添付一覧
○妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について
(平成17年11月2日)
(食安基発第1102001号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知)
平成17年11月2日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会において、魚介類に含まれる水銀に関する安全確保について審議され、別添のとおり、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(Q&A)」及び「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(概要)」が取りまとめられたので、関係者への周知方よろしくお願いします。
なお、別紙のとおり、水産庁及び当省雇用均等・児童家庭局母子保健課あて、通知していることを申し添えます。
[別紙]
○妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について
(平成17年11月2日)
(食安基発第1102002号)
(農林水産省水産庁増殖推進部漁場資源課長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知)
平成17年11月2日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会において、魚介類に含まれる水銀に関する安全確保について審議され、別添のとおり、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(Q&A)」及び「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(概要)」が取りまとめられたので、省内関係部局の他、関係者への周知方よろしくお願いします。
○妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について
(平成17年11月2日)
(食安基発第1102003号)
(雇用均等・児童家庭局母子保健課長あて医薬食品局食品安全部基準審査課長通知)
(公印省略)
平成17年11月2日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会において、魚介類に含まれる水銀に関する安全確保について審議され、別添のとおり、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(Q&A)」及び「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(概要)」が取りまとめられたので、関係者への周知方よろしくお願いします。
妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(概要)
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
1.はじめに
魚介類(鯨類を含む。以下同じ。)は、良質なたんぱく質や健康に良いと考えられるEPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸をその他の食品に比ベー般に多く含み、また、微量栄養素の摂取源である等、健康的な食生活にとって不可欠で優れた栄養特性を有しています。魚介類はこのように利点が多い食材ですが、反面、自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、特定の地域等にかかわりなく、一部の魚介類については水銀濃度が他の魚介類と比較して高いものも見受けられます。
我が国における水銀の摂取を見た場合、魚介類によるものが全体の約80%を占めており、また、水銀に関する近年の研究報告では、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされていることから、妊婦については魚介類を通じた水銀の摂取に一定の注意が必要と考えられます。
なお、妊婦を除く方々にあっては、すべての魚介類について、現段階では水銀による健康への悪影響が一般に懸念される報告はありませんので、健康に有益である魚介類をバランス良く摂取し、健康の維持増進に努めることが大切です。
注) 胎児の健康への影響が懸念されているのは「メチル水銀」ですが、消費者等に分かりやすく伝えるため、特段の必要がない場合には「メチル水銀」とせず、単に「水銀」と記載しています。
2.我が国における「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」の見直し
① 経緯
我が国の水銀を含有する魚介類への対応としては、平成15年6月に、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会の意見を聴いて、サメ、メカジキ、キンメダイ、クジラ類の一部について、妊婦を対象とした摂食に関する注意事項を公表しました(別添1参照)。
