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○抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)について

(平成18年3月1日)

(事務連絡)

(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬食品局審査管理課通知)

「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂については、平成17年11月1日付薬食審査発第1101001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知にて通知したところですが、今般、抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)を別添のとおりとりまとめましたので、貴管内関係業者に対し周知願います。

別添

抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインに関するQ&A

全般

Q1

ガイドライン中で用いられる『奏効率(割合)』、『有効率』の定義を明確にしていただきたい。

A1

腫瘍縮小効果のみに基づく有効性を表現する場合には「奏効率(割合)」とし、腫瘍縮小以外の有効性評価も考慮に入れた効果を表現する場合には「有効率」を用いた。「奏効率(割合)」、「有効率」の解釈は、薬剤の特性、がんの種類、対象患者の状態等により変わり得る。例えば、固形がんの腫瘍縮小効果判定にはResponse Evaluation Criteria In Solid Tumors(RECIST)の使用が一般的である。一方、白血病等の血液腫瘍においてはRECIST以外の判定規準も用いられ、CR(complete remission)のみを有効とすることがある。

Ⅰ.緒言

Q2

本ガイドラインの適用範囲が、新有効成分含有医薬品の承認申請のみであるのか、効能追加までを含むのか、用法・用量の追加までを含むのか明確にしていただきたい。

A2

新有効成分含有医薬品の承認申請だけではなく、効能・効果及び用法・用量に関する製造販売承認事項一部変更承認申請も含まれる。

Ⅱ.背景

Q3

米国・EUをはじめとする海外の規制当局における抗悪性腫瘍薬の臨床評価法に関するガイドラインとの共通化も念頭に置き、今回のガイドライン改訂を行ったとあるが、試験計画の立案にあたっては、これらの海外ガイドラインに基づいて設定したエンドポイントも受入れ可能か。

A3

薬剤の特性、がんの種類、対象患者の状態等を考慮した場合に、科学的に妥当と判断できるエンドポイントであれば、米国・EUをはじめとする海外規制当局のガイドラインに基づいて設定したエンドポイントについても受入れ可能である。

Ⅲ.概要

Q4

当該ガイドラインにおいて、非小細胞肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌等の患者数が多いがん腫で、科学的根拠に基づき申請効能・効果の対象患者が著しく限定される場合とはどのような場合が想定されるか。

A4

例えば、上記がん腫の救援(サルベージ)治療の対象患者、分子標的薬等で予め効果を期待する患者集団を特定する場合、バイオマーカーによるレスポンダーの特定が可能な場合等が考えられ、それらの特定により対象患者人数の限定がある場合を想定している。

Q5

当該ガイドラインにおいて、「第Ⅱ相試験終了時において高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認められる場合には、第Ⅲ相試験の結果を得る前に、承認申請し承認を得ることができる。」とされている。ここでいう高い臨床的有用性を推測させる相当の理由とは何を指しているのか。

A5

奏効率、生存期間に関連する代理指標、QOL等で、極めて高い効果が認められる場合や、極めて優れた安全性が認められる場合を指す。

Q6

当該ガイドラインにおいて、「第Ⅱ相試験終了時において高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認められる場合には、第Ⅲ相試験の結果を得る前に、承認申請し承認を得ることができる。」とされている。これらのデータは海外試験成績から得られた成績に基づくものであっても、差し支えないとの解釈でよいか。

A6

信頼できる海外の第Ⅱ相試験で高い臨床的有用性が推測されており、かつ、日本人における用法・用量に懸念がない場合は承認申請を行うことは可能と考える。

Q7

当該ガイドライン(Ⅲ.概要3))で示される「既承認薬と比較して」とは、どのような薬剤、がん腫においても既承認薬との比較試験が必要という意味ではなく、患者数が少なく十分な検出力のある比較試験を実施できないがん腫や、生存期間が長く比較試験により延命効果を確認するのに著しく長期間のフォローアップを要するがん腫では、必ずしも直接的な比較を求めるものではないことを確認したい。

A7

患者数が少なく比較試験の実施が困難な場合については直接比較を求めることはない。また、長期間のフォローアップを要するがん腫において合理的な理由がある場合は一律に全生存期間の比較試験を求めることはない。

Q8

「優れた特長」については、有効性が臨床的に同等であれば、既承認薬と比較して安全性が高いことも優れた特長と考えること、さらに、有効性や安全性が同等である場合にも、剤型あるいは投与経路の違いによる簡便性の向上等も優れた特長に含まれると考えて差し支えないか。

A8

そのような場合も考えられる。剤型あるいは投与経路の違いによる簡便性の向上等を優れた特徴とする場合には、客観的にその特徴を示す必要がある。

Ⅳ.第Ⅰ相試験

Q9

「毒性が強い抗悪性腫瘍薬の第Ⅰ相試験では、健康な人ではなく、がん患者を対象とすべきである。」とされているが、非臨床試験の結果、毒性が弱いものについては、健康成人を対象とした試験も可能であると解釈して差し支えないか。

