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○雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部施行(第二次施行分)について

(平成九年一一月四日)

(基発第六九五号・女発第三六号)

(各都道府県労働基準局長、各都道府県女性少年室長あて労働省労働基準局長・労働省女性局長通達)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成九年法律第九二号。以下「整備法」という。)については、本年六月一八日付け労働省発婦第一六号により、労働事務次官より貴職あて通達され、また、整備法の本年一〇月一日施行分(第一次施行分)に関して、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整理等に関する政令(平成九年政令第二九三号)」、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令(平成九年労働省令第三一号。以下「整備省令」という。)」(第一次施行分)等が本年九月二五日に公布又は告示され、これらの主たる内容及び取扱いについて、同日付け政調発第一六九号・労発第二一四号・基発第六四八号・婦発第二七四号・職発第六九九号・能発第二四〇号により通達したところである。

さらに、同日、整備法の平成一〇年四月一日施行分(第二次施行分)に関しても、上記の整備省令(第二次施行分)が公布されるとともに、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成九年労働省告示第一〇五号。以下「指針」という。)」が告示されたところである(別紙一参照)。これら整備省令(第二次施行分)及び指針は、整備法の第二次施行分とともに平成一〇年四月一日から施行又は適用されることとなっている。これらの主たる内容及び取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。

第一 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(法第二六条及び第二七条関係)

一 保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保(法第二六条関係)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律(昭和四七年法律第一一三号。以下「法」という。)第二六条は、妊産婦に対する保健指導・健康診査について、母子保健法(昭和四〇年法律第一四一号)第一〇条及び第一三条により、市町村が妊産婦に対して保健指導・健康診査を自ら行い、又は妊産婦が受けることを勧奨しなければならないものとされているにもかかわらず、女性労働者の場合には受診の時間を確保することが困難な場合があることから、必要な時間の確保を事業主に義務づけることとしたものであること。

(一) 保健指導又は健康診査の定義について

イ 法第二六条における「母子保健法の規定による保健指導又は健康診査」は、母子保健法を受けて定められている厚生省児童家庭局長通知(平成八年一一月二〇日付け児発第九三四号)「母性、乳幼児の健康診査及び保健指導に関する実施要領」による妊産婦に対する保健指導と健康診査の関係及び回数が、医師又は助産婦(以下「医師等」という。)による産科に関する健康診査とその健康診査に基づく保健指導として一対のものと解されていることに従い、一対の「健康診査及び保健指導」と解するものであること。

ロ 「保健指導又は健康診査」の具体的内容は、問診、診察及び諸検査並びにそれらに基づく疾病の予防、健康の保持増進に必要な保健上守るべき事項の指示、指導又は療養の指導をする個別の保健指導であり、その対象は、女性労働者本人に限られ、配偶者、乳児、幼児は含まれないものであること。

ハ なお、事業主は、女性労働者が希望する場合には、母親学級及び両親学級等の集団での保健指導、歯科健康診査及び歯科保健指導についてもできる限り受けることができるように配慮することが望ましいこと。

(二) 確保すべき必要な時間の具体的内容について

イ 法第二六条の「保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間」とは、健康診査の受診時間、保健指導を受けている時間、医療機関又は助産所等(以下「医療機関等」という。)における待ち時間及び医療機関等への往復時間をあわせた時間であること。

ロ 「必要な時間を確保する」とは、女性労働者からの申出があった場合に、勤務時間の中で、健康診査及び保健指導を受けるために必要な時間を与えるものであること。

ハ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律施行規則(昭和六一年労働省令第二号。以下「則」という。)第一八条は、「保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間」に関し、事業主が確保すべき具体的内容として、妊娠週数の区分に応じた保健指導及び健康診査の回数等について規定したものであること。

(イ) 則第一八条第一号は、女性労働者が妊娠中である場合について定めたものであり、同号本文は、(一)イの一対の「健康診査及び保健指導」について、正常な経過の妊娠における最低限の回数を、次のとおり定めたものであること。

