○労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律の施行(第二次分)等について(抄)
(昭和六二年三月三〇日)
(労働省発労徴第二三号・基発第一七四号)
(各都道府県労働基準局長、各都道府県知事あて労働大臣官房長、労働省労働基準局長通達)
労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律(昭和六一年法律第五九号)による労災保険制度の改善の大綱及び第一次施行部分の実施細目については、既に昭和六二年一月三〇日付け労働省発基第七号、昭和六二年一月三一日付け基発第四二号により通達されたところであるが、今般、同法の第二次施行分が昭和六二年四月一日(一部三月三一日)から施行され、これに伴い、労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(昭和六二年労働省令第一一号)及び労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示の一部を改正する告示(昭和六二年労働省告示第三二号)が、昭和六二年三月三〇日に公布され、同年四月一日(一部は三月三一日)から施行されることとなつた。
ついては、下記の事項に留意の上、事務処理に遺憾なきを期されたい。
(注) 法令の略称は次のとおりである。
改正法=労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律(昭和六一年法律第五九号)
新労災法=改正法第一条の規定による改正後の労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)
旧労災法=改正法第一条の規定による改正前の労働者災害補償保険法
労災法=労働者災害補償保険法
新徴収法=改正法第二条の規定による改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四四年法律第八四号)
旧徴収法=改正法第二条の規定による改正前の労働保険の保険料の徴収等に関する法律
徴収法=労働保険の保険料の徴収等に関する法律
改正省令=労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(昭和六二年労働省令第一一号)
新労災則=改正省令第一条の規定による改正後の労働者災害補償保険法施行規則(昭和三〇年労働省令第二二号)
旧労災則=改正省令第一条の規定による改正前の労働者災害補償保険法施行規則
労災則=労働者災害補償保険法施行規則
新特支則=改正省令第二条の規定による改正後の労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和四九年労働省令第三〇号)
旧特支則=改正省令第二条の規定による改正前の労働者災害補償保険特別支給金支給規則
特支則=労働者災害補償保険特別支給金支給規則
新徴収則=改正省令第三条の規定による改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和四七年労働省令第八号)
旧徴収則=改正省令第三条の規定による改正前の労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
徴収則=労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
新労基則=改正省令第四条の規定による改正後の労働基準法施行規則(昭和二二年厚生省令第二三号)
旧労基則=改正省令第四条の規定による改正前の労働基準法施行規則
労基則=労働基準法施行規則
改正告示=労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示の一部を改正する告示(昭和六二年労働省告示第三二号)
新告示=改正告示による改正後の労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示
旧告示=改正告示による改正前の労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示
目次
第一 通勤災害に関する改正
1 改正の趣旨及び内容
2 施行期日等
第二 休業補償給付等の改正
1 一部休業の場合の休業補償給付等に関する改正
(1) 改正の趣旨及び内容
(2) 施行期日等
2 収監中の者等に対する休業補償給付等に関する改正
(1) 改正の趣旨及び内容
(2) 施行期日等
第三 事業主の意見申出
1 制度の趣旨
2 制度の内容
(1) 意見書の提出による意見の申出
(2) 意見書の取扱い
3 施行期日
第四 削除
第五 特別加入制度に関する改正
1 改正の趣旨及び内容
(1) 趣旨
(2) 特定業務の範囲
(3) 健康診断書の提出
(4) 変更の届出の際の取扱い
(5) その他
2 施行期日等
第六 メリット制の改正
1 継続事業に係るメリット制の改正