その後、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議において、水銀に関する暫定的耐容週間摂取量について、発育途上の胎児を十分に保護するため水銀の再評価が実施されたこと、我が国においても継続的に実施された魚介類の水銀濃度に関する報告が取りまとめられたこと等から、今般、注意事項について見直しを行うこととしました。
なお、諸外国においても妊婦を対象に特定の魚介類について、摂食に関する注意事項が公表されています(別添2参照)。
② 食品安全委員会への評価依頼
水銀を含有する魚介類の摂食に関する注意事項の見直しを行うためには、2つのポイントがあります。第1のポイントは、どの程度までの水銀摂取が安全であるかを定めることです。この水銀摂取レベル(耐容量)に関しては、特に悪影響を受けやすいと考えられる対象者(ハイリスクグループ)の健康を十分に保護することを目的として決定する必要があります。このため、ハイリスクグループを特定することも大事な作業です。第2のポイントは、実際にどの程度の水銀を摂取しているか等の実態を把握した上で、注意事項の見直しを行うことです。
第1のポイントについては、食品安全基本法により食品安全委員会の業務とされていることから、平成16年7月23日、食品安全委員会に耐容量の設定について食品健康影響評価を依頼しました。併せて、ハイリスクグループについても検討を依頼しました(別添3参照)。
③ 食品安全委員会における審議
厚生労働省からの評価依頼を受けて、食品安全委員会は平成16年7月開催の委員会で審議を行うことを決定し、同年9月以降5回の汚染物質専門調査会が開催され、平成17年6月8日に開催された第6回専門調査会で審議結果が示されました。
審議結果では、耐容量は1週間当たり体重lkgに対し、メチル水銀2.0μg(Hgとして)が示されました。また、ハイリスクグループについては胎児とすることが適切とされ、平成17年8月4日、食品健康影響評価結果として厚生労働省に通知されました(別添4―1、別添4―2参照)。(参考:1μg(マイクログラム)は1/100万グラム)
④ 審議会における検討
第2のポイントについては、厚生労働省等において実施された調査結果に基づき、第1回(平成16年8月17日)、第2回(平成16年11月24日)、第3回(平成17年8月12日)、第4回(平成17年11月2日)の4回にわたって薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会で審議を行いました。
・魚介類の水銀含有量
厚生労働省、水産庁、地方自治体及び諸外国において実施された魚介類に含まれる水銀濃度に関する検査結果を取りまとめました。
その結果、国内385種類、9,712検体、国外165種類、21,724検体におよぶ魚介類の水銀含有量を整理しました(別添5参照)。
・我が国における魚介類の摂食の実態
平成13、14年の国民栄養調査について、15~49歳の女性摂食者における各魚介類の摂食量を特別に集計しました(別添6参照)。
これによると、魚介類の摂食者における平均摂食量は、魚類平均では73.6g、カジキ類65.4g、キンメダイ75.0g及びマグロ類32.2g等となっていますが、マグロ類では、人によって摂食量に大きな差があることが報告されています。
なお、マグロ類については、独立行政法人国立健康・栄養研究所において、マグロの刺身、寿司、鉄火丼の一回分(いわゆる1人前の量)についても調査を行いました(別添7参照)。
・我が国における水銀暴露の実態
我が国においては、国内に流通している食品を介した汚染物質の実際の摂取量を明らかにすることを目的とした汚染物質摂取量調査(マーケットバスケット調査)が行われています。
この報告によると、最近10年間の水銀の推定一日摂取量平均は8.4μg/人/日であり、仮に水銀のすべてがメチル水銀であって、妊婦の体重を50kgとした場合であっても、その摂取量は1.2μg/kg体重/週(8.4μg×7日÷50kg)であることから、食品安全委員会から示されている食品健康影響評価である耐容量(2.0μg/kg体重/週)を下回っています。
・魚介類摂食量の試算
耐容量の範囲で摂取できる魚介類の摂食量を、それぞれの魚介類の水銀含有量の平均値に基づき試算しました。具体的には、魚介類の水銀含有量の平均値が総水銀で0.4ppm、メチル水銀で0.3ppmを超えるものを対象としました。その上で、妊婦の体重を国民栄養調査から55.5kgと仮定し試算を行いました。試算の方法は以下のとおりです(別添8参照)。
3.注意事項の見直しとQ&A
審議会における議論を踏まえ、次の点に留意し見直しを行った注意事項を作成しました(別添9参照)。また、正確な理解に資するため、Q&Aも作成しました(別添10参照)。
・魚介類は健康的な食生活を営む上で重要な食材であること
・魚介類は食物連鎖の過程で水銀を蓄積すること
・検討している水銀の影響は、あったとしても胎児の将来の社会生活に支障のあるような重篤なものでないこと
・妊婦については、一定の注意をした上で魚介類を摂食することが重要であること。また、水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることは避けて、水銀の摂取量を減らすことで、魚食のメリットとの両立が可能であること
