添付一覧
○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行(第四次分)等について
(昭和五二年三月三〇日)
(労働省発労徴第二一号・基発第一九二号)
(各都道府県労働基準局長あて労働大臣官房長労働基準局長通達)
労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(昭和五一年法律第三二号)の一部が昭和五二年四月一日から施行され、これに伴い、労働者災害補償保険法施行令(昭和五二年政令第三三号)、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う労働省令の整備に関する省令(昭和五二年労働省令第六号)、労働者災害補償保険特別支給金支給規則の一部を改正する省令(昭和五二年労働省令第七号)、労働者災害補償保険法施行規則第一条第一項の規定に基づき労働大臣が定める事務を定める告示の一部を改正する告示(昭和五二年労働省告示第二三号)、労働者災害補償保険法施行規則第一二条の四第二項及び第一八条の六の二第二項において準用する労働基準法施行規則第三八条の一〇の規定に基づき休業補償給付及び休業給付の額の改定に関する特則を定める告示(昭和五二年労働省告示第二四号)、労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示の一部を改正する告示(昭和五二年労働省告示第二六号)及び失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第一九条第二項の規定に基づき同項の労働大臣の定める率を定める告示の一部を改正する告示(昭和五二年労働省告示第二五号)が制定され、同日から施行されることとなった。今回施行される部分は労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律による労働者災害補償保険制度の改善の中心部分をなすものであり、また、制度改善の一環をなす特別支給金制度の大幅な改正を行うものでもあるので、下記の事項に留意の上、事務処理に遺憾なきを期されたい。
なお、施行に伴い、関係通達についても所要の改正が行われたので留意されたい。
記
目次
一 給付基礎日額の特例
二 内払処理の範囲の拡大
三 傷病補償年金及び傷病年金
四 労災保険の年金と他の社会保険給付との調整方式の改正
五 休業補償給付又は休業給付と厚生年金等との調整
六 年金等のスライド制の改正
七 休業スライド制の改正
八 一部負担金徴収事務の簡素化
九 特別加入者の通勤災害保護制度の新設
一〇 海外派遣者特別加入制度の創設
一一 特別加入者の給付基礎日額の改正
一二 特別支給金制度の改正
一三 メリット制の改正
一四 葬祭料及び葬祭給付の額の引上げ
一五 その他
(注) 法令の略称は、次のとおりである。
改正法=労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(昭和五一年法律第三二号)
新法=改正法第一条の規定による改正後の労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)
昭和四〇年改正法=改正法第二条の規定による改正後の労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和四〇年法律第一三〇号)
昭和四八年改正法=改正法附則第二五条の規定による改正後の労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和四八年法律第八五号)
昭和四九年改正法=改正法附則第二八条の規定による改正後の労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(昭和四九年法律第一一五号)
新徴収法=改正法第三条の規定による改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四四年法律第八四号)
新令=労働者災害補償保険法施行令(昭和五二年政令第三三号)
整備省令=労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令(昭和五二年労働省令第六号)
新労災則=整備省令第一条の規定による改正後の労働者災害補償保険法施行規則(昭和三〇年労働省令第二二号)
昭和四一年改正省令=整備省令第三条の規定による改正後の労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令(昭和四一年労働省令第二号)
新徴収則=整備省令第六条の規定による改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和四七年労働省令第八号)
特別支給金規則改正省令=労働者災害補償保険特別支給金支給規則の一部を改正する省令(昭和五二年労働省令第七号)
新特別支給金規則=特別支給金規則改正省令による改正後の労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和四九年労働省令第三〇号)
告示=改正後の労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示(昭和三五年労働省告示第一〇号)
事務指定告示=改正後の労働者災害補償保険法施行規則第一条第一項の規定に基づき労働大臣が定める事務を定める告示(昭和四五年労働省告示第六〇号)
一 給付基礎日額の特例(新法第八条第二項関係)
(一) 従来、平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが「著しく不適当である場合」には、労働省令で定めるところにより政府が算定する額を給付基礎日額とするものとされていたが、今回の法改正により平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが「適当でないと認められる」ときは、労働省令で定めるところにより政府が算定する額を給付基礎日額とすることができることとなり、平均賃金相当額を給付基礎日額とする原則に対する特例措置を講ずる範囲を拡大することとした(新法第八条第二項関係)。
これに伴い、労働省令においては、
イ 従来の特例措置(①平均賃金相当額が一、八〇〇円に満たない場合には、一、八〇〇円を給付基礎日額とする、②じん肺患者については、平均賃金相当額が、じん肺にかかったため粉じん作業以外の作業に常時従事することとなった日を算定事由発生日とみなして算定した平均賃金相当額を下回る場合には、後者の額を給付基礎日額とする。)に加えて、平均賃金の算定基礎期間(労働基準法第一二条第一項及び第二項の期間。原則として災害発生前三箇月間)中に通勤災害その他の業務外の事由による傷病(「私傷病」)の療養のために休業した期間がある場合に、平均賃金相当額が、その休業した期間及びその期間中に受けた賃金の額を平均賃金の算定基礎期間及びその期間中の賃金の額から控除して算定した平均賃金相当額に満たない場合には、後者の額を給付基礎日額とするという内容の特例措置を新たに定め、健常時の賃金水準により給付基礎日額を算定することができることとした(新労災則第九条第二号関係)。
(参考)
一月一二万円の賃金を受けている労働者が、平均賃金算定基礎期間中に交通事故による傷病の療養のため一〇日間会社を欠勤し、その間の賃金(四万円)を受けなかった場合
従来の計算方法では
改正後の計算方法では
ロ これらの労働省令で定めるもののほか、労働省労働基準局長の定める基準により講じる特例措置の範囲が、法律の表現と同様に、「平均賃金相当額によることが適当でないと認められるとき」と改められたことにより、拡大された(新労災則第九条第四号関係)。
(二) 上記(一)イの特例措置について
イ 平均賃金の算定基礎期間中の賃金から控除する賃金の額は、いわゆる月給制の賃金を受ける労働者については、当該賃金の額をその私傷病の療養のために休業した期間を含む月の暦日数で除して得た額に当該私傷病の療養のため休業した期間の日数を乗じて得た額(平均賃金の算定基礎期間中の複数の月に私傷病の療養のため休業した日が含まれているときは、各月ごとに以上により算定した額の合計額)とする。
(参考)
上記(一)の(参考)例で、月給制の賃金を受けている労働者が、八月三〇日に業務災害を被った場合、平均賃金の算定基礎から控除する賃金額
