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○清涼飲料水中のベンゼンについて

(平成18年7月28日)

(食安基発第0728008号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知)

先般、米国等において、安息香酸及びアスコルビン酸の両剤を添加した清涼飲料水からベンゼンが検出されたとの情報を入手したため、我が国で流通する同様の清涼飲料水について試験を行ったところ、別紙のとおりベンゼンが検出された。

現時点において、これらの製品におけるベンゼンの生成機序については明らかになってはいないが、これまでの諸外国の報告によると、当該製品に添加された安息香酸及びアスコルビン酸がベンゼンの生成に関与しているという見解が多勢を占めている。

ついては、安息香酸及びアスコルビン酸の両剤を添加した清涼飲料水を取り扱う食品等事業者においては、必要に応じ自社が取り扱う製品の実態を把握する等、所要の措置を講じていただきたいと考えており、関係団体には、この旨お願いしているところである。

なお、今般、別添のとおり本件に係るQ&Aを作成したので、上記要請及び当該Q&Aを貴管下の関係事業者への周知徹底方よろしくお願いする。

別紙

清涼飲料水中のベンゼンの分析調査(7月21日現在)

対象製品:安息香酸及びアスコルビン酸の両者が添加された清涼飲料水31製品

分析方法:ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析

結果:

 

製品数(件)

内訳(件)

検出値(ppb)

直接飲用

20

19

〈1~7.8

1

73.6

希釈用

11

11

〈1~2.4

 

31

〈1~73.6

※10ppbを超過した製品概要

製品名:アロエベラ

販売業者:(株)ディーエイチシー(DHC)(東京都港区)

検出されたベンゼン濃度:73.6ppb(3検体平均)

清涼飲料水中のベンゼンに関するQ&A

問1 ベンゼンが検出された清涼飲料水を飲んでも大丈夫ですか。

厚生労働省が行った分析調査の結果、1製品から水道水質基準及びWHOの飲料水ガイドライン(第3版)のガイドライン値(10ppb)を超えるベンゼンを検出したことから、念のため、当該製品の販売者に対し、事実の公表、製品の回収や今後の製品の改良などを行うよう要請したところです。

このWHO飲料水ガイドライン値10ppbを清涼飲料水の指導に当たっての判断基準に用いたのは、飲料水として摂取される水分の一部が清涼飲料水に置き換わることを考慮した場合、飲料水の基準を清涼飲料水に準用することは妥当であると考えているからです。

また、比較的高い濃度のベンゼンが検出された清涼飲料水を一時的に摂取することについては、このガイドライン値が飲料水を生涯摂取したときのリスクを考慮しており、ガイドライン値を超える清涼飲料水をある一定量摂取していたとしても、特段の健康影響を生ずるということを意味するものではないこと。更に海外における清涼飲料水中のベンゼンへの対応に関する情報にあるように、ヒトのベンゼンの摂取源の大半が環境由来(大気)であるということより、環境由来のリスクに比して食品由来のリスクは低いものと考えられており、食品からの摂取に多少の増大があったとしても、リスクの増大への寄与は少ないものと考えられております。

※ FSANZ(オーストラリア・ニュージーランド食品基準局)の情報

http://www.foodstandards.gov.au/mediareleasespublications/factsheets/factsheets2006/benzeneinflavouredbe3244.cfm

問2 ベンゼンとはどのような物質ですか。

ベンゼンは、染料、合成ゴム、合成洗剤等の製造時に使用される化学物質で、常温では無色の液体です。また、環境中に広く存在しており、自動車の排気、石炭や石油の燃焼で空気中に排泄されており、呼吸によって摂取されています。また、喫煙による摂取についても指摘されています。