(1) 事業の継続性に係る適用要件の改正
(2) 事業の規模に係る適用要件の改正
イ 継続事業関係
ロ 一括有期事業関係
(3) メリット収支率の算定期間の改正
(4) 施行期日
(5) 経過措置
2 有期事業に係るメリット制の改正
(1) 改正の趣旨及び内容
(2) 施行期日等
第七 その他の改正
1 保険関係成立届等に関する改正
2 概算・増加概算・確定保険料申告書に関する改正
3 休業補償の改訂方式の基準たる事業場の労働者数のは握方法の改正
記
第一 通勤災害に関する改正
1 改正の趣旨及び内容
通勤災害については、労災法第七条第一項第二号において「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」をいうものと定義されており、また、通勤については同条第二項及び第三項において定義をおいているが、今般、労働者が往復の経路を逸脱し、又は往復を中断した場合の取扱いについて改正を行つた(新労災法第七条第三項関係)。すなわち、逸脱又は中断があつた場合は、当該逸脱又は中断の間及びその後の往復が労災法第七条第一項第二号の通勤とされないことについては従前と同様であるが、当該逸脱又は中断が「日常生活上必要な行為であつて労働省令で定めるもの(新労災法第七条第三項)」(従前は、「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為(旧労災法第七条第三項)」)をやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き通勤として取り扱うこととされ、逸脱・中断に関し特例的に取り扱われる労働者の日常生活上必要な行為の内容については、日用品の購入に準ずるものに限定せず、その範囲を省令で規定することとしたものである。この新労災法第七条第三項に基づき「日常生活上必要な行為」として、次の行為が定められた(新労災則第八条関係)。
① 日用品の購入その他これに準ずる行為
③及び④に特記したものを除き、旧労災法第七条第三項の「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」の範囲と同じである。
② 職業能力開発促進法第一六条第四項に規定する公共職業訓練施設において行われる職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育、その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
イ 職業能力開発促進法第一六条第四項に規定する公共職業訓練施設としては、国、都道府県及び市町村並びに雇用促進事業団が設置する職業訓練校、職業訓練短期大学校、技能開発センター及び身体障害者職業訓練校並びに高等職業訓練校がある。
ロ 学校教育法第一条に規定する学校としては、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校等がある。
ハ 「これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するもの」としては、職業訓練大学校(職業能力開発促進法第二七条参照)における職業訓練及び専修学校(学校教育法第八二条の二ほか参照)における教育がこれに該当する。各種学校(学校教育法第八三条ほか参照)における教育については、修業期間が一年以上であつて、課程の内容が一般的に職業に必要な技術、例えば、工業、医療、栄養士、調理師、理容師、美容師、保母教員、商業経理、和洋裁等に必要な技術を教授するもの(茶道、華道等の課程又は自動車教習所若しくはいわゆる予備校の課程はこれに該当しないものとして取り扱う。)は、これに該当するものとして取り扱うこととする。なお、生涯能力開発給付金(雇用保険法施行規則第一二五条参照)の自己啓発助成給付金の対象として労働大臣により指定されているものについても、同様に取り扱うこととする。
③ 選挙権の行使その他これに準ずる行為
通勤の途上で選挙の投票に寄る行為については、従来は「日用品の購入に準ずる日常生活上必要な行為」として取り扱われてきているところであるが、今回の法改正を契機に①の「日用品の購入その他これに準ずる行為」とは別の日常生活上必要な行為として省令上位置付けたものである。具体的には、選挙権の行使のほか、最高裁判所裁判官の国民審査権の行使、住民の直接請求権の行使等がこれに該当する。
④ 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
通勤の途上で病院又は診療所で治療を受ける行為については、従前から「日用品の購入に準ずる日常生活上必要な行為」として取り扱われてきているところであるが、③と同様に、今回の法改正を契機に、①の「日用品の購入その他これに準ずる行為」とは別個の日常生活上必要な行為として省令上位置付けたものである。病院又は診療所において通常の医療を受ける行為に限らず、人工透析など比較的長時間を要する医療を受けることもこれに含まれる。また「これに準ずる行為」の例としては、施術所において、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等の施術を受ける行為がある。
