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○鉛中毒予防規則の施行について

(昭和四二年三月三一日)

(基発第四四二号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局通達)

鉛中毒予防規則(昭和四二年労働省令第二号)は、昭和四二年三月六日公布され、昭和四二年四月一日(一部の規定については、昭和四三年四月一日)から施行されることになつた。

鉛中毒は、古い職業病の一つとして、西欧諸国においてはすでに一九世紀において、これが対策について法制化されているが、わが国においては、労働安全衛生規則に一部の規定が存するに止まり、かつ、具体性を欠いているため、その対策の実施は一部の業種、特定の事業場に限られている現状である。

さらに、最近における科学技術の進歩に伴い、鉛等の使用が広範囲にわたつたため、従来予期しなかつた分野において鉛中毒が発生し、社会問題化した事例も少なくない。

本規則は、このような情勢の下に、次の諸点を基本方針として制定されたものである。

第一に、鉛中毒の予防に必要な事項のうち、現行労働安全衛生規則に規定されていない事項及び規定されてはいるがさらに具体的に規定する必要がある事項について、単独の規則を制定して規制することとし、その他の事項については、労働安全衛生規則の規定するところによること。

第二に、鉛中毒の発生状況、鉛業務を行なう作業環境、鉛等の使用量、取り扱う鉛等の態様等から検討し、生産工程、作業の種類等を特定することにより、本規則の適用対象業務の範囲の明確化を図ること。

第三に、鉛、鉛合金又は鉛化合物であつて、現に使用されている物のうち、人体に対し有害な作用を及ぼすことが明らかな物を規制の対象とすること。

第四に、鉛の蒸気(ヒユーム)又は粉じんを吸入摂取することによる中毒予防のみならず、経口摂取することによる中毒予防にも十分な配慮をすること。

第五に、生産工程における鉛等による汚染の防止を図るため、鉛業務の区分に応じて、それぞれ必要な規制を加えるとともに、汚染の拡大防止及び除去のため、休憩室等の保健施設についても必要な事項を規定すること。

第六に、鉛中毒の予防に必要な措置のうち、労働衛生工学的基準については、できるだけ具体的に規定することを原則とするが、鉛業務が多種多様にわたつているため、現段階における研究成果に基づき、換気装置の性能についてのみ基準を定めること。

第七に、職業病に関する健康管理の規制については、医学的究明及び健康診断結果に伴う異常所見者の措置に欠ける面も少なくないので、本規則においては、精密健康診断、就業制限等健康管理に必要な最小限度の措置を規制すること。

以上が規則制定に当たつての基本方針であるが、本規則の趣旨を十分理解し、労使一般に周知徹底させるとともに、とくに下記事項に留意し遺憾のない運用を期されたい。

第一 第一章総則関係

一 第一条関係

(1) 第一号の「鉛以外の金属」には、錫、アンチモン、そう鉛(ビスマス)、銅等の金属が含まれること。

(2) 第一号の「合金」には、活字合金、軸受合金、ハンダ合金、鉛青銅、ケルメツト合金等があること。

(3) 第二号の「労働大臣が指定する物」については、本号に掲げるもの以外の鉛化合物であつて、有害性があると認められるものを追加する趣旨であること。

(4) 第三号の「混合物」とは、一定の物を製造する目的をもつて鉛等と鉛等以外の物を混合した物をいい、天然の混合物は、含まないものであること。

(5) 第三号及び第四号の「電解スライム」とは、鉛、銅又は亜鉛の製錬を行なう工程において、鉛、銅、又は亜鉛の陽極板を電解液中に装入通電し、陰極板に鉛、銅又は亜鉛を析出させる場合における電解槽中の沈澱物をいうこと。

(6) 第五号イの工程には、銅又は亜鉛の製錬所における鉛の回収工程を含むこと。

(7) 第五号イの「焙焼、焼結、溶鉱」には、これら業務に直接関連する混合、調合、運搬、投入等の作業のすべてを含むこと。

(8) 第五号イの「焼結鉱等の取扱い」には、焼結鉱等の運搬、粉砕その他煙灰の回収及び乾燥、鉱滓こうさい処理、分銀等の行為のすべてを含むこと。

(9) 第五号ロの「転炉」とは、溶鉱炉からの画像1 (2KB)別ウィンドウが開きます
にけい酸鉱等を加え、酸素富化空気を吹き込みながら溶融し、粗銅とするための炉をいうこと。

