添付一覧
○雇用保険法その他関係法令の施行について(抄)
(昭和五〇年三月二五日)
(発労徴第一七号・基発第一六六号・婦発第八二号・職発第九七号・訓発第五五号)
(各都道府県知事、各都道府県労働基準局長、各都道府県婦人少年室長あて、労働大臣官房長、労働省労働基準局長、労働省婦人少年局長、労働省職業安定局長、労働省職業訓練局長通達)
Ⅰ 適用
第三 被保険者
1 被保険者の範囲
(1) 被保険者の定義
イ 被保険者とは、適用事業に雇用される労働者であって、法第六条各号に掲げる者以外のものをいう(法第四条第一項)。すなわち、適用事業に雇用される労働者は、下記(3)の「被保険者とならない者」に該当しない限り、その意思のいかんにかかわらず、被保険者となる。
ロ 短時間就労者については、その者の労働時間、賃金その他の労働条件が就業規則(就業規則の届出義務が課せられていない事務所にあっては、それに準ずる規程等)において明確に定められていると認められる場合であって、次のいずれにも該当するときに限り、被保険者として取り扱い、これに該当しない場合は、原則として、被保険者として取り扱わない。
この場合、その者が他の社会保険(被用者保険に限る。)において被保険者として取り扱われている者であるかどうかも、その判断の参考とすることとし、雇用保険のみについて被保険者として取り扱われることを希望するような者は、次のいずれにも該当する場合であっても被保険者として取り扱わない。
(イ) 一週の所定労働時間が、当該事業において同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間のおおむね四分の三以上であり、かつ、二二時間以上であること。
(ロ) 労働日、労働時間及び賃金を除くその他の労働条件が、当該事業において同種の業務に従事する通常の労働者のそれと、おおむね、同様であること。
(ハ) 反復継続して就労する者であること。
(2) 被保険者の種類
被保険者は、一般被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者に分かれる。
一般被保険者は短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の被保険者であり、短期雇用特例被保険者は法第三八条第一項各号のいずれかに該当する被保険者であり、日雇労働被保険者は被保険者である日雇労働者であって法第四三条第一項各号のいずれかに該当するもの及び法第六条第一号の認可を受けたものである。
失業給付は、この被保険者の種類に応じ、それぞれ内容の異ったものとなる。
(3) 被保険者とならない者
適用事業に雇用される者であっても法第六条の規定により法の適用を受けないこととなる者がいるが、これらの者の範囲については、旧失業保険法第七条の規定により同法の適用を受けないこととなる者の場合に準じて取り扱うものである。
2 短期雇用特例被保険者の意義
(1) 概要
イ 被保険者であって次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当する者(日雇労働被保険者を除く。)は、短期雇用特例被保険者(以下「特例被保険者」という。)である(法第三八条第一項。)
(イ) 季節的に雇用される者((ロ)に掲げる者を除く。)
(ロ) 短期の雇用(同一の事業主に引き続き被保険者として雇用される期間が一年未満である雇用をいう。)に就くことを常態とする者
ロ 特例被保険者が同一の事業主に引き続いて一年以上雇用されるに至ったときは、その一年以上雇用されるに至った日以後は、一般被保険者となる。
(2) 「季節的に雇用される者」の意義
「季節的に雇用される者」とは、季節的業務に期間を定めて雇用される者又は季節的に入離職する者をいう。この場合において、季節的業務とは、その業務が季節、天候その他自然現象の影響によって一定の時季に偏して行われるものをいう。
また、期間を定めないで雇用される者であっても、季節の影響を受けることにより、雇用された日から一年未満の間に離職することが明らかであるものは、季節的に雇用される者に該当するものである。
なお、「季節的業務に期間を定めて雇用される者」と「季節的に入離職する者」のいずれに属するかを厳格に区別する必要はなく、雇用期間が一年未満であるかどうか及び季節の影響を強く受けるかどうかをは握すれば足りるものである。
(3) 「短期の雇用に就くことを常態とする者」の意義
イ 意義
「短期の雇用に就くことを常態とする者」とは、過去の相当期間において、一年未満の雇用に就くことを繰り返し、かつ、新たな雇用も一年未満の雇用であるものをいう。
ロ 確認基準
次のすべてに該当する者は、短期の雇用に就くことを常態とする者である。
(イ) 対象期間において二回以上短期の雇用に係る離職をしたこと。
ここで、対象期間とは、被保険者となった場合に当該被保険者となった日前三年間(当該期間内に、同一の事業主に引き続いて一年以上被保険者として雇用された後離職したことがある者にあっては、当該雇用に係る被保険者でなくなった日以後最初に被保険者となった日前の期間、また、引き続いて一年以上被保険者でない期間があり、当該期間の後に被保険者となったことがある者にあっては、当該被保険者となった日前の期間を除いた期間)をいう。
(ロ) 対象期間が二年以上であること。
(ハ) 新たな雇用が一年以上継続して雇用される見込みのあるものでないこと。
なお、新たな雇用がたまたま一年未満の期間とされる場合であっても、当該事業が期間を限って行われるものではなく、かつ、当該地域において同種の業務に従事する労働者が年間を通じて雇用されることが一般的である場合において、当該労働者が一年未満の期間を限って雇用される事情が特にあると認められないときは、(ハ)に該当する者として取り扱わないものとする。
Ⅲ 一般被保険者に対する求職者給付
第一 基本手当
1 概要
一般被保険者であった者が失業の状態にある場合、即ち離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にある場合に、一定の要件に従い、その失業している日について基本手当が支給される(法第一五条)。
2 受給資格の決定
(1) 受給資格及び受給資格者の意義
受給資格とは、法第一三条の規定により基本手当の支給を受けることができる資格をいい、この受給資格を有する者を受給資格者という。
即ち、一般被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にある場合で、離職の日以前一年間(疾病、負傷等の期間がある場合には、最大限四年間となる。)に被保険者期間が通算して六箇月以上であったときに基本手当の支給を受けることができるのであり、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者のそれぞれの給付を受けることができる資格を有する者は、受給資格者と呼ばない。
なお、基本手当の受給を終了し、支給残日数がなくなった者は、受給資格者ではないので留意する必要がある(法第一四条第二項第一号及び法第一五条第一項参照)。
(2) 受給資格の決定
イ 受給資格の決定とは、安定所長が離職票を提出した者について、基本手当の支給を受けることができる資格を有する者であると認定することをいう。
即ち、次の三つの要件を満たしている者であると認定することである。
(イ) 離職による資格喪失の確認を受けたこと。
(ロ) 労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること。
(ハ) 離職の日以前一年間(当該一年間に疾病、負傷その他一定の理由((4)参照)により引き続き三○日以上賃金の支払を受けることができなかった被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかった日数を一年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年間)とし、以下「算定対象期間」という。)に、被保険者期間が通算して六箇月以上あること。
受給資格者が受給資格の決定を受けるには、安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない(則第一九条第一項)。
(3) 被保険者期間の計算方法