・妊婦が注意事項の対象であり、子供や一般の方々は対象外であること
・消費者に注意事項を正確に理解してもらうことが必要であること
4.その他
今後とも、科学技術の進歩にあわせて、本注意事項の見直しを行うこととしています。
第1回、第2回及び第3回の審議会資料については、次の厚生労働省ホームページで御参照いただけます。
また、第4回の審議会資料についても、速やかにホームページに掲載することとしております。
○厚生労働省ホームページアドレス
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/index.html
本注意事項については、いわゆる風評被害が生じることのないよう正確な御理解をよろしくお願いします。 |
平成17年11月2日
妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会
乳肉水産食品部会
<魚介類の有益性>
魚介類(鯨類を含む。以下同じ。)は、良質なたんぱく質や、生活習慣病の予防や脳の発育等に効果があるといわれているEPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸をその他の食品に比べ一般に多く含み、また、カルシウムを始めとする各種の微量栄養素の摂取源である等、健康的な食生活にとって不可欠で優れた栄養特性を有しています。
<魚介類の水銀>
魚介類は自然界の食物連鎖を通じて、特定の地域等にかかわりなく、微量の水銀を含有していますが、その含有量は一般に低いので健康に害を及ぼすものではありません。しかしながら、一部の魚介類については、食物連鎖を通じて、他の魚介類と比較して水銀濃度が高いものも見受けられます。
<妊婦の方々へ>
近年、魚介類を通じた水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされています。この胎児への影響は、例えば音を聞いた場合の反応が1/1,000秒以下のレベルで遅れるようになるようなもので、あるとしても将来の社会生活に支障があるような重篤なものではありません。妊娠している方又は妊娠している可能性のある方(以下「妊婦」という。)は、次の事項に注意しつつ、魚介類を摂食するよう心がけてください。
わが国における食品を通じた平均の水銀摂取量は、食品安全委員会が公表した妊婦を対象とした耐容量の6割程度であって、一般に胎児への影響が懸念されるような状況ではありません。
魚介類は健やかな妊娠と出産に重要である栄養等のバランスのよい食事に欠かせないものです。本注意事項は、妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではありません。また、本注意事項は胎児の保護を第一に、食品安全委員会の評価を踏まえ、魚介類の調査結果等からの試算を基に作成しました。水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることは避けて、水銀摂取量を減らすことで魚食のメリットを活かすこととの両立を期待します。
妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量(筋肉)の目安
摂食量(筋肉)の目安 |
魚介類 |
1回約80gとして妊婦は2ヶ月に1回まで(1週間当たり10g程度) |
バンドウイルカ |
1回約80gとして妊婦は2週間に1回まで(1週間当たり40g程度) |
コビレゴンドウ |
1回約80gとして妊婦は週に1回まで(1週間当たり80g程度) |
キンメダイ メカジキ クロマグロ メバチ(メバチマグロ) エッチュウバイガイ ツチクジラ マッコウクジラ |
1回約80gとして妊婦は週に2回まで(1週間当たり160g程度) |
キダイ マカジキ ユメカサゴ ミナミマグロ ヨシキリザメ イシイルカ |
(参考1) マグロの中でも、キハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)、ツナ缶は通常の摂食で差し支えありませんので、バランス良く摂食して下さい。
(参考2) 魚介類の消費形態ごとの一般的な重量は次のとおりです。
寿司、刺身 一貫又は一切れ当たり 15g程度
刺身 一人前当たり 80g程度
切り身 一切れ当たり 80g程度
目安の表に掲げた魚介類のうち複数の種類を食べる場合には、次のことに御留意ください。
例えば、表に「週に1回と記載されている魚介類」のうち、2種類または3種類を同じ週に食べる際には食べる量をそれぞれ2分の1または3分の1にするよう工夫しましょう。また、表に「週に1回と記載されている魚介類」及び「週に2回と記載されている魚介類」を同じ週に食べる際には、食べる量をそれぞれ2分の1にするといった工夫をしましょう。また、ある週に食べ過ぎた場合は次の週に量を減らしましょう(具体的な食べ方は、本注意事項に関するQ&Aの問9を御覧ください。)。
<子供や一般の方々へ>
今回の注意事項は胎児の健康を保護するためのものです。子供や一般の方々については、通常食べる魚介類によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではありません。健康的な食生活の維持にとって有益である魚介類をバランス良く摂取してください。
