおりである。

・ 品質に対するリスクの評価は、科学的知見に基づき、かつ最終的に患者保護に帰結されるべきである。また、

・ 品質リスクマネジメントプロセスにおける労力、形式、文書化の程度は当該リスクの程度に相応すべきである。

4 一般的な品質リスクマネジメントプロセス

品質リスクマネジメントとは、医薬品の製品ライフサイクルにわたる品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューに対する系統だったプロセスである。品質リスクマネジメントの一つのモデルの概要を図1に示すが、他のモデルを使用してもよい。図中の枠内の各要素のうち、強調すべきものは事例によって異なるかもしれないが、確固としたプロセスでは、これら全ての要素が特定のリスクの程度に適切に対応したレベルで組み込まれるであろう。

図1 典型的な品質リスクマネジメントプロセスの概要

プロセスのどの時点でも意思決定が必要になる可能性があるため、図中には意思決定ノードが示されていない。これらの意思決定は、その決定を裏付ける情報に基づき、前のステップに戻り更なる情報を求めたり、リスクモデルを調整したり、さらにはリスクマネジメントプロセスを終結することがあるかもしれない。(注)図1における「受容不可」とは、法規制上の問題だけでなく、リスクアセスメントプロセスに再度立ち戻ることも意味する。

4.1 責任

品質リスクマネジメントの活動は、常にではないが、通常複数の分野の専門家からなるチームが担当する。チームを編成する場合には、品質リスクマネジメントプロセスに精通した者に加え、適切な分野の専門家(品質部門、事業開発、技術、規制、製造、営業・マーケティング、法務、統計、臨床等)が含まれるべきである。

意思決定者は、

・ 組織内の様々な機能及び部門にわたる品質リスクマネジメントを調整する責任を負うべきであるとともに、

・ 品質リスクマネジメントプロセスを定義付け、展開し、レビューを行うとともに、適切な資源の投入を確実に実施する責任を負うべきである。

4.2 品質リスクマネジメントプロセスの開始

品質リスクマネジメントは、リスクに関する科学に基づいた決定を調整、促進、改善するように設計された体系的なプロセスを含むべきである。品質リスクマネジメントプロセスを開始、計画するために用いられるステップには、以下が考えられる。

・ 課題及び/又はリスクの可能性を特定する適切な仮定も含むリスクに関する質問を定義すること。

・ 当該リスクアセスメントに関連する潜在的なハザード、危害又は健康への影響に関する背景情報及び/又はデータを集約すること。

・ リーダーと必要な資源を明確にすること。

・ リスクマネジメントプロセスの実施計画、成果物及び意思決定の適切な水準を明確にすること。

4.3 リスクアセスメント

「リスクアセスメント」は、(以下に定義するとおり)ハザードの特定及びこれらハザードへの曝露に伴うリスクの分析及び評価から構成される。品質リスクアセスメントは明確に定義された問題点の記述又はリスクに関する質問により始まる。問題となるリスクが明確に定義された時には、適切なリスクマネジメント手法(第5節の例を参照)及びこのリスクに関する質問を取り扱うためにどのような情報が必要かがより速やかに特定できる。リスクアセスメントの目的に対してリスクを明確に定義する一助として、以下の3つの基本的な質問が役立つ場合が多い。

1.何がうまくいかないかもしれないのか。

2.うまくいかない可能性はどれくらいか。

3.うまくいかなかった場合、どんな結果(重大性)となるのか。

「リスク特定」とは、リスクに関する質問又は問題点の記述を参照しながらハザードを特定するために体系的に情報を利用することである。情報には過去のデータ、論理的分析、寄せられた意見、利害関係者の懸念等が含まれうる。リスクの特定とは、起こりうる結果の特定を含めて「何がうまくいかないかもしれないのか」という質問を取り扱うことである。これが、品質リスクマネジメントプロセスの次のステップの基礎となる。

「リスク分析」とは、特定されたハザードに関連するリスクの推定である。それは、危害が生じる確率とその重大性を定性的又は定量的に結びつけるプロセスである。一部のリスクマネジメント手法においては、危害を検出する能力(検出性)もリスク推定の因子に含まれる。

「リスク評価」では、特定、分析されたリスクを所定のリスク基準に従って比較する。リスク評価では、前述の3つの基本的な質問全てに対する証拠の確実さを考慮する。

効果的なリスクアセスメントを実施するためには、(アセスメントの)結果の質を左右するのでデータセットの頑健性が重要となる。仮定の検証や不確実性の妥当な根源を明らかにしておくことは、(アセスメントの)結果の信頼性を高める事及び/又は、その限界を明確にする事に役立つ。不確実性は、(対象としている)プロセスに対する理解が不完全であることと、(プロセスの)想定内外の変動の組み合わせから生じる。不確実性をもたらす典型的な原因には、製剤科学と製造工程の理解との間の知識に関するギャップ、危害要因(工程の欠陥モード、変動の要因等)、問題の検出確率が挙げられる。