2 施行期日等
この改正は、昭和六二年四月一日から施行され、同日以後に発生した事故に起因する労災法第七条第一項第二号の通勤災害に関する保険給付について適用することとされた(改正法附則第二条関係)。
第二 休業補償給付等の改正
1 一部休業の場合の休業補償給付等に関する改正
(1) 改正の趣旨及び内容
イ 従来、労働者が業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病による療養のため一日のうち一部分について休業し、一部分について就労した日(以下「一部休業日」という。)については、その日は、業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病による療養のため所定労働時間の全部について休業し賃金を受けなかつた日(以下「全部休業日」という。)と同様に休業補償給付又は休業給付として給付基礎日額の一〇〇分の六〇が支払われていたところである。このため、一部休業日については所定労働時間のうち実際に働いた部分に応ずる賃金の額を休業補償給付又は休業給付の額に加算した額が被災前の一日当たりの賃金を超える場合も生じていたことから、労働災害により失われた労働者の稼得能力の補てんという労災保険制度の本来の趣旨に照らし給付内容の適正化を図るため、一部休業日についての休業補償給付又は休業給付の額を、給付基礎日額から実際に労働した部分についての賃金額を差し引いた額の一〇〇分の六〇とすることとしたものである(新労災法第一四条第一項(新労災法第二二条の二第二項において準用する場合を含む。)関係)。
(参考)
一部休業日についての休業補償給付及び休業給付の額
=(給付基礎日額-一部休業日の労働に対し支払われる賃金の額)×(60/100)
また、休業補償給付及び休業給付の額をスライド制により改定すべき場合にあつては、一部休業日における労働に対し支払われる賃金の額を当該改定に用いるべきスライド率で割り戻した額(その額に一円未満の端数がある場合は、これを切り捨てる。)とした上で給付基礎日額から差し引くこととされた(新労災法第一四条第三項(新労災法第二二条の二第二項において準用する場合を含む。)関係)。
なお、一部休業日が休業補償給付又は休業給付等の対象となる「休業する日」に該当するかについては、従前の取扱い(昭和四〇年九月一五日付け基災発第一四号参照)のとおりである。
ロ 一部休業日についての特支則第三条の規定による休業特別支給金の額に関しても、イの休業補償給付及び休業給付に係る改正と同様の改正を行うこととし、給付基礎日額から実際に労働した部分に対する賃金額を差し引いた額の一〇〇分の二〇に相当する額を支給することとされた(新特支則第三条第一項関係)。
ハ 上記イ及びロの改正に伴い、休業補償給付等の請求又は支給の申請の手続に関し、休業の期間中に一部休業日が含まれる場合にあつては、請求書(申請書)に当該一部休業日の年月日及びその日の労働に対する賃金の額を記載し、被災労働者が特別加入者である場合を除いては、これらの事項について事業主の証明を受けなければならないこととされた(新労災則第一三条(新労災則第一八条の七において準用する場合を含む。)並びに新特支則第三条第五項及び第六項関係)。また、休業補償給付等の請求書(申請書)の様式についても、所要の改正を行つた(新告示様式第八号及び第一六号の六関係)。
なお、新告示様式による休業補償給付の請求書等の用紙については、当分の間、従来の用紙を補正して用いて差し支えなく、様式第八号及び様式第一六号の六に新たに加えられた(別紙二)については、本通達に別添一及び別添二として添付している様式第八号(別紙二)及び様式第一六号の六(別紙二)を複写して使用されたい。
(2) 施行期日等
この改正は、昭和六二年四月一日から施行され、新労災法第一四条(新労災法第二二条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定は、施行日以後に支給すべき事由が生じた労災法の規定による休業補償給付又は休業給付について、新特支則第三条第一項の規定は、施行日以後に支給すべき事由が生じた特支則の規定による休業特別支給金について、それぞれ適用することとされた(改正法附則第五条及び改正省令附則第三条第一項関係)。
2 収監中の者等に対する休業補償給付等に関する改正
(1) 改正の趣旨及び内容
