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○労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び酸素欠乏症防止規則等の一部を改正する省令の施行等について(抄)

(昭和五七年六月一四日)

(基発第四〇七号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(昭和五七年政令第一二四号。以下「改正政令」という。)は昭和五七年四月二〇日に、酸素欠乏症防止規則等の一部を改正する省令(昭和五七年労働省令第一八号。以下「改正省令」という。)は同年五月二〇日に公布され、改正政令は昭和五七年七月一日又は昭和五八年四月一日から、改正省令は公布の日、昭和五七年七月一日又は昭和五八年四月一日から施行されることとなった。

今回の改正は、最近、酸素欠乏症防止対策の対象としていた清掃業等の作業現場等において、有機物が微生物により分解されて生ずる硫化水素による中毒の災害が多発していることにかんがみ、現行の酸素欠乏症の防止の措置のほか、新たに硫化水素中毒の防止の措置を講ずべきこととし、併せて、酸素欠乏症防止対策を強化するため、所要の整備を行ったものである。

ついては、左記第一の今回の改正の内容を十分理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、改正後の労働安全衛生法施行令及び酸素欠乏症等防止規則等については、左記第二の事項に留意して、その運用に遺憾のないようにされたい。

なお、改正政令及び改正省令の施行等に伴い、昭和四六年九月二二日付け基発第六五四号、昭和四七年九月一八日付基発第五九四号並びに、昭和五〇年九月一六日付け基発第五四〇号及び基発第五四〇号の二を廃止し、昭和四七年九月一八日付け基発第六〇二号の記のⅡの一七及び昭和五〇年二月二四日付け基発第一一〇号の記の一二を削除し、昭和五五年一一月二五日付け基発第六四八号の記のⅠの第二の一の(三)のイ中「人工呼吸の方法及び心臓マッサージの方法」を「及び人工呼吸の方法」に改める。

第一 今回の改正の内容

Ⅰ 労働安全衛生法施行令関係

一 作業主任者を選任すべき作業として二の(一)及び(二)に掲げる場所における作業のほか、別表第六第三号、第三号の二、第四号、第五号、第六号及び第一二号に掲げる酸素欠乏危険場所(第五号に掲げる場所にあつては、石炭、亜炭、硫化鉱、鋼材、くず鉄、原木、乾性油その他空気中の酸素を吸収する物質を入れてあるタンク、船倉、ホツパーその他の貯蔵施設の内部)における作業を追加し、事業者は、別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業については、すべて作業主任者を選任しなければならないものとしたこと。(第六条第二一号)

二 酸素欠乏症等の労働災害の発生状況にかんがみ、酸素欠乏危険場所として、次の場所を追加したこと。(別表第六関係)

(一) 酸素欠乏症及び硫化水素中毒の防止の観点から追加した場所

イ 海水を相当期間入れてあり、又は入れたことのある熱交換器、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部(第三号の三)

ロ し尿、腐泥、汚水その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてある槽、管、マンホール、溝又はピツトの内部(第九号)

ハ し尿、腐泥、汚水その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部(第九号)

ニ パルプ液を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部(第九号)

なお、上記ニの「パルプ液を入れてあり、又は入れたことのある槽の内部」は、昭和五〇年労働省告示第四四号により別表第六第一二号の「労働大臣が定める場所」とされていたものを、同表第九号の場所として規定したものであること。

(二) 酸素欠乏症の防止の観点から追加した場所

イ ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するためのピツトの内部(第三号)

ロ 雨水、河川の流水又は湧水が滞留しており、又は滞留したことのある槽又はピツトの内部(第三号の二)

三 その他所要の規定を整備したこと。

四 改正政令の施行期日を次のとおりとしたこと。(改正政令附則第一項)

(一) 酸素欠乏危険場所の追加に関する改正規定(別表第六)昭和五七年七月一日

(二) 作業主任者の選任に関する改正規定(第六条第二一号)昭和五八年四月一日

なお、昭和五七年七月一日から昭和五八年三月三一日までの間における酸素欠乏危険作業主任者を選任する作業については、現行の酸素欠乏危険場所における作業とすることとしたこと。(改正政令附則第二項)

Ⅱ 酸素欠乏症防止規則等関係

一 酸素欠乏症防止規則等関係

(一) 規則の名称を「酸素欠乏症等防止規則」に改めたこと。

(二)酸素欠乏危険作業(改正後の労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業をいう。以下同じ。)を次のとおり区分するものとしたこと。(第二条関係)

イ 第一種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険作業のうちロに掲げる作業以外の作業をいう。

ロ 第二種酸素欠乏危険作業 次に掲げる場所における作業をいう。

(イ) 海水が滞留しており、若しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きょ、マンホール、溝若しくはピット(以下「熱交換器等」という。)又は海水を相当期間入れてあり、若しくは入れたことのある熱交換器等(令別表第六第三号の三)

(ロ) し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きょ、マンホール、溝又はピットの内部(令別表第六第九号)

(ハ) 酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として労働大臣が定める場所(第二条第八号、令別表第六第一二号)

(三) 事業者が酸素欠乏危険作業に労働者を従事させるときに講ずべき措置等は、第一種酸素欠乏危険作業にあっては従前の酸素欠乏危険作業に係る措置等と同様とし第二種酸素欠乏危険作業にあっては従前の酸素欠乏危険作業に係る措置等のほか、次のとおりとするものとしたこと。(第二章、第四章及び第五章関係)

イ 硫化水素の濃度の測定

ロ 換気

ハ 作業主任者は従前の職務のほか硫化水素中毒の防止のための作業方法の決定、硫化水素の濃度の測定等を行うこととしたこと。

ニ 特別の教育は、従前の内容に硫化水素の発生の原因、硫化水素中毒の症状その他硫化水素中毒の防止に関し必要な事項を加えたものとしたこと。

ホ 作業主任者となるための技能講習の内容は、従前の内容に硫化水素中毒の発生の原因、その防止措置等に関する知識を加えたものとしたこと。

(四) 事業者は、一定の通風が不十分な場所において、ガスの配管を取り外す等の作業に労働者を従事させるときは、ガスの遮断、換気等の措置を講じなければならないものとしたこと。(第二三条の二関係)

(五) その他所要の規定を整備したこと。

二 労働安全衛生規則関係

酸素欠乏症防止規則の一部改正に伴い、特別教育を必要とする業務、技能講習の区分、作業主任者の選任等に関して所要の規定を整備したこと。

三 検査代行機関等に関する規則関係

酸素欠乏症防止規則の一部改正に伴い、指定教習機関の指定の区分に関して所要の規定を整備したこと。

四 特定化学物質等障害予防規則関係

酸素欠乏症等防止規則による規制との調整その他所要の規定を整備したこと。

五 施行期日等

(一) 施行期日

改正省令の施行期日を次のとおりとしたこと。

イ 酸素欠乏危険作業主任者技能講習に関する改正規定(酸欠則第二六条等及び機関則第二〇条)公布の日

ロ 作業環境測定に関する改正規定(酸欠則第三条及び第四条)第二種酸素欠乏危険作業に係る措置のうち換気に関する改正規定(酸欠則第五条)、ガス配管工事に係る措置に関する改正規定(酸欠則第二三条の二)及びパルプ液等を入れた設備の改造等の作業に関する改正規定(酸欠則第二五条の二及び改正省令附則第六条)昭和五七年七月一日

ハ 作業主任者の選任に関する改正規定(酸欠則第一一条及び安衛則別表第一)及び特別教育の実施に関する改正規定(酸欠則第一二条及び安衛則第三六条)、昭和五八年四月一日