リスクアセスメントの結果は、リスクの定量的な算定か、リスク範囲の定性的な表現のどちらか一方である。リスクを定量的に表現する場合、発生の可能性は数値により表される。一方、リスクは「高」「中」「低」等の定性的な記号を使って表現することもできるが、それらの記号はできるだけ詳細に定義されるべきである。時として、リスクランキングにおいて、更に明確に記述するために「リスクスコア」が用いられる。定量的なリスクアセスメントにおいては、リスク算定は、一定のリスク発生環境における特定の(危害の)事象の起こりやすさを示す。このように定量的なリスク算定では、一時に一つの特定の事象を算定するのに有用である。一方、リスクマネジメントの手法によっては、相対リスクの測定手段を用いて多様なレベルの重大性と確率を組み合わせて、相対リスクの総合的な推定を行うこともある。リスクスコアプロセスの中間段階では、定量的なリスク算定が採用されることもある。

4.4 リスクコントロール

「リスクコントロール」には、リスクを低減及び/又は受容するための意思決定が含まれる。リスクコントロールの目的はリスクを受容できるレベルまで減らすことである。リスクコントロールのための労力は当該リスクの重大性に比例すべきである。意思決定者は、リスクコントロールの最適なレベルを知るために費用便益分析等、異なる方法を使用することがある。

リスクコントロールは以下のような質問に焦点を合わせることがある。

・ リスクは受容レベルを超えているか。

・ リスクを低減、除去するために何が出来るか。

・ 利益、リスク、資源の間のバランスをどの程度にするのが良いか。

・ 特定のリスクを制御した結果、新たなリスクが発生しないか。

「リスク低減」では、品質に係るリスクが規定した(受容可能な)レベルを超えた場合(図1参照)の、そのリスクを低減又は回避するプロセスに着目する。リスク低減は、危害の重大性や発生の確率を軽減するための行為を含むことがある。リスクコントロール方策の一部としてハザードや品質に係るリスクの検出性を改善するプロセスが用いられる場合もある。リスク低減方策の実施により、新たなリスクがシステムの中に生じたり、既存の他のリスクの重大性が増加したりする場合がある。そのため、リスク低減のプロセスを実行した後は、可能性のあるリスクの変化を特定及び評価するためにリスクアセスメントに戻ることが妥当である場合がある。

「リスク受容」とはリスクを受容する意思決定である。リスク受容は、残留リスクを受容するための形式に従った意思決定、又は残留リスクが明確になっていない場合には受動的な意思決定となることがある。ある種の危害に対しては、最良の品質リスクマネジメントを実践しても、完全にはリスクを取り除くことは出来ないかもしれない。このような状況下では、適切な品質リスクマネジメント方策が適用されており、品質に係るリスクは規定された(受容可能な)レベルまで低減されているということで合意に達するかもしれない。この(規定した)受容可能なレベルは多くの要因に依存しており、個別に決定されるべきである。

4.5 リスクコミュニケーション

「リスクコミュニケーション」とは、リスクとそのマネジメントに関しての情報を、意思決定者とそれ以外の人との間で共有することである。関係者はリスクマネジメントプロセスのどの段階においても情報共有ができる(図1、破線矢印参照)。リスクマネジメントプロセスのアウトプット/結果は適切に伝達され、かつ文書化されるべきである(図1、実線矢印参照)。コミュニケーションには、規制当局と企業間、企業と患者間、会社内、業界内、規制当局内等、様々な利害関係者間でのコミュニケーションが含まれることがある。情報の内容は、品質に対するリスクの有無、本質、形態、発生の確率、重大性、受容可能性、管理、対応、検出性、その他の側面等に関するかもしれない。コミュニケーションは、個別にかつ全てのリスク受容に対して実施される必要はない。企業と規制当局間において、品質リスクマネジメントの意思決定に関するコミュニケーションは、法規制やガイダンスに規定されているような既存の方法を用いて実行されることがある。

4.6 リスクレビュー

リスクマネジメントは、品質マネジメントプロセスの継続的な一部であるべきであり、事象のレビューや監視のための仕組みを働かせるべきである。

リスクマネジメントプロセスのアウトプット/結果は、新しい知見や経験に基づいて見直すべきである。一度、品質リスクマネジメントを開始した後は、もともとの品質リスクマネジメントの決定を左右する恐れのある事象に対しては、そのリスクマネジメントプロセスを継続して活用するべきである。なお、これら事象には計画されたもの(製品レビュー、査察、監査、変更管理の結果等)も計画されていないもの(不良調査や回収で判明した根本原因等)も含まれる。見直す頻度はリスクの程度に応じるべきである。リスクレビューは、リスク受容決定の再検討を含む場合もある(第4.4節参照)。

