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○民事損害賠償が行われた際の労災保険給付の支給調整に関する基準(労働者災害補償保険法第六七条第二項関係)について

(昭和五六年六月一二日)

(発基第六〇号)

(各都道府県労働基準局長あて労働事務次官通達)

労働者災害補償保険法第六七条〔現行=六四条〕第二項の規定に基づき、標記基準が別紙のとおり定められた。この基準は、昭和五六年一一月一日以後に発生した事故に起因する損害について適用されるものである。ついては、その内容をご了知のうえ、労働者災害補償保険制度の運営に遺憾なきを期されるよう、命により通達する。

民事損害賠償が行われた際の労災保険給付の支給調整に関する基準(労働者災害補償保険法第六四条第二項関係)

目次

1 労災保険給付の支給調整の事由となる民事損害賠償

(1) 労災保険給付の支給調整の事由となる民事損害賠償の損害項目

(2) 民事損害賠償の賠償額のうち比較の対象とする部分

(3) 企業内労災補償、示談金、和解金、見舞金等の取扱い

2 支給調整を行う労災保険給付

(1) 支給調整を行う労災保険給付の種類

(2) 支給調整が行われる労災保険給付の受給権者の範囲

3 支給調整の事由となる民事損害賠償の損害項目に応じた労災保険給付の支給調整の方法

(1) 逸失利益

(2) 療養費

(3) 葬祭費用

4 民事損害賠償の内訳等が不明なものの取扱い

(1) 労災保険給付相当分を含む民事損害賠償であるが、その内訳等が不明なものの取扱い

(2) 労災保険給付相当分を含むことが明らかでない場合の取扱い

1 労災保険給付の支給調整の事由となる民事損害賠償

(1) 労災保険給付の支給調整の事由となる民事損害賠償の損害項目

次表の左欄に掲げる労災保険給付に応じ、それぞれ右欄に掲げるとおりとする。

支給調整を行う労災保険給付

民事損害賠償の損害項目

障害(補償)給付

遺族(補償)給付

傷病(補償)年金

休業(補償)給付

逸失利益

療養(補償)給付

療養費

葬祭料(葬祭給付)

葬祭費用

(注) 「障害(補償)給付」は、業務災害についての「障害補償給付」と通勤災害についての「障害給付」の双方を表わす用語である。他の保険給付を表わす用語についても同様である。以下同じ。

(2) 民事損害賠償の賠償額のうち比較の対象とする額

(1)の損害項目に対する民事損害賠償の賠償額のうち労災保険給付の支給水準相当分のみを労災保険給付の額との比較の対象とする額とする。

(3) 企業内労災補償、示談金、和解金、見舞金等の取扱い

イ 企業内労災補償

企業内労災補償は、一般的にいつて労災保険給付が支給されることを前提としながらこれに上積みして給付する趣旨のものであるので、企業内労災補償については、その制度を定めた労働協約、就業規則その他の規程の文面上労災保険給付相当分を含むことが明らかである場合を除き、労災保険給付の支給調整を行わない。

ロ 示談金及び和解金

労災保険給付が将来にわたり支給されることを前提としてこれに上積みして支払われる示談金及び和解金については、労災保険給付の支給調整を行わない。

ハ 見舞金等

単なる見舞金等民事損害賠償の性質をもたないものについては、労災保険給付の支給調整を行わない。

2 支給調整を行う労災保険給付

(1) 支給調整を行う労災保険給付の種類

前記1(1)に掲げる保険給付に限定して支給調整を行い、特別支給金については支給調整を行わない。

(2) 支給調整が行われる労災保険給付の受給権者の範囲

労災保険給付の支給調整の事由となる民事損害賠償(前記1参照)を受けた労災保険給付の受給権者について支給調整を行う。ただし、遺族(補償)年金の受給権者のうち先順位の受給権者が失権した後の後順位の受給権者については、支給調整を行わない。

3 支給調整の事由となる民事損害賠償の損害項目に応じた労災保険給付の支給調整の方法

(1) 逸失利益

障害(補償)給付、遺族(補償)給付、傷病(補償)年金及び休業(補償)給付は、逸失利益に対する民事損害賠償の賠償額に相当する額の範囲で次の方法により支給調整を行う。