① 当該労働者の私傷病による休業期間が、六月一〇日から六月一九日までの場合
② また、私傷病による休業期間が六月二七日から七月六日までの二月にまたがる場合
ロ 平均賃金算定基礎期間中に私傷病の療養のため休業した期間の日数及びその期間中の賃金の額については、休業補償給付請求書等の各種保険給付の請求書の様式改正を行ったので、これら請求書記載の事業主の証明事項により確認すること。事業場の閉鎖等の理由により事業主の証明が得られない場合には、適宜の方法によりその確認を図ること。
ハ 日雇労働者については、その平均賃金の算定方法からみて、上記の新特例措置の適用の余地はない。
(三) 上記(一)ロの特例措置についての留意事項
平均賃金の算定基礎期間中に、親族の疾病又は負傷等の看護のため休業した期間については、(一)ロの場合に該当するものとして、上記(一)イの場合に準じて取り扱うこと。
なお、これらに準ずべき事由が生じた場合には、本省にりん伺されたい。
(四) 経過措置
給付基礎日額の算定に関する以上の特例措置は、改正法の施行の日(昭和五二年四月一日。以下「施行日」という。)以後に発生した災害(疾病については、施行日以後に診断によってその発生が確定したことをいう。)に関してのみ適用される(整備省令第二条第一項)。
二 内払処理の範囲の拡大(新法第一二条、新特別支給金規則第一四条関係)
(一) 保険給付に関する内払処理の範囲の拡大
次の表の左欄に掲げる給付を受ける権利が消滅し、同時に次の表の右欄に掲げる給付を受けることができることとなった場合に、従来支給されていた給付が引き続いて行われたときは、その給付は、新たに支給されることとなった給付の内払とみなして処理することができることになった。
これにより、かかる場合に従来行っていた過払額の徴収に伴う受給者及び行政庁の事務手続が簡素化されることとなった(新法第一二条第二項及び第三項)。
支給を受ける権利を失った給付 |
新たに支給されることになった給付 |
障害補償年金 |
傷病補償年金、障害補償一時金、休業補償給付 |
傷病補償年金 |
障害補償給付、休業補償給付 |
休業補償給付 |
傷病補償年金、障害補償給付 |
障害年金 |
傷病年金、障害一時金、休業給付 |
傷病年金 |
障害給付、休業給付 |
休業給付 |
傷病年金、障害給付 |
(参考) 新たに内払処理を行う事例を例示すれば次のとおりである。
(二) 特別支給金に関する内払処理規定の新設
特別支給金についても、施行日から次のような内払処理を行うことができることとなった(新特別支給金規則第一四条)。
なお、傷病補償年金又は傷病年金の受給権者に支給される特別支給金規則改正省令附則第六条の規定による差額支給金(以下「傷病差額特別支給金」という。)は、以下の取扱いについては傷病特別年金とみなされる(特別支給金規則改正省令附則第六条第三項)。
イ 年金たる特別支給金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金たる特別支給金が支払われたときは、その支払われた年金たる特別支給金は、その後に支払うべき年金たる特別支給金の内払とみなして取り扱う(新特別支給金規則第一四条第一項)。
ロ 年金たる特別支給金の額を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その後も減額しない額の年金たる特別支給金が支払われた場合のその減額すべき部分についても、その後に支払うべき年金たる特別支給金の内払とみなして取り扱う(新特別支給金規則第一四条第一項)。
ハ また、次の表の左欄に掲げる特別支給金が支給されなくなり、同表の右欄に掲げる特別支給金が支給されることとなった場合に、従来支給されていた特別支給金が引き続き支給されたときも(一)の保険給付の場合と同様に取り扱うことができることとした(新特別支給金規則第一四条第二項、第三項及び第四項)。
支給されなくなった特別支給金 |
新たに支給されることになった特別支給金 |
障害特別年金 |
傷病特別年金(傷病差額特別支給金)、休業特別支給金、障害特別一時金 |
傷病特別年金(傷病差額特別支給金) |
休業特別支給金、障害特別支給金、障害特別年金、障害特別一時金 |
休業特別支給金 |
傷病特別年金(傷病差額特別支給金)、障害特別支給金、障害特別年金、障害特別一時金 |
(三) 内払処理に伴う決算上の処理
内払処理を行う場合の決算上の処理については、内払とみなす前のものをその後において修正する必要はない。
(四) 休業補償給付又は休業給付と年金たる保険給付との間における内払処理に関する留意事項
休業補償給付又は休業給付を受けていた労働者が年金たる保険給付の受給権を取得した場合に、休業補償給付、休業給付又は休業特別支給金の過払分があるときは、年金基本報告書により、本省あて報告すること。
この場合、その過払となった休業補償給付等の内払処理が完了する前に、当該労働者が年金たる保険給付の受給権を失ったときは、残余の額については本省において債権管理する。
また、逆に、年金たる保険給付の受給権を有する労働者が、その受給権を失った場合に、年金の過払分があるときは、本省から所轄都道府県労働基準局に連絡する。連絡を受けた基準局では、当該労働者から休業補償給付若しくは休業給付又は休業特別支給金の支給の請求又は申請があった場合に、過払の年金たる保険給付又は年金たる特別支給金との間で内払処理を行うこと。
この場合、その過払となった年金の内払処理が完了する前に、当該労働者が休業補償給付又は休業給付を受けることができなくなった場合には、その残余については、当該各基準局において債権管理をすること。
なお、前記の事務については、国の債権の管理等に関する法律の規定に依拠して処理すべきものであることは当然である。
(五) 経過措置
施行日前の期間分の保険給付又は特別支給金が過払となり、同日までに回収されていない場合に、前記(一)又は(二)イ若しくはロの要件に該当するものと認められるときも、前記による内払処理を行うこととして差し支えない。
したがって、長期傷病補償給付又は長期傷病給付の受給権者であった者が、例えば、施行日前にその傷病が治ゆし、障害補償給付又は障害給付を受けることとなった場合に治ゆ後も長期傷病補償給付又は長期傷病給付たる年金及び長期傷病特別支給金が支払われ、かつ、施行日までにその過払分が回収されていないときも、その過払分の長期傷病補償給付又は長期傷病給付たる年金については施行日以後に支払われる障害補償給付又は障害給付(施行日前の期間に係るものを含む。)との間で、その過払分の長期傷病特別支給金については施行日以後に支払われる障害特別年金、障害特別一時金又は障害特別支給金との間で、それぞれ内払処理を行うこととして差し支えない。
三 傷病補償年金及び傷病年金(新法第一二条の八、第一八条、第一八条の二、第一九条、第二一条、第二二条の六関係)
業務上の事由又は通勤による傷病により長期の療養を要することとなった労働者については、従来、療養開始後三年を経過した日以後において政府が必要と認めたときから、療養補償給付又は療養給付と休業補償給付又は休業給付とに代えて長期傷病補償給付又は長期傷病給付を行うこととしていた。しかしながら、長期療養者の症状は各療養者ごとに極めて区区であるにもかかわらず、これらの労働者に支給する長期傷病補償給付(長期傷病給付)の年金の額が一律とされていることは、後遺障害により労働不能となった者に対し支給される障害補償年金(障害年金)の額が、その障害の程度に応じて定められているのに比して、不均衡である。また、従来の長期療養者の実情からみると、療養開始後一年六箇月を経過しても治らない者は、その後引き続き長期にわたり療養を要することとなるのが通例であり、年金たる保険給付を行うべきか否かの判定について療養開始後三年の経過をまつまでもない。更には、厚生年金保険制度においても、第七七回国会における法改正により、療養開始後一年六箇月を経過した後は、その傷病の治ゆの有無にかかわらず、その障害について障害年金が支給されるように改められた。
これらの事情を考慮して、今回の法改正においては、従来の長期傷病補償給付及び長期傷病給付が廃止され、長期傷病補償給付たる年金に代えて傷病補償年金が、長期傷病給付たる年金に代えて傷病年金が新たに設けられ、また、傷病補償年金又は傷病年金の受給権者には、療養補償給付又は療養給付が継続して行われることになった。
このように、本制度は、長期療養者の症状に応じた適切な給付を行うために新設されたものである。