なお、今回の改正により、新たに特別教育の実施を義務づけられることになる事業者に対しては、昭和五八年四月一日までの間に必要な教育を行うよう指導すること。

(二) 経過措置

次のような経過措置を規定したこと。

イ 改正省令の施行の日(以下「施行日」という。)前に行われた酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は当該技能講習修了者に交付された技能講習修了証は、第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了証とみなすこと。(改正省令附則第二条)

ロ 施行日から昭和五八年三月三一日までの間における酸素欠乏作業主任者の選任及びその職務については、従前のとおりとすること。(同附則第三条)

ハ 昭和五七年七月一日から昭和五八年三月三一日までの間における特別教育を行わなければならない酸素欠乏危険作業は、従前の酸素欠乏危険場所における作業とすること。(同附則第四条)

ニ 施行日前に酸素欠乏危険作業主任者技能講習に係る指定教習機関として指定を受けた者は、第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習に係る指定教習機関として指定を受けた者とみなすこと。(同附則第五条)

ホ 昭和五七年七月一日から昭和五八年三月三一日までの間において、特定化学物質等障害予防規則第二二条第一項の作業で、酸素欠乏症等予防規則第二条第八号の第二種酸素欠乏危険作業に該当するものを行う場合における作業方法等の決定等及び指揮者の選任等については、特定化学物質等障害予防規則第二二条第一項の適用があるものとしたこと。(同附則第七条)

第二 細部事項

Ⅰ 労働安全衛生法施行令別表第六(酸素欠乏危険場所)関係

一 第一号関係

(一) ( )内の「その他これらに類するもの」には、マンホール、横坑、斜坑、深礎工法等の深い穴及びシールド工法による作業室があること。

(二) イの「不透水層」には、粘土質固結層があること。

(三) ロの「第一鉄塩類」には、酸化第一鉄及び水酸化第一鉄があり、「第一マンガン塩類」には、酸化第一マンガンがあること。

(四) ロの「含有している地層」とは、第一鉄塩類又は第一マンガン塩類を含み還元状態にある地層をいうこと。

なお、還元状態にあることを確認する方法としては、次の方法があること。

イ 酸化還元電位差計を用い、別添の「酸化還元電位差計の測定指針」に従つて測定してマイナスの値を示すこと。

ロ 二、二′―ビピリジル試薬により安定した赤色の物質ができること。

(五) ハに該当する地層には、次のものがあること。

イ メタンガス田地帯の地層

ロ 緑色凝灰岩からなる地層であつて断層又は節理のあるもの、けつ岩からなる地層であつて断層又は節理のあるもの及び黒色変岩と緑色変岩との境界にあつて粘土化しているじや絞岩からなる地層(これからは、特にガスの突出のおそれが多い。)

(六) ニに該当する地層には、炭酸カルシウムを含む鉱泉がある地層があること。

(七) ホに該当するものには、次のものがあること。

イ 沼沢の埋立地の地層

ロ 汚濁港湾等の干たく地の地層

二 第二号関係

「長期間」とは、おおむね三か月以上の期間をいうものであること。

三 第三号関係

(一) 「その他地下に敷設される物」には、給水管、温水管、蒸気管及び油送管があり、「暗きよ」には、電線又は電話線を敷設する洞道が含まれること。

(二) 「暗きよ、マンホール又はピツト」には、完成していないものも含まれること。

四 第三号の二関係

(一) 本号は、雨水、河川のゆう水又はゆう水が滞留した場合には、これに含まれる有機物が腐敗すること等により酸素欠乏空気が生じるおそれがあることにかんがみ規定したものであること。

(二) 「槽、暗きよ、マンホール又はピツト」には、完成していないものも含まれること。

五 第三号の三関係

(一) 本号は、海水が滞留しており、若しくは滞留したことがあり、又は海水を相当期間入れてあり、若しくは入れたことのある場合には、海水中で繁殖していた貝等の生物が死んで腐敗すること等により酸素欠乏空気等が生ずるおそれがあることにかんがみ規定したものであること。

(二) 「相当期間」とは海水中で繁殖する貝等の生物が熱交換器等の内部の表面に付着し、累積することとなる期間をいうものであること。

なお、貝等の生物が熱交換器等の内部の表面に付着し、累積していれば、当該生物の腐敗の有無、硫化水素の発生の有無の如何にかかわらず、「相当期間」に該当するものであること。

(三) 「熱交換器」には、火力発電所、原子力発電所等の復水器が含まれること。

六 第四号関係

(一) 「相当期間」とは、密閉されていたボイラー等の内部の空気中の酸素によりその内壁が酸化され、その結果として内部の空気が酸素欠乏の状態になるおそれが生ずる状態になる期間をいうものであること。

なお、密閉されている空気中の酸素によつて内壁が酸化されている速度は、内部における温度、湿度、水の有無、空気の量等の環境条件によつて、著しく異なり一律には定められないものであるが、個々のケースについての「相当期間」の判断に際しては、次の事項に留意すること。

イ 内部に水が存在している場合には、短期間(数日程度)で内壁の酸化が進むことがあること。

ロ 内部に水が存在せず、かつ、内部の空気中の相対湿度がおおむね五〇%以下である場合には、数か月以上経過しても内壁の酸化が進まないことがあること。

(二)「その他その内壁が酸化されやすい施設」には、圧力容器、ガスホルダ、反応器、抽出器、分離器、熱交換器及び船の二重底があり、完成していないものも含まれること。

(三) 「内壁の酸化を防止するために必要な措置」とは、次のイからホまでの措置をいうものであること。

イ 内壁に、日本工業規格G四九〇一(耐食耐熱超合金棒)、日本工業規格G四九〇二(耐食耐熱超合金板)、日本工業規格G四九〇三(配管用継目無ニツケルクロム鉄合金管)若しくは日本工業規格G四九〇四(熱交換器用継目無ニツケルクロム鉄合金管)に定める規格に適合する材料又はこれらと同等以上の耐食性を有する材料が用いられていること。

ロ 内壁に防せい塗装又はガラス、合成樹脂等の酸化しない物による被覆(ライニング)が行われていること。

ハ シリカゲル、活性アルミナ等の乾燥剤(日本工業規格K一四六四(工業用乾燥剤)に定める規格に適合するもの又はこれと同等以上の乾燥能力を有するものに限る。)により内部が乾燥状態(内部に水がなく、かつ、内部の空気中の相対湿度がおおむね五〇%以下である状態をいう。)に保たれていること。

なお、おおむね一ケ月以内ごとに一回、内部の乾燥状態又は乾燥剤の有効性等について点検を行うことが望ましいこと。

ニ 電気防食が施されていること。(資料二参照)この場合において、当該電気防食は、次の(イ)、又は(ロ)のいずれかの要件を満足するものでなければならないこと。

(イ) 内壁のすべての表面にその効果が及ぶものであること。

(ロ) 内壁の表面の一部にその効果が及ばない場合には、その効果が及ばない部分に上記イ又はロの措置が講じられているものであること。

ホ 内部が常に満水状態に維持されていること(満水保管)。

なお、上記ロからホまでのいずれかの措置が講じられていた場合において、その保守管理の不備等により内壁の酸化を防止する効果がなくなつたときは、「内壁の酸化を防止するために必要な措置が講ぜられている」ことには該当しないものであること。

