添付一覧
○厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則の一部改正について〔牛海綿状脳症対策特別措置法〕
(平成17年7月1日)
(食安発第0701001号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則の一部を改正する省令(平成17年厚生労働省令第110号)が本日公布され、これにより厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則(平成14年厚生労働省令第89号。以下「施行規則」という。)の一部が平成17年8月1日に改正されることとなるので、下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のなきよう取り計らわれたい。
記
第1 改正の趣旨
平成13年9月、国内において初めて牛海綿状脳症(BSE)の発生を確認した。厚生労働省としては、食用として処理されるすべての牛を対象としたBSE検査を全国一斉に開始するとともに、と畜場における牛の特定部位(頭部(舌及び頬肉を除く。)、せき髄、回腸遠位部)の除去・焼却を法令上義務化した(平成13年10月18日施行)。これらの国内対策は、当時、①牛の月齢が必ずしも確認できなかったこと、②国内でBSE感染牛が初めて発見され、国民の間に強い不安があったこと等の状況を踏まえて対策を開始したものである。
平成16年9月には、食品安全委員会においてBSE国内対策に関する科学的な評価・検証の結果(別添1)がとりまとめられた。
厚生労働省及び農林水産省は、この評価・検証の結果を踏まえ、同年10月15日に国内対策の見直しについて食品安全委員会に諮問し(別添2)、本年5月6日、答申(別添3)を受けたところであり、これを踏まえて、と畜場におけるBSE検査の対象月齢の変更を行うものである。
第2 改正の内容
と畜場におけるBSEに係る検査の対象となる牛の月齢を規定する施行規則第1条を改正し、厚生労働省令で定める月齢を零月から21月とすること。
第3 施行期日
平成17年8月1日から施行すること。
第4 運用上の注意
1 BSE検査については、本日付けで通知する「牛海綿状脳症に関する検査の実施について」(平成17年7月1日付け食安発第0701004号当職通知)により改正された「牛海綿状脳症検査実施要領」に基づき適切に実施すること。
2 BSE検査の結果については、速やかに食肉検査支援システムを活用して報告すること。
日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について
中間とりまとめ
平成16年9月
食品安全委員会
目次
1 はじめに
2 背景
2―1 BSE
2―1―1 BSE発生頭数
2―1―2 BSEの潜伏期間
2―1―3 牛生体内でのプリオン分布と感染性
2―1―4 BSEの発症メカニズム
2―2 vCJD
2―2―1 vCJD患者発生数
2―2―2 vCJDの潜伏期間と発症最少量
2―2―3 牛と人の種間バリア
2―2―4 vCJDの感染に対する遺伝的要因
3 リスク評価
3―1 リスク評価の基本的な考え方
3―2 英国におけるリスク評価の事例(感染者の推計又はvCJD患者の発生予測)
3―3 我が国のリスク評価
3―3―1 過去のリスクによるvCJD発生数の推定
3―3―1―1 食物連鎖に入り込んだBSE感染牛及び将来発生するBSE感染牛の発生数
3―3―1―2 英国のvCJD患者推定からの単純比例計算による日本におけるvCJDリスクの推定
3―3―2 管理措置によるリスクの低減
3―3―2―1 BSE発生対策
・飼料の管理及び規制
・トレーサビリティ制度の導入
・リスク牛の検査
3―3―2―2 BSE検査によるリスク低減と検査の限界・検査の意義
・迅速検査によるBSEプリオンの検出限界
・迅速検査により検出可能な月齢
・検査の展望
3―3―2―3 SRM除去によるリスク低減
・SRM除去
・解体時における汚染
3―3―3 現在のリスク
3―3―4 管理措置オプションによるリスク増減
4 結論
5 おわりに
(略語集)
(参考文献)
1 はじめに
我が国では、2001年9月10日、牛海綿状脳症(BSE)を疑う牛が確認されたことが発表された。このことは、畜産関係者に大きな衝撃を与え、また、BSE病原体(BSEプリオン)が人に感染して発症すると考えられている変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)には治療法がなく、発症者の全てが死に至ること等とあいまって、日本全国は一種のパニックともいえる状況となった。こうした事態に対し、厚生労働省、農林水産省では、種々の対策を講じ、発見から1ヶ月あまり経過した10月18日には、欧州各国より厳しいと畜される牛についての全頭検査及び特定危険部位(SRM)除去を実施することとなった。
BSEは、英国で1986年に確認され、1988年に英国政府から国際獣疫事務局(OIE)の第56回年次総会で新疾病として報告された。その後、90年代に英国でBSE発症牛のほとんどが発見されてきた。90年代終わりになって導入された迅速検査法を用いて、2001年からEUにおけると畜場でのBSE検査が開始されたこと等で、新たにBSE感染牛が見いだされる国の数が増加し、OIEの報告によれば、現在までに欧州各国を中心に23カ国(米国の1例はカナダに集計され、米国は23カ国に含まれていない。)で18万頭以上のBSE感染牛が確認されている。英国における疫学的調査の結果、BSEプリオンに感染した牛(以下「BSE感染牛」という。)由来の肉骨粉が飼料として牛に給餌されたことが原因として世界的に広がったものと考えられている。
我が国でBSE感染牛が最初に確認されて約3年が経過した。食用に供される牛の全頭検査の結果、9頭のBSE感染牛が、また、平成16年4月から完全実施された24ヶ月齢以上の死亡牛全頭を対象とした検査により、1頭のBSE感染牛が摘発された。これらの検査によって我が国のBSEの汚染状況が短期間でおおよそ把握されたといえよう。しかし、BSEについては牛での発症メカニズムについての限られた実験成績が得られたものの、人でのBSE感染から発症にいたるメカニズムは未解明である。このように、現在までに得られた科学的知見は限られたものではあるが、それらの知見にもとづいて牛から人へのBSEプリオンの感染リスクの低減効果を検討する目的で、我が国におけるBSE対策(管理措置)を検証し、今後の対策に活かすことが重要と考え、本報告書を取りまとめた。
BSEに関するリスクには、①牛から牛、②牛から人、③人から人へのBSEプリオンの伝播経路に係るリスクがある。本調査会では、これらの3つの観点があることを認識した上で、通常の食習慣のもとでの②牛から人へのBSEプリオンの感染リスクについて検討を行った。
2 背景
2―1 BSE
2―1―1 BSE発生頭数
BSEは、OIEの報告によれば、世界23カ国で188,760頭発生しており(2004年7月22日時点)、国別では、英国が183,880頭とそのほとんどを占め、次いでアイルランド(1,426頭)、フランス(914頭)、ポルトガル(904頭)、スイス(454頭)などの順となっている(表1)。
一方、日本においては、これまでに11頭のBSE感染牛が確認されている。2001年9月に1例目のBSE感染牛が確認されたことがきっかけとなって、同年10月18日からと畜場における全頭検査が開始された。これまでに3,451,152頭を検査した結果、9頭のBSE感染牛が確認されている(厚生労働省集計;2004年7月31日現在)(表2)。また、死亡牛サーベイランスによって、不十分ではあるが、これまで69,218頭が検査され、そのうち1頭がBSE感染牛と診断されている(農林水産省集計;2001年10月18日~2004年5月31日)(表3)。
