○「日本人の食事摂取基準(2005年版)」の策定に伴う「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」の一部改正について
(平成17年7月1日)
(食安新発第0701003号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室長通知)
「日本人の食事摂取基準の策定について」(平成16年12月28日付け健発第1228001号厚生労働省健康局長通知)によって「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が策定されたことを受けて、今般、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日付け衛新第13号厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知)の一部を下記のように改正することとしたので、貴管下関係者に対する周知徹底をはじめ、その運用に遺憾のなきよう取り計らわれたい。
記
「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法について」の別添栄養成分等の分析方法等の「21ナイアシン」、「24ビタミンA(レチノール、カロテン)」及び「31ビタミンE」を別添下線部のように改正する。
別添
21 ナイアシン(ナイアシン当量として)
ナイアシンはニコチン酸及びニコチン酸アミドを総称する名称である。なお,肝臓において重量比でトリプトファン60からナイアシン1を合成できるため,ニコチン酸とニコチン酸アミドの合計量に1/60トリプトファン量を加えたものをナイアシン当量とする。
<ニコチン酸及びニコチン酸アミドの定量>
高速液体クロマトグラフ法は、食品中にニコチン酸又はニコチン酸アミドが100g当たり1mg以上は含まれていて、さらにその存在形態が明らかな場合に適用できる。一般的な食品においては、ニコチン酸及びニコチン酸アミドを分別して定量する必要はなく、感度及び特異性に優れた微生物定量法が汎用されている。
(1) 高速液体クロマトグラフ法
① 機器、試薬
・高速液体クロマトグラフ(HPLC):紫外分光光度計付き
・カラム:逆相型
・ニコチン酸標準溶液:国立衛生試験所標準品を水に溶かして、2、5、10及び20μg/ml溶液を調製する。
・ニコチン酸アミド標準溶液:国立衛生試験所標準品を水に溶かして、2、5、10及び20μg/ml溶液を調製する。
② 試験溶液の調製
試料の適量を水で振とうあるいはホモジナイズ抽出する。得られた抽出液をろ過し、一定容とし、約10μg/ml濃度の試験溶液とする。
③ 測定
試験溶液の20μlを高速液体クロマトグラフに注入し、ニコチン酸又はニコチン酸アミドのピーク面積を測定し、あらかじめ標準溶液20μlを注入して得られた検量線を用いて試験溶液中の濃度を求め、試料中のニコチン酸又はニコチン酸アミド含量を算出する。
④ 高速液体クロマトグラフ操作条件例
1) ニコチン酸
カラム:内径4.6mm、長さ150mm、ステンレス製注1)
移動相:3mmol/Lテトラブチルアンモニウムブロマイド含有
5mmol/L酢酸ナトリウム(pH5.0):メタノール(9:1V/V)
測定波長:260nm
流量:1.5ml/分
2) ニコチン酸アミド
カラム:内径4.6mm、長さ150mm、ステンレス製注1)
移動相:10mmol/Lオクタンスルホン酸ナトリウム含有
20mmol/L酢酸ナトリウム(pH3.5):メタノール(98:2V/V)
測定波長:260nm
流量:1.2ml/分
[注]
1) Inertsil ODS―2(ジーエルサイエンス製)又は同等品を用いる。