七 第五号関係

(一) 「空気中の酸素を吸収する物質」には、泥炭、果菜及び鯨油があり、「その他の貯蔵施設」には、サイロ及び有がい貨車があること。

なお、「船倉」のうちには、はしけ等の船倉であつて通風が良好なものは含まれないこと。

(二) 「乾燥油」には、アマニ油、エノ油及びボイル油があること。

八 第六号関係

(一) 「乾性油」の意義は、上記七の(二)の意義と同様であること。

(二) 「その他通風が不十分な施設」には、坑及びピツトがあること。

九 第七号関係

「穀物若しくは飼料」には、もみ、豆、とうもろこし及び魚かすが、「果菜の熟成」にはバナナの熟成が、「種子の発芽」には、もやしの栽培及び麦芽の製造が、それぞれ、含まれること。

一〇 第八号関係

「その他発酵する物」には、こうじ、ぶどう酒原料のぶどう及び麦芽があること。

一一 第九号関係

(一) 「汚水」には、パルプ廃液、でんぷん廃液、皮なめし工程からの廃液、ごみ処理場における生ごみから出る排水、ごみ焼却灰を冷却処理した排水、及び下水があること。

(二) 「その他腐敗し、又は分解しやすい物質」には、魚かす、生ごみ及びごみ焼却場における焼却灰があること。

(三) 「槽」には、浄化槽、汚泥槽、ろ過槽及び汚水桝のほか、製紙又はパルプ製造工程に用いられるチエストがあること。

(四) 「パルプ液」とは、パルプ製造工程におけるいわゆるパルプスラリー(古紙の再生工程におけるパルプ懸濁液を含む。)をいうこと。

一二 第一〇号関係

「水セメントのあく抜き」とは、船倉(水タンク)等のさび止めのために塗布した水セメント(セメントペースト)をドライアイスを用いて処理することをいうこと。(資料三参照)

一三 第一一号関係

(一) 本号に掲げる気体がボンベに入つて格納されている施設の内部は、本号に含まれないこと。

(二) 「その他の施設」には、圧力容器、ガスホルダ、反応器、抽出器、分離器、熱交換器、船の二重底、液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室の内部(資料四参照)及びりんごのCA貯蔵施設の内部(資料五参照)があり、完成していないものも含まれること。

Ⅱ 酸素欠乏症等防止規則関係

一 第一章関係

(一) 第一条関係

イ 本条は、酸素欠乏症等を防止するため、事業者に対し、第三条以下に規定するところにより具体的な措置を講ずるほか、酸素欠乏症等を防止するための作業方法の確立、作業環境の整備その他必要な措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 「その他必要な措置」には、工程及び工法の適正化、保護具の使用等があること。

(二) 第二条関係

イ 第一号の「酸素欠乏」の範囲については、おおむね次の点を考慮して定めたものであること。

(イ) 一般に、人体が正常な機能を維持し得る空気中の酸素濃度の下限は一六%とされ、これより低下した場合は酸素欠乏症の症状があらわれ、更に酸素濃度が低下した空気を吸入すると短時間で死に至る危険があること。

(ロ) したがって、酸素欠乏の生じやすい場所においては、酸素欠乏の空気の流入、炭酸ガスの発生等により、空気中の酸素濃度が変化することが多く、このような事態の発生に際して労働者が事前に安全に退避することができるためには、少なくとも酸素濃度を一八%とする必要があること。

(ハ) さらには、肉体労働でエネルギー消費が大きくなれば酸素消費が増加するので、危険な状態になることを防ぐためには、少なくとも酸素濃度の限度は一八%未満にならないようにする必要があること。

ロ 第二号の「空気中の硫化水素の濃度が一〇〇万分の一〇を超える状態」については、一般にこの濃度が眼の粘膜刺激の下限であるとされており、学会等においても空気中の硫化水素をこの濃度以下に保つことが必要であるとされていることによるものであること。なお硫化水素の濃度は、体積比であること。

ハ 第三号の「症状」としては、初期には、顔面のそう白又は紅潮、脈拍及び呼吸数の増加、息苦しさ、めまい、頭痛等があり、末期には、意識不明、けいれん、呼吸停止、心臓停止等があること。

ニ 第四号の「症状」としては、初期には眼、気道の刺激、嗅覚の鈍麻、胸痛があり、末期には肺水腫、肺炎、意識不明、呼吸停止、心臓停止、等があること。

ホ 第六号の「酸素欠乏危険作業」とは、第七号の第一種酸素欠乏危険作業及び第八号の第二種酸素欠乏危険作業の総称であること。

ヘ 第七号は令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所のうち、同表第一号から第三号の二まで、第四号から第八号まで及び第一〇号から第一二号までに掲げる場所(同号にあっては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として労働大臣が定める場所を除く。)については、酸素欠乏症にかかるおそれがあるが、硫化水素中毒にかかるおそれがないと考えられるため、酸素欠乏症を防止するための措置を講ずべき作業として当該場所における作業を第一種酸素欠乏危険作業として規定したものであること。なお、上記場所に該当すれば、当該場所における酸素の濃度の如何にかかわらず、当該場所における作業は、第一種酸素欠乏危険作業に該当するものであること。

ト 第八号は、令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所のうち、同表第三号の三、第九号及び第一二号に掲げる場所(同号に掲げる場所にあっては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として労働大臣が定める場所に限る。)については、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれがあると考えられるため、酸素欠乏症及び硫化水素中毒を防止するための措置を講ずべき作業として当該場所における作業を第二種酸素欠乏危険作業と規定したものであること。

なお、上記場所に該当すれば、当該場所における酸素及び硫化水素の濃度の如何にかかわらず、当該場所における作業は、第二種酸素欠乏危険作業に該当するものであること。

二 第二章関係

(一) 本章の趣旨等

本章は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合において酸素欠乏症等を防止するために講ずべき作業環境測定、換気、人員の点検、立入禁止、作業主任者の選任、特別の教育の実施、退避等の措置について規定したものであること。

(二) 第三条関係

イ 第一項は、酸素欠乏危険作業において酸素欠乏症等を防止するには、第一種酸素欠乏危険作業にあっては、空気中の酸素の濃度が一八%以上、第二種酸素欠乏危険作業にあっては空気中の酸素の濃度が一八%以上、かつ、硫化水素の濃度が一〇〇万分の一〇(以下「一〇PPm」という。)以下であることを確認し、その結果に基づいて適切な措置を講じた上、作業を開始することが不可欠であるので、その日の作業を開始する前にこれを測定すべきことを規定したものであること。

ロ 第一項に基づく測定は、第一一条の規定により第一種酸素欠乏危険作業にあっては第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を、第二種酸素欠乏危険作業にあっては第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した酸素欠乏危険作業主任者に行わせなければならない。

ハ 第一項の「その日の作業を開始する前」とは、交替制で作業を行っている場合においては、その日の最初の交替が行われ、作業が開始される前をいう趣旨であること。

ニ 第一項の酸素及び硫化水素の濃度の測定については、作業環境測定基準(昭和五一年労働省告示第四六号)第一二条に定めるところによらなければならないこと。(安衛法第六五条第二項参照)

ホ 測定に当たっては、次の事項に留意するよう指導すること。

(イ) 原則として、その外部から測定することとし測定しようとする箇所に「体の乗り入れ」「立ち入り」等をしないこと。

(ロ) 測定は、必ず測定する者の監視を行う者を置いて行わなければならないこと。

(ハ) 当該場所が奥深く、又は複雑な空間である等のため、外部から測定することが困難な場合等は、第五条の二第一項に規定する空気呼吸器等を着用し、また転落のおそれがあるときは、第六条第一項に規定する安全帯等を使用した上、当該場所に立ち入って測定すること。この場合には、測定者の立ち入る場所の外部に、上記(ロ)の監視を行う者を置き、当該監視する者についても、転落のおそれがあるところでは、安全帯等を使用すること。