5 リスクマネジメントの方法論

品質リスクマネジメントは、意思決定に向けての科学的かつ実用的なアプローチを支援する。また、品質リスクマネジメントは、リスク発生の確率、重大性、及び場合によっては検出性の評価において得られた最新の知識に基づいて品質リスクマネジメントプロセスの各段階を遂行するために必要な、文書化された、透明かつ再現性のある方法を提供する。

従来、品質に係るリスクは、例えば、観察結果の集積や傾向、その他の情報等に基づいた、形式にとらわれない様々な手段(経験的手法及び/又は内部的な手順等)により評価され、管理されてきた。このようなアプローチも、苦情対応や品質欠陥、逸脱、資源の有効活用等といったトピックを支援しうる有用な情報を提供し続ける。

加えて、製薬企業及び規制当局は、一般的なリスクマネジメント手法及び/又は内部手順(標準操作手順書等)を利用して、リスクの評価、管理を行うことができる。すべてを網羅しているわけではないが、下記にそのような手法を示す(詳細は付属書Ⅰ及び第8章を参照)。

・ リスクマネジメントを促進する基本的な方法(フローチャート、チェックシート等)

・ 欠陥モード影響解析(FMEA)

・ 欠陥モード影響致命度解析(FMECA)

・ 故障の木解析(FTA)

・ ハザード分析と重要管理点(HACCP)

・ 潜在危険及び作動性の調査(HAZOP)

・ 予備危険源分析(PHA)

・ リスクランキングとフィルタリング

・ 支援統計手法

これらの手法は原薬や製剤の品質に係る特定の領域に適用するのが望ましいかもしれない。また、品質リスクマネジメントの方法とそれを支援する統計的な手法は組み合わせて使用する事ができる(確率論記リスクアセスメント等)。組み合わせて使うことで柔軟性が備わり、それによって品質リスクマネジメント原則の適用が容易になる。

品質リスクマネジメントの厳密さや形式の程度は、利用できる知識の量を反映すべきであり、また対応する問題の複雑さ及び/又は重大性に比例すべきである。

6 企業及び規制当局の業務への品質リスクマネジメントの統合

品質リスクマネジメントは、それが品質システムに統合されると、科学的根拠に基づく現実的な意思決定を支援するプロセスとなる(付属書Ⅱを参照)。序文で概説したように、適切に品質リスクマネジメントを使用したとしても、企業が遵守すべき規制要件が免除されるわけではない。しかしながら、有効な品質リスクマネジメントは、より多くの優れた情報に基づいた意思決定を促進し、企業が潜在的リスクへの対応能力があることを規制当局に対して、より確信をもって示す可能性もあり、それが規制当局の薬事監視の範囲及びレベルに影響を与えるかもしれない。また、全ての関係者にとって、品質リスクマネジメントが、資源の更なる有効利用を促進する可能性もある。

品質リスクマネジメントプロセスについて、企業の人員及び規制当局の職員の双方を訓練することで、意思決定プロセスの理解を更に深めることができ、かつ品質リスクマネジメントの成果への信頼度を高める。

品質リスクマネジメントは、現行の業務に組み込まれるべきであり、かつ適切に文書化されるべきである。付属書Ⅱにおいては、品質リスクマネジメントプロセスの使用が種々の医薬品関連業務に利用される可能性のある情報を提供しうる事例を示している。これらの事例は、単に例示を目的とするものであり、厳密な、又は完全なリストと見なすべきではない。また、現行の規制要件を越えた新たな要件の創出も意図していない。

企業及び規制当局双方の業務における事例(付属書Ⅱ参照)

・ 品質マネジメント

企業の業務における事例(付属書Ⅱ参照)

・ 開発

・ 施設、装置、ユーティリティ

・ 原材料の管理

・ 生産

・ 試験検査室の管理及び安定性試験

・ 包装及び表示

規制当局の業務における事例(付属書Ⅱ参照)

・ 査察業務及び審査業務

規制当局の決定は今後も地域ごとになされるとはいえ、品質リスクマネジメントの原則の共通の理解及び適用は、相互の信頼を高め、規制当局をまたがっても、同じ情報に基づいて、より一貫した決定がなされるようになる可能性がある。品質リスクマネジメントの実務を統一し、支援するための方針やガイドラインを発展させていく上で、このような協力体制は重要かもしれない。

