添付一覧
○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行(第二次分)について
(平成八年三月一日)
(基発第九五号)
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)
労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(平成七年法律第三五号)による労災保険制度の改正の大綱については、既に平成七年三月二三日付け労働省発基第二五号をもって労働事務次官より通達されたところであるが、今般同法の一部が平成八年四月一日から施行されるとともに、労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(平成八年労働省令第六号)が制定され、同日から施行されることとなった。
ついては、左記事項に留意の上、事務処理に遺憾なきを期されたい。
なお、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律中平成七年八月一日施行及び平成八年四月一日施行に係る部分以外の部分の施行については、施行の都度おって通達する。
(注) 法令の略称は次のとおりである。
改正法=労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(平成七年法律第三五号)
法=労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)
旧法=改正法第一条による改正前の労働者災害補償保険法
新法=改正法第一条による改正後の労働者災害補償保険法
改正省令=労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(平成八年労働省令第六号)
労災則=労働者災害補償保険法施行規則(昭和三〇年労働省令第二二号)
旧労災則=改正省令第一条による改正前の労災則
新労災則=改正省令第一条による改正後の労災則
一酸化炭素中毒則=炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則(昭和四二年労働省令第二八号)
旧一酸化炭素中毒則=改正省令第三条による改正前の一酸化炭素中毒則
新一酸化炭素中毒則=改正省令第三条による改正後の一酸化炭素中毒則
整備則=失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う労働省令の整備等に関する省令(昭和四七年労働省令第九号)
旧整備則=改正省令第四条による改正前の整備則
新整備則=改正省令第四条による改正後の整備則
記
第一 介護補償給付及び介護給付の創設
一 改正の趣旨
高齢化、核家族化等により、重度被災労働者は家庭で十分な介護を受けることが困難になってきていることから、民間事業者等から介護サービスを受ける必要性が一層高まり、その費用負担が増大するおそれがある。
他方、近年の人身傷害に係る民事損害賠償の状況をみると、重度の障害を負った者の介護に当たっている親族等による介護労働に対する金銭的な評価は高額化しており、慰謝料を上回り、逸失利益に匹敵する例も少なくないなど、損害額算定の重要な要素とされてきている。
また、ILO第一二一号勧告においては、常時他人の介護を要する場合においては、その援助又は付添いのための合理的な費用を支払うための措置がとられるべきであるとされている。
以上の状況を踏まえ、労働災害によって被った損害の填補を行うという労災保険制度の本来の趣旨にかんがみると、労働災害の結果として、労働者が介護を要する状態となり、それによって生じた介護を受けることに伴う費用の支出等の損害については、単なる附帯事業としてではなく、労災保険で当然に填補すべき損害として位置付けて給付を行うことが適当であるとの考えにより、保険給付として介護補償給付及び介護給付を創設することとされたものである。
二 改正の内容
(一) 介護補償給付の支給要件(新法第一二条の八関係)
介護補償給付は、障害補償年金又は傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害であって労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間、当該労働者に対し、その請求に基づいて支給される。
ただし、当該労働者が身体障害者療護施設等に入所している間は支給されない。
(二) 介護補償給付に係る障害の程度(新労災則第一八条の三の二及び別表第三関係)
イ 介護補償給付に係る障害の程度の基本的な考え方
