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○雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律について

(平成九年六月一八日)

(労働省発婦第一六号)

(各都道府県労働基準局長、各都道府県婦人少年室長、各都道府県知事あて労働事務次官通達)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(以下「整備法」という。)については、本年二月七日に第一四〇回通常国会に提出され、審議が重ねられてきたところであるが、六月一一日原案どおり可決成立し、本日、平成九年法律第九二号として公布されたところである。この法律は、平成一一年四月一日から施行されることとなるが、母性保護に関する部分については、平成一〇年四月一日から、「都道府県婦人少年室」の「都道府県女性少年室」への名称変更等に関する部分については、公布の日から六月以内の政令で定める日から、それぞれ施行される。

今回の法改正の趣旨及び概要は下記のとおりである。労働省としては、この法律の円滑な施行に向けて万全を期すこととしており、この法律の施行のために必要な関係政省令及び指針については、今後、可及的速やかに関係審議会に諮り、その答申を得て制定・公布の上、施行までに十分な期間を置いてその周知に努めることとしている。

貴職におかれては、以上のことを十分御理解の上、関係機関相互間での連携を図りつつ、本法の周知を図るなど所要の準備に努められたく、命により通達する。

第一 改正の趣旨

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律が施行されて一〇年が経過し、この間、女性の雇用者数の大幅な増加、勤続年数の伸長、職域の拡大がみられ、女性の就業に関する国民一般の意識や企業の取組も大きく変化している。また、週四〇時間労働制の実施などにより、年間実労働時間も着実に減少しており、育児休業制度や介護休業制度の法制化に代表される職業生活と家庭生活の両立を可能にするための条件整備も進展している。

しかしながら、女子学生の就職問題にみられるように、雇用の分野において女性が男性と均等な取扱いを受けていない事例が依然として多く見受けられ、近年、企業における女性の雇用管理の改善は足踏み状態にある。

働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するとともに、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくることは、働く女性のためだけでなく、少子・高齢化の一層の進展の中で、今後引き続き我が国経済社会の活力を維持していくためにも、極めて重要な課題である。

整備法は、このような課題に適切に対処するため、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等を図る観点から、労働省所管の関係法律について法的整備を行うものである。

第二 整備法第一条による雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律の一部改正

一 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(第二六条及び第二七条関係)

(一) これまで事業主の努力義務であったものを義務化し、事業主は、労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならないものとしたこと。

(二) これまで事業主の努力義務であったものを義務化し、事業主は、その雇用する女性労働者が(一)の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならないものとしたこと。

(三) 労働大臣は、(二)の事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を定めるものとしたこと。

(四) 労働大臣は、(三)の指針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くものとしたこと。

(五) 労働大臣は、(三)の指針を策定及び変更したときは、遅滞なく、その概要を公表するものとしたこと。

二 その他

(一) 「女子」を「女性」に置き換える等用語の整理を行うものとしたこと。

(二) 一については、一般職の国家公務員(国営企業に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国会職員及び防衛庁職員に関しては適用しないものとしたこと(第三五条関係)。

第三 整備法第二条による雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律の一部改正

一 題名の改正

法律の題名を「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律」から「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」に改めるものとしたこと。

二 総則の改正

(一) 目的(第一条関係)

募集・採用、配置・昇進について女性労働者に対する差別を禁止するとともに、職業能力の開発及び向上の促進等に係る女性労働者の就業援助規定を削除したこと等に伴い、この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とするものとしたこと。

(二) 基本的理念(第二条関係)

イ 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」ことをこの法律の主たる目的としたことに伴い、この法律においては、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ、母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とするものとしたこと。

ロ 事業主並びに国及び地方公共団体は、基本的理念に従って、女性労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならないものとしたこと。

ハ 女性労働者の自助努力に関する規定を削除するものとしたこと。

(三) 啓発活動(第三条関係)

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」ことをこの法律の主たる目的としたことに伴い、国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとしたこと。

(四) 男女雇用機会均等対策基本方針の策定

イ 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」ことをこの法律の主たる目的としたことに伴い、これまでの「女子労働者福祉対策基本方針」に代わり、新たに、労働大臣は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針(以下「男女雇用機会均等対策基本方針」という。)を定めるものとしたこと(第四条関係)。

ロ 男女雇用機会均等対策基本方針に定める事項は、次のとおりとするものとしたこと。

(イ) 女性労働者の職業生活の動向に関する事項

(ロ) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項

ハ 男女雇用機会均等対策基本方針は、女性労働者の労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならないものとしたこと。

ニ 労働大臣は、男女雇用機会均等対策基本方針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くほか、都道府県知事の意見を求めるものとしたこと。

三 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保

(一) 女性労働者に対する差別の禁止等

イ 募集及び採用(第五条関係)

これまで事業主の努力義務であった募集及び採用について、女性に対する差別を禁止することとし、事業主は、労働者の募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならないものとしたこと。

ロ 配置、昇進及び教育訓練(第六条関係)

これまで事業主の努力義務であった配置及び昇進について、女性労働者に対する差別を禁止することとするとともに、教育訓練については差別的取扱いが禁止される対象の範囲を限定しないこととし、事業主は、労働者の配置、昇進及び教育訓練について、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならないものとしたこと。

ハ 女性労働者に係る措置に関する特例(第九条関係)

女性労働者に対する差別を禁止する規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではないものとしたこと。

ニ 指針の策定(第一〇条関係)

(イ) 労働大臣は、イ及びロの事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針を新たに定めるものとしたこと。

(ロ) 労働大臣は、(イ)の指針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くものとしたこと。

(ハ) 労働大臣は、(イ)の指針を策定及び変更したときは、遅滞なく、その概要を公表するものとしたこと。

(二) 調停制度の改善等

イ 一方申請の場合の他方当事者の同意要件の廃止(第一三条第一項関係)