被保険者期間は、被保険者が離職した日の翌日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該被保険者であった期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日。以下「喪失応当日」という。)の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼった各期間(賃金の支払の基礎となった日数が一四日以上であるものに限る。)を一箇月として計算する(法第一四条第一項)。
即ち、被保険者として雇用された期間を、資格の喪失の日の前日からさかのぼって一箇月毎に区切って行き、このように区切られた一箇月の期間に賃金支払基礎日数が一四日以上ある場合に、その一箇月の期間を被保険者期間の一箇月として計算する。また、このように区切ることにより一箇月未満の期間が生ずることがあるが、その一箇月未満の期間の日数が一五日以上であり、かつ、その期間内に賃金支払基礎日数が一四日以上あるときに、その期間を被保険者期間の二分の一箇月として計算する。
これを図示すると、次のとおりである。
(昭和50年10月17日から同年12月17日までの間、私傷病により賃金支払がなかった。)この場合の被保険者期間は、8箇月となる。
(4) 受給要件の緩和
イ 概要
被保険者期間の算定対象期間は、原則として、離職の日以前一年間であるが、疾病、負傷その他一定の理由により引き続き三○日以上賃金の支払を受けることができなかった場合には、この期間を四年間まで延長する(法第一三条)。
ロ 受給要件の緩和が認められる理由(法第一三条、則第一八条)
(イ) 疾病又は負傷(業務上、業務外の別を問わない。)
(ロ) 事業所の休業
(ハ) 出産(本人の出産に限る。)
(ニ) 事業主の命による外国における勤務
(ホ) (イ)から(ニ)までに掲げる理由に準ずる理由で、管轄公共職業安定所の長がやむを得ないと認めるもの。
これに該当すると思われるものについては、従前と同様に、本省に照会するものとするが、次の場合は、(イ)から(ニ)までに掲げる理由に準ずる理由として取り扱う。
a 同盟罷業、怠業、事業所閉鎖等の争議行為
これは、労働関係調整法(昭和二一年法律第二五号)第七条にいう争議行為である。
b 事業主の命による他の事業主のもとにおける勤務
これは、次の(a)又は(b)をいう。
(a) 暫定任意適用事業所(任意加入の認可を受けたものを除く。)への出向
(b) 取締役としての出向
c 労働組合の専従職員としての勤務
これは、在籍専従職員についてのみである。
d 親族の疾病、負傷等により必要とされる本人の看護 親族及び負傷等の「等」については、それぞれ次の(a)及び(b)による。
(a) 親族とは、同居の親族(民法第七二五条に規定する親族、すなわち六親等以内の血族、配偶者及び三親等以内の姻族をいう。以下同じ。)又は別居の親族のうち配偶者又は三親等以内の血族若しくは姻族をいう。
(b) 負傷者の「等」には、不具、廃疾及び老衰が含まれる。
e 育児
この場合の育児とは、三歳未満の子の育児とする。
ハ 離職の日以前一年間に加えることができる日数
離職の日以前一年間に加えることができる日数の計算方法については、失業保険における最大限四年間までの計算方法と同様である。
3 給付日数の決定
(1) 給付日数
給付日数は、受給資格者の当該受給資格に係る離職の日における年齢及びその者が就職困難な者であるかどうかによって決定されるものであり、これを所定給付日数という(法第二二条第一項)。
これを表示すれば、次のとおりである(なお、基本手当の延長給付については四を参照)。
離職の日における年齢等 |
所定給付日数 |
|
三○歳未満 |
九○日 |
|
三○歳以上四五歳未満 |
一八○日 |
|
四五〃 五五〃 |
二四○日 |
|
五五歳以上 |
三○○日 |
|
心身障害者等就職困難な者 |
五五歳未満 |
二四○日 |
五五歳以上 |
三○○日 |
ただし、法第二二条第二項の規定により算定した期間が一年未満であるときは、所定給付日数は一律に九○日となるので留意すること。
(2) 年齢の確認
イ 概要
所定給付日数の決定の際には、受給資格に係る離職の日における年齢が重要な要素となるものであるから、これが確認については慎重に行わねばならない。
ロ 確認方法
受給資格決定時において、受給資格者に対し、原則として住民票あるいは運転免許証等官公署が発行した年齢を確認することができる書類を提示させる。ただし、離職票により確認した年齢が三○歳未満である場合は、この限りでない。
ハ 年齢の確認
上記方法により、受給資格者の年齢を確認した場合には、離職票の「公共職業安定所記載欄」の「年齢」欄に、受給資格に係る離職の日における年齢を記載する。なお、この場合の離職票とは、二枚以上の離職票により受給資格の決定をした場合には、当該受給資格に係る最新の離職票をいう。
(3) 身体障害者等就職困難な者の確認
イ 概要
身体障害者等就職困難な者(則第三二条)については、その他の者と異なり、上記(1)の表に示すとおりに所定給付日数が定められている。
ロ 就職困難な者であるかどうかの確認
就職困難な者とは、受給資格決定時において次の状態にある者をいうものとし、受給資格決定後にその状態が生じた者は含めないものとする。
従って、受給資格決定時に、就職困難な者であるかどうか判明していない場合でも、後日に、受給資格決定時において就職困難な者であったことが判明すれば、就職困難な者として取り扱い、必要があれば所定給付日数を変更しなければならない。
(イ) 身体障害者雇用促進法(昭和三五年法律第一二三号。以下「身障法」という。)第二条第一項の身体障害者であるもの。
これは、具体的には、次のものをいう。
a 次に掲げる視覚障害で永続するもの
(a) 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異状がある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)がそれぞれ○・一以下のもの
(b) 一眼の視力が○・○二以下、他眼の視力が○・六以下のもの
(c) 両眼の視野がそれぞれ一○度以内のもの
(d) 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの
b 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で永続するもの
(a) 両耳の聴力損失がそれぞれ六○デシベル以上のもの
(b) 一耳の聴力損失が八○デシベル以上、他耳の聴力損失が四○デシベル以上のもの
(c) 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が五○パーセント以下のもの
(d) 平衡機能の著しい障害
c 次に掲げる音声機能又は言語機能の障害
(a) 音声機能又は言語機能の喪失
(b) 音声機能又は言語機能の著しい障害で、永続するもの
d 次に掲げる肢体不自由
(a) 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で永続するもの
(b) 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
(c) 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
(d) 一上指のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で永続するもの
(e) 両下肢のすべての指を欠くもの
(f) (a)から(e)までに掲げるもののほか、その程度が(a)から(e)までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害
e 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの
(ロ) 児童相談所、精神薄弱者更生相談所、精神衛生センター又は精神衛生鑑定医により精神薄弱者と判定された者
(ハ) 刑法第二五条ノ二第一項、犯罪者予防更生法第三三条第一項又は売春防止法第二六条第一項の規定により保護観察に付された者及び更生緊急保護法第一条各号に掲げる者であって、その者の職業のあっせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡があったもの
(ニ) その他社会的事情により就職が著しく阻害されている者
4 給付日数の延長制限
