添付一覧
○麻痺性貝毒による二枚貝等の捕食生物の毒化について
(平成17年12月27日)
(事務連絡)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区・衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課通知)
今般、別添のとおり農林水産省の研究事業(研究事業名:「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」)において、検体として採取された複数のイシガニの肝膵臓から、貝類の規制値である4MU/gを超える麻痺性貝毒が検出されたこと及びその毒化の機構として麻痺性貝毒をもつ二枚貝をイシガニが捕食することに起因することが示唆されました。
本件については、平成16年4月13日付け食安監発第0413003号においてヒトの食用に供する二枚貝等の捕食生物の取扱いを定めているところですが、今後イシガニにつきましても、留意されますようお願いします。
なお、本件については、農林水産省と協議済みであるので念のため申し添えます。
別添
イシガニから検出された貝毒に関する情報提供
(農林水産技術会議「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」で得られた成果に基づく情報)
大課題名:現場即応型貝毒検出技術と安全な貝毒モニタリング体制の開発
小課題名:二枚貝捕食者における貝毒成分蓄積とその動態解明
担当機関:水産総合研究センター中央水産研究所
1.研究目的
肉食性が高く、二枚貝等を捕食する可能性がある生物の貝毒蓄積状況を把握して安全性の検討に資するため、麻痺性貝毒が発生している海域におけるイシガニの麻痺性貝毒の蓄積状況を調べた。
2.研究方法
麻痺性貝毒が春季に発生する海域において、イシガニおよびムラサキイガイを採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により麻痺性貝毒成分の蓄積状況を調べた。
3.研究成果の概要
平成17年5月16日に呉港内で採取したムラサキイガイでは、HPLC法による測定値から換算した毒性値が100MU/gを超え、5月中旬以降にムラサキイガイが高毒化していたことが示された(図1b)。このとき、5月16~19日に採取したイシガニ9個体のうち6個体の肝膵臓部から換算毒性値で4.0MU/gを超える麻痺性貝毒成分が検出され、毒量の平均値も規制値となる4.0MU/gを超えた(図1a)。また、この後、5月30日~6月2日に採取したイシガニ17個体のうち9個体の肝膵臓部でも換算毒性値は4.0MU/gを超えた。このことから、麻痺性貝毒発生海域においては、イシガニも規制値を超えて毒化する可能性があることが明らかとなった。一方、ムラサキイガイが高毒化する前の4月25日~28日に採取したイシガニの毒量はすべて4.0MU/g以下の換算毒性値であることから、イシガニの毒化は麻痺性有毒プランクトンの発生と関連したものであり、貝毒成分が食物連鎖を介して一時的に蓄積されたものと推測された。
4.留意点
本試料を採取した呉港内は、イシガニも含め商業的な漁獲は行われていない海域であるが、多くの遊漁者があることから、その点での注意が必要である。漁場となる海域でイシガニが毒化し、それが市場に流通する可能性については、イシガニが漁獲される海域において、実態に即したサンプリングを行い調査していく必要がある。なお、イシガニの麻痺性貝毒による被害はこれまでに報告されていない。また、本研究においては、イシガニから採取出来る肝膵臓試料が少量であるため、公定法(マウスアッセイ法)による分析は行っていない。
図1.呉港内で採取したイシガニの肝膵臓部(a)およびムラサキイガイ可食部(b)の換算毒性値
換算毒性値は、HPLC法による測定値と各成分の毒性値(Oshima,1995)から算出した。イシガニの換算毒性値は、4/25―28は5個体の、5/16―19は9個体の平均値と標準偏差で示した。ムラサキイガイは10個体を1試料として分析した。