(ニ) メタンガスが存在するおそれがある場所では、開放式酸素呼吸器を使用してはならないこと。また、内部照明には、定着式又は携帯式の電灯であって、保護ガード付き又は防爆構造のものを用いること。

ヘ 第二項第二号の「測定方法」とは、試料空気の採取方法並びに使用した測定器具の種類、型式及び定格をいうこと。

ト 第二項第三号の「測定箇所」の記録は、測定を行った作業場の見取図に測定箇所を記入すること。

チ 第二項第四号の「測定条件」とは、測定時の気温、湿度、風速及び風向、換気装置の稼働状況、工事種類、測定箇所の地層の種類、附近で圧気工法が行われている場合には、その到達深度、距離及び送気圧、同時に測定した他の共存ガス(メタン、炭酸ガス等)の濃度等測定結果に影響を与える諸条件をいうこと。

リ 第五号の「測定結果」については、酸素又は硫化水素に係る各測定点における実測値及びこれを一定の方法で換算した数値を記録することとすること。

(三) 第四条関係

イ 本条は酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合には、第一種酸素欠乏危険作業にあっては空気中の酸素の濃度を測定するための測定器具を、第二種酸素欠乏危険作業にあっては空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定するための測定器具を備えるべきことを規定したものであること。

ロ 「前条第一項の規定による測定を行うため必要な測定器具」とは、作業環境測定基準第一二条第二号に規定するものをいうこと。

ハ 本条の「容易に利用できる措置」には、常時作業場所に備えていなくても必要の都度測定器具を他から確実に借用することができるようにしておくことが含まれること。

(四) 第五条関係

イ 第一項は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合には、酸素欠乏症等にかかることを防止するために、原則として、第一種酸素欠乏危険作業にあっては空気中の酸素の濃度を一八%以上に、第二種酸素欠乏危険作業にあっては空気中の酸素の濃度を一八%以上、かつ、硫化水素の濃度を一〇PPm以下に保つことを規定したものであること。

ロ 第一項の「換気」には、自然換気及び機械換気があるが、メタンがゆう出する暗きょ内、汚泥等に溶解していた硫化水素が継続的に発生する汚水槽内等のように一回の換気のみでは上記イの状態を保つことができないときは、継続して換気する必要があること。

ハ 第一項ただし書の「爆発、酸化等を防止するため換気することができない場合」には、果菜の熟成を行っているむろ等の内部で作業を行う場合があること。

また、「作業の性質上換気することが著しく困難な場合」には、長大横坑、深礎工法による深い穴等であって、機械換気を行っても酸素の濃度が一八%以上にならない場所における作業の場合、令別表第九号のし尿の入っているタンク等で換気することにより悪臭公害を生じるおそれのある作業を行う場合、バナナの熟成状況の点検を行う場合などがあること。

ニ 第二項は、爆発火災の防止及び酸素中毒の予防の見地から換気のために純酸素を使用することを禁止したものであること。

ホ 「純酸素」とは、いわゆる酸素として市販されているものはすべてこれに該当するものであること。

(五) 第五条の二関係

イ 本条は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合で換気を行うことができないとき又は、換気を行うことが著しく困難なときにおける酸素欠乏症等を防止するための措置を規定したものであること。

ロ 第一項の「空気呼吸器」とは日本工業規格T八一五五

(空気呼吸器)に定める規格に、「酸素呼吸器」とは、日本工業規格M七六〇〇(開放式酸素呼吸器)、日本工業規格M七六〇一(循環式酸素呼吸器)若しくは、日本工業規格T八一五六(酸素発生形循環式酸素呼吸器(クロレートキャンドル式)に定める規格に、「送気マスク」とは日本工業規格T八一五三(送気マスク)に定める規格に、それぞれ適合するか又はこれと同等以上の性能を有するものをいうこと。なお、送気マスクの種類には、ホースマスクとエアラインマスクがあること。

なお、防毒マスク及び防じんマスクは、酸素欠乏症の防止には全く効力がなく、酸素欠乏危険作業には絶対に用いてはならないものであること。

(六) 第六条関係

イ 第一項は、労働者が酸素欠乏等の空気を呼吸してよろめき、又は失神することにより転落し危害を受けることを防止するため、転落のおそれのある場所では、手すり及び柵の有無にかかわらず、安全帯等を使用させなければならないことを規定したものであること。

ロ 第一項の「転落」には、墜落も含まれること。

(七) 第七条関係

イ 本条は、酸素欠乏危険作業を行うに当たって、空気呼吸器等、安全帯等又は安全帯等の取付設備等の不備により労働者が危害を受けることを防止するため、当該保護具等について、作業の開始前にこれらを点検すべきことを規定したものであること。

ロ 「点検」については次に掲げる保護具の区分に応じ当該各号に掲げる事項について行うこと。

(イ) 空気呼吸器等

a 面体、フード、アイピース等の異常の有無

b 弁及びコックの漏れ及び損傷

c 警報器、圧力指示計、背負器、空気調節袋及び送風機の異常の有無

d 吸気管等の取付部の異常の有無並びに吸気管等の傷及び割れ等の有無

(ロ) 安全帯等及びその附属金具

安全帯等及びその附属金具の損傷及び腐食の有無

(ハ) 安全帯等の取付設備

安全帯等の取付設備の損傷及び腐食の有無

(八) 第八条関係

イ 本条は、酸素欠乏危険作業に従事する労働者が作業場所に取り残されることがないように、人員を点検すべきことを規定したものであること。

ロ 「点検」については、単に人数を数えるだけでなく、労働者個々の入退場について確認すること。

(八) 第九条関係

イ 本条は、酸素欠乏危険作業を行うときはもとより酸素欠乏危険場所に隣接する場所において作業を行うときは、酸素欠乏危険作業に従事する労働者以外の労働者が、酸素欠乏危険場所に立ち入ることにより、酸素欠乏症等にかかることを防止するために当該者の立入りを禁止し、その旨を当該場所の入口等の見やすい箇所に表示することを義務づけたものであること。

ロ 第一項の「表示」を行う場合には、少なくとも次の事項を併せて記載するよう指導すること。

(イ) 第一種酸素欠乏危険作業に係る場所にあっては酸素欠乏症にかかるおそれ、第二種酸素欠乏危険作業に係る場所にあっては酸素欠乏症及び硫化水素中毒にかかるおそれがあること。

(ロ) 当該場所に立ち入る場合にとるべき措置

(ハ) 事故発生時の措置

(ニ) 空気呼吸器等、安全帯等、酸素の濃度の測定機器、硫化水素の濃度の測定機器、送気設備等の保管場所

(ホ) 酸素欠乏危険作業主任者の氏名

(10) 第一〇条関係

イ 本条は、次に掲げる作業の場合のように「近接する作業場で行われる作業」により酸素欠乏等になることを防止するための措置を規定したものであること。

(イ) 令別表第六第一号のイ又はロに掲げる場所において作業を行う場合であって、当該場所に近接した場所で圧気工法による作業が行われているとき。

(ロ) タンクの内部等通風の不十分な場所で作業を行う場合であって、当該場所に近接する作業場で窒素、炭酸ガス等が取り扱われているとき又はし尿、汚水等硫化水素を発生させる物を入れてあり、若しくは入れたことのあるタンク、槽等の内部を換気しているとき。