(1) 概要
基本手当の所定給付日数は、受給資格者の再就職の難易度に応じて定めるという見地から、年齢やその者が就職困難な者であるかどうかを考慮して決定することとしているが、さらに、個別、具体的な受給資格者の事情やその時の経済情勢等により、所定給付日数分の基本手当では十分な保護に欠ける場合が生ずることがある。このため給付日数の延長制度として、個別的な事情により就職が困難である者に対する給付延長(個別延長給付)、公共職業訓練等を受講する場合の給付延長(訓練延長給付)、広域職業紹介適格者の認定を受けた者に対する給付延長(広域延長給付)及び全国的に失業の状況が著しく悪化した場合における給付延長(全国延長給付)を設けることとした(法第二三条~法第二八条)。
(2) 個別延長給付
イ 個別延長給付制度の目的
就職が困難である受給資格者に対しては、所定の給付日数分の基本手当の支給終了後もなお基本手当を支給することにより、その生活の安定を図り求職活動を容易にしようとするものである(法第二三条)。
ロ 個別延長給付の適用を受ける者
個別延長給付の適用を受ける者は、次に掲げる受給資格者であって、所定給付日数分の基本手当の支給終了(他の法第二八条第一項に規定する延長給付を受けている者にあっては、当該延長給付が終わる日)までに就職できる見込みがなく、かつ、特に職業指導その他再就職のための援助を行う必要があると認められるものとする。ただし、当該受給資格に係る離職後最初に安定所に求職の申込みをした日以後、正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、その指示した公共職業訓練等を受けること又は再就職の促進のために必要な職業指導を受けることを拒んだ者については、この限りでない(令第三条第一項)。
なお、所定の認定日又は出頭日に正当な理由がなく出頭しない者については、再就職のための援助を行う必要があると認められないものとして取り扱うこと。
(イ) 中高法第一二条の規定により中高年齢失業者等求職手帳の発給を受けた者
(ロ) 身障法第二条第一項の身体障害者であるもの
これについては、三の(3)のロの(イ)を参照
(ハ) 労働大臣の定める基準に照らして身障法別表に掲げる身体上の欠陥の程度に準ずる程度の身体上の欠陥があると認められる者
労働大臣の定める基準は、次のとおりであるので、医師の診断書等を参考の上、これに該当するかどうかを判断する。なお、当該障害がその者の再就職を困難にしていると認められるかどうかにも留意する。
(a) 一眼の視力が○・一以下の者
(b) 一耳の聴力が耳かくに接しなければ大声を解することができない程度になった者
(c) 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になった者
(d) 音声機能、そしゃく機能又は言語機能に障害を有する者
(e) 一上肢のひとさし指を欠く者又はおや指及びひとさし指以外の二指以上を欠く者
(f) 一上肢のおや指の用を廃した者又はおや指及びひとさし指以外の三指の用を廃した者
(g) 一下肢のすべての指の用を廃した者
(h) 一下肢の第一指又は他の四指を欠く者
(i) 一下肢を三センチメートル以上短縮した者
(ニ) 精神薄弱者。ただし、児童相談所、精神薄弱者更生相談所、精神衛生センター又は精神衛生鑑定医により精神薄弱者と判定された者とする。
(ホ) 刑法第二五条ノ二第一項、犯罪者予防更生法第三三条第一項又は売春防止法第二六条第一項の規定により保護観察に付された者及び更生緊急保護法第一条各号に掲げる者であって、その者の職業のあっせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡があったもの。
(ヘ) 次のいずれにも該当する者(則第三四条)。
a その業種に属する事業の相当数が景気の変動、国際経済事情の急激な変化その他の経済上の理由により事業活動に支障が生じており、かつ、その状況が当分の間継続すると認められる業種として労働大臣が指定する業種に属する事業からの離職者であること。
b 労働大臣が指定する期間内に離職した者であること。
労働大臣が指定する業種及び指定する期間は、雇用調整給付金の支給の対象となる指定業種及び指定期間と同様である。
c 職業の経験、技能及び職業に関する知識の程度、労働市場の状況等からみて、再就職のために、その者が従事していた職種を転換する必要があり、かつ、そのために必要な技能又は知識を法第二三条第一項に規定する所定給付日数に相当する日数分の基本手当の支給を受け終わる日(他の法第二八条第一項に規定する延長給付を受けている者にあっては、当該延長給付が終わる日)までに習得することが困難であると認められる者であること。
d 公共職業訓練等を受けることが困難な事情にある者であること。
(ト) 社会的事情により就職が著しく阻害されているもの。
ハ 個別延長給付の決定
(イ) 受給資格者が上記ロに該当すると認められた場合には、個別延長給付の決定について安定所長の決裁を受けなければならない。この場合、決裁は求職票によって行うこととしても差し支えない。なお、当該決定は、受給資格者の当初の所定給付日数内の最後の失業の認定日までに行うこととする。
(ロ) 個別延長給付を行うことを決定したときは、その者に対しその旨を通知するとともに、必要な事項を受給資格者証に記載しなければならない(第四の二の(6)参照)(則第三六条)。
(ハ) 受給期間及び延長給付日数
a 受給期間は、六によって定められる期間に六○日を加算した期間となる(二以上の延長給付が行われる場合については、四の(6)を参照)(令第八条)。
b 所定給付日数(法第二○条第一項の規定による期間内に基本手当の支給を受けた日数が所定給付日数に満たない場合には、その支給を受けた日数。以下同じ。)を超えて基本手当の支給を受け得る日数は六○日である(令第三条第二項)。
ニ 個別延長給付の適用を受けている者が就職し、受給期間内に離職して求職の申込みをした場合の取扱い
個別延長給付の適用を受けている者がその者の所定給付日数を超えて個別延長給付を受けた後個別延長給付日数の全部を受け終わらないで就職し、その後に離職して再度その者の受給期間内に求職の申込みをした場合は、その者がなお政令で定める基準に該当するときは、個別延長給付日数の残日数を支給しても差し支えない。
(3) 訓練延長給付
イ 訓練延長給付制度の目的
訓練延長給付は、安定所の指示により公共職業訓練等(七の(5)参照)を受ける受給資格者に対して、所定給付日数分の基本手当の支給終了後もなお訓練等終了の日までの間基本手当を支給しもって受給資格者の公共職業訓練等の受講を容易にし、その習得した技能によって再就職の促進を図ろうとするものである(法第二四条)。
ロ 訓練延長給付の適用を受ける者
次のすべてに該当する者に対して、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができるものとするが、それ以外の取扱いについては、従前と同様の取扱いをするものである。
(イ) 公共職業訓練等の受講を指示した日において受給資格者であること。
(ロ) 安定所の指示により公共職業訓練等を受ける者であること。
(ハ) 公共職業訓練等の期間が一年(身体障害者、精神薄弱者その他社会的事情により著しく就職が阻害されている者に対して行われる公共職業訓練等にあっては、二年(令第四条))以内のものを受ける者であること。
(4) 広域延長給付
失業者が多数発生した地域について、職業安定法第一九条の二の規定により広域職業紹介活動を命じた場合において必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り当該地域に係る広域職業紹介活動により職業のあっせんを受けることが適当と認められる受給資格者について、所定給付日数分の支給終了後も、広域延長給付として基本手当を支給するものである(法第二五条)が、この取扱いについては従前の「給付日数の延長に関する特別措置(旧失業保険法第二○条の四に基づくもの)」の場合の取扱いと同様である(法第二五条)。
(5) 全国延長給付
イ 概要
労働大臣は、失業の状況が全国的に著しく悪化し、中央職業安定審議会の意見を聴いて政令で定めた基準に該当するに至った場合において、受給資格者の就職状況からみて必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り、すべての受給資格者を対象として一定日数の給付日数を延長するための措置を決定することができる(法第二七条第一項)。
