添付一覧
○アレルギー物質を含む食品の検査方法について(一部改正)
(平成17年10月11日)
(食安発第1011002号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
アレルギー物質を含む食品の検査方法については、平成14年11月6日付け食発第1106001号厚生労働省医薬局食品保健部長通知によって通知しているところであるが、今般操作性向上等の観点から検査方法の一部を見直すこととし、当該通知を下記のとおり改正することとしたので、検査を行う場合には、これらの方法により実施されたい。
記
1.別添1について、別紙1のとおり改める。
2.別添3について、別紙2のとおり改める。
3.別添4について、別紙3のとおり改める。
(別紙1)
(別添1)
特定原材料(卵、乳、小麦、そば、落花生)の検査方法
序文
本検査法は、特定原材料5品目の表示制度を科学的に検証する目的で、現時点で最も信頼性の高いと考えられる方法によって構成されたものである。該当する検査対象検体は流通する食品原料、添加物及び加工食品であるが、本検査法を全ての食品へ適用することは、実際上不可能である。さらに応用例を蓄積し、問題点を改訂していくこととしているので、御留意願いたい。
なお加工による特定原材料成分の変化・分解や食品からの特定原材料成分の抽出効率の変動により、本検査法による特定原材料総タンパク質含有量の測定結果は実際の含有量と必ずしも正確に一致しない。
1.検査原則及び試料調製法
1.1.検査原則
当検査は、あらゆる加工食品が検査対象検体として想定されるため、その性状により測定結果は変動する。これらを縮小するための原則について記す。
・ 検査対象検体は、一包装を一単位とする。
・ 検査対象検体の食さない部分を廃棄した可食部を試料とする。
・ 試料中の特定原材料成分は、不均一に分布すると考えられるため、検査に供する前に均質化操作を行う。
・ 均質化した試料を調製試料とする。
・ 検査に供する調製試料は固体や液体の性状に関わらず、重量測定にて一定量を採取する。
・ 試料調製を含む検査全般は、空気の動きがなく温度・湿度の変動が少ない場所で実施する。
・ 微量測定のため、粉砕器、フードカッター、秤量用器具は中性洗剤等で洗浄後、アルカリ洗剤に一晩浸け置きする。あるいは超音波洗浄機を用い、30分間の超音波処理を行う。
・ 試料の調製場所と検査場所は、区切られた空間で行い、コンタミネーションを防ぐ。
1.2.試料調製法
食品一包装単位に含まれる可食部全体を試料とする。その後、試料の全量を粉砕器あるいはフードカッター等*で十分に破砕し、均質混和して調製試料とする。
* エースホモジナイザーAM―11(日本精機製作所社製)、レッチェGM200(レッチェ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
注)
① インスタント食品(カップ麺、カップスープ等)には、スープ、かやく及び麺などに小分けされ包装されているものが含まれる。そのような包装形態を持つインスタント食品については全体を一包装単位として考え、小分け包装されたもののすべてを混合し、次いで均質化操作を行った後に調製試料とする。
② 幕の内弁当などの組み合わせ食品では弁当全体を一包装単位として考え、ご飯、おかず及び小分け包装された調味料等のすべてを混合し、次いで均質化操作を行った後に調製試料とする。
2.特定原材料5品目の検査方法
卵、乳、小麦、そば、落花生の検査方法
2.1.ELISA法
食品中の特定原材料由来のタンパク質を検出する手法である。調製試料に対して、改良された複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)と改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の両キットを用いるか、複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)と単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の両キットを用い、検査を行う。
ELISA法を用いた測定検査における注意事項
・ 改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キットを用いた測定検査においては、乳を検知対象とする場合にはカゼインキットを用いて測定を行う。当該キットは加工食品への適用範囲が比較的広い。
・ 単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製特定原材料測定キットを用いた測定検査においては、卵を検知対象とする場合には卵白アルブミンキット、乳を検知対象とする場合にはカゼインキットを用いて測定を行う。上記両キットは加工食品への適用範囲が比較的広い。
・ ELISA法を用いて得られた測定結果において、3ウェル間のCV値が20%以上を示した場合には、再度ELISA操作以降の操作を行う。
・ 1度目の測定を行った結果、得られた数値が8―12μg/gの範囲内にある場合には、再度、同じ調製試料から2g採取し、抽出操作以降の操作をあらためて行い、2度目の測定を行う。測定結果の判定は、1度目に得られた値と2度目に得られた値とを平均した値で行う。調製試料から2度目の採取が不可能である場合には、別の同検査対象検体を入手し検査を行う。なお、改良された複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)と改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の両キットを用いた場合の2度目の測定は、調製試料の採取量について2gを1gと読み替えて、同様の操作を行う。
2.1.1.改良検査法について
改良された複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)と改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の両キットを用いる場合には、2.1.1.1.から2.1.1.4.までの方法により検査を行うこと。
2.1.1.1.改良検査法における検体抽出操作
調製試料1gをプラスチック製遠沈管(50mL容)に量り採り、検体抽出液*119mLを加え、よく振り混ぜて混合し、固形分を均等に分散させる。この際に、あまり泡立たせないよう注意しながら、ボルテックスなどを用いて試料を十分に分散させる。振とう機に遠沈管を横にして置き、室温で一晩(12時間以上)振とうしながら抽出する。振とう回数は1分間に90から110往復程度、振とう幅は3cm程度として、振とうにより液が遠沈管の両端に打ち付けるようになるくらいに調整する。時々遠沈管の上下を入れ替えるなどの操作をして、液面に沿って付着する調製試料を分散させる。
抽出液のpHを確認し、必要であれば、中性付近(pH6.0―8.0)となるように調整*2する。室温で、3000×gの条件で20分間遠心し、遠心後に得られる上清を別の容器に分取する。分取する上清の量はなるべく一定とする。沈査が得られない場合はろ過を行う。可能であれば油層を除く。
*1 検体抽出液
日本ハム(株)製FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズを用いた検査については、付属の抽出用試薬①、抽出用試薬②、抽出用試薬③、精製水を1:1:1:17の比率で混合したものを、(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キットを用いた検査については、付属の検体希釈液(20倍濃縮液)、抽出用A液、抽出用B液、精製水を1:1:1:17の比率で混合したものを用いる。なお、両者は同一の組成である。
あるいは、ラウリル硫酸ナトリウムと2―メルカプトエタノールを含む緩衝液又はこれと同等のものを用いる。
*2 pH調整
pHを測定し、調整が必要な場合には適宜、調整を行う。また、調整に要したアルカリ(あるいは酸)溶液の液量を2.1.1.4.の項にある希釈倍率に加味し、最終的な特定原材料由来のタンパク質含有量算出を行う。
2.1.1.2.改良された複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製ELISAキット(FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ)の実験操作
試薬、注意事項等を含め、複合抗原認識抗体を用いたELISAキットの説明書に記載された手技に従って試験する。以下、方法について記述する。