(2) ナイアシン定量用基礎培地法
① 機器、試薬
・分光光度計
・ナイアシン標準溶液:ニコチン酸(国立衛生試験所標準品)100mgを水に溶かし、希釈して正確に100mlとする。更に、希釈して50ng/mlとなるようにする。
・使用菌株:Lactobacillus plantarum(ATCC 8014)
・ナイアシン測定用培地(1L中、pH6.8±0.1)
カザミノ酸 14g
L―シスチン 400mg
DL―トリプトファン 200mg
アデニン硫酸塩 20mg
グアニン塩酸塩 20mg
ウラシル 20mg
リボフラビン 400μg
チアミン塩酸塩 200μg
ビオチン 0.8μg
p―アミノ安息香酸 200μg
パントテン酸カルシウム 400μg
ピリドキシン塩酸塩 800μg
リン酸水素二カリウム 1g
リン酸二水素カリウム 1g
硫酸マグネシウム 400mg
硫酸第一鉄 20mg
硫酸マンガン 20mg
酢酸ナトリウム 20g
グルコース 40g
・乳酸菌保存用培地(1L中、pH6.8±0.1)
酵母エキス 5.5g
ペプトン 12.5g
ブドウ糖 11.0g
リン酸水素二カリウム 0.25g
硫酸第一鉄 5.0mg
リン酸二水素カリウム 0.25g
酢酸ナトリウム(無水) 10.0g
硫酸マグネシウム 0.1g
硫酸マンガン 5.0mg
粉末寒天 20.0g
・前培養培地:上記培地より粉末寒天を除く。
なお各培地はそれぞれ調製したものが市販されている注1)。
・その他の試薬は特に指定のない限り特級を用いる。
② 接種菌液の調製
Lactobacillus plantarumの保存菌株を前培養培地に接種し、35℃で20時間培養する。この菌浮遊溶液を遠心分離し、600nmにおける透過率が80~90%になるように滅菌生理食塩水で希釈し、接種菌液とする。
③ 試験溶液の調製
試料2gを精密に量り、0.5mol/L硫酸100mlを加え、121℃で30分間オートクレーブ処理を行う。冷却後、5mol/L水酸化ナトリウム溶液でpH6.8に調整後、水で200mlに定容し、ろ過する。更に、溶液1ml中にナイアシンが10~20ngを含むように水で希釈し、試験溶液とする。
④ 測定
試験管2本ずつに試料溶液0.5、1及び2mlを正確に加え、次に各試験管に測定用培地2.5ml及び水を加えて全量を5mlとする。別に検量線作成のため、ニコチン酸標準溶液(0~0.75ng相当量)を試験管2本ずつにとり、それぞれに測定用培地2.5ml及び水を加えて全量を5mlとする。121℃で15分間オートクレーブ処理を行い、冷却後、各試験管に接種菌溶液1滴(約30μl)ずつを無菌的に接種し、37℃で18時間ふ卵器に入れて培養する。
培養後、増殖度を600nmの濁度を用いて測定する。標準溶液の濁度より検量線を作成し、これに試験溶液より得られた濁度を照合して、試験溶液中のナイアシン量を求め、試料中のナイアシン含量を算出する。
[注]
1) ニコチン酸定量用基礎培地「ニッスイ」:日水製薬
一般乳酸菌保存検出用培地「ニッスイ」:日水製薬
一般乳酸菌接種用培地「ニッスイ」:日水製薬(前培養培地に同じ)
<トリプトファンの定量>
(1) 高速液体クロマトグラフ法注1)
① 試薬
・標準溶液:トリプトファン50mgを精秤する。0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液に溶解後,100mlに定容し,水で50倍希釈する。(10μg/ml)
・水酸化バリウム(特級)
② 試験溶液の調製