ベンゼンの健康影響に関しては、本物質は、IARC(国際がん研究所)が、「ヒトに対して発がん性がある」(グループ1)として分類しています。

なお、ベンゼンに関する詳細については、環境省が作成している「化学物質ファクトシート」に記載されておりますので、ご参照ください。

※ 化学物質ファクトシート(環境省作成)

http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html

問3 今回、清涼飲料水中のベンゼンに関する調査が行われたきっかけは何ですか。また、なぜ、清涼飲料水中にベンゼンが含まれるのですか

米国、イギリス等において、本年3月頃から、製品中に保存料である安息香酸(塩)*1と酸味料及び酸化防止剤であるアスコルビン酸*2の両方を添加された清涼飲料水において、ベンゼンを検出する可能性があることが指摘されており、これらの国において実態調査が開始されました。

これらの調査結果において、実際に製品中からベンゼンが検出され、それぞれの国で自主的な回収などの対応が公表された事例が3月末から6月にかけて明らかになり、日本においても、調査研究の必要性が検討されました。

これまでの諸外国等における調査・研究においては、その生成機序の詳細は、判明しておりませんが、清涼飲料水中に安息香酸(塩)及びアスコルビン酸が含まれた場合に、微量のベンゼンを生成する可能性があるとしています。

※1 安息香酸(塩)とは・・・1608年に発見され、静菌作用があることから、古くから保存料として用いられているものです。我が国では1948年に食品添加物として「安息香酸」及び「安息香酸ナトリウム」が指定されています。それぞれに使用できる食品と使用できる量(使用限度)が定められており、清涼飲料水に対する使用限度は、いずれも安息香酸として、0.60g/kgまでとされています。

※2 アスコルビン酸(ビタミンC)とは・・・アスコルビン酸(ビタミンC)は、果実などに含まれる必須栄養素の一つで、栄養強化や酸化防止を目的とした食品添加物としても使用されています。我が国では1957年に「L―アスコルビン酸」として指定されています。

問4 我が国に清涼飲料水中のベンゼンに関する基準はありますか。

我が国においては、清涼飲料水にベンゼンに関する基準はありませんが、水道水に10ppmの基準値があります。また、国際的には「WHO飲料水ガイドライン(第3版)」において飲料水に10ppbのガイドライン値が定められています。

(参考)「水道水質基準の見直しにおける検討概要(平成15年4月)」(ベンゼン)

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/k20.pdf

※ ppd 10億分の1の分率を表す単位。

問5 我が国の清涼飲料水におけるベンゼンの分析結果はどのようなものでしたか。

清涼飲料水中のベンゼン汚染に関する実態調査については、関係各企業において適宜実施されていますが、念のため、厚生労働省において、本年5月から、国内流通する安息香酸(塩)とアスコルビン酸の両者が添加されている清涼飲料水のベンゼンの分析調査を実施してきました。

その結果、31製品のうち、1製品から我が国の水道水の基準値及びWHOの飲料水ガイドライン(第3版)のガイドライン値(10ppb)を超えるベンゼンが検出されました(表1)。

なお、今回用いたベンゼンの試験法の詳細は、別紙1のとおりです。

表1 清涼飲料水中のベンゼンの分析調査(7月21日現在)

 

製品数(件)

内訳(件)

検出値(ppb)

直接飲用

20

19

〈1~7.8

 

1

73.6

希釈用

11

11

〈1~2.4

31

〈1~73.6

問6 諸外国で清涼飲料水中のベンゼンに関する基準はありますか。また、ベンゼンが検出された清涼飲料水はどのように取り扱われていますか。

これまでに諸外国において500検体以上の検査が行われていますが、米国及びEC等においても清涼飲料水に対して適用されるベンゼンの基準はありません。

各国が対応を行うにあたっては、自国の飲料水のベンゼンの基準値か、WHOの飲料水ガイドライン(第3版)におけるベンゼンに関するガイドライン値である10ppbを参考とし、それらを超える製品について、成分の見直しや自主回収を行うよう、製造者に対して指導等が行われています。

問7 今後、我が国ではどのような措置が講じられるのですか。

今回の検査でベンゼンの濃度が10ppbを超えていることが判明した製品については、販売者に対し、事実の公表、製品の回収や今後の製品の改良などを行うよう要請したところです。