イ 労働者が監獄等に拘禁・収容された場合には、仮に業務上の事由又は通勤による負傷・疾病の療養という事情がなかつたとしても、そもそも身体の自由を拘束されており、労働して賃金を取ることができない状態に置かれている。このような場合についても、休業補償給付又は休業給付を支給することは、労働者が業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病の療養のため労働不能である場合について給付を行う休業補償給付又は休業給付の制度本来の趣旨にそぐわないところである。このように、労働者本人の犯罪行為の帰結としての監獄への拘禁等の一種の「自招行為」の結果としての労働不能についてまで事業主の費用負担により給付を行うことは妥当ではなく、さらに、健康保険法、船員保険法等においては類似の場合に保険給付を支給しないこととする取扱いがなされていることをも考慮し、労働者が、①監獄、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合及び②少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合であつて、労働省令で定める場合には、休業補償給付又は休業給付を行わないこととしたものである(新労災法第一四条の二(新労災法第二二条の二第二項において準用する場合を含む。)関係)。
ロ 休業補償給付又は休業給付が行われない場合は、既決のケースに限定する趣旨で労働者が次のいずれかに該当する場合とすることとした(新労災則第一二条の五(新労災則第一八条の六の三において準用する場合を含む。)関係)。
① a懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行のため若しくは死刑の言渡しを受けて監獄に拘置されている場合、b労役場留置の言渡しを受けて労役場に留置されている場合又はc監置の裁判の執行のため監置場に留置されている場合
aは罪が確定し刑の執行等のため監獄に拘置されている場合であり、bは罰金又は科料の刑が確定し、これを完納することができず換刑処分として労役場に留置されている場合である。また、cは「法廷における秩序の維持等に関する法律」に違反した者が、制裁として監置に処せられ、監獄に附設される監置場に留置された場合である。
② d少年法第二四条の規定による保護処分として少年院若しくは教護院に送致され、収容されている場合又はe売春防止法の規定による補導処分として婦人補導院に収容されている場合
d、e共に、裁判所による処分を受けて一定の施設に収容されている場合である。dの「教護院」は不良行為をなし、又はなす虞のある児童を入院させて、これを教護することを目的とする施設である(児童福祉法第四四条参照)。eの「婦人補導院」は売春防止法第一七条の規定により補導処分に付された者を収容して、これを更生するために必要な補導を行う施設である(婦人補導院法第一条参照)。
ハ 休業補償給付又は休業給付の待期期間(三日間)の計算に当たつては、労働者がロの①又は②のいずれかに該当する場合、その日は待期期間に算入しない。
ニ 特支則の規定による休業特別支給金についても、休業補償給付及び休業給付に関する改正と同趣旨の改正を行うこととした。すなわち、労働者がロの①又は②のいずれかに該当する場合は、休業特別支給金は支給しないこととされた(新特支則第三条第二項関係)。
ホ 労働基準法の休業補償についても、休業補償給付及び休業給付に関する改正と同趣旨の改正を行うこととした。すなわち、労働者がロの①又は②のいずれかに該当する場合には、事業主は当該労働者に対し休業補償を行わなくてもよいものとされた(新労基則第三七条の二関係)。この結果、労働者がロの①又は②のいずれかに該当している日については、労災保険の休業補償給付が行われず、また、使用者はその日については個別事業主としての立場で休業補償を行う義務を免れることとなる。
なお、監獄又は留置場等に拘禁又は留置せられた場合における労働基準法の災害補償についての昭和二三年七月一三日付け基収第二三六九号通達は、上記により変更されたものとして取り扱われたい。
(2) 施行期日等
この改正は、昭和六二年四月一日から施行され、新労災法第一四条の二及び新労災則第一二条の五の規定は、施行日以後に新労災法第一四条の二各号のいずれかに該当する労働者について適用することとされ、新特支則第三条第二項の規定及び新労基則第三七条の二の規定の適用についても同様とされた(改正法附則第六条並びに改正省令附則第三条第二項及び第五条関係)。従つて、例えば、施行日前から引き続き懲役の刑の執行のため監獄に拘置されている労働者の場合、施行日前の日についての休業補償給付等は支給されるが、施行日以後の日については支給されないこととなる。
第三 事業主の意見申出制度の新設
1 制度の趣旨
事業主は労働安全衛生法等の規定に基づき労働者の健康管理に責任を有する立場にあり、労災事故の一方の当時者でもあることから労働者災害補償保険審議会の建議(昭和六〇年一二月一九日)において、「保険給付請求事案に関する支給決定に当たり、労災事故の一方の当事者である事業主にも行政庁に対し意見の申出ができるようにする」べきであることが指摘された。
この建議を受けて、事業主は当該事業主の事業に係る業務災害又は通勤災害に関する保険給付の請求について所轄労働基準監督署長(以下「所轄署長」という。)に対し文書で意見を申し出ることができるものとした(新労災則第二三条の二関係)。
