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○勤労青少年福祉法の施行について

(昭和四五年六月一八日)

(発婦第一四号)

(各都道府県知事あて労働事務次官通達)

勤労青少年福祉法(以下「法」という。)は、昭和四五年五月二五日、法律第九八号をもつて公布、施行され、これに伴い、婦人少年問題審議会令の一部を改正する政令(昭和四五年政令第一三九号)及び労働省組織令の一部を改正する政令(昭和四五年政令第一四〇号)も同日公布、施行された。

本法は、最近の勤労青少年問題に対処して、勤労青少年の福祉に関する諸施策を総合的かつ一体的に推進することを意図するものであり、その運用のいかんは、勤労青少年の福祉の増進に多大の影響をもたらすことにかんがみ、特に下記に留意して、法の目的達成に努められたく、命により通達する。

Ⅰ 法制定の趣旨について

わが国の経済が高度の成長を続けるなかで、今後における労働行政の課題は、経済の成長と勤労者の福祉との調和を図ることにあるが、なかんずく、勤労青少年は、明日の社会をになう者であり、これらの者が希望と意欲をもつて勤労に従事することができるようその福祉の増進を図ることは重要な課題となつている。

ところで、勤労青少年の職業生活の現況をみると、最近における経済、社会の急速な変動は勤労青少年の生活にも多くの影響を及ぼし、勤労青少年のなかには、職業生活に十分適応することができず、あるいは孤独感に悩み、あるいは安易に離転職をくり返す等幾多の憂慮すべき現象がみられるところであり、これら勤労青少年問題に対する国民の関心は著しく高まつており、勤労青少年の福祉施策の拡充が各方面から強く要請されている。

本法は、かかる情勢にかんがみ、勤労青少年の福祉に関する国の姿勢を明らかにするとともに、勤労青少年の福祉に関する諸施策を総合的、計画的に推進し、もつて勤労青少年の福祉の増進を図ろうとするものである。

Ⅱ 一般的事項について(法第一章関係)

一 目的(法第一条関係)

本法の目的は、勤労青少年の福祉に関する原理を明らかにするとともに、勤労青少年について、職業指導の充実、職業訓練の奨励、福祉施設の設置等の措置を計画的に推進し、もつて勤労青少年の福祉の増進を図ることにある。

二 基本的理念(法第二条及び第三条関係)

勤労青少年は、心身の成長過程において勤労に従事する者であり、かつ、特に将来の産業及び社会をになう者であることにかんがみ、勤労青少年が充実した職業生活を営むことができるとともに、有為な職業人としてすこやかに成長することができるように配慮されるべきであるという、勤労青少年の福祉に関する基本的理念を宣言的に定めたものである。

また、勤労青少年は、勤労に従事する者であるという自己の役割を十分自覚し、みずからすすんで有為な職業人として成育するように努力すべきであることを定めている。すなわち、およそ勤労青少年のすこやかな成育は、本人の自覚と努力に負うところが大きいことにかんがみ、このことを基本的理念として明らかにしたものである。

三 関係者の責務(法第四条関係)

勤労青少年を雇用する事業主並びに国及び地方公共団体は、それぞれの立場において勤労青少年の福祉を増進するように努めるべき責務を有することを総括的に宣言するとともに、事業主又は国若しくは地方公共団体は、その措置又は施策を通じて第二条及び第三条に規定する勤労青少年の福祉に関する基本的理念が具現されるよう配慮しなければならないことを明らかにしたものである。

四 勤労青少年の日(法第五条関係)

ひろく国民が勤労青少年の福祉についての関心と理解を深め、かつ、勤労青少年がみずからすすんで有為な職業人としてすこやかに成育しようとする意欲をたかめるため、七月の第三土曜日を勤労青少年の日として定めたものである。また、国及び地方公共団体は、勤労青少年の日において、これが設けられた趣旨にふさわしい事業がひろく実施されるよう努めなければならないこととした。

Ⅲ 勤労青少年福祉対策基本方針等について(法第二章関係)

労働大臣は、勤労青少年の福祉に関する施策の基本となるべき方針(以下「勤労青少年福祉対策基本方針」という。)を定めるものとされ、都道府県知事はこれを参酌して当該都道府県における勤労青少年の福祉に関する事業の基本となるべき計画(以下「都道府県勤労青少年福祉事業計画」という。)を策定するよう努めなければならないこととされたが、このことは、国及び都道府県が一貫した方針のもとに、勤労青少年の福祉施策を計画的に推進することを目的とするものである。

一 勤労青少年福祉対策基本方針(法第六条関係)