(10) 第五号ハの「鉛蓄電池」とは、陽極に過酸化鉛、陰極に鉛を用い、稀硫酸を電解液とした蓄電池をいうこと。

(11) 第五号ハの「練粉」とは、硫酸バリウム等と混合した鉛粉又は一酸化鉛を練機を用いて稀硫酸でペースト状とすることをいい、練のり又は練合せとも呼称されるものであること。

(12) 第五号ハの「充てん」とは、基板に練粉を塗り込むことをいい、チユーブ式極板に鉛粉を振動させて入れる作業を含むこと。

(13) 第五号ハ及びへの「容器等」の「等」には、袋等があること。

(14) 第五号ホの「鉛若しくは鉛合金の製品」とは、鉛又は鉛合金を主材とする加工製品をいい、鉛管、鉛板、鉛球、鉛線、活字、ハンダ、放射性物質用容器、耐酸機器等がこれに該当すること。

(15) 第五号ヘの「空冷のための撹拌かくはん」とは、焼成炉から取り出した高温の酸化鉛を、熊手等を用いて撹拌かくはんしながら冷却することをいうこと。

(16) 第五号トの「鉛ライニング」には、鉛張り、溶着(ホモゲン)のほか、溶射、滲鉛及び蒸着等の施工によるものを含むこと。

(17) 第五号チの「含鉛塗料のかき落とし」とは、きさげ、ワイヤブラシ、グラインダ、サンドブラスト等を用いて、含鉛塗料をかき落とすことをいうこと。

(18) 第五号リの業務は、粉状の鉛等又は焼結鉱等が付着し、又はたい積している鉛装置内部におけるすべての業務をいうこと。従つて、鉛装置内における煙灰のかき出し等の業務は、第五号イ又はロの「煙灰の取扱い」ではなく、リの業務であること。

(19) 第五号チの業務には、鉛等が混合又は溶融の結果他の物と反応して鉛等以外の物に変化した場合は、その後における工程は含まれないこと。

(20) 第五号チの業務には、ビニール被覆電線製造工程における塩化ビニールへのステアリン酸鉛の混合の業務が含まれること。

(21) 第五号ワの「自然換気が不十分な場所」には、開放された窓面積が床面積の二〇分の一未満又は無窓の屋内作業場を含むものであること。

(22) 第五号カの「施ゆう」とは、ゆう薬の吹付け、どぶづけ、ふりかけ等をいうものであること。

(23) 第五号ヨの「絵付け」とは、絵具の吹付け、スタンプ、書き絵、まき絵等をいうものであること。

(24) 第五号タの「サンドバス」とは、鋼線の焼入れ等の際に、鋼線の表面に付着した鉛を除去する等のために設けられた砂箱等を用いて行なう業務をいい、砂のかき上げ、砂の取替え等を含むものであること。

(25) 第五号レの業務には、手動による名刺印刷のごときものは除外する趣旨であること。

二 第二条関係

(1) 本条は、鉛業務であつても遠隔操作等鉛等によつて汚染されるおそれが少ない場合における本規則の適用除外を規定したものであること。

(2) 本条の規定によつても適用の除外が認められない規定(本文かつこ書きの規定)は、鉛業務以外の鉛関係業務について規制されている事項及び適用の除外が認められた鉛業務であつても当然順守しなければならない事項に係る規定等を掲げたものであること。

(3) 第一号は、同一作業場内におけるすべての鉛又は鉛合金の溶融又は鋳造が摂氏四五〇度以下の温度において行なわれ、かつ、鉛又は鉛合金を溶融するかま、るつぼ等の容量の合計が五〇リツトルをこえない場合の鉛業務をいうこと。

(4) 第一号の「容量の合計」とは、鉛又は鉛合金の溶融のため設置してあるすべてのかま、るつぼ等の容量の合計をいい、現に溶融している鉛又は鉛合金の容量をいうものでないこと。