A9

ケースバイケースであるが、そのような場合もある。

Q10

「毒性が強い抗悪性腫瘍薬の第Ⅰ相試験では、健康な人ではなく、がん患者を対象とすべきである。また、一般的に認められた標準的治療法によって延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者を対象とすべきではない。」とされている。「一般的に認められた標準的治療法」とは必ずしも承認の有無でなく、客観的なデータをもって、延命や症状緩和が得られる可能性が示された治療法を指すと解釈して差し支えないか。

A10

そのような解釈で差し支えない。

Q11

「毒性が強い抗悪性腫瘍薬の第Ⅰ相試験では、健康な人ではなく、がん患者を対象とすべきである。また、一般的に認められた標準的治療法によって延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者を対象とすべきではない。」とされているが、海外での先行データから、一次治療、二次治療でもベネフィットが期待できる場合には、国内第Ⅰ相試験の対象患者として、一般的に認められた標準的治療法によって、延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者を対象とすることも可能と解釈して差し支えないか。

A11

このような場合には、対象患者の選択基準のみならず第Ⅰ相試験のデザイン等が典型的な第Ⅰ相試験とは異なることも考えられるので、ケースバイケースでの判断が必要になる。

Q12

「1回投与、週1回反復投与、連日投与等各種の用法のうち、非臨床試験における成績を基に、予想される第Ⅱ相試験での用法についてそれぞれ検討を行う。」とされているが、第Ⅰ相試験を複数のスケジュールで検討するとの判断に際しては、非臨床試験のみならず、同一薬の先行する海外臨床試験での用法、併用薬の用法、医療現場での利便性等も考慮に入れ用法設定を検討しても差し支えないか。

A12

そのような解釈で差し支えない。

Q13

「Grade3以上の薬剤との関連性を否定できない有害事象の発現が経験された場合、その段階にさらに少なくとも3例を加えた6例以上で検討を行う。」とされているが、Grade3の血液毒性等をDLTと定義せずに行う場合があるため、Grade3の有害事象についての取扱いについて確認したい。

A13

Grade3の薬剤との関連性を否定できない有害事象であっても、例えばコントロール可能と考えられるGrade3の血液毒性等をDLTの定義から除外する場合もある。科学的倫理的に妥当であるDLTを定義し、適切な増量計画を実施することでよい。

Ⅴ.第Ⅱ相試験

Q14

「第Ⅱ相試験における臨床的意義のある治療効果とは、通常、一定の規準で評価される腫瘍縮小効果を指す。」とされている。「臨床的意義のある治療効果」として、生存率の上昇、臨床的意義が公知である腫瘍マーカーの変化、QOLの改善等、腫瘍縮小効果以外に適切と考えられる指標がある場合には、それらを用いることと解釈して差し支えないか。

A14

そのような解釈で差し支えない。臨床的意義のある治療効果は、薬剤により評価指標が異なる場合もあり、「通常、一定の規準で評価される腫瘍縮小効果」の記載は腫瘍縮小効果以外の評価指標を選択することを妨げるものではない。

Q15

「乳癌、小細胞肺癌、大腸癌、悪性リンパ腫、白血病、精巣腫瘍、卵巣癌等では一定の効果が期待できる第一選択となる標準的な併用療法や、さらに場合により第二選択の併用療法も存在するので、初回治療例を対象として治験を行うのは困難な場合が多い。従って、この場合は適当な時期の再発例又は不応例を対象として治験を行う。」とされているが、初回治療例を対象とする場合の想定があれば示してもらいたい。

A15

初回治療例を対象とする場合の例としては、既存の標準的治療法に併用することによる上乗せ効果で評価する場合がある。

Q16

「生理機能(造血器、心臓、肺、肝、腎等)が十分保持されていること。ただし、PS3、4の症例は除外する。」とされているが、骨転移や骨折患者におけるPS3の症例も機械的に除外することを示しているのか。

A16

がん腫や患者状況(例えば骨転移に伴う骨折)により、PS3の状況にある場合があるが、当該患者では生理機能が十分保持されていることが確認できれば対象患者とすることも可能である。

Q17

「薬剤の腫瘍縮小効果を定量的に測定するために、客観的に測定可能な病変を有するもの」とされているが、プライマリーエンドポイントが腫瘍縮小効果でない場合や測定可能病変以外の病変/所見にて有効性評価を行う場合等、試験毎に判断してよいか。

A17

ケースバイケースの判断が必要な場合もあり、そのような理解で差し支えない。

Q18

「期待する有効率以上の効果を示した治験薬であれば治験を早期に終了できるよう十分に倫理面を配慮した試験計画をたてるべきである。」とされているが、どのくらいの有効率を想定しているか。

A18

有効率についてはがん腫により異なるため、一律に設定することは困難であり、個々に検討していただきたい。早期に終了できる試験計画とは予め設定した中間解析により高度かつ有意に有効性が示された場合であるが、この場合の判断の設定は、保守的に行うべきであり、誤って有効と判断してしまう確率を可能な限り低くするために、P値が0.05よりかなり小さい場合のみに限定するべきである。