試料0.1~1g及び水酸化バリウム7.8gを封管用試験管に精秤し,水4.5ml及び60%チオジエチレングリコール0.5mlを加え,沸騰水浴中で水酸化バリウムを加熱溶解する注2)。溶解後,減圧下で脱気し,封管後,110℃(恒温乾燥機)で12時間加水分解する。冷却後,開管し,加水分解液を50mlまたは100ml容メスフラスコ(1W/V%フェノールフタレイン溶液を数滴加えておく)に移した後,微アルカリに調整,定容し,0.45μmのフィルターでろ過したものを試験溶液とする。
③ 測定
試験溶液20μlを高速液体クロマトグラフに注入し,トリプトファンのピーク面積を測定し,あらかじめHPLC用標準溶液20μlを高速液体クロマトグラフに注入して得られた検量線から,試料中のトリプトファン含量を求める。
<高速液体クロマトグラフ操作条件>
カラム:内径4.6mm,長さ250mm,ステンレス製注3)
移動相:10mmol/l過塩素酸―メタノール(92:8V/V)
検出器:蛍光分光光度計
測定波長:励起波長285nm,蛍光波長348nm
流量:1.0ml/分
温度:50℃
[注]
1) アミノ酸自動分析法でも測定できる。
2) トリプトファンは塩酸加水分解では破壊されるため,アルカリを用いた加水分解を行う。
3) Inertsil ODS―2(ジーエルサイエンス製)又は同等品を用いる。
<ナイアシン当量の算定>
ナイアシン当量は,次式によって算定する。
ナイアシン当量(mg/100g)=ニコチン酸(mg/100g)+ニコチン酸アミド(mg/100g)+1/60トリプトファン(mg/100g)=ナイアシン定量用基礎培地法によるナイアシン(mg/100g)+1/60トリプトファン(mg/100g)
24 ビタミンA(レチノール、カロテン)注1)
(1) 高速液体クロマトグラフ法:レチノール(ビタミンAアルコール)
① 機器、試薬
・水酸化カリウム溶液:粒状水酸化カリウム(特級)60gを冷却しながら水を加えて溶解し、正確に100mlとする。
・弱活性アルミナ:活性アルミナ注2)500gに水50mlを滴下して加え、振り混ぜて均一にし、密栓、一夜放置する。活性度を測定し、一定の活性度注3)のものを使用する。活性度は水の量を加減して調整する。
・標準レチノール:パルミチン酸レチノール(1g中に30万μg以上のレチノールを含むもの)を次の試験法に従ってけん化抽出し、標準溶液の検定を行う。フリーのレチノールを使用する場合でもイソプロピルアルコール(特級)に溶解した後、標準溶液の検定を行う。
・ピロガロール、エタノール、塩化ナトリウム、石油エーテル(以上、特級)
・ヘキサン、酢酸エチル(以上、残留農薬試験用)
・ジエチルエーテル:過酸化物を含まないもの。
・分光光度計:紫外部及び可視部の吸収が測定可能なもの。
・クロマト管:内径10mm、高さ250mm、ガラスコック付き
・高速液体クロマトグラフ:紫外分光光度計付き
・カラム:逆相分配型、内径4.6mm、長さ150mm
② 試験溶液の調製
1) けん化
試料約0.5g注4)を60ml容遠心管(共栓付き)に精密に量り、3%ピロガロール―エタノール溶液10mlと水酸化カリウム溶液1mlを加え、70℃水浴中でガラス棒でときどきかき混ぜながら30分間加熱する。水冷後、1%塩化ナトリウム溶液22.5mlを加えた後、ヘキサン―酢酸エチル混液(9:1V/V)15mlを加える。5分間振とうし、遠心分離後、駒込ピペットで上層を100ml容なす形フラスコに移す。水層をヘキサン―酢酸エチル混液(9:1V/V)15mlで更に2回、同様に抽出する。抽出液を合わせ40℃で減圧濃縮する。
残留物をエタノールに溶解し、レチノールとして約0.3μg/mlとなるように希釈し、試験溶液とする。
レチノール含量が0.3mg/100g程度以下の試料の場合は、残留物を石油エーテル(特級)5mlに溶解し、以下に示すアルミナカラムを用いた精製を行う注5)。
2) アルミナカラムクロマトグラフィー