試験開始前に、希釈用緩衝液を室温*1に戻し、キットに添付された抗体固相化プレートはアルミパウチを開封せずに室温に戻しておく。抽出操作で得られた上清又はろ過液100μLに対して希釈用緩衝液1,900μLを加え、混合し測定溶液とする。測定溶液、ならびに検量線作成用に調製した標準溶液*2の各々を1ウェルあたり100μLずつ加える。プレート用カバーを取り付け、各溶液がウェル一様に広がるように軽く振とうした後に、室温で60分間静置する。静置後、ウェル内の各溶液を捨て、1回あたり250―300μLの洗浄液*3を用いてウェルを5回洗浄する。洗浄後、1ウェルあたり100μLのビオチン結合抗体溶液*4を加え、カバーを取り付けてウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温で60分間静置する。静置後、ウェル内のビオチン結合抗体溶液を捨て、洗浄液を用いてウェルを5回洗浄する。次いで、1ウェルあたり100μLの酵素―ストレプトアビジン結合物溶液*5を加え、カバーを取り付けてウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温で30分間静置する。静置後、ウェル内の酵素―ストレプトアビジン結合物溶液を捨て、洗浄液を用いてウェルを5回洗浄する。洗浄後、1ウェルあたり100μLの発色剤*6を加え、カバーを取り付けてウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温で20分間静置する。次いで、1ウェルあたり100μLの反応停止液を加え発色反応を停止させる。反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、主波長450nm、副波長600―650nmの条件で吸光度を測定する。各濃度の標準溶液に対して得られる測定値より作成した検量線に基づき、測定溶液中に含まれる特定原材料由来のタンパク質の濃度を求める。なお、同一の実験を3ウェル並行で行い、各ウェルから得られた値を平均化する。
*1 室温
室温とは20―25℃とする。
*2 標準溶液
キット付属の説明書に従い、標準溶液(50ng/mL)を標準品希釈液を用いて順次希釈したものとする。標準品希釈液は、検体抽出液を希釈用緩衝液で20倍に希釈して調製する。
*3 洗浄液
キット付属の濃縮洗浄液を、精製水を用いて10倍希釈して調製する。
*4 ビオチン結合抗体溶液
キット付属のビオチン結合抗体を希釈用緩衝液で100倍希釈する。希釈操作はプレートに加える直前に行う。
*5 酵素―ストレプトアビジン結合物溶液
キット付属の酵素―ストレプトアビジン結合物を希釈用緩衝液で100倍希釈する。希釈操作はプレートに加える直前に行う。
*6 発色剤
使用前に室温に戻しておく。
2.1.1.3.改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キットの実験操作
試薬、注意事項等を含め、単一あるいは精製抗原認識抗体を用いたELISAキットの説明書に記載された手技に従って試験する。以下、方法について記述する。
予め、抗体固相化モジュールをアルミパウチを開封せずに室温*1に戻した後、フレームに必要量セットする。抽出操作で得られた上清又はろ過液100μLに対して検体希釈液Ⅰ*21,900μLを加え、混合し測定溶液とする。測定溶液、ならびに検量線作成用に調製した標準溶液*3の各々を1ウェルあたり100μLずつ加える。各溶液がウェル一様に広がるように軽く振とうし、モジュール用フタを取り付けた後、室温で60分間静置する。静置後、ウェル内の各溶液を捨て、1回あたり250―300μLの洗浄液*4を用い、6回繰り返しの洗浄操作を行う。洗浄後、1ウェルあたり100μLの酵素標識抗体溶液*5を加え、ウェル一様に広がるよう軽く振とうし、フタをした後に、室温で30分間静置する。静置後、ウェル内の酵素標識抗体溶液を捨て、洗浄液を用いて6回の洗浄操作を行う。洗浄後、1ウェルあたり100μLの酵素基質溶液*6を加え、ウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温、遮光条件下で10分間静置する。静置後、反応停止液100μLを加え、発色反応を停止させる。発色反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、主波長450nm、副波長600―650nmの条件で吸光度を測定する*7。各濃度の標準溶液に対して得られる測定値より作成した検量線に基づき、測定溶液中に含まれる特定原材料由来のタンパク質の濃度を求める。なお、同一の実験を3ウェル並行で行い、各ウェルから得られた値を平均化する。
*1 室温
室温は20―25℃とする。
*2 検体希釈液Ⅰ
キット付属の検体希釈液(20倍濃縮液)を精製水で20倍に希釈し、検体希釈液Ⅰとする。
*3 標準溶液
使用前に室温に戻し、キット付属の説明書に従い、標準品(50ng/mL)を検体希釈液Ⅱを用いて順次希釈し標準溶液とする。検体希釈液Ⅱは、検体抽出液を検体希釈液Ⅰを用いて20倍に希釈して調製する。
*4 洗浄液
キット付属の洗浄液を、精製水を用いて20倍希釈して調製する。
*5 酵素標識抗体溶液
使用前に室温に戻しておく。
*6 酵素基質溶液
使用前に室温に戻しておく。
*7 測定
吸光度の測定は、反応停止後30分以内に行う。
2.1.1.4 改良検査法における結果の判定
各濃度の標準液から得られた吸光度に4係数logistic曲線をフィッティングして得られた検量線から、各ウェルの特定原材料由来のタンパク質濃度を算出し、得られた値に希釈倍率*を乗じて食品採取重量あたりの特定原材料由来のタンパク質量を算出する。2.1.1.2.及び2.1.1.3.で得られた食品採取重量1gあたりの特定原材料由来のタンパク質含量が10μg以上の試料については、微量を超える特定原材料が混入している可能性があるものと判断する。
* 希釈倍率
希釈倍率は400となる。
2.1.2.従来検査法について
複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)と単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の両キットをもちいる場合には、2.1.2.1.から2.1.2.3.までの方法により検査を行うこと。
2.1.2.1.複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製ELISAキット(FASTKITエライザシリーズ)の実験操作
試薬、注意事項等を含め、複合抗原認識抗体を用いたELISAキットの説明書に記載された手技に従って試験する。以下、方法について記述する。
調製試料2gをホモジナイザー専用カップあるいはポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、抽出用緩衝液*138mLを加え、ホモジナイザー*2を用いて攪拌操作を行う*3。攪拌した後、溶液のpHを確認し、必要であれば、中性付近(pH6.0―8.0)となるように調整*4する。その後、同様の攪拌操作を2回繰り返すことで、タンパク質の抽出を行う*5。抽出操作終了後、低温(4℃)、3,000xgの条件で20分間遠心し、遠心後に得られる上清を分取し濾過する。次いで、得られた濾過液100μLに対して希釈用緩衝液900μLを加え、混合し、当混合溶液を測定溶液とする。抗体固相化プレート中、使用するウェルを1回あたり250―300μLの洗浄液*6を用いて5回繰り返し洗浄した後に、測定溶液、ならびに検量線作成用に調製した標準溶液*7の各々を1ウェルあたり100μLずつ加える。モジュール用フタを取り付け各溶液がウェル一様に広がるように軽く振とうした後に、室温*8で60分間静置する。静置後、各溶液を捨て、洗浄液を用いて5回のウェル洗浄操作を行う。洗浄後、1ウェルあたり100μLのビオチン結合抗体溶液を加え、フタをしてウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温で60分間静置する。静置後、ビオチン結合抗体溶液を捨て、洗浄液を用いて5回のウェル洗浄操作を行う。次いで、1ウェルあたり100μLの酵素―アビジン結合物溶液を加え、フタをしてウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温で30分間静置する。静置後、酵素―アビジン結合物溶液を捨て、洗浄液を用いて5回の洗浄操作を行う。洗浄後、1ウェルあたり100μLの発色溶液を加え、フタをしてウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温で20分間静置する。次いで、1ウェルあたり100μLの反応停止液を加え発色反応を停止させる。発色反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、主波長405又は450nm*9、副波長600―650nmの条件で測定を行う。各濃度の標準溶液に対して得られる測定値より作成した検量線に基づき、測定溶液中に含まれる特定原材料由来のタンパク質の濃度を求める。なお、同一の実験を3ウェル並行で行い、各ウェルから得られた値を平均化する。
*1 抽出用緩衝液
キット付属の濃縮抽出用緩衝液を、精製水を用いて10倍希釈したものとする。
*2 ホモジナイザー
ミルサーIFN―700G(岩谷産業社製)、ラボミルサーLM―2(大阪ケミカル社製)、エースホモジナイザーAM―3―50(日本精機製作所社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*3 ミルサーIFN―700G(岩谷産業社製)あるいはラボミルサーLM―2(大阪ケミカル社製)を使用する場合、1回の攪拌操作は回転数が約20,000rpmの条件で30秒間行う。エースホモジナイザーAM―3―50(日本精機製作所社製)を使用する場合、1回の攪拌操作は回転数が約12,000rpmの条件で1分間行う。
