添付一覧
○製剤開発に関するガイドライン
(平成18年9月1日)
(薬食審査発第0901001号)
(都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
新医薬品の製造販売承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成については、平成13年6月21日付け医薬審発第899号厚生労働省医薬局審査管理課長通知「新医薬製品の製造又は輸入の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成要領について」、平成15年7月1日付け薬食審査発第0701004号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「「新医薬品の製造又は輸入の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成要領について」の一部改正について」及び平成16年5月25日付け薬食審査発第0525003号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「『新医薬品の製造又は輸入の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成要領について』の一部改正について」(以下「CTD通知」という。)により通知したところですが、今般、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において「製剤開発に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)が別添のとおりとりまとめられたので、下記事項を御了知の上、貴管内関係業者等に対し周知方御配慮願います。
記
1.本ガイドラインの要点及び留意事項
(1) 本ガイドラインは、CTD通知により提出される承認申請資料のうち、3.2.P.2「製剤開発の経緯」の項において推奨される記載内容を示すものであること。
(2) 本ガイドラインは、上記「製剤開発の経緯」の項において、製品及びその製造工程の開発に対して科学的手法と品質リスクマネジメントを適用することで得られた知識を提示する機会を提供するものであること。品質リスクマネジメントについては、平成18年9月1日付け薬食審査発第0901004号・薬食監麻発第0901005号厚生労働省医薬食品局審査管理課長・監視指導麻薬課長通知「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」を参考にされたい。
(3) 本ガイドラインに従い検討が行われたデザインスペースを適用し承認申請を行う場合には、当該デザインスペースを製造販売承認申請書の対応する箇所に記載すること。記載に際しては平成17年2月10日付薬食審査発第0210001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「改正薬事法に基づく医薬品等の製造販売承認申請書記載事項に関する指針について」に準拠すること。
2.適用時期
平成18年12月1日以降に申請される医薬品の承認申請について適用すること。ただし、適用期日の前に本ガイドラインに基づいた承認申請資料を提出することは差し支えない。
別添:
製剤開発に関するガイドライン
目次
1.はじめに
1.1 本ガイドラインの目的
1.2 適用範囲
2.製剤開発の経緯
2.1 製剤成分
2.1.1 原薬
2.1.2 添加剤
2.2 製剤
2.2.1 製剤設計
2.2.2 過量仕込み
2.2.3 物理的化学的性質及び生物学的性質
2.3 製造工程の開発経緯
2.4 容器及び施栓系
2.5 微生物学的観点から見た特徴
2.6 溶解液や使用時の容器/用具との適合性
3.用語
1.はじめに
1.1 本ガイドラインの目的
本ガイドラインは、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)M4コモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)様式で規制当局に提出される資料のうち、3.2.P.2「製剤開発の経緯」の項において推奨される記載内容を述べたものである。