(一) 傷病補償年金の支給要件
傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が療養の開始後一年六箇月を経過した日又はその日後において、次の要件に該当する場合に、その要件に該当するに至った月の翌月からその要件に該当する状態が継続している間、支給される(新法第一二条の八第三項)。
① その負傷又は疾病が治っていないこと。
② その負傷又は疾病による廃疾の程度が労働省令で定める廃疾等級に該当すること。
なお、療養開始後一年六箇月を経過した日とは、療養の開始の日の属する月の翌月から起算して一八箇月目の月において当該療養の開始の日に応当する日をいう。
例えば、昭和五二年三月五日に療養を開始した場合には、昭和五二年三月の翌月から起算して一八箇月目の月である昭和五三年九月の五日が療養開始後一年六箇月を経過した日となる。
(二) 傷病補償年金の支給額
傷病補償年金の支給額は、廃疾等級に応じ次のとおりである(新法別表第一)。
第一級 |
給付基礎日額の三一三日分 |
第二級 |
〃 二七七 〃 |
第三級 |
〃 二四五 〃 |
なお、傷病補償年金の支給額と傷病特別年金との総支給額に関する暫定措置については、後記一二(二)イ参照。
(三) 廃疾等級表の内容及び廃疾等級の認定基準
傷病補償年金制度の公正、的確な実施を図るため、従来の長期傷病補償給付及び長期傷病給付の支給要件を客観化するとともに、障害等級との均衡をも考慮して廃疾等級表が定められた(新労災則別表第二)。その具体的な内容及び廃疾等級の認定基準については、別添一のとおりである。
(四) 廃疾等級の認定手続等
イ 休業補償給付の支給を受ける労働者のうち、療養開始後一年六箇月を経過している長期療養者から、その一年六箇月を経過した日から一箇月以内に傷病の状態等に関する届書(告示様式第一六号の二)に医師の診断書(年金通知様式第二~四号)等を添えて提出させ、この届書により(届書の提出がない場合又は届書の内容が不十分な場合には、さらに、主治医に対する照会等適宜傷病の状態に関する調査を行った上)廃疾の程度を認定し、傷病補償年金を支給することとするか、引き続き休業補償給付を行うかどうかを決定する(新労災則第一八条の二)。
ロ イの場合において、引き続き休業補償給付を支給されることとなった労働者からは、毎年、一月一日から同月末日までのいずれかの日の分を含む休業補償給付の請求書を提出する際に、請求書に添えて、傷病の状態等に関する報告書(告示様式第一六号の一一)を提出させること(新労災則第一九条の二)。また、提出された報告書の内容から当該労働者が廃疾等級に該当するに至っていると認められるときは、ただちに傷病補償年金の支給の決定を行うこと。当該報告書の提出がない場合又はその内容が不十分な場合については、前記イに準ずる。
この場合の傷病補償年金の決定に際しては、前記イの場合に提出する届書と同じもの(傷病の状態等に関する届書)を提出させ、受給権者が年金の払渡を受けることを希望する金融機関又は郵便局等を把握すること。
ハ ロの報告書の提出をまつまでもなく、当該労働者が廃疾等級に該当するに至っていることが推定できるに至った場合には、所轄労働基準監督署長は、適宜傷病の状態等に関する届書(告示様式第一六号の二)を提出させるとともに、前記イに準じて傷病補償年金の支給決定の要否を判断すること(新労災則第一八条の二)。
ニ 休業補償給付の受給者が廃疾等級に該当するに至ったとして申し出た場合も前記に準ずる。
ホ 前記の手続を経て、被災労働者が廃疾等級に該当するに至っていることが確認できた場合には、その者が廃疾等級に該当するに至った時にそ及して傷病補償年金の支給決定を行うこと。この場合において、必要に応じ前記二による内払処理を行うこと。
ヘ なお、前記の傷病の状態等に関する届書、傷病の状態等に関する報告書及び(五)の傷病補償年金の受給権者の定期報告等に添える診断書の様式は、別添二のとおりである。
(五) 傷病補償年金の受給権者の定期報告等
傷病補償年金の受給権者となつた者は、他の年金たる保険給付の受給権者と同様に定期報告書を提出しなければならないものであること(新労災則第二一条)。
また、所轄労働基準監督署長は、傷病補償年金の受給権者の廃疾の程度に変更があると推定できるに至った場合、又は、その傷病が治ったと推定できるに至った場合には、他の年金の場合と同様、その者から遅滞なく、傷病の状態等に関する報告書(告示様式第一六号の一一)を提出させること。
(六) 廃疾の程度の変更(法第一八条の二関係)
前記のように、長期療養者の症状に応じた適切な給付を行うため、傷病補償年金の受給権者について、前記(五)の定期報告書等により、又は傷病補償年金の受給権者に義務づけられた廃疾の状態の変更に関する届出(新労災則第二一条の二第一項)等により、その受給権者の廃疾の程度が他の廃疾等級に該当するに至っていると認められる場合又は廃疾等級に該当しなくなったと認められる場合には、廃疾等級の変更による傷病補償年金の変更決定、休業補償給付への切替え又は治ゆの認定を行う。
なお、傷病補償年金の受給権者の廃疾の程度が廃疾等級に該当しなくなったときは、傷病補償年金の受給権は消滅するが、その者の同一の傷病による廃疾の程度が再び廃疾等級に該当するに至った場合には、当然その者に再び傷病補償年金を支給することとなる。この場合の認定手続については、(四)のロからニまでによる。
(七) 傷病補償年金と休業補償給付との関係
傷病補償年金の支給事由が生じた場合には、その支給事由の生じた月の末日まで引き続き休業補償給付を行うものとする。また、傷病は治ゆしないが、その傷病による廃疾の程度が廃疾等級表に掲げる廃疾の程度に該当しなくなったため傷病補償年金の受給権を失った労働者に対しては、その受給権を失った月の翌月から、必要に応じ休業補償給付を行うものとする。
(八) 療養補償給付の請求手続に関する特例
傷病補償年金の受給権者にも、前記のように引き続き療養補償給付が行われるが、傷病補償年金の受給権者が療養補償給付を受ける手続については、次の特例が定められた(新労災則第一二条の三)
イ 療養の給付を受けている労働者が傷病補償年金の支給を受けることになった場合には、
① 年金証書の番号
② 労働者の氏名、生年月日及び住所
③ 療養の給付を受けている指定病院等の名称及び所在地を記載した「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等届(告示様式第六号)」をその療養の給付を受けている指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければならない(新労災則第一二条の三第一項)。
ロ 傷病補償年金の受給権者が療養の給付を受ける指定病院等を変更しようとする場合に提出する「療養の給付を受ける指定病院等の変更届(告示様式第六号)」には、イの①、②に掲げる事項及び従来療養の給付を受けていた指定病院等並びに新たに療養の給付を受けようとする指定病院等の名称及び所在地を記載するだけで足り、負傷・発病の年月日、災害の原因及び発生状況等は記載する必要がない(新労災則第一二条の三第二項)。
ハ 「療養の費用の請求書(告示様式第七号)」についても、負傷・発病の年月日、災害の原因及び発生状況等は記載する必要がない(新労災則第一二条の三第四項)。
ニ なお、長期傷病補償給付の受給権者が、施行日から傷病補償年金の受給権者となった場合に、施行日前に療養の給付を受けていた指定病院等で施行日以後も引き続き療養の給付を受けるときは、イの届出を行わせる必要がない。
(九) 労働基準法との関係
イ 解雇制限
業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合にはその日において、業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が療養の開始後三年以上経過した日以後に傷病補償年金を受けることとなった場合にはその受けることとなった日において、使用者は労働基準法第八一条の規定による打切補償を支払ったものとみなされ、当該労働者について労働基準法第一九条の規定によって課せられた解雇制限は、解除される(新法第一九条)。この点については、長期傷病補償給付と解雇制限との関係と変わらないものである。
なお、長期傷病補償給付を受けていた労働者が、施行日以後も被災時に所属していた事業に雇用されている場合にも、当該労働者についての改正前の労働者災害補償保険法第一九条の規定による解雇制限解除の効果は存続している(改正法附則第四条)。