*4 pH調整
pHを測定し、調整が必要な場合には適宜、調整を行う。また、調整に要したアルカリ(あるいは酸)溶液の液量を2.1.2.3.の項にある希釈倍率を加味し、最終的な特定原材料由来のタンパク質含有量算出を行う。
*5 ホモジナイザー専用カップを用いた場合、3回目の攪拌操作終了後にカップ内容物の全量をポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に移し、遠心操作を行う。
*6 洗浄液
キット付属の濃縮洗浄液を、精製水を用いて10倍希釈したものとする。
*7 標準溶液
キット付属の説明書に従い、標準溶液を希釈用緩衝液を用いて順次希釈したものとする。
*8 室温
室温とは20―25℃とする。
*9 測定波長
各ELISAキットで測定波長が異なるのでELISAキットの説明書に従う。
2.1.2.2.単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製ELISAキットの実験操作
試薬、注意事項等を含め、単一あるいは精製抗原認識抗体を用いたELISAキットの説明書に記載された手技に従って試験する。以下、方法について記述する。
調製試料2gをホモジナイザー専用カップあるいはポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、検体希釈液*138mLを加え、ホモジナイザー*2を用いて攪拌操作を行う*3。攪拌した後、溶液のpHを確認し、必要であれば、中性付近(pH6.0―8.0)となるように調整*4する。その後、同様の攪拌操作を2回繰り返すことで、タンパク質の抽出を行う*5。抽出操作終了後、低温(4℃)、3,000xgの条件で20分間遠心し、遠心後に得られる上清を分取し濾過する。次いで、得られた濾過液50μLに対して検体希釈液950μLを加え、混合し、当混合溶液を測定溶液とする。予め、必要量の抗体固相化モジュールをフレームにセットしておき、測定溶液、ならびに検量線作成用に調製した標準溶液*6の各々を1ウェルあたり100μLずつ加える。各溶液がウェル一様に広がるように軽く振とうし、モジュール用フタを取り付けた後、室温*7で60分間静置する。静置後、各溶液を捨て、1回あたり250―300μLの洗浄液*8を用い、6回繰り返しの洗浄操作を行う。洗浄後、1ウェルあたり100μLの酵素標識抗体溶液を加え、ウェル一様に広がるよう軽く振とうし、フタをした後に、室温で30分間静置する。静置後、酵素標識抗体溶液を捨て、洗浄液を用いて6回の洗浄操作を行う。洗浄後、1ウェルあたり100μLの酵素基質溶液を加え、ウェル一様に広がるよう軽く振とうした後に、室温、遮光条件下で10分間静置する。静置後、反応停止液100μLを加え、発色反応を停止させる。発色反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、主波長450nm、副波長600―650nmの条件で測定を行う。各濃度の標準溶液に対して得られる測定値より作成した検量線に基づき、測定溶液中に含まれる特定原材料由来のタンパク質の濃度を求める。なお、同一の実験を3ウェル並行で行い、各ウェルから得られた値を平均化する。
*1 検体希釈液
キット付属の20倍濃縮検体希釈液を、精製水を用いて20倍希釈したものとする。
*2 ホモジナイザー
ミルサーIFN―700G(岩谷産業社製)、ラボミルサーLM―2(大阪ケミカル社製)、エースホモジナイザーAM―3―50(日本精機製作所社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*3 ミルサーIFN―700G(岩谷産業社製)あるいはラボミルサーLM―2(大阪ケミカル社製)を使用する場合、1回の攪拌操作は回転数が約20,000rpmの条件で30秒間行う。エースホモジナイザーAM―3―50(日本精機製作所社製)を使用する場合、1回の攪拌操作は回転数が約12,000rpmの条件で1分間行う。
*4 pH調整
pHを測定し、調整が必要な場合には適宜、調整を行う。また、調整に要したアルカリ(あるいは酸)溶液の液量を2.1.2.3.の項にある希釈倍率を加味し、最終的な特定原材料由来のタンパク質含有量算出を行う。
*5 ホモジナイザー専用カップを用いた場合、3回目の攪拌操作終了後にカップ内容物の全量をポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に移し、遠心操作を行う。
*6 標準溶液
凍結乾燥標準品を500μLの精製水を用いて溶解したものを標準原液とし、当該標準原液を調製済み検体希釈液を用いて順次希釈し、調製する。
*7 室温
室温とは20―25℃とする。
*8 洗浄液
キット付属の20倍濃縮洗浄液を、精製水を用いて20倍希釈したものとする。
2.1.2.3.結果の判定
4係数logistic解析より得られた検量線から各ウェルの特定原材料由来のタンパク質濃度を算出し、得られた値に希釈倍率*を乗じて食品採取重量あたりの特定原材料由来のタンパク質量を算出する。2.1.2.1.及び2.1.2.2.で得られた食品採取重量1gあたりの特定原材料由来のタンパク質含量が10μg以上の試料については、微量を超える特定原材料が混入している可能性があるものと判断する。
* 希釈倍率
複合抗原認識抗体を用いたELISAキットにおける希釈倍率は200、また、単一あるいは精製抗原認識抗体を用いたELISAキットにおける希釈倍率は400となる。
2.2.ウエスタンブロット法
試料中のタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動し、転写膜に転写後、特定原材料由来のタンパク質に対する特異的ポリクローナル抗体を用いて検出する定性試験法である。卵、乳についてのELISA法陽性判定の確認とする。卵タンパク質の検出の際は(株)森永生科学研究所社製モリナガ卵ウエスタンブロットキット(卵白アルブミン及びオボムコイド)、乳タンパク質の検出の際は同モリナガ牛乳キット(カゼイン及びβ―ラクトグロブリン)を用いてそれぞれ行う。
ウエスタンブロット法を用いた検査における注意事項
2.2.1.のポリアクリルアミドゲル電気泳動用混合溶液の調製において、2.1.2.2.の(株)森永生科学研究所製 ELISA キットにおける測定の際に調製した濾過液を用いて、ローディング緩衝液と混和以降の操作から行うことが望ましい。濾過液は低温(4℃)で3日間は保存可能である。ELISAキットにおける同一の濾過液からの測定が不可能である場合は、再度同じ調製試料から2g採取し、2.2.1に従って試料を調製する。2度目の採取が不可能である場合には、別の同検査対象検体を入手し検査を行う。
2.2.1.ポリアクリルアミドゲル電気泳動用混合溶液の調製
調製試料2gをホモジナイザー専用カップあるいはポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、検体希釈液*138mLを加え、ホモジナイザー*2を用いて攪拌操作を行う。攪拌した後、溶液のpHを確認し、必要であれば、中性付近(pH6.0―8.0)となるように調整をする。その後、同様の攪拌操作を2回繰り返すことで、タンパク質の抽出を行う。抽出操作終了後、低温(4℃)、3,000xgの条件で20分間遠心し、遠心後に得られる上清を分取し濾過する。次いで、得られた濾過液とローディング緩衝液*3を1:2(V/V)の割合で混和後、沸騰水浴中で5分間加温*4し、加温後の混合溶液を電気泳動に供する。また、陽性対照として検査対象の卵あるいは乳の標準液*5をローディング緩衝液で希釈し、0.5μg/mL、1μg/mL及び10μg/mLの3濃度の標準溶液を調製し、各々電気泳動に供する。
*1 検体希釈液
(株)森永生科学研究所社製モリナガウエスタンブロットキットまたは(株)森永生科学研究所社製ELISAキットに付属の20倍濃縮検体希釈液を、精製水を用いて20倍希釈したものとする。
*2 ホモジナイザー
ミルサーIFN―700G(岩谷産業社製)、ラボミルサーLM―2(大阪ケミカル社製)、エースホモジナイザーAM―3―50(日本精機製作所社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*3 ローディング緩衝液
Laemmli Sample Buffer(BIO-RAD社製)と2―mercaptoethanolを19:1(V/V)の割合で混和したもの及び同等の結果が得られるものを用いる。
*4 加温
加温時に試料溶液の突沸により蓋が外れない容器を用いる。
*5 標準液
(株)森永生科学研究所製モリナガウエスタンブロットキットに付属の標準液を用いる。
2.2.2.ポリアクリルアミドゲル電気泳動
ポリアクリルアミドゲルプレート*1を電気泳動槽*2にセットする。電気泳動槽に泳動用緩衝液*3を注ぎ、ゲルのウェルを完全に満たす。液漏れのないことを確認し、2.2.1.において調製した混合溶液ならびに各標準溶液を各ウェルに20μLずつ注入する。また、別のウェルにタンパク質分子量マーカー*4を2μL注入する。注入の際に混合溶液が隣のウェルに混入しないよう注意する。ゲルプレート1枚あたり30mAの定電流で泳動する。ローディング緩衝液に含まれているBPB(Bromophenol Blue:BPB)がゲルの下端から1―1.5cmのあたりまで進んだところで泳動を終了する。