この事業主の意見申出制度は、保険給付請求事案に関する処分が行われた後の不服申立制度ではなく、当該処分を行う際に保険給付請求事案に関する参考となるような客観的事実等を内容とする意見の申出があつた場合に、これを参考資料として活用することとしたものである。
2 制度の内容
(1) 意見書の提出による意見の申出
事業主は、当該事業主の事業に使用される労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病、障害又は死亡に関する保険給付の請求について、所轄署長に意見を申し出ることができるものとした(新労災則第二三条の二第一項)。
この意見の申出は書面をもつて行い、当該書面(以下「意見書」という。)には事業主の意見のほか①当該事業の労働保険番号、②事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地、③業務災害又は通勤災害を被つた労働者の氏名及び生年月日、④当該労働者の負傷若しくは発病又は死亡の年月日、を記載するものとされた(新労災則第二三条の二第二項)。意見書の様式については定められておらず、上記の事項の記載があれば足り、その書式は任意である。
事業主の意見の申出は、当該事業主の事業の労働者に係る業務災害又は通勤災害に関する保険給付の請求について行うことができる。また、申出の時期については請求書の提出から何日以内といつた期限は付さないが、制度の趣旨から、当該保険給付に関する支給又は不支給の決定(以下単に「決定」という。)がなされる前に行われることが必要である。
(2) 意見書の取扱い
事業主から意見書が提出された場合は、(1)の①から④までに掲げる事項が記載されていることを確認した上でこれを受理し、業務上外の認定等を的確に行うために参考となり得る客観的事実等が記載されている場合は、これを保険給付に関する決定に当たつての参考資料とする。事業主から意見の申出があつた場合においても、保険給付に関する決定は所轄署長が主体的に行うものであることには何ら変わりはない。
事業主から意見書が提出された場合に、保険給付の請求者に対しその内容等を通知する必要はなく、また、保険給付の請求者が意見書の内容の開示を求めた場合でも、その内容を開示する必要はない。しかしながら、意見書については、その内容の真偽、適否を調査、確認する必要があることから、特に必要があると認めるときは、その内容に関し被災労働者その他関係者から事情を聴取する等必要な調査を行うものとする。
なお、事業主の意見申出制度の運用に当たつては、保険給付に関する決定がいたずらに遅延することのないよう配意されたい。
また、事業主から意見の申出のあつた保険給付の請求について決定を行つた後、意見書を提出した事業主から照会があつた場合には、当該決定の結果について説明を行うものとする。
3 施行期日
以上の改正は、昭和六二年四月一日から施行されることとされた。したがつて、同日以後所轄署長に対し新たに請求のあつた事案のみならず、既に請求のあつた事案であつて同日において決定が行われていないものについても、事業主は新労災則第二三条の二の規定に基づき意見を申し出ることができることとなる。
第四 削除
第五 特別加入制度に関する改正
1 改正の趣旨及び内容
(1) 趣旨
任意加入方式をとつている特別加入制度における給付の適正化を図るため、労働者災害補償保険審議会の建議において「任意加入方式をとつている特別加入制度については、給付の適正化を図るため、一般労働者に課されている雇入れ時の健康診断にならつて、加入時に健康診断書の提出を義務付ける」ことより特別加入制度の合理化を図るべきことが指摘されている。
この建議を受けて、労災法第二七条第一号及び第二号に掲げる者(以下「中小事業主等」という。)並びに同条第三号から第五号までに掲げる者(以下「一人親方等」という。)については、特別加入の申請を行う場合において、これらの者が特別加入者として行う業務又は作業が、一定の業務(新労災則第四六条の一九第三項の「特定業務」)に該当し、これらの者の業務歴に照らし特に必要があると認めるときは、健康診断書を提出させることとしたものである。
(2) 特定業務の範囲
特別加入者の従事する業務が、
① じん肺法第二条第一項第三号の粉じん作業を行う業務(以下「粉じん業務」という。)
② 労基則別表第一の二第三号三の身体に振動を与える業務(以下「振動業務」という。)
③ 労働安全衛生法施行令別表第四の鉛業務(以下「鉛業務」という。)
④ 有機溶剤中毒予防規則第一条第一項第六号の有機溶剤業務(以下「有機溶剤業務」という。)のいずれかに該当する業務(以下「特定業務」という。)であるときには、特別加入の申請書(労災則第四六条の一九第一項又は第四六条の二三第一項)にその者の業務歴を記載しなければならないこととした(新労災則第四六条の一九第三項(新労災則第四六条の二三第四項において準用する場合を含む。)関係)。
(3) 健康診断書の提出