ロ 「連絡」を保つべき事項には、一般的事項としては作業期間及び作業時間があり、圧気工法を用いる作業場が近接してある場合には、その他に送気の時期の相互連絡及び送気圧の調整等があること。

ハ 「近接する作業場」には、当該事業者の管理下にある作業場のほか、他の事業者の管理下にある作業場も含まれていること。

(11) 第一一条関係

イ 第一項の「酸素欠乏危険作業主任者」は、その職務の遂行が可能な範囲ごとに選任すれば足りること。

ロ 第二項第一号の「作業の方法」とは、換気装置及び送気設備の起動、停止、監視並びに調整、労働者の当該場所への立入り、保護具の使用、事故発生の場合の労働者の退避及び救出等についての作業の方法をいうこと。

(12) 第一二条関係

イ 本条は、第一種酸素欠乏危険作業に係る業務に労働者を就かせるときは、酸素欠乏症に関する知識の不足から生ずる事故を防止するため、第二種酸素欠乏危険作業に係る業務に労働者を就かせるときは、酸素欠乏症及び硫化水素中毒に関する知識の不足から生ずる事故を防止するため、必要な事項について教育を行わなければならないことを規定したものであること。

ロ 本条の教育事項の範囲及び時間については酸素欠乏危険作業特別教育規程(昭和四七年労働省告示第一三二号)に定められていること。なお教育方法としては酸素欠乏危険作業について十分な知識、技能、経験をもった者を講師として選び、できるだけ一定のテキストを使用して行うよう指導すること。

ハ 労働災害防止団体等が、本条に定める要件を満たす講習を行った場合で、同講習を受講したことが明らかな者については、受講をした当該科目についての特別教育を省略することができること(安衛則第三七後参照)。

ニ 特別教育は、繰り返し行うことにより一層効果を定着させることができることから、酸素欠乏危険作業に労働者を就かせた後も繰り返し行うよう指導すること。

(13) 第一三条関係

イ 本条は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合に、異常を早期に発見しても適切な処置を迅速に行うために監視人を配置すること等の措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 「異常があったとき」には、労働者が身体の異常を訴えたとき、換気装置に異常を認めたとき等があること。なお、酸素欠乏症の初期においては、顔面そう白又は紅潮、脈拍及び呼吸数の増加、発汗、よろめき、めまい並びに頭痛の徴候が認められることに、硫化水素中毒の初期においては、眼及び気道の刺激、嗅覚の鈍麻並びに胸痛の徴候が認められることに留意すること。

ハ 「その他の関係者」には、高圧室内作業主任者、空気圧縮機を運転する者及び異常の原因が第一〇条に規定する「近接する作業場で行われる作業」にある場合には、その作業場の現場責任者があること。

ニ 「監視人」は、本条に規定する業務の遂行が可能な範囲ごとに配置する必要があること。

配置に当たっては、ボイラー、タンク、反応塔、船倉等の内部における酸素欠乏危険作業の場合のように、当該作業場所の開口部の外側から内部の監視が可能な場合には開口部の外側に配置するよう指導すること。

作業場所が複雑である場合等、その外部から作業の状況を監視することが著しく困難なときは、酸素欠乏危険作業に従事する労働者の中から通報者を選任し、かつ、通報者から外部の監視人に連絡しうるように電話等の通報設備を設置するよう指導すること。

ホ 「常時作業の状況を監視し、異常があったときに直ちにその旨を酸素欠乏危険作業主任者及びその他の関係者に通報する者を置く等」の「等」には、第一種酸素欠乏危険作業に係るものにあっては、作業場に自動警報装置付きの酸素濃度の測定機器(日本工業規格T八二〇一(酸素濃度計及び酸素濃度警報計)に定める酸素濃度警報計の規格に適合するか又はこれと同等以上の性能を有するものをいう以下同じ。)を設置して常時測定を行い、空気中の酸素の濃度が一八%未満になった時に警報が発することにより酸素欠乏危険作業主任者及びその他の関係者が異常を直ちに認知できるようにすること、第二種酸素欠乏危険作業に係るものにあっては、作業場に自動警報装置付きの酸素濃度の測定機器及び自動警報装置付きの硫化水素濃度の測定機器を設置して常時測定を行い、空気中の酸素の濃度が一八%未満になった時又は硫化水素の濃度が一〇PPmを超えた時に警報が発し、酸素欠乏危険作業主任者及びその他の関係者が異常を直ちに把握できるようにすることがあること。

(14) 第一四条関係

イ 本条は、酸素欠乏危険作業においてガスの突出、硫化水素の急激な発生、換気装置の故障等で空気中の酸素濃度が一八%未満になるおそれ又は、硫化水素の濃度が一〇PPmを超えるおそれが生じたときは、労働者を安全な場所に退避させ、危険のないことを確認した後でなければ当該場所に特定の者以外の者が立ち入ることを禁止する趣旨の規定であること。

ロ 第一項の「酸素欠乏等のおそれが生じたとき」には、酸素欠乏の空気の噴出、換気装置の故障、不活性ガス等の漏出、圧気工法における送気圧の低下、硫化水素の急激な発生等酸素欠乏症等の急迫した危険が生じたときがあること。

ハ 第二項の「酸素欠乏等のおそれがないとき」とは、酸素欠乏等のおそれが生じた原因が除去され、又は消滅し、その結果第一種酸素欠乏危険作業に係る場合にあっては空気中の酸素の濃度が一八%以上に保たれている状態にあること。第二種酸素欠乏危険作業に係る場合にあっては空気中の酸素の濃度が一八%以上、かつ、硫化水素の濃度が一〇PPm以下に保たれている状態にあることをいうこと。

ニ 第二項の「特に指名した者」が労働者の救出等のために当該場所に立ち入る場合は、空気呼吸器等を着用させる必要があること。

(15) 第一五条関係

イ 第一項の「空気呼吸器等」については、救出作業に従事することが予定されている労働者の数以上を備えることが必要であること。

ロ 第一項の「繊維ロープ等」の「等」には、安全帯等つり足場(巻き上げ可能なものに限る。)及び滑車が含まれること。

(16) 第一六条関係

イ 本条は、酸素欠乏等の場所において酸素欠乏症等にかかった労働者を救出する場合には、二次災害を防止するため、救出に従事する労働者に必ず空気呼吸器等を使用させなければならないことを規定したものであること。

ロ 酸素欠乏症等の事故においては、救出のため立ち入った者の死亡事故が多いので、本条については特に留意すること。

(17) 第一七条関係

「酸素欠乏症等にかかった労働者」には、酸素欠乏等の場所にあっては酸素欠乏症等の初期の症状があった者も含まれ、それらの者についても診察又は処置を受けさせなければならないものであること。

三 第三章関係

(一) 本章の趣旨等

本章は、圧気工法による作業、特定の地層に通じる井戸等が設けられている地下室等における作業、し尿等を入れてある設備等の改造等の作業等特殊な作業又は冷蔵室等特殊な施設において発生する酸素欠乏症等を防止するため必要な措置を講ずべきことを規定したものであり、これを遵守させることによって公衆災害の防止にも寄与することができるものであること。

(二) 第一八条関係

イ 本条は、特定の地層を掘削する場合にメタン又は炭酸ガスが突出することにより労働者が酸素欠乏症にかかることがあるため、あらかじめ先進ボーリング等により当該ガスの有無及び状態を調査し、その結果に基づき適切な方法により作業を行うべきことを規定したものであること。

