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○雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行について

(昭和五九年七月三〇日)

(発職第一六九号)

(各都道府県知事あて労働事務次官通達)

「雇用保険法等の一部を改正する法律」については、第一〇一回特別国会において昭和五九年七月六日一部修正の上可決成立し、同月一三日「昭和五九年法律第五四号」として公布され、また、「雇用保険法施行令等の一部を改正する政令」が、同年七月二七日「昭和五九年政令第二四六号」として公布され、それぞれ、同年八月一日から施行されることとなつた。

この雇用保険法等の一部を改正する法律等は、高齢化社会の進展その他最近における経済社会情勢の変化に伴う雇用構造の著しい変化に対応し、雇用保険制度の効率的な運営を確保して失業者の生活の安定及びその再就職の促進を図ろうとするものであり、その主たる内容は下記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期せられたく、命により通達する。

第一 雇用保険法等の一部を改正する法律関係

Ⅰ 雇用保険法の一部改正

一 改正の趣旨

高齢化社会の進展、婦人の職場進出、サービス業を中心とする第三次産業の拡大、技術革新の進行及び産業構造の転換等に伴う雇用構造の著しい変化に対応し、雇用保険制度の効率的な運営を確保しつつ失業者の生活の安定及びその再就職の促進を図ることのできるよう現行制度を改善しようとするものである。

二 改正の概要

(一) 一般被保険者の求職者給付の改善等

イ 基本手当の日額の引上げ(第一六条及び第一七条第四項関係)

基本手当日額表における一〇〇分の八〇以内で一〇〇分の六〇を超える率を乗ずる賃金日額の範囲を拡大するとともに、賃金日額の最低額を一〇〇分の二〇、最高額を一〇〇分の一〇それぞれ引き上げることにより、基本手当の日額を引き上げることとしたこと(基本手当の日額の最低額二、五七〇円(現行二、一四〇円)、最高額七、三三〇円(現行六、六七〇円)。

ロ 賃金日額の算定方法の変更(第一七条第一項及び第二項関係)

賃金のうち臨時に支払われるもの及び三箇月を超える期間ごとに支払われるものは、賃金日額の算定の基礎としないこととしたこと。

ハ 定年退職者等に係る支給の期間の延長(第二〇条第二項関係)

労働省令で定める年齢以上の定年に達したことその他労働省令で定める理由により離職した者については、その者が申し出た期間(離職の日の翌日から起算して一年を限度とする。)だけ支給の期間を延長することとしたこと。

ニ 所定給付日数の変更(第二二条関係)

所定給付日数は、受給資格に係る離職の日における受給資格者の年齢及び被保険者であつた期間に応じて、次のとおりとすることとしたこと。ただし、労働省令で定める理由により就職が困難な者及び被保険者であつた期間が一年未満である者については、現行どおりとすることとしたこと。

被保険者であつた期間

年齢

一〇年以上

五年以上一〇年未満

一年以上五年未満

五五歳以上六五歳未満

三〇〇日(三〇〇日)

二四〇日(三〇〇日)

二一〇日(三〇〇日)

四五歳以上五五歳未満

二四〇日(二四〇日)

二一〇日(二四〇日)

一八〇日(二四〇日)

三〇歳以上四五歳未満

二一〇日(一八〇日)

一八〇日(一八〇日)

九〇日(一八〇日)

三〇歳未満

一八〇日(九〇日)

九〇日(九〇日)

九〇日(九〇日)

(注) ( )内は現行

ホ 個別延長給付の充実(第二二条の二関係)

特定不況業種離職者、特定不況地域離職者、倒産により離職を余儀なくされた者、船員であつた後陸上勤務となり事業主の都合により離職した者その他これらの者に準ずるものとして労働省令で定める者であつて、改正に伴い所定給付日数が減少するものについては、改正前の所定給付日数に達するまでその者の給付日数を延長することができることとしたこと。

ヘ 給付制限の期間の延長(第三三条関係)

被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合の給付制限の期間を、一箇月以上三箇月以内(現行一箇月以上二箇月以内)の間で公共職業安定所長の定める期間とすることとするとともに、受給資格に係る離職理由に基づいて給付制限を受けた者の受給期間について整備を行うこととしたこと。

(二) 高年齢求職者給付金制度の創設等

イ 高年齢求職者給付金制度の創設(第三七条の二から第三七条の五まで関係)