介護補償給付に係る障害の程度の区分に当たっては、まず、新労災則別表第一障害等級表に規定される身体障害及び別表第二傷病等級表に規定される障害の状態において、常に介護を要するもの又は随時介護を要するものとされている身体障害又は障害の状態については、介護補償給付の支給に当たっても、それぞれ常時介護を要する状態にあるもの又は随時介護を要する状態にあるものとして位置付け、これに該当しない障害等級第一級に規定される身体障害又は傷病等級第一級に規定される障害の状態については、ADL(日常生活動作能力)基準に基づき、介護を要する状態を区分することが適当である。
このような考え方に基づき、介護補償給付に係る障害の程度は新労災則別表第三のとおり定められたものである。
ロ 常時介護を要する障害の程度
常時介護を要する障害の程度に該当するものは次のとおりである。
① 障害等級第一級第三号に規定する身体障害又は傷病等級第一級第一号に規定する障害の状態
② 障害等級第一級第四号に規定する身体障害又は傷病等級第一級第二号に規定する障害の状態
③ ①及び②以外の障害等級第一級に規定する身体障害又は傷病等級第一級に規定する障害の状態のうち、重複障害等障害の状態が特に重篤であって、①又は②と同程度の介護を要する状態にあるもの
具体的には次のとおりとする。
a 両眼が失明するとともに、別表第一第一級若しくは第二級又は別表第二第一級若しくは第二級に該当する障害を有するもの
b 両上肢の用を全廃し又はひじ関節以上で失うとともに、次の障害を有するもの
・ 両下肢の用を全廃しているもの
・ 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
・ 両下肢を足関節以上で失ったもの
両上肢を腕関節以上で失うとともに両下肢の用を全廃し又はひざ関節以上で失ったもの
c その他これらと同程度の介護を要する障害を有するもの
なお、全国斉一的な運用を図るため、cに該当すると思われる事案については、地方局署は本省に照会することとし、本省に設置する、医師等により構成する検討会において必要に応じて検討するものとする。
ハ 随時介護を要する障害の程度
随時介護を要する障害の程度に該当するものは次のとおりである。
① 障害等級第二級第二号の二に規定する身体障害又は傷病等級第二級第一号に規定する障害の状態
② 障害等級第二級第二号の三に規定する身体障害又は傷病等級第二級第二号に規定する障害の状態
③ 障害等級第一級に規定する身体障害又は傷病等級第一級に規定する障害の状態であって、ロに掲げる障害の状態に該当しないもの
(三) 介護補償給付の支給額(新労災則第一八条の三の四関係)
イ 支給額
介護補償給付は月を単位として支給されることとされており、その額は、一月につき、次に掲げる被災労働者の区分に応じ、それぞれ次のとおりである。
① 常時介護を要する被災労働者
a その月に費用を支出して介護を受けた日がある場合(bの場合を除く。)
その月において介護に要する費用として支出された額(その額が一〇五、〇八〇円を超えるときは、一〇五、〇八〇円とする。)
b その月に費用を支出して介護を受けた日がない場合又は介護に要する費用として支出された費用の額が五七、〇五〇円に満たない場合であって、親族等による介護を受けた日がある場合
五七、〇五〇円(支給すべき事由が生じた月において介護に要する費用として支出された額が五七、〇五〇円に満たないときは、当該介護に要する費用として支出された額とする。)
② 随時介護を要する被災労働者
a その月に費用を支出して介護を受けた日がある場合(bの場合を除く。)
その月において介護に要する費用として支出された額(その額が五二、五四〇円を超えるときは、五二、五四〇円とする。)
b その月に費用を支出して介護を受けた日がない場合又は介護に要する費用として支出された費用の額が二八、五三〇円に満たない場合であって、親族等による介護を受けた日がある場合
二八、五三〇円(支給すべき事由が生じた月において介護に要する費用として支出された額が二八、五三〇円に満たないときは、当該介護に要する費用として支出された額とする。)
ロ 支給開始時及び支給終了時の給付
その月に費用を支出して介護を受けた日がある場合については、支給すべき事由が生じた月から、支給すべき事由が消滅した月までに各月において介護費用として支出された額を算定して給付を行うものとする。
また、その月に費用を支出して介護を受けた日がない場合であって、親族等による介護を受けた日がある場合については、①介護費用を支出しないで親族等による介護を受け始めた月においては給付は行わず、その翌月から給付を行うこととし、②介護費用を支出しないで親族等による介護を受けることがなくなった月については、一か月分の給付を行うものとする。
(四) 介護補償給付の支給対象とならない施設入居者の範囲(新労災則第一八条の三の三関係)
イ 規定の考え方
介護補償給付については、新法第一二条の八第四項により、身体障害者療護施設等の施設に入所している間は支給しないこととされている。これは、①当該施設において十分な介護サービスが提供されることから被災労働者は親族等から介護を受ける必要がなく、②当該介護サービスに相当する費用が徴収されていないため、当該施設に入居している被災労働者については、そもそも介護補償給付を支給する必要がないからであり、この旨があらかじめ法令上明示されているものである。