ロ 「メタン又は炭酸ガスの突出により労働者が酸素欠乏症にかかるおそれのあるとき」には、次の地層を掘削する場合があること。

(イ) 緑色凝灰岩からなる地層であって、断層又は節理のあるもの

(ロ) けつ岩からなる地層であって、断層又は節理のあるもの

(ハ) 黒色変岩と緑色変岩との境界にあって、粘土化しているじゃ紋岩からなる地層

ハ 「その周辺」とは、作業場所の周辺に滞留しているメタン又は炭酸ガスがそのガス圧により作業場所に突出するおそれがある箇所のすべてをいうこと。

ニ 「その他適当な方法」による「調査」には、発注者等が「適当な方法」によって調査をしている場合には、事業者がその調査の結果について調べることが含まれること。

ホ 「メタン又は炭酸ガスの処理の方法」には、ガス抜きがあること。

(三) 第一九条関係

イ 本条は、地下室等において、炭酸ガスを使用する消火器等を転倒し、誤って作動させる等により炭酸ガスが噴出することにより酸素欠乏症にかかることを防止するため、必要とする場合以外の場合に消火器等が作動することのないように措置すべきことを規定したものであること。

ロ 地下室等に備えている炭酸ガス又は蒸発性液体を使用する自動式の消火器等であって手動式に切り換え可能なものについては、当該地下室等の内部で溶接等の火気を使用することにより温度が上昇して消火器等が自動的に作動するおそれがある場合は、火気を使用する間、手動式に切り換えることが望ましいこと。

ハ 「その他通風が不十分な場所」とは、自然通風が不十分で、かつ、換気が十分に行われていない場所をいい、船室、タンク、ボイラー、圧力容器及び反応塔の内部があること。

ニ 第一号により講ずべき措置としては、火災が発生した場合に直ちに取り出せるようにしたうえで囲いを設けることがあること。

(四) 第二〇条関係

イ 本条は、労働者が、冷蔵室等の内部に閉じ込められて酸素欠乏症にかかることを防止するため、労働者が内部で作業する間、原則として出入口の扉又はふたが締まらないような措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 「その他密閉して使用する施設又は設備」には、タンク、ボイラー、圧力容器、反応塔等があること。

ハ 「出入口の扉又はふたが締まらないような措置」とは、扉又はふたを取り外すこと、針金、ロープ、鎖等を使用して扉又はふたが締まらないように緊縛すること等があり、角材、鉄棒等で単に扉又はふたを支えることは、本条の措置には該当しないこと。

(五) 第二一条関係

イ 本条は、タンク等の製造、改修等のためにイナート(不活性)ガスアーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接を行う場合には、当該ガスが内部に充満することにより酸素欠乏症が発生することを防止するために必要な措置を講ずべきこと等を規定したものであること。

ロ 第一項の「その他通風が不十分な場所」には、分離器、船倉等の内部があること。

(六) 第二二条関係

イ 本条は、労働者がボイラー等の内部で作業しているときに、その外部にいる者が、内部で作業していることを知らずに当該設備に窒素等の不活性の気体を送給すること等により酸素欠乏症が発生することを防止するため、労働者が内部で作業している間、当該設備に通じる配管のバルブ等を閉止すべきこと等を規定したものであること。

ロ 第一項の「船倉等」の「等」には、圧力容器、ガスホルダ、反応器、抽出器、分離器、熱交換器、船の二重底並びに窒素、フロン等を使用する低温恒温室及びピットがあり、完成していないものも含まれること。

ハ 第二項の措置をより効果あらしめるため、バルブ等の配置箇所の照明を適切にすることが望ましいこと。

ニ 第二項の「押しボタン等」の「等」には、遠隔操作用のレバーが含まれること。

ホ 第二項の「開閉の方向を表示し」とは、矢印、文字等で「開」及び「閉」の方向を表示することをいうこと。

(七) 第二二条の二関係

イ 本条の措置は、炭酸ガス消火設備の炭酸ガスボンベを設置している室、フロンを冷媒とする冷凍機室、不活性の気体を入れてある容器の貯蔵場所、不活性のガスを製造し、又は取り扱う装置を設置している場所等において労働者に作業を行わせる場合について、講ずべきものであること。

ロ 「タンク、反応塔等」の「等」には、冷凍機の蒸発器が含まれること。

ハ 「安全弁等」の「等」には、破裂板及び緊急放出装置が含まれること。

(八) 第二三条関係

イ 本条は、減圧又は脱気した状態で化学反応を行わせるための設備等の内部において、労働者が作業している場合に、その外部にいる者が、内部で作業していることを知らずに内部の空気を吸引すること等により内部の空気が稀薄化し、そのため酸素欠乏症が発生することを防止するため、労働者が内部で作業している間、出入口のふた又は扉が締まらないような措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 「ふた又は扉が締まらないような措置」の意義は第二〇条の「ふた又は扉が締らないような措置」の意義と同様であること。

(九) 第二三条の二関係

イ 本条は、ガス配管工事において配管を取り外す等の作業を行う場合に、配管からガスが漏出することにより酸素欠乏症が発生するのを防止するために、ガスの遮断、作業を行う場所の換気等必要な措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 第一項「その他通風が不十分な場所」には、暗きょ、マンホール又はピットの内部があること。

ハ 第一項第一号の措置には、そのゲージ圧力が、五〇〇mm水柱を超えるガスの配管工事においては、バルブ若しくはコックを確実に閉止すること又は盲板若しくは盲栓を取りつけることがあり、そのゲージ圧力が五〇〇mm水柱以下のガスの配管工事においては上記の措置のほか次の措置があること。

(イ) 配管の内部にバッグ又はストッパーを挿入すること。

(ロ) 本管又は支管をせん孔して、供給管若しくは分枝管(以下「供給管等」という。)を取り付け、当該供給管等に附属しているバルブを閉止し、若しくは当該供給管等の内部にストッパーを挿入すること。

(18) 第二四条関係

イ 本条は、潜函工法、圧気シールド工法等による掘削の作業を行う場合に、圧気のために周辺区域に漏出する酸素欠乏の空気により酸素欠乏症が発生することを防止するため、当該作業により酸素欠乏の空気が漏出するおそれのある井戸又は配管について調査し、当該空気が漏出している場合には必要な措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 第一項の「これに隣接する箇所」の範囲は、圧気による空気が、令別表第六第一号イ又はロに掲げる地層に浸透するおそれのある箇所のすべてをいうこと。

ハ 第一項の「酸素欠乏の空気が漏出するおそれがある井戸又は配管」とは圧気による空気が上記ロに掲げる地層を浸透して井戸又は配管へ漏出する場合の当該井戸又は配管をいうものであること。

ニ 第一項の「配管」とは、地中に埋設された管をいうこと。

ホ 第一項の「その程度」とは、漏出している酸素欠乏の空気の単位時間当たりの漏出量をいうこと。

ヘ 第一項による調査を行う場合には、次によるものとすること。

(イ) 圧気工法の工区が二五〇メートル以内の部分については、圧気を始めてから一週間以内及び圧気を始めて一カ月後から一週間以内に、予定工区の周囲一キロメートルの範囲について工区に隣接する区域から順次外側に向かって実施すること。

(ロ) 圧気工法の工区が二五〇メートルを超える部分については、圧気工法による掘削の作業を開始してから掘削の長さが二五〇メートルに達するごとに、その時点から一週間以内に、予定工区の周囲一キロメートルの範囲について及びその時点より一カ月後から一週間以内に予定工区の周囲一キロメートルの範囲から(イ)で調査した範囲を除いた範囲について実施すること。