(5) 第二号の「臨時に行なう業務」とは、当該事業において通常行なつている業務以外の業務であつて、一時的必要に応じて行なう鉛業務をいい、従つて、一般的には作業期間が短いといえるが、必ずしもそのような場合に限る趣旨でないこと。

(6) 第三号は、鉛業務を行なう作業場から隔離された計器室(コントロール室)等から鉛装置を運転操作する業務をいうこと。

(7) 第四号の規定による適用の除外について、所轄労働基準監督署長の認定を受けることとした趣旨は、労働大臣が告示した業務に該当するか否か、また、たとえ労働大臣が告示した業務に該当する業務であつても、衛生管理が劣悪等のため、鉛等による汚染が著るしいか否かをあらかじめ所轄労働基準監督署長に当該事実の存否を公の立場から厳正に確認させることにより、本規則の適正な運用を確保するためのものであること。

三 第三条関係

所轄労働基準監督署長が認定を行なうにあたつての認定基準、実地調査の方法等については、別途指示するところによること。

第二 第二章施設関係

一 概要

(1) 本章は、鉛業務を行なう場合に発散する鉛等又は焼結鉱等からの鉛の蒸気(ヒユーム)又は鉛をふくむ粉じんにより作業場内の空気が汚染されることを防止するため、それに必要な施設の設置等を、鉛業務ごとに規定したものであること。

(2) 本章を通じて、換気装置の設置が規定されているのは、屋内作業場において鉛業務を行なう場合に限られ、かつ、第一五条の規定を除き局所排気装置の設置を規定していることに留意すること。

(3) 第二章以下の規定における「局所排気装置」とは、鉛等又は焼結鉱等の蒸気(ヒユーム)又は粉じんを動力によりそれらが発散する局所において吸引排気する換気装置をいい、四エチル鉛等危害防止規則、電離放射線障害防止規則及び有機溶剤中毒予防規則に規定する局所排出装置と同趣旨のものであること。

(4) 第二条の規定により、本章の規定が適用除外される場合は、鉛に関しては、労働安全衛生規則第一七三条の規定は適用される余地はないこと。

二 第四条関係

(1) 第一号の「ばい焼、焼結又は溶鉱を行なう作業場所のうちばい焼炉、焼結炉又は溶鉱炉に係るものについては、おおむね次の場所が該当するものであること。

イ ばい焼、焼結……ばい焼炉及び焼結炉への原料の投入口、ばい焼鉱及び焼結鉱の炉等からの取出口並びに直線式ドワイドロイド機、円盤式ドワイドロイド機にあつては、ばい焼、焼結面の上部

ロ 溶鉱……溶鉱炉への原料の投入口及び溶鉱炉からの溶融物の取り出し口

(2) 第一号の「焼結鉱等の溶融」には、主なものとして、揮発炉による鉱さいの溶融、分銀炉による電解スライムの溶融等が該当すること。

(3) 第一号の「焼成」とは、脱硫塔及びスクラバの排水から回収した泥状の沈殿煙灰をばい焼炉に装入してばい焼(乾燥)することをいうこと。

(4) 第三号の「粉状の鉛等又は焼結鉱等を受けるための設備」とは、粉状の鉛等又は焼結鉱等が床の上に落ちないように容器等の下に設ける受箱等をいうこと。

(5) 第四号の「場所を設け」とは、区画等により、場所が特定されておれば足りること。

(6) 第五号の「浮渣ふさ」とは、溶融した鉛等の表面に浮遊する酸化鉛等の皮膜をいうこと。

三 第六条関係

(1) 第二号の「練粉」については、作業態様からみて、鉛等の発散が著しいことから、湿式による場合であつても局所排気装置等の設置を規制したものであること。

(2) 第四号の「それ以外の業務」とは、鉛粉の製造工程以外の工程のすべてをいうこと。

(3) 第四号の「屋内の作業場所から隔離する」とは、鉛粉の製造のために粉砕を行なう諸施設が常置してある屋内作業場が、他の屋内作業場から独立した別棟のものであるが、又は同一棟内であつても発散する鉛等の粉じんが、鉛粉の製造以外の業務を行なう屋内の作業場所へ流入しないよう両者の間に、天井に達する壁等をもつて遮断されていることをいうこと。

