添付一覧
○緊急雇用対策の推進について
(昭和五二年九月三〇日)
(職発第四五〇号・訓発第二六一号)
(各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達、労働省職業訓練局長)
不況下における雇用対策の推進については、従来から積極的な業務の運営をお願いしてきたところであり、特に職業紹介業務における緊急求人開拓の強化については特段の御配慮を願つているところである。
しかしながら、引き続く景気の停滞により雇用失業情勢は厳しい状況を呈しており、先行き予断を許さない現状にある。このため、今般労働省に事務次官を長とする「臨時雇用対策本部」を設置するとともに同本部において「緊急雇用対策」を別添のとおり決定し、構造不況産業に係る産業別雇用対策の推進、雇用安定資金制度等の積極的活用による失業の予防、失業者の再就職の促進と生活の安定及び職業訓練の機動的実施のための方策を総合的に推進することとした。
ついては、本対策が、構造的不況産業からの離職者対策を中心としつつも、それのみに留まらず、現下の雇用失業情勢全般の改善を進めることを企図しているものであることを参酌し、下記事項に御留意の上、本対策の円滑な運営に遺漏ないよう措置するとともに、さらに管内における産業及び企業の動向、求職者の実態等それぞれの地域の実情に応じて適宜適切な対策を実施し、雇用対策について万全を期するよう格段の御配意をお願いする。
記
一 雇用失業情勢の早期は握
雇用失業情勢の早期は握については、昭和四九年九月二四日付け職発第三八八号「景気変動下における雇用失業情勢のは握と機動的な雇用対策の推進について」により御尽力を願つているところであるが、景気停滞に伴つて、大型倒産が発生するなど雇用失業情勢の先行きには予断を許さないものがある。
このため、本省においては業務統計を中心に現状の総合的な分析、産業別雇用懇談会の開催、構造不況産業を主たる対象とする事情聴取の実施等を行うこととしているところであり、貴都道府県においても、適宜主要企業の雇用の動向をは握し、本省あて報告するとともに、雇用対策の適切な推進に資すること。
また、雇用対策法第二一条に基づく大量雇用変動の際の届出を各企業に励行させてその実態をは握するとともに遅滞なく本省あて報告すること。
二 産業別雇用対策の推進
造船、繊維、平電炉等の構造的不況産業について、産業毎の雇用状況の実態をは握するため、産業毎の事情聴取、調査等を進めるとともに、各事業主団体および企業が失業の発生の防止および離職者の再就職の促進について自主的に努力することを推進するよう指導を行うこと。
三 失業の予防
雇用失業情勢の推移に即応して積極的に失業を予防し併せて円滑な職業の転換を図るため、次の施策を行うものとすること。
(1) 雇用安定資金制度の積極的活用
雇用安定資金制度は、来たる一〇月一日から施行されることとなつているが、現在の経済及び雇用失業情勢にかんがみ、本制度が効果的かつ円滑に実施され、雇用の安定に資するものとなるよう現在実施基準の作成等、施行のための準備が進められているところである。
今後は、本制度を活用することにより、構造不況産業からの失業者の発生の防止と職業転換の円滑化を図るなど、回復の遅れている雇用失業情勢に積極的に対処することとしている。
なお、本制度の施行事務の詳細については別途指示する。
(二) 高年齢者、心身障害者等の雇用安定対策の推進
昨今の厳しい雇用情勢下にあつては、高年齢者、心身障害者等が雇用調整の対象とされるおそれが多いが、これらの者は、いつたん離職すると再就職が困難な事情にあるので、高年齢者雇用率制度、身体障害者雇用率制度等を活用し、その離職の防止に努めること。
特に、高年齢者及び身体障害者については、これら雇用率制度における雇用率が未達成である場合又はこれらの者の離職によつて雇用率を達成しないこととなる場合には人員整理による離職、当面の定年到達による退職等を一定期間繰り延べ、また、配置転換、教育訓練等により雇用の継続を図る等の配慮を行うよう事業主に対する働きかけを強めること。
なお、これらの指導を行う場合には、管内事業所の実情のは握が必要であるので、身体障害者雇用促進法第八〇条に基づく届出の励行について指導を行うとともに主要な事業所について、電話連絡等により雇用調整の計画の有無、雇用調整の段階とその規模等を常時は握しておくように努めること。
(三) 定年延長の推進
定年延長については、かねてからその推進を図つているところであるが、特に昨今の厳しい雇用情勢下にあつては、ややもすると定年延長の気運が停滞するおそれもあるので、定年延長奨励金制度を十分活用するとともに、従来にも増して事業主等に対し定年延長の推進を要請すること。
四 再就職の促進と失業中の生活の安定
(1) 求人開拓の強化