ロ 休業補償
また、長期傷病補償給付の場合と同様に、使用者は、傷病補償年金の受給権者には休業補償を行う義務を負わないことは当然である。
(一〇) 支給制限の取扱い
労働者災害補償保険法第一二条の二第二項前段の規定の適用に関する昭和四〇年七月三一日付基発第九〇六号通達の運用については、傷病補償年金のうち療養の開始後三年を経過する日の属する月までの分は、休業補償給付とみなして取り扱うものとする。
また、同項後段の規定の適用に関する同通達の運用については、同通達中「長期傷病補償給付又は長期傷病給付たる年金」とあるのは「傷病補償年金又は傷病年金」と読み替えるものとする。
(一一) 損害賠償等との関係
第三者の行為により発生した災害に関して傷病補償年金が支給されることになった場合には、災害発生後三年以内に支給すべき分について、損害賠償との調整を行うこと。
(一二) 不服申立
傷病補償年金の支給の決定及びその支給額の決定並びに廃疾等級の変更による傷病補償年金の変更に関する決定に関しても、労働者災害補償保険法第三五条の規定により、不服申立てをすることができるものであること。
(一三) 時効
傷病補償年金についても、長期傷病補償給付の場合と同様に、被災者の請求によらず政府が職権で給付を決定するものであり、基本権の裁定について時効の問題を生ずることは考えられない(労働者災害補償保険法第四二条参照)。
なお、支分権については、会計法第三〇条の規定により五年で時効消滅する。
(一四) 費用徴収の取扱い
労働者災害補償保険法第二五条第一項の規定による事業主からの費用徴収に関する昭和四七年九月三〇日付基発第六四三号通達の運用については、傷病補償年金は休業補償給付とみなして取り扱うこと。
(一五) 新制度への移行に伴う措置
イ 長期傷病補償給付の受給権者の移行措置
(イ) 昭和五二年三月末日現在において長期傷病補償給付を受けている者で、昭和五二年四月一日に傷病補償年金の受給要件を満たしている者については労働者災害補償保険法第九条第一項の規定にかかわらず、昭和五二年四月から傷病補償年金を支給する(新令附則第三項)。
なお、長期傷病補償給付の受給権者については、特段の事情がない限りすべて傷病補償年金への切替えを行うものとする。その廃疾等級の認定に当たっては、当該長期傷病補償給付の受給権者より提出された昭和五二年の定期報告の診断書及び診断書添付資料に記載されている症状等を、廃疾等級の認定基準に照らし、廃疾等級のいずれに該当するかを判断するものとする。
(ロ) 施行日の前日に長期傷病補償給付の受給権を有していた労働者で、施行日において傷病補償年金の受給権者となった者には、速やかに新年金証書を交付する、この場合、年金証書番号については、その者に交付していた長期傷病補償給付に係る年金証書の番号と同一のものとする。また、新年金証書を交付した場合には、遅滞なく旧年金証書を回収することとする。
なお、長期傷病補償給付からの移行者への昭和五二年五月期及び八月期の傷病補償年金の郵便局における払渡しに際しては、郵政省との協議により、これらの者が新年金証書が未交付のために旧年金証書を提示した場合にも、年金が受けられることとされた。
ロ 休業補償給付の受給者の移行措置
施行日において療養開始後一年六箇月を経過している者のうち施行日の前日において休業補償給付を受けているものについては、五二年三月中に傷病の状態等に関する届書の用紙(本省より別途送付)を送付し、五二年四月末日までに届出を行わせることとする。
この届書により、被災労働者が廃疾等級に該当していることが確認された場合には、当然、傷病補償年金の支給決定を行うが、この場合、傷病補償年金の支給事由の発生日は施行日であり、したがって、傷病補償年金は、施行日の属する月の翌月(昭和五二年五月)分から支給されることになる。
この場合において、前記傷病の状態等に関する届書は、前記休業補償給付の受給者について傷病補償年金の支給要件に該当するかどうか、該当する場合には廃疾等級一~三級のいずれに該当するかを判定するためのものであり、これによって「治ゆ認定、給付打切」を促進しようとするものではないので、念のため申し添える。
なお、本省(業務室)への報告時期、支給決定通知等に関しては、別途指示する。
(一六) 傷病年金の取扱い
通勤災害による長期療養者に対して支給する傷病年金に関しては、(九)を除くほか(一)~(一五)に示すところに準じて取り扱うこと。
四 労災保険の年金と他の社会保険給付との調整方式の改正(新法別表第一第一号及び第二号関係)
労災保険の年金(以下「労災年金」という。)が支給されると同時に、同一の事由により厚生年金保険等他の社会保険の年金が支給される場合には、従来は、他の社会保険の年金額の二分の一(国民年金の場合は三分の一)相当額を労災年金額から減額することとなっていた。しかしながら、賃金の多寡に比例して給付額が算定される労災年金と、賃金の多寡に対して上薄下厚型の給付体系をもつ厚生年金等とをこのような方式で調整すると、賃金が低く調整前の労災年金額の低い者の場合には、調整後の労災年金額は皆無ないしこれに近いものとなる事例も生じ、従前賃金の一定率を支給する労災保険の給付体系との関連上問題があった。
今回の法改正では、この調整方式を改め、従来の労災年金と厚生年金との調整の平均的な実績等を参考にして政令で一定率を定め、この率によって労災年金額を減額して両者の調整を行うこととした(新法別表第一第一号)。また、労災年金と国民年金又は船員保険の年金とが併給される場合の調整方式も、これらに準じた調整方式に改められた(新法別表第一第二号)。
(一) 調整率
調整率は、新法別表第一第一号及び第二号において、前々保険年度の調整対象者について、年金給付の種類及び併給される年金別に、調整前の労災年金額の平均額から併給される年金の支給額の平均額の一定割合(併給される年金が厚生年金又は船員保険年金の場合には二分の一、国民年金の場合には三分の一)を減じた額を調整前の労災年金額の平均額で除して得た率を下回らない範囲で定めることとされており、これに基づき労災年金の種類別(障害補償年金、遺族補償年金及び傷病補償年金)及び併給される年金給付の種類別(障害年金、遺族年金、母子年金、準母子年金、遺児年金及び寡婦年金)に次のように定められた(新令第二条及び第四条)。
|
|
労災年金 |
障害補償年金 障害年金 |
遺族補償年金 遺族年金 |
傷病補償年金 傷病年金 |
|
併給される年金給付 |
|
|||
社会保険の種類 |
|||||
厚生年金保険 |
障害年金 |
〇・七六 |
― |
〇・七六 |
|
遺族年金 |
― |
〇・八三 |
― |
||
船員保険 |
障害年金 |
〇・七六 |
― |
〇・七六 |
|
遺族年金 |
― |
〇・八三 |
― |
||
国民年金 |
障害年金 |
〇・八九 |
― |
〇・八八 |
|
母子年金 準母子年金 遺族年金 寡婦年金 |
― |
〇・九一 |
― |
(参考) 新旧調整方式による計算例
・ 厚生年金保険の障害年金(七〇万円)と労災保険の傷病補償年金(一〇〇万円)とが併給される場合
〔新方式〕
調整後の労災保険の傷病補償年金額は七六万円(100万円×0.76)となり、厚生年金保険の障害年金額七〇万円を加えた受給総額は一四六万円となる。
〔旧方式〕
調整後の労災保険の傷病補償年金額は六五万円画像6 (1KB)
となり、厚生年金保険の障害年金額七〇万円を加えた受給総額は一三五万円となる。
(二) 調整限度額
新調整方式においては、併給される厚生年金等の額の個々人別の違いを考慮せず、一律に調整率を乗じて支給額の算定を行うため、併給があるためにかえって併給がない場合に比較して受給する労災年金額と厚生年金等との合計額が低くなる場合が生ずる可能性がある。かかる不合理を避けるため、調整後の支給額が調整前の労災年金額から供給される厚生年金等の額を減じた残りの額を下回る場合には、その調整前の額から、併給される厚生年金等の額を減じた残りの額が支給される(新令第三条及び第五条)。
(参考) 調整限度額の計算例
・ 厚生年金保険の障害年金(四〇万円)と労災保険の障害補償年金(二〇〇万円)とが併給される場合調整後の労災保険の障害補償年金額は一五二万円(200万円×0.76)となり、厚生年金保険の障害年金額四〇万円を加えても併給者の受給総額は一九二万円で、労災保険の障害補償年金のみを受けている者の受給額二〇〇万円より低くなる。