*1 ポリアクリルアミドゲル
SDS-PAGE mini 15% 1.0mmx12well(TEFCO社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*2 電気泳動槽
セイフティーセルミニSTC―808(TEFCO社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*3 泳動用緩衝液
10×Tris/glycine/SDS(BIO-RAD社製)を蒸留水で10倍希釈したもの及び同等の結果が得られるものを用いる。
*4 タンパク質分子量マーカー
Kaleidoscope Prestained Standards(BIO―RAD 社製 161―0324)及び同等の結果が得られるものを用いる。
2.2.3.ブロッティング
ブロッティングに際しては予め、転写膜*1、濾紙*22枚をブロッティングバッファー*3に30分間浸しておく。ブロッティングバッファーを転写装置*4の陽極面に展開し、濾紙、転写膜、ゲル、濾紙の順に重層する。重層する際、気泡が入らないように注意する。また、ゲルの乾燥を防ぐために速やかに作業する。重層後、ブロッティングバッファーを静かに少量滴下し、陰極のついた上部蓋を閉じる。転写装置を傾け余分なブロッティングバッファーを除く。転写膜の面積1平方センチあたり2mAの定電流で60分間転写する。
*1 転写膜
Hybond-P(アマシャムバイオサイエンス社製)及び同等の結果が得られるPVDF(Poly vinylidene difluoride)膜を100%メタノールに10~30秒間浸してから使用する。
*2 濾紙
Extra Thick Filter Paper(BIO-RAD社製)及び同等の結果が得られる濾紙を使用する転写膜と同じ大きさにカットして用いる。
*3 ブロッティングバッファー
10×Tris/glycine(BIO-RAD社製)/メタノール/蒸留水を1:2:7(V/V/V)の割合で混合したもの及び同等の結果が得られるものを用いる。
*4 転写装置
トランスブロットSDセル(BIO-RAD社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
2.2.4.免疫染色
転写後の膜を速やかにブロッキング溶液*1に浸し、60分間振とうする。振とう後、ブロッキング溶液を捨て、一次抗体溶液*2に浸し、60分間振とうする。振とう後、一次抗体溶液を捨てる。次いで、洗浄液*3に浸し5分間振とう後、洗浄液を捨てる。この洗浄操作を更に2回行う。3回目の洗浄終了後、二次抗体溶液*4に浸し、30分間振とうする。振とう後、二次抗体溶液を捨て、上記と同様に洗浄液で3回洗浄操作を行う。洗浄終了後、転写膜をアルカリフォスファターゼ標識アビジン―ビオチン溶液*5に浸し、20分間振とうする。振とう後、アルカリフォスファターゼ標識アビジン―ビオチン溶液を捨て、上記と同様に3回洗浄操作を行う。洗浄終了後、100mM Tris/塩酸(pH9.5)溶液に浸し、15分間振とう後、100mM Tris/塩酸(pH9.5)溶液を捨て、転写膜を検出試薬*6に3―10分間程度浸し、振とうする。この際、検査対象の卵あるいは乳の標準液(1μg/mL)のバンドが検出されていることを確認し、バックグランドが高くならないように注意する。次いで、検出試薬を除き、転写膜を蒸留水で軽くすすいだ後、蒸留水中で遮光下、15分間振とうする。転写膜を遮光下で風乾して判定を行う。
*1 ブロッキング溶液
ウシ由来血清アルブミン(SIGMA社製A―7030)を最終濃度0.1%及びTween―20を最終濃度0.05%となるようにTris-Buffered Saline(TBS)(BIO-RAD社製の10X TBSを蒸留水を用いて10倍希釈し、調製)を用いて調製した溶液を用いる。なおTBSは各最終濃度が20mM Tris、500mM塩化ナトリウムとなるように溶解し、pH7.5となるように調整したものを用いてもよい。
*2 一次抗体溶液
特定原材料由来のタンパク質(卵:卵白アルブミン及びオボムコイド、乳:カゼイン及びβ―ラクトグロブリン)に対するウエスタンブロットキットの各抗体をブロッキング溶液を用いて0.5μg/mLに調製した溶液を用いる。
*3 洗浄液
Tween―20を最終濃度0.05%となるようにTBSを用いて調製した溶液(TBS―T)を用いる。
*4 二次抗体溶液
VECTASTAIN ABC-AP Rabbit IgG Kit(VECTOR社製)に含まれるビオチン標識抗ウサギIgG抗体をブロッキング溶液で10000倍に希釈したものを用いる。
*5 アルカリフォスファターゼ標識アビジン―ビオチン溶液
VECTASTAIN ABC-AP Standard Kit又はVECTASTAIN ABC-AP Rabbit IgG Kit(VECTOR社製)に含まれるA液1滴とB液1滴をブロッキング溶液10mLに加えたもの。当溶液は使用する30分前に調製する。
*6 検出試薬
Alkaline Phosphatase Substrate Kit Ⅳ<BCIP/NBT>(VECTOR社製)に含まれる1液2滴を100mM Tris/塩酸(pH9.5)10mLに加え混和後、2液と3液を順次各2滴加えたもの。用時調製する。
2.2.5.結果の判定
各特定原材料由来のタンパク質の分子量(SDS-PAGEにおける見かけ上の分子量:卵白アルブミンM.W.50,000、オボムコイド M.W.38,000、カゼイン M.W.33,000―35,000、β―ラクトグロブリン M.W.18,400)付近に明瞭なバンドが検出されたものを陽性と判定する。適宜、標準液のバンド位置を参照して判定する。なお、陽性対照として検査対象の卵あるいは乳の標準液(1μg/mL)が検出されているかどうか確認する。標準液(1μg/mL)が検出されない場合は、検査が不適であると考え、再度ポリアクリルアミドゲル電気泳動混合溶液の調製から行う。卵タンパク質測定の際は、卵白アルブミンあるいはオボムコイド、乳タンパク質測定の際はカゼインあるいはβ―ラクトグロブリンのどちらか一方の抗体を用いて陽性の場合、各特定原材料(卵、乳)が微量を超える混入があると判断する。
2.3.PCR法
小麦、そば、落花生についてのELISA法陽性判定の確認とする。
食品からのDNA抽出精製法(2.3.2.)に従いDNA抽出を行い、得られたDNA試料液を用いて以下に示す定性PCRを行う。なお、DNA抽出は1調製試料につき2点並行で行い、それ以降、PCR増幅産物の確認に至るまでの全操作は、この2点に対し独立並行で行う。
2.3.1.試料調製法
1.1.及び1.2.に従って、試料を調製する。
ただし、試料中、ミキサーミル等を用いた単純な粉砕により均質化が困難なものについては、均質化処理過程において、試料と同重量の水を加え、充分に均質化操作を行う。その後、凍結乾燥処理を行い、再度粉砕操作を行ったものを調製試料とする。また、試料が液体の場合には、ミキサーミル等を用いた均質化を行った後、凍結乾燥処理に供し、処理後、再びミキサーミル等を用いた粉砕処理を経たものを調製試料とする。
2.3.2.DNA抽出精製法
界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とフェノール/クロロホルム混合液を用いてDNAを抽出精製するCTAB法は、応用範囲が広い上、PCR阻害物質が残存しにくく、純度の高いDNAを得ることが出来る非常に優れた方法であるが、クロロホルム等の有害試薬、及び煩雑な精製操作が必要である。これに対し、市販のDNA抽出キットを用いることで比較的簡易にDNAの抽出精製を行うことが可能である。市販のDNA抽出キットには、シリカゲル膜タイプキット、イオン交換樹脂タイプキット等がある。これらのキットはそれぞれに特徴を有するため、各検査対象検体に適した方法にてDNAの抽出を行う。本項では、CTAB法とシリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini)、イオン交換樹脂タイプのキット(QIAGEN Genomic-Tip 20/G)を用いた精製法を記す。
なおDNAの抽出精製の際に用いる水は、特に断り書きがないかぎり全て逆浸透膜精製したRO水または蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水を121℃、20分以上の条件でオートクレーブ滅菌したものとする。
2.3.2.1.シリカゲル膜タイプキット法*1