厳しい雇用失業情勢に対処し、既に各地の実情に即した就職促進対策の推進に御配意いただいているところであるが、更にその効果をあげるため、次により求人の確保に努め、倒産、人員整理等による離職者、出稼労働を余儀なくされている求職者、自発的に度々公共職業安定所に出頭する者等緊急度の強い求職者に対し重点的に職業紹介を行うこと。
イ 求職者の求職条件等を職業相談を通じて十分は握し、その条件に適合する求人の確保に全力をあげて取り組むこと。求人開拓については、昭和五〇年八月一日付け職発第三四四号「最近の雇用情勢に即応した職業紹介体制の強化について」の記の一の(三)に基づいて実施するものとするが、特に各公共職業安定所の実情に応じて班編成を行う等体制の整備について工夫するとともに、当面、事業所訪問による開拓に重点を置き、計画的かつ効率的に行うこと。この場合、必要に応じ、需要地域、隣接の都道府県又は公共職業安定所との連携の強化に配意すること。
また、出稼による就労を希望する者については、求職者動向及び求人動向の速やかな連絡等、送出地と受入地との連携体制を緊密にするとともに、出稼労働者の雇用実績がある事業所の動向を的確には握する等機動的な求人の確保に配慮すること。
ロ 各公共職業安定所単位に設置されている地域雇用協議会等の場を活用し、事業主団体等に対し、求人申込みについて積極的な協力を要請すること。
ハ 新聞、雑誌等の各種求人情報をは握し、適当なものについては求人申込みをさせる等広い範囲からの求人確保に努めること。
ニ 有効求人の定期的点検等を通じて未充足求人についての検討を十分行い必要に応じ、有効期間の延長、求人条件の緩和指導等適切な措置を講ずること。
(二) 公共事業による就労機会の確保
引き続く厳しい雇用失業情勢の中にあつて、このたび公共事業費の大幅追加支出等を内容とする総合経済対策が閣議決定され、その実施による雇用の拡大が期待されているところであるが、これら公共事業を就労機会の拡大に活用するため、次により公共事業における求人の確保に努めること。
イ 公共事業の実施に関する要請
(イ) 都道府県労働主管部(局)は、関係部局に対し、失業者が多数発生している地域における公共事業の計画実施及び当該事業への失業者の吸収等についての必要な配慮方を要請すること。
(ロ) 公共職業安定所は、関係市町村に対し、その計画実施する公共事業への失業者の吸収等について、必要な配慮方を要請すること。
ロ 公共事業の施行内容のは握
昭和五〇年一〇月八日付け職発第四二〇号「経済不況下における求人の確保について」(沖縄県については、同日付け職発第四二〇号の二)に基づき、公共事業の施行内容(請負施行の場合は、その発注内容)を早期には握し、公共事業に係る求人の確保に努めること。
ハ 公共事業における失業者吸収率制度の活用
中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法第二条第四項の特定地域に指定されている地域及び沖縄県については、公共事業における使用労働者数の通知及び労働者の直接雇入れの承諾に係る書面(公共事業施行通知書)の提出の励行等、同法第二二条に基づく失業者吸収率制度(沖縄県にあつては、沖縄振興開発特別措置法第三九条に基づく失業者吸収率制度)の的確な運用に努めること。
ニ 冬期に季節的失業者が多数発生する積雪寒冷地においては、新設される積雪寒冷地冬期雇用促進給付金の活用を通じて公共事業における求人の確保を図り、これらの者の冬期の就労機会の増加に努めること。
(三) 雇用保険制度及び職業転換給付金制度の活用
労働市場に滞留している雇用保険受給資格者並びに中高年齢失業者等求職手帳の所持者、造船業離職者及び漁業離職者については、雇用保険失業給付(訓練延長等各種延長給付を含む。)や職業転換給付金制度の活用により、その生活の安定と再就職の促進を期すること。
また、雇用奨励金等各種給付金制度について、地域雇用協議会等における説明、商工会議所の会議等における説明など、職業安定行政に関連する場に加え、労働基準協会・同連合会の会合等あらゆる機会をとらえて事業主等に周知徹底し、上記の雇用保険受給資格者等の再就職の促進に資すること。
(四) 職業訓練の受講の促進
職業安定主務課においては、再就職の困難なすべての求職者に対する職業訓練の受講を促進するために、職業訓練主務課と十分協議し、職業訓練受講指示計画に必要な調整(昭和五〇年四月一日付け職発第一三一号別添「職業訓練受講指示要領」の四の(一)のロ参照)を行うとともに職業安定機関において積極的な受講勧奨を行うこと。
また、この計画の遂行に当たつては、求職者の諸条件を考慮し、最も適切と認められるコースを選択し、その積極的な推進を図ることとすること。
この場合、できるだけ職場適応訓練の例に準じ、受講指示前に求職者の雇用予約に努めることとし、職業訓練の受講中においても職業訓練機関との連携を密にして、職業訓練の段階に応じて職業相談を実施し、可能な限り早期に就職先を確保するよう努めること。