勤労青少年福祉対策基本方針は、施策策定の前提となる勤労青少年の職業生活の動向及び勤労青少年の福祉の増進について講じようとする施策の基本となるべき事項を定めるものである。この場合に、基本方針は、勤労青少年の職業生活と密接に関連する労働条件、意識並びに地域別、産業別及び企業規模別の就業状況等を考慮して定められなければならないこととし、また、特に、勤労青少年福祉対策基本方針を定めるにあたつては、労働大臣は、あらかじめ、婦人少年問題審議会の意見をきくほか、都道府県知事の意見を求めたうえで、決定しなければならないものとされている。

なお、本法に基づいて策定する当初の勤労青少年福祉対策基本方針は、おおむね昭和五〇年度までの勤労青少年福祉対策の基本となるべき方針を本年末頃に策定する予定である。

二 都道府県勤労青少年福祉事業計画(法第七条関係)

都道府県勤労青少年福祉事業計画は、都道府県における勤労青少年福祉施策の基本となるものであり、また、間接的には管下市町村の実施する勤労青少年の福祉施策についてその方向を示すものであるから、計画策定にあたつて必要があると認めるときは、管下関係市町村の長の意見をきくとともに、各事業が有機的な関連をもつて計画されるよう配慮されたい。

なお、都道府県勤労青少年福祉事業計画は、勤労青少年福祉対策基本方針が策定された後に同方針に準じて策定されることとなるが、各都道府県においては、本制定の趣旨を理解し、的確な事業計画を策定するための事務体制を速やかに確立し、計画策定のための基礎資料の整備等諸般の準備をすすめられたい。

Ⅳ 福祉の措置について(法第三章関係)

勤労青少年の福祉を増進するために国、地方公共団体、雇用促進事業団及び事業主が講ずる措置について、その重点的事項を具体的に示したものである。もとより勤労青少年の福祉の措置はこれにつきるものでなく、このほか、本法の趣旨に即した施策が行なわれることが期待されることは、法第四条に定められているとおりである。

一 職業指導等(法第八条~第一〇条関係)

勤労青少年が充実した職業生活を営み、有為な職業人として成育するためには、勤労青少年が適職を選択し、職業に円滑に適応しうるよう配慮することが極めて重要であることにかんがみ、職業安定機関は、勤労青少年に対してはもとより、その職業選択に大きな影響力をもつ、親、学校の教師等に対して、職業の動向、労働力需給の状況、求人内容等に関する情報を提供するほか、勤労青少年に対して、適性検査の実施その他勤労青少年の特性に応じたきめ細かな職業指導を行なう等必要な措置を講ずるものとした。

また、職業安定機関は、勤労青少年が職業に適応することを容易にするため、その就職後においても、勤労青少年、事業主その他関係者に対して、相談に応じ及び必要な指導を行なうことができるものとし、必要な場合には、職業安定機関の長がこれらの相談指導の業務を当該業務について熱意と識見を有する者に委託することができることとしたものである。

二 職業訓練に関する啓もう宣伝等(法第一一条関係)

職業訓練に関する啓もう宣伝等の措置は、勤労青少年において、社会一般の学歴偏重、技能軽視等の風潮により、技能習得の意欲がそこなわれている傾向がみられ、これが勤労青少年の職業不適応を招いている面も認められるので、職業訓練法と相まつて、勤労青少年がみずからすすんで職業に必要な技能、知識を習得することを促進しようとするものである。

したがつて、都道府県においては、職業訓練の重要性に関する啓もう宣伝等について、勤労青少年、事業主及びその団体を対象とするほか勤労青少年の親、学校の教師等も積極的に対象としてとりあげ、新聞、雑誌、放送等の機関の協力を得る等効果的な措置を積極的に講じられたい。

三 職業訓練又は教育を受ける勤労青少年に対する配慮(法第一二条関係)

職業訓練又は教育を受ける勤労青少年に対する配慮の規定は、勤労青少年に対して、法定職業訓練又は学校教育を受けるための通学、受講等の便宜をはかることにより、その能力の開発向上に資することがその趣旨である。

事業主の配慮の対象となる学校等の範囲は、注文上明記されている高等学校の定時制の課程、通信制の課程のほか、後期中等教育段階の勤労青少年が職業上必要な知識、技能を習得するために通学する各種学校を含むものである。

本規定の実効を期するためには、事業主に周知徹底を図るほか、教育、訓練施設の整備及び運営の改善等が図られる必要があるので、関係機関及び団体等との連けいを密にし、その協力を得て地域の実情に応じ効果的な施策が実施されるよう配慮されたい。

四 勤労青少年福祉推進者(法第一三条関係)

勤労青少年福祉推進者制度は、勤労青少年の職場環境が勤労青少年の職場適応や人間形成に大きな影響を及ぼすものであることにかんがみ、職場における生活指導、相談、レクリエーシヨン等の福祉の事業を制度的に推進しようとするものである。