7 定義

意思決定者

適切かつタイムリーな品質リスクマネジメントに関する決定を行う能力及び権限を有する人又は人々。

検出性

ハザードの存在、出現、事実を発見又は決定する能力。

危害

健康への被害。製品品質の不良又は安定供給の欠如による被害を含む。

ハザード

危害の潜在的な原因(ISO/IEC Guide 51)。

製品ライフサイクル

初期開発から市販を経て製造販売中止に至るまでの製品寿命の全過程。

品質

製品、システム、又は工程に係る本質的性質の組み合わせが要求事項を満たす程度(ICH Q6Aにおける原薬及び製剤の『品質』に関する定義参照)。

品質リスクマネジメント

製品ライフサイクルを通じて、医薬品の品質に係るリスクについてのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューからなる系統だったプロセス。

品質システム

品質方針を実行し、品質目標への適合を保証するシステムに係るあらゆる側面の総和。

要求事項

患者やその代弁者(医療従事者、規制当局、国会議員等)により明確化された又は暗黙のニーズ又は期待。本文書においての要求事項とは、法令上、立法上、あるいは規制上の要求事項のみならず、上記のようなニーズ及び期待を含むものとする。

リスク

危害の発生の確率とそれが発生したときの重大性の組み合わせ(ISO/IEC Guide 51)。

リスク受容

リスクを受容する意思決定(ISO Guide 73)。

リスク分析

特定されたハザードに関連するリスクの推定。

リスクアセスメント

リスクマネジメントプロセスの中で、リスクに係わる決定を支持する情報を整理する系統だったプロセス。ハザードの特定、及びそれらハザードへの曝露に伴うリスクの分析と評価から成る。

リスクコミュニケーション

リスク及びリスクマネジメントの情報を意思決定者及び他の利害関係者の間で共有すること。

リスクコントロール

リスクマネジメントの意思決定を実施する行動(ISO Guide 73)。

リスク評価

リスクの重大性を決めるため、定量的又は定性的な尺度を使い、推定されたリスクを一定のリスク基準と比較すること。

リスク特定

リスクへの質問又は問題の記述を参照して、危害の潜在的な原因(ハザード)を特定するための情報を系統立てて使用すること。

リスクマネジメント

リスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、レビューの各作業に対し、品質マネジメントの方針、手順、実施を系統立てて適用すること。

リスク低減

危害の発生の確率及びその危害の重大性を低減するための行動。

リスクレビュー

リスクに係る新しい知見や経験を(適切ならば)考慮して、リスクマネジメントプロセスのアウトプット/結果を見直し、監視すること。

重大性

ハザードから生じうる結果の大きさ。

利害関係者

リスクに影響を与え、リスクの影響を受け、又はリスクの影響を受けると認識する個人、グループ又は組織。意思決定者もまた利害関係者である場合がある。本ガイドラインの目的においては、主要な利害関係者とは、患者、医療従事者、規制当局、企業を指す。

傾向

変動の方向又は変化率を参照する統計用語。

8 参照文献

ICH Q8 Pharmaceutical Development.

ISO/IEC Guide 73:2002-Risk Management-Vocabulary-Guidelines for use in Standards.

ISO/IEC Guide 51:1999-Safety Aspects-Guideline for their inclusion in standards.

Process Mapping by the American Productivity & Quality Center 2002,ISBN 1928593739.

IEC 61025-Fault Tree Analysis(FTA).

IEC 60812 Analysis Techniques for system reliability-Procedures for failure mode and effects analysis(FMEA).

Failure Mode and Effect Analysis,FMEA from Theory to Execution,2nd Edition 2003,D.H.Stamatis,ISBN 0873895983.

Guidelines for Failure Modes and Effects Analysis(FMEA)for Medical Devices,2003 Dyadem Press ISBN 0849319102.

The Basics of FMEA,Robin McDermott,Raymond j.Mikulak,Michael R.Beauregard 1996,ISBN 0527763209.

WHO Technical Report Series No 908,2003,Annex 7 Application of Hazard Analysis and Critical Control Point(HACCP)methodology to pharmaceuticals.

IEC 61882-Hazard Operability Analysis(HAZOP).

ISO 14971:2000-Application of Risk Management to Medical Devices.

ISO 7870:1993-Control Charts.

ISO 7871:1997-Cumulative Sum Charts.

ISO 7966:1993-Acceptance Control Charts.

ISO 8258:1991-Shewhart Control Charts.

What is Total Quality Control?; The Japanese Way,Kaoru Ishikawa(Translated by David J.Liu),1985,ISBN 0139524339.