(4) 第六号の「受箱等」の「等」には、作業台を上げべりにする等の措置が含まれること。

(5) 第七号は、運搬中に鉛等をこぼしたり又は容器等をひきずることにより鉛等が発じんしたりすることが多いので、これらの原因による汚染を防止するための措置を容器の構造面等から規定したものであること。なお、容器が小型で運搬中こぼれたり、発じんしたりするおそれがない場合には鉛等による汚染のおそれがないので、本号の措置を必要としないものであること。

(6) 第八号の「屋内の作業場所の床」は、真空そうじ機を用いて、又は水洗によつて容易にそうじできる構造のものであれば、材質のいかんは問わないこと。

(7) 第九号の「第四条第五号に掲げる措置」とは、鉛等の溶融又は鋳造を行なう作業場所に、浮渣ふさを入れるための容器を備えることをいう趣旨であること。

四 第一〇条関係

(1) 第一号の「溶着」とは、鉛又は鉛合金を、酸水素焔、酸素アセチレン焔等を用いて、施工面に溶融しながら溶着することをいうこと。

(2) 第一号の「溶射」とは、溶射機を用い、鉛又は鉛合金を溶融しながら施工面に吹付けすることをいうこと。

(3) 第一号の「溶融」には、滲鉛(どぶづけ)が含まれること。

(4) 第一号の「蒸着」とは、鉛等を真空中で加熱蒸発させて施工面に薄膜として凝固させることをいうこと。

五 第一七条関係

本条の「まき絵」とは、陶磁器等の素地にうるしを用いて模様を画き、これに鉛等を含有する顔料の粉末をまぶしつけることをいうこと。

六 第一九条関係

(1) 本条及び次条の規定は、鉛業務を行なう事業についてはもとより、それ以外の倉庫業等についても適用されるものであること。

(2) 第一号の「コンベヤへの送給の筒所」とは、焼結機、ホツパ等の装置等からコンベヤへ送給する位置をいうこと。

(3) 第一号の「コンベヤの連絡筒所」とは、コンベヤからコンベヤへの移し換え位置をいうこと。

七 第二〇条関係

本条の乾燥器には、バンド型乾燥器、箱型乾燥器、トンネル型乾燥器等が含まれること。

八 第二一条関係

(1) 本条の「布式集じん装置」とは、布の層に含じん気流を通じて、粉じんを濾過する装置をいい、気流を布の袋に通すバツグフイルタと、布の幕に通すスクリンフイルタがあること。なお、本規則における布式集じん装置については、鉛粉製造等の際、粉状の製品を採取する等生産設備の一環として用いられるものと局所排気装置の排気を清浄にするための労働衛生上の設備として用いられるものとがあり、これらは機能的には同一であるが、その両者を含めて布式集じん装置といい、後者のみを布式除じん装置と使い分けていること。

(2) 本条ただし書の「労働者が常時立ち入る必要がない」とは、布式集じん装置に関係する業務以外の業務に従事する労働者はもとより、当該装置に関係する業務に従事する労働者であつても、布の取替え等に際して立ち入る場合のほか、その場所において継続して業務に従事する必要がないことをいうこと。

(3) 第三号の「おおいをしたまま払い落とすための設備」には、振動装置等があること。

九 第二二条関係

(1) 本条の規定により、局所排気装置又は全体換気装置の設置を省略した場合は、第四十五条第三項第二号の規定により、本条第一号から第三号までに該当する鉛業務については、防じんマスク等有効な呼吸用保護具を使用させなければならないことに留意すること。

(2) 第二号の「作業の期間が短いもの」は、出張して行なう鉛業務及び臨時に行なう業務のいずれにもかかるものであること。

(3) 第三号の「側面の面積の半分以上が開放されている」とは、作業場の側面の面積の半分以上に、壁その他の障害が全然設けられていないことをいうが、関係者以外の者の出入を禁止するために粗な金網で囲んである程度のものも開放されているとみる趣旨であること。