また、労働大臣は、全国延長措置を決定した後において必要があると認めるときは、前記により指定した期間を延長することができることとなっている(法第二七条第二項)。
ロ 全国延長措置の実施
全国延長措置は、令第六条第一項に定める基準に照らして行われる。
ハ 全国延長措置に係る延長給付の打切り
全国延長は、一定の期間を限って実施されるものであるから、その指定期間の末日が到来したときは、その日限りで、全国延長措置に基づき延長された給付は打ち切られるものである。
また、全国延長措置に基づく給付日数の延長は、公共職業訓練等を受ける場合における給付日数の延長と異なり令第六条第二項で定める一定日数分(九○日)の期間に限って受給期間が延長される(二以上の延長給付が行われる場合については、(6)参照)。
従って、全国延長措置に基づき延長される給付については、次のような理由がある場合には、その支給終了前において給付が打ち切られるものである。
(イ) 支給終了前に全国延長措置の指定期間が到来したこと。
(ロ) 支給終了前にその者の前記により延長された受給期間が満了したこと。
ニ 全国延長措置の適用を受けている者が就職し、全国延長措置の指定期間内に離職して求職の申込みをした場合の取扱い
これについては、(2)のニを参照。
(6) 二以上の延長給付の措置が行われた場合の調整
イ 各延長給付を行う場合の優先度
(イ) 広域延長給付を受けている受給資格者
当該広域延長給付が終わった後でなければ全国延長給付、個別延長給付及び訓練延長給付は行わない。
(ロ) 全国延長給付を受けている受給資格者
当該全国延長給付が終わった後でなければ個別延長給付及び訓練延長給付は行わないが、当該受給資格者について広域延長給付が行われることとなったときは、広域延長給付が行われる間は、その者について全国延長給付は行わない。
(ハ) 個別延長給付を受けている受給資格者
当該個別延長給付が終わった後でなければ訓練延長給付は行わないが、当該受給資格者について広域延長給付又は全国延長給付が行われることとなったときは、これらの延長給付が行われる間は、その者について個別延長給付は行わない。
(ニ) 訓練延長給付を受けている受給資格者
当該受給資格者について広域延長給付又は全国延長給付が行われることとなったときは、これらの延長給付が行われる間は、その者について訓練延長給付は行わない。
なお、訓練延長給付を受けている受給資格者については、個別延長給付は行わないので、留意すること。
(ホ) (イ)から(ニ)までに示すとおり、各延長給付を順次行う場合の優先度は、広域延長給付、全国延長給付、個別延長給付、訓練延長給付の順に高いこととなる。
なお、個別延長給付を受けている受給資格者について広域延長給付を行うこととなった場合の如く、優先度の高い延長給付を中途で行うようになったときは、優先度の低い延長給付は一時延期されることになり、優先度の高い延長給付が終わり次第引き続いて優先度の低い延長給付が行われることとなるのである。
ロ 各延長給付に係る受給期間及び支給日数
受給資格者に対して、二以上の延長給付が行われる場合の受給期間及び支給日数は、次のとおり定められることとなっている(令第八条)。
(イ) 相前後する延長給付のうち、まず、先行する延長給付のみによって受給期間を定める。
例えば、広域延長給付と個別延長給付が行われる受給資格者の受給期間は、まず、法第二○条第一項による一年の期間(以下「当初の受給期間」という。)に九○日を加えた期間が受給期間となる。なお、個別延長給付の一部を既に受給している場合であって、かつ、その一部の受給に係る最後の日が当初の受給期間後である場合には、その最後の日に九○日を加算した期間が受給期間となる。
(ロ) (イ)により先行する延長給付が終了した場合(打切りも含む。以下同じ。)には、後続する延長給付の日数(後続する延長給付が全国延長給付である場合には九○日、個別延長給付である場合には六○日)を、先行する延長給付の終了までの期間に加えた期間が受給期間となる。なお、先行する延長給付の終了日が当初の受給期間満了日前である場合には、後続する延長給付の日数を、当初の受給期間に加えた期間が受給期間となる。
これを、前記(イ)の例について例示すれば、下図の通りとなる。
5 基本手当の日額
(1) 受給資格者の賃金日額の算定方法
イ 被保険者期間は法第一四条第一項の規定により被保険者として雇用されていた期間を、資格の喪失の日の前日からさかのぼって一箇月ごとに区切って行き、このように区切られた一箇月の期間に賃金支払基礎日数が一四日以上ある月を被保険者期間の一箇月として計算することとなった。これに伴い賃金日額の算定に当たって使用する賃金月については、その期間が満一箇月であり、かつ、賃金支払基礎日数が一四日以上ある月を完全な賃金月として、賃金日額を算定することとした。
なお、賃金月の優先順位は、次のとおりであり、同じ順位の賃金月については、離職の日に近接するものから取り上げることとする。
(イ) 完全な賃金月
(ロ) (イ)以外の賃金月であって、当該賃金月における賃金支払基礎日数の当該賃金月の期間の日数に対する割合が三○分の一四以上であるもの
(ハ) (イ)及び(ロ)以外の賃金月
ロ 賞与その他臨時の賃金がある場合の措置
賞与その他臨時の賃金がある場合においては、一律に受給資格を得るに至った後における最初の離職の日から起算して遡った六箇月間(被保険者として雇用されていなかった期間を除き、被保険者として雇用されていた期間六箇月間)に支払われた(当該期間に所定の支払日のある)賞与その他臨時の賃金を含めて賃金日額を算定すること。
ハ 賃金日額を算定することが困難なとき、又は賃金日額が著しく不当であるときの措置
法第一四条第一項のただし書の規定により二分の一箇月の被保険者期間として計算された期間に支払われた賃金は、賃金日額の算定対象に含まない(法第一七条)こととされていることにより、被保険者期間一箇月として計算された月が六箇月に満たない者については賃金日額が著しく不当となる場合が生ずることがある。このため、労働大臣が定める賃金日額の算定の方法を定める告示(昭和五○年労働省告示第 号)(別紙八)により、これらの者については、当該二分の一箇月の被保険者期間として計算された期間に支払われた賃金も、賃金日額の算定対象に含めることとした。この結果、すべての場合について、同様の方法により賃金日額を算定することができる。
この点を除いては、従前の取扱いと同様である。
ニ その他未払い賃金がある場合の措置、賃金締切日が変更された場合の措置、週給の場合の措置等は、従前の取扱いと同様である。
(2) 特例受給資格者の賃金日額の算定方法
イ 特例受給資格者には基本手当は支給されず、そのかわり特例一時金が支給されることとされているが、特例一時金の額は、特例受給資格者を一般の受給資格者とみなした場合の基本手当の日額の五○日分とされている。そのため、特例受給資格者についても一般の受給資格者と同様に賃金日額を算定しなければならない。
ロ 特例受給資格者の賃金日額の算定方法は原則として一般の受給資格者の場合と同様であるが、経過措置(法附則第六条)として、当分の間は、従前の取扱いと同様となる。従って、その期間が満一箇月であり、かつ、賃金支払基礎日数が一一日以上ある月を完全な賃金月として算定することとなる。ただし、賞与その他臨時の賃金がある場合の取扱いについては、(1)のロにより行うこととしたので留意すること。
(3) 一般の離職票と短期の離職票により受給資格を決定した場合の賃金日額の算定方法
イ 一般の離職票と短期の離職票とを提出した者についての受給資格の決定は、二の(5)のロの(イ)により行うこととするが、その場合の賃金日額の算定は、二枚以上の離職票があった場合の取扱いに準じて行う。
ただし、一般の離職票に係る部分については賃金支払基礎日数が一四日以上ある月を、短期の離職票に係る部分については賃金支払基礎日数が一一日以上ある月をそれぞれ完全な賃金月として算定することとなるので留意すること。なお、完全な賃金月以外の賃金月であって、当該賃金月における賃金支払基礎日数の当該賃金月の期間の日数に対する割合が一般の離職票にあっては三○分の一四以上であるものと短期の離職票にあっては三○分の一一以上であるものとは同順位として取り扱う(新しいものからとる。)こととなるので留意すること。また、一般の離職票と短期の離職票とにより受給資格を決定した場合においては、法第一三条の算定対象期間において資格決定離職票に係る被保険者であった期間が一八○日(一箇月を三○日として計算し、一箇月に満たない期間は実日数で計算する。)未満となる場合が生ずることがあるが、その場合には、その期間中に支払われた賃金の総額を一八○で除して得た額を賃金日額とする。