なお、調査の範囲を図示すると左図のようになること。

備考 一 実線で囲まれる部分は、圧気開始時及びその一カ月後の調査範囲

二 点線で囲まれる部分は、当初の工区の掘削が終了して次の工区に達したときの調査範囲

三 斜線で囲まれる部分は、次の工区に達してから一カ月後の調査範囲

(ハ) 酸素欠乏の空気が漏出していることを認めたときは、漏出箇所及びその付近については特に入念な調査を実施すること。

なお、漏出箇所が調査範囲の外周付近の場合においては、一キロメートルの範囲を超えて調査するよう指導すること。

(ニ) 圧気のための送気量に異常を生じたときは、その都度、その日から一週間以内に、周囲一キロメートルの範囲について実施すること。

ト 第二項の「関係者」とは、酸素欠乏の空気が漏出している井戸又は配管を管理する者、当該井戸又は配管のある場所における作業に労働者を従事させる事業者等をいうこと。

チ 第二項の「酸素欠乏症の発生を防止するための方法」とは、酸素欠乏の空気が漏出している箇所を閉そくすること、漏出している当該空気を配管等により直接外気に放出して大気中に拡散させること、漏出箇所に顔を近づけないようにすること等があること。

リ 第二項の「立入りを禁止する等」の「等」には緊急の場合に付近の住民に警報することがあること。

(19) 第二五条関係

イ 本条は、地下室等であって令別表第六第一号イ若しくはロに掲げる地層に接しているもの又は当該地層に通じる井戸若しくは配管があるものについて、壁の割れ目、井戸、配管等より酸素欠乏の空気が流入することを防止するための措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 「令別表第六第一号イ若しくはロに掲げる地層に接し又は当該地層に通ずる井戸又は配管が設けられている」とは、下図のような場合をいうこと。

なお、地層の状態については一般に、ビルの管理者は、井戸の柱状図を所有していることに留意すること。

ハ 「酸素欠乏の空気を直接外部へ放出することができる設備」については、住民等の健康上問題がない場所を選定するとともに、当該設備の危険性について周知するための表示を行うよう指導すること。

ニ 「設備を設ける等」の「等」には、直接室内の空気を換気することがあること。

(20) 第二五条の二関係

イ 本条は、し尿等腐敗し又は分解しやすい物質を入れてあるポンプ等の設備の改造等を行う場合、当該設備を分解する際に、設備内に滞留している硫化水素が空気中に放出され、硫化水素中毒が発生することを防止するために、作業方法等を決定し労働者に周知させること、指揮者を選任すること、バルブ、コック等を閉止し、施錠をすること等必要な措置を講ずべきことを規定したものであること。

ロ 「配管等」の「等」にはバルブ及びコックが含まれること。

ハ 「附属する設備」には、スクリーン、破砕機(カッター)及びフィルタープレス、脱水機並びにろ過機が含まれること。

ニ 「清掃等」の「等」には塗装、解体及び内部検査が含まれること。

ホ 第二号の「必要な知識を有する者」とは、硫化水素についての有害性、作業における障害予防措置の具体的方法、事故が発生した場合の応急措置の要領等についての知識のある者をいい、特定化学物質等作業主任者技能講習又は第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を終了した者がこれに該当すること。

ヘ 第三号の「バルブ、コック等」の「等」には、盲栓が含まれること。

ト 第五号の「換気その他必要な措置」には、空気呼吸器等の使用が含まれること。

第三 その他

一 労働安全衛生規則関係

(一) 第五八五条関係

第四号の「酸素濃度が一八%に満たない場所又は硫化水素濃度が一〇〇万分の一〇を超える場所」に該当する場所であって令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所に該当するものについては、本条は適用されず、酸素欠乏症等防止規則第九条の規定が適用されるものであること(同条第三項参照)。したがって本条は、令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所以外の場所について適用されること。

(二) 改正前の酸素欠乏症防止規則等の規定により行われた酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者が当該講習の修了証の再交付を受けようとする場合には、再交付申込書に「(第一種酸素欠乏危険作業主任者)技能講習修了証/再交付/書 替申込書」と記入するよう指導すること。

また、当該修了証は「(第一種酸素欠乏危険作業主任者)技能講習修了証」とすること。

二 検査代行機関等に関する規則関係

(一) 指定教習機関の指定申請に関して、改正省令の公布の日前に改正前の検査代行機関等に関する規則(以下「旧機関則」という。)第二〇条第一八号の酸素欠乏危険作業主任者技能講習に係る指定教習機関として指定を受けた者が、改正後の検査代行機関等に関する規則(以下「新機関則」という。)第二〇条第一八号の二の第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習に係る指定の申請をしようとする場合には、新機関則第二一条第二号及び第三号に掲げる書類の添付を要しないこと。

(二) 指定教習機関として新たに指定を受けようとする者及び旧機関則第二〇条第一八号の酸素欠乏危険作業主任者技能講習に係る指定教習機関として指定を受けた者に対して、第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習及び第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習の両講習に係る指定教習機関となるよう指導すること。

三 その他

(一) 労働基準監督署長は、圧気工法による作業を行う仕事に係る労働安全衛生法第八八条第四項の規定による届出を受けた場合において、当該届出に係る工事により管轄外の区域に酸素欠乏の危険が及ぶと思われるときは、関係署にその写を回付すること。

(二) 労働基準監督署長は圧気工法による作業を行う仕事に係る労働安全衛生法第八八条第四項の規定による届出を受け、又は酸素欠乏症等防止規則第二九条の酸素欠乏の空気が漏出している旨の報告を受けた場合において、当該届出又は報告が、次に掲げる地域に係るものであるときは、速やかに都道府県労働基準局長に報告し、報告を受けた都道府県労働基準局長は、関係する都道府県及び市町村(区)(工区が次に掲げる地域以外の地域にまたがる場合にあっては、当該地域を管轄する都道府県及び市町村(区)を含む。)の消防、公害及び公衆衛生をそれぞれ主管する部局に当該届出又は報告の内容を連絡すること。イ 東京都内二三区、ロ 川崎市、 ハ 横浜市、ニ 名古屋市、ホ 大阪市

別添

酸化還元電位差計の測定指計

1 地下現場での測定方法

(1) あらかじめ、加メル電極の基準電位を零シフトとすること。

(2) 試料の採取は、最も新しく掘削した面で他の場所から流れてくる地下水等の影響のない地点を選び、その表面を更に30~50cm位削り落し、1塊が30cm大の土の試料をとる。この試料から直径10cm位の塊を2~3個作る。これらの塊に電極を順次差し込んで測定する。粘土質で軟らかい場所では表面を30~50cm削り落し、新しく作つた面に電極を入れて測定する。

(3) 電極についた土を落し、蒸留水で電極を洗い、ろ紙でふいた後(1)と同じチエツクを行う。

(4) 最初にとつた試料と同じ手順で、同じ岩質のところから試料をあと2か所とり、(2)と同様な手順で測定する。

(5) 3か所の試料についてそれぞれ2~3回の測定値のうち最低値を測定結果として採用する。

2 ボーリングコアの測定

(1) 上記1の(1)に示した電極の調整を行う。

(2) 試料の採取は、地下から採集された乱されていないコアを用いる。この場合採集着後にコアの端を3~5cm位削りとり、新しくできた面で、コアの中心部に電極を直接差し込んで測定し、最低値と最高値を読み取り、最低値を測定結果として採用する。

資料1

2、2′―ビピリジン(別名 2、2′―ビピリジル又は2、2′―ジピリジル)試薬

0.1%程度の酸性溶液中で第一鉄イオン(Fe2+)及び第一銅イオン(Cu+)とのみ反応して赤色の安定なキレート化合物を作る。この性質を利用して第一鉄化合物の特異的な検出試薬等として使用される。