<正確な理解のお願い>
魚介類は一般に人の健康に有益であり、本日の妊婦への注意事項が魚介類の摂食の減少やいわゆる風評被害につながらないように正確に理解されることを期待します。
なお、今後とも科学技術の進歩にあわせて、本注意事項を見直すこととしています。
正確な御理解のために、本注意事項に関するQ&Aについても御参照をお願いします。
妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて
【Q&A】(平成17年11月2日)
(目次)
【語句説明】
【文章中の記載について】
【注意事項の見直し】
問1 なぜ、今回、妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しを行ったのですか。
【注意事項の対象者】
問2 今回の注意事項の対象となるのはどのような人ですか。それ以外の人は問題がないのですか。
問3 授乳中の母親も、魚介類の摂食に注意すべきですか。
問4 小児も、魚介類の摂食に注意すべきですか。
【注意事項の概要】
問5 妊婦への注意事項の内容とはどのようなものですか。
問6 エビ、サケ、タラなどは米国の注意事項では摂食量の目安が示されていますが、なぜ、我が国では注意事項の対象とならなかったのでしょうか。
問7 水銀による影響を考えると、妊婦は魚介類を食べない方がよいのですか。
問8 妊婦は注意事項に記載されてある種類以外の魚介類について、安心して食べることができるのでしょうか。
問9 もし、妊婦が注意事項にある魚介類を食べ過ぎてしまった場合はどうすればよいのですか。また、食べ過ぎないようにするためにはどのようにすればよいのですか。
問10 今回の妊婦への注意事項はどのようにして作成されたのですか。
問11 なぜ今回マグロが注意事項にある魚介類に入ったのですか。
問12 マグロについては、どのような注意をしたらよいのですか。
問13 クジラは一般的に水銀濃度が高いのですか。
問14 加工食品で妊婦が気をつけるものはありませんか。
【水銀の健康影響等】
問15 魚介類中になぜ水銀が含まれているのですか。
問16 なぜ、一部の魚介類は水銀の含有量が高いのですか。
問17 現在議論されている水銀の健康影響とはどのようなものですか。
問18 現在の水銀の規制はどのようになっているのですか。
問19 日本人の水銀摂取量はどの程度ですか。
問20 日本人が現在摂取している程度の水銀量は健康に影響があるのですか。
問21 妊娠に気づくのが遅れたのですがどうすればよいですか。また、妊婦は髪の水銀濃度を測定したほうが良いですか。
【今後の予定など】
問22 今回、注意事項の発表に当たり、魚介類の摂食の減少や風評被害につながらないよう、どのような施策を講ずる予定ですか。
別添 参考:水産物の栄養面での特徴(平成11年度及び14年度漁業白書より抜粋)
【語句説明】
1.EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)
魚類、特にいわし、まぐろなど海産魚の脂質に多く含まれる脂肪酸の一種。血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあるとされています。
(平成11年度漁業白書より抜粋 別添参照)
2.耐容量(耐容摂取量)
耐容摂取量は、意図的に使用されていないにもかかわらず、食品中に存在したり、食品を汚染する物質(重金属、カビ毒など)に設定されるものです。耐容週間摂取量は、食品の消費に伴い摂取される汚染物質に対して人が許容できる一週間当たりの摂取量となります。
(食品安全委員会「食品の安全性に関する用語集」より引用)
3.暴露量
食品を通じたハザード(危害要因)の摂取量。ハザードとは、健康に悪影響をもたらす原因となる可能性のある食品中の物質又は食品の状態。
(食品安全委員会「食品の安全性に関する用語集」を参考)
4.一日摂取量調査(マーケットバスケット方式)
国民栄養調査による食品摂取量を参考に市場で流通している農産物等を購入し、通常行われている調理方法に準じて調理を行った後、化学分析を実施し、対象となる農薬の摂取量を調べることを言います。
【文書中の記載について】
・水銀
胎児の健康への影響が懸念されているのは「メチル水銀」ですが、消費者等に分かりやすく伝えるため、特段の必要がない場合には「メチル水銀」とせず、単に「水銀」と記載しています。
・魚介類
「魚介類」には、クジラ類(クジラ、イルカ)を含みます。
【注意事項の見直し】
問1 なぜ、今回、妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しを行ったのですか。 |
答
1 平成15年6月、メチル水銀の毒性に関する資料、魚介類中の水銀濃度に関するデータ等に基づき、審議会において審議を行い、妊婦を対象に魚介類の摂食と水銀に関する注意事項を公表しました。