付属書Ⅰ:リスクマネジメントの方法と手法

本付属書の目的は、企業と規制当局双方が品質リスクマネジメントに用いうる、いくつかの主要な手法の概要と参照文献を示すことである。参照文献はある特定の手法についての知識を深め、より詳しく知るための参考として示されている。ただし、これは完全なリストではない。どのような手法若しくは手法群であっても、品質リスクマネジメントプロセスが使用される全ての状況に適用できるものではないということに留意することが重要である。

Ⅰ.1 リスクマネジメントを促進する基本的な方法

データを系統づけ、意思決定を容易にすることにより、リスクマネジメントを構築するために通常使われる簡単な技法としては以下のものがある。

・ フローチャート

・ チェックシート

・ プロセスマッピング

・ 特性要因図(石川ダイアグラム、又は魚の骨図とも呼ばれる)

Ⅰ.2 欠陥モード影響解析(FMEA)

FMEA(IEC 60812参照)は、プロセスやプロセスが結果及び/又は製品性能に与えそうな影響に関して、潜在的な欠陥モードの評価を行う手法である。いったん欠陥モードが確定されれば、リスク低減を用いて、潜在的な欠陥を除外、阻止、低減、抑制することができる。FMEAは製品とプロセスの理解に依存する。FMEAは複雑なプロセスの解析を可能な段階まで系統的に細分化する。FMEAは重要な欠陥モードや、これらの欠陥を生ずる因子や、欠陥から生じうる影響を要約するための有力な手法である。

適用分野

FMEAは、リスクの優先順位付けや、リスクコントロール措置の有効性の監視に用いることができる。

FMEAは設備や施設に適用でき、また、製造作業やその製品又はプロセスへの影響を解析するのに用いうる。FMEAは、システムの脆弱性を生じさせるシステム内の因子/作業を特定する。FMEAのアウトプット/結果は、設計の基礎として、又は更なる分析のため、若しくは資源配分の手引きに用いることができる。

Ⅰ.3 欠陥モード影響致命度解析(FMECA)

FMEAは、その結末の重大性の程度や個々の結末の発生確率、その検出性についての調査を更に取り込むことにより、欠陥モード影響致命度解析になりうる(FMECA;IEC 60812参照)。このような解析を行うためには、製品又はプロセスの仕様が確立されているべきである。EMECAにより、リスクを最小限にするためにはどこに追加の予防措置をするのが適切かを特定することができる。

適用分野

製薬企業においては、FMECAは主に製造工程に関係する欠陥やリスクに対して適用されるべきであるものの、この適用に限定されているわけではない。FMECAのアウトプットは、各々の欠陥モードに対する相対的なリスクの「点数化」であり、相対的なリスクを基にモードをランク付けするのに用いられる。

Ⅰ.4 故障の木解析(FTA)

FTA(IEC 61025参照)手法は製品やプロセスの機能性の欠陥を推定するアプローチである。この手法はシステム(又はサブシステム)欠陥を一つずつ評価するが、原因の関連を明らかにすることで欠陥の複数の原因を組み合わせることができる。結果は、故障モードを樹状図にして表現される。樹状図上のそれぞれのレベルで、故障モードの組み合わせが論理記号(「AND」「OR」等)とともに記述される。FTAは、原因因子を特定する専門家のプロセスの理解度に依存する。

適用分野

FTAは、欠陥の根本原因への道筋の確立に使用することができる。FTAは苦情や逸脱の調査において、根本原因を完全に理解するとともに、改善策が問題を完全に解決し、かつ他の問題を誘起しないことを保証する目的で(すなわちある問題の解決が別の問題を引き起こすことも考えられるため)使用できる。故障の木解析は複数の要因が与えられた課題にどのように影響しているかを評価する効果的な手法である。FTAのアウトプットには、欠陥モードの視覚的表現が含まれる。それはリスクアセスメント及びモニタリングプログラム開発の両方に有用である。

Ⅰ.5 ハザード分析と重要管理点(HACCP)

HACCPは、製品品質、信頼性、安全性を保証するための系統的、予見的かつ予防的手法である(WHO Technical Report Series No908,2003 Annex 7を参照)。HACCPは、製品の設計、開発、製造、使用に起因するリスク、又はハザードが及ぼす好ましくない結果を解析、評価、防止、抑制するために技術的かつ科学的な原則を適用する構造的なアプローチである。