したがって、この場合は、二〇〇万円(調整前の労災保険の障害補償年金額)から四〇万円(厚生年金保険の障害年金額)を減じた一六〇万円が調整限度額=労災保険の障害補償年金支給額となる。
(三) 同一の事由により、労災年金、厚生年金及び国民年金が支給されるような場合の取扱いは、次のとおりである。
調整前の遺族補償年金額 三〇〇万円
同一の事由により支給される厚生年金の額 五〇万円
〃 国民年金の額 三〇万円
とした場合、
① 厚生年金との間の調整
300万円×0.83=249万円
調整限度額の250万円を超えて減額されることとなるため、50(300-250)万円だけ減額する。
② 国民年金との間の調整
300万円×0.91=273万円
27万円減額
③ 調整後の労災年金額
300万円-(50万円+27万円)=223万円
(四) 経過措置
イ 新調整方式は、施行日以後の期間に係る年金について適用され、施行日前の期間に係る年金(すなわち、昭和五二年三月までの月分の年金)については従前どおりの調整が行われる。
ロ 施行日の前日において労災年金と厚生年金等とを同一の事由により支給されていた者が、施行日以後においても引き続き労災年金と厚生年金等とを同一の事由により支給される場合に、新しい調整方式を適用して算定した労災年金額(新支給額)が、その者に支給された昭和五二年三月分の労災年金額(旧支給額)より低額となるときは、新支給額がスライドにより増額され、旧支給額を上回るに至る月の前月までの間は、旧支給額に相当する額をその者に支給する労災年金額とする(改正法附則第七条第一項)。
ハ ロの場合において、新支給額がスライドにより増額され、旧支給額以上の額となる月前に次の(イ)から(ハ)までに掲げる事由が生じ、新支給額に変更をきたしたときは、以後その新支給額が旧支給額以上の額となる月の前月までの月分の年金額は、次の(イ)から(ハ)までに定めるところにより算定した額とされる。ただし、(イ)から(ハ)までに掲げる事由の生じた後における新支給額が次の(イ)から(ハ)までに定めるところにより算定した額を超えるに至ったときは、以後、(イ)から(ハ)までに掲げる事由が生じた後における新支給額をその者に支給する労災年金額とする(改正法附則第七条第二項、整備省令第一二条)。
(イ) 障害補償年金又は障害年金の受給権者の該当する障害等級に変更があった場合
(ロ) 遺族補償年金若しくは遺族年金を受ける遺族の数に増減を生じた場合、受給権者である妻が五〇歳若しくは五五歳となり若しくは廃疾となった場合、又は受給権者が所在不明となり遺族補償年金若しくは遺族年金の支給が停止された場合
(ハ) 傷病補償年金又は傷病年金の受給権者の該当する廃疾等級に変更があった場合
ニ 施行日前に労働者災害補償保険法第一二条(内払処理)、第一二条の二(支給制限)、第一二条の四(第三者行為災害の場合の支給停止)、第二八条第一項第四号又は第二九条第一項第七号(特別加入者に係る保険給付の支給制限)に規定する事由により減額された年金たる保険給付が支給されていた場合であって、施行日以後にこれらの事由による減額が行われなくなったときにおける前記イ及びロの取扱いに際しては、これらにいう新支給額及び旧支給額(すなわち、改正法附則第七条第一項及び第二項の新支給額及び旧支給額)とは、いずれもこれらの事由により減額される前の年金額をいうものであるので念のため申し添える。
(五) 調整対象者の確認、調整限度額の設定にあたっての厚生年金等の額の確認等の事務について
年金給付の受給者については、給付の請求書に厚生年金保険等の被保険者資格の有無、資格取得年月日、同一事由により支給される厚生年金等の額等を記載させ、また、定期報告の際に同一の事由により厚生年金等が支給されている場合のその支給額を報告させることになっている。各署においては、各受給者が支給を受ける厚生年金等の額を把握できた場合には、年金の種類及び支給額を本省に報告すること、また、年金たる保険給付の請求があった際に厚生年金等の裁定は未だ行われていないが、被災労働者の厚生年金保険等の被保険者期間、災害の内容等からみて、同一の事由により厚生年金等が支給されるに至るものと認められる場合には、その旨を本省に報告すること。
本省においては、この報告に基づいて調整率を乗じて減額した額の年金を支給するが、受給者から厚生年金等の支給を受けていないこと又は支給を受けているが調整限度額を超えて調整されていることの立証があった場合には、受給者に適宜支給決定通知を再交付した上本省に連絡すること。この報告のあった場合、本省においては、次の支払期に不足分の年金額を追給する。
なお、前記報告手続の詳細については、別途指示する。
五 休業補償給付又は休業給付と厚生年金等との調整(新法第一四条第三項及び第二二条の二第二項関係)
従来、休業補償給付又は休業給付については、同一の事由により厚生年金保険等の障害年金が支給される場合であっても、調整は行われていなかったが、厚生年金保険等において、障害年金が療養開始後一年六箇月(従来は三年)を経過した場合には支給されることとなったこと、労災年金受給者との均衡を図る必要があること等に鑑み、今回の法改正により、休業補償給付又は休業給付と厚生年金等とが同一の事由により支給される場合には、年金間の調整に準じて調整が行われることになった。
(一) 調整率
休業補償給付又は休業給付と厚生年金等とが併給される場合の調整率は傷病補償年金又は傷病年金の場合と同一の率であり、具体的には併給される厚生年金保険等の年金の種類に応じ次のとおりである(新法第一四条第三項及び第二二条の二第二項)。
併給される社会保険の年金の種類 |
厚生年金の障害年金 |
船員保険の障害年金 |
国民年金の障害年金 |
調整率 |
〇・七六 |
〇・七六 |
〇・八八 |
(二) 調整限度額
(一)の調整率を乗じて減額した休業補償給付又は休業給付の額が、同一の事由により支給される厚生年金等の額の三六五分の一に相当する額を調整前の休業補償給付又は休業給付の額から減じた残りの額を下回る場合には、前記四(二)と同様の趣旨によりその残りの額をこの場合の休業補償給付又は休業給付の額とすることとされた(新令第一条)。
(三) 経過措置
イ 厚生年金等の障害年金が併給される場合の休業補償給付又は休業給付の額の調整は、施行日以後の日に係る分について行われ、施行日前の日に係る分については従前どおり調整は行われない。
ロ 施行日前から引き続き同一の事由により休業補償給付又は休業給付と厚生年金等とを受けている者に支給する施行日以後の日の分の休業補償給付又は休業給付の額は、新規定によって算定した額がその者が受ける施行日の前日の分の休業補償給付又は休業給付の額(施行日の前日の分がない場合には、施行日前の休業補償給付又は休業給付のうち最後の日の分の額)を下回ることとなる場合には、その下回っている間、後者の額に相当する額とする(改正法附則第三条)。
この場合において、施行日前に前記四(四)ハに掲げた事由により減額された休業補償給付又は休業給付が支給されていた場合であって、施行日以後にこれらの事由による減額が行われなくなったときにおける取扱いは前記四(四)ハの場合に準じること。
(四) 調整対象者の確認、調整限度額の設定にあたっての厚生年金等の額の確認等の事務について
休業補償給付又は休業給付を請求する者についても、厚生年金保険等の被保険者資格の有無、資格取得年月日、同一の事由により支給される厚生年金等の額等を休業補償給付の請求書に記載させることにした(新労災則第一三条第一項)。
なお、休業補償給付又は休業給付の請求があった際には、厚生年金等の裁定が未だ行われていないが、被災労働者の厚生年金保険等の被保険者期間、災害の内容等から同一の事由により厚生年金等が支給されているものと認められる場合には、調整率を乗じて減額した額の休業補償給付又は休業給付を支給し、以後厚生年金等が支給されていないこと等について労働者の立証があった場合に、適宜不足額を追給することとして取り扱って差し支えない。
なお、上記手続の詳細については別途指示する。
六 年金等のスライド制の改正(昭和四〇年改正法附則第四一条、昭和四八年改正法附則第三条、昭和四九年改正法附則第四条関係)