日本で見つかったBSE感染牛11頭のうち、BSEが疑われる典型的な臨床症状を呈していた牛はなかったが、6頭は、起立障害、敗血症等の何らかの臨床症状を呈していた(表4)。
出生地は、11例のうち6例が北海道で、神奈川県が2例、群馬、栃木及び兵庫県がそれぞれ1頭ずつとなっている。
出生時期を見ると、9頭が1995(平成7)年12月~1996(平成8)年4月に集中し、若齢2例が2001(平成13)年10月と2002(平成14)年1月となっている(表4及び図1)。また、牛の種類では、若齢2例が乳用種(ホルスタイン種)のオス(去勢)で、それ以外の9例は乳用種(ホルスタイン種)のメスである。
これらのうち、8例目(23ヶ月齢)のBSE感染牛は、免疫組織化学検査及び病理組織学検査で陰性、ウエスタンブロット法(以下、「WB法」という。)で陽性と診断されたが、WB法による検査で、プロテアーゼ処理に対する抵抗性が弱いこと、異常プリオンたん白質の泳動パターンが異なっていることなど、それまで確認されたBSE感染牛とは異なる特徴を示していたことから、厚生労働省の「牛海綿状脳症(BSE)の検査に係る専門家会議」での検討の結果、「非定型的なBSE」と診断されている。
また、9例目(21ヶ月齢)のBSE感染牛は、8例目と同様、免疫組織化学検査及び病理組織学検査で陰性、WB法で陽性と診断されたが、WB法による検査では、7例目までのBSE感染牛と同じ特徴を示した。
これら8、9例目については、WB法の結果から、他の9例と比較して延髄閂部に含まれる異常プリオンたん白質の量が少なく、500分の1から1,000分の1と推定されている1)。これら2例については、BSEプリオンの性状解析のために牛型トランスジェニックマウスへ接種し、BSEプリオンを増幅する実験が現在行われており、その結果からこれら2例の感染性についても明らかになるものと考えられる。
なお、世界各国のBSE発生頭数については、OIEのサイト(http://www.oie.int/eng/info/en_esb.htm)から最新の情報が入手できる。
2―1―2 BSEの潜伏期間
BSEの潜伏期間は、英国において観察されたBSE自然発症牛の発症までの期間にもとづけば、平均5年(60ヶ月)、ほとんどの場合が4~6年(48~72ヶ月)と推測される。しかし、牛の個体差やBSEプリオンの暴露量によって潜伏期間が異なると考えられている。英国では最も若い発症例として20ヶ月齢の牛、最も老齢の発症例として19歳の牛が報告されている2)。
一方、日本で確認された11頭のBSE感染牛のと畜時の月齢は、若齢2例が21ヶ月、23ヶ月齢、その他の9例は平均78.3±10.7ヶ月齢であり、BSEの典型的症状を示した発症牛は見いだされていない(表4)。
2―1―3 牛生体内でのプリオン分布と感染性
BSEプリオンは、感染個体の体内で数年にわたる長い期間の経過で増幅する。ある牛での感染性は、その牛がBSEプリオンに感染してからの年数、およびその感染線数が潜伏期間のどの時期に相当するかによって決まるが、このプリオン蓄積の経過についてはほとんど分かっていない。誕生後まもなく感染したのではないかという従来からの推定に従うにしても、感染年数もおおよそのことしか分からない。ただし、若い牛での異常プリオンたん白質の蓄積量は潜伏期間の終わりに達する牛よりはるかに少ないと推定されている3)。
BSE感染牛の生体内のBSEプリオン分布については、英国獣医研究所が実施した感染実験の成績がある4)。本実験では、BSE発症履歴のない農場から集められた4ヶ月齢の子牛40頭について、30頭にはBSE発症牛75頭から採取した脳組織を100gずつ経口投与し、残りの10頭には投与を行わず対照群とした。6ヶ月齢以降、投与後22ヶ月になるまで4ヶ月おきに3頭の投与群の子牛と1頭の対照群の子牛が殺処分され、それ以降は投与後40ヶ月に至るまで適宜殺処分された。採取された組織の感染性はマウス脳内及び腹腔内接種試験(マウスバイオアッセイ)と牛脳内接種試験(牛バイオアッセイ)で調べられた。マウスバイオアッセイでは、殺処分後採取された44の組織(主としてリンパ網内系、末梢神経系、中枢神経系、消化管、横紋筋及び主要な内臓等)について、生理食塩水により10%懸濁液が作製され、近交系マウスの脳内(接種量20μl)及び腹腔(接種量100μl)の両方に接種された。牛バイオアッセイは、マウスバイオアッセイでの感染性の結果を踏まえて選ばれたいくつかの組織について行われた。
その結果は、投与後32ヵ月から40ヵ月経過した牛の脳(牛脳内接種50%感染価:≦103.2~105.6C.i.c.ID50/g:ID50とは、牛の集団の50%に感染又は発症をもたらす接種量を表す)、脊髄、背根神経節及び三叉神経節(いずれも≦103.2C.i.c.ID50/g)、同じく投与後6ヵ月から18ヵ月経過した回腸遠位部(≦103.3~105.6C.i.c.ID50/g)から感染性が確認されているが、投与後22ヵ月あるいは26ヵ月経過した牛については、検査を行ったいずれの組織でも感染性は認められていない(表5)。なお、骨髄(胸骨)から、投与後38ヵ月の牛1例のみで、マウスバイオアッセイにより極めて低い感染性が検出されている5)。また、投与後10ヶ月の牛の扁桃で牛バイオアッセイにより感染性が認められた6)。臨床症状は投与35ヶ月後に認められた。しかし、本試験に用いられた牛の頭数は少なく、1頭ないし数頭で観察された事象に基づく成績であること、また、検査方法には検出限界があり、あるレベルより低い感染性を検出することはできないことから、ある組織について感染性が検出されなかったとしても、検出限界以下の感染性が存在していた可能性は否定できない3)等の不確実性が存在する。
また、延髄閂部には三叉神経せき髄路核、弧束核及び迷走神経背側核が集中し、BSE感染牛ではこれらの神経網と神経細胞内に高頻度に海綿状変性が観察されることが知られており7,8)、感染性が認められた組織の中では異常プリオンたん白質量が最も多い9)。
さらに、BSEを発症した1頭の牛の総感染量は、前述の英国獣医研究所によって行われた感染実験の結果から、約8,000牛経口50%感染量(C.o.ID50)と推定されており、その99%以上をSRMが占めるとされている3)(表6)。ただし、これは羊のプリオン病であるスクレイピーの成績を外挿した推定である。
現在、英国獣医研究所では100頭の牛に100gのBSE感染牛の脳、100頭の牛に1gのBSE感染牛の脳を経口接種した実験が、ドイツでは56頭の牛へのBSE感染牛の脳の経口接種実験がそれぞれ進行中であり、日本でも同様の実験が始められている。これらの実験結果により、あるいは、さらに高感度のBSEプリオンの検査法が開発されれば、その結果により、新たな知見が見出されるものと思われる。
なお、牛がBSEを発症するBSEプリオンの最少量(閾値)については、英国獣医研究所においてBSE発症牛の脳組織をより少量(0.1,0.01及び0.001g)用いた経口投与試験が現在進行中であり、現時点までに得られた成績では、0.1g投与群で15頭中3頭、0.01g投与群で15頭中1頭、0.001g投与群で15頭中1頭の発症が確認されている。ただし、これ以下の量の経口投与試験はなされていないため、同試験により閾値を確定することはできない。
2―1―4 BSEの発症メカニズム
牛でのBSE発症メカニズムについては、明らかになっていない。羊やげっ歯類を用いたスクレイピーの発症に関する実験では、スクレイピープリオンの経口投与後、回腸のパイエル板、腸に付属するリンパ組織及び腸神経系にスクレイピープリオンの蓄積が認められ、腸神経系、内臓神経又は迷走神経を介して中枢神経系に広がるものとの仮説がある10)。しかしながら、スクレイピープリオンがどのようにして濾胞樹状細胞から末梢神経終末に到達するかについては不明である。