HACCPは、以下の7段階から構成される。

(1) プロセスの各段階におけるハザード分析の実施と防止手段の明確化

(2) 重要管理点の決定

(3) 重要管理限界の設定

(4) 重要管理点のモニタリング方法の設定

(5) モニタリングの結果、重要管理点が管理されていない状態にあることを示した時に取られるべき改善措置の設定

(6) HACCPシステムが有効に機能していることを検証するためのシステムの設定

(7) 記録の維持管理システムの確立

適用分野

HACCPは物理的、化学的、生物学的ハザード(微生物汚染を含む)に関係するリスクを特定及び運営管理するために用いられうる。HACCPは、重要管理点の特定を支援するために、製品やプロセスが十分に包括的に理解されている場合に最も有用である。HACCP分析のアウトプットは製造工程やその他のライフサイクルの各段階における重要点のモニタリングを容易にするリスクマネジメント情報である。

Ⅰ.6 潜在危険及び作動性の調査(HAZOP)

HAZOP(IEC 61882参照)は、リスク事象は設計や操作の意図から逸脱することが原因であるということを前提とする理論に基づく。いわゆる「指針用語」を使ってハザードを特定する系統立ったブレーンストーミング技術である。「指針用語」(「No」「More」「Other Than」「Part of」等)は、通常使用や設計意図からの潜在的な逸脱を特定するのに役立つ関連パラメータ(汚染、温度等)に適用される。HAZOPではプロセス又は製品の設計およびその適用に精通する専門家のチームがしばしば必要になる。

適用分野

HAZOPは、原薬及び製剤の製造工程(外部委託生産、製剤及び上流の納入業者を含む)、設備、施設に適用することができる。製薬企業では、主としてプロセスの安全ハザード評価のために使われてきた。HACCP同様、HAZOP分析のアウトプットはリスクマネジメントのための重要操作の一覧である。この一覧によって製造工程における重要管理点の通常モニタンリングが容易になる。

Ⅰ.7 予備危険源分析(PHA)

PHAは、所与の活動、施設、製品又はシステムに対して、将来のハザード、危険な状態及び危害を引き起こしうるような事象を特定する時やそれらの発生確率を推定する時に、ハザード又は欠陥についてこれまでに得られている経験又は知識を適用する分析手法である。この手法は、1)そのリスク事象が発生する可能性の特定、2)発生した場合の傷害や、健康への被害の程度の定性的な評価、3)重大性と発生の可能性との組み合わせによる当該ハザードの相対的な順位付け、4)可能な改善措置の決定、の4項目から構成されている。

適用分野

PHAは、より明確な技法が使えない事情がある際に、既存のシステムの解析やハザードを優先付けする場合に有用であろう。この手法は製品、プロセス、施設設計に使われ、また、一般的な製品のタイプ、次に製品クラス、そして最後に特定の製品の順にハザードの種類を評価する場合も有用である。PHAは開発プロジェクトの初期段階で、設計の詳細や操作手順について情報がほとんどない場合に最も一般的に用いられる。従って、しばしば詳細な検討を行うために先駆的に行われる。主として、PHAで特定されたハザードは、この節で述べる他のリスクマネジメント手法等により、さらに評価される。

Ⅰ.8 リスクランキングとフィルタリング

リスクランキングとフィルタリングは、リスクを比較し、ランク付けする手法である。複雑なシステムのリスクランキングには、典型的に、個々のリスクについての複数の多様な定量的、定性的な因子の算定が必要である。この手法は、リスクに関する基本的な質問を、そのリスクに含まれる因子を把握するのに必要なだけ多くの要素に分解する過程を含む。これらの因子は一つの相対的なリスク点数にまとめられ、その点数がリスクのランキングに用いられる。「フィルター」は重み付け係数、又はリスク点数に対する切捨ての形で用いられ、マネジメントや方針決定に対しリスクランキングを行うときの尺度調整に用いられる。

適用分野

リスクランキングとフィルタリングは規制当局や企業によって、査察/監査を行うときに製造所の優先順位付けとして用いることができる。リスクランキングの方法は、リスクの組み合わせや管理されるべき潜在的リスク結果が多様であり、かつ単独の手法を使っての比較が困難な場合に特に役立つ。リスクランキングは、管理者が同じ組織の枠組みの中で定量的なリスク評価と定性的なリスク評価の両方を行う必要がある場合にも有用である。

Ⅰ.9 支援統計手法

統計手法の使用によって、品質リスクマネジメントの実施が容易になる。また、有効なデータアセスメントの実施やそれぞれのデータセットの重要性の判断ができるようになるとともに、より信頼性の高い意思決定を促進することができる。製薬企業で一般に行われる主要な統計手法の一覧を下記に示す。

・ 管理図

(例)

-受容管理図(ISO 7966参照)

-算術平均及び警告値を有する管理図(ISO 7873参照)

-累積図(ISO 7871参照)

-シューハート管理図(ISO 8258参照)

-加重移動平均

・ 実験計画法(DOE)