クロマト管にあらかじめ活性度を調整したアルミナ約7gを石油エーテルに懸濁させ、約7cmの高さに充填する。受器に100ml容なす形フラスコを置き、カラムの上に先の残留物の石油エーテル溶液を静かに流し入れ、流量1ml/分で流出する。カラム上部の液がなくなる直前に石油エーテル5mlを加え、更に3回繰り返す(カロテン画分)。次に、受器を別の100ml容褐色なす形フラスコに替える。石油エーテル―エーテル混液(9:1V/V)を約30ml流す。得られた溶出液を、40℃で減圧濃縮する(レチノール画分)。残留物に一定量のエタノールを加え溶解する。1ml中レチノールを約0.3μg含むようにエタノールで希釈し、試験溶液とする。
③ 標準レチノールの検定
10~20mg程度を精密に量りとり、試料と同様に、②、1)の方法に従ってけん化抽出した標準レチノールをイソプロピルアルコールに溶解し、1ml中にレチノールとして2~3μgになるように希釈し、分光光度計で325nmの吸光度を測定する。
次式により希釈した標準溶液のレチノール濃度を求める。
レチノール(μg/ml)=A/100×1,830×0.3
A:希釈した標準溶液の325nmにおける吸光度(対照:イソプロピルアルコール、1cmセル)
④ 標準溶液の調製
標準レチノールをエタノールで1ml中0.05、0.1、0.2及び0.5μgになるように希釈し、標準溶液とする。
⑤ 高速液体クロマトグラフ操作条件例注6)
カラム:内径4.6mm、長さ150mm、ステンレス製注7)
移動相:メタノール―水(92:8V/V)
測量波長:325nm注8)
流量:1.0ml/分
温度:35℃
⑥ 測定
試験溶液20μlを高速液体クロマトグラフに注入し、レチノールのピーク面積を測定し、あらかじめ標準溶液20μlを高速液体クロマトグラフに注入して得られた検量線から試験溶液中の濃度を求め、これを用いて試料中のレチノール含量を算出する。
⑦ 計算
試料中のレチノール含量(μg/100g)=C×V×N×100/W
C:検量線から求めた試験溶液のレチノール濃度(μg/ml)
V:定容量(ml)
N:希釈率
W:試料採取量(g)
(2) 吸光光度法:総カロテン注9)
① 試験溶液の調製
(1)、②と同様に操作し、アルミナカラムクロマトグラフィーで得られるカロテン画分注10)を40℃で減圧濃縮する。残留物を一定量のヘキサンに溶解し、1ml中にカロテンを約1μg含むようにヘキサンで希釈する。
② 測定
分光光度計によりヘキサンを対照にして、試験溶液の453nmの吸光度を測定する。
③ 計算
β―カロテンの吸光係数画像1 (2KB)
=2,592(溶媒、ヘキサン)を用いて次式により試料中の含量を求める。
試料中の総カロテン(mg/100g)=A×1,000/2,592×V/W×N
レチノール当量(μg/100g)=総カロテン(mg/100g)×1,000/2×1/3
A:試験溶液の吸光度
V:定容量
N:希釈率
W:試料採取量(g)
(3) 高速液体クロマトグラフ法:α―カロテン、β―カロテン注9)注11)
① 機器、試薬
・α―カロテン標準溶液:α―カロテン標準品注12)
・β―カロテン標準溶液:β―カロテン標準品注12)
・シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール(以上、特級)
・高速液体クロマトグラフ:紫外可視分光光度計付き
・その他の機器及び試薬は前記(1)と同様のものを用いる。
② 試験溶液の調製
(1)、②、1)に従って操作し、得られた抽出物を減圧濃縮後、エタノールで溶解し、β―カロテンとして2~4μg/mlになるように希釈し、試験溶液とする。