「製剤開発の経緯」の項においては、製品及びその製造工程の開発に対して科学的手法と品質リスクマネジメント(定義についてはICHQ9を参照)を適用することで得られた知識を提示する機会が提供されることとなる。「製剤開発の経緯」の項は、製造販売承認申請のためにまず作成されるが、製品のライフサイクル*を通じて新たな知識が得られた場合は、これを更新することができる。「製剤開発の経緯」の項は、審査官及び査察官が製品及びその製造工程を総合的に理解できるように設けたものである。本ガイドラインは、製剤学の製造科学の観点から理解が進んだことを証明できた場合に、規制の弾力的な取組みを行うための基盤となる領域を示す。規制の弾力性の程度は、提示した関連する科学的知識のレベルによって決まる。
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*定義については用語集を参照のこと。
1.2 適用範囲
本ガイドラインは、CTD(ICHガイドラインM4)モジュール3の適用範囲において定義されている製剤に対して、3.2.P.2「製剤開発の経緯」の項における記載内容に関する指針を示すことを目的とするものである。本ガイドラインは、医薬品の臨床開発段階において提出される、製剤に関わる記載内容には適用されない。しかし、臨床開発段階においても、本ガイドラインの原則を考慮することは重要である。また、本ガイドラインは、上記以外の製剤に適用可能な場合がある。申請者は、ある特定の種類の医薬品に対する本ガイドラインの適用の可否について、規制当局に相談することができる。
2.製剤開発の経緯
製剤開発の目的は、適正な品質を有する製品を設計すること、及び意図した機能を有する製品を一貫して供給できる製造工程を設計することである。製剤開発研究や製造経験を通して得られた情報や知識により科学的理解が深まり、これがデザインスペース*、規格、及び製造管理の確立に役立つ。
製剤開発研究から得られた情報を品質リスクマネジメントの基盤とすることが可能である。品質*は、製品になってから検証するものではなく、製品設計によって製品に組み込まれているべきであるとの認識は重要である。開発過程やライフサイクルマネジメントにおいて製剤処方や製造工程の変更を行うことは、知識を深めてデザインスペースの確立をさらに進める機会となるとみなしてもよい。また、予測しない結果がもたらされた場合、その実験から得られた関連する知識を示すことも有用となる。デザインスペースは申請者が提案し、規制当局がその評価を行って承認する。このデザインスペース内で運用することは変更とはみなされない。デザインスペース外への移動は変更とみなされ、通常は承認事項一部変更のための規制手続きが開始されることになる。
「製剤開発の経緯」の項には、選択した剤形の種類や提示した製剤処方が用途に適していることを立証するような知識を示すべきである。ここでは、製剤とその製造工程の開発について理解を深めるために、十分な情報を各パートに記載する。要約表や図式によって、情報を明確化することができ審査を円滑化できる場合には、それらを用いることが望ましい。
最低限記載が必要な事項としては、原薬、添加剤、容器及び施栓系、製造工程に関わる性質のうち製品の品質にとって重要なものを特定し、それらを管理する戦略の妥当性を示すことが挙げられる。一般に、その製剤処方の特性と工程パラメータが重要であるかは、その変動が製剤の品質に及ぼし得る影響の程度を評価して特定する。
以上のような情報に加えて申請者は、原料特性、代替の操作、製造工程パラメータなどの製品性能に関する知識をより広い範囲にわたってさらに深めることができるような製剤開発研究を実施することも可能である。この項にこれらの追加情報を含めることで、原料の特性、製造工程や工程管理に対しさらに高度の理解を得ていることを示すことができる。このような科学的理解は、デザインスペースを拡大することを推し進める。このような場合には、規制当局の取組みがより弾力的なものとなる機会につながり、それは例えば次のような点が考えられる。
・リスクに基づいた規制当局の判断(審査及び査察)
・追加の審査を受けることなく、承認書に記載されたデザインスペース内で製造工程を改善すること。
・承認後申請の低減
・最終の製品出荷試験の減少につながる「リアルタイム」の品質管理
このような規制の取り組みの弾力性を実現するために、申請者は、原料特性、製造処理法及び製造工程パラメータがある一定の範囲内にある場合の製品性能に関するより多くの知識を提示する必要がある。このような情報は、例えば正式な実験計画*、プロセス解析工学(PAT)*や/あるいはそれまでの知識を適用することで得られる。品質リスクマネジメントの原則を適切に適用すれば、こうした知識を収集するために追加で実施される製剤開発研究の優先順位付けに役立つこととなる。