〔例示1〕
賃金締切日が毎月20日の事業所に短期雇用特例被保険者として4月1日に就職、6月10日に離職し、賃金締切日が毎月25日の事業所に一般被保険者として8月1日に就職し、11月30日に離職した場合
(資格決定離職票に係る被保険者であった期間≧180日)
〔算式〕
〔例示2〕
賃金締切日が毎月20日の事業所に一般被保険者として4月1日に就職、5月31日に離職し、賃金締切日が毎月25日の事業所に短期雇用特例被保険者として7月1日に就職し、10月15日に離職した場合
(資格決定離職票に係る被保険者であった期間<180日)
〔算式〕
(4) 賃金日額の最低額及び最高額
(1)から(3)までにより算定した賃金日額が一、八〇〇円を下回ることとなる者については一、八〇〇円が、七、五〇〇円を上回ることとなる者については七、五〇〇円が、それぞれの者の賃金日額とされる(法第一七条第四項)。なお、これらの額は、法第一八条第一項の規定により変更された場合は、その変更された額となる。ただし、支給台帳の「賃金日額」欄には、(1)から(3)までにより算定した賃金日額を記載しておくものとする。
(5) 基本手当日額の決定及び変更
イ 基本手当日額の決定は、(1)から(4)までによって算定した賃金日額を基本手当日額表にあてはめることにより行う。また、基本手当日額の変更についても、従前と同様である。
ロ イにより決定したその者の基本手当日額と雇用対策法に基づく訓練手当又は就職指導手当の額(就職活動手当を含む。)とを比較した場合に、これらの手当の額の方が基本手当日額より高くなるときは、これらの手当の支給を受けることができることとされている間は、これらの手当の額をその者の基本手当日額とすることとした(昭和五○年労働省告示第七号参照)。このため、就職指導手当を受けることができる者については、就職活動手当が支給される日と支給されない日によって、基本手当日額が異なる場合があるので留意しなければならない。
(6) その他
イ 日雇の受給資格調整に伴う賃金日額の算定に当たっては、次の点に留意すること。
(イ) 保険料率は原則として千分の一三、農林水産業、建設業及び清酒製造業については、千分の一五と二種類にされたところであるが、法第五六条第一項の規定によって被保険者期間として計算された月に支払われた賃金額を含めて賃金日額を算出する場合には、すべての場合に二千分の一三の率を用いること(則第八一条第四項)。
(ロ) 日雇労働求職者給付金が三段階とされたことに伴い、印紙保険料も三段階となったこと。
(ハ) (イ)及び(ロ)を除いては、従前の取扱いと同様に処理すること。
ロ 基本手当日額の算定の基礎となる賃金の範囲は、従前と同様である。
ハ その他賃金日額の算定に伴う事務処理等については、従前の取扱いと同様である。
6 受給期間
(1) 概要
基本手当の支給を受けることができる期間は、原則としては離職の日の翌日から起算して一年間であるが、当該一年間に妊娠、出産、育児等の理由により引き続き三○日以上職業に就くことができない日がある場合には、当該理由により職業に就くことができない日数を一年に加算した期間(加算された期間が四年を超えるときは、四年とする。)がその者の受給期間となる(法第二○条第一項)。
(2) 延長される期間
受給期間は、原則として離職の日の翌日から起算して一年間であるが、受給期間の延長が認められると、その者の受給期間は、当該一年間に、当該理由により職業に就くことができなかった期間の日数を加えた期間とされ、その期間が四年を超えるときは最大限四年までとされる。
(3) 受給期間の延長が認められる理由
イ 妊娠
産前六週間以内に限らず、本人が、妊娠のために職業に就き得ない旨を申し出た場合には、受給期間の延長を行う。
ロ 出産
出産は妊娠四カ月以上(一カ月は二八日として計算する。従って、四カ月以上というのは八五日以上のことである。)の分娩とし、生産、死産を問わない。
ハ 育児
この場合、育児とは、三歳に達しない乳幼児の育児とする。
ニ 疾病又は負傷(則第三○条第一号)
疾病又は負傷のうち当該疾病又は負傷(以下「傷病」という。)を理由として法第三七条第一項の規定による傷病手当の支給を受ける場合には、当該傷病に係る期間については、受給期間の延長の措置の対象とはしない。
従って、受給期間の延長を申請した後に、同一の傷病を理由として法第三七条第一項の規定による傷病手当の支給を申請した場合には、受給期間の延長の措置が取り消されることとなる。この場合には、その者の所定給付日数の支給残日数及び当初の受給期間満了日(離職の日の翌日から起算して一年後の日)までの日数の範囲内で傷病手当が支給されることとなる。
また、次の点に留意する必要がある。
(イ) 求職申込み(受給資格の決定)前からの傷病については、傷病手当の支給ができないので、その者の申出により受給期間の延長の措置を行う。
(ロ) 離職後最初の求職申込み後の傷病については、本人の申出により、傷病手当の支給申請か受給期間の延長申請かのいずれかを選択させる。ただし、受給期間の延長申請をした後に、同一の傷病を理由として傷病手当の支給申請を行うことは差し支えないが、この場合には、受給期間の延長申請が当初に遡って取り消されることとなるので、申請者に対し十分に周知すること。
ホ イからニまでの理由に準ずる理由で管轄公共職業安定所の長がやむを得ないと認めるもの(則第三○条第二号)
常時本人の介護を必要とする場合の親族等の疾病、負傷若しくは老衰又は不具者若しくは廃疾者の看護は、これに該当する。
なお、これ以外の理由でこれに該当すると思われる事例が生じた場合は、本省に照会するものとする。
(4) 離職の日の翌日以後一年間に加えることができる日数
イ 離職の日の翌日以後一年間において引き続き三○日以上職業に就くことができない期間がある受給資格者(離職後求職の申込みをしていない者を含む。)について、離職の日の翌日以後一年間に加えることのできる日数は、当該理由により、職業に就くことができない期間(離職の日の翌日以後一年間内の期間に限らない。)の日数であるが、加えることのできる日数は、最大限三年間までとすることができる。
ロ 離職の日の翌日以後一年間に加えることができる日数を例示すると下図のとおりである。
〔例示〕
1
2
180日の負傷の期間のうち、離職の日の翌日以後1年間に含まれる日数が30日未満であるため加えることができない。
3
3年8箇月の疾病のうち、3年間のみ、離職の日の翌日以後1年間に加えることができる。
4
240日の疾病のうち、離職の日の翌日以後の期間は90日であるので、90日間のみを加えることができる。
5
負傷Aについては、傷病手当の支給を受けたので、その期間については加えることはできない。
6
当初の受給期間の延長の申請により、受給期間は、離職の日の翌日以後1年に90日を加えた期間ということとなっていたが、受給資格者の申請に基づき傷病手当を支給したので、受給期間は、離職の日の翌日以後1年間となる。
(5) 受給期間の延長申請の手続
イ 延長申請書の提出
延長の措置を受けようとする者は、前記(3)に掲げる理由により引き続き三○日以上職業に就くことができなくなるに至った日の翌日から起算して一箇月以内(則第三一条第二項)に、受給期間延長申請書(則様式第一六号。以下「延長申請書」という。)に、次のロに掲げる書類を添付して管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない(則第三一条第一項)。この場合の申請は、必ずしも本人自身が安定所に出頭して行う必要はなく、例えば郵送により行うことも差し支えない。
この場合において、天災その他やむを得ない理由(交通途絶等、申請者の責めに帰すことができない理由)のため、所定の期間内に申請できなかった場合には、そのやむを得ない理由がやんだ日の翌日から起算して七日以内に申請すればよい(則第三一条第三項)。
ロ 添付書類
(イ) 受給資格の決定を受けていない場合
a 保管するすべての離職票
b 天災その他やむを得ない理由により所定期間内に申請できなかった場合には、その事実を証明することができる官公署の証明書又は安定所長が適当と認める者の証明書
(ロ) 受給資格の決定を受けている場合
a 受給資格者証(則様式第一一号)(正当な理由がある場合は、受給資格者証を添えないことができる。)