(一) 従来、年金給付の額は、「毎月勤労統計」における全産業の労働者一人当たりの平均年間給与額が、労働者が被災した年(すでにスライドが行われている場合には、前回のスライドの基礎となった年)に比し二〇%を超えて変動し、その状態が継続すると認められる場合に翌年の四月分の支給額からスライドが行われていたが、給付額を賃金変動の実態により的確に対応させるため、今回の改正により、スライドの要件である平均給与額の変動幅が二〇%から一〇%に縮小された。また、平均給与額の算定の基礎となる期間が従来の暦年単位から年度単位に改められ、それに伴い、平均給与額の一〇%を超える変動があった保険年度の翌保険年度の八月分からスライドが行われることとなった。このため、年金スライド率の告示は、平均給与額が一〇%を超えて変動し、その状態が継続すると認められる保険年度の翌保険年度の七月三一日までに行われることとなった(昭和四〇年改正法附則第四一条、昭和四八年改正法附則第三条、昭和四一年改正省令附則第五項及び第六項)。
(二) 一時金給付(障害補償一時金、遺族補償一時金、葬祭料、障害一時金、遺族一時金、葬祭給付及び前払一時金)の額の改定にあたっては、年金給付のスライド率を用いることとされているため、一時金給付のスライドについても、今回の年金給付のスライド方式の改正に伴い、年金給付についてと同様の改正が行われた(昭和四九年改正法附則第四条、整備省令第一一条の規定による改正後の労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(昭和五一年労働省令第三三号)附則第二条)。
(三) 経過措置
イ これらのスライドに関する改正規定は昭和五二年四月一日から施行されるが、昭和五二年の四月分から七月分までの年金給付及び昭和五二年四月一日から同年七月三一日までに支給事由の生じた一時金給付の額は、従前の方式により算定したスライド率によりスライドされることとなっている(改正法附則第一〇条及び第二六条)。
従って、新方式によるスライドは、年金給付については昭和五二年八月以後の月分のものから適用され、また一時金給付については昭和五二年八月一日以後に支給すべき事由の生じたものに適用される。
ロ 年金等のスライド制の改正に伴い、施行日前に負傷し、若しくは疾病にかかった者又はその者の遺族のうち旧方式により改定された額の年金を受けたことのある者(昭和四九年一二月末日以前に被災した者に係る年金給付の受給権者)に対して支給される昭和五二年八月以後の月分の年金給付の額に関しては、被災した日の属する暦年と昭和五一年度の平均給与額とを直接比較した比率を基準としてスライドを行う予定である。なお、前記の者と同時期(昭和四九年一二月末日以前)に負傷し、若しくは疾病にかかった者の当該負傷又は疾病に関し昭和五二年八月以降に支給事由が発生した年金又は一時金の額の改定についても、同様の経過措置を講ずる予定である(整備省令第四条参照)。
七 休業スライド制の改正(新法第一四条第二項及び第二二条の二第二項関係)
(一) 従来、常時一〇〇人以上の労働者を使用する事業場の労働者については、当該事業場の同種の労働者の平均給与額を基礎として休業補償給付及び休業給付のスライドが行われていたが、スライド制の円滑かつ適切な実施をはかるため、今回の改正により、この同種の労働者の賃金動向により休業補償給付又は休業給付の額を改定される労働者の範囲が、常時一、〇〇〇人以上の労働者を使用する事業場の労働者に限られることになった(新法第一四条第二項及び第二二条の二第二項、新労災則第一二条の四及び第一八条の六の二)。
この結果、常時一〇〇人以上一、〇〇〇人未満の労働者を使用する事業場の労働者については、従来の常時一〇〇人未満の労働者を使用する事業場の被災労働者についての取扱いと同様に、その事業場の属する産業の平均給与額(「毎月勤労統計」における産業別の「毎月きまって支給する給与」の労働者一人当たりの一箇月平均額)の変動率を基礎として休業補償給付又は休業給付のスライドが行われることとなった。
(二) 経過措置
イ 新しいスライド方式は、施行日以後の日に係る休業補償給付又は休業給付の額について適用され、施行日前の日に係る休業補償給付又は休業給付の額については従前の方式によりスライドが行われる。
ロ スライド方式の改正に伴い、これら常時一〇〇人以上一、〇〇〇人未満の労働者を使用する事業場の労働者で、施行日前に既に当該事業場の同種の労働者の平均給与額の変動状況を基礎に改定された額の休業補償給付又は休業給付の支給を受けていたものに関しては、施行日以後の給付額が従来より低下することのないよう、その最後の改定の基礎となった四半期に当該労働者が負傷し、又は疾病にかかったものとみなして改正後のスライドに関する規定を適用することとされた(整備省令第二条第二項)。
八 一部負担金徴収事務の簡素化(新法第二五条関係)
(一) 療養給付の受給者からは一部負担金が徴収されるが、今回の法改正により休業給付の初回の支給の際にその額を一部負担金の額に相当する額だけ減額して支給することにより、一部負担金の徴収に代えることが認められることになった。この結果、かかる場合における一部負担金の徴収に伴う受給者及び行政庁の事務手続が簡素化されることとなった(新法第二二条の二第四項)。
(二) 一部負担金相当額を減額した休業給付額の支給を決定した場合には一部負担金の徴収に関する債権管理事務は、行う必要がない。したがって、この場合には、昭和五〇年四月二五日付基発第二五二号通達による事務処理の必要のないことはいうまでもない。
(三) 経過措置
上記(一)の取扱いは、通勤災害による休業の第四日目(休業給付を支給すべき事由の生じた最初の日)が施行日以後である場合に限り行うことができる。したがって、休業の第四日目が施行日前である場合には、休業給付の額から一部負担金相当額を減額することにより一部負担金の徴収に代えることは許されない(改正法附則第二条)。
九 特別加入者の通勤災害保護制度の新設(新法第二七条関係)
(一) 特別加入者の通勤災害についても、特別加入者の住居と就業の場所との間の往復の実情等を考慮し、昭和五二年四月一日から、新たに、労災保険の保護が与えられることになった(新法第二七条)。
ただし、個人タクシー業者、個人貨物運送業者、漁船による漁業者、特定農業機械作業従事者並びに家内労働者及びその補助者の通勤災害については、その住居と就業の場所との間の往復の実態が明確でないこと等からみて従来と同様労災保険の保護の対象とはしないこととした(労災則第四六条の二二の二)。
(二) 昭和五二年四月一日現在で労災保険に特別加入している者のうち、通勤災害について保護を与えられることとなる特別加入者に関しては、特段の手続を経ることなくその通勤災害についても労災保険の保護が与えられることになるが、その場合、実際に保険給付の対象となるのは、昭和五二年四月一日以後に発生した事故に起因する通勤災害に限られる(改正法附則第五条)。
(三) 特別加入者の通勤災害の認定基準については、労働者の通勤災害の場合に準ずる。
(四) 特別加入者の通勤災害に関する保険給付の請求手続は、労働者の場合と基本的には同一であるが、請求書の記載事項のうち事業主の証明を受けなければならないとされている事項(負傷又は発病の年月日、災害発生の時刻及び場所、就業の場所、就業開始の予定の時刻、就業終了の時刻、就業の場所を離れた時刻並びに通常の通勤の経路及び方法)については、その事実を証明することができる資料を請求書に添えなければならない(新労災則第四六条の二七第三項及び第四項)。
(五) 特別加入者に係る通勤災害に関する保険給付についても、当該災害が特別加入保険料を滞納している期間中に発生したものである場合には、支給制限が行われる。支給制限の内容は、業務災害に関する保険給付の支給制限の場合と同様である(新法第二八条第一項第四号及び第二九条第一項第七号)。
(六) 法第二五条の規定は、特別加入者には適用がなく、したがって、療養給付を受ける場合にも一部負担金は徴収されない。このため、特別加入者から一部負担金を徴収し、又は一部負担金相当額を休業給付の額から減額したりすることのないよう留意されたい。なお、被災労働者が特別加入者であるか否かは、請求書記載事項により確認すること。
(七) 通勤災害について保護を与えられることとなる特別加入者(中小事業主等、建設事業、林業及び医薬品の配置販売業の一人親方等並びに職場適応訓練受講者)に関しては、昭和五二年度から、特別加入保険料率が一、〇〇〇分の一引き上げられる(新徴収法第一三条、新徴収則別表第五)。
一〇 海外派遣者特別加入制度の創設(新法第二七条第六号及び第七号並びに第三〇条関係)
最近においては、日本国内の企業から海外の支店や合弁事業等へ出向する労働者や国際協力事業団等により海外に派遣される専門家が増加しているが、これらの労働者等については、海外出張としてわが国の労災保険制度の適用を受ける場合を除き、その労働災害についての保護は必ずしも十分とはいえない。
