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○労働者災害補償保険特別支給金支給規則の一部を改正する省令の施行について

(昭和五六年六月二七日)

(基発第三九三号)

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

労働者災害補償保険特別支給金支給規則の一部を改正する省令(昭和五六年労働省令第二四号。以下「改正省令」という。)が昭和五六年六月二七日に公布・施行され、同年四月一日から適用され、労働福祉事業として新たに傷病特別支給金が支給されることとなつた。

ついては、左記事項に留意のうえ、事務処理に遺漏のないよう配慮されたい。

一 傷病特別支給金制度の新設

傷病が治ゆして障害が存する者に対して障害特別支給金が支給されることとの均衡等を考慮し、長期療養者の保護を一層充実させるため、傷病特別支給金が新たに設けられた(改正後の労働者災害補償保険特別支給金支給規則(以下「新特支則」という。)第二条)。

二 支給対象者

傷病特別支給金は、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後一年六箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、当該労働者に対し、その申請に基づいて支給される。

イ 当該負傷又は疾病が治つていないこと。

ロ 当該負傷又は疾病による廃疾の程度が廃疾等級に該当すること(新特支則第五条の二第一項及び第二項)。

三 支給額

当該傷病に関して、初めて前記二の支給要件に該当することとなつた時点における廃疾等級に応じ、次の表に掲げる額が支給額とされる(新特支則第五条の二及び別表第一の二)。

廃疾等級

第一級

一一四万円

一〇七

一〇〇

四 障害特別支給金との調整

(一) 傷病特別支給金を受給した労働者の当該負傷又は疾病が治ゆし、身体に障害を残すことにより障害特別支給金を受けることとなつた場合においては、障害特別支給金の支給事由が生じたときの障害等級に応ずる障害特別支給金の額が、既に受けた傷病特別支給金に係る廃疾等級に応ずる傷病特別支給金の額を超えるときに限りその差額に相当する額の障害特別支給金が支給される(新特支則第四条第三項)。

(例一)

廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金(一〇〇万円)を受けた労働者の当該負傷又は疾病がその後治ゆし、障害等級第三級に該当した場合には、その差額、(300万円-100万円)の二〇〇万円の障害特別支給金が支給される。

(例二)

廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金(一〇〇万円)を受けた労働者の当該負傷又は疾病がその後治ゆし、障害等級第八級に該当した場合には、障害等級第八級に応ずる障害特別支給金の額(六五万円)が廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金の額(一〇〇万円)を超えないので障害特別支給金は支給されない。

(二) すでに身体障害があつた者が、業務上の事由又は通勤による傷病により傷病特別支給金を受けた(傷病特別支給金の額自体は既存障害に影響されず前記二の支給事由に該当した時点での廃疾の状態に応じた額が支給される。)後に当該傷病が治ゆし、障害特別支給金を受ける場合においては、労働者災害補償保険特別支給金支給規則第四条第二項に規定する算定方法により算定される障害特別支給金の額が、既に受けた傷病特別支給金に係る廃疾等級に応ずる傷病特別支給金の額を超えるときに限りその差額に相当する額の障害特別支給金が支給される(新特支則第四条第三項)。

(例一)

既存障害(障害等級第八級相当)のあつた者が業務上の事由又は通勤により傷病の状態になり廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金(一〇〇万円)を受けた後当該傷病が治ゆし、障害等級第三級に該当した場合には、加重分の障害特別支給金の額(300万円-65万円=235万円)が既に支給した廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金の額(一〇〇万円)を超えるのでその差額の一三五万円が支給される。

(例二)

既存障害(障害等級第四級相当)のあつた者が業務上の事由又は通勤により傷病の状態になり廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金(一〇〇万円)を受けた後当該傷病が治ゆし、障害等級第三級に該当した場合には、加重分の障害特別支給金の額(300万円-264万円=36万円)は、既に支給した廃疾等級第三級に応ずる傷病特別支給金の額(一〇〇万円)を超えないので、障害特別支給金は支給されない。

五 時効

傷病特別支給金の支給の申請は、支給要件に該当することとなつた日の翌日から起算して五年以内に行わなければならない(新特支則第五条の二第三項)。

六 内払処理

同一の傷病に関し、休業特別支給金を受けている労働者が傷病補償年金又は傷病年金を受ける権利を有することとなり、かつ、休業補償給付又は休業給付を行わないこととなつた場合において、その後も休業特別支給金が引き続き支払われたときは、その支払われた休業特別支給金は、傷病補償年金又は傷病年金の受給権者に新たに支給される傷病特別支給金又は傷病特別年金の内払とみなされる(新特支則第一四条)。

七 未支給の傷病特別支給金

未支給の傷病特別支給金は、未支給の保険給付の支給の例により支給されるが、未支給の傷病特別支給金の支給の申請は、未支給の傷病補償年金又は傷病年金の支給の請求と同時に行わなければならない(新特支則第一五条第三号)。

八 特別加入者に対する傷病特別支給金

特別加入者の業務災害又は通勤災害に関しても、労働者の業務災害又は通勤災害の場合に準じて傷病特別支給金が支給される(新特支則第一六条から第一八条まで)。

九 傷病特別支給金に関するその他の事項

労働者の重大過失等による傷病特別支給金の支給制限、一時差止め、傷病特別支給金に関する処分の通知等及び傷病特別支給金を受けるべき者に対する事業主の助力については、それぞれ労働者の重大過失等による保険給付の支給制限(法第一二条の二の二)、保険給付の一時差止め(法第四七条の三)、保険給付に関する処分の通知等(労災則第一九条)及び保険給付を受けるべき者に対する事業主の助力(労災則第二三条)に準ずる。

一〇 支給手続

当分の間、事務処理の便宜を考慮し、傷病補償年金又は傷病年金の支給の決定を受けた者は、傷病特別支給記の申請を行つたものとして取り扱つて差支えないものであること。

一一 経過措置

(一) 傷病特別支給金は、昭和五六年四月一日以後において支給事由の生じた場合に支給する(改正省令附則第二項)。

(二) 昭和五六年四月一日から改正省令の公布の日までの間に傷病特別支給金の支給の事由が生じ、かつ、同期間中に同一事由による負傷又は疾病が治ゆし、障害特別支給金の支給事由が生じた場合であつて、改正前の労働者災害補償保険特別支給金支給規則の規定に基づいて障害特別支給金が支給されたものは、改正後の労働者災害補償保険特別支給金支給規則の規定による傷病特別支給金の支給額に相当する額の限度でその傷病特別支給金の内払とみなされる(改正省令附則第三項)。