b 天災その他やむを得ない理由により所定期間内に申請できなかった場合には、その事実を証明することができる官公署の証明書又は安定所長が適当と認める者の証明書
ハ その他
(イ) 申出の日において妊娠中である場合には、出産又は育児のため引き続き職業に就くことができないことが明らかであれば、その時にその旨を併せて申し出ることができる。
(ロ) 申出の日において申請理由が継続中である場合には、延長申請書の(7)欄の末日については「継続中」と記載し、後日、当該申請理由がやんだ後に、当該申請者の届出に基づき記載するものとする。
7 失業の認定
(1) 失業の認定の意義
イ 受給資格者が基本手当の支給を受けるには、安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業の認定を受けなければならないこととされている(法第一五条第一項及び第二項)。失業の認定とは、失業の認定日において、認定対象期間に属する各日についてその者が失業していたか否かを確認する行為のことである。なお、「失業」の定義については、従前と同様である。
ロ 労働の意思
労働の意思とは、就職しようとする積極的な意思をいう。即ち、安定所に出頭して求職の申込みを行うのはもちろんのこと、受給資格者自らも積極的に求職活動を行っている場合に労働の意思ありとするのである。
ハ 労働の能力
労働の能力とは、労働(雇用労働)に従事し、その対価を得て自己の生活に資し得る精神的、肉体的及び環境上の能力をいうものであり、受給資格者の労働能力は、安定所において本人の体力、知力、技能、経歴、生活環境等を総合して決定するのである。
ニ 職業に就くことができない状態
職業に就くことができない状態とは、安定所が受給資格者の求職申込みに応じて最大の努力をしたが就職させることができず、また、本人の努力によっても就職できない状態をいうのである。この場合、安定所は、その者の職歴、技能、希望等を配慮した上で、職業紹介を行う。
9 給付制限
(1) 法第三二条の給付制限
イ 受給資格者が公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは、従前と同様に、その拒んだ日から起算して一箇月間は基本手当を支給しない(法第三二条)。
ロ 給付制限を行うべき理由及び給付制限を受けることのない正当な理由については、次に掲げるとおりである。なお、給付制限理由に該当するか否かの判定に当たっては、画一的、機械的に行うことなく、その者の個別的事情等を十分に考慮して、適切に行う必要がある。
(イ) 法第三二条第一項の給付制限を受けない場合は、次のとおりである。
a 紹介された職業が受給資格者の能力からみて不適当であると認められるとき。具体的には次の場合をいう。
(a) 身体虚弱者、老齢者、年少者又は重筋労働に適しない女子等が、重筋労働の業務に紹介された場合
(b) 心身障害者が、その者の従事し得る特殊の業務以外の一般業務に紹介された場合
(c) 体質上不向な業務に紹介された場合(例えば、肥満性の人が高熱作業に紹介された場合)
(d) 専門の知識、経験、技能又は熟練を要する業務に、それらの能力のない者が紹介された場合
(e) その者の学歴、職歴から見て不適当な業務に紹介された場合
b 就職するため現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であると認められるとき。具体的には次の場合をいう。
(a) 就職先の事業所に寄宿舎又は社宅等の施設がなく、かつ、その地域に住宅を得ることが困難な場合
(b) 扶養すべき家族と別居することが困難な場合
(c) 現在の居住地において特別の収入がある場合において、住居を移転することによってその収入が途絶し、又は減少し、生計を維持することが困難となるとき。
c 就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて、不当に低いとき。具体的には次の場合をいう。
(a) 就職先の賃金が、その地域の同種の業務において、同職種について同程度の経験年数を有する同年輩の者が受ける標準賃金と比較し、その賃金のおおむね一○○分の八○以下の場合
(b) 就職先の賃金の手取額がその者の受けることができる基本手当の額のおおむね一○○分の一○○よりも低い場合
ただし、本人が自己の意思により住所又は居所を変更した場合において、変更後の住所又は居所の労働市場における同一業務、同一職種、同程度の経験年数の同年輩の者の受ける標準賃金が、本人の基本手当算定の基礎となった賃金の支払われた変更前の住所又は居所の労働市場における同一条件の者の受ける標準賃金に比較して低い場合にはこの基準を適用しない。
d 職業安定法第二○条(第二項ただし書を除く。)の規定に該当する事業所に紹介されたとき。具体的には次の場合をいう。
(a) 同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所に紹介された場合
(b) 労働委員会から公共職業安定所に対し、事業所において同盟罷業又は作業所閉鎖に至るおそれの多い争議が発生していること及び求職者を無制限に紹介することによって当該争議の解決が妨げられることについて通報のあった事業所に紹介された場合
e その他正当な理由があるとき。具体的には次の場合をいう。
(a) 労働条件が法令に違反することの明らかな事業所に紹介された場合
(b) 労働時間その他の労働条件が、その地域の同様の業務について行われるものに比べて不当である場合
(c) 二カ月以上賃金不払の事業所(将来正当な時期に賃金が支払われると認められるものを除く。)に紹介された場合
(d) 公共の福祉に反する業務を行う事業所に紹介された場合
(e) 七日以内に自己の希望する職業に就くことができると認められる場合
(f) 本人の意思に反して、特定の労働組合への加入、不加入を採用条件としている事業所に紹介された場合
(g) 離職前から引き続いて夜間通学している労働者が、学校所在地から著しく遠隔の地にある事業所で、その者の通学が不可能となるような事業所に紹介された場合又はその労働時間が異常であって夜間通学を不可能ならしむるような事業所に紹介された場合
(ロ) 法第三二条第二項の給付制限を受けない場合は、次のとおりである。
a 次に掲げる理由によって所定の出頭日に出頭できないで、職業指導を受けなかった場合。
(a) 疾病又は負傷
(b) 求人者との面接
(c) 公共職業訓練等の受講
(d) 天災その他やむを得ない理由
① 災害、交通事故等の不可抗力の事故
② 消防団員として出動義務のある消火活動への従事
③ 予備自衛官の訓練召集
④ 証人、参考人等としての裁判所 議会等への出頭
⑤ 犯罪容疑による召喚、拘引、勾留等
⑥ 本人の看護を要する同居の親族の疾病又は負傷
⑦ 喪主として行う親族の葬祭
(e) 前各号に準ずる理由であって公共職業安定所長が定めるもの
本人の結婚式、社会通念上妥当と認められる日数の新婚旅行等は、これに該当するものとして取り扱う。
b 次に掲げる理由によって所定の出頭日に出頭できないで職業指導を受けなかった場合において、次回の出頭日の前日までに出頭して、職業指導を受けたとき。
(a) 就職
(b) 資格試験の受験
(c) 選挙権その他公民としての権利の行使
(d) 親族の葬祭(aの(d)の⑦の場合を除く)
(e) 選挙の立合
(f) 前各号に準ずる理由であって安定所長が定めるもの
c 受けることを指示された適性検査又は体力検査が、本人について精神的又は肉体的に著しく過重である場合には、これを受けなくとも給付制限は行わない。
ハ その拒否を給付制限理由とする職業指導は、次のとおりとする。
(イ) 駐留軍関係離職者等臨時措置法第一○条の二第一項又は第二項の認定を受けた者に対し、職業安定行政手引5の1の(4)のホの定めるところに従って行う職業指導
(ロ) 炭鉱離職者臨時措置法第八条第一項、第九条第一項又は第九条の二第一項若しくは第二項の規定に基づき、炭鉱離職者求職手帳の発給を受けた者に対し、職業安定行政手引5の1の(4)のニの定めるところに従って行う職業指導
(ハ) 中高法第一二条の規定に基づき中高年齢失業者等求職手帳の発給を受けた者に対し、職業安定行政手引4の5の(4)(通達一覧整理番号四―五―四○)の定めるところに従って行う職業指導
(ニ) 沖縄振興開発特別措置法第四一条第一項の規定に基づき、沖縄失業者求職手帳の発給を受けた者に対し、昭和四七年五月一五日付け職発第二三七号の定めるところに従って行う職業指導