中小事業主等又は一人親方等に係る特別加入の申請を受けた所轄局長は、申請に係る中小事業主等又は一人親方等が特別加入者として従事する業務又は作業が特定業務である場合であつて、その者の業務歴を考慮し特に必要があると認めるときは、特別加入の申請をした事業主又は団体から、申請に係る中小事業主等又は一人親方等についての所轄局長の指定する病院又は診療所の医師による健康診断の結果を証明する書類その他必要な書類を所轄署長を経由して提出させることとした(新労災則第四六条の一九第四項(新労災則第四六条の二三第四項において準用する場合を含む。)関係)。
(4) 変更の届出の際の取扱い
特別加入の承認を受けた事業主又は団体が、中小事業主等又は一人親方等に新たに該当するに至つた旨の届出を行う場合についても、(2)及び(3)と同様に取り扱うこととした。すなわち、新たに特別加入者に該当するに至つた者が特別加入者として従事する業務又は作業が特定業務であるときは、当該届出を行う事業主又は団体は変更届(新労災則第四六条の一九第六項(新労災則第四六条の二三第四項において準用する場合を含む。)参照)にその旨のほかその者の業務歴を記載しなければならないものとされ(新労災則第四六条の一九第七項及び第四六条の二三第五項において準用する新労災則第四六条の一九第三項関係)、変更届を受けた所轄局長は、中小事業主等又は一人親方等に新たに該当するに至つた者が生じた旨の届出に係る者が特別加入者として従事する業務又作業が特定業務である場合であつて、その者の業務歴を考慮し特に必要があると認めるときは、当該事業主又は団体からその者についての所轄局長の指定する病院又は診療所の医師による健康診断の結果を証明する書類その他必要な書類を所轄署長を経由して提出させることとした(新労災則第四六条の一九第八項及び第四六条の二三第六項において準用する新労災則第四六条の一九第四項関係)。
(5) その他
以上の改正に伴い、「特別加入申請書(中小事業主等)」、「特別加入に関する変更届(中小事業主等及び一人親方等)」及び「特別加入申請書(一人親方等)」について所要の改正を行つた(新告示様式第三四号の七、様式第三四号の八及び様式第三四号の一〇関係)。
なお、以上の改正の細目については、別途通達する。
2 施行期日等
この改正は、昭和六二年四月一日から施行され、(2)及び(3)の内容については同日以後に新労災則第四六条の一九第一項又は第四六条の二三第一項の規定により特別加入の申請を行う事業主又は団体について適用することとされた。また、(4)の内容については、労災法第二八条第一項又は第二九条第一項の規定により特別加入の承認を受けた事業主又は団体が、昭和六二年四月一日以後に新労災則第四六条の一九第六項(新労災則第四六条の二三第四項において準用する場合を含む。)の規定により中小事業主等又は一人親方等に新たに該当するに至つた者が生じた旨の届出を行う場合について適用することとされた(改正省令附則第二条関係)。
第六 メリット制の改正
1 継続事業に係るメリット制の改正
(1) 事業の継続性に係る適用要件の改正
メリット制の適用要件のうち事業の継続性に係るものは、従来はメリット制によって労災保険率が増減される保険年度の直前の保険年度に属する一二月三一日現在において、保険関係の成立後三年以上を経過していることとされていたが、今回、メリット制に係る収支率(以下「メリット収支率」という。)の算定期間を連続する三保険年度の間とすること(後述(3)参照)に対応して、メリット制によつて労災保険率が増減される保険年度の前々保険年度に属する三月三一日現在において、保険関係の成立後三年以上を経過していることとすることとされた(新徴収法第一二条第三項関係)。
(2) 事業の規模に係る適用要件の改正
イ 継続事業関係
① 労働者数一〇〇人未満の継続事業に係るメリット制の適用要件のうち事業の規模に係るものは、従来は労働者数三〇人以上一〇〇人未満であつて、災害度係数(労働者数×業務災害に係る労災保険率)が〇・五以上であること(旧徴収法第一二条第三項及び旧徴収則第一七条第二項参照)とされていたが、個々の事業主の間における保険料負担の一層の公平化を図るとともに、中小規模の事業における労働災害防止努力の一層の喚起を図るため、有期事業(徴収法第七条の規定により一括される有期事業(以下「一括有期事業」という。)を除く。)に係るメリット制の適用要件のうち事業の規模に係るものと均衡をも考慮し、労働者数二〇人以上一〇〇人未満の事業場とした。また、災害度係数についても、メリット収支率に応じた労災保険率の増減の割合が拡大されてきていること及びメリット制適用事業場における災害発生率は低くなつており中小事業についてもメリット制の効果が期待できること等を考慮し、〇・四以上とすることとされた(新徴収法第一二条第三項第二号及び新徴収則第一七条第二項関係)。