調製試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り*2、同遠沈管に予め65℃に温めておいたAP1緩衝液10mLとRNase A 10μLを加える。その後、試料塊が残らないようボルテックスミキサーで激しく混合し、65℃で15分間加温する。その間、数回遠沈管を反転させ試料を撹拌する。加温処理後、AP2緩衝液3,250μLを加え室温で5分間静置し、その後、室温下、3,000xgの条件で5分間遠心する。遠心終了後、速やかに上清を別の遠沈管に移す。次いで分取した上清をQIAshredder spin columnに負荷し、室温下、10,000xg、の条件で2分間遠心する。得られた溶出液は新しいポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移しておく。この際、1回あたりの負荷量は500μLとし、得られた上清のうち3mLを負荷し終えるまで数回繰り返す。最終的に得られた溶出液に、溶出液量の1.5倍量のAP3緩衝液・エタノール混液*3を加え、10秒間ボルテックスミキサーで撹拌し、溶解液を得る。得られた溶解液のうち500μLをmini spin columnに負荷し、室温下、10,000xgの条件で1分間遠心し溶出液を捨てる。次いで残りの溶解液のうち、さらに500μLを同じmini spin columnに負荷し、同条件で遠心し溶出液を捨てる。最終的に溶解液がすべてなくなるまで同様の操作を繰り返す。次いで、columnにAW緩衝液500μLを負荷し、室温下、10,000xgの条件で1分間遠心する。得られた溶出液を捨て、同じ操作をもう1度繰り返す。溶出液を捨てた後、mini spin columnを乾燥させるため、室温下、10,000xg以上の条件で15分間遠心する。乾燥処理後、mini spin columnをキット付属の遠沈管に移し、予め65℃に温めておいた水50μLを加え、5分間静置した後、室温下、10,000xgの条件で1分間遠心しDNAを溶出する。もう1度同様の溶出操作を行い、得られた溶出液を合わせ、DNA試料原液(計100μL)とする。
*1 本法は主に加工程度の低い検査対象検体(小麦粉、そば粉、落花生粉砕物、並びにそれらに準ずる加工食品)に適用が可能である。加工程度が高く、糖、並びに油脂成分含量の高い検査対象検体ではDNAの精製度が低く、DNA量としても十分な量が抽出されないことがあるため留意する。また、本法によりDNAが抽出されない調製試料については、2.3.2.2.に示すイオン交換樹脂タイプキット法を用いたDNA抽出を試みる。
*2 試料の調製、採取は2.3.1.に記載の方法に従う。
*3 AP3緩衝液・エタノール混液
AP3緩衝液とエタノール(96―100%)を1:2(V/V)の割合で混合したものをAP3緩衝液・エタノール混液とする。
2.3.2.2.イオン交換樹脂タイプキット法*1
調製試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採る*2。同遠沈管にG2緩衝液*37.5mLを加えてボルテックスミキサーで激しく混合し、混合後さらにG2緩衝液7.5mL、並びにα―アミラーゼ*4(1mg/mL)200μLを加え再びボルテックスミキサーで混合する。混合処理後、37℃で1時間加温する。この間、数回遠沈管を反転させ試料を攪拌する。加温処理後、Proteinase K*5100μLならびにRNase A 20μLを加えボルテックスミキサーで混合し、その後、50℃で2時間加温する。この間、数回遠沈管を反転させ試料を攪拌する。次いで、低温下(4℃)、3,000xg以上の条件で15分間遠心する。遠心終了後得られる上清をポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移す。移し終えた後、溶液中に浮遊する残存物を除くためさらに軽く遠心する。この遠心操作の間にQIAGEN Genomic-Tip 20/GをQBT緩衝液*31mLを用いて平衡化しておく。遠心操作終了後の上清を平衡化済みQIAGEN Genomic-Tip 20/Gに2mLずつ数回に分けて負荷する。上清全量の負荷操作を終了した後、tipにQC緩衝液*32mLを負荷し、洗浄する。同様の洗浄操作を合計3回繰り返した後、tipを新しいポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移し変える。洗浄操作終了後のtipに予め50℃に温めておいたQF緩衝液*31mLを加えDNAを溶出する。同tipに対し、もう1度同様の溶出操作を行う。得られた計2mLの溶出液に対し、0.7倍量のイソプロピルアルコールを加えよく混合し、低温下(4℃)、10,000xg以上の条件で15分間遠心し、沈殿*6を除かないよう注意を払いつつ上清のみを除く。上清を除いた後の遠沈管に70%エタノール1mLを加え、低温下(4℃)、10,000xg以上の条件で5分間遠心する。上清を捨て、残った沈殿を乾燥させるため、アスピレーターを用いて5分間程度の真空乾燥処理を行う。このとき完全に乾燥しないように注意する。沈殿が乾燥したことを確認した後、水100μLを加え、65℃、5分間の条件での加温処理、ならびにピペッティングによりDNAを溶解させ、DNA試料原液とする。
*1 本法は主に加糖、油脂処理、加熱混合、発酵などの処理が施された加工程度の高い検査対象検体に適用が可能である。また、本法によりDNAが抽出されない調製試料については、2.3.2.1.に示したシリカゲル膜タイプキット法を用いたDNA抽出を試みる。
*2 試料の調製、採取は2.3.1.に記載の方法に従う。
*3 G2緩衝液、QBT緩衝液、QC緩衝液、及びQF緩衝液はキットに付属しているが、足りない場合にはキットの説明書に従って調製可能である。
*4 SIGMA社製(Cat.No.A―6380)、または、同等の効力を持つものを用いる。
*5 QIAGEN社製(Cat.No.19133)、または、同等の効力を持つものを用いる。
*6 この沈殿が抽出されたDNAである。検査対象検体によってはDNAが極微量しか抽出されないため、目視する事が不可能な場合もあるが、遠沈管の底には沈殿があるということに注意を払いながら操作を行う。
2.3.2.3.CTAB法*1
調製試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、同遠沈管にCTAB緩衝液*215mLを加え、ホモジナイザーを用いて混合する。遠沈管の縁ならびにホモジナイザーの先端部を洗浄するようにCTAB緩衝液30mLを加え、転倒混和後55℃で30分間加温する。加温処理後、溶液を撹拌し、均質となった溶液600μLをマイクロ遠沈管(1.5mL容)に量り採る。次いで量り採った溶液に対し500μLのフェノール/クロロホルム混合液*3を加え、転倒混和後ボルテックスミキサーで軽く懸濁する。懸濁後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、分離した水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。この際、中間層にさわらないように注意する。分取した水層に対し、再び500μLのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液*4を加え、転倒混和後ボルテックスミキサーで軽く懸濁する。懸濁後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、分離した水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。分取した溶液に等容量のイソプロピルアルコール(室温)を加え、転倒混和後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、沈殿に留意しながらデカンテーションで上澄み液を捨てる。次いで、500μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、その後、7,500xg、室温条件下で1分間遠心する。遠心後、沈殿にさわらないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。遠沈管に残った沈殿を乾燥させるため、アスピレーターを用いて2~3分間の真空乾燥処理を行う。この時、完全に乾燥しないように注意する。50μLのTE緩衝液*5を加えてよく混和し、その後、室温で15分間静置する。この間、数回転倒混和し、沈殿が完全に溶解する事を促す。得られた溶解液にRNase A 5μLを加え、37℃で30分間加温する。加温処理後の溶液に200μLのCTAB緩衝液、次いで250μLのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液を加え、転倒混和後ボルテックスミキサーで軽く懸濁する。懸濁処理後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、分離した水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。この時、中間層にさわらないように分取する。分取した溶液に200μLのイソプロピルアルコールを加え、転倒混和する。転倒混和後、7,500xg、室温条件下で10分間遠心し、沈殿に留意しながらデカンテーションで上澄み液を捨てる。次いで、200μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、その後、7,500xg、室温条件下で1分間遠心する。遠心後、沈殿にさわらないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。遠沈管に残った沈殿を乾燥させるため、アスピレーターを用いて2~3分間の真空乾燥処理を行う。この時、完全に乾燥しないよう注意する。50μLの水を加えて混合した後、室温下に15分間静置する。この間、数回転倒混和する事で沈殿が溶解することを促す。完全に溶解したものをDNA試料原液とする。