製剤開発研究は、それが意図する科学的目的に沿って計画、実施する必要がある。データの量ではなく、得られた知識のレベルが、科学的根拠に基づく申請と規制当局による評価の基盤となるということをよく認識しておくことが期待されている。
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*定義については用語集を参照のこと。
2.1 製剤成分
2.1.1 原薬
本項においては、製剤の性能と製造性に影響しうるような、あるいは、(固体状態での物性のように)特別に設計されたような原薬の物理的化学的及び生物学的性質を特定し考察する。検討されるべき物理的化学的及び生物学的性質の例としては、溶解度、水分含量、粒子径、結晶特性、生物活性、膜透過性などが挙げられる。これらの性質は相互に関連している可能性があり、組み合わせて考えなければならない場合もある。
製剤性能に及ぼす原薬の物理的化学的性質の潜在的影響を評価するために、製剤に関する試験が必要となる場合がある。例えば、「ICHQ6A:新医薬品の規格及び試験方法の設定」には、推奨されるいくつかの製剤研究の事例が示されている(フローチャート#3と#4(パート2))。この手法は、「ICHQ6B:バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品の規格及び試験方法の設定」についても同様に適用される。製剤性能に及ぼす原薬の影響を調べることによって得られた知識は、必要に応じて、原薬の規格及び試験方法(3.2.S.4.5)の妥当性を示すために用いることができる。
この項では、原薬と3.2.P.1項に示した添加剤との配合適性を評価する必要がある。複数の原薬を含む製剤については、原薬相互間の配合適性について考察するべきである。
2.1.2 添加剤
選択された添加剤、それらの濃度、及び製剤の性能(例えば、安定性、生物学的利用能など)や製造性に影響する可能性のある添加剤の性質について、それぞれの添加剤の各機能に関連付けて考察する。これには、製剤の製造に用いたすべての物質(加工助剤なども含める)を、最終製品に含まれるか否かにかかわらず含めるべきである。(例えば、保存剤を2成分組み合わせて使用する場合など)添加剤と他の添加剤の配合適性についても適宜記述する。添加剤(酸化防止剤、膜透過性促進剤、崩壊剤、放出制御剤など)に関して、それらが目的とする機能性を発揮し、かつ製剤の有効期間を通じて役割を果たし得る能力を示す。添加剤の性能に関する情報は、必要に応じて、添加剤の選択と品質特性を証明するため、さらには製剤の規格及び試験方法(3.2.P.5.6)の妥当性を立証するために用いることができる。
添加剤の安全性に関する情報は、必要に応じて、相互参照する(3.2.P.4.6)。
2.2 製剤
2.2.1 製剤設計
申請する用法や投与経路を考慮して、製剤の品質にとって重要な性質の特定を含めた製剤開発の要約をこの項において記述する。製剤の品質を確保する上で重要となり得る―特に意味のある変数や相互に作用する変数を特定するに当たっては、正式な実験計画から得られた情報が有用となる。
この項では、最初のコンセプトから最終設計までの製剤設計の変遷に焦点を当てて要約する。また、この要約では製剤構成要素の選択(原薬、添加剤、容器及び施栓系、関連する投与デバイスの性質など)や製造工程を検討し、類似する製剤の開発で得られた知識も必要に応じて考慮に入れる。
製造処方中の添加剤量や特性の範囲については(3.2.P.3.2)、申請資料のこの項でその妥当性を示すべきである。この妥当性の根拠として、開発中または製造中に得られた経験を使用できることが多い。
臨床での安全性と有効性に関する試験、生物学的利用能試験または生物学的同等性試験に用いた製剤処方の要約を示す必要がある。申請した市販用製剤と主要臨床試験用のロット、申請用安定性試験で用いた製剤との相違を明示し、その変更の妥当性を示す。
臨床試験用製剤と3.2.P.1項に記載した申請された市販用製剤とを関連づける、in vitro比較試験(溶出試験など)またはin vivo比較試験(生物学的同等性試験など)から得られた情報については、この項において要約し、当該試験との相互参照(試験番号付き)を示す。in vitro/in vivo相関の確立を試みた場合、これらの試験結果と当該試験についての相互参照(試験番号付き)をこの項に示す。in vitro/in vivo相関が確立された場合、それは適切な溶出試験の規格値を選択するのに役立つであろうし、製剤や製造工程の変更後に必要となる生物学的同等性試験を減らすことを可能にするかもしれない。