Q19

「明確に規定された対象患者で有効率を推定し、算出された推定値の精度(信頼区間等)を頑健性のある方法で算出する。」とされているが、患者数が少ないがん腫では、必ずしも頑健性のある方法での統計解析を一律に求めるものではないことを確認したい。

A19

治療の対象となる患者数が少なく、科学的に十分な精度で評価を行うための症例数の集積が実質上難しいと判断されるがん腫では、頑健性のある方法で統計解析を行うことは困難であるが、得られた情報は可能な限り解析、検討を行う必要がある。

Q20

「RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)による効果判定規準等を標準とし、科学の進歩に応じて、その治験薬により適切な規準を使用する。」とは、適切な規準であればRECISTに替えて、効果判定に用いることができるとの解釈で差し支えないか。

A20

そのような解釈で差し支えない。また、RECISTによって効果が判定できない場合は、標準的な基準を用いるべきである。例えば、「癌取扱い規約」を用いることも可能である。

Q21

「治験薬が既承認の抗悪性腫瘍薬の誘導体」とあるが、ここでいう誘導体にはどのようなものが含まれるか。

A21

本ガイドライン中で想定している「既承認薬の抗悪性腫瘍薬の誘導体」とは、既承認薬の化学構造の一部を変更した医薬品だけではなく、既承認の抗悪性腫瘍剤を含有する配合剤や既承認薬を用いたDDS製剤も含まれる。既承認薬の化学構造の一部を変更した医薬品としては、例えば、フルオロウラシル系抗悪性腫瘍剤や白金系抗悪性腫瘍剤、タキサン系抗悪性腫瘍剤、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤に分類される医薬品で、同一群に入る医薬品は本ガイドライン中の「既承認薬の抗悪性腫瘍薬の誘導体」の範疇に含まれる。

Q22

「治験薬が既承認の抗悪性腫瘍薬の誘導体の場合は、当該既承認薬等との比較試験により治験薬の臨床的有用性が高いことを示した臨床試験成績を承認申請時に提出しなければならない。」とされているが、例えば、検討段階ですでに母化合物より効果のある治療が標準的な治療とされている場合には、必ずしも母化合物を対照群とせず比較試験を実施することは可能か確認したい。

A22

対照群が母化合物より優れていることが明確になっている場合あるいは母化合物以外の標準的な治療が存在する場合には、母化合物を対照群とせず実施することは可能と考える。

Ⅵ.第Ⅲ相試験

Q23

第Ⅱ相試験では「期待する有効率以上の効果を示した治療薬であれば治験を早期に終了できるよう十分に倫理面に配慮した…」とあるが、一方、第Ⅲ相試験では類似の記述がない理由を示されたい。

A23

第Ⅱ相試験では引き続いて実施される第Ⅲ相試験により検証的な検討を行うことが前提となっているため、有効性に基づく早期の終了についての配慮を記述した。一方、第Ⅲ相試験での有効による早期中止については、第Ⅲ相試験の目的が有効性の検証であること、試験結果の信頼性(判定のバイアス)及びデータの確実性の問題について議論もあり、一概に臨床試験を有効による早期中止とすることが合理的であると判断することは困難であるため、第Ⅲ相試験の項への記載を行っていない。

Q24

日本での承認申請に際して、海外の第Ⅲ相試験成績を利用する場合、例えば、主剤のレジメンが日本と異なる場合、併用薬剤の用法・用量が日本で承認されている範囲にない場合、日本で未承認の薬剤が併用されている場合等、種々のケースが想定される。そのような成績を利用する上での基本的な考え方をお示し頂きたい。

A24

問題としている違いや差については、それぞれが、定性的あるいは定量的に考察を行い、有効性及び安全性の観点から、受け入れられる範囲の違いか否かを判断する必要がある。有効性や安全性が低下する方向で有る場合はその利用が出来ないと考える。

Q25

第Ⅲ相試験の対照群として用いる世界的な標準的治療が本邦での既承認範囲を逸脱する場合の留意点について示されたい。

A25

治験において対照群として本邦での既承認範囲を逸脱する薬剤を設定することは問題ないと考えるが、そのような治験において得られた結果の解釈や評価は、国内での治療との関係等も整理して慎重に行う必要がある。

Q26

「第Ⅲ相試験では、生存率、生存期間等をプライマリーエンドポイントとし」とあるが、「生存率、生存期間等」については、全生存率、全生存期間に代えて、無増悪生存率、1年生存率等の指標にて評価を行うことも差し支えないか。

A26

第Ⅲ相試験のプライマリーエンドポイントとしては、被験薬や対照薬の特性及びその時点で対象がん腫・対象患者群において求められている臨床的ベネフィットと代替エンドポイントの有無に基づいて最も適切と考えられるものが選択される必要がある。全生存率、全生存期間に代えて、無増悪生存率、1年生存率等を設定することも可能である。