② 継続事業のメリット制の適用要件のうち事業の規模に係るもの(「一〇〇人以上の労働者を使用すること」又は「二〇人以上一〇〇人未満の労働者を使用すること」)についての判断に当たつての事業の労働者数のは握方法については、従来は、一般の事業(船きよ、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業(以下「船きよ等における貨物の取扱いの事業」という。)以外の事業をいう。)については、当該保険年度の直前の保険年度に属する三月中に使用した延労働者数を同月中の所定労働日数で除して得た労働者数をもつて当該事業の労働者数としていたところである。しかしながら、労働者数のは握期間を特定の月とすることは季節変動による影響を免れない場合がある。
この季節変動による影響を除去するため、このは握期間を保険年度に改めることとし、当該保険年度中の各月の末日(賃金締切日がある場合には、各月の末日の直前の賃金締切日)における使用労働者数の合計数を一二で除して得た労働者数をもつて当該事業の労働者数とすることとした。
また、船きよ等における貨物の取扱いの事業に係る労働者数は、従来は当該保険年度の直前の保険年度に使用した延労働者数を直前の保険年度における所定労働日数で除して得た労働者数としてきたところ、当該保険年度に使用した延労働者数を当該保険年度における所定労働日数で除して得た労働者数とすることとされた(新徴収則第一七条第一項関係)。
ロ 一括有期事業関係
一括有期事業に係るメリット制の適用要件のうち事業の規模に係るものについては、昭和四〇年に一括有期事業についてメリット制が適用されることとなつた際、当時の有期事業に係るメリット制の適用要件(昭和三〇年に設定)と同様に確定保険料額が二〇万円以上の事業であることと定められた。しかし、その後の賃金及び諸物価の上昇により、一括有期事業に係るメリット制が当時と比べ小規模な事業にまで適用されることとなつているため、事業の規模に係る要件に賃金及び諸物価の上昇の要素を加味する必要が生じて来たところである。
このため、有期事業に係るメリット制の適用要件(確定保険料額が一〇〇万円以上であること。徴収則第三五条第一項参照)及び有期事業の一括の要件(概算保険料額が一〇〇万円未満であること。徴収則第六条第一項参照)等をも勘案して、一括有期事業に係るメリット制の適用要件のうち事業の規模に係るものを確定保険料額が一〇〇万円以上であることとすることとした(新徴収則第一七条第三項関係)。
(3) メリット収支率の算定期間等の改正
継続事業(一括有期事業を含む。)のメリット収支率の算定に当たつては、従来はメリット制によつて労災保険率が増減される保険年度の直前の保険年度に属する一二月三一日を基準日とし、同日以前三年間をメリット収支率の算定期間としていたが、メリット収支率の算定期間が四保険年度に亘るため、この期間に応ずる保険料の額の計算が繁雑であり(旧徴収則第一九条参照)、算定期間中の最後の九カ月分の保険料額については概算保険料額を使用せざるを得ず、また、メリット収支率算定の基準日からメリット料率が適用される保険年度の初日までの期間が短かく、メリット料率の決定、通知等に関し、事業場サービスに欠ける面もみられた。このため、メリット収支率の算定についてはメリット制によつて労災保率が増減される保険年度の前々保険年度に属する三月三一日を基準日とし、同日以前三年間に改めることとした。
また、メリット収支率算定式の分母たる保険料の額に乗ずることとされている調整率については、有期事業に係るメリット制に限つて用いられる第二種調整率の新設(後述)に伴い、その名称を第一種調整率とすることとした(新徴収則第一二条第三項及び新徴収則第一九条の二関係)。
(4) 施行期日
以上の改正は、昭和六二年三月三一日から施行することとされた(ただし、従前の調整率の名称を第一種調整率に改める部分については、同年四月一日から施行される。)。
(5) 経過措置
イ 昭和六一年一二月三一日以前に旧徴収法第一二条第三項に規定するメリット制の適用要件に該当した事業の昭和六二年度以前の保険年度に係る労災保険率については、従前の例によるものとされた(改正法附則第九条第一項関係)。従つて、新徴収法第一二条第三項の規定は、昭和六三年度以後の保険年度に係る労災保険率について適用されるものである。
ロ 昭和六三年度から昭和六五年度までの各保険年度に係る労災保険率についての新徴収法第一二条第三項に規定する継続事業に係るメリット制の適用要件のうち事業の規模に関するものについては、経過的に次によることとする(改正法附則第九条第二項及び改正省令附則第四条第二項関係)。
① 昭和六三年度に係る労災保険率に関しては、昭和五九年度から昭和六一年度までの各保険年度において旧徴収法第一二条第三項に規定する事業の規模に関する要件(以下「旧要件」という。)に該当する事業について、メリット制を適用する。
なお、労働者数のは握については、昭和五九年度及び昭和六〇年度の各保険年度については、当該保険年度に属する三月中に使用した延労働者数を同月中の所定労働日数で除して得た労働者数によるものとし、昭和六一年度においては、新領収則第一七条第一項の規定の例により算定した当該保険年度中の平均使用労働者数によるものである。