BSEプリオンが中枢神経系に蓄積し、脳組織に海綿状変化をおこし、BSEを発症させるまでには時間を要することは事実であって、延髄閂部をサンプルとする検査では潜伏期の後半にならないとBSE感染牛を検出することはできない。しかし、他の臓器に全く感染性が存在しないのかについては、現時点では明らかではない。
ドイツ連邦リスク評価研究所においては、BSEに感染後、BSEプリオンの動物体内での時間的、空間的な伝播様式について病理学的研究が行われている11)。
以上のように、牛生体内でのBSEプリオンの伝播様式、分布、増幅様式などについての基礎的研究が諸外国及び我が国で進められているが、未だ解明されていない部分も多く、今後の更なる研究の推進・進展が望まれる。
2―2 vCJD
2―2―1 vCJD患者発生数
vCJD患者の総数は、全世界で157人となっており、そのうち英国で147人確認されており、BSE発生頭数とともに集中している。なお、英国以外の国でもvCJD患者が発生している{フランス(6人)、イタリア(1人)、アイルランド(1人)、カナダ(1人)、米国(1人)}が、フランス5名及びイタリア1名の患者を除き、英国滞在歴がある(表1)。
一方、我が国においては、vCJD患者は一人も報告されていない(2004年6月末時点)。
2―2―2 vCJDの潜伏期間と発症最少量
人にBSEプリオンが感染して中枢神経系に広がっていくメカニズムについては、時間的経過を含め、不明である12)。
また、vCJDの潜伏期間の長さについても分かっていない。仮説では、数年から25年以上と幅広い3)。従って、日本ではvCJDの患者はひとりも発生していないが、このことは必ずしも将来も発生しないことを保証するものではない。
さらに、人についての感染量と発症の相関関係、特に、人への発症最少量、反復投与による蓄積効果などについても未だ明らかとなっていない3)。
2―2―3 牛と人の種間のバリア
BSEプリオンが牛から人に伝達される際の障壁(いわゆる「種間バリア」)の程度については、欧州委員会科学運営委員会の作業部会において検討されている。その報告書12)によれば、BSEプリオン、vCJDプリオン及びスクレイピープリオンについて、異なった動物種や特別に開発されたトランスジェニック動物を使った研究及び試験管内培養細胞を用いた研究による評価から、牛と人の種間バリアが存在すると推測されるが、その程度については、現在の知見では定量的に表すことはできないとしている。
その上で、この作業部会では、新たな科学的データが利用可能となるまで、潜在的なBSE汚染製品による人の暴露リスク評価に用いるための種間バリアについては、最悪のケースとしてバリアはないとして評価することが望ましいとしつつ、さまざまな動物で推定される最少感染量の幅を人にも適用すれば、種間バリアは10~1万倍と推定されるとしている。しかし、同時に、種間バリアに基づく適切なリスク評価のモデルを国際的に検討するよう勧告している。
従って、vCJDのリスクを評価するには、①どれほどのBSEプリオンが牛と人との間の種間バリアを越えて人にvCJDを発症させるかを評価する方法と、②英国におけるBSEやvCJDの発生数の相関関係等の疫学的情報を基に日本におけるvCJDリスクを評価する方法の2つのアプローチが考えられるが、①のアプローチによるリスク評価については、牛と人の種間バリアの程度の推定がかなり幅をもつこと、また評価モデルが国際的にできていないことなどから、同アプローチによる評価は、きわめて困難である。
2―2―4 vCJDの感染に対する遺伝的要因
これまで英国で報告されているvCJD患者の遺伝子型は、最近報告された2例目の輸血を介した感染の例を除き、プリオンたん白質遺伝子のコドン129がメチオニンの同型遺伝子型(メチオニン/メチオニン;M/M)であり、この遺伝子型を有する人は他の型の人に比べ、vCJDの潜伏期間がより短く、かつ感受性がより強いか、またはそのどちらかであるとの指摘がされている3)。
なお、英国を含むヨーロッパの白人の約40%がM/M型の遺伝子を持っていて、13%がバリンの同型遺伝子型(バリン/バリン;V/V)、残る47%が異型遺伝子型(メチオニン/バリン;M/V)を持っているといわれている13,14)。
一方、我が国では、全人口に占めるM/M型の割合は、英国よりも高いとされ15,16)、91.6%であるとの報告もある17)。
英国において、輸血を介してのvCJDプリオンの人から人への伝達と考えられる第二の例が確認された。この患者は他の病気で亡くなり、vCJDを発症していないが、検査の結果、感染が確認されている。この症例は、今までのvCJD患者の遺伝子型と異なるM/V型であると報告されている18)。
3 vCJDリスク評価
3―1 リスク評価の基本的な考え方
本報告書においては、以下のような考え方に基づき、日本におけるBSE対策を評価することとする。
(1) BSEプリオンの牛から人への伝播に対するBSE対策の評価は、現実にはそのためのモデルが国際的にできていない現実を踏まえて、英国での試算を基に我が国における人のBSE感染リスクを指標として行うこととする。
(2) 我が国における人のBSE感染リスクについては、BSE対策を講じた前後、及び今後対策を変更した場合に分けて検討する。
(3) 我が国でこれまでに行われてきたリスク管理措置として、と畜場における全頭検査、SRM除去、と畜・解体方法の改善、飼料の管理及び規制、死亡牛検査、トレーサビリティなどが講じられているが、それらの実施状況を検証し、そのリスク低減効果を評価する。
(4) 我が国における人のBSE感染リスクを評価するため、これまでに得られたBSE検査データ等の知見について分析・整理することとする。
(5) BSEについては、科学的、生物学的知見が限られ、科学的に不確実な点が多く残されていることを念頭においてリスク評価を実施する。
(6) 具体的なリスク管理措置については、今回のリスク評価結果に基づき、また十分なリスクコミュニケーションを行った後、リスク管理機関によって決定されるべきである。
3―2 英国におけるリスク評価の事例(感染者の推計又はvCJD患者の発生予測)
先に述べたように、英国では、世界で最も多くのBSE感染牛が発生した。人におけるvCJDは、現在までに147例報告されているが、今後感染者数がどれだけ増加するかについては明らかではない。英国においては、虫垂切除術を受けた患者の虫垂12,647検体について異常プリオンたん白質の有無を調査した結果、3検体に陽性が見つかり、英国の人口に当てはめた潜伏期間中の感染者総数は最大で約3,800人存在すると推定されている19)。さらに、2003年12月そして2004年7月には輸血を介したvCJDの感染可能性例が報告された18、20)。
英国においては、P.Smith(海綿状脳症諮問委員会委員長、ロンドン大学教授)らが、過去のBSE感染牛発生頭数と現時点までに発生したvCJD感染者数の関係を説明できる仮説を立て、これにより将来のvCJD患者の発生予測を行った21)。
この予測は、①vCJD感染者数は、対策が不十分であった時期におけるBSE発生頭数に相関する、②潜伏期間には相当大きな個体差が存在するが、ある特定の統計学的分布に従う、③潜伏期間と感染時の年齢の間には相関はない、④vCJDはプリオン遺伝子中129番目のアミノ酸がM/M型の人にのみ発生する、⑤潜伏期間中の患者は考慮しない、⑥プリオンの摂取量と発症率の関係は考慮しない等の多くの仮説を前提としたものである。この予測によれば、英国において発生するvCJD患者の累計は、数百から数千人になると推定されている。
なお、英国においては、30ヶ月齢以上の牛は食用に供していないが、この管理措置を変更した場合、どの程度リスクが上昇するかを推定するに当たっては、Smithらは、最も悲観的な予測として、最終的患者累計は5,000人になるとの予測に基づいて計算を行っている。