(ホ) その者の職業経験、知識、技能及び労働市場の状況等を考慮して、安定所長がその者の再就職のために綿密な職業指導を行う必要があると認めた者に対して行う職業指導
ニ ハの(ホ)の職業指導の基準は、次のとおりとする。
(イ) 指導方式
個々の求職者の個性及び環境等の個別的事情に即応して、その再就職上の諸問題の把握から解決に至るまでの一連の過程を個別的、かつ、継続的に処理するいわゆるケースワーク方式により行う。
(ロ) 指導内容
a 指導の区分
職業指導を二段階に分け進路決定のための指導と進路決定後の指導とする。
b 進路決定のための指導
(a) 原則として二週間に一回定期的に安定所に出頭せしめるほか、必要に応じ呼出し等を行うことにより実施する。
(b) 指導課程の内容は、次に掲げるものとし、これに基づき、求職者個人別の指導計画を策定する。
① 個人及び家族についての理解
② 適性検査等の実施
③ 職業情報の提供
④ 進路決定のための相談
c 進路決定後の指導
(a) 公共職業訓練等を受けない者に対する指導
進路の決定において、公共職業訓練等を受ける必要がないと決定された者に対しては、原則として二週間に一回定期的に安定所に出頭せしめるほか、必要に応じ呼出し等を行うことにより、紹介相談に重点をおいた職業指導を実施する。
(b) 公共職業訓練等の受講予定者に対する指導
進路の決定において公共職業訓練等を受ける必要があると決定され、その受講を待機している者に対しては、原則として二週間に一回定期的に安定所に出頭せしめるほか、必要に応じ呼出し等を行うことにより、当該公共職業訓練等を受講するための予備指導を実施する。
(c) 公共職業訓練等を受講中の者に対する指導
公共職業訓練等を受講中の者に対しては、おおむね、その修了の一月前から、修了後直ちに就職しうるよう計画的な指導を行う。
(d) 公共職業訓練等を修了した者に対する指導
公共職業訓練等の修了後直ちに就職のできない者に対しては、求人者への就職あっせんに至るまでの間、原則として二週間に一回定期的に安定所に出頭せしめるほか、必要に応じ呼出し等を行うことにより、訓練科等に係る求人状況に関する情報の提供、求職条件の是正等紹介相談に重点をおいた職業指導を実施する。
(2) 法第三十三条の給付制限
イ 被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、従前と同様に、待期満了後一箇月以上二箇月以内の間は基本手当を支給しない(法第三十三条)。
ロ 離職理由が給付制限を受けるべき場合に該当するか否かの認定基準は、次のとおりである。なお、給付制限理由に該当するか否かの判定に当たっては、画一的、機械的に行うことなく、その者の個別具体的事情等を十分に考慮して、適切に行う必要がある。
(イ) 次に掲げる理由によって解雇された場合には、自己の責めに帰すべき重大な理由があるものとして給付制限を行う。
a 刑法各本条の規定に違反し、又は職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合
b 故意又は重過失により事務所の設備又は器具を破壊したことによって解雇された場合
c 故意又は重過失によって事務所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによって解雇された場合
d 労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したことによって解雇された場合
e 事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合
f 事業所の名をかたり、利益を得又は得ようとしたことによって解雇された場合
g 他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職したために解雇された場合
(ロ) 次に掲げる理由によって退職した場合には、正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合に該当しないものとして給付制限は行わない。
a (a)体力の不足 (b)心身の障害 (c)疾病 (d)負傷 (e)視力の減退 (f)聴力の減退 (g)触覚の減退等によって退職した場合
b 上役又は同僚等から故意に排斥され、又は著しい冷遇を受けたことによって退職した場合
c 採用条件と実際の労働条件が著しく相違したことによって退職した場合
d 支払われた賃金が、その者に支払われるべき賃金月額の三分の二に満たない月が継続して二カ月以上にわたるために退職した場合
e 賃金が、同一地域における同種の業務において同職種、同程度の経験年数、同年輩の者が受ける標準賃金と比較し、おおむね一○○分の七五以下になったことによって退職した場合
f 定年となったことによって退職した場合
g 女子が結婚するために退職した場合であって、結婚に伴い退職することが慣行となっているとき、又は結婚に伴う住所の変更により事業所への通勤が不可能若しくは困難となったとき
h 故郷に残した老父(母)が死亡し、帰郷して老母(父)を扶養するために退職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことによって退職した場合
i 扶養すべき家族と別居生活を続けることが困難となったことによって退職した場合
j 自己の意思に反して、その住所を通勤困難な地に移転させられたことによって退職した場合
k 鉄道、軌道、自動車その他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等により、通勤困難となったことによって退職した場合
l 事業主の事業内容が法令に違反するに至ったため退職した場合
m 事業主の希望により解雇の形式をとらず、依願退職の形式により退職した場合
n 労働組合からの除名により、当然解雇となる団体協約を結んでいる事業所において、事業主に対し自己の責めに帰すべき重大な理由がないにもかかわらず、組合から除名の処分を受けたことによって解雇された場合
o 全日休業により労働基準法第二十六条の規定による休業手当の支払が三箇月以上にわたったために退職した場合
経済情勢の変動その他により正常な事業活動を継続することが困難となった場合には、一時的に休業し、労働基準法の規定により休業手当を支払うことがあるが、このような状態が長期間継続する場合には、このことを理由とする離職を正当な理由として取り扱うものである。いわゆる一時帰休制度によりこの理由に該当する場合がある。
p 不渡手形の発生により金融機関との取引きが停止になったこと等により、事業所の倒産がほぼ確実になったために退職した場合
銀行取引停止のほか、会社更生法の適用申請や清算の手続が開始されている場合など、事業所の倒産が確実に見込まれるときでも、正規の解雇手続が遅れる場合があるため、この場合の退職を正当な理由あるものとして取り扱うこととする。
第6 不正受給による失業給付の支給停止、宥恕、返還、納付命令
6 納付命令
(1) 概要
偽りその他不正の行為により失業給付の支給を受けた者に対しては、支給した失業給付の額に相当する額を返還させるほかに、その不正受給が悪質なものであるときは、不正に支給を受けた失業給付の額に相当する額以下の金額を納付すべきことを命ずることができる。
(2) 納付命令の対象となる不正の行為
提出すべき文書の不提出、虚偽の記載のある文書の提出、正当に成立した文書の不正の使用等文書に係る不正の行為のうち、次に掲げる行為により失業給付を不正に受給した場合であって、その不正が特に悪質であると認められるときに、納付を命ずるものとする。
イ 偽造し、変造し、若しくは虚偽の記載をした離職証明書若しくは離職票の使用又は他人の離職票の不正の使用
ロ 安定した職業に就いているにもかかわらずその事実を秘匿した失業認定申告書の提出
ハ 偽造し、又は変造した法第十五条第四項に規定する証明書の提出
ニ 虚偽の記載をした法令の規定に基づく申請書、届書等及び偽造し、又は変造したこれらの書類に添付すべき証明書等の提出のうち次に掲げるもの
(イ) 公共職業訓練施設等への通所又は公共職業訓練等の受講のための寄宿に関する虚偽の届出
(ロ) 偽造し、又は変造した医師の証明書の提出
(ハ) 虚偽の記載をした未支給失業給付請求書の提出
(ニ) 常用就職支度金の支給に関する虚偽の就職の届出
(ホ) 移転費の支給に関する虚偽の移転の届出