(4) 第五号の「石灰等でおおう」とは、鉛等の溶融面に石灰等を層状に置くことをいうこと。

(5) 第五号の「排気筒」とは、鉛等の溶融炉等温熱を伴う施設から発散する鉛等の蒸気(ヒューム)を動力によらないで温熱により生ずる上昇気流を利用して作業場外へ排気する設備をいうこと。

第三 第三章換気装置の構造、性能等関係

1 第二三条関係

(1) 第二号の「吸引するに適した型式」とは、次表の型式のフードのうち、鉛等又は焼結鉱等の蒸気(ヒューム)又は粉じんの発散状況、作業の方法等を勘案して最も効果があるとされる型式をいうものであること。

なお、それぞれのフードの機能から、囲い式又はブース式のフードが通常選定の標準になることに留意すること。

型式

型式記号

囲い式 (E)

カバー型 (E)

EE

グローブ ボツクス型 (X)

EX

ブース式 (B)

ドラフトチエンバー型 (D)

BD

建築ブース型 (B)

BB

外付け式 (O)

スロツト型 (S)

OS

ルーバ型 (L)

OL

グリツド型 (G)

OG

円形型 (O)

OO

矩形型 (R)

OR

レシーバ式 (R)

キヤノピ型 (C)

RC

円形型 (O)

RO

矩形型 (R)

RR

カバー型(グラインダ型) (E)

RE

(2) 第二号の「吸引するのに適した大きさ」とは、鉛等又は焼結鉱等の蒸気(ヒユーム)、粉じんの発散範囲に対して、フードへの効果的吸引気流を発生させるために必要なフードの大きさをいうものであること。

(3) 第三号の規定は、局所排気装置について、その吸引効果がフードの開口面と発散源との距離の二乗に比例して低下することから、フード開口面を発散源に近づけフードの機能を十分にするため設けられたものであること。実務的には、開口面から最も遠い発散源の端をフード開口面からの距離を円形型フードにあつてはその直径、矩形型フードにあつてはその短辺のおおむね一・五倍以内の位置に置く必要があることに留意すること。

(4) 第三号の「外付け式フード」とは、次図のごとくフード開口部が発散源から離れているものをいうこと。

(5) 第三号の「レシーバ式フード」とは、次図のごとく外付け式フードと類似しているが、発散源からの熱上昇気流(又は回転により生じる慣性気流)による一定方向への気流に対して開口部がその気流を受ける方向にあるものをいうこと。

(6) 第四号において、フードの型式を原則として囲い式又はブース式としたのは、当該鉛業務における鉛等又は焼結鉱等の粉じんによる汚染の程度が他の鉛業務に比して著しいため、フードの機能の一そう高いものに原則として限定したものであること。

(7) 第四号の「囲い式フード」とは、次図のごとく、発散源のまわりを囲つてあるもので、隙き間、観察口、小作業孔が吸気口となるものをいうこと。

(8) 第四号のブース式フードとは、次図のごとく発散源のまわりが作業口(通常一面)を除いて、覆われているものをいうこと。

二 第二四条関係

(1) 本条において移動式の局所排気装置を除外したのは、当該装置のダクトの多くがビニル引の布製のものであり、必ずしもこの基準により難いためであること。

(2) 第二号の「突起物」とは、はみだしたパツキング、食違いによる著しい段、まくれ等をいうものであること。

(3) 第三号の「適当な筒所」とは、ベンドの部分等粉じんの堆積しやすい筒所をいうものであり、また「そうじ口を設ける等」の「等」には、ダクトを差し込みにし、容易にとりはずしできるような構造を含むこと。

三 第二六条関係

第二項の規定は、全体換気装置のフアン又はダクトの開口部を発散源より遠くに置くこと。気流の短絡等により発散源附近の汚染空気を有効に換気することができなくなることを防止するため設けられたものであること。

四 第二七条関係

(1) 本条の規定は、局所排気装置、全体換気装置及び排気筒からの汚染空気を作業場内に排気することを禁止するため設けられたものであること。

なお、「排気口」には、除じんした後の排気を排出する排気口も含まれるものであること。

(2) 本条の「排気口」の位置については、排気された汚染空気が再び作業場内に逆流し又は他の作業場に流入するおそれのない場所に設ける必要があることに留意すること。

五 第二八条関係

(1) 第一号の「鉛等の溶融炉に設けるレシーバ式キヤノピ型フード」とは、溶融炉上に発生する鉛等の蒸気を含む熱上昇気流を吸い込ませるため、当該溶融炉上に設ける次の図のごときフードであつて、当該フードの開口面が円形又は矩形のものをいうこと。