そのほか、英国で発生するvCJD患者数について予測したいくつかの報告がある。ThomasとNewbyは、1995年から1997年に死亡した23名のvCJDの症例データを用いてvCJD患者を数百人以下と推測している22)。また、J.N.Huillardらは、2000年以前に発症したvCJD82例のデータから同じく最大数千人、しかし、感染者数は予測不能であるとしている23)。
なお、2004年に見いだされた輸血による感染が疑われた例がM/Vの遺伝子型であったことから、これまでのvCJD発生予測の見直しが求められている。18)
3―3 我が国のvCJDリスク評価
前にも述べたように、我が国におけるvCJDリスクを評価するには、①どれほどのBSEプリオンが食物連鎖に入り、牛と人との間の種間バリアを越えて、どれだけの人に対してvCJDリスクを与えるのかについて、BSEプリオンが人に摂取されるまでのそれぞれの段階でのリスクを評価し、それらのリスクを基に一連の流れを通して最終的なリスクを評価する方法と、②疫学的な手法として、前項目に述べた英国におけるP.Smithらが、vCJD感染者数はBSE発生頭数に相関する等の仮定のもと、過去のBSE感染牛発生頭数と現時点までに発生したvCJD患者数等の疫学的情報を用いて将来発生するvCJD患者数を予測する考え方を利用する方法が考えられる。
しかしながら、①の方法については、前述のように種間バリアの程度がかなりの幅をもってしか推定できないこと、英国及び日本においてBSEプリオンがどのような食品を介して人に摂取されたのか、両国の間にどのような食習慣の違いがあるかについての詳細が不明であること、人のvCJD発症最少量が不明であり、蓄積効果も不明であることなどから実施は困難である。
②の疫学的な情報を基にしたアプローチについて、いくつかの仮定をおけば可能であり、その試算例を以下に述べる。
3―3―1 過去のリスクによるvCJD発生数の推定
3―3―1―1 食物連鎖に入り込んだBSE感染牛及び将来発生するBSE感染牛の発生数
牛の生体内におけるBSEプリオンの蓄積の時間経過は、ある一定の過程をたどるものと仮定する。
(試算1)
2001年10月以前、すなわちBSE対策を講じる前におけるBSEプリオンの暴露によるvCJDリスクは、SRM除去及びBSE検査が行われずに食物連鎖に入ったBSE感染牛によるリスクである。そうしたBSE感染牛は、2001年にEU諸国で検出されたBSE陽性牛の年齢構成を基に我が国で確認されたBSE感染牛のと畜月齢に当てはめて推定すると、2001年10月までに5歳でと畜されたBSE感染牛が3頭、また4歳でと畜されたBSE感染牛が2頭、合計で最大5頭であったとしている24)。
また、今後、我が国で発生するBSEの規模については、昨年9月に公表された農林水産省の疫学調査検討チームの報告書によれば、BSE発生以前までに英国から輸入された生体牛、牛の肉骨粉、動物性油脂を原因として我が国におけるBSEの発生規模を予測しており、今後、30頭弱のBSE感染牛が確認されると予想している25)。また、農林水産省の報告書の公表以降に発生した若齢牛2頭(21,23ヶ月齢)を含むBSE感染牛4頭を加えて、これまでにレンダリングに回されたBSE感染牛によって発生するBSE感染牛も考慮して予測した結果では、2005―6年以降、最大60頭のBSE感染牛が確認される可能性があるとしている26)。
(試算2)
我が国のvCJDリスクは、BSEプリオンが食物連鎖に入ったことによるリスクであるが、食物連鎖に入ったと推定されるBSE感染牛の推定に当たっては、1)BSEプリオンの暴露によるBSEは、これまでに確認されたBSE感染牛11頭の出生時期から(表4及び図1)、①1995~96年、②2001~02年の出生コホート牛(出生時期を同じにする牛群)で発生する、2)最悪のシナリオとして2つの出生コホート牛はすべて一定の割合で汚染されており、今後、と畜時に摘発されるBSE感染牛の頭数は、一般的なと畜年齢毎のと畜頭数に相関するとの仮定をおいた。なお、摘発されるBSE感染牛が上記の2つの出生コホート牛であるとした根拠は、もし、1995~96年より前の出生コホート牛でBSEリスクが高いとするなら、8年以上を経過した現時点までに高い確率でBSE感染牛が確認されているはずだからである。また、2001年10月以降は、牛をはじめとする家畜に由来する肉骨粉の飼料への利用禁止下で、全頭検査及びSRM除去によって、BSEプリオンが食物連鎖から排除されるようになったと考えられ、その結果、vCJDリスクはほとんどなくなったと推測される。従って、我が国におけるvCJDリスクは、1995~96年出生コホート牛が2001年10月以前にと畜され、摘発されずにフードチェーンに入ったと考えられるBSE感染牛によるリスクである。
① 1995~96年出生コホートのオス牛
一般的なオス牛のと畜年齢(表7及び図2)から考えると、生後3年以内(1996~99年)の間に、ほとんどがと畜されたと考えられるが、この間に何頭のBSE感染牛が食物連鎖に入ってしまったかは、不明である。
② 1995~96年出生コホートのメス牛
これまでに9頭のBSE感染牛が確認されており、生後5年目の2000年12月~2002年3月に3頭、生後6年目の2001年12月~2003年3月に4頭、生後7年目の2002年12月~2004年3月に年に2頭のBSE感染牛がそれぞれ確認された事実からこのコホートのBSE感染率を求め、これを一般的なと畜年齢毎のと畜頭数に乗ずると、過去に摘発されずに食物連鎖に入ったと推定されるBSE感染牛は、
{推定されるBSE感染牛}={コホートのBSE感染率}×{ある年のと畜頭数}・・・(①)
ただし、{コホートのBSE感染率}=A/B
{A=3+4+2=9:生後5~7年に摘発されたBSE感染牛の頭数}
{B=30,391+28,994+24,219=83,604:生後5~7年のと畜頭数}
で表され、
・1995年12月~1997年3月(0歳):0~11ヶ月齢でと畜される牛で0頭、
・1996年12月~1998年3月(1歳):12~23〃 〃 2頭、
・1997年12月~1999年3月(2歳):24~35〃 〃 27頭、
・1998年12月~2000年3月(3歳):36~47〃 〃 3頭、
・1999年12月~2001年3月(4歳):48~59〃 〃 3頭、
となり、合計で35頭となる。
また、今後発生するBSE感染牛の頭数について、上記と同様の仮定にもとづいて試算した。
① 1995年~96年出生コホート
・オス牛は、最終摘発牛の出生年月(1996年4月)から8年以上経過しており、一般的なと畜年齢(表7及び図2)から考えると、この出生コホート牛のほとんどは既にと畜されているものと考えられ、今後、摘発される可能性はほとんどないと仮定した。
・メス牛は、上記①の計算式により、2004年~2011年までにBSE感染牛10頭(2001年~現在までに9頭摘発)が摘発されると推定される。
② 2001年~02年出生コホート
・オス牛は、2004年7月時点で、最終摘発牛の出生年月(2002年1月)から30ヶ月が経過しており、一般的なオス牛のと畜年齢(表7及び図2)から考えると、この出生コホート牛の約75%は既にと畜され、また、36ヶ月が経過する2005年1月時点では、コホート牛の99%がと畜されるものと考えられる。これまでの検査によって、この出生コホート牛で生後2年目の牛2頭がBSE感染牛として摘発されたことから、このコホートのBSE感染率を求め、これを一般的なと畜年齢毎のと畜頭数(表7)に乗ずると、今後と畜される牛の中で摘発されると推定されるBSE感染牛は、
{推定されるBSE感染牛}={コホートのBSE感染率}×{ある年のと畜頭数}・・・(②)
ただし、{コホートのBSE感染率}=C/D
{C=2:生後2年目に摘発されたBSE感染牛の頭数}
{D=231,502:生後2年目のと畜頭数}
で表され、2004年末までに3頭確認されると推測される。