ジュースの場合は次の操作で試験溶液を得る。試料約2gを60ml容の遠心管(共栓付き)に精密に量り、3%ピロガロール含有エタノール溶液20mlと無水硫酸ナトリウム10gを加え、5分間振とうする。遠心分離後、上澄み液を100ml容メスフラスコにとる。残留物に3%ピロガロール含有エタノール溶液20mlを加え、同様に抽出を行う。同様の操作を更に1回繰り返した後、3%ピロガロール含有エタノール液で定容する。溶液の一部(10ml)を60ml容の遠心管(共栓付き)に正確に量り、60%水酸化カリウム溶液1mlを加え、70℃の水浴中で30分間加熱する。水冷後、1%塩化ナトリウム溶液23mlとイソプロピルアルコール6ml及びヘキサン―酢酸エチル混液(9:1V/V)15mlを加える。5分間振とうし、遠心分離後、駒込ピペットで上澄み液を100ml容のなす形フラスコに移す。水層をヘキサン―酢酸エチル混液(9:1V/V)15mlで更に2回、同様に抽出する。抽出液を合わせ40℃で減圧濃縮する。残留物をエタノールに溶解する。ただし、ニンジンジュースのようにβ―カロテン含量の高い場合はけん化操作を省略する。
③ 標準溶液の調製
・α―カロテン標準品5mgを精密に量り、石油エーテルで100mlに定容し、標準溶液Aとする。標準溶液Aをエタノールで希釈し、α―カロテンを1ml中に0.5、1.0、2.0及び4.0μg含む溶液を調製し、α―カロテン標準溶液とする。
・β―カロテン標準品20mgを精密に量り、シクロヘキサンで100mlに定容し、標準溶液Bとする。標準溶液Bをエタノールで希釈し、β―カロテンを1ml中に0.5、1.0、2.0及び4.0μg含む溶液を調製し、β―カロテン標準溶液とする。
④ 標準溶液の検定
③の標準溶液A 2mlを正確に量り、石油エーテルで100mlに定容し、444nmの吸光度を測定する。α―カロテンの吸光係数を画像2 (2KB)
=2,800として標準溶液A中のα―カロテン濃度を求める。
③の標準溶液B 2mlを正確に量り、シクロヘキサンで200mlに定容し、455nmの吸光度を測定する。β―カロテンの吸光係数を画像3 (2KB)
=2,450として標準溶液B中のβ―カロテン濃度を求める。
⑤ 高速液体クロマトグラフ操作条件例注13)
カラム:内径4.6mm、長さ150mm、ステンレス製注14)
移動相:メタノール―クロロホルム(96:4V/V)
流量:1.5ml/分
測定波長:455nm
温度:40℃
⑥ 測定
試験溶液20μlを高速液体クロマトグラフに注入し、α―カロテン及びβ―カロテンのピーク面積をそれぞれ測定し、あらかじめ標準溶液20μlを高速液体クロマトグラフに注入して得られた検量線から、試料中のα―カロテン及びβ―カロテン含量を求める。
⑦ 計算
試料中のα―カロテン(又はβ―カロテン)含量(μg/100g)=C×V×N×100/W
C:検量線から求めた試験溶液のα―カロテン(またはβ―カロテン)濃度(μg/ml)
V:定容量(ml)
N:希釈率
W:試料採取量(g)
レチノール当量に換算する場合は次式による。
レチノール当量(μg/100g)=1/24α―カロテン含量(μg/100g)+1/12β―カロテン含量(μg/100g)
[注]
1) ビタミンは生物効力に対する名称である。定量の対象としては、主にビタミンA効力を示すレチノール、α―カロテン及びβ―カロテンとし、その定量値はレチノール当量として表す。なお、レチノール1μgは、α―カロテン24μg、β―カロテン12μgにそれぞれ相当する。
2) Merck Art.1097(メルク社製)
3) Yellow OB(FD&C Yellow No.4,Colour Index No.11390)20mgを石油エーテル100mlに溶解し、保存溶液とする。保存溶液10mlを石油エーテルで100mlとし試験溶液とする。弱活性アルミナを石油エーテルで懸濁し、カラムに10cmの高さに詰める。