ロ 支給対象とならない施設
① 身体障害者療護施設
身体障害者福祉法第三〇条に規定する、常時介護を必要とする身体障害者に対して治療及び養護を行う入居施設
② 身体障害者療護施設に準ずる施設として労働大臣が定めるもの
a 特別養護老人ホーム
原則として六五歳以上の者で、身体上又は精神上著しい障害があるため常時介護を必要とし、居宅でこれを受けることが困難な者の入居施設
b 原子爆弾被爆者特別養護ホーム
被爆者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な者に対して、必要な介護、健康管理及び医療を提供する施設
c 労災特別介護施設
重度被災労働者に対して必要な介護を提供する入居施設
d その他親族等による介護を必要としない施設であって当該施設において提供される介護に要した費用に相当する金額を支出する必要のない施設として労働大臣が定めるもの
ただし、これに該当する施設は現在のところ定められていない。
③ 病院又は診療所
老人保健施設は、老人保健法(昭和五七年法律第八〇号)第四六条の一七の規定により病院又は診療所に含まれる。
(五) 介護補償給付の請求手続(新労災則第一八条の三の五関係)
イ 請求方法
介護補償給付の請求は、被災労働者が所轄労働基準監督署長に介護補償給付支給請求書(以下「請求書」という。)に必要な書類を添付して提出することにより行うものである。
また、介護を要する状態に変更が生じた場合に介護補償給付を請求するときは、新規に同給付を請求する手続と同様の手続を行うものとする。
なお、介護補償給付の初回の請求は、障害補償年金を受ける権利を有する者については、障害補償年金の請求と同時に、又はその請求後に行うものとし、また、傷病補償年金を受ける権利を有する者については、当該傷病補償年金の支給決定を受けた後に行うものとする。
ロ 請求書に添付する書類
介護補償給付の請求の際に請求書に添付する書類は以下のとおりである。
① 障害の部位及び状態並びに当該障害を有することに伴う日常生活の状態に関する医師又は歯科医師の診断書(以下「診断書」という。)
② 介護に要する費用を支出して介護を受けた日がある場合にあっては、費用を支出して介護を受けた日数及び当該支出した費用の額を証する書類
③ 被災労働者がその親族等により介護を受けた日がある場合にあっては、当該介護に従事した者の当該介護の事実についての申立書
ハ 診断書の添付と定期報告書との関係(新労災則第二一条関係)
継続して二回目以降の介護補償給付を請求する者については、診断書の添付を要さないものとし、そのうち障害補償年金の受給者にあっては、新労災則第二一条に規定する定期報告書に、障害を有することに伴う日常生活の状態を記載した診断書を添付するものとする。
(六) 未支給の保険給付
介護補償給付を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき介護補償給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、死亡した者の遺族は当該すべての月分の介護補償給付を未支給の保険給付として請求できるものである。
請求に当たっては、未支給の保険給付支給請求書(様式第四号)に、次に掲げる書類を添付することとするが、介護補償給付受給者に係る遺族補償給付又は葬祭料について併せて遺族より支給請求があった場合は、当該保険支給請求のため提出する書類その他の資料で重複するものについては重ねて提出する必要はないものとする。
イ 死亡した受給権者の死亡診断書、死体検案書又は検視調書に記載してある事項についての市町村長の証明書等死亡の事実及び年月日が証明できる書類
ロ 死亡した受給権者と未支給給付の請求権者との身分関係を証明し得る戸籍の謄本又は抄本
ハ 死亡した受給権者と未支給給付の請求権者とが内縁関係にあった場合は、その事実を証明し得る書類
ニ 死亡した受給権者と生計を同じくしていたことを証明し得る書類
ホ 死亡した者が請求書を提出していなかった場合は、死亡した受給権者が提出すべきであった請求書
(七) 支給制限
イ 故意の場合
労働者が故意に傷病等の原因となった事故を生じさせた場合は介護補償給付の支給は行われないものである。
ロ 故意の犯罪行為、重過失又は療養に関する指示違反の場合
介護補償給付については、労働基準法第七八条(休業補償及び障害補償の例外)の規定に該当しないことから、支給制限の対象としないものとする。
(八) 費用徴収
イ 不正受給者からの費用徴収
介護補償給付における不正受給者からの費用徴収における徴収する徴収金の価額は、保険給付を受けた者が受けた保険給付のうち、偽りその他不正の手段により給付を受けた部分に相当する価額とする。
ロ 事業主からの費用徴収