2 その後、国際専門会議(JECFA)において、発育途上の胎児を十分保護するため、暫定的耐容量(PTWI)3.3μg/kgから1.6μg/kgに引き下げられ、また、諸外国において、妊婦等への注意事項の発出あるいは改正が行われました。このようなことにかんがみ、今回、注意事項の見直しに当たって、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼しました。
3 厚生労働省としては、この食品健康影響評価結果に基づき、審議会における議論を踏まえ、今回、注意事項の見直しを行いました。
(参考)
1μgは1/100万グラム(1μg=1/1,000,000g)
【注意事項の対象者】
問2 今回の注意事項の対象となるのはどのような人ですか。それ以外の人は問題がないのですか。 |
答
1 食品安全委員会における食品健康影響評価において、特に水銀の悪影響を受けやすいと考えられる対象者(ハイリスクグループ)は胎児とされました。このため、今回の「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」(以下「注意事項」という。)は妊娠している方または妊娠している可能性のある方(以下「妊婦」という。)を対象としています。
なお、「妊娠している可能性のある方」とは、食品安全委員会のホームページでは次のとおり説明されています。
「妊娠可能な女性すべて」という意味ではなく、「妊娠したかな、と思われる女性」という意味と考えてください。妊娠がわかるのはふつう妊娠2ヶ月以降です。胎児に多くの栄養分を運ぶために胎盤組織に大量の血液が流れるようになるのは、胎盤が完成する妊娠4ヶ月以降ですから、妊娠に気がついてから食生活に気をつければ、メチル水銀は体外に排泄されていくので、心配する必要はありません。
2 食品健康影響評価では、「乳児及び小児については、現時点で得られている知見によれば、乳児では暴露量(語句説明参照)が低下し、小児は成人と同様にメチル水銀が排泄され、脳への作用も成人の場合と類似している。したがって、ハイリスクグループは胎児と考えることが妥当と判断された。」とされています。このため、乳児、小児や妊婦以外の成人は、注意事項の対象とする必要はないと判断しています。
3 魚介類は良質なたんぱく質を多く含み、EPA、DHA(語句説明参照)等の高度不飽和脂肪酸がその他の食品に比ベー般に多く含まれ、また、微量栄養素の摂取源である等重要な食材です。今回の注意事項の見直しが、魚介類の摂食の減少につながらないよう正確な御理解をお願いします。
問3 授乳中の母親も、魚介類の摂食に注意すべきですか。 |
答
1 食品健康影響評価では、母乳を介して乳児が摂取する水銀量は低いことが示されています。このため、授乳中の母親は今回の注意事項の見直しにおいても対象としていません。
2 魚介類は良質なたんぱく質を多く含み、EPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸がその他の食品に比ベー般に多く含まれ、また、微量栄養素の摂取源である等重要な食材です。今回の注意事項の見直しが、魚介類の摂食の減少につながらないよう正確な御理解をお願いします。
問4 小児も、魚介類の摂食に注意すべきですか。 |
答
1 食品健康影響評価では、小児は成人と同様の水銀の排泄機能を有しており、脳への作用も成人と類似していること、「セイシェル小児発達研究」において、子供の神経系の発達にメチル水銀に関連する有害影響が証明されなかったこと等が示されています。これらから、小児は今回の注意事項の見直しにおいても対象としていません。
2 魚介類は良質なたんぱく質を多く含み、EPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸がその他の食品に比ベー般に多く含まれ、また、カルシウム等の微量栄養素の摂取源である等重要な食材です。今回の注意事項の見直しが、魚介類の摂食の減少につながらないよう正確な御理解をお願いします。
【注意事項の概要】
問5 妊婦への注意事項の内容とはどのようなものですか。 |
答
1 魚介類は、健康な食生活を営む上で重要な食材です。多くの魚介類は、特定の地域に関わりなく、微量の水銀を含有していますが、一般に含有量が低く、健康に害を及ぼすものではありません。(問10参照)
しかし、一部の魚介類については、自然界の食物連鎖を通じて、他の魚介類と比較して、水銀濃度が高くなるものも見受けられます。
近年、魚介類を通じた水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされています。この胎児への影響は、例えば音を聴いた場合の反応が1/1,000秒以下のレベルで遅れるようになるようなもので、あるとしても将来の社会生活に支障があるような重篤なものではありません。妊婦は、注意事項を正しく理解するように努めて下さい。
魚介類は健やかな妊娠と出産に重要である栄養等のバランスの良い食事に欠かせないものです。本注意事項は、妊婦に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではありません。また、本注意事項は、胎児の保護を第一に食品安全委員会の評価を踏まえ、魚介類の調査結果等からの試算を基に作成しました。注意事項の対象となった魚介類を偏って多量に食べることを避け、水銀摂取量を減らすことによって魚食のメリットを活かすこととの両立を期待します。