試験溶液1mlをカラムに通し、石油エーテル―エーテル混液(9:1)を流し、黄色がカラムから落ち切るまでの容量(ml)をもって活性度の指標とする。通常、約12mlで溶出する。
4) レチノール含量が低い試料の場合、試料採取量を1~2gにする。その場合、3%ピロガロール含有エタノール液10mlと水酸化カリウム溶液1mlのほか、更に粒状水酸化カリウム2gを加えてけん化する。
5) アルミナカラムによる精製処理は、共存する妨害物の除去に効果的である反面、分析精度を低下させる。したがって、レチノール含量が0.3mg/100g程度以下の試料であっても、妨害物が少ない場合には、むしろこの処理を省略した方が良いこともある。
6) レチノールには、多くの異性体が存在する。13―シス体は自然界に多く存在し、加熱処理によっても生じる。13―シス体は、all―トランス体に比べて生物効力は75%と言われている。13―シス体を分別定量する場合は、順相系カラムを用いた高速液体クロマトグラフ条件が適当である。しかし、標準の13―シス―レチノールは得るのが難しく、不安定なので注意を要する。
7) Cosmosil C18 Econopac(ナカライテスク製)あるいは相当品を用いる。
8) レチノールの測定に蛍光検出器を用いた例も報告されている。ここで、紫外部吸収検出器を用いているのは、all―トランス体と13―シス体は吸光係数が近似しており、13―シス体を含めたレチノール含量を求めるには都合がよいためである。
9) トマト加工品などリコピンを多く含む食品は、アルミナカラムクロマトグラフィーでリコピンとカロテンを分離することは困難である。高速液体クロマトグラフ法により、α―カロテンとβ―カロテンを分離・測定し、その合計を総カロテンとした方がよい。
10) 弱活性アルミナカラム処理では、カロテンの異性体(α、β、γ)は分離しないため、測定値は総カロテンとなる。
11) クリプトキサンチンのようにα―カロテン、β―カロテン以外の成分でビタミンA効力を有するものを多く含む食品にあっては、それらの成分も分離・測定してレチノール当量に合算する。クリプトキサンチンの高速液体クロマトグラフの条件は、(3)高速液体クロマトグラフ法:総カロテン、α―カロテン、β―カロテンに同じである。クリプトキサンチンは、フナコシ82―0003―17(EXTRASYTESE社製)あるいは相当品を用いる。濃度はクリプトキサンチンを石油エーテルに溶解し、452nmの吸光度を測定し、画像4 (2KB)
=2,386を用いて検定する。検量線作成用の標準溶液は、検定に用いた標準溶液を分取し、溶媒留去後、エタノールの一定量に溶解し、クリプトキサンチンを1ml中に0.5、1.0及び2.0μg含むように調製する。
なお、クリプトキサンチンの生物効力については、24μgがレチノール1μgに相当するとするのが一般的である。
12) α―カロテン標準品は、和光純薬工業社製035―17981あるいは相当品を、β―カロテン標準品には、Merck Art 2236(メルク社製)あるいは相当品を用いる。
13) (3)⑤の高速液体クロマトグラフ操作条件ではα―カロテンとβ―カロテンの分離とともに、β―カロテンのシス体も分離する。シス体のβ―カロテンはニンジンや藻類の抽出物中に多量に存在しているため、ここでは9―シス体と13―シス体のピーク面積値をall―トランス体の面積値に合わせてβ―カロテン値とする。また、クロマトグラムの再現性が悪いときは移動相にパルミチン酸アスコルビルを50μg/ml濃度で加えると改善される。
14) TSKgel ODS 120A(東ソー製)あるいは相当品を用いる。リコピンを多く含むものはアセトニトリル―メタノール―テトラヒドロフラン(55:40:5V/V)(α―トコフェロールを50μg/ml含む。)を使用した方がよい。
[参考文献]