妊娠二三週までは四週間に一回

妊娠二四週から三五週までは二週間に一回

妊娠三六週以後出産までは一週間に一回

また、同号ただし書は、医師等がこれと異なる指示をしたときは、その指示するところにより、必要な時間を確保することができるようにするものであること。

この場合の「妊娠中」とは、医師等により妊娠が確認された時から出産までとするものであること。したがって、通院のために必要な時間の申請は、原則として医師等により妊娠が確定された後となるため、妊娠しているかどうかを診断する初回の通院は同号の対象とはならないこと。

なお、回数の数え方は以下のとおりであること。

a 「妊娠週数」とは、妊娠経過を表す単位であり、妊娠経過は、最終月経の第一日目を〇日として、最初の一週を〇週として数えるものであること(下図参照)。

b 「期間」は、暦日計算によること。「期間以内」とは、一の健康診査及び保健指導を受けた日の翌日から数えて、表中に示す週の起算曜日に応当する日の前日までのことであること。したがって、例えば、「四週」の場合は一の受診日が木曜日である場合、その翌日である金曜日から数えて四週目に当たる週の木曜日までの期間をいうこと(下図参照)。

ただし、実際には、医師等が指示する次の受診日が、四週目に当たる日の後になることもあるので、その場合は、医師等の指示を受けて女性労働者が申し出た日とすること。

なお、一の通院日から次の通院日までの期間が、妊娠週数の次の区分にまたがる場合については、則第一八条第一号の表中の「期間」は、一の受診日の属する週数区分を基準にした場合(受診日基準期間)と、次の週数区分に対応する期間の初日を基準にした場合(初日基準期間)とを比較して、短い日までの期間を原則とすること(下図参照)。

なお、医師によっては、受診した日の週数区分の期間を基準として、次の受診日を指示する場合があるが、この場合には、医師等の指示するところによること。例えば、妊娠二三週及び妊娠三五週の時期は、四週後の二七週目及び二週後の三七週目を指示することもあるので、医師等が指示した日に必要な時間を確保することとすること。

[妊娠23週から24週にまたがる場合の例]

(初日基準期間の方が短い場合)

(受診日基準期間の方が短い場合)

c 「一回」とは、健康診査とその結果に基づく保健指導をあわせたものであること。

なお、通常、健康診査と保健指導は同一の日に引き続き行われることが多いが、医療期関等によっては、健康診査に基づく保健指導を別の日に実施する場合もあり、この場合においても、両者をあわせて一回とみなすこと。したがって、事業主は、女性労働者が健康診査を受診した日とは別の日に保健指導のみ受ける場合についても必要な時間を確保する必要があること。

d 則第一八条第一号ただし書の「医師又は助産婦がこれと異なる指示をしたとき」とは、妊娠中の異常が発生するおそれがある場合又は症状等に対応して、医師等が上記(イ)の最低限の回数を超える回数の指示を行い、女性労働者が申し出たときは、その指示により、健康診査及び保健指導を受診するための必要な時間を確保することができるようにするものであること。

(ロ) 則第一八条第二号は、産後(出産後一年以内)について、医師等が保健指導又は健康診査を受けることを指示したときは、その指示するところにより、必要な時間を確保しなければならないことを規定したものであること。なお、前述の厚生省児童家庭局長通知「母性、乳幼児の健康診査及び保健指導に関する実施要領」において、産褥の後期は、四週前後に一回(産褥期の終わる六~八週までは注意を要する)健康診査及び保健指導を受けることとされているが、この期間は、女性労働者の場合、産後休業期間中に当たっている。したがって、同号は、産後休業終了後においても、産後の回復不全等の症状等により、例外的に対応する必要がある場合について定めたものであること。