② 昭和六四年度に係る労災保険料に関しては、昭和六〇年度及び昭和六一年度において、旧要件に該当し、かつ、昭和六二年度において、新徴収法第一二条第三項に規定する事業の規模の要件(以下「新要件」という。)に該当する事業についてメリット制を適用する。
なお、労働者数のは握については、昭和六〇年度においては、当該保険年度に属する三月中に使用した延労働者数を同月中の所定労働日数で除して得た労働者数によるものとし、昭和六一年度及び昭和六二年度においては、新徴収法第一七条第一項の規定の例により算定した当該保険年度中の平均使用労働者数によるものである。
③ 昭和六五年度に係る労災保険率に関しては、昭和六一年度において旧要件に該当し、かつ、昭和六二年度及び昭和六三年度において新要件に該当する事業についてメリット制を適用する。
なお、労働者数のは握は、昭和六一年度から昭和六三年度までの各保険年度において新徴収則第一七条第一項の規定の例により算定した当該保険年度中の平均使用労働者数によるものである。
2 有期事業に係るメリット制の改正
(1) 改正の趣旨及び内容
従来、有期事業のメリット収支率の算定に当たり用いる調整率については、継続事業のメリット収支率の算定に当たり用いる調整率と同一のものを用いてきていた。有期事業のメリット制においては、事業が終了した日から九箇月を経過した日においてメリット収支率を算定する場合、同日後に支給事由の生じた保険給付等の額が計算式から除外されているため、メリット収支率が見かけ上低く算定されることとなり、当該事業に係る保険給付等の全てがメリット収支率の算定に当たり考慮される継続事業のメリット制と比較した場合、制度上の不均衡が生じていたところである。
このため、このような不均衡を是正し、事業主間の費用負担の一層の公平を図るため、事業が終了した日から九箇月を経過した日におけるメリット収支率の算定に当たつては、従来の調整率の決定に当たり考慮すべき事情である業務災害に関する年金たる保険給付に要する費用及び特定疾病にかかつた者に係る保険給付に要する費用に加えて「有期事業に係る業務災害に関する保険給付で当該事業が終了した日から九箇月を経過した日以後におけるものに用する費用」を考慮した有期事業のメリット制に固有のもの(第二種調整率)に改めるとともに、従来の調整率には「第一種調整率」という名称を冠し、両者の区別を明らかにすることとした(新徴収法第二〇条第一項関係。なお、新徴収法第一二条第三項参照)。
第二種調整率の具体的数値については、省令で定めることとされており、建設の事業については〇・五九、立木の伐採の事業については〇・四九と定められた(新徴収則第三五条の二関係)。
(2) 施行期日等
この改正は、昭和六一年四月一日から施行することとされ、同日前に保険関係が成立した有期事業に係るメリット制の適用については、旧徴収法第二〇条第一項の規定の例によるものとされた(改正法附則第一〇条関係)。従つて、新徴収法第二〇条第一項の規定によるメリット制の適用を受ける事業は、昭和六二年四月一日以後に保険関係が成立した事業であつて、同項の要件に該当するものに限られる。
第七 その他の改正
1 保険関係成立届等に関する改正
保険関係の成立に関する届出については、従来は省令(旧徴収則第六八条参照)で提出が義務付けられていたが、今回、法律で提出を義務付けることとし(新徴収法第四条の二第一項関係)、その細目、提出の手続、様式等に関し規定を設けた(新徴収則第四条関係)。また、変更事項に関する届出についても同趣旨の改正を行つた(新徴収法第四条の二第二項及び新徴収則第五条関係)。なお、保険関係成立届(新徴収則様式第一号)及び名称、所在地等変更届(新徴収則様式第二号)については、それぞれ旧徴収則様式第二一号及び第二二号と同一であり、これらの届の提出先及び提出期限についても従前と同じである。
2 概算・増加概算・確定保険料申告書に関する改正
概算・増加概算・確定保険料申告書中の「(11)常時使用労働者数」欄の記載方法について所要の改正を行つた(新徴収則様式第六号関係)。
3 休業補償の改訂方式の基準たる事業場の労働者数のは握方法の改正
四月一日から翌年三月三一日までの間において労働基準法第七六条第二項の常時一〇〇人未満の労働者を使用する事業場は、従来は、一般の事業の事業場にあつては、直前の三月中の延使用労働者数を同月中の所定労働日数で除した労働者数が一〇〇人未満であるものとされてきたが、直前一年間の延使用労働者数を当該年の間の所定労働日数で除した労働者数が一〇〇人未満であるものに改めることとした(新労基則第三八条の二関係)。船きよ等における貨物の取扱いの事業の事業場については、従来より直前一年間の延使用労働者数を当該年の間の所定労働日数で除した労働者数が一〇〇人未満であるものとされてきており、今回も特段の変更は行われていない。
この改正は昭和六二年四月一日から施行される。なお、同日前の期間についての休業補償の額の改訂に係る事業場の規模に関しては、旧労基則第三八条の二の規定の例によることとされた(改正省令附則第五条第二項関係)。
(別添1)
(別添2)
(別添3)
(別添4)