妊婦が、注意していただきたい魚介類と摂食量の目安については、次の頁の表をご覧下さい。
<妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂取量(筋肉)の目安>
摂食量(筋肉)の目安 |
魚介類 |
1回約80gとして妊婦は2ヶ月に1回まで(1週間当たり10g程度) |
バンドウイル力 |
1回約80gとして妊婦は2週間に1回まで(1週間当たり40g程度) |
コビレゴンドウ |
1回約80gとして妊婦は週に1回まで(1週間当たり80g程度) |
キンメダイ メカジキ クロマグロ メバチ(メバチマグロ) エッチュウバイガイ ツチクジラ マッコウクジラ |
1回約80gとして妊婦は週に2回まで(1週間当たり160g程度) |
キダイ マカジキ ユメカサゴ ミナミマグロ ヨシキリザメ イシイルカ |
参考1) マグロの中でも、キハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)、ツナ缶は通常の摂食で差し支えありませんので、バランス良く摂食してください。
参考2) 魚介類の消費形態ごとの一般的な重量は以下のとおりです。
寿司、刺身 一貫または一切れ当たり 15g程度
刺身 一人前当たり 80g程度
切り身 一切れ当たり 80g程度
2 例えば、週に1回と注意事項に記載されている魚介類のうち、2種類または3種類を同じ週に食べる際には食べる量をそれぞれ2分の1または3分の1に、また、注意事項に週に1回と記載されている魚介類及び週に2回と記載されている魚介類を同じ週に食べる際には、食べる量をそれぞれ2分の1にするといった工夫をしましょう。また、ある週に食べ過ぎた場合は次の週に量を減らしましょう(具体的な食べ方については、問9を御覧ください。)。
問6 エビ、サケ、タラなどは、米国の注意事項では、摂食量の目安が示されていますが、なぜ、我が国では注意事項の対象とならなかったのでしょうか。 |
答
1 我が国における注意事項の見直しの検討に当たっては、米国等諸外国の注意事項や調査結果も参考にしましたが、国内にお住まいの方々への注意事項のため、国内において流通している魚介類の調査結果(約400種、約9,700検体)を基礎としました。この検査結果によると、エビ、サケ、タラ等の水銀濃度は低く、特に注意を促す必要があるものではないと考えています。
2 エビ、サケ、タラを含め、今回の注意事項の対象としなかった水銀含有量が低い魚介類からの水銀摂取量は、一日摂取量調査結果における魚介類からの水銀摂取量のほぼ半量です。今回の注意事項の検討においては、これらの水銀含有量の低い魚介類からの水銀摂取量も考慮していますので、魚介類をバランス良く摂食されるようお願いします。
問7 水銀による影響を考えると、妊婦は魚介類を食べない方がよいのですか。 |
答
1 魚介類は一般にヒトの健康に有益です。例えば、平成11年度漁業白書(※)にも、「魚介類の脂質には、生活習慣病の予防や脳の発育等に効果がある高度不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれることが知られるようになってきています。また、魚介類や海草類が、カルシウムをはじめとする各種の微量栄養素の重要な摂取源になっていることがあらためて見直されている。」と記載されています。
2 妊婦にあっては、水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることを避け、水銀摂取量を減らすことによって、魚食のメリットを活かすこととの両立を期待します。
※漁業白書については、別添資料を参照願います。
問8 妊婦は注意事項に記載されている種類以外の魚介類について、安心して食べることができるのでしょうか。 |
答
1 約400種、約9,700検体の魚介類についての調査結果が報告されていますが、魚介類が含む水銀の量は低く、妊婦が食べても健康に影響を及ぼすようなレベルではありません。魚介類の調査結果は厚生労働省ホームページで御参照いただけます。(問10参照)
(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/050812-1-05.pdf)
2 魚介類は良質なたんぱく質を多く含み、EPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸がその他の食品に比ベー般に多く含まれ、また、微量栄養素の摂取源である等重要な食材です。
3 妊婦は、注意事項にあるような魚介類の摂食について注意をする必要がありますが、魚介類の摂食の減少につながらないよう正確な御理解をお願いします。
問9 もし、妊婦が注意事項にある魚介類を食べ過ぎてしまった場合はどうすればよいのですか。また、食べ過ぎないようにするためにはどのようにすればよいのですか。 |
答
1 1回または1週間当たりの魚介類の摂食が、体内の水銀の濃度を大きく変えるものではありませんが、1回または1週間の食事で、注意事項にある魚介類を食べ過ぎた場合、次回または次週の食事でその量を減らすなどの工夫をしましょう。
例えば、1回80gとして週に2回までの場合
例1) 1回40gであれば週に4回まで