*1 シリカゲル膜タイプキット法ならびにイオン交換樹脂タイプキット法を実施し、その結果、2.3.2.4.に記載の方法にて定量を行い、充分量のDNAが抽出できない場合に実施する。
*2 CTAB緩衝液
ビーカーに、8mLの0.5mM EDTA(pH8.0)、20mLの1M Tris/塩酸(pH8.0)及び56mLの5M NaCl水溶液を量り採り、混合した後、約150mLとなるように水を加える。この溶液に対してセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)4gを撹拌しながら加え、完全に溶解する。さらに水を加え全量を200mLとし、オートクレーブで滅菌したものをCTAB緩衝液とする。
*3 フェノール/クロロホルム混合液
1M Tris/塩酸(pH8.0)飽和フェノールとクロロホルム/イソアミルアルコールを1:1(v/v)の割合で混合したものをフェノール/クロロホルム混合液とする。
*4 クロロホルム/イソアミルアルコール混合液
クロロホルムとイソアミルアルコールを24:1(v/v)の割合で混合したものをクロロホルム/イソアミルアルコール混合液する。
*5 TE緩衝液
各最終濃度が10mM Tris/塩酸(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0)となるように水を用いて調製したものをTE緩衝液とする。
2.3.2.4.DNAの精製度の確認と定量
DNA試料原液5μLを取り、TE緩衝液45μLを加えて50μLとし、200―320nmの範囲で紫外吸収スペクトルを測定する。この際230nm、260nm及び280nmの吸光度(O.D.230、O.D.260及びO.D.280*)を記録する。次いでO.D.260の値の1を50ng/μLDNAとしてDNA濃度を算出する。またO.D.260/O.D.280を計算し、この比が1.2―2.5であることを確認する。吸光度比が1.2に達しない場合は抽出をやり直す。
2.3.2.に記載のある3種のDNA抽出法のうち、いずれかの抽出法を用いてDNA抽出を行い、吸光度測定を行った結果、O.D.260の値として相当量のDNAの抽出が確認されない場合、また、上記条件を満たすDNA試料原液の品質が確認されない場合には、他の抽出法を用いて抽出操作を行う。
なお、2.3.3.2.項に示すように、原則としてDNA試料液は20ng/μLの濃度で調製するが、検査対象検体によってはDNAの抽出効率が悪く、20ng/μLの濃度で調製することができない場合が考えられる。そのような場合には、最も20ng/μLに近い濃度で調製し、DNA試料液とする。また、O.D.260/O.D.280の吸光度比に関しては、1.2―2.5の範囲であることを原則とするが、3種の抽出法を行っても、上記条件を満たしたDNAが抽出されない場合には、原則のO.D.260/O.D.280の吸光度比の範囲である1.2―2.5に最も近い値を示したDNA試料原液を用いてDNA試料溶液を調製し、PCR増幅を行う。
* O.D.230値は糖、フェノール等の低分子化合物由来の吸光度であり、O.D.260/O.D.230を計算する。この比が2.0を下回る場合には、上記夾雑物の影響によりPCR反応がうまく行われない場合がある。O.D.260がDNA由来の吸光度、O.D.280がタンパク質等不純物由来の吸光度と考える。
2.3.3.定性PCR法
定性PCR法においては、抽出されたDNAに含まれる目的塩基配列領域を、プライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチドを用いてpolymerase chain reaction(PCR)*を行うことにより増幅し、その増幅産物を電気泳動法により分離、染色することで検出する。本法により、対象とする特定原材料を特異的に検知する事が可能であり、増幅産物の有無によって、検査対象検体中における特定原材料の有無を判定する。
* PCRでは、鋳型DNAが極微量でも存在していれば目的塩基配列領域が増幅され得る。従って、実際の実験操作、ならびに日頃の実験環境の保全にあたり、DNA(特にPCR増幅産物)の混入に充分注意を払う必要がある。また、DNAは、人間の皮膚表面から分泌されているDNA分解酵素により分解されるため、本酵素の混入を防止しなければならない。これらの点を考慮し、使用するチューブ、チップは使用する直前に121℃、20分以上の条件でオートクレーブ滅菌したものを用い、使い捨てとする。またチップに関しては、滅菌済みフィルター付きチップを使い捨てで使用することも意図せざるDNAの混入防止に有効である。さらに、定性PCR法において用いる水は、特に断り書きがないかぎり全て逆浸透膜精製したRO水または蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水を121℃、20分以上の条件でオートクレーブ滅菌したものとする。
2.3.3.1.PCR増幅
定性PCR法により検知が可能な特定原材料は落花生、小麦、そばの3種である。その各につきPCR増幅の条件が異なる。2.3.3.2.から2.3.3.4.に記載するPCR増幅条件のうち、検知対象とする特定原材料種に即したPCR条件を用いて検査を行う。また、各検査とも、1調製試料より2点並行で抽出されたDNAの各を規定濃度に調製した後、PCR法の鋳型DNAとして供する。PCR増幅は、まず、植物DNA検出用プライマー対*を用いて行い、その結果を2.3.5.項に記載のある判定例に照らして判じ、判定に準じた2度目のPCR増幅を各特定原材料検出用プライマー対を用いて行う。
* 植物DNA検出用のプライマー対及び増幅バンド長*は以下のとおりである。
植物DNA検出用プライマー対
F―primer(CP03―5’):5’―CGG ACG AGA ATA AAG ATA GAG T―3’
R―primer(CP03―3’):5’―TTT TGG GGA TAG AGG GAC TTG A―3’
増幅バンド長 124bp
* 植物DNA検出用プライマー対は、広く植物DNAを検知することを目的として設計されている。そのため、標的遺伝子には植物界に広く分布し、高度に保存されている遺伝子を選定しているが、完全に保存されているものではなく、植物間で塩基配列の挿入や欠失が認められるものがある。このため、検査対象検体によっては、得られる増幅バンド長に若干の違いが認められる場合があるので注意する。
2.3.3.2.落花生の検知を目的としたPCR増幅
PCR用反応試料管に反応液を以下のように調製する。反応液は、1x PCR緩衝液*1、0.20mM dNTP、1.5mM塩化マグネシウム、0.2μM5’及び3’プライマー*2、及び0.625units Taq DNAポリメラーゼ*3を含む液に、20ng/μLに調製したDNA試料液*42.5μL(DNAとして50ng)を加え、全量を25μLにする。次に、その反応試料管をPCR増幅装置*5にセットする。反応条件は次の通りである。95℃に10分間保ち反応を開始させた後、95℃0.5分間、60℃0.5分間、72℃0.5分間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応のブランク反応液として、必ずプライマー対を加えないもの並びにDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。検査手順としては、まず、植物DNA検出用プライマー対を用いたPCR増幅を行い、その結果からPCR増幅に必要とされる品質を備えたDNAが抽出されていることの確認を行う。次いで、2.3.5.に記載のある判定例に従い、落花生検出用プライマー対を用いたPCR増幅を行う。
*1 PCR緩衝液
PCR buffer II(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*2 落花生検出用プライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。
検出用プライマー対
F―primer(agg04―5’):5’―CGA AGG AAA CCC CGC AAT AAA T―3’
R―primer(agg05―3’):5’―CGA CGC TAT TTA CCT TGT TGA G―3’
増幅バンド長 95bp
*3 Taq DNAポリメラーゼ
AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*4 原則としてDNA試料液は20ng/μLの濃度で調製することとするが、検査対象検体によってはDNAの抽出効率が悪く、それ以下の濃度でしか調製することができない場合が考えられる。そのような場合には、原則に最も近い最大の濃度で調製し、DNA試料液とする。
*5 PCR増幅装置
GeneAmp PCR System 9600、9700(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
2.3.3.3.そばの検知を目的としたPCR増幅