イ 基本原則

(イ) 逸失利益に対する民事損害賠償の賠償額のうち労災保険給付の支給水準相当分(以下「比較対象逸失利益額」という。)のみを労災保険給付との比較の対象とする額とする。

(ロ) 比較対象逸失利益額には、災害発生時から支給調整時までの利息分を加えない。

(ハ) 比較対象逸失利益額と比較する労災保険給付の額については、スライドが行われた場合にはスライド後の額による。

(ニ) 遺族(補償)給付の支給調整に係る比較対象逸失利益額は、受給権者本人の受けた民事損害賠償に係るものに限る。

(ホ) 労災保険給付の支給調整は、次のいずれか短い期間(以下「調整対象給付期間」という。)の範囲で行う。

a 前払一時金最高限度額相当期間の終了する月から起算して九年が経過するまでの期間(ただし、休業(補償)給付については災害発生日から起算して九年が経過する日までの期間、傷病(補償)年金については傷病(補償)年金の支給事由の発生した月の翌月から起算して九年が経過するまでの期間。)。

b 就労可能年齢(遺族(補償)年金については死亡労働者の生存を仮定した場合の就労可能年齢とする。)(各年齢ごとに、別表第一に定める年齢とする。以下同じ。)を超えるに至つたときは、その超えるに至つたときまでの期間。

ロ 各労災保険給付ごとの支給調整の方法は、以下のとおりとする。

(イ) 障害(補償)年金

調整対象給付期間内に限り、次の額に達するまで支給停止する。

逸失利益額×給付相当率-前払一時金最高限度額等

(注1)   (注2)      (注3)

(注一) 逸失利益額‥判決等で明示された逸失利益額とする。ただし、その額が下記の額を上回る場合には、下記の額とする。(ニ)において同じ。

給付基礎日額×365×労働能力喪失率<注((イ))>×就労可能年数に対応する新ホフマン係数<注((ロ))>

<注((イ))> 労働能力喪失率‥別表第二による。ただし、判決等における労働能力喪失率が明らかであるときはその率によることができる。以下同じ。

<注((ロ))> 就労可能年数に対応する新ホフマン係数‥別表第一による。ただし、判決等における就労可能年数が明らかであるときはその年数に対応する新ホフマン係数によることができる。以下同じ。

(注2) 給付相当率‥別表第三による。以下同じ。

(注3) 前払一時金最高限度額等‥障害(補償)年金前払一時金最高限度額又は既支給の障害(補償)年金の支給額のいずれか大きい額。以下同じ。

(ロ) 遺族(補償)年金

調整対象給付期間内に限り、次の額に達するまで支給停止する。

逸失利益額×0.67-前払一時金最高限度額等

(注)

(注) 逸失利益額‥判決等で明示された逸失利益額とする。ただし、その額が下記の額を上回る場合には下記の額とする。(ホ)において同じ。

(給付基礎日額×365-死亡労働者本人の生活費)<注>×就労可能年数に対応する新ホフマン係数×遺族たる受給権者の相続割合

<注> 死亡労働者本人の生活費‥給付基礎日額×三六五の三五%とする。ただし、判決等における死亡労働者本人の生活費が明らかであるときはその額によることができる。以下同じ。

(ハ) 傷病(補償)年金

(イ)に準じる。

(ニ) 障害(補償)一時金

次の額に相当する額について支給調整を行う。ただし、障害(補償)一時金の支給事由が災害発生日から起算して九年を経過する日の後に生じた場合及び就労可能年齢を超えた日以後に生じた場合は、この限りでない。

逸失利益額×給付相当率-既支給額

(ホ) 遺族(補償)一時金(失権差額一時金の場合を除く。)