このため、今回の改正により、海外で行われる事業に派遣される労働者等についても、特別加入制度を通じて労災保険の保護が与えられることになった(新法第二七条第六号及び第七号、第三〇条)。
(一) 特別加入対象者
イ 海外派遣者として特別加入することができるのは、次の者である(新法第二七条第六号及び第七号)。
(イ) 国際協力事業団等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く。)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する者。
(ロ) 日本国内で行われる事業(有期事業を除く。)から派遣されて海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業等海外で行われる事業に従事する労働者。
ロ 上記イの海外派遣者の特別加入の取扱いについて留意すべき点は、次のとおりである。
(イ) 派遣元の事業との雇用関係は転勤、在籍出向、移籍出向等種々の形態で処理されることになろうが、それがどのように処理されようとも、派遣元の事業主の命令で海外の事業に従事し、その事業との間に現実の労働関係をもつ限りは、特別加入の資格に影響を及ぼすものではない。
(ロ) 海外派遣者として特別加入できるのは、新たに派遣される者に限らない。したがって、既に海外の事業に派遣されている者を特別加入させることも可能である。ただし、現地採用者は、海外派遣者特別加入制度の趣旨及びその加入の要件からみて、特別加入の資格がない。
(ハ) 派遣先の事業の代表者(例えば、現地法人の社長)等一般的に労働者的性格を有しないと考えられる者は、海外派遣者の特別加入制度の保護の対象にはしないものとすること。
(ニ) 単なる留学の目的で海外に派遣される者の場合には、海外において行われる事業に従事する者としての要件を満たさないので特別加入の対象とはならない。
(ホ) 海外出張との関係については、後記(九)を参照のこと。
(二) 特別加入手続
海外派遣者は、派遣元の団体又は事業主が、海外派遣者を特別加入させることについて政府の承認を申請し、政府の承認があった場合に特別加入することができる(新法第三〇条第一項)。
政府の承認を申請する団体又は事業主は、特別加入申請書(海外派遣者用)(告示様式第三四号の一一)に所定の事項を記載の上、所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働基準局長に提出しなければならない(新労災則第四六条の二五の二第一項)。
申請に対し承認を与えることとした場合には、所轄都道府県労働基準局長は特別加入承認通知書により承認を与えることを通知すること(新労災則第四六条の二五の二第二項)。
承認の日付は、申請を受理した日の翌日とすること。ただし、昭和五二年四月一日に申請を受理した場合に諸般の事情から、いわゆる逆選択を認めた結果とならないことが明らかな場合には、四月一日付で承認を与えることとして差し支えない。
なお、海外派遣者の特別加入は派遣元の団体又は事業主が日本国内で実施している事業について成立している保険関係に基づいて認められるものであるので、労災保険の保険関係が成立している事業をもたない団体又は事業主から承認の申請があった場合には、承認することはできない。
(三) 特別加入者の具体的範囲
特別加入者の具体的な範囲は、派遣元の団体又は事業主が申請書によって確定する。海外派遣者の特別加入制度では中小事業主等の特別加入制度の場合と異なり、加入者の範囲は、派遣元の団体又は事業主が任意に選択することが可能であるが、制度の運用にあたっては、できる限り包括加入するよう指導すること。
また、承認を受けた団体又は事業主が特別加入者の範囲を変更しようとするとき(特定の者を脱退させるとき又は新規加入をさせようとするとき)は、変更届(告示様式第三四号の一二)を提出しなければならない(新規災則第四六条の二五の二第二項)。
(四) 海外で従事する業務の内容
海外派遣者についても、業務上外の認定の適正を期するため、名簿に海外で従事する業務の内容を記載させることになっているが、この欄には、派遣先の事業における地位を付記させること。
なお、その業務の内容に変更のあった場合にも、届出が必要である(新労災則第四六条の二五の二第二項)。
(五) 特別加入者たる地位の消滅
イ 自動消滅
海外派遣者として特別加入している者は、その者の派遣先の団体又は事業主が行う事業について成立している保険関係の存続を前提として特別加入しているものであるから、その事業の廃止又は終了等によりその事業についての保険関係が消滅した場合には、その消滅の日にその者の特別加入者たる地位も、自動的に消滅する。
また、海外派遣者が、出向期間の終了により国内に帰国した場合等新法第二七条第六号又は第七号に該当しなくなった場合にも、その者の特別加入者たる地位は当然に消滅する。この場合においても、当該承認を受けた団体又は事業主は、その旨を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働基準局長に届け出なければならない(新労災則第四六条の二五の二第二項)。
承認を受けた団体又は事業主は、その行う事業について特別加入させた海外派遣者を事業単位で、包括して、政府の承認を受けて脱退させることができる(新法第三〇条第二項)。
なお、脱退の承認があったときは、特別加入者たる地位は当該承認のあった日の翌日に消滅するものとして取り扱うこと。
ロ 特別加入承認の取消し
特別加入の承認を受けた団体又は事業主が、労災保険法、徴収法又はこれらの法律に基づく省令の規定に違反した場合には、政府は特別加入の承認を取り消すことができるが、この場合、特別加入者たる地位は、その取消しの時に消滅する(新法第三〇条第二項)。
(六) 業務上外の認定基準
海外派遣者として特別加入している者の災害の業務上外の認定については、国内の労働者の場合に準ずる。したがって、赴任途上及び帰任途上の災害については保険給付は行われない。
(七) 保険給付
イ 労災保険の保護を与えられる海外派遣者の災害は、昭和五五年三月末日までは、業務災害に限られる(改正法附則第六条、新令附則第二項)。
ロ 給付基礎日額(後記一一参照)は、他の特別加入者の場合と同様に、特別加入予定者の希望を徴したうえ所轄都道府県労働基準局長が専決すること(労働保険に関する事務の専決に関する訓令第一項)。
なお、給付基礎日額の変更の取扱いについては、他の特別加入者の場合と同様とする。
ハ 保険給付の請求は、派遣元の団体又は事業主を通じて行わなければならない(新労災則第四六条の二七第五項)。また、業務災害の発生状況等に関する資料として、海外出張者の業務災害の場合と同様派遣先の事業の事業主の証明書、在外公館の証明書、新聞記事等を添付させること(新労災則第四六条の二七第二項)。
ニ 災害が特別加入者の重大過失等によって発生した場合については支給制限が行われるが、このほか、第三種特別加入保険料が滞納されていた期間中に発生した災害についても支給制限が行われる(新法第三〇条第一項第三号)。
ホ 特別加入者が、同一の事由について派遣先の事業の所在する国の労災保険から保険給付が受けられる場合にも、我が国の労災保険給付との間の調整は行う必要がない。
ヘ なお、受給者が海外において療養している場合の給付手続等については、別途指示する。
(八) 特別加入保険料等
イ 海外派遣者を特別加入させることについて政府の承認を受けた団体又は事業主は、第三種特別加入保険料を納付しなければならない(新徴収法第一五条第一項第二号ロ又はハ)。
ロ 海外派遣者についての特別加入保険料(第三種特別加入保険料)の料率は、一、〇〇〇分の一一である(新徴収則第二三条の三)。
ハ 第三種特別加入保険料の算定基礎額は、第一種又は第二種特別加入保険料の場合と同様に、各特別加入者の給付基礎日額を三六五倍した額の合計額である(新徴収則第二三条の二)。
ニ 第三種特別加入保険料は、一般保険料や第一種特別加入保険料とは別に、所轄労働基準局歳入徴収官が徴収する(新徴収則第一条第三項第一号)。
また、第三種特別加入保険料については、一般保険料や第一種特別加入保険料とは別に申告書を作成し提出しなければならない。
増加概算保険料の納付、延納等は、各事業主が納付する一般保険料等とは別個に取り扱うものであること。