使用機器、反応液の調製法、ならびにPCR反応条件ともに2.3.3.2.記載の落花生の検知を目的としたPCR増幅に同じ。また、5’及び3’プライマー*、をそば検出用プライマー対に変更する点を除いて、反応液組成も同一。
* そば検出用プライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。
検出用プライマー対
F―primer(FAG19―5’):5’―AAC GCC ATA ACC AGC CCG ATT―3’
R―primer(FAG22―3’):5’―CCT CCT GCC TCC CAT TCT TC―3’
増幅バンド長 127bp
本プライマーについては(株)日清製粉グループ本社が特許出願中である。保健所、衛生試験所など官公庁分析機関を除く分析機関において、本プライマーを使用した受託試験を業として実施する場合は、別途協議が必要であり、下記に連絡すること。但し、本プライマーを試験研究のために製造、使用することについては一切制限はない。
(連絡先:(株)日清製粉グループ本社 研究推進グループ、Tel.049―267―3916、Fax.049―266―5166)
2.3.3.4.小麦の検知を目的としたPCR増幅
使用機器、反応液の調製法及びPCR反応条件ともに2.3.3.2.記載の落花生の検知を目的としたPCR増幅に同じ。また、5’及び3’プライマー*、を小麦検出用プライマー対に変更する点を除いて、反応液組成も同一。
* 小麦検出用プライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。
検出用プライマー対
F―primer(Wtr01―5’):5’―CAT CAC AAT CAA CTT ATG GTG G―3’
R―primer(Wtr10―3’):5’―TTT GGG AGT TGA GAC GGG TTA―3’
増幅バンド長 141bp
本プライマーについては(株)日清製粉グループ本社が特許出願中である。保健所、衛生試験所など官公庁分析機関を除く分析機関において、本プライマーを使用した受託試験を業として実施する場合は、別途協議が必要であり、下記に連絡すること。但し、本プライマーを試験研究のために製造、使用することについては一切制限はない。
(連絡先:(株)日清製粉グループ本社 研究推進グループ、Tel.049―267―3916、Fax.049―266―5166)
2.3.4.アガロースゲル電気泳動
PCR増幅反応液をアガロースゲル電気泳動により分離し、DNA増幅バンドを確認する。
2.3.4.1.アガロースゲルの作成
必要量のアガロースを秤量し、TAE緩衝液*1を加え、加熱してアガースを溶解する。次に100mL当たり5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)*2を加え、ゲルが50℃前後まで冷えたらゲルメーカーにゲルを流し込み、十分に室温で冷やし固めてゲルを作製する*3。ゲルはすぐに使用する事が望ましいが、緩衝液に浸して数日間は保存することが可能である。ゲルの濃度は泳動するDNAの長さに応じて決める必要があるので、泳動する目的産物のバンド長にあわせてゲル濃度(2.0―4.0%)を決める。(特定原材料の検知においては2.5―4.0%濃度のアガロースゲルを使用するのが適当である)
*1 TAE緩衝液
各最終濃度が40mM Tris―酢酸、1mM EDTAとなるように蒸留水を用いて調製したものをTAE緩衝液とする。
*2 エチジウムブロミド
2本鎖DNAの鎖の間に入り込む蛍光試薬であり、強力な発ガン作用と毒性がある。取扱いの際には必ず手袋をはめ、マスクを着用すること。
*3 前染色
ここでは、前染色法について述べる。この段階でエチジウムブロミド溶液を加えず、電気泳動終了後、2.3.4.3.に述べる後染色法に従って、染色を行っても良い。(予想増幅バンド長の短い場合には、可視化を容易にするためにも後染色をすることが望ましい)
2.3.4.2.電気泳動
TAE緩衝液を満たした電気泳動漕にゲルをセットする。PCR増幅反応液7.5μLと適当量のゲルローディング緩衝液を混ぜ合わせた後、ゲルのウェルに注入する。ウェルへの注入に時間がかかりすぎると、DNAが拡散し鮮明な結果が得られにくくなるので注意する。次に、100V定電圧で電気泳動を行い、ゲルローディング緩衝液に含まれるBPBがゲルの2/3程度まで進んだところで電気泳動を終了する。
2.3.4.3.ゲルの染色(後染色)
前染色を行った場合は本項の操作は必要ない。
ゲルが十分に浸る量のTAE緩衝液が入った容器に、泳動後のゲルを移し入れる。次に緩衝液100mL当たり、5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)を加え、容器を振とう器に乗せて軽く振とうしながら20分程度染色する。その後、TAE緩衝液のみの入った容器に染色済みのゲルを移し、20分程度軽く振とうしながら脱染色を行う。
2.3.4.4.ゲルイメージ解析
ゲルイメージ解析装置内のステージに食品包装用ラップ*を置き、その上に電気泳動及び染色操作を完了したゲルをのせて紫外線(312nm)を照射する。ゲルイメージ解析装置の画面で電気泳動パターンを確認する。DNA分子量標準マーカーと比較して目的のバンドの有無を判定する。ブランク反応液で対応するPCR増幅バンドが検出された場合は、DNA抽出操作以降の結果を無効として、改めて実験をやり直す。泳動結果は画像データとして保存しておく。
* 食品包装用ラップ
ポリ塩化ビニリデン製のフィルムでないと紫外線は吸収されてしまい、像が得られない場合があるので注意を要する。
2.3.5.結果の判定
2.3.5.1.落花生を対象とした検査結果の判定
1調製試料より2点並行で抽出したDNAを規定濃度に調製した後、鋳型DNAとして用い、PCR法を実施する。まず1度目のPCR増幅は植物DNA検出用プライマー対を用いて実施し、その結果、DNA試料液2点のいずれを用いた場合も共に124bpのPCR増幅バンドが検出された場合には(下記植物DNA検出用プライマー対判定例試料番号1)、両試料液においてPCR増幅に必要な品質を有するDNAが抽出されたと判断し、次いで、落花生検出用プライマー対を用いたPCR増幅を各試料液に対し実施する。落花生検出用プライマー対を用いた2度目のPCR増幅の結果、DNA試料液2点の両方あるいは、そのいずれかにおいて95bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体は落花生陽性と判定する(下記検出用プライマー対判定例試料番号1ならびに2)。また、1度目の植物DNA検出用プライマー対を用いたPCR増幅の結果、DNA試料液2点のうちいずれかにおいてPCR増幅バンドが検出されなかった場合(下記植物DNA検出用プライマー対判定例試料番号2及び3)には、当該試料液を用いた検査を中止し、PCR増幅バンドが得られた試料液のみを鋳型として、検出用プライマー対を用いた2度目のPCR増幅を実施する。その結果、95bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体は落花生陽性と判定する。なお、下記植物DNA検出用プライマー対判定例試料番号4にあるように、植物DNA検出用プライマー対を用いた1度目のPCR増幅の結果において、DNA試料液2点ともにPCR増幅バンドが得られなかった場合には、PCR増幅に必要な品質を有するDNAが抽出されていなかったと判断し、2.3.2.に示されている先に用いたDNA抽出法以外の抽出法を試みる。
2.3.2.に示されている3種のDNA抽出法を用いても、同様の結果が得られる場合には、当該検査対象検体からのDNA抽出が不可能であり、PCR法による検知不能と判断する。以下に判定例を示す。
植物DNA検出用プライマー対判定例
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試料番号 |
1 |
2 |
3 |
4 |
抽出1 |
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+ |
+ |
- |
- |
抽出2 |
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+ |
- |
+ |
- |
|
事例1 |
事例2 |
事例3 |
+:増幅バンド検出、-:増幅バンド非検出
事例1:検出用プライマー対を用いたPCR増幅をDNA試料液2点に対し行う。
事例2:増幅バンドの得られたDNA試料液のみに対して、検出用プライマー対を用いたPCR 増幅を行う。
事例3:本法によるDNA抽出は困難であると判断し、DNA抽出法の最適化を図る。3種のDNA抽出法を試みてなお、同じ結果のみ得られる場合には、当該検査対象検体からのDNA抽出は不可能であり、PCR法による検知不能と判断する。
検出用プライマー対判定例
|
試料番号 |
1 |
2 |
3 |
抽出1 |
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+ |
+ |
- |
抽出2 |
|
+ |
- |
- |
判定 |
陽性 |
陽性 |
陰性 |
+:増幅バンド検出、-:増幅バンド非検出