(2) 第一号の「労働大臣が定める排風能力」とは、溶融炉上に発生する熱気流量のすべてを捕捉するための排風量をいうものであり、その算定方法については、別途告示により定めることとしていること。

(3) 第二号の「制御風速」とは、発散源から発散する鉛等又は焼結鉱等の蒸気(ヒユーム)又は粉じんをフード開口内に流入させ又は開口面から流出させないため、当該蒸気(ヒユーム)又は粉じんの発散限度内のある点(捕捉点)に与えるに必要な最小吸込風速をいうものであり、捕捉点については、フードの型式により次のように取り扱うこと。

イ 囲い式又はブース式のフードに対する捕捉点

フード開口面上の各点

ロ 外付け式又はレシーバ式のフードに対する捕捉点

フードにより鉛等又は焼結鉱等の蒸気(ヒユーム)又は粉じんを吸込もうとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた点

(4) 第二号の「〇・五メートル毎秒以上の制御風速を出す能力」とは、〇・五m/s以上の制御風速値より算定された排風量を出す能力をいうものであること。また個々のフードに対する制御風速値については〇・五m/s以上の値のうち、鉛等又は焼結鉱等の蒸気(ヒユーム)、粉じんの性質、発散の態様、選定されたフードの型式等からみて「局所排気装置の標準設計と保守管理」(基本編)等の参考資料より適当な値を選ぶことが必要であり、〇・五m/sの制御風速値はすべてのフードに対して必ずしも有効な値でないことに留意すること。

六 第二九条関係

本条を適用する場合、直接外気に向つて開放され得る窓がないか、又はあつてもその面積が床面積の二〇分の一未満の同一屋内作業場に、ハンダ付けの鉛業務に従事する労働者と当該労働者以外の労働者がいるときの当該作業場に設ける全体換気装置の換気能力(換気量)については、労働安全衛生規則第一九三条第二号との関連上、「100m3/h×ハンダ付けの業務に従事する労働者数」の値と「30m3/h×当該作業場にいる全労働者数」の値とを比較し、前者の値が大きなときは、その値以上の値、後者の値が大きなときは、その値をこえる値をいうこと。

イ 同一屋内作業場に、ハンダ付けの業務に従事する労働者二名と他の業務に従事する労働者四名がいる場合の全体換気装置の換気量は、次の式により二〇〇m3/h以上としなければならない。200m3/h(100m3/h×2)>180m3/h(30m3/h×6)

ロ イにおいて、前者の労働者が二名、後者の労働者が五名いるときの換気量は、次式により二一〇m3/hをこえる値としなければならない。

200m3/h(100m3/h×2)<210m3/h(30m3/h×7)

七 第三〇条関係

(1) 第二号「バツフル」とは、邪魔板じやまいたともいい、発散源附近の吸込気流を外部の気流の影響から遮断するため設ける衝立ついたてなどをいうものであること。

(2) 第二号の「換気を妨害する気流を排除する等」の「等」には、局所排気装置又は排気筒については風向板を設けて気流の方向を変えること、開放された窓を閉じることなどをいい、全体換気装置については気流の短絡防止などをいうものであること。

(3) 第二号の「有効に稼動させる」とは、第二八条及び第二九条に規定する性能が、常態として維持されていることをいうこと。

第四 第四章管理関係

一 第三一条関係

(1) 本条は、鉛等による汚染が著しいイからヌまでの業務を行なう事業場について、当該業務を行なう作業場ごとに鉛作業主任者を選任させて日常の作業における衛生管理の徹底を図る趣旨であること。