勤労青少年福祉推進者を選任すべき事業場の範囲及びその資格については、労働省令で定めることとされているが、本省令はおつて公布する予定である。

都道府県においては、本制度の円滑な普及を図るため、関係行政機関、事業主団体等と緊密に連けいし、適切な措置を講ずるよう配意されたい。

また、本制度の健全な発展を図るためには、勤労青少年福祉推進者の資質向上のための研修会、研究会等の開催が有効であるので、関係行政機関、事業主団体等とも緊密に連けいし、その実施について、必要な指導、援助に努められたい。

五 余暇の有効活用(法第一四条関係)

余暇生活の充実は、勤労青少年の成育にとつて極めて重要な意味をもつものであるので、本法において余暇の活用に関する国及び地方公共団体の任務を規定したものである。

特に、余暇の有効活用に関しては、勤労青少年の生活に即応し、多数の勤労青少年が自主的、自発的に参加できる事業が活発に行なわれるよう、地方公共団体が特段の配慮をすることが期待されている。

都道府県においては、関係行政機関、事業主団体等と緊密に連けいしてスポーツ、レクリエーシヨン等の事業を効果的に実施するとともに、管下市町村、事業主団体、勤労青少年団体等によつてそれらの事業が自主的かつ積極的に実施されるよう適切な措置を講じられたい。

また、特に勤労青少年のクラブ活動の重要性にかんがみ、勤労青少年の生活の実態に即したクラブの結成やその健全な活動の援助のために指導者の養成等効果的施策を積極的に講ずるとともに、管下市町村においてもこれらの事業が自主的に実施されるよう必要な指導、援助に努められたい。

なお、これらの措置を講ずるにあたつては、勤労青少年の自主的活動としての特性をそこなうことのないよう留意されたい。

Ⅴ 福祉施設について(法第四章関係)

一 勤労青少年ホーム(法第一五条関係)

昭和三二年以来各地域に設置されてきた勤労青少年ホームについて、その設置に関する努力義務を地方公共団体に課すとともに、勤労青少年ホームの目的等を法定化し、その設置及び利用の促進を図り、勤労青少年の福祉増進のための事業をより円滑に推進することを期したものである。

勤労青少年ホームは、地域性の強い福祉施設であることにかんがみ、市町村が主としてこれを整備するよう努めるべきであるが、都道府県においても、勤労青少年ホームに対する社会的需要の増大とその重要性にかんがみ、管下市町村に対して、「広域市町村圏の振興整備に関する施策」と密接な連けいのもとに、勤労青少年ホームが必要な地域に適切に整備されるよう指導するとともに、みずからも必要に応じ設置するよう配慮されたい。

労働大臣が定めるものとされた「勤労青少年ホームの設置及び運営についての望ましい基準」は、おつて定められることとなるが、都道府県においては、その地域の勤労青少年ホームの実情をは握して、本基準の趣旨が円滑に実現されるよう適切な指導、援助を行なわれたい。

二 勤労青少年ホーム指導員(法第一六条関係)

勤労青少年ホームには、勤労青少年に対する相談及び指導の業務を担当する勤労青少年ホーム指導員を置くように努めなければならないこととし、また、その資格については労働大臣が定めることとされた。

都道府県においては、勤労青少年ホーム指導員が、勤労青少年福祉行政の第一線において中核としての機能を果たすものであることにかんがみ、おつて定められるところにより、適任者が配置されるよう管下関係市町村に対し、適切な指導を行なわれたい。

三 雇用促進事業団が設置する施設(法第一七条関係)

雇用促進事業団が、勤労青少年センター、勤労青少年体育施設等勤労青少年に係る福祉施設の設置及び運営を行なうにあたつての留意事項を明らかにしたものである。

Ⅵ その他の事項について(法第五章関係)

一 国の助言等(法第一八条関係)

本法の目的を達成するため、勤労青少年の福祉を増進するための事業について、国が地方公共団体、事業主団体等の関係者に対して、必要な援助をすることを明らかにしたものである。

二 調査等(法第一九条関係)

勤労青少年の福祉に関する施策の的確かつ効果的な実施を図るため、労働大臣は、勤労青少年福祉対策基本方針を定めるについて、必要な調査を実施し、関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求め、さらに都道府県知事から必要な調査報告を求めることができる旨を明らかにしたものである。

三 船員に関する特例(法第二〇条関係)

船員及び船員になろうとする勤労青少年に係る勤労青少年福祉対策基本方針の策定、方針策定に必要な調査の実施等については、運輸大臣が行なうこととしたものである。