ホ 第三種特別加入保険料及び海外派遣者として特別加入した者に対する保険給付の額は、派遣元の団体又は事業のメリット制についての収支率の算定基礎には加えられない(新徴収法第一二条第三項)。
ヘ 第三種特別加入保険料及びこれに係る徴収金の徴収事務以外の労働保険関係事務に係る届出等は、派遣元の団体又は事業主の行う事業に係るものとは別に所轄都道府県労働基準局長又は所轄労働基準監督署長に対し行わなければならない。
(九) 海外出張との関係
海外派遣者の特別加入制度の新設は、海外出張者に対する労災保険制度の適用に関する措置に何らの影響を及ぼすものではない。すなわち、海外出張者の業務災害については、従前どおり、特段の加入手続を経ることなく、当然に労災保険の保険給付が行われる。
なお、海外出張者として保護を与えられるのか、海外派遣者として特別加入しなければ保護が与えられないのかは、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務するのか、海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになるのかという点からその勤務の実態を総合的に勘案して判定されるべきものである。
一一 特別加入者の給付基礎日額の改正
特別加入者の給付基礎日額は、従来、一、〇〇〇円、一、五〇〇円、二、〇〇〇円、二、五〇〇円、三、〇〇〇円、三、五〇〇円、四、〇〇〇円、五、〇〇〇円又は六、〇〇〇円のうちから適宜決定していたところであるが、最近の賃金動向等を考慮し、特別加入者の給付基礎日額として決定できる金額の範囲に、七、〇〇〇円、八、〇〇〇円、九、〇〇〇円及び一〇、〇〇〇円が加えられることになった。また、給付基礎日額が七、〇〇〇円、八、〇〇〇円、九、〇〇〇円又は一〇、〇〇〇円とされた特別加入者についての特別加入保険料の算定基礎は、その給付基礎日額を三六五倍した額である(新労災則第四六条の二〇第一項、新徴収則別表第四)。
一二 特別支給金制度の改正(新特別支給金規則関係)
(一) 特別給与を基礎とする特別支給金の新設
年金等の受給者の保護を一層手厚いものとするために、我が国の賃金慣行を考慮して、ボーナスなどの特別給与の額を基礎に支給額の算定を行う特別支給金として、障害特別年金、障害特別一時金、遺族特別年金、遺族特別一時金及び傷病特別年金の五種類の特別支給金(「特別給与を基礎とする特別支給金」)が新たに設けられた(新特別支給金規則第二条)。
イ 算定基礎(新特別支給金規則第六条)
(イ) 特別給与
特別給与とは、労働基準法第一二条第四項の「三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」をいい、平均賃金の算定の基礎からは除外されているものである。したがって、同じく平均賃金の算定基礎から除外されている同条同項の「臨時に支払われた賃金」(臨時的、突発的事由に基づいて支払われたもの及び結婚手当等支給条件はあらかじめ確定されているが支給事由の発生が不確定であり、かつ、非常にまれに発生するもの)は、この特別給与には含まれない。
(ロ) 算定基礎年額(新特別支給金規則第六条第一項)。
a 特別給与のうち、支給額の算定の基礎とされるものは、原則として、被災日(業務上の事由若しくは通勤による負傷若しくは死亡の原因である事由が発生した日又は診断によって業務上の事由若しくは通勤による疾病の発生が確定した日)以前一年間(雇入後一年に満たない者については雇入後の期間)に被災労働者が受けたものであり、その総額を「算定基礎年額」とする。
ただし、その特別給与の総額を算定基礎年額とすることが適当でないと認められる次の場合には、次に定めるところにより、算定基礎年額の算定を行うこととする。
(a) 雇入後の期間が一年に満たない場合において、特別給与の総額が当該労働者に適用される就業規則、その事業場における同種の労働者の受ける特別給与額等から推定して、その事業に被災日までに一年以上使用されていたとした場合に被災日以前一年間において受けたであろうと推計される特別給与の総額を下回るとき
その推計される特別給与の総額
(例)
八月に採用され、一二月に賞与を受け、翌年二月に被災した労働者の場合には、算定の基礎となる特別給与は、一二月に受けた賞与だけであるが、被災労働者が過去一年以上使用されていた場合にはその事業の賞与の支給状況からみて七月にも賞与を受けたと推定される場合には、その事業の七月の賞与の支給率を被災労働者の平均賃金に乗じて得た額を、その被災労働者の七月の賞与額とみなす。
(b) その事業の特別給与の支給時期が臨時的な事由により例年と相違した場合 支給時期が例年と相違しなかったならば被災日以前一年間において受けたであろうと推定される特別給与の総額
(例)
例年七月及び一二月に賞与を支給していた事業が、ある年においてたまたま六月と一二月に支給が行われた場合に、翌年の七月一日に被災したときは、前年の六月の賞与及び被災年の七月の賞与はともに算定の基礎に入らないこととなる。この場合には、前年の六月の賞与を七月に支払われたとみなして特別給与の額の算定を行う。
(c) 被災日以前一年間に受けた特別給与の総額が、その特別給与の算定基礎期間中に、三〇日以上の労働基準法第一二条第三項第一号、第二号若しくは第四号に掲げる期間又は業務外の事由による負傷若しくは疾病の療養の期間があるため、当該労働者に適用される就業規則、同種の労働者の受ける特別給与の額等から推計して、これらの期間がなかったとしたときに受けたであろう特別給与の総額を下回る場合 これらの期間がなかったとしたときに、被災日以前一年間に受けたであろう特別給与の総額
(d) じん肺患者について、特別給与の総額が、じん肺にかかったため粉じん作業以外の作業に常時従事することとなった日以前一年間において受けた特別給与の総額を下回る場合 粉じん作業以外の作業に常時従事することとなった日以前一年間において受けた特別給与の総額
(e) 被災日に労働者が既にその疾病の発生のおそれのある作業に従事した事業場を離職している場合 昭和五〇年九月二三日付基発第五五六号通達及び昭和五一年二月一四日付基発第一九三号通達の例により、当該疾病の発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日以前一年間(雇入後一年に満たない者については、雇入後の期間)に支払われた特別給与の総額を基礎とし、被災日までの賃金水準の上昇を考慮して算定した額。この場合において、賃金水準の上昇を反映させる率の算定に当たっては、事業場の使用労働者の数による区分をせず、すべて常時一〇〇人未満の労働者を使用する事業場の場合の例によるものとする。
なお、(a)から(d)までの算定基礎年額の特例については、申請人の申立て及び十分な証明があった場合にのみ行うこととする。
b 上記aにより算定して得た特別給与の総額が、給付基礎年額の二〇パーセントに相当する額又は一〇〇万円のいずれか低い額を超える場合には、給付基礎年額の二〇パーセント相当額又は一〇〇万円のうちいずれか低い額を算定基礎年額とする。
c なお、スライドの適用がある場合及び施行日前に生じた事故に関し支給額を算定する場合における算定基礎年額の取扱いについては、後記ト及びリ(ロ)参照。
〔算定例〕
・障害等級第一級の障害補償年金の受給権者で、給付基礎年額が三〇〇万円、被災前一年間の特別給与額が七五万円の場合
被災前一年間の特別給与額が給付基礎年額の二〇パーセントに相当する額を超えるので、300万円×20%=60万円が算定基礎年額となる。
・廃疾等級第三級の傷病補償年金受給権者で給付基礎年額が六〇〇万円、被災前一年間の特別給与額が一一〇万円の場合
被災年一年間の特別給与額が給付基礎年額の二〇パーセントに相当する額には達しないが一〇〇万円を超えるので一〇〇万円が算定基礎年額となる。
(ハ) 算定基礎日額(新特別支給金規則第六条第二項)
上記(ロ)の算定基礎年額を三六五で除して得た額を算定基礎日額とする。
(ニ) 端数処理(新特別支給金規則第六条第三項)
算定基礎年額及び算定基礎日額については、一円未満の端数が生じた場合には、これを一円に切り上げる。
ロ 障害特別年金(新特別支給金規則第七条)
(イ) 障害特別年金は、新法の規定による障害補償年金又は障害年金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される年金の特別支給金であり、その額は、障害等級に応じ次の表に掲げる額である(新特別支給金規則第七条第一項及び別表第二)。