・メス牛は、これまでにBSE感染牛が確認されていないことから、今後BSE感染牛が摘発される規模について推測することは困難である。ただし、一般的なと畜年齢毎のと畜頭数(表7)から、年数の経過とともにと畜頭数が累積して増えるに従って、BSE感染牛が摘発される可能性も考えられる。
なお、この試算では、BSE感染牛は、①1995~96年、②2001~02年の出生コホート牛で発生すると仮定したが、これより以前にBSE感染牛が食物連鎖に入り込んだ可能性については不明であり、80年代後半に英国から生体牛が輸入され、レンダリングされ、飼料として利用されたことにより、BSEプリオンが国内に侵入したと推測する報告もある27)。
3―3―1―2 英国のvCJD患者推定からの単純比例計算による日本におけるvCJDリスクの推定
Smithの仮説で用いられた前提(3―2)にもとづいて、日本でのvCJDリスクの推定を試みた。すなわち、①vCJD感染者数は、対策が不十分であった時期におけるBSE発生頭数に相関する、②潜伏期間には相当大きな個体差が存在するが、ある特定の統計学的分布に従う、③潜伏期間と感染時の年齢の間には相関はない、④vCJDはプリオン遺伝子中129番目のアミノ酸がM/M型の人にのみ発生する、⑤潜伏期間中の患者は考慮しない、⑥プリオンの摂取量と発症率の関係は考慮しない等を前提として試算を行った。
(試算1)
英国のBSE感染牛、vCJD患者数の推定値から日本のvCJD患者数について推定する。推定に当たって、①英国における1996年8月1日の肉骨粉の飼料への利用の禁止以前に食物連鎖に入ったと考えられるBSE感染牛は約100万頭であった28,29)、②英国におけるvCJD患者の推計数は、Smithらが推計した最も悲観的な予測数5,000人と仮定した。なお、英国におけるBSE感染牛の推計については、200~250万頭、420万頭、350万頭などいくつかの報告があるが、ここでは、想定されるリスクが最大となるように、これら報告の中で最も小さい数字である100万頭を採用した。一方、日本で発生するvCJD患者数は、英国における食物連鎖に入ったBSE感染牛の推計(100万頭)と、それにより発生するvCJD患者数の推計(5,000人)の相関関係を日本に当てはめ、我が国における食物連鎖に入ったBSE感染牛を先に述べた推計により5頭と仮定して、単純比例計算すると、
5,000人×5頭/1,000,000頭・・・(③)
となる。
さらに、両国の人口(英国;約5,000万人、日本;1億2,000万人)におけるプリオンたん白質遺伝子のコドン129がM/M型である人の割合(英国;40%、日本;90%)を考慮に入れると、
③×(1億2,000万人×90%)/(5,000万人×40%)
となり、その結果、全頭検査以前のBSEプリオン摂取による我が国全人口(1億2,000万人)におけるvCJD患者の発生数は0.1人と推定される。
また、英国では、脳・脊髄等の混入の可能性を有する機械的回収肉(MRM)の摂取がvCJDの発生原因の重要なひとつといわれているが、これまでの日本ではMRMが利用されていないことを考慮すれば、さらにそのリスクは低くなると思われる。
(試算2)
同様に、我が国において、過去に摘発されずに食物連鎖に入ったBSE感染牛を35頭として、これを上記③と同様の式により比例計算し、人口比、遺伝子型の構成比から補正を行うと、我が国の全人口におけるvCJD患者の発生予測数は、0.9人となる。
ただし、感染性については感染個体の体内で時間の経過とともに強まること、および、試算2で食物連鎖に入ったと考えられるBSE感染牛が暴露後2年目の若齢牛が最も多いことを考慮すれば、実際には、ここで試算した予測数よりも低くなる可能性があると推測される。
3―3―2 管理措置によるリスクの低減
我が国ではBSE対策として、2001年9―10月以降、消費者の健康を守るためにと畜場におけるSRM除去及びBSE検査が行われ、また、様々な医薬品の原料としてBSE発生国からの牛材料の輸入が禁止されるとともに、その製品への使用が禁止されてきた。一方、BSE発生対策として飼料生産の管理、飼料使用の規制、トレーサビリティ制度の導入など、また、サーベイランスとして神経症状を呈した牛、死亡牛及び疑似患畜(以下、「リスク牛」という。)の検査が講じられてきた。その中で、と畜場におけるSRM除去及びBSE検査が牛肉や牛内臓等を摂食することによる人のBSE感染リスクを直接的に低減させることに大きく貢献するものと考えられる。
3―3―2―1 BSE発生対策
本報告書を取りまとめるにあたっては、通常の食習慣のもとでの牛から人へのBSEプリオンの感染リスクについて検討を行うこととしている。一方、飼料の管理及び規制、トレーサビリティ制度の導入、リスク牛の検査などは、BSEを根絶するために必要な対策である。特に、飼料規制等はBSE感染牛の発生を防ぎ、結果として牛から人へのBSE感染リスクの低減を保証する根源的に重要な対策と考えられる。
・飼料の管理及び規制
国内で最初のBSE感染牛が確認された2001年9月、「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」に基づく管理措置として、反すう動物由来の肉骨粉の反すう動物への給与が禁止され、2001年10月より、肉骨粉の飼料利用が全面的に禁止された。これにより、理論上は牛から牛へのBSEプリオンの伝播が遮断されたものと推定される。しかしながら、我が国で確認された7頭目までのBSE感染牛の発生原因について農林水産省の疫学調査検討チームの報告書によれば、配合飼料工場内での飼料製造過程や原料輸送過程での交差汚染の可能性を指摘していること、また、8及び9頭目のBSE感染牛は、2001年10月以降に生まれた牛であり、疫学的調査による原因の特定には至っておらず、交差汚染によるBSEプリオンの感染の可能性も否定できないことから、今後とも飼料規制の実効性の確保が必要である。
・トレーサビリティ制度の導入
我が国においては、「牛の個別識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」に基づき、昨年12月より、生産・と畜段階において牛の出生情報等の個体識別のための情報を記録するトレーサビリティ制度が義務付けられ、正確な月齢の判定が可能になった。これにより、種々の規制の前後での牛のBSEプリオンに対する感染リスクの程度を分けて検討することが可能となる。
また、流通段階においても本年12月より義務付けられ、消費者が食用牛肉の情報を直接得られるといった透明性を付与する上で重要なものとなりつつあることも踏まえ、今後、トレーサビリティ制度の担保と検証が必要と考えられる。
・リスク牛の検査
リスク牛の検査については、我が国におけるBSE汚染の程度を把握するとともにBSE対策の有効性について検証することを目的として、我が国で最初のBSE感染牛が確認される前から農場において24ヶ月齢以上の牛を対象としたサーベイランスが行われていたが、2001年10月以降、死亡牛がサーベイランスに加えられ、2004年4月からは、24ヶ月齢以上の全ての死亡牛検査が完全実施された。これまでに69,218頭が検査され、そのうち1頭がBSE感染牛と診断されている(農林水産省集計;2001年10月18日~2004年5月31日)。
今後とも、リスク牛の検査を実施していくことが重要である。
3―3―2―2 BSE検査によるリスク低減と検査の限界・検査の意義
現在、「と畜場法」及び「牛海綿状脳症対策特別措置法」に基づき、と畜場において都道府県等の公務員であり、かつ、獣医師の資格を有すると畜検査員によって行われているBSE検査は、①BSE感染牛を食物連鎖から排除すること、②我が国におけるBSE汚染の程度を把握するとともにBSE対策の有効性について検証することの2点について意義を持つものと考えられる。