2、2′―ビピリジン(別名2、2′―ビピリジル又は2、2′―ジピリジル)

資料2

電気防食

電解質中で局部電池作用によつて腐食(酸化)が生ずる金属の表面に外部から直流の防食電流を流入させて金属表面の電位の不均一をなくし、金属の腐食(酸化)を防止するものである。防食電流を供給する方式によつて、次の二つに分類される。

1 流電陽極方式

被防食体を構成している金属よりもイオン化傾向の高い金属(卑金属)を陽極として、図1のように電気的に接続し、発生する電流を防食電流として利用するもの

2 外部電源方式

防食電流を外部の直流電源から通電させる方式で、図2のように電源装置の一方の端子を被防食体に接続し、他の端子を不溶性電極に接続すれば、被防食物体の表面に防食電流が流れるもの

図1 流電陽極方式

図2 外部電源方式

資料3

セメントあく抜きの反応

Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O

炭酸ガスがセメントの表面に作用して、セメント内のCa(OH)2がCaCO3に変化し、あくの流出が止まる。

資料4

冷凍車の構造と作業の内容

1 構造

冷凍車は、トラツクに冷凍室を設置したものであり、冷凍室の内部には、冷凍に用いる液化窒素の貯蔵タンク、これに接続した液化窒素を冷凍室内に噴射するための小さな穴のあいたパイプ及びサーモスタツトが設けられている。(図参照)

冷凍室内の冷凍は、液化窒素をパイプに送り、これにあけられた穴から冷凍室内に直接噴射することにより行う。

冷凍を開始するときは、運転室内にあるスイツチを操作するが、輸送中は、冷凍室内の温度が上がると、サーモスタツトが作動し、自動的に液化窒素が噴射され、冷凍室内の温度が一定に保たれるようになつている。

2 作業の内容

物品の配送先において、窒素ガスの滞留している冷凍室の内部に立り入り物品を冷凍室外に運び出す作業を行う。

資料5

りんごのCA貯蔵施設

CA貯蔵施設とは環境気温調節(Controlled Atmosphere)冷蔵を行う設備のことで気密冷蔵庫を有し「冷蔵」、「酸素の減少」及び「炭酸ガスの調節」の3つの方

法を併用して果実等の呼吸作用を極力抑え冬眠状態で貯蔵する設備であり、りんごを長期間保存するため設置されるものである。

CA設備は気密冷蔵貯蔵庫の温度を0℃~1℃に保つとともに同庫内の気体を炭酸ガス2.6%、酸素3.0%、窒素94.0%程度(同状態になつた気体をCAガスと称する。)に保持するもので、貯蔵庫の構造、CAガスとするに必要なガス発生装置の種類等によりスルザー式、エカトロン式、山本式、普通CA方式がある。

(1) スルザー式

貯蔵庫を気密式にして貯蔵庫外にプロパンガス燃焼装置を設置し、プロパンガスの燃焼によつて空気中の酸素を炭酸ガスに変化させて所要の組成の気体を作り、貯蔵庫内に供給する方式のものである。CA貯蔵中における貯蔵庫内の気体は、りんごの呼吸作用によつて炭酸ガスが増加し、酸素が減少する(酸素濃度1%以下が数日続くとアルコール化するという。)ので定期的に庫内の気体組成を測定し、庫内の炭酸ガス濃度が増加したときは、庫外に設置した除去用スクラバーで炭酸ガスを除去するとともに外気を送入して酸素濃度の維持をはかる。

庫内の気体組成の測定は庫外からサンプリングが行えるような設備を設け自動又は手動によつて分析する。

スルザー式

① プロパンガス燃焼装置……空気中の酸素を炭酸ガスに変え庫内に送入する。

② 炭酸ガススクラバー……庫内の過剰炭酸ガスを吸着する。

③ 送風機……庫内の酸素が不足した際空気を送入する。

④ ガス分析器……庫内の炭酸ガスを測定する。

⑤ 冷凍機・調湿機

⑥ 冷却器

⑦ ブリーザーバツグ……温度変化等による庫内気体の膨張収縮を吸収する。

⑧ レリーフベント……庫内圧が上昇した場合の排気用逆止弁

⑨ 換気装置……出庫時の換気用

(2) エカトロン式

これは窒素発生機(吸着分離方式により空気中の窒素を取り出す装置)を用いて窒素を送入することにより庫内の空気を追い出して酸素濃度を下げる。炭酸ガスは、りんごの呼吸作用により生ずるものを利用する。庫内が最適状態となつた後は、CA自動調節機により、呼吸作用によつて増加した炭酸ガスを除去するとともに、不足する酸素を補給し、庫内の最適条件を維持する。

エカトロン式

① 窒素発生機

② CA調節機

③ 冷凍機・調湿機

④ 冷却機

⑤ ブリーザーバツグ

⑥ レリーフベント……①による窒素送入時庫内の空気を排出する逆止弁

⑦ ガス分析器

⑧ 換気装置

(3) 山本式

これはスルザー式のように、プロパンガスを燃焼させて空気中の酸素を炭酸ガスに変え、貯蔵庫内に送入するものであるが、山本式は通常の冷蔵庫の中に保管したリンゴを気密用塩化ビニルフイルムで囲い、これを冷蔵貯蔵庫としてそのなかにCAガスを送入するものである。

リンゴの呼吸作用によつて生ずる炭酸ガスの増加や酸素の減少に対しては消石灰を用いるスクラバーで炭酸ガスを吸収するとともに外気を送入して一定のCAガス状態を維持する。

気密設備の概要

(イ) 気密用塩化ビニルフイルムは直方体で倉庫天井より吊り下げられており、上面及び四方の側面は塩化ビニルで囲われている。

(ロ) りんごの積込み作業を行う際は側面の下端を巻き上げ、作業終了後は下端を床面に下げる。

(ハ) フイルム下面はオープンとなつているため、床面に溝を掘つて、この溝の中にビニルフイルム側面下端を入れ、溝に水を張ることにより気密性を保つことにしている。

(ニ) 冷蔵貯蔵庫内に保管してあるりんごの保存状況を点検するため一側面の下端近くに200mmφ程度の穴をあけ、この穴から内部に向つてビニルの筒を取り付けてある。点検に当たつては、この筒の中に手を入れて内部のサンプル用リンゴを取り出す。このビニールの筒は、サンプル点検の作業を行わないときは床に掘つた溝の内部にその先端を入れ、ビニルフイルム内の気密性を保つ。

(ホ) 気密フイルム内部の気体の組成を測定するためのサンプリングは、気密保持のための溝の底にU字形のパイプを入れ、気体を採取して測定する。

山本式

① プロパンガス燃焼装置

② 炭酸ガススクラバー

③ 排気用フアン

④ 冷凍機

⑤ 冷却器

(4) 普通CA方式

これは気密式冷蔵庫内にりんごを保管し、このりんごの呼吸作用によつて徐々に酸素濃度を減少させ、炭酸ガスを増加させるもので、他の機械式が数日で庫内の気体がCAガスになるのに反し1ケ月程度を要する。

庫内の炭酸ガスが適量より増加したときはスクラバーにより除去するとともに、酸素が不足したときは送風機により外気を送入する。

普通CA方式

① 炭酸ガス除去用スクラバー

② 冷凍機

③ 冷却機

④ 送風機

⑤ ブリーザーバツグ

⑥ レリーフベント

⑦ ガス分析器

⑧換気装置