五 職業訓練の機動的実施
(一) 能力再開発訓練の拡充
イ 本年一〇月以降に開始する能力再開発訓練について入校希望者が多い場合には、施設等の許す範囲内で定員を超えて入校させる等の措置をとること。
また、必要に応じて部外講師を依頼する等により臨時に能力開発訓練関係職種の訓練科を増設し、あるいは既設の訓練科の訓練定員を増加する等離職者の再就職のための職業訓練実施体制の整備に努めること。
ロ 能力再開発訓練の実施に当たつては、職業訓練法施行規則別表第七の二の2及び三の2の弾力条項を適用する等により、対象となる者の実態に応じた訓練を行い、その再就職に資すること。
ハ 事業転換等に伴い従業員に対し職種転換等のための訓練を行おうとする事業主に対しては、訓練の受託、施設の貸与、指導員の派遣等を積極的に行うことにより、事業転換等に伴う従業員の失業を予防し、その職業の転換を円滑ならしめるよう努めること。
(二) 委託訓練、速成訓練の推進
離転職者の発生状況に応じ委託訓練及び速成訓練の活用を図り、多様かつ機動的に職業訓練を行うこと。
なお、この場合、従来の職種にこだわらず、離転職者の適性、労働市場の状況等に応じ訓練職種を拡大するとともに、専修学校、各種学校等民間教育訓練施設のみならず、認定職業訓練を行う訓練施設をも積極的に活用するよう努めること。
(三) 公共訓練施設における入校時期の多様化
離職者の発生、訓練受講者の実情等を考慮し、訓練施設における教室、実習場等の計画的活用、訓練カリキユラムの弾力的編成等により臨時の訓練コースを設ける等可能な限り入校回数を多くし、訓練受講希望者の入校機会の増大を図ること。
(四) その他
(一)及び(二)の場合においては、必要に応じ職業訓練実施計画の修正を行つて差し支えないこと。この場合は事前に本省に協議すること。
別添
緊急雇用対策について
第一 臨時雇用対策本部の設置
労働省に事務次官を長とする臨時雇用対策本部を設置し、緊急かつ総合的な雇用対策の企画及び推進を図る。
第二 産業別雇用対策の推進
構造的不況産業について、産業毎に雇用対策についての体制を整備させ、対策の推進を図る。
第三 失業の予防
雇用失業情勢の推移に即応して積極的に失業を予防し、併せて円滑な職業の転換を図る。
一 雇用安定資金制度の積極的活用
(一) 景気変動等雇用調整事業による助成
イ 雇用調整給付金 雇用調整のための一時休業を行う場合
ロ /訓練調整給付金(新規)/訓練調整費助成金(新規)/} 雇用調整期間中に教育訓練を行う場合
ハ 高年齢者雇用安定給付金(新規) 不況期に高年齢者を雇用しその雇用割合を高める場合
(二) 事業転換等雇用調整事業による助成
イ /事業転換訓練給付金(新規)/事業転換等訓練費助成金(新規)/} 事業転換等のために必要な教育訓練を行う場合
ロ 事業転換等休業給付金(新規) 事業転換等に伴う施設設備の変更に伴う休業を行う場合
ハ 事業転換等出向給付金(新規) 事業転換等に際し出向を行いそれに必要な経費を負担した場合
二 高年齢者の雇用安定対策の推進
(一) 高年齢者雇用率を軸とする定年延長の促進等雇用の安定のための施策の推進を図る。
(二) 不況期に高年齢者雇用安定給付金を支給し、高年齢者の雇用の促進を図る。(前掲)
第四 再就職の促進と生活の安定
求職者の再就職の促進と失業中の生活の安定を図る。
一 求人開拓の実施
公共職業安定所において緊急かつ徹底的に求人開拓を実施する。
二 公共事業による就労機会の確保
就労機会の確保のため、事業所管省庁への協力要請と公共職業安定所における求人の確保を図る。
三 雇用保険制度の積極的運営
(一) 失業給付(訓練延長給付等各種延長給付を含む。)による生活の安定
(二) 雇用奨励金等現行の各種給付金制度の活用による再就職の促進
(三) 構造不況産業等離職者雇用促進助成金の創設(新規)
四 職業転換給付金制度の活用
政府の方針で政策的に行われる構造改善対策に伴い離職を余儀なくされた者に対し、雇用対策法に基づく特例措置としての職業転換給付金を支給する。
第五 職業訓練の機動的実施
景気の変動、産業構造の変化等により職業転換を余儀なくされる労働者に対し、職業訓練を機動的に行い、円滑な職業転換を図る。
一 能力再開発訓練の拡充
離転職者を対象とする職業訓練を拡充するため、公共職業訓練校の能力再開発訓練関係種目の増設と施設設備の改善を行う。
二 委託訓練、速成訓練の推進
離転職者に対し、その適性、労働市場の状況に応じ、多様かつ機動的に職業訓練を行うため、各種職業教育訓練機関等を活用し、委託訓練、速成訓練、職場適応訓練を積極的にすすめる。
三 公共職業訓練校における入校時期の多様化
公共職業訓練校における入校時期を多様化し、離転職者に対する訓練機会を拡大する。
四 モジユール訓練方式の開発
離転職者が職業転換のために必要な技能を必要な時期に機動的に習得できるようモジユール(単位制)方式の開発をすすめる。