BSE感染牛を食物連鎖から排除することは、BSEプリオンに汚染した牛肉や内臓等を摂食することによる人のBSE感染リスクを低減し、消費者の健康保護に直接的に貢献するものである。検査の結果、これまでに9頭がBSE感染牛として摘発され、食用にされることなく排除することができた。この中には、21及び23ヶ月齢のBSE感染牛も含まれ、全頭検査を行っていたことが発見につながったものである。すなわち、消費者の健康保護に有効に貢献したといえよう。
日本では、BSE発生後速やかに食用としてと畜される牛の全頭についてBSE検査を導入した結果、これらの牛に関して、短期間でBSE汚染状況を推測するために有用なデータが得られた。野外におけるBSE汚染の状況については、本年4月から完全実施されてきた農場における24ヶ月齢以上の死亡牛検査のデータが蓄積されることによって、我が国全体の牛におけるBSE汚染実態の疫学情報の確度はさらに高まるものと思われる。
・迅速検査によるBSEプリオンの検出限界
我が国が一次検査として採用しているBSE検査法、すなわち、「プラテリアBSE」(バイオラッド社)及び「ダイナボット エンファーBSEテスト」(ダイナボット社)の2種類の検査法の精度については、欧州委員会科学運営委員会が評価を行っている30)。「プラテリアBSE」は、マウスバイオアッセイとほぼ同等の信頼性を有しており、おおよその検出限界は1g当たり2M.i.c.ID50(M.i.c.ID50は、マウス脳内接種50%感染価)である。従って、サンプル中に検出限界以上(≧2M.i.c.ID50/g)の異常プリオンたん白質が蓄積していれば、これを陰性と判定することなく、確実に陽性と判定できるが、異常プリオンたん白質量が検出限界以下であれば、陰性と判定される。すなわち、延髄閂部に2M.i.c.ID50/g以下の感染性を持った、潜伏期間にあるBSE感染牛は陰性と判定される。また、「プラテリアBSE」とともに、「ダイナボット エンファーBSEテスト」についても、薬事・食品衛生審議会で検討され、農林水産大臣によって動物用診断薬として輸入承認され、さらに、厚生労働省の「牛海綿状脳症(BSE)の検査に係る専門家会議」において欧州委員会の評価結果をもとに検討が行われ、「プラテリアBSE」と同等の検査精度を有すると評価されている。
このことから、と畜場におけるBSE検査は、牛肉や内臓等を摂食することによる人のBSE感染リスクを低減することに対して、貢献していることは事実であるが、現在の検査法では、技術的な限界から潜伏期間にあるBSE感染牛を全て摘発、排除することができると断定することはできない。
・迅速検査により検出可能な月齢
この目的での実験は行われておらず、以下の断片的事実のみが知られている。
前述の英国における感染試験で、4ヶ月齢の牛に経口投与後32ヵ月経過してはじめて脳に感染性(≦103.2~105.6C.i.c.ID50/g)が認められており、投与後22~26ヶ月の実験感染牛では感染性が認められなかった。この結果からは、投与後32ヶ月頃にならないと延髄閂部には異常プリオンたん白質が検出限界以上に蓄積しないと解釈できる。
一方、我が国では、と畜場においてこれまでに約350万頭の牛を検査した結果確認された9頭のBSE感染牛のうち、21,23ヵ月齢の若齢のBSE感染牛が確認された。ただし、WB法で調べた結果では、これらの例の延髄閂部に含まれる異常プリオンたん白質の量は、我が国で確認されたその他のBSE感染例に比べ少なく、500分の1から1,000分の1と推定されている1)。このことから、20ヶ月齢以下の感染牛を現在の検出感度の検査法によって発見することは困難であると考えられる。
なお、これまでに知られている最も若い牛での発症例は英国で1992年に見いだされた20ヶ月齢の牛である。欧州委員会のTSE/BSE特別委員会報告31)は、英国での感染実験で接種32ヶ月後に感染性が見いたされ、発症はその3ヶ月後であったとの結果から、20ヶ月齢の発症牛の場合、17ヶ月齢で感染性が検出され得る等の推定を述べている。ただし、英国の症例については、BSE汚染状況、BSEプリオンの牛への暴露量の状況が我が国と比べ大きく異なっており、直ちに我が国のBSE対策に当てはまるものではないことに留意すべきである。
・検査の展望
BSE迅速検査法の改良・開発に関する研究は、欧州諸国、米国、日本などで進められており、より検出感度の高い迅速検査法が利用可能となることが期待されている。検出限界が低くなれば、より若齢のBSE感染牛の摘発が可能になると考えられる。さらに、牛の生体から採取した組織、血液等を用いた検査が可能となれば、と畜前に感染の有無を明らかにすることも期待できる。そうなれば、BSE感染牛をと畜場に持ち込むことなく、摘発、排除でき、SRMの交差汚染によるリスクの心配もなくなり、欧州委員会科学運営委員会の報告3)に述べられている、消費者をBSE感染リスクから守るために人の食物連鎖に感染動物を入り込ませないとする目標にさらに近づくことになるであろう。
検査法については、今後とも改良が行われるべきものと考えられ、検出限界の改善も含め、研究が進められるべきであり、その中で20ヶ月齢以下の牛に由来するリスクの定量的な評価について、今後さらに検討を進める必要がある。
3―3―2―3 SRM除去によるリスク低減
・SRM除去
我が国においては、現在、全ての牛の頭部(舌及び頬肉を除く。)、せき髄、回腸遠位部、背根神経節を含むせき柱については、食品として利用することは法的に禁止されている。現在の知見では、これらの組織にBSE発症牛の体内の異常プリオンたん白質の99%以上が集中しているとされていることから3)、これらの組織を食物連鎖から確実に排除することができれば、人のvCJDリスクのほとんどは低減されるものと考えられる。
しかし、せき髄除去工程におけるせき髄の残存、又は枝肉汚染の可能性、ピッシングによる中枢神経組織による汚染の可能性等もあり、と畜場において、常にSRM除去が確実に行われていると考えるのは現実的ではないと思われる。
厚生労働省が、全国で7か所の食肉衛生検査所において背割り前のせき髄の除去率について調査した結果によれば、せき髄吸引方式の5ヶ所では平均80.6±17.1%(52.5~99.1%)、押出方式の2ヶ所では平均75%(72.0,78.0%)であった。なお、その際、残存したせき髄は背割り後に手作業により除去される32)。
また、これまでの知見からSRMとされている組織以外に異常プリオンたん白質が蓄積する組織が全くないかどうかについては、SRMを指定した根拠となった感染試験における検出限界の問題3)やBSEの感染メカニズムが完全に解明されていないことなどの不確実性から、現時点において判断することはできない。世界保健機関(WHO)がBSE感染牛のいかなる組織も食物連鎖から排除するべきであると勧告していることもこのような考えに基づくものと思われる33)。
・解体時における食肉のSRMによる汚染
背割りによる枝肉の汚染程度については、前述の厚生労働省の調査では、枝肉をふき取り、キットを用いてせき髄組織の汚染の有無を調べた結果、吸引方式、押出方式及び背割り後せき髄除去方式で汚染の程度に有意差はなかった32)。
と畜の際にワイヤーにより脳及びせき髄の破壊を行ういわゆるピッシングについては、と畜方法によっては、中枢神経組織が血液を介して他の臓器へ移行するとの報告34)を受けてEUでは、2000年から禁止している。一方、我が国においては、厚生労働省は、ピッシングについて、ワイヤーの挿入により脳、せき髄組織が漏出し、汚染が発生する懸念や使用する金属ワイヤーの1頭ごとの有効な消毒が困難であることから、中止するよう関係事業者に対して指導しているが、労働安全等の観点からピッシングを行わざるを得ない状況を踏まえて、禁止されていない。なお、厚生労働省が行ったピッシングによる血液中への中枢神経組織の流出に関する調査によれば、ピッシングにより血液中に脳・せき髄組織が混入するという結論が得られなかったが、ピッシングの実施により、スタンニング孔から脳・脊髄組織が流出し、食肉及びと畜場内の施設等が汚染される可能性があるとされている35)。以上のことから、ピッシングの扱いについては、今後、その廃止も含め、さらに検討する必要がある。また、最近ではスタンガンによる枝肉汚染の可能性も指摘されている36)。
