添付一覧
○農業者転職対策に関する職業安定機関の業務の推進について
(昭和四五年五月二八日)
(職発第二六八号)
(各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達)
最近におけるわが国の農業については、米の生産調整、大規模・高生産性の近代的農業の育成、農家所得の確保等とならんで、離農の援助・促進をはかることが必要とされるとともに、他方、農業以外の産業部門においては、労働力需要が増大し、労働力不足の度が強まつている。
このように農業の内外から農村労働力の他産業への就業が期待されているところであり、この際農村における労働力の他産業就業の円滑化をはかり、これらの人々の職業と生活の安定をはかることが、職業安定行政にとつてきわめて重要な課題となつている。
このような情勢にかんがみ職業安定行政においては、今般、下記のとおり農業者転職対策を推進することとしたので、管下公共職業安定所にこの趣旨を十分徹底するとともに、これが運営について格段の御配慮をお願いする。
記
一 基本方針
職業安定機関は、総合農政の推進とあいまつて、職業紹介の強化、農業者の転職に必要な就職援助措置の強化および農村における産業振興の促進等就業機会の確保を中心に農業者の円滑な離農転職をすすめるものとし、その推進にあたつては、職業訓練機関はもとより、市町村、農業関係団体等と密接な連けいをはかるとともに、地域の経済的・社会的条件に即応した適切な運営をはかるものとする。
二 職業紹介の強化
離農転職者に対する職業相談、職業紹介は、その特殊性を考慮し、公共職業安定所の窓口における職業相談、職業紹介より、むしろ積極的に農村地域に出掛け、機動的な体制のもとにこれを行なうことが肝要である。
このため、公共職業安定所職員による巡回相談、農村地域に配置する農業者転職相談員による相談、農村人材銀行の設置、職業訓練による技能の付与等の一連の措置を講じ、このための体制を整備し、職業紹介を行なうものとすること。
なお、離農転職者の職業紹介を行なうにあたつては、通常の求職者とは異なり、雇用労働者として他に雇われた経験のない者が多いこと、永年耕作した土地を離れて離農する者であること等の事情を十分考慮しながら、職業相談、職業紹介を行なうものとすること。
(一) 農村巡回職業相談の実施
離農転職希望者の発生が予想され、または発生している地域においては積極的に巡回職業相談を計画実施すること。
なお巡回職業相談を計画する場合は、当該市町村と連絡のうえ計画するか、農業委員会、農業協同組合等の開催する会合等の機会を利用して実施すること。
(二) 農業者転職相談員の配置
離農転職希望者のは握、雇用情報の提供、職業相談、農業関係団体と公共職業安定所との連絡等をきめ細かく行なうため、別添一「農業者転職相談員要綱」により所要の地に相談員を配置することとするが、これが配置にあたつては、農業関係団体と緊密な連携をはかりつつ、効率的な運営をはかること。
なお、細部については、別途指示する。
(三) 農村人材銀行の設置
離農転職希望者および出稼希望者の状況に応じ、必要と認められる農村地域に農村人材銀行を設置し、これに前記(二)にしめす農業者転職相談員を配置すること。
(四) 職業訓練の受講および施設へのあつせん
離農転職希望者に対する職業訓練は、農業地域に簡易な訓練施設を必要に応じて設置し、訓練期間、訓練職種等について農業就業者の実態に即応した訓練を実施することとしているので、離農転職希望者のうち、技能を習得することによつて、就職が容易になるか、またはより良い条件のもとに就職できると認められる場合においては、訓練受講の利便、生活環境等を勘案して、都道府県の設置する専修職業訓練校および簡易訓練施設における農業者転職訓練の受講のあつせんを行なうこと。
三 就職援助措置の強化
離農転職希望者に対して、その転職を円滑にするため、本年度から「農業者転職援助金」の制度が設けられたので、この周知・徹底をはかるとともに、他の職業転換給付金制度と相まつて、この制度の効率的な活用をはかること。
なお、農業者転職援助金の支給の取り扱いについては、別途通達する。
四 工場誘致に対する援助
農村における産業および労働力の実態からみて、農村地域に工場等を進出させることは、今後ますます重要な施策となることが予測される。したがつて、地理的、経済的条件および労働力の状況等からみて、工場等の誘致が望ましい地域においては、職業安定機関としても、産業行政機関との連携をはかりつつ、誘致計画の策定その他に参画し、協力するとともに、労働力の充足に努めるものとすること。
五 農業者転職対策会議の設置
農業界、産業界および関係行政機関相互の連携を強化して農業者の他産業への転職を円滑に推進するため、別添二「農業者転職対策会議設置要綱」に基づき、会議を設置することとしたので早急にこれが体制を整備すること。