次の額に相当する額について支給調整を行う。

この場合に(ニ)のただし書を準用する。

逸失利益額×0.67-既支給額

(ヘ) 前払一時金及び失権差額一時金

支給調整を行わない(法第六七条第二項ただし書参照)。

(ト) 休業(補償)給付

(イ)に準じる(給付相当率は〇・六〇とする。)。

(2) 療養費

療養(補償)給付は、療養費に対する民事損害賠償の賠償額のうち療養(補償)給付に見合う額の限度で支給調整を行う。

(3) 葬祭費用

葬祭料(葬祭給付)は、葬祭費用に対する民事損害賠償の賠償額の限度で支給調整を行う。

4 民事損害賠償の内訳等が不明なものの取扱い

(1) 労災保険給付相当分を含む民事損害賠償であるが、その内訳等が不明なものの取扱い

民事損害賠償の賠償額のうち次に掲げるところにより算定した額を、労災保険給付との比較の対象とする額とみなして支給調整を行う。

イ 被災労働者が後遺障害について民事損害賠償を受けたケース

給付基礎日額×365×労働能力喪失率×就労可能年数に対応する新ホフマン係数×給付相当率-前払一時金最高限度額等

ロ 遺族が被災労働者の死亡について民事損害賠償を受けたケース

(給付基礎日額×365-死亡労働者本人の生活費)×就労可能年数に対応する新ホフマン係数×遺族たる受給権者の相続割合×0.67-前払一時金最高限度額等

ハ 被災労働者が療養のための一時的労働不能による賃金喪失について民事損害賠償を受けたケース

イのケースに準じる。

(2) 労災保険給付相当分を含むことが明らかでない場合の取扱い

将来給付予定の労災保険給付相当分を含むことが明らかである場合以外は、労災保険給付に上積みして行われる賠償とみなして労災保険給付の支給調整を行わない。

別表第1

就労可能年齢及び就労可能年数と新ホフマン係数

年齢

就労可能年齢

就労可能年数

係数

年齢

就労可能年齢

就労可能年数

係数

年齢

就労可能年齢

就労可能年数

係数

年齢

就労可能年齢

就労可能年数

係数

15歳

67歳

52年

25.261

36歳

67歳

31年

18.421

57歳

68歳

11年

8.590

78歳

82歳

4年

3.564

16

67

51

24.984

37

67

30

18.029

58

69

11

8.590

79

83

4

3.564

17

67

50

24.702

38

67

29

17.629

59

70

11

8.590

80

84

4

3.564

18

67

49

24.416

39

67

28

17.221

60

70

10

7.945

81

85

4

3.564

19

67

48

24.126

40

67

27

16.804

61

71

10

7.945

82

85

3

2.731

20

67

47

23.832

41

67

26

16.379

62

71

9

7.278

83

86

3

2.731

21

67

46

23.534

42

67

25

15.944

63

72

9

7.278

84

87

3

2.731

22

67

45

23.231

43

67

24

15.500

64

73

9

7.278

85

88

3

2.731

23

67

44

22.923

44

67

23

15.045

65

73

8

6.589

86

89

3

2.731

24

67

43

22.611

45

67

22

14.580

66

74

8

6.589

87

90

3

2.731

25

67

42

22.293

46

67

21

14.104

67

75

8

6.589

88

90

2

1.861

26

67

41

21.970

47

67

20

13.616

68

75

7

5.874

89

91

2

1.861

27

67

40

21.643

48

67

19

13.116

69

76

7

5.874

90

92

2

1.861

28

67

39

21.309

49

67

18

12.603

70

76

6

5.134

91

93

2

1.861

29

67

38

20.970

50

67

17

12.077

71

77

6

5.134

92

94

2

1.861

30

67

37

20.625

51

67

16

11.536

72

78

6

5.134

93

95

2

1.861

31

67

36

20.275

52

67

15

10.981

73

79

6

5.134

94

96

2

1.861

32

67

35

19.917

53

67

14

10.409

74

79

5

4.364

95

97

2

1.861

33

67

34

19.554

54

67

13

9.821

75

80

5

4.364

96

98

2

1.861

34

67

33

19.183

55

67

12

9.215

76

81

5

4.364

97

別記のとおり

1

0.952

35

67

32

18.806

56

68

12

9.215

77

81

4

3.564