(2) 本条の鉛作業主任者には、衛生管理者が選任されることを妨げるものでないが、この場合本条第一項各号に掲げる職務が充分行なわれるか否かに留意すること。

(3) 鉛作業主任者講習については、別途指示するところによること。

二 第三二条関係

(1) 本条で禁止しているホツパ下方の場所における作業には、鉛業務以外のあらゆる業務をも含むこと。

(2) 本条ただし書の「臨時の作業」には、修理の業務があること。

(3) 本条ただし書の「有効な呼吸用保護具」には、国家検定に合格した防じんマスク等があること。

三 第三三条関係

(1) 第一号の「著しく困難な場合」とは、サンドブラスト工法を用いる場合又は塗布面が鉄製であり、湿らせることにより錆の発生がある場合等をいうこと。

(2) 第一号の「湿式」とは、含鉛塗料のかき落とし面を方法のいかんを問わず十分湿らせて行なうことをいうこと。

四 第三四条関係

本条は、焼成炉等から酸化鉛をかき出す場合、鉛等の粉じんの飛散が著しいことからできるだけ炉口からはなれて作業を行なうことにより発散する鉛等の粉じんによる汚染の防止を目的としたものであること。

五 第三五条関係

本条各号に掲げる措置の実施にあたつては、鉛中毒の予防はもちろん、煙灰等に含まれている他の有害物質による中毒等の予防をも留意すること。

六 第三六条関係

本条及び次条の規定は、鉛業務を行なう事業はもとより、それ以外の鉛等を販売する事業、倉庫業等についても適用されることに留意すること。

七 第三七条関係

本条の「集積する等」の「等」には、鉛等を入れてあつた空袋を有蓋の容器に入れることなどをいうこと。

八 第三八条関係

(1) 本条の規定により設置する休憩室を、鉛業務従事労働者と共用にする場合は、当該室内が鉛等により汚染されないよう十分留意すること。

(2) 本条の「作業場以外の場所」には、鉛業務を行なう屋内作業場と同一棟内であつても、隔壁等をもつて遮断されていることにより発散する鉛等の粉じんが休憩室内に拡散しないようにしてある場所を含むこと。

(3) 第三項の「作業衣等」の「等」には、作業手袋、作業帽、作業靴などが含まれること。

九 第三九条関係

(1) 本条の「これら以外の衣服等」とは、鉛業務従事労働者の通勤用の衣服、靴、身のまわり品、鉛業務以外の業務に従事する労働者の作業衣、通勤服などをいうこと。

(2) 本条の「隔離して保管するための設備」とは、作業衣等と通勤服等をそれぞれ別のロツカに入れておくか、又は作業衣等を通勤服等を置いてある場所から隔離した場所に懸吊しておくか等の措置をいうこと。

一〇 第四〇条関係

本条の洗身は、必ずしも一日一回とは限らない趣旨であること。

一一 第四一条関係

本条の「床等」の「等」には、壁、窓、ロツカ等が含まれるが、壁、窓については、おおむね身長程度の高さまでの範囲をいうものであること。

一二 第四二条関係

(1) 本条の硝酸水溶液の備付けの趣旨は、手等に付着した鉛等が水、石けんのみでは十分に除去できないためであること。なお、硝酸水溶液の濃度は、通常〇・二~〇・三%溶液が望ましいものであること。

(2) 第一項の「その他の手洗い溶液」には、酢酸水溶液等が含まれること。

(3) 第一項の「作業終了後」には、就業時間中において、鉛業務以外の業務につく前を含むものであること。

(4) 第一項の「必要に応じ」とは、食事及び喫煙前等をいうこと。

一三 第四三条関係

本条の「洗たくのための設備を設ける等」の「等」には、クリーニング業者への委託が含まれること。

一四 第四四条関係

(1) 本条は、鉛等を経口的に体内に摂取することを防止することを定めたものであること。

(2) 屋内作業場の喫煙を禁止すべき屋内の作業場所の範囲は、鉛等の粉じんの発散する態様に応じて、使用者において特定することが望ましいこと。なお、労働安全衛生規則第二二〇条の規定の適用にあたつては、本条の作業場所は労働安全衛生規則第二二〇条の作業場外の場所には該当しないものと解されること。

第五 第五章保護具等関係

一 概要

(1) 本章の規定が適用される鉛業務については、労働安全衛生規則第一八一条に規定するガス、蒸気又は粉じんを発散し、衛生上有害な場所における業務のうち鉛関係業務については一致するものであること。