これらの解体時におけるSRM混入によるリスクの低減には、と畜場における検査が役立っていると考えられる。
3―3―3 現在のリスク
(試算1)
今後、我が国で発生するBSEの規模としては、2005,6年から最大60頭のBSE感染牛が確認される可能性があるとしている。
しかしながら、これらのBSE感染牛が食物連鎖に入り込み、vCJDが発生するリスクは、現在のBSE検査及びSRM除去が適切に実施されていれば、そのほとんどが排除されているものと推測される。
(試算2)
今後のBSEの発生数は、①1995~96年コホートの雌牛で、2004~11年までにBSE感染牛10頭(2001~現在までに9頭発生)、②2001~02年コホート牛で2004年末までに3頭の合計13頭が発生すると予想されるが、現在のBSE検査及びSRM除去が適切に実施されていれば、これらのBSE感染牛が食物連鎖に入り込み、vCJDが発生するリスクのほとんどが排除されているものと推測される。
3―3―4 管理措置オプションによるリスクの増減
我が国で講じられているBSE対策の中で、と畜場におけるSRM除去及びBSE検査が牛肉や牛内臓等を摂食することによる人へのBSE感染リスクを低減させることに大きく貢献している。
そのうち、我が国における全ての牛を対象としたSRM除去については、現時点において有効な管理措置であると考えられ、この体制については維持されるべきである。
また、と畜場でのBSE検査について、検出限界以下の牛について検査の対象から除外することについては、検査によるBSE感染牛の摘発に影響を与えるものではなく、BSE感染牛が食物連鎖に入り込み、BSE感染のリスクを高めることにはならないと考えられる。
ただし、現在の検査法の検出限界程度の異常プリオンたん白質を蓄積するBSE感染牛が、潜伏期間のどの時期から発見することが可能となり、それが何ヶ月齢の牛に相当するのか、現在のところ断片的な事実しか得られていない。しかしながら、我が国における約350万頭に及ぶ検査において、21,23ヶ月齢のBSE感染牛が確認された事実を勘案すると、21ヶ月齢以上の牛については、現在の検査法によりBSEプリオンの存在が確認される可能性がある。
一方、検査法については、今後とも改良が行われるものと考えられ、検出限界の改善が図られる可能性があることも考慮されるべきである。
これらを踏まえ、今後とも定量的なリスク評価の試みは引き続き行われるべきであり、また、我が国をはじめとして諸外国で現在進行中の経口摂取試験の成績等について引き続き情報収集及び検討に努めるべきである。
4 結論
(1) 今後、我が国において、さらにBSE感染牛が確認される可能性があると推定されるが、これらのBSE感染牛が食物連鎖に入り込んだ結果として、人への感染を起こすリスクは、現在のSRM除去及びBSE検査によって、効率的に排除されているものと推測される。
(2) また、検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、現在の全月齢の牛を対象としたSRM除去措置を変更しなければ、それによりvCJDのリスクが増加することはないと考えられる。しかしながら、検出限界程度の異常プリオンたん白質を延髄閂部に蓄積するBSE感染牛が、潜伏期間のどの時期から発見することが可能となり、それが何ヶ月齢の牛に相当するのか、現在のところ断片的な事実しか得られていない。ただし、我が国における約350万頭に及ぶ検査において発見されたBSE感染牛9頭のうち、21,23ヶ月齢の2頭のBSE感染牛が確認された事実を勘案すると、21ヶ月齢以上の牛については、現在の検査法によりBSEプリオンの存在が確認される可能性がある。
一方、21,23ヶ月齢で発見された2頭のBSE感染牛における延髄閂部に含まれる異常プリオンたん白質の量が、WB法で調べた結果では他の感染牛と比較して500分の1から1,000分の1と微量であったこと、また、我が国における約350万頭に及ぶ検査により20ヶ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。
(3) 検査法については、今後とも改良が行われるべきものと考えられ、検出限界の改善や、牛の生体から採取した組織、血液等を用いた生前検査法の開発等も含め、研究が進められるべきであり、その中で20ヶ月齢以下の牛に由来するリスクの定量的な評価について、今後さらに検討を進める必要がある。
(4) 現在の知見では、SRMにBSE発症牛の体内の異常プリオンたん白質の99%以上が集中しているとされていることから、SRMの除去は人のBSE感染リスクを低減するために非常に有効な手段である。また、交差汚染防止については、感染した牛の脳0.001~1gという極微量で牛の感染源になりうるとの報告もあることから、と畜場等における適切なと畜・解体の実施を通じて交差汚染を防止することは人のBSE感染のリスクを低減する上で重要である。このため、引き続き適正なSRM除去、交差汚染防止の指導を行なうとともに、その実施状況を定期的に検証するなど、適正な実施が保証される仕組みを構築するべきである。
(5) BSE発生対策として現在行われている飼料規制により、BSE発生のリスクは極めて小さいものと考えられるが、若齢のBSE牛が確認されていることも踏まえ、飼料規制の実効性が保証されるよう行政当局によるチェックを引き続き行うことが重要である。また、トレーサビリティの担保及び検証を行うとともに、リスク牛検査について引き続き実施する必要がある。
5 おわりに
BSE問題は、食品の安全・安心に関する問題の中で、最も国民の関心が高く、社会的影響の大きい問題のひとつである。一方、BSEは科学的に解明されていない部分も多い疾病であることも事実である。このような多面性、不確実性の多いBSE問題に対しては、リスク管理機関は、国民の健康保護が最も重要との認識のもと、国民とのリスクコミュニケーションを十分に行った上で、BSE対策の決定を行うことが望まれる。
また、厚生労働省及び農林水産省においては、BSEに関して科学的に解明されていない部分について解明するため、今後より一層の調査研究を推進するべきであり、そうして得られた新たなデータや知見をもとに適宜、定量的なリスク評価を実施していく必要があろう。
(略語集)
BSE 牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy)
vCJD 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutzfeldt-Jakob Disease)
OIE 国際獣疫事務局(Office International des Epizooties)
ID50 50%感染価(50% Infective Dose)
C.i.c. 牛脳内接種
C.o. 牛経口接種
M.i.c. マウス脳内接種
SRM 特定危険部位(Specified Risk Material)
WHO 世界保健機関(World Health Organization)
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26 吉川.第9回プリオン専門調査会資料;2004
27 Sugiura K.Risk of introduction of BSE into Japan by the historical importation of cattle from the United Kingdom and Germany.Preventive Vet.Med.2004;64:191-200.