現在、業界団体が国際清涼飲料協議会(ICBA)が作成したベンゼン生成を低減するためのガイドラインに基づき、製造方法の改善及び成分の変更を行うよう会員企業に対して指示を行っており、会員各企業においては、これらを参考に対策を講じているところです。

今後とも、厚生労働省としては、自主的な衛生対策の推進が清涼飲料水製造者によって図られるよう、業界団体・地方自治体などを通じ、指導することとしています。

※ ICBAのガイドライン

http://www.australianbeverages.org/lib/pdf/ICBABenzeneGuidanceDocumentFinal.pdf

[別紙1]

清涼飲料水中のベンゼン試験法

1.試験法の概要:清涼飲料水中のベンゼンは、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析法により定量する。

2.試験法(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析)

(1) 検体の採取と試料の調製

「食品中の食品添加物分析法第2版」の一般試料採取法を準用する.

試料を採取・保存する場合,試料採取瓶にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)張りのねじ口ガラス瓶を100℃で3時間乾燥し,キャップで密栓しておいたものを使用する.試料は,極力泡立てないように静かに採取し,瓶口まで試料を満たして密栓する1)

(2) 試料液の調製

① 炭酸飲料

50mlメスフラスコに,30w/v%水酸化ナトリウムを1ml採り,試料を加えて正確に50mlとし,検液とする.20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムを3g入れた後,検液10mlを正確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して内部標準液B 10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ試料液とする.

② 清涼飲料水濃縮液4)

50mlメスフラスコに,試料10mlを正確に採り,精製水を加えて正確に50mlとし,検液とする.20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムを3g入れた後,検液10mlを正確に加える。さらに,マイクロシリンジを使用して内部標準液B 10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ試料液とする.

③ その他の清涼飲料水

20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムを3g入れた後,試料10mlを正確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して内部標準液B 10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ試料液とする.

(3) 検量線用標準液の調製

5本の20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムをそれぞれ3gずつ入れた後,精製水10mlずつを正確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して5種類の検量線用標準原液10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ5種類の検量線用標準液とする.(検量線用標準液1mlは,それぞれベンゼンを1,2,4,10,20ngを含む).

(4) 測定法

① 測定条件5)

ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置を用い、次の条件によって測定する。

ヘッドスペース条件

バイアルオーブン温度:60℃

サンプルルーフ(ニードル)温度:130℃

トランスファーライン温度:150℃

バイアル加熱時間:25min

ガスクロマトグラフ質量分析装置条件

カラム:内径0.25mm,長さ60mのケイ酸ガラス製の細管に,25% ジフェニル・75%ジメチルポリシロキサンを1.4μmの厚さに被覆したもの,又はこれと同等の分離性能を有するもの6)

注入口温度:200℃

オーブン温度:40℃(5min)―4℃/min―120℃―8℃/min―200℃(5min)

イオン化法:EI

SIM選択イオン:m/z78,77,52(ベンゼン)

m/z96,70(フルオロベンゼン)

② 検量線

検量線用標準液のヘッドスペースガスの一定量を正確にガスクロマトグラフ質量分析装置に注入し,ベンゼン及び内部標準液のピーク高さ比又はピーク面積比から検量線を作成する.

③ 定量7)

試料液のヘッドスペースガスの一定量を正確にガスクロマトグラフ質量分析装置に注入し、得られたベンゼン及び内部標準液のピーク高さ比又はピーク面積比と検量線から試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)を求め,次式によって試料中のベンゼン含量(ng/ml)を計算する

① 炭酸飲料

ベンゼン含量(ng/ml)=(C×50)/49

C:試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)

② 清涼飲料水濃縮液

ベンゼン含量(ng/ml)=C×5

C:試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)

③ その他の清涼飲料水

ベンゼン含量(ng/ml)=C

C:試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)

試薬・試液等

1.精製水:ベンゼンを含まないもの.8)

2.メタノール:[水質試験用]又は「トリハロメタン測定用]

3.水酸ナトリウム:[特級]

4.塩化ナトリウム:[水質試験用]9)

ベンゼンを含まないもの.使用する前に,塩化ナトリウムを500℃で2時間焼成し,冷却後,汚染のない場所に密栓し保存する.