六 関係機関との連携体制の確立
(一) 農業関係団体との連携体制の確立
離農転職希望者の発生が予想される都道府県にあつては、都道府県農業会議、都道府県農業協同組合中央会、その他の農業関係団体、公共職業安定所にあつては、農業委員会、農業協同組合その他の農業関係団体の開催する各種の会議に積極的に参加して、情報の提供、収集に努めるとともに、これらの団体とは、常時密接なる連携が保たれるよう体制を確立すること。
また、農業就業近代化対策事業における調査相談員は、受持ち区域内の転職希望者を公共職業安定所に連絡することとなつているので、これが受理体制もあわせて確立しておくこと。
(二) 関係行政機関等との連携体制の確立
離農転職希望者の就職を円滑に推進するためには、農業関係団体のみならず、関係行政機関、商工関係団体等の協力も必要であるので、市町村、商工会議所、商工団体ならびに公共職業訓練施設、労働基準監督署、婦人少年室と有機的、かつ密接な連携体制を確立すること。
七 農業者の転職動向のは握
農業者転職対策を推進するにあたつては、農業労働力の動向を多角的には握することがきわめて重要である。このため、労働省としては、すでに農業から他産業に就業している者について転職以後の職場適応、定着等の雇用問題を重点に調査を実施することとしているので、これが円滑な実施をはかるとともに、農林省等において行なう各種調査も利用して農業者の転職動向をは握し、業務運営に活用すること。
なお、労働省の行なう調査の細部については、別途指示する。
別添一
農業者転職相談員要綱
一 目的
農業転職相談員(以下「相談員」という。)は、転職を希望する農業者の転職に関し、その相談に応じ、必要な指導助言を行なうとともに、雇用情報等他産業についての情報の提供その他必要な業務を行ない、もつて農業者の他産業への就業の円滑な推進をはかることを目的とする。
二 配置基準
相談員は、農業就業人口、農業生産特に米の生産調整等の動向を考慮して、離農者等の発生が予想される農村地域に配置する。
三 委嘱
労働大臣は、次の各号に掲げる要件を具備している者のうちから適当と認められる者を相談員として委嘱するものとする。
(一) 社会的信望があり、公共職業安定所の行なう業務に深い関心と理解を持つ者であること。
(二) 農業者の他産業への就業に関し理解を有する者であること。
(三) 相談員として委嘱されることにより、自己の利益を図り、または政治的目的に利用しようとする者でないこと。
四 業務
相談員は、次の各号に掲げる業務を行なうものとする。
(一) 転職を希望する農業者をは握すること。
(二) 転職を希望する農業者に対して、産業および職業の概要、労働市場状況、賃金状況等他産業についての情報を提供すること。
(三) 転職を希望する農業者に対して、個別求人に関する具体的情報を提供すること。
(四) 職業、職場の選択等について、転職を希望する農業者の相談に応じ、必要な指導助言を行なうこと。
(五) 農業者の転職を援助するための訓練その他の援護制度の周知徹底を図ること。
(六) 農業者の転職援助に関する関係機関および関係団体との連絡に関すること。
(七) その他農業者の他産業就業の援助に関すること。
五 委嘱期間
相談員に対する業務の委嘱期間は一年以内とする。ただし再委嘱することを妨げない。
六 報酬
相談員に対しては、相談活動の実情に応じ、予算の範囲内において、報酬を支払う。
七 その他
相談員の業務の取扱方法、委嘱の手続等は別に定めるところによる。
別添二
農業者転職対策会議設置要綱
一 目的
農業者転職対策会議(以下「会議」という。)は、農業界、産業界および関係行政機関相互の連けいを強化して、地域の経済的、社会的条件に即した農業者の他産業への就業を円滑に推進することを目的とする。
二 設置基準および区域
会議は、農業就業人口、農業生産特に米の生産調整等の動向を考慮して、原則として、離農者等の発生が予想される農村地域を管轄する公共職業安定所の区域を単位として設置する。
三 構成
会議は、公共職業安定所および公共職業訓練施設の長ならびに都道府県出先機関(地方事務所等)、関係市町村、農業関係団体および商工関係団体等の代表者一○人~二○人程度をもつて構成する。
四 協議事項
会議は、その目的を達成するため、おおむね次の事項について協議を行なうものとする。
(一) 求人、求職の現状と見通し
(二) 離農転職希望者の現状と見通し
(三) 農業者の他産業就業をその形態に応じて推進するための必要な措置
(四) 必要とされる職業訓練の種類および規模
(五) 企業誘致等の要否、可能性および助成措置
(六) その他
五 庶務
会議の庶務は、公共職業安定所が行なうものとする。
六 その他
会議の運営については、会議の構成事情等を勘案の上、適宜定めるものとする。