通常とは異なる製剤設計(錠剤の割線、過量充填、製剤に影響する偽造防止対策など)についてはいずれもそれを明示し、その使用についての妥当性を示す。
2.2.2 過量仕込み
製造中、製品の有効期間内の分解を補償するために、または有効期間を延長するために原薬の過量仕込みを行うことは一般に勧められない。
製剤製造中の過量仕込みは、最終製品中に過量として残るか否かにかかわらず、製品の安全性と有効性を考慮したうえで正当な理由が示されるべきである。提供される情報としては、1)過量仕込み量、2)過量仕込みの理由(想定されており、且つ文書化された製造工程中の損失量を補填するためなど)、3)過量分についての妥当性、が挙げられる。3.2.P.3.2項の製造処方に示す原薬の量には、過量分も含める必要がある。
2.2.3 物理的化学的性質及び生物学的性質
製剤の安全性や性能、製造性に関わる物理的化学的性質及び生物学的性質を特定し考察すること。この考察には、原薬及び製剤特性の生理学的影響も含める。吸入剤の吸入可能量に関する試験法開発などの研究を行うことも考えられる。同様に、溶出試験と崩壊試験のどちらを選択するか、または他の手段を用いて薬剤溶出を保証するかを判断する裏付け情報や、選択した試験に関する開発やその妥当性についてもこの項に示すことができる。「ICHQ6A:新医薬品の規格及び試験方法の設定」のフローチャート#4(パート3)及びフローチャート#7(パート1)、または「ICHQ6B:バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品の規格及び試験方法の設定」も参照されたい。これら考察の記載に当たっては、3.2.P.8.3項に記載された安定性データを相互参照する。
2.3 製造工程の開発経緯
3.2.P.3.3項に記載される製造工程の選択、製造工程管理、及び製造工程の最適化(商業生産を想定したロットなど)を説明する。製造工程の選択についての説明、あるいは構成成分の妥当性を確認するために、利用可能な代替製造方法とともに、重要な製剤特性を考慮することは重要である。当該製品の製造に用いる装置の妥当性もここで考察する。製造工程開発の検討は製造工程の改善、工程バリデーション、断続的工程確認*(適用される場合)、及び必要な工程管理の論拠となるべきものである。このような検討では、物理的及び化学的性質に加えて、必要に応じて微生物学的性質も扱う必要がある。工程開発の検討から得られる知識は、必要に応じて「製剤の規格及び試験方法の妥当性(3.2.P.5.6)」を説明するために用いることができる。
製造工程開発プログラムまたは工程改善プログラムでは、製品の望ましい品質を確保するためにモニタリングまたは管理が必要となる重要な工程パラメータ(造粒終点など)を特定する必要がある。
無菌であることが必要となる製品については、製剤と一次包装材料の適切な滅菌方法が選択され、その選択の妥当性が示される必要がある。
主要臨床試験(安全性、有効性、生物学的利用能、生物学的同等性試験)用または申請用安定性試験用の製品ロットに使用した製造工程と3.2.P.3.3項に示した製造工程との間に重要な相違がある場合には、本項で考察する。この考察では、その相違が製品の性能、製造性及び品質に及ぼす影響を要約する。関連情報は、製造工程と当該ロット分析情報を比較しやすい方法で示すべきである(3.2.P.5.4)。この情報には、例えば(1)生産したロットの識別情報(ロット番号など)と使用目的(生物学的同等性試験用ロット番号など)、(2)製造場所、(3)ロットサイズ、(4)装置の重要な違い(設計、操作原理、サイズの違いなど)を含める。
将来、工程の最適化を柔軟に行うことができるようにするため、製造工程の開発経緯を記述する際に、重要特性または工程のエンドポイントをモニタリングできる計測システムを記述しておくことが有効である。製造工程の開発中に製造工程のモニタリングデータを収集することは、製造工程の理解を促進するのに有用な情報を提供することとなる。工程の調整を通して重要な要因のすべてを確実に管理できる工程管理戦略を示す必要がある。
意図した品質の製品を確実に生産する工程の能力(異なる操作条件、異なる製造スケールまたは異なる装置を用いた場合の製造工程の性能など)に関する評価結果をこの項に示すことができる。工程の頑健性*に対する理解があれば、リスク評価とリスク低減(「ICHQ9:品質リスクマネジメント」の定義を参照)に有用であり、将来の製造と工程の改善、特にリスクマネジメントツールを用いた改善に役立てることができる(「ICHQ9:品質リスクマネジメント」を参照)。