2.3.2.に記したとおり、検査対象検体に最適な抽出法を選択しなかった場合、量、質ともにPCRの鋳型となりうるDNAを抽出することが難しい。PCR法に供するDNA試料液は最適な抽出法にて抽出、精製され、原則として2.3.2.4.に示す基準を満たしているものとする。
2.3.5.2.そばを対象とした検査結果の判定
植物DNA検出用プライマー対を用いたレーンで124bpのPCR増幅バンドが検出され、そば検出用プライマー対を用いたレーンで127bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体はそば陽性と判定する。なお、結果判定の手順、判定例、ならびに注意事項は2.3.5.1.記載の落花生を対象とした検査結果の判定に同じ。
2.3.5.3.小麦を対象とした検査結果の判定
植物DNA検出用プライマー対を用いたレーンで124bpのPCR増幅バンドが検出され、小麦検出用プライマー対を用いたレーンで141bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体は小麦陽性と判定する。なお、結果判定の手順、判定例、ならびに注意事項は2.3.5.1.記載の落花生を対象とした検査結果の判定に同じ。
(参考)
1.FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ及びFASTKITエライザシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)は、日本ハム株式会社中央研究所(〒300―2646茨城県つくば市緑ヶ原3―3.Tel.029―847―7825 Fax.029―847―7824)から購入可能である。
2.(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)、モリナガ特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)及びモリナガウエスタンブロットキットは、株式会社森永生科学研究所(〒236―0003 横浜市金沢区幸浦2―1―16 Tel.045―791―7673 Fax.045―791―7675)から購入可能である。
3.改良検査法で検査する際の検体抽出液は「特定原材料抽出用試薬」として株式会社森永生科学研究所(〒236―0003 横浜市金沢区幸浦2―1―16 Tel.045―791―7673 Fax.045―791―7675)から購入可能である。
4.そば及び小麦検出用プライマーはオリエンタル酵母工業(株)(〒526―0804 滋賀県長浜市加納町50、オリエンタル酵母工業(株)長浜ライフサイエンスラボラトリー(長浜LSL)Tel.0749―64―2346、Fax.0749―63―7910)から購入可能である。
検査概要
同一調製試料を対象とし、改良された複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)及び改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の2種のキット、又は、複合抗原認識抗体を用いた日本ハム(株)製FASTKITエライザシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)及び単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)の2種のキットを用いて測定検査を実施する。なお、両者の検体抽出液の組成は異なっているので、それぞれに対応した検体抽出液を使用する。
ELISA法による検査以降の検査は、上記いずれかの2種の組合せのELISA法を用いて実施された結果に基づき、原則として別添2の「判断樹」に従って実施する。別添3の「判断樹について」も必ず参照すること。適宜、ウエスタンブロット法(卵、乳)、PCR法(小麦、そば、落花生)による確認検査を行う。
また現時点で判明している偽陽性及び偽陰性を示す可能性のある食品群を別添4「偽陽性又は偽陰性を示す食品リスト」に示す。全ての検査において、各キットに係る偽陽性、偽陰性の確認を別添4の「偽陽性又は偽陰性を示す食品リスト」を参照にして必ず行うこと。
(別紙2)
(別添3)
判断樹について
1 基本的注意事項
(1) この判断樹は、健康被害防止の観点に立ち、現在の科学的知見に基づき、アレルギー症状を誘発する可能性のある食品の誤表示による危害をできる限り回避することを目的とし、構成されている。
(2) 食品中の特定原材料の監視は、原則としてこの判断樹に基づいて行う。
(3) 本スクリーニング検査(M社及びN社のELISA法)には偽陽性又は偽陰性を示す食品が存在するので、その判断には十分注意する。すべての検査において、「偽陽性又は偽陰性を示す食品リスト」を参照して偽陽性又は偽陰性の確認を必ず行う1。
(4) すべての検査において、製造記録の確認を必ず行う。(ただし、判断樹枝①の場合のみ省略可能。)
2 スクリーニング検査について
(1) 改良された単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製モリナガ FASPEK 特定原材料測定キットでは、乳キット(カゼイン抗体及びβ―ラクトグロブリン抗体)があるが、カゼイン抗体のキットを使用する。当該キットは加工食品への適用範囲が比較的広い。単一あるいは精製抗原認識抗体を用いた(株)森永生科学研究所製特定原材料測定キットでは、卵キット(卵白アルブミン抗体及びオボムコイド抗体)、乳キット(カゼイン抗体及びβ―ラクトグロブリン抗体)があるが、それぞれオボアルブミン抗体、カゼイン抗体のキットを使用する2。
(2) ELISA法で陽性とは、定量検査の結果、食品採取重量1gあたりの特定原材料由来のタンパク質含量が10μg以上のものをいう3。
3 製造記録の確認について
(1) ここでいう「製造記録」とは、製造レシピ(配合表を含む。)、作業手順書、作業日報、検査成績書、ガントチャート(ライン毎の製造予定表)、品質(成分)保証書、商品カルテ(成分情報を含む。)、特定原材料を含まない旨の証明書等をいう。
(2) 製造記録に記載があるにもかかわらず、表示がないものについては、その根拠を必ず確認する。また、製造記録に記載がないにもかかわらず、表示があるものについては、その根拠を必ず確認する。
(3) ここでいう「根拠」とは、実測値もしくは製造記録からの推計値をいう。
(4) 製造記録が不明なものは、「記載なし」と同様に扱う。
4 確認検査について
(1) 卵、乳の確認検査は、ウェスタンブロット法を使用する。ウェスタンブロット法で使用する抗体は、卵はオボアルブミン抗体及びオボムコイド抗体、乳はα―カゼイン抗体及びβ―ラクトグロブリン抗体を使用する。
(2) 小麦、そば、落花生の確認検査は、PCR法を使用する。PCR法で特異的遺伝子増幅バンドが検出されたものを陽性とする。
5 違反発見時の措置
(1) 特定原材料が含まれる食品に係る表示が訂正されるまでの間(判断樹枝⑧においては、製造記録に「表示なし」の根拠の記載がされるまでの間)は、当該食品等の販売を行わないよう指導する。
(2) さらに、必要に応じて食品衛生法第54条若しくは第55条に基づく措置等を検討する。
6 枝①から⑨までの考え方
① |
特定原材料の表示があり、2社のキットによるスクリーニング検査結果のうち少なくともどちらか1つが「+(プラス)」の場合。 |
・ この場合でも製造記録の確認を行うことは望ましく、この判断樹がこれを妨げるものではないが、省略は可能。
・ 確認検査は不要。
・ 適正表示と考えられ、行政措置は不要。
② |
特定原材料の表示があり、2社のキットによるスクリーニング検査結果のどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載がある場合。 |
・ 製造記録の確認は必須。
・ 確認検査は不要。
・ 表示することは可能であり、行政措置は不要。
・ 食品中に含まれる特定原材料等の総タンパク量が、数μg/ml濃度レベル又は数μg/g含有レベルに満たない場合は、表示の必要性はないが、この場合に表示をするかしないかの判断は、製造者もしくは販売者によるものである。
・ スクリーニング検査結果の「-(マイナス)」が、特定原材料の総タンパク量がO(ゼロ)を意味しないことにご留意願いたい。
③ |
特定原材料の表示があり、2社のキットによるスクリーニング検査結果のどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載がない場合。 |
・ 製造記録の確認は必須。
・ 確認検査は不要。
・ 表示してはならず、表示を訂正させる。
・ 製造記録に記載がないにもかかわらず、表示した根拠があれば、今後、その根拠を製造記録に記載するように指導する。
④ |
特定原材料の表示がなく、2社のキットによるスクリーニング検査のうち少なくともどちらか1つが「+(プラス)」で、製造記録に特定原材料の記載がある場合。 |
・ 製造記録の確認は必須。
・ 確認検査は不要。
・ 表示は必要であり、表示を訂正させる。
⑤ |
特定原材料の表示がなく、2社のキットによるスクリーニング検査結果のうち少なくともどちらか1つが「+(プラス)」で、製造記録に特定原材料の記載がなく、確認検査結果が「+(プラス)」の場合。 |