(三) 必要な時間の確保の方法について

イ 必要な時間の与え方及び付与の単位

女性労働者が健康診査及び保健指導を受けるために必要な時間(以下「通院休暇」という。)の付与方法(申請を書面で行うか否か等)及び付与単位(時間単位か半日単位か等)については、通常、契約に定めるところにより、事業主が具体的に定めることとなるが、その定め方によって、実質的に女性労働者の通院が妨げられることがあってはならないこと。

また、通院休暇制度を設ける場合には、個々の労働者によって、通院する医療機関等と勤務地との距離が異なること、医師等に指定された診察時間も一定ではないことなどに配慮し、通院に要する時間の付与単位は時間単位等にするなど融通を持たせた制度を設けることが望ましいこと。

なお、女性労働者が通院休暇を取得しやすいようにするためにも、通院休暇中の賃金の有無については、契約ないし労使で話し合って定めておくことが望ましいこと。

また、既に、有給の通院休暇制度を導入している企業は、整備法の一部施行をもって、特に取扱いを変更する必要はないものであること。

ロ 業務との調整等

健康診査及び保健指導を受けるための通院日は、原則として女性労働者が希望する日(医師等の指示に基づき女性労働者が申し出た日)とすること。

例えば、会社の休日又は交替制勤務による非番日に通院可能な場合にも、事業主が通院日を会社の休日や女性労働者の非番日に変更させること又は休日以外の申請を拒否することは原則としてできないこと。

なお、事業主が業務の都合等により、やむを得ず通院日の変更を行わせる場合においては、変更後の通院日は、原則として、女性労働者本人が希望する日とすること。この場合、医師等があらかじめ日を指示していたときは、当該日までの期間内で、原則として、女性労働者本人が希望する日とすること。

また、通院する医療機関等は、原則として、本人が希望する医療機関等とすること。

ハ 通院休暇の申請手続

(イ) 申請に必要な事項

女性労働者が事業主に対して通院休暇を申請するに当たっては、通院の月日、必要な時間、医療機関等の名称及び所在地、妊娠週数等を書面で申請することが望ましいこと。

なお、その場合の申請様式としては、別紙二が参考として考えられること。

(ロ) 申請に必要な書類

事業主は、妊娠週数又は出産予定日を確認する必要がある場合には、女性労働者の了承を得て、診断書、出産予定日証明書等の提出を、女性労働者に対し求めることができること。この場合、証明する書類として母子健康手帳を女性労働者に開示させることは、プライバシー保護の観点から好ましくないこと。

(ハ) 申請時期

女性労働者は、通院休暇の申請を原則として事前に行う必要があること。ただし、事業主が、事後の申請について、遡って承認することを妨げるものではないこと。

なお、女性労働者は母性健康管理のための措置が適切に受けられるように、出産予定日が判明したら、早期に事業主に届け出ることが望ましいこと。また、次回の通院日についても、決まり次第、事業主に知らせることが望ましいこと。

二 指導事項を守ることができるようにするための措置(法第二七条関係)

法第二七条は、妊娠中及び出産後の女性労働者が法第二六条の保健指導又は健康診査を受け、医師等から母体又は胎児の健康保持等について指導を受けた場合は、当該女性労働者がその指導事項を守ることができるようにするために、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講ずることを事業主に義務づけるとともに、その適切かつ有効な実施を図ることができるよう、事業主が講ずべき具体的措置に関して、労働大臣が指針を定めることとしたものであること。

(一) 指導事項を守ることができるようにするための措置について

「勤務時間の変更、勤務の軽減等」の「等」には、通勤緩和、休憩及び休業が含まれるものであること。

(二) 事業主が講ずべき措置に関する指針について

指針二(一)の通勤緩和及び指針二(二)の休憩に関する措置については、正常な経過の妊娠中の女性労働者も含め対象としているのに対し、指針二(三)の症状等に対応する措置は、妊娠中及び出産後の経過に異常又はそのおそれがある場合を想定したものであること。