28 Donnelly C.A.and Ferguson N.M.Statistical aspects of BSE and vCJD:models for epidemics.Monographs on Statistics and Applied Probability No.84.Chapman & Hall/CRC,Boca Ratonm Floroda.1999:256pp
29 Ferguson N.M.,Donnelly C.A.,Woolhouse M.E.J,Anderson R.M.The epidemiology of BSE in Cattle herds in Great Britain.II.Model construction and analysis of transmission dynamics. Philos.Trans.Roy.Soc.Lomd.,B,Biol.Sci.1997; 352(1355): 803-838)
30 Scientific Steering Committee. The Evaluation of Tests for The Diagnosis of Transmissible Spongiform Encephalopathy in Bovines,8 July 1999
31 Scientific Steering Committee. Scientific Report on Stunning Methods and BSE risks(The risk of dissemination of brain particles into the blood and carcass when applying certain stunning methods.)prepared by the TSE BSE ad hoc Group at its meeting of 13 December 2001 and including the outcome of apublic consultation via Internet between 10 September and 26 October 2001.
32 平成13年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)総括研究報告書「牛海綿状脳症(BSE)に関する研究」 主任研究者 品川森一 帯広畜産大学 獣医公衆衛生学
33 World Health Organization:Report of a WHO Consultation on Public Health Issues related to Human and Animal Transmissible Spongiform Encephalopathies.WHO/EMC/DIS/97.147 Geneva,Switzerland,2-3 April 1996.
34 Anil MH,Love S,Williams S,Shand A,McKinstry JL,Helps CR,Waterman-Pearson A,Seghatchian J,Harbour DA.Potential contamination of beef carcasses with brain tissue at slaughter.Vet.Rec.1999;145(16):460-462.35 平成14年度厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服緊急対策研究事業(牛海綿状脳症研究分野)プリオン検出技術の高度化及び牛海綿状脳症の感染・発症機構に関する研究班 主任研究者 佐多徹太郎 国立感染症研究所感染病理部 分担研究報告書「食肉の神経組織による汚染防止に関する研究」
36 Prendergast DM,Sheridan JJ,Daly DJ,McDowell DA,Blair IS.The use of a marked strain of Pseudomonas fluorescens to model the spread of brain tissue to the musculature of cattle after shooting with a captive bolt gun.J.Appl.Microbiol.2004;96(3):437-446.
表1 世界のBSE発生頭数及びvCJD症例数(BSE:頭、vCJD:人)
BSE発生順 |
国名 |
BSE |
vCJD |
1 |
英国 |
183,880 |
147 |
2 |
アイルランド |
1,424 |
1※2 |
3 |
フランス |
914 |
6※1 |
4 |
ポルトガル |
902 |
― |
5 |
スイス |
454 |
― |
6 |
スペイン |
448 |
― |
7 |
ドイツ |
331 |
― |
8 |
ベルギー |
125 |
― |
9 |
イタリア |
117 |
1 |
10 |
オランダ |
76 |
― |
11 |
デンマーク |
14 |
― |
12 |
スロバキア |
15 |
― |
13 |
ポーランド |
16 |
― |
14 |
日本 |
11 |
― |
15 |
チェコ |
12 |
― |
16 |
スロベニア |
4 |
― |
17 |
カナダ |
3 |
1※2 |
18 |
ルクセンブルク |
2 |
― |
19 |
リヒテンシュタイン |
2 |
― |
20 |
オーストリア |
1 |
― |
21 |
ギリシャ |
1 |
― |
22 |
フィンランド |
1 |
― |
23 |
イスラエル |
1 |
― |
24 |
アメリカ |
(1)※3 |
1※2 |
出典) BSE発生数については、OIE(国際獣疫事務局)等(2004年7月9日時点;英国のデータは2004年1月16日時点)、vCJD症例数については、Department of Health(英国保健省)等(2004年7月5日時点)。
なお、表中の”―”は、vCJDの報告がないことを示す。
※1 英国滞在歴のある患者を含む。
※2 英国滞在歴のある患者。
※3 米国で発見されたBSE感染牛は、カナダで出生した牛であり、カナダに集計されている。
平成16年8月3日
牛海綿状脳症(BSE)のスクリーニング検査結果について(週報)
◎全頭検査開始以降にBSEと診断された牛は9頭(平成13年9月に千葉県で確認された1例目及び死亡牛検査で確認された1例を含め、国内では11頭)。
その他のスクリーニング検査の結果は以下の通り。
|
症状を呈する牛 ※1 |
生後30ヶ月齢以上の牛 |
その他の牛 |
計 |
|||||||||
搬入日 |
陰性 |
陽性 |
検査中 |
陰性 |
陽性 |
検査中 |
陰性 |
陽性 |
検査中 |
陰性 |
陽性 |
検査中 |
計 |
平成13年度10月18日~3月31日 |
1,851 |
0 |
0 |
215,529 |
19※2 |
0 |
306,152 |
40 |
0 |
523,532 |
59 |
0 |
523,591 |
平成14年度4月1日~3月31日 |
2,970 |
3※3 |
0 |
517,744 |
23※4 |
0 |
733,053 |
18 |
0 |
1,253,767 |
44 |
0 |
1,253,811 |
平成15年度4月1日~3月31日 |
6,264 |
2※5 |
0 |
494,983 |
4 |
0 |
751,370 |
7※6 |
0 |
1,252,617 |
13 |
0 |
1,252,630 |
平成16年4月1日~4月30日 |
569 |
0 |
0 |
44,671 |
2 |
0 |
69,240 |
0 |
0 |
114,480 |
2 |
0 |
114,482 |
5月1日~5月31日 |
541 |
0 |
0 |
36,306 |
0 |
0 |
60,132 |
0 |
0 |
96,979 |
0 |
0 |
96,979 |
6月1日~6月30日 |
566 |
0 |
0 |
36,234 |
2 |
0 |
61,860 |
2 |
0 |
98,660 |
4 |
0 |
98,664 |
7月1日~7月3日 |
57 |
0 |
0 |
3,679 |
0 |
0 |
5,797 |
0 |
0 |
9,533 |
0 |
0 |
9,533 |
7月4日~7月10日 |
145 |
0 |
0 |
9,501 |
1 |
0 |
15,851 |
1 |
0 |
25,497 |
2 |
0 |
25,499 |
7月11日~7月17日 |
187 |
0 |
0 |
9,634 |
0 |
0 |
16,634 |
1 |
0 |
26,455 |
1 |
0 |
26,456 |
7月18日~7月24日 |
138 |
0 |
0 |
8,992 |
0 |
0 |
13,670 |
1 |
0 |
22,800 |
1 |
0 |
22,801 |
7月25日~7月31日 |
183 |
0 |
0 |
10,198 |
0 |
0 |
16,324 |
1 |
0 |
26,705 |
1 |
0 |
26,706 |
計 |
13,471 |
5 |
0 |
1,387,471 |
51 |
0 |
2,050,083 |
71 |
0 |
3,451,025 |
127 |
0 |
3,451,152 |