都道府県女性少年室長は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の措置で労働省令で定めるものについての女性労働者と事業主(以下「関係当事者」という。)との間の紛争((一)のイの事項に関するものを除く。)について、これまでは関係当事者の双方の同意を条件としていたが、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、機会均等調停委員会に調停を行わせるものとしたこと。

ロ 不利益取扱いの禁止(第一二条第二項及び第一三条第二項関係)

事業主は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の措置についての関係当事者間の紛争について、女性労働者が都道府県女性少年室長に解決の援助を求めたこと又は調停の申請をしたことを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとしたこと。

(三) 事業主の講ずる措置に対する国の援助(第二〇条関係)

国は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇が確保されることを促進するため、事業主が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的とする次に掲げる措置を講じ、又は講じようとする場合には、当該事業主に対し、相談その他の援助を行うことができるものとしたこと。

イ その雇用する女性労働者の配置その他雇用に関する状況の分析

ロ イの分析に基づき雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善するに当たって必要となる措置に関する計画の作成

ハ ロの計画で定める措置の実施

ニ イからハまでの措置を実施するために必要な体制の整備

四 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮(第二一条関係)

(一) 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならないものとしたこと。

(二) 労働大臣は、(一)の事業主が配慮すべき事項についての指針を定めるものとしたこと。

(三) 労働大臣は、(二)の指針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くものとしたこと。

(四) 労働大臣は、(二)の指針を策定及び変更したときは、遅滞なく、その概要を公表するものとしたこと。

五 公表制度の創設(第二六条関係)

労働大臣は、女性労働者に対する差別を禁止する規定に違反している事業主に対し、勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる制度を創設したこと。

六 その他

(一) 職業指導等、職業能力の開発及び向上の促進並びに相談、講習等に関する女性労働者の就業援助等の規定を削除するものとしたこと。

(二) 三及び五については、国家公務員及び地方公務員に、四については、一般職の国家公務員(国営企業に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国会職員及び防衛庁職員に関しては適用しないものとしたこと(第二八条関係)。

(三) その他所要の規定の整備を行うものとしたこと。

第四 整備法第三条による労働基準法の一部改正関係

一 多胎妊娠の場合の産前休業期間の延長(第六五条第一項関係)

多胎妊娠の場合の産前休業の期間を、一〇週間から一四週間に延長するものとしたこと。なお、単胎妊娠の場合の産前産後休業期間及び多胎妊娠の場合の産後休業期間については、従前と同様であること。

二 その他

「女子」を「女性」に置き換える等用語の整理を行うものとしたこと。

第五 整備法第四条による労働基準法の一部改正関係

一 女性の時間外及び休日労働並びに深夜業の規制の解消(第六四条の二及び第六四条の三関係)

満一八歳以上の女性について、時間外及び休日労働並びに深夜業の規制を解消するものとしたこと。

二 その他

罰則規定等所要の規定の整備を行うものとしたこと。

第六 整備法第五条による育児休業等に関する法律の一部を改正する法律の一部改正関係

一 育児を行う労働者の深夜業の制限(第一六条の二関係)

(一) 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用される者を除く。)であって次のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後一〇時から午前五時までの間(以下「深夜」という。)において労働させてはならない旨新たに規定したこと。

イ 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者

ロ 当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の労働省令で定める者がいる場合における当該労働者

ハ イ及びロに掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として労働者令で定めるもの

(二) (一)による請求は、一回につき、労働省令で定めるところにより、一月以上六月以内の期間について、制限開始予定日及び制限終了予定日を明らかにして、制限開始予定日の一月前までにしなければならないものとしたこと。

(三) (一)による請求がされた後制限開始予定日の前日までに、子の死亡その他の労働省令で定める事由が生じたときは、当該請求はされなかったものとみなすものとしたこと。

(四) (一)による請求に係る子の死亡その他の労働省令で定める場合、当該子が小学校就学の始期に達した場合又は産前産後休業、育児休業若しくは介護休業が開始された場合においては、制限終了予定日前においても制限期間が終了するものとしたこと。

二 家族介護を行う労働者の深夜業の制限(第一六条の三関係)

一については、要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用される者を除く。)が当該対象家族を介護するために請求した場合について準用するものとしたこと。

三 その他

(一) 公務員に関する特例(第五二条第七項から第九項まで関係)

イ 主務大臣等は、国営企業に勤務する国家公務員であって、一定の要件を満たすものが請求した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、深夜において勤務しないことを承認しなければならないものとしたこと。

ロ イについては、地方公務員に関して準用するものとしたこと。

(二) その他所要の規定の整備を行うものとしたこと。

第七 整備法第六条による職業安定法の一部改正関係

「女子」を「女性」に置き換える用語の整理を行うものとしたこと(第一二条関係)。

第八 整備法第七条による労働省設置法の一部改正関係

一 「都道府県婦人少年室」の名称を「都道府県女性少年室」に変更するものとしたこと(第六条及び第七条関係)。

二 「婦人」を「女性」に置き換える用語の整理を行うものとしたこと。

第九 施行期日等

一 施行期日(附則第一条関係)

この法律は、平成一一年四月一日から施行するものとしたこと。ただし、第二の二の(一)、第四の二、第七、第八及びこれらに伴うその他関係法律の整備については、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から、第二(二の(一)を除く。)、第四の一及びこれらに伴うその他関係法律の整備については、平成一〇年四月一日から、それぞれ施行するものとしたこと。

二 経過措置(附則第二条関係)

この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によるものとしたこと。

三 その他関係法律の整備(附則第三条から第一六条まで関係)

健康保険法等関係法律について所要の規定の整備を行うものとしたこと。