イ 妊娠中の通勤緩和

指針の二(一)は、交通機関の混雑による苦痛がつわりの悪化や流・早産等につながるおそれがあるとして、医師等から通勤緩和の指導を受けた旨妊娠中の女性労働者から申出があった場合には、事業主は、当該女性労働者がラッシュアワーの混雑を避けて通勤することができるよう、必要な通勤緩和の措置を講じなければならないことを明らかにしたものであること。

(イ) 通勤緩和の定義

「妊娠中の通勤緩和」とは、通勤による母体及び胎児への負担を緩和させる措置のことであること。

「交通機関」とは、電車、バス等の公共交通機関の他、自家用車も含まれること。したがって、「混雑」には、公共の交通機関の乗降場、車内又は道路における混雑も含まれること。

(ロ) 措置の具体的内容

「時差出勤、勤務時間の短縮等」は、通勤緩和の措置の具体的な内容として例示したものであり、「等」には、交通手段や通勤経路の変更が含まれること。

また、措置の具体的内容については、企業内の産業医等産業保健スタッフや母性健康管理推進者の助言に基づき女性労働者と話し合って定めることが望ましいこと。その場合、通勤緩和に関する具体的な措置内容の判断に当たっては、通勤時の交通事情は労働者の居住地、会社の始業時刻等により、様々に異なるので、妊娠中の女性労働者の健康状態や通勤事情を勘案して、決定することが望ましいこと。標準的な内容としては、次の措置が考えられること。

a 時差出勤

「時差出勤」は、交通機関等の混雑を避けるために、必要かつ充分なものを行うこと。例えば、始業時間及び終業時間に各々三〇分~六〇分程度の時間差を設けることや、労働基準法(昭和二二年法律第四九号)第三二条の三に規定するフレックスタイム制度を適用することが考えられること。

b 勤務時間の短縮

「勤務時間の短縮」は、通勤緩和のために必要かつ充分なものを行うこと。例えば、通例、一日三〇分~六〇分程度の時間短縮が考えられること。

(ハ) 医師等の具体的指導がない場合

a 指針二(一)は「事業主は、医師等による具体的な指導がない場合においても、(中略)適切な対応を図る必要がある。」としているが、これは、通常、医師等は妊娠中の女性労働者が通勤に利用する交通機関の混雑状況を知り得ないため、通勤緩和が必要であるという指導がなされない場合があることを考慮し、その場合における望ましい対応として、事業主は当該女性労働者から通勤緩和の措置の申出があったときは、その通勤事情を勘案し、適切な対応を図る必要があるとしたものであること。

b 「担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等」とは、事業主がとるべき適切な対応の例示として挙げたものであり、女性労働者を介して担当の医師等の判断を求めるほか、混雑の程度が激しければ、直ちに通勤緩和の措置を講ずることや、企業内の産業保健スタッフや母性健康管理推進者に相談する等の対応が考えられること。

また、既に、女性労働者からの申出に応じて通勤緩和の措置を講じている企業は、本指針の策定をもって、特に取扱いを変更する必要はないものであること。

ロ 妊娠中の休憩に関する措置

指針二(二)は、勤務の負担が妊娠の経過に影響を及ぼすとして、医師等から休憩に関する措置について指導を受けた旨妊娠中の女性労働者から申出があった場合には、事業主は当該女性労働者が適宜の休養や補食ができるよう、休憩時間を長くする、回数を増やす等休憩に関する措置を講じなければならないことを明らかにしたものであること。

(イ) 措置の具体的内容

「休憩時間の延長、休憩の回数の増加等」は、休憩に関する措置の具体的な内容として例示したものであり、「等」には、休憩時間帯の変更が含まれること。

また、休憩室の設置まで求めるものではないが、臥床できる休養室等での休憩が望ましいこと。

なお、措置の具体的内容については、企業内の産業保健スタッフや母性健康管理推進者の助言に基づき女性労働者と話し合って定めることが望ましいこと。その場合、休憩に関する具体的な措置内容の判断に当たっては、妊娠中の女性の健康状態には個人差があることから、個々の女性労働者の作業内容を勘案して、決定することが望ましいこと。

a 休憩時間の延長及び回数の増加

休憩時間の延長及び回数の増加については、妊娠中の女性労働者の状況に応じて適宜与えること。

b その他

休憩場所を設ける場合には、妊娠中の女性労働者に、臥床できる休養室を設けることが望ましく、また、臥床できる施設として、長椅子等を利用する場合は、つい立てを立てる等の工夫をすることが望ましいこと。