・ ヒストグラム

・ パレート図

・ 工程能力分析

付属書Ⅱ:品質リスクマネジメントの潜在用途

本付属書は、企業と規制当局双方が、品質リスクマネジメントの原則と手法を使用すると考えられる例を確認することを意図している。しかしながら、どの個別のリスクマネジメント手法を選択するかは具体的な事象やそれを取り巻く状況に完全に依存する。

以下の例は実例を示すために提示され、品質リスクマネジメントが使用されると考えられるものを提案している。この付属書により、現行の規制要件を越えた新たな要件の創出を意図するものではない。

Ⅱ.1 統合された品質マネジメントの一環としての品質リスクマネジメント

文書化

現行の法的要求事項の解釈と適用についてレビューする。

必要事項を決定する、及び/又は標準操作手順書、指針等の内容を発展させる。

訓練及び教育

担当者の学歴、経験、作業習慣、及び以前受けた訓練の定期的な評価(効果判定等)に基づく初期及び/又は継続訓練の適切さを決定する。

製品の品質に悪影響を及ぼすことなく、従業員が確実な操作を行えるようにするための訓練、経験、資格、身体的能力を明確化する。

品質欠陥

品質欠陥の疑いのあるもの、苦情、傾向、逸脱、原因調査、規格外試験値等から、潜在的に品質に影響を及ぼすと思われる事項を特定、評価、コミュニケーションするための基礎を提供する。

規制当局と共同し、リスクコミュニケーションを推進して重大な製品欠陥問題を解決するための適切な行動を決定する(回収等)。

監査/査察

以下の因子を考慮に入れ、内部、外部を問わず、監査の頻度と範囲を定める。

・ 既存の法的要求事項

・ その企業又は施設の過去の総合的な法令遵守の状況

・ 企業の品質リスクマネジメント活動の頑健性

・ 工場の複雑さ

・ 製造工程の複雑さ

・ 製品とその治療上の重大性の複雑さ

・ 不良品の数と重大さ(回収等)

・ これまでの監査/査察の結果

・ 建物、装置、工程、主担当者の大きな変更

・ 製品の製造の経験(生産頻度、量、バッチ数等)

・ 監督をする公的な試験所での検査結果

定期的なレビュー

製品品質の照査の中で、データの経時的結果を選び、評価、解釈する。

モニターした(再バリデーションやサンプリング方法変更のための評価の元となる)データを判断する。

変更マネジメント/変更管理

製剤開発研究と製造の過程で蓄積された知識や情報に基づいた変更を運用管理する。

その変更が最終製品の安定供給に及ぼす影響を評価する。

施設、装置、材料、製造工程の変更や、技術移転が製品品質に及ぼす影響を評価する。

変更の実施に先立って行われるべき適切な対応策(追加試験、(再)適格性評価、(再)バリデーション、規制当局とのコミュニケーション等)を決める。

継続的な改善

製品ライフサイクルを通じて、各プロセスにおける継続的な改善を促進する。

Ⅱ.2 規制当局の業務活動の一環としての品質リスクマネジメント

査察・審査業務

例えば査察の計画及び頻度、査察及び審査の程度等に対応する資源(人員等)を配置する事で支援する(付属書Ⅱ.1「監査/査察」の項を参照)。

例えば品質欠陥、回収の可能性、査察での所見等が持つ重大さを評価する。

査察後の規制当局の事後処理の種類や妥当性を定める。

企業から提出された製剤開発情報を含む情報を評価する。

提案された承認変更や変更による影響を評価する。

リスクがどのように制御されうるのか、又は制御されているかについて(パラメトリックリリースやプロセス解析工学(PAT)等)の理解を深める目的で査察官と審査官との間で伝達・連携を取るべきリスクを特定する。

Ⅱ.3 開発の一環としての品質リスクマネジメント

高品質の製品と求められる特性を備えた製品を一貫して供給することのできる製造工程を設計する.(ICH Q8参照)。

幅広い物質特性(例えば、粒度分布、水分含量、流動特性等)、製造法の選択肢、及び製造工程のパラメータに対する製品挙動に関する知識を深める。

原材料、溶媒、原薬の出発原料、原薬、添加剤、包装材料の重要な特性を評価する。

適切な規格を確立し、重要工程パラメータを特定し、工程管理を確立する。(例えば、品質特性が持つ臨床的重大性及び製造工程における当該品質特性を管理する能力に係わる製剤開発研究からの情報を用いる)

品質特性の変動を抑制する。

・ 製品や材料の不良の低減

・ 製造時の不良の低減

スケールアップや技術移転に関連した追加検討項目(生物学的同等性、安定性等)の必要性を評価する。

「デザインスペース」の概念を活用する(ICH:Q8参照)。

Ⅱ.4 施設、設備、ユーティリティのための品質リスクマネジメント

施設/設備の設計

建物や施設を設計する際、適切な管理区域を定める。

(例)