(2) 本章の規定が適用される保護具については、労働安全衛生規則第一八四条の規定が適用されること。

二 第四五条関係(現行第五八条関係)

(1) 第一項の「有効な呼吸用保護具」とは、送気マスク等給気式呼吸用保護具(簡易救命器及び酸素発生式自己救命器を除く。)、防じんマスク並びに面体形及びルーズフィット形の電動ファン付き呼吸用保護具をいい、これらは、鉛装置内における業務の態様及び発散する蒸気の種類に応じて、それぞれ使用者が選択するものであり、そのうち、防じんマスク及び電動ファン付き呼吸用保護具については、国家検定に合格したものであること。

(2) 第一項の「労働衛生保護衣類」とは、労働衛生保護服(頭きんを含む。)、労働衛生保護手袋及び労働衛生保護長靴を総称したものであること。

なお、労働衛生保護衣については、日本工業規格(JJS、S九九〇一)があることに留意すること。

(3) 第二項第一号の業務については、鉛等又は焼結鉱等の蒸気又は粉じんの発散が著しいことから、鉛中毒予防の万全を期するため、換気装置の設置に加えて、個人防護としての保護具の装着を規制したものであること。

(4) 第二項第四号及び第五号の業務は、鉛業務に該当しないが、かかる業務については作業中一時的に発散する大量の鉛等又は焼結鉱等の粉じんを労働者が吸入することになるので、保護具の使用を規定したものであること。

(5) 第三項第三号の「タンク」については、昭和三八年四月一二日基発第四二〇号通達を参照すること。

(6) 第三項第三号の「タンク等」の「等」には、箱げた、車両、ダクト、煙道、水管等を含むこと。

(7) 第三項第三号の「その他の場所」とは、坑(入口部を除く。)、ずい道等があること。

(8) 第三項第三号の「自然換気が不十分なところ」には、通常船内、タンク、坑、煙道等が該当するが、船舶の甲板上二側面以上が直接外気に向つて開放されている場所等は含まれないものであること。

(9) 第四項の措置は、自己吸入式ホースマスクにあつてはホースの先端を、送風式又は圧縮空気式ホースマスクにあつては、空気の取入口をそれぞれ有害な空気が発散していない場所に設けることをいうこと。

第六 第六章健康管理関係

一 概要

本章の鉛健康診断は、労働安全衛生規則に定める健康診断のほか、新たに鉛に関する健康診断実施を規定したものであること。

二 第四八条関係

(1) 本条の鉛健康診断個人票の保存期間は、労働基準法第一〇九条の規定により、三年間であるが、鉛中毒発生の態様等からみて、少なくとも五年間以上保存させるよう指導すること。

(2) 本条の個人表の様式については、本様式に定める項目が満される場合は、これと異なる様式を用いてもさしつかえないこと。

三 第四九条関係

本条は、労働安全衛生規則第二二条の規定により、同規則様式第三号の健康診断報告のほか、本規則の様式第二号による鉛健康診断結果報告を規定したものであること。

四 第五〇条関係

(1) 本条は、鉛中毒が義務の態様により、急性又は亜急性の鉛中毒にり患するおそれがあるため、定期健康診断実施期間以外の期間であつても、本条に掲げる自他覚症状が認められた場合は、直ちに医師の診断を受けさせなければならないことを規定したものであること。

(2) 本条に掲げる自他覚症状は、鉛業務に従事する者にこれら症状が発現した場合、鉛中毒り患の疑いがおおむね濃厚なものについて掲げたものであること。

五 第五一条関係

本条は、労働基準法第五一条第二項及び第五二条第四項の規定に基づいて設けられた規定であること。

第七 第七章測定関係

一 本章は、通常事態における鉛等又は焼結鉱等の発散状況を把握し、適切な施設改善の措置を講ずることは、健康管理上最も重要なことにかんがみ、設けられた規定であること。

二 測定の具体的方法については、「労働環境測定指針」を参考として、事業場に対する指導に努めること。

第八 第八章講習関係

第五七条関係

本条の「修了を証する書面」は、本規則様式第四号の修了証に準じた大きさ、型、内容のものであること。