法第二五条第一項第一号から第三号までに該当する事故について保険給付を行う場合は、労働基準法の規定による災害補償の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することとなっているが、労働基準法上の規定のない介護補償給付については費用徴収は行わないものとする。
(九) 時効(新法第四二条関係)
介護補償給付の時効は二年である。なお、既に支給決定のあった保険給付の支払請求権は、会計法第三〇条の規定により五年である。
(一〇) 損害賠償との調整
介護補償給付と損害賠償との調整については、当初の間、次に定める方法により行うものとし、介護補償給付に係る障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害の原因となる負傷又は疾病が平成八年四月一日以後に発生したものについて適用する。
イ 第三者行為災害における民事損害賠償と介護補償給付の支給調整に関しては、求償(法第一二条の四第一項)の場合には、実際に行った保険給付の価額の限度で「第三者行為災害事務取扱手引」第二章第三節「求償」に準じて行い、控除(同条第二項)の場合には、介護損害に対する民事損害賠償額のうち介護補償給付に見合う価額の限度で同手引第二章第二節「控除」に準じて行うものとする。
ロ 事業主による民事損害賠償が行われた際の介護補償給付の支給調整に関しては、介護補償給付は、介護損害に対する民事損害賠償額のうち介護補償給付に見合う額の限度で支給調整を行うものとし、同給付に係る障害補償年金又は傷病補償年金の調整対象給付期間と同一の期間について、「民事損害賠償が行われた際の労災保険給付の支給調整に関する基準(労働者災害補償保険法第六四条第二項関係)」に準じて支給停止を行うものとする。
(一一) 旧一酸化炭素中毒則による介護料の取扱い(改正省令第三条、新一酸化炭素中毒則第七条及び改正法附則第八条関係)
旧一酸化炭素中毒則の介護料に関する規定は廃止されるが、施行日前において、改正法による改正前の炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(昭和四二年法律第九二号)による介護料を受ける権利を有していた被災労働者については、当該介護料又は介護補償給付のいずれかを受けることができるものである。
(一二) 労働福祉事業に係る介護料の廃止について
昭和五五年四月五日付け基発第一六五号「介護料の支給について」は、平成八年三月三一日をもって廃止する。
なお、平成八年三月三一日までに支給すべき事由の生じた介護料については、従前の例による。
(一三) 特例による保険給付(改正省令第四条及び新整備則第八条関係)
介護補償給付についても暫定任意適用事業における特例による保険給付の対象となるが、この場合における介護補償給付に係る特別保険料の徴収期間は、当該介護補償給付に係る障害補償年金又は傷病補償年金に係る特別保険料の徴収期間とするものである。
三 施行期日及び経過措置
(一) 施行期日(改正省令附則第一条関係)
この改正は、平成八年四月一日から施行される。
(二) 介護補償給付の支給事由の生じた月における支給額算定方法に関する経過措置(改正省令附則第二条関係)
施行日前に介護補償給付に係る障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害の原因となる負傷又は疾病に関する療養を開始した者については、親族又はこれに準ずる者による介護を受けた日があり、かつ、その月に介護に要する費用として支出された額が常時介護を要する障害の程度の場合にあっては五七、〇五〇円、随時介護を要する障害の程度の場合にあっては二八、五三〇円に満たない場合であっても、平成八年四月分の介護補償給付の給付額は、常時介護を要する障害の程度の場合にあっては五七、〇五〇円、随時介護を要する障害の程度の場合にあっては二八、五三〇円とするものである。
(三) 介護補償給付に係るメリット制の算定方法に関する経過措置(改正省令附則第三条関係)
介護補償給付についてもメリット制の算定の対象となるが、施行日前に介護補償給付に係る障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害の原因となる負傷又は疾病に関する療養を開始した者に支給される介護補償給付の額は、メリット制の算定の対象としないとするものである。
四 介護給付の取扱い(改正省令第一八条の一四、第一八条の一五及び第二一条関係)
介護給付に関しては、二(一〇)及び三(三)を除き、介護補償給付に準じて取り扱うものとする。
第二 遺族補償年金及び遺族年金の受給資格者の子等の年齢要件の緩和
一 改正の趣旨及び内容
(一) 改正の趣旨
死亡した労働者の子、孫及び兄弟姉妹の遺族(補償)年金の受給資格は、当該遺族の稼得能力の観点から満一八歳に達したときに失われるとされているが、最近の中学校卒業者の高校等への進学率はほぼ一〇〇%(平成五年九七.七%)に達しているなど高校への進学は一般化しており、一般に高校卒業時(満一八歳に達する日の属する年度の三月三一日)までは就学のため事実上稼得能力はないと考えられる。