5.フルオロベンゼン標準原液:9,10)

フルオロベンゼン0.100gをメタノール10mlを入れたメスフラスコ100mlに採取し,メタノールを加えて全量を100mlとする.この溶液は,調製後,直ちに液体窒素で冷却しながらアンプルに小分けし,封入して保存する.(この液1mlはフルオロベンゼンを1mg含む).

6.内部標準液:フルオロベンゼン標準原液をメタノール少量を入れたメスフラスコに採取し,メタノールにより10倍(内部標準液A)及び100倍(内部標準液B)に希釈する.(これらの液1mlはフルオロベンゼンをA液では0.1mg,B液では0.01mgを含む).

7.ベンゼン標準原液9)

ベンゼン0.100gをメタノール10mlを入れたメスフラスコ100mlに採取し,メタノールを加えて全量を100mlとする.この溶液は,調製後,直ちに液体窒素で冷却しながらアンプルに小分けし,封入して保存する.(この液1mlはベンゼンを1mg含む).

8.ベンゼン標準液:ベンゼン標準原液をメタノール少量を入れたメスフラスコに採取し,メタノールにより10倍(ベンゼン標準液A)及び100倍(ベンゼン標準液B)に希釈する.(これらの液1mlはベンゼンをA液では0.1mg,B液では0.01mgを含む)8)

9.検量線用標準原液:少量のメタノールを加えたメスフラスコ10mlに,ベンゼン標準液B1,2,4ml及びベンゼン標準液A1,2mlを正確に採り,それぞれに内部標準液Aを正確に1mlを加え,更にメタノールを加えて正確に10mlとし検量線用標準原液とする.(これらの液1mlはそれぞれベンゼンを1,2,4,10,20μgを含む).

[注]

1)空気中に存在する揮発性物質が試料採取瓶を汚染するので、この操作を行う.室内空気の汚染が原因で,無添加試料よりベンゼンが検出される場合には,試料瓶を100℃で乾燥後,ヘリウム又は窒素ガスを用いて瓶の内側及びキャップに強く吹き付け,直ちに密栓したものを使用することが望ましい.検体開封後,ベンゼンが速やかに揮発し,試料中の濃度が急激に減少する可能性が考えられるため,原則として用時調製を行い,できるだけ速やかに試験を行わなければならない。試料を保存する場合,密栓し,冷蔵保存しておく.

2)ヘッドスペースバイアルは,100℃で3時間乾燥したものを使用すること.

3)セプタムは,厚さ0.05mm以上のポリテトラフルオロエチレンシート付のセプタムを使用する.セプタム及びアルミキャップをバイアルにのせ,アルミキャップ締め器で速やかに固定する.

4)清涼飲料水全自動調理器に用いられる濃縮タイプの清涼飲料水原液は粘性があるため,精製水で希釈して測定を行う.

5)測定条件は,各測定機器において検量線用標準液のピーク強度が最大となるように設定を変更すること.

6)市販のカラムとしてAQUATIC―2(ジーエルサイエンス)等が使用できる.選択するカラムによってはベンゼントと同じ保持時間に1,2―ジクロロエタンが検出される場合があるため,マスクロマトグラフ法により分析するときには注意すること.

7)本法における定量限界は1ng/mlである.定量限界値以上の濃度でピークが検出された場合には,別途マスクロマトグラフ法によりマススペクトルによるベンゼンの確認を行う.

8)ベンゼンが含まれていないことを確認した後ならば,超純水の他,市販の精製水又はミネラルウォーター等を使用してもよい.ベンゼンで汚染されている室内環境で,精製水を長期間保存した場合,精製水からベンゼンが検出されることがあるので注意すること.

9)市販の水質試験用又はトリハロメタン測定用の試薬を使用してもよい.あらかじめ妨害ピークが検出されないことを確認する.

10)内部標準原液に,d6―ベンゼン標準原液を使用してもよい.