例2) 1回160gであれば週に1回まで
2 注意事項にある魚介類について、食べ過ぎないようにするため、一週間に2種類または3種類を食べる場合には、食べる量をそれぞれ2分の1または3分の1にしましょう。
例えば、同じ週にクロマグロとメカジキを食べる場合
例1) クロマグロ40gとメカジキ40gをそれぞれ週に1回ずつ
例2) クロマグロ20gとメカジキ60gをそれぞれ週に1回ずつ
3 また、注意事項に週1回と記載されている魚介類及び週に2回と記載されている魚介類を同じ週に食べる場合には、食べる量をそれぞれ2分の1にしましょう。
例えば、同じ週にメカジキとミナミマグロを食べる場合
例) メカジキ40gとミナミマグロ80gを週に1回ずつ
(参考:1週間の献立例)
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1週間の献立例 |
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例1 |
例2 |
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注意が必要 |
摂取量の目安として1週間に2回(1週間に160g)までとされている魚介類(問5参照) |
マカジキの刺身(一人前) |
マカジキの刺身(一人前) |
ミナミマグロの刺身(一人前) |
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摂取量の目安として1週間に1回(1週間に80g)までとされている魚介類(問5参照) |
なし |
キンメダイの煮付け(半人前) |
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摂取量の目安として2週間に1回(1週間に40g)までとされている魚介類(問5参照) |
なし |
なし |
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摂取量の目安として2ヶ月に1回(1週間に10g)までとされている魚介類(問5参照) |
なし |
なし |
注意が必要ないもの |
上記以外の魚介類 |
サンマの塩焼き、アジのたたき、ツナサラダ |
サバの塩焼き、イワシの甘露煮、イカの刺身 |
問10 今回の妊婦への注意事項はどのようにして作成されたのですか。 |
答
今回の妊婦への注意事項は、食品安全委員会における耐容量(語句説明参照)の評価結果を踏まえ、審議会において、魚介類の水銀含有量等に基づき検討が行われたものです。その審議の主な概要については以下のとおりです。
1 水銀含有量が高い魚介類
厚生労働省、水産庁、地方自治体等において実施された約400種、約9,700検体の国内で流通する魚介類に含まれる水銀含有量の調査結果を解析した結果、総水銀の平均値が0.4ppmまたはメチル水銀の平均値が0.3ppmを超える魚介類とその水銀濃度の平均は次のとおりです。ただし、検体数が少ないもの、我が国と諸外国で水銀濃度の差が大きいものなどは除外しています。
魚介類 |
我が国のデータ |
諸外国のデータ |
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総水銀濃度 (ppm) |
メチル水銀濃度 (ppm) |
総水銀濃度 (ppm) |
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|
検体数 |
平均値 |
検体数 |
平均値 |
検体数 |
平均値 |
|
魚類 |
キダイ |
39 |
0.329 |
32 |
0.329 |
― |
― |
キンメダイ |
111 |
0.684 |
82 |
0.532 |
― |
― |
|
クロマグロ |
127 |
0.723 |
120 |
0.542 |
― |
― |
|
クロムツ |
92 |
0.355 |
90 |
0.309 |
― |
― |
|
マカジキ |
28 |
0.460 |
25 |
0.343 |
20 |
0.61 |
|
ミナミマグロ |
93 |
0.498 |
90 |
0.386 |
― |
― |
|
メカジキ |
44 |
0.969 |
42 |
0.674 |
625 |
0.941 |
|
メバチ |
90 |
0.733 |
84 |
0.549 |
― |
― |
|
ユメカサゴ |
96 |
0.413 |
96 |
0.321 |
― |
― |
|
ヨシキリザメ |
30 |
0.544 |
30 |
0.350 |
― |
― |
|
クジラ |
イシイルカ |
4 |
1.035 |
4 |
0.37 |
― |
― |
コビレゴンドウ |
4 |
7.1 |
4 |
1.488 |
― |
― |
|
ツチクジラ |
5 |
1.168 |
5 |
0.698 |
― |
― |
|
バンドウイル力 |
5 |
20.84 |
5 |
6.622 |
― |
― |
|
マッコウクジラ |
13 |
2.1 |
5 |
0.7 |
― |
― |
|
貝類 |
エッチュウバイガイ |
17 |
0.464 |
10 |
0.485 |
― |
― |