(ヘ) 広域求職活動費の支給に関する虚偽の広域求職活動の届出
ホ 偽造し、又は変造した日雇労働被保険者手帳の使用
ヘ 偽造し、又は変造した日雇労働求職者給付金の証明認定に関する証明書の提出
ト 他人の受給資格者証、特例受給資格者証又は日雇労働被保険者手帳の不正の使用
(3) 納付を命ずる金額
納付を命ずる金額は、不正により受給した失業給付の額に相当する額とする。
(4) やむを得ない理由による宥恕
次に掲げる場合以外の場合において、不正をなすに至った動機にやむを得ない理由があると認められるとき、及び反省の情が顕著であるときは、公共職業安定所長がその情状を酌量して、納付を命ずる金額の一部を減じ、又は納付を命じないことができるものとする。
イ 同一の受給資格に基づいて行われる失業給付について、二回以上の不正の行為を行った場合
ロ 二人以上の共謀により不正の行為を行った場合
(5) 納付を命ぜられる者
イ 納付命令の対象となる者は、受給資格者、特例受給資格者及び日雇受給資格者に限定されず、広く「偽りその他不正の行為により失業給付の支給を受けた者」である。従って、受給資格者でないのに他人の離職票を不正に使用した者等も含まれる。
ロ 事業主に対して不正受給者と連帯して納付すべきことを命ずることができる場合は、返還命令の場合と同様である。
ハ 納付命令処分を行う場合には、これに先立ち、あるいはこれと同時に不正受給金の返還命令処分を行わなければならないので、不正受給金の返還を命じない者に対しては、納付を命じることはできない。
Ⅳ 短期雇用特例被保険者に対する求職者給付
第一 特例受給資格者
1 特例受給資格及び特例受給資格者の意義
特例受給資格とは、法第三九条第一項の規定により特例一時金の支給を受けることができる資格をいい、この資格を有する者を特例受給資格者という。
即ち、短期雇用特例被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない場合で、離職の日以前一年間(疾病、負傷等の期間がある場合には、最大限四年間となる。)に被保険者期間が六箇月以上であったときに特例一時金の支給を受けることができるのであり、一般被保険者及び日雇労働被保険者は、特例受給資格者となることはない。
2 特例受給資格の決定
イ 特例受給資格の決定とは、安定所長が離職票を提出した者について、特例一時金の支給を受けることができる資格を有する者であると認定することをいう。
即ち、次の三つの要件を満たしている者であると認定することである。
(イ) 離職による資格喪失の確認を受けたこと。
(ロ) 労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること。
(ハ) 離職の日以前一年間(当該一年間に疾病、負傷その他一定の理由(Ⅲの第一の二の(4)参照)により引き続き三○日以上賃金の支払を受けることができなかった短期雇用特例被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかった日数を一年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年)とし、以下「算定対象期間」という。)に、被保険者期間が通算して六箇月以上あること。
特例受給資格者が特例受給資格の決定を受けるには、安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない。(法第四○条第二項)。
なお、二枚以上の離職票を提出した者については、資格決定に係る最後の離職票が一般の離職票であるときは受給資格者となり、資格決定に係る最後の離職票が短期の離職票であるときは、特例受給資格者となるものである。
また、その者が短期雇用特例被保険者であったか否かは、離職票の(11)欄の記載により判断することとするが、当該欄の記載に疑問が生じた場合には、離職票を発行した安定所へ照会すること。
ロ 受給期限を経過した者については、特例受給資格の決定は行わない。
「受給期限」とは、特例受給資格に係る離職の日の翌日から起算して六箇月を経過する日をいう。また、受給期限内において再び就職し、新たに受給資格又は特例受給資格を得た後に離職したときは、前の特例受給資格は消滅するので、当然に前の受給期限も消滅することとなり、新たな特例受給資格に基づく受給期限がその離職の日の翌日から新たに起算されることとなるが、この場合、前の特例受給資格に基づく特例一時金は支給することはできない。従って、受給期限の起算日の前日と離職票(6)欄の日(離職年月日)とは、常に一致することとなる。
ハ 特例受給資格の決定に関する事務処理は、一般の受給資格者の場合の取扱いに準じて行うものであるが、特例受給資格者については、受給期間の延長の措置は適用されないので留意すること。
なお、日雇の受給資格調整を受けた者の特例受給資格の決定については、一般の受給資格者の場合の取扱いに準じて行うものとする。
3 被保険者期間
被保険者期間の計算方法は、法の本則では一般の受給資格者の場合と同様とされている(法第三九条第一項)が、法附則により当分の間は、従前どおり失業保険における取扱いと同様に暦月単位で、賃金支払基礎日数が一一日以上あるか否かにより判定することとされているので特に留意すること(法附則第六条)。
4 受給期限
特例受給資格者については、離職の日の翌日から起算して六箇月を経過する日までの間に限り、特例一時金の支給を受けるための失業の認定を受けることができる。
6 その他
(1) 受給要件の緩和が認められる理由については、一般の受給資格者と同様である(Ⅲの第一の二の(4)参照。)
(2) 基本手当日額の算定方法については、Ⅲの第一の五の(2)を参照。
第二 特例一時金
1 概要
特例受給資格者に対しては、求職者給付として特例一時金が支給されることとなっている。この特例一時金というのは、基本手当等と異なり、失業している日数に対応して支払われるものではなく、失業の状態にあれば支払われるものである。
即ち、失業の認定の日に失業の状態にあればよいのであり、翌日から就職したとしても返還の必要はない。
2 特例一時金の額
特例一時金の額は、その者について算定された基本手当日額の五○日分とする。ただし、失業の認定があった日から受給期限日までの日数が五○日未満であるときは、その日数分しか支給されない(法第四○条第一項)。(例えば、受給期限日が昭和五○年一二月五日であり、かつ、失業の認定があった日が昭和五○年一一月二○日である場合には、特例一時金の額は基本手当日額の一六日分となる。)
また、求職申込みの日以後失業の認定があった日の前日までの間に自己の労働による収入がある場合であっても、特例一時金の減額は行わない。
3 失業の認定日の決定
(1) 認定日の指定及び変更
安定所は、特例受給資格者が離職後最初に出頭した日に、その特例受給資格者について、求人、求職の状況(例えば、同一の職種を適職とする者を同一日に指定するなど)、事務量等を勘案してその者の認定日を指定しなければならない。特例一時金の受給前の再就職に係る再離職の場合も同様である。
失業の認定日は、次に掲げる日の経過後安定所の事務量等を勘案して、できるかぎり早い日となるように指定するものとする。この場合においては、受給期限日との関係に特に留意する必要がある(上記二のただし書参照)。
なお、安定所長は特例受給資格者の申出により必要があると認めるときは、その者の失業の認定日を変更することができる(則第六八条第二項)。
イ 待期満了後、離職理由による給付制限が予定されている場合
当該給付制限の期間が経過すると見込まれる日
ロ 待期満了後、離職理由による給付制限が予定されていない場合
待期が満了すると見込まれる日
(2) 認定日の再指定
(1)により指定した失業の認定日において、待期満了等の認定ができなかった場合には、その日数等を考慮してできるかぎり早い日を失業の認定日として再指定する。この場合にも、受給期限日との関係に留意することが必要である。
4 待期
特例受給資格者についても、一般の受給資格者と同様に七日間の待期が必要である(法第二一条及び第四○条第三項)。
5 失業の認定
(1) 失業の認定
イ 認定の要領
(イ) 失業の認定は、失業の認定日において特例受給資格者が失業しているか否かを確認する行為である。
(ロ) 安定所が失業の認定日に失業の認定を行うに当たっては、次の事項について確かめなければならない。
なお、dの判断基準は、一般の受給資格者の場合と同様である。