また、妊娠中の女性労働者が、立作業に従事している場合にも、側に椅子を置くなどにより、当該女性労働者が休憩を取り易いようにすることが望ましいこと。

(ロ) 医師等の具体的な指導がない場合

a 指針二(二)は、「事業主は、医師等による具体的な指導がない場合においても、(中略)適切な対応を図る必要がある。」としているが、これは、通常、医師等は妊娠中の女性労働者の職場における作業の状況やその変化を詳細に知り得ず、医師等の指導が充分に及ばない場合があることを考慮し、その場合における望ましい対応として、事業主は当該女性労働者から休憩に関する措置の申出があったときは、その女性労働者の状況を勘案し、適切な対応を図る必要があるとしたものであること。

b 「担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等」とは、事業主が図るべき適切な対応の例示として挙げたものであり、女性労働者を介して担当の医師の判断を求める他、直ちに休憩に関する措置を講ずることや、企業内の産業保健スタッフや母性健康管理推進者に相談する等の対応が考えられること。

なお、既に、適宜、休憩の措置を講じている企業は、本指針の策定をもって、特に取扱いを変更する必要はないものであること。

ハ 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置

指針二(三)は、妊娠中又は出産後の女性労働者が、健康診査及び保健指導を受けた結果、医師等からその症状等について指導を受け、それを事業主に申し出た場合には、事業主は医師等の指導に基づき、当該女性労働者が指導事項を守ることができるようにするため、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の措置を講じなければならないことを明らかにしたものであること。

また、担当の医師等による当該指導に基づく措置の内容が不明確な場合にも、担当の医師等と連絡をとり判断を求める等により、必要な措置を講じなければならないことを明らかにしたものであること。

(イ) 対象とする女性労働者の範囲

指針二(三)は、妊娠中及び出産後一年を経過していない女性労働者を対象とするものであること。「出産後一年を経過していない」とは、出産日の翌日から数えて一年目に当たる日の前日までをいうこと。

(ロ) 措置の具体的内容

「作業の制限、勤務時間の短縮、休業等」は、症状等に対応する措置の具体的内容として例示したものであり、「等」には、例えば、つわりの症状に対応するために悪臭のする勤務場所から移動させる等作業環境の変更が含まれること。

また、妊娠中及び出産後の症状等の内容及び程度は、女性労働者によって様々に異なるので、事業主は医師等の指示に従い、必要な措置を講ずるものであること。

なお、措置の具体的内容については、企業内の産業保健スタッフや母性健康管理推進者の助言に基づき、女性労働者と話し合って定めることが望ましいこと。その場合、勤務時間の短縮の程度等の具体的な措置内容の判断に当たっては、症状には個人差があることにかんがみ、個々の症状を勘案して、決定することが望ましいこと。また、産業保健スタッフや母性健康管理推進者に相談する際には、別表を参考として決定することが望ましいこと。標準的な内容としては、次の措置が考えられること。

a 作業の制限

「作業の制限」は、必要かつ充分なものを行うこと。例えば、ストレス・緊張を多く感じる作業の制限、同一姿勢を強制される作業の制限、腰に負担のかかる作業の制限、寒い場所での作業の制限等の措置が考えられること。