高年齢継続被保険者(六五歳以上の被保険者をいう。)が失業した場合に、基本手当に代えて一時金である高年齢求職者給付金を支給するものとし、その額は、被保険者であつた期間に応じて次の表に定める日数分の基本手当の額に相当する額とすることとしたこと。

ただし、六五歳の定年に達したことその他これに準ずるものとして労働省令で定める理由により離職した者については、基本手当を支給するものとしたこと。

被保険者であつた期間

高年齢求職者給付金の額

一〇年以上

一五〇日分

五年以上一〇年未満

一二〇日分

一年以上五年未満

一〇〇日分

一年未満

五〇日分

ロ 適用除外(第六条第一号関係)

六五歳以上の者が新たに適用事業に雇用される場合には、被保険者としないこととしたこと。ただし、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者に該当する者は、現行どおりとすることとしたこと。

ハ 任意加入に係る高年齢継続被保険者に関する暫定措置(附則第二二条関係)

六五歳に達した日以後に雇用される者は、政令で定める日までに、労働省令で定めるところにより公共職業安定所長の認可を受けたときは、高年齢継続被保険者となることができることとし、その者が失業したときには基本手当の五〇日分の高年齢求職者給付金を支給することとしたこと。ただし、認可を受けた後高年齢求職者給付金の支給を受けたことのある者は、この限りでないこととしたこと。

(三) 日雇労働被保険者の求職者給付の改善(第四八条及び第五四条)

日雇労働求職者給付金の日額を現行の三段階(第一級四、一〇〇円、第二級二、七〇〇円、第三級一、七七〇円)から四段階(第一級六、二〇〇円、第二級四、一〇〇円、第三級二、七〇〇円、第四級一、七七〇円)とすることとしたこと。

(四) 再就職手当の創設(第五六条の二関係)

受給資格者が安定した職業に就いた場合において、その安定した職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が当該受給資格に基づく所定給付日数の二分の一以上であつて、労働省令で定める要件に該当するときは、基本手当の三〇日分以上一二〇日分以下の範囲で労働省令で定める額の再就職手当を支給することとしたこと。

(五) その他

その他所要の整備を行うこととしたこと。

Ⅱ 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正

一 印紙保険料の額の変更(第二二条第一項関係)

日雇労働求職者給付金の日額の四段階化に伴い、印紙保険料の日額を現行の三段階(第一級九六円、第二級六三円、第三級四一円)から四段階(第一級一四六円、第二級九六円、第三級六三円、第四級四一円)とすることとしたこと。

二 任意加入に係る高年齢継続被保険者の保険料(附則第九条関係)

任意加入に係る高年齢継続被保険者に関しては、高年齢労働者に係る保険料免除は行わないこととしたこと。

三 その他

その他所要の整備を行うこととしたこと。

Ⅲ 船員保険法の一部改正

船員保険制度失業部門について、雇用保険法の改正に準じて給付日数の変更、高齢求職者給付金制度の創設等を行うほか、保険料率の引上げを行うこととしたこと。(厚生省所管)

Ⅳ その他

一 施行期日(附則第一条関係)

この法律は、昭和五九年八月一日から施行することとしたこと。ただし、Ⅰの二の(三)については、同年九月一日から、Ⅲのうち保険料率の引上げに係る改正規定については、昭和六〇年一〇月一日から施行することとしたこと。

二 経過措置及び関係法律の整備(附則第二条から附則第二二条まで関係)

その受給資格に係る離職の日が施行日前である受給資格者に係る基本手当の日額等は、改正前の規定の例による等、この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに、激じん災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律及び国家公務員等退職手当法について所要の整備を行うこととしたこと。

第二 雇用保険法施行令等の一部を改正する政令関係

Ⅰ 雇用保険法施行令の一部改正

一 任意加入に係る高年齢継続被保険者に関する暫定措置の適用期限を昭和六二年七月三一日とすることとしたこと。(附則第八条関係)

二 離職理由に基づく給付制限を受けた者に係る受給期間の延長、定年退職者等に係る受給期間の延長及び新個別延長給付制度の創設に伴い、現行の延長給付に係る規定について所要の整備を行うこととしたこと。(第三条第一項及び第八条関係)

Ⅱ 関係政令の整備

本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法施行令(同令第一一条及び第一二条関係)及び特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法施行令(同令第三条及び第四条関係)について所要の規定の整備を行うこととしたこと。

Ⅲ 施行期日

この政令は、昭和五九年八月一日から施行することとしたこと。