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*定義については用語集を参照のこと。
2.4 容器及び施栓系
市販製品の容器及び施栓系(3.2.P.7項に記載)について、その選択および選択の理由を本項で考察する。製剤の使用目的に適合しているか、容器及び施栓系が保存や輸送(出荷)に対して適切であるか、適宜、バルク製剤の保管や出荷に使用した容器も含めて、考察を記述する。
一次包装材料については、その選択の妥当性を示す。容器及び施栓系の完全性を示すために実施した試験については、その考察をここに記述する。製品と容器あるいはラベルとの相互作用に関する考察があれば、これを記載する。
一次包装材料の選択においては、例えば、素材の選択、水分や光からの保護、構成する材料と投与剤形との適合性(容器への吸着や容器からの溶出を含む)、構成する材料の安全性等が考慮されるべきである。適宜、二次包装材料の妥当性についても示される必要がある。
投与デバイス(滴下ピペット、ペン型注射器、ドライパウダー吸入器など)を用いる場合、製品使用状況にできる限り近い試験条件下で正確な用量を再現性をもって投与できることを証明することが重要である。
2.5 微生物学的観点から見た特徴
必要に応じて、製剤の微生物学的観点から見た特徴については、この項(3.2.P.2.5)で考察する。この考察には、例えば以下の様なことを含む。
・非無菌製剤についての微生物限度試験を実施するか否かの根拠(「ICHQ6A:新医薬品の規格及び試験方法の設定:化学物質」のフローチャート#8、「ICHQ6B:バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品の規格及び試験方法の設定」など)。
・抗菌性保存剤を含有する製品について、保存剤の選択理由とその有効性、あるいは本来抗菌性である製品についてはその抗菌有効性
・無菌製剤については、微生物汚染防止に関する容器及び施栓系の完全性
保存剤の含量に関わる化学試験は、通常、製品規格に設定される項目であるが、保存剤の抗菌有効性は製剤開発過程で実証すべきである。抗菌性保存剤の規格下限濃度についても、保存効力試験法によってその濃度が微生物の繁殖抑制に有効であることを示すべきである。使用する濃度が有効性及び安全性の面で妥当であることを示す必要がある。たとえば、製品に設定している有効期限を通して必要とされる有効性を保つために、最低限必要な濃度の保存剤が使用されていることなどを示す。必要に応じて、患者が使用する条件にできる限り近い条件下での微生物負荷試験を開発中に行い、この項に示すこと。
2.6 溶解液や使用時の容器/用具との適合性
添付文書などに適切で有益な情報を提供するために、製剤と溶解液との配合性(沈殿、安定性など)をここで扱う。この情報では、推奨される温度及び想定される希釈濃度域において、推奨される使用時の有効期間についても示されるべきである。同様に、投与前に製品の混合または希釈を行う場合には(大容量の輸液容器に添加する製品など)、その点について言及することが必要になる。
3.用語
継続的工程確認:
製造工程の性能を継続的にモニタリングし評価する、工程バリデーションの代替法。
デザインスペース:
品質を確保することが立証されている入力変数(原料の性質など)と工程パラメータの多元的な組み合わせと相互作用。このデザインスペース内で運用することは変更とはみなされない。デザインスペース外への移動は変更とみなされ、通常は承認事項一部変更のための規制手続きが開始されることになる。デザインスペースは申請者が提案し、規制当局がその評価を行って承認する。
正式な実験計画:
工程に影響する諸要因と、その工程のアウトプットとの関係を判断するための構造化・組織化された方法。「実験計画法」としても知られる。
ライフサイクル:
初期開発から市販を経て製造販売中止に至るまでの製品寿命の全過程。
プロセス解析工学(工程解析システム)(PAT):
最終製品の品質保証を目標として原材料や中間製品/中間体の重要な品質や性能特性及び工程を適時に(すなわち製造中に)計測することによって、製造の設計、解析、管理を行うシステム。
工程の頑健性:
ある工程が、材料の変動性や工程自体及び装置の変更に対して、品質にマイナスの影響を与えることなく耐えられることを示す。
品質:
原薬または製剤がその用途に適合している程度のこと。この用語には、確認試験、力価、純度などの性質が含まれる(「ICHQ6A:新医薬品の規格及び試験方法の設定」より)。