・ 物と人の動線

・ 汚染の最小化

・ 防虫管理方法

・ 混同の防止

・ 開放系装置か閉鎖系装置か

・ クリーンルームかアイソレータ技術か

・ 専用又は分離された施設/設備か

等。

製品に直接接触する装置や容器類の適切な材質を決める(例えばステンレススチールの種類、ガスケット、潤滑剤の選定)。

適切なユーティリティを決める(例えば蒸気、ガス、電力源、圧縮空気、空調システム(HVAC)、水)。

関係する設備に対して、予防保全のための適切なメンテナンス方法を決める(例えば必要な予備部品の在庫)。

施設の衛生についての側面

製品を化学的、微生物的、物理的ハザード等を含む作業環境起因のハザードから守る(例えば適切な作業着と更衣、衛生的配慮)。

製造中の製品に関連するハザードが起こる環境(例えば作業員や、交差汚染の可能性)となることを防ぐ。

施設/設備/ユーティリティの適格性確認

施設、建物、製造設備及び/又は試験機器に対する適格性確認の範囲と程度を定める(正しいキャリブレーション方法を含む)。

設備の洗浄及び環境管理

使用目的に応じて、取り組み方法及び意思決定を区別する(複数製品対応設備に対して専用設備、バッチ生産に対して連続生産等)。

洗浄バリデーションの規定された残存許容量を決める。

キャリブレーション/予防保全

適切なキャリブレーション及びメンテナンスの日程を決める。

コンピューターシステム及びコンピュータ制御された装置

コンピュータのハード及びソフトウェアの設計を選択する(例えばモジュール化、構造化プログラミング、不具合への許容度合い)。

バリデーションの範囲を決める。

(例)

・ 重要な性能パラメータの特定

・ 要求性能及び設計の選択

・ プログラミングコードの見直し

・ テスト範囲とテスト方法

・ 電子記録と電子署名の信頼性

等。

Ⅱ.5 資材管理の一環としての品質リスクマネジメント

供給業者と受託製造業者の査定や評価

供給業者や受託製造業者の包括的な評価をする(例えば監査、供給業者との品質協定書)。

出発原料

出発原料の変動に関係して起こりうる差異や、想定される品質に係るリスクを評価する(例えば経年、合成経路)。

原材料の使用

隔離保管中の原料の使用が適切であるかどうかの決定を行う(例えば製造所内で更に製造を行う際)。

再加工、再処理、返品の使用の適格性を決定する。

保管、物流、配送条件

適切な保管や輸送の条件(例えば温度、湿度、容器設計)が正しく維持管理がされているかどうかを評価する。

他のICHガイドラインと連動して、保管や輸送の条件(例えばコールドチェーン管理)の不一致による製品品質への影響を判断する。

基盤を維持する(例えば適切な出荷条件、一時保管、有害物質や規制物質の取り扱い、通関許可を保証する能力)。

医薬品の安定供給を保証するための情報を提供する(例えばサプライチェーンにおけるリスク評定)。

Ⅱ.6 生産の一環としての品質リスクマネジメント

バリデーション

検証、適格性確認及びバリデーション(例えば分析方法、製造工程、装置及び洗浄方法)の適用範囲や程度を明確にする。

フォローアップの程度を決める(サンプリング、モニタリング、再バリデーション等)。

バリデーション研究の設計を促進するため、重要工程とそれ以外の工程とを区別する。

工程内サンプリングと工程内検査

工程内検査の頻度と程度を評価する(例えば実績のある管理条件下で試験削減の正当化を行う)。

パラメトリックリリース及びリアルタイム出荷に連動したプロセス解析工学(PAT)の使用を評価し、正当化する。

生産計画

妥当な生産計画を策定する(例えば、専用生産、キャンペーン生産、同時生産製造計画)。

Ⅱ.7 試験検査室管理及び安定性試験の一環としての品質リスクマネジメント

規格外試験結果

規格外試験結果の調査の過程で可能性のある根本原因と是正措置を明確にする。

リテスト期間/有効期限

中間体、添加剤、出発原料の保存や試験の適格性を評価する。

Ⅱ.8 包装及び表示の一環としての品質リスクマネジメント

包装設計

一時包装された製品を保護するための二次包装を設計する(例えば製品の真正性、ラベルの明瞭性を保証する等)。

容器施栓系の選択

容器施栓系の重要因子を決定する。

ラベルの管理

違う製品のラベルや、同じラベルの異なるバージョンの混同が起こる可能性を考慮して、ラベル管理手順を策定する。