1) 大森正忠、武藤泰敏:“ビタミンハンドブック、③ビタミン分析法”、日本ビタミン学会編、1、化学同人(1989)
2) 勝井五一郎:“ビタミン学実験法[Ⅰ]”、日本ビタミン学会編、14、東京化学同人(1983)
3) Quakenbush,F.W.:J.Liq.Chrom.,10,643(1987)
4) 月田潔:ビタミン、58、185(1984)
5) 氏家隆、飯田栄子、小高要、新藤寛美、上野順士:ビタミン、64、187(1990)
31 ビタミンE(α―トコフェロールとして)
(1) 高速液体クロマトグラフ法
① 機器、試薬
・高速液体クロマトグラフ(HPLC):蛍光検出器付き
・カラム:順相型
・標準ビタミンE(α、β、γ、δ―トコフェロール):ビタミンE定量用注1)
・ヘキサン―酢酸エチル混液:ヘキサン―酢酸エチル(9:1V/V)
・その他の試薬は特に指定のない限り特級を用いる。
② 標準溶液の調製
1) 標準原液
α、β、γ及びδ―トコフェロール20mgをそれぞれ褐色メスフラスコに精密に量り、エタノールで溶解して正確に50mlとする。冷蔵保存し、6ヵ月ごとに調製する。
2) HPLC用標準溶液
一定量のα、β、γ及びδ―トコフェロール標準原液を褐色ナス形フラスコ又は褐色メスフラスコに正確に量り、溶媒を濃縮乾固又は窒素気流下で留去した後、ヘキサンに溶解する。メスフラスコを用いて正確に希釈し、HPLC用標準溶液とする。冷蔵保存し、1ヵ月ごとに調製する。
③ 試験溶液の調製
1) 一般食品の場合
試料約0.5gを60ml容の遠心管に精密に量りとる。これに1%塩化ナトリウム溶液0.5mlを加えてかくはん後、3%ピロガロール―エタノール溶液10ml及び60%水酸化カリウム溶液1mlを加え、70℃で30分間けん化する。速やかに冷却後、1%塩化ナトリウム溶液を22.5ml及びヘキサン―酢酸エチル混液15mlを加え、栓をして5分間激しく振とうし、不けん化物を抽出する。2,000回転/分で5分間遠心分離し、上層をナス形フラスコに移す。下層はヘキサン―酢酸エチル混液15mlで更に2回同様に抽出する。得られた上層を集め、減圧濃縮後、一定量のヘキサンに溶解し、試験溶液とする。
2) 油脂の場合
試料が油脂の場合は、1)のけん化操作を省きHPLCに直接注入することができる。この場合、油脂約1gを精密に量りとり、一定量のヘキサンに溶解し試験溶液とする。
④ 測定
試験溶液の一定量(5~50μl)をHPLCに注入し、試料中のα、β、γ及びδ―トコフェロールのピーク面積を測定する。同様にHPLC用標準溶液をHPLCに注入し、ピーク面積からα、β、γ及びδ―トコフェロールの検量線を作成する。
⑤ 高速液体クロマトグラフ操作条件例
カラム:ステンレス製、内径4.6mm、長さ250mm注2)
移動相:酢酸―イソプロピルアルコール―ヘキサン(5:6:1000V/V)
検出器:励起波長(Ex)298nm
蛍光波長(Em)325nm
流量:1.2ml/分
温度:40℃
⑥ 計算
α、β、γ、δ―トコフェロールの含量(mg/100g)=C×V×N×100/W×10-3
C:検量線から求めたα、β、γ、δ―トコフェロール濃度(μg/ml)
V:定容量(ml)
N:希釈率
W:試料採取量(g)
[注]
1) ビタミンE同族体セット(エーザイ製)又は同等品を用いる。α―トコフェロールは国立衛生試験所標準品がある。
2) JASCO Finepak SIL 5(日本分光製)又は相当品を用いる。
その他のカラム充填剤と移動相の他の条件は文献1)、2)等を参照のこと。
[文献]
1) 日本ビタミン学会編:ビタミンハンドブック③(ビタミン分析法)、p.27(1989)、化学同人
2) 五十嵐脩編:ビタミンE―基礎と臨床―、p.14(1985)、医歯薬出版