このため、被災労働者の遺族について、より一層の生活の安定を図っていくとの観点から、遺族(補償)年金の受給資格者となる遺族のうち子等の受給資格に係る年齢要件を緩和することとされたものである。
(二) 改正の内容(新法別表第一関係)
遺族(補償)年金の受給資格者となる遺族のうち子、孫及び兄弟姉妹の年齢要件(従前満一八歳)を、満一八歳に達する日以後の最初の三月三一日までとするものである。
二 施行期日(改正法附則第一条関係)
この改正は、平成八年四月一日から施行される。
第三 海外派遣者の特別加入制度の改善
一 改正の趣旨
日本国内から海外に派遣される労働者については、昭和五一年改正で導入された海外派遣特別加入制度により保護の対象とされているが、近年、急激に増加している現地法人の代表者等として派遣される者については、対象とはならないこととされている。
しかしながら、海外の中小事業の代表者等として派遣される者は、国内の中小企業事業主の場合と同様、事業主が労働者とともに、労働者が従事する作業と同様の作業に従事する場合が多く、労働者に準じて保護する必要性が高いと考えられる。
このため、国内の中小事業主については特別加入が認められていることとの均衡等を考慮して、派遣先の事業の代表者等として派遣される者についても特別加入の対象とすることとされたものである。
二 改正の内容(新法第二七条第七号関係)
派遣先の海外の事業が中小企業(使用する労働者数が常時三〇〇人(金融業、保険業、不動産業、小売業又はサービス業においては五〇人、卸売業については一〇〇人)以下であるもの。以下同じ。)に該当するときは、当該事業の代表者等であっても、実質的には労働者に準じて保護すべき状況にあることから、国内の中小企業事業主等と同様に特別加入の対象とするものである。
三 海外派遣者の特別加入制度の対象者の拡大に伴う留意点
今回の改正により新たに海外派遣者の特別加入制度の対象となる派遣先の海外の事業の代表者等の取扱いについては、基本的には昭和五二年三月三〇日付け労働省発労徴第二一号・基発第一九二号(以下「基本通達」という。)によることとなるが、当該対象者が従来の対象者と異なる性格を有する者であること等にかんがみ、留意すべき点は次のとおりである。
(一) 特別加入対象者
基本通達記の一〇の(一)に加え、派遣先の海外の事業が中小企業に該当する場合に限り、当該事業に従事する者であってその代表者(例えば、現地法人の社長)等一般的に労働者としての性格を有しないと考えられるもの(以下「海外派遣される事業主等」という。)についても、特別加入することができるものであること。
(二) 派遣先の事業の規模
特別加入の対象者が海外派遣される事業主等である場合には、派遣先の事業の規模について確認を行うことが必要となるが、この派遣先の事業の規模の判断については、海外の各国ごとに、かつ、企業を単位として判断することとし、その取扱いについては、国内における中小事業主等の特別加入の場合に準ずること。
また、派遣先の事業の規模の把握に当たっては、派遣元の事業主から派遣先の労働者に係る労働者名簿、派遣先の事業案内書等の資料の提出等を求めること。
(三) 特別加入対象者の具体的範囲及び海外で従事する業務の内容
イ 基本通達記の一〇の(三)により、海外派遣される事業主等についても、派遣元の事業主が申請書に添付して提出する名簿(申請書別紙)に登載されることによって、特別加入者となること。
ロ この場合、基本通達記の一〇の(四)にかかわらず、名簿の「海外で従事する業務の内容」欄には、派遣先の事業における地位、当該派遣先の事業の種類及び当該事業に係る労働者数も記載させること。
ハ 基本通達記の一〇の(四)なお書きにより、特別加入者の業務の内容に変更のあつた場合にも変更届が必要とされているが、海外の派遣先の事業に従事する労働者であって特別加入しているものが海外派遣される事業主等となり引き続き特別加入させようとする場合又はその逆の場合についても、これに該当するので、変更届(新告示様式第三四号の一二)を提出しなければならない。なお、この場合の取扱いについてもロに準ずること。
(四) 業務上外の認定基準等
海外派遣される事業主等として特別加入している者の災害の業務上外の認定については、基本通達記の一〇の(六)にかかわらず、国内における中小事業主等の特別加入の場合に準ずること。また、通勤災害の認定についても、国内における中小事業主等の特別加入の場合に準ずること。
(五) 保険給付
海外派遣される事業主等に係る保険給付の取扱いについては、基本通達記の一〇の(七)によることとするが、この場合、派遣先の事業の事業主の証明書を添付させる必要はないこと。
四 施行期日(改正法附則第一条関係)
この改正は、平成八年四月一日から施行される。