b 勤務時間の短縮

「勤務時間の短縮」は、症状等に対する医師等の指示に従い、必要かつ充分な措置を講じること。

c 休業

女性労働者が、医師等から休業すべき旨の指示を受け、申出を行った場合は、事業主は医師等から指示された措置が必要な期間、休業の措置を講じること。

(ハ) 医師等の指示が不明確である場合における事業主がとるべき具体的措置

「医師等と連絡をとりその判断を求める等」とは、事業主がとるべき対応の例示を示したものであるが、指針二(三)の場合は、女性労働者の妊娠の経過に異常又はそのおそれがある場合であるので、事業主は、女性労働者を介して担当の医師等に確認をとり、その判断を求めたり、企業内の産業保健スタッフに相談する等により必要な措置を講ずること。その場合において、医師等による指導又は企業内の産業保健スタッフによる措置の判断を行うに当たっては、別表を参考にすることが望ましいこと。

(ニ) 休業中等の待遇

妊娠中の症状等に対応し、確実に医師等の指導事項を守ることができるようにするためにも、休業中等の賃金等の取扱いについては、契約ないし労使で話し合って定めておくことが望ましいこと。

ニ 母性健康管理指導事項連絡カードの利用

事業主が母性健康管理上必要な措置を講ずるためには、医師等の指導を受けた旨の女性労働者の申出が必要である。また、事業主が必要な措置を適切に講ずることができるようにするためには、指導事項の内容の的確な伝達と講ずべき措置内容の明確化が重要である。このため、指針三(一)は、「母性健康管理指導事項連絡カード」(以下「指導事項連絡カード」という。)を設けるとともに、事業主に「指導事項連絡カード」の利用を促すこととしたものであること。

なお、「指導事項連絡カード」を使用しない場合においても、事業主に対して医師等の指導事項の内容、妊娠週数、出産予定日等を書面により申し出ることが望ましいこと。

「指導事項連絡カード」の使用方法は、次のとおりであること。

(イ) 「指導事項連絡カード」は、「一 氏名等」、「二 指導事項」(「標準措置と異なる措置が必要である等の特記事項」欄を含む。)、「三 上記二の措置が必要な期間」及び「四 その他の指導事項」については、医師等が記入し、署名又は記名押印をして女性労働者に渡すこと。

(ロ) 女性労働者は、カードの裏面下の「指導事項を守るための措置申請書」欄に、申請日、所属及び氏名を記入して事業主に措置を申し出るものとすること。

(ハ) 事業主は、「指導事項連絡カード」を受け取った場合には、指導事項の左欄の症状等に対応する措置として右欄の「標準措置」又は「標準措置と異なる措置が必要である等の特記事項」がある場合には、当該特記事項に基づく措置を講ずるものであること。

女性労働者から申出を受けた事業主は、措置内容を決定した後、速やかに、当該女性労働者に対して、措置内容を明示する必要があること。その場合において、措置の明示は、書面によることが望ましいこと。

ホ プライバシーの保護

指針三(二)は、個人の健康状態に関する情報は個人のプライバシーに属するものであるため、母性健康管理の措置の運用に当たっては、プライバシーの保護に充分留意する必要がある旨注意を喚起したものであること。

三 適用除外(法第三五条関係)

法第二六条及び第二七条の規定は、一般職の国家公務員(国営企業に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国会職員及び防衛庁職員に関して適用しないものとしたこと。

なお、地方公務員については、適用することとなること。

第二 多胎妊娠の場合の産前休業期間の延長(労働基準法第六五条第一項関係)

労働基準法第六五条第一項の改正は、多胎妊娠の場合、単胎妊娠の場合に比して、異常の発生及び妊婦の負担が大きいこと、また、最近の医学的知見においては、母体の状況等が多胎の場合の妊娠二六週(産前一四週)は、単胎の場合の三四週(産前六週)に相当し、当該週以降、慎重な管理が必要とされていることから、多胎妊娠の場合の産前休業の期間を、一〇週間から一四週間に延長することとしたものであること。

第三 関係通達の整理

一 「妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理上必要な措置」(昭和四八年八月三〇日付け婦発第二六六号)は、廃止する。