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○中小企業退職金共済法の一部を改正する法律及び関係政省令の施行について

(昭和六一年一二月一日)

(基発第六三六号)

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

中小企業退職金共済法の一部を改正する法律(昭和六一年四月二五日公布。昭和六一年法律第三七号。以下「改正法」という。)は、本年一二月一日(余裕金の運用方法の範囲の拡大に関する規定は、公布の日)から施行されたところである。また、これに伴い、中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令(昭和六一年一一月一一日公布。昭和六一年政令第三四一号。)及び中小企業退職金共済法施行規則の一部を改正する省令(昭和六一年一一月二六日公布。昭和六一年労働省令第三七号。)が、改正法の施行にあわせて施行されたところである。改正法の内容に関する基本的事項については、別途、昭和六一年一一月二六日付け労働省発基第八〇号をもつて労働事務次官から通達されたところであるが、改正法及び改正政省令の内容の細目は、下記のとおりであるので、これらに留意の上、中小企業退職金共済制度の普及促進につき遺憾のないよう願いたい。

第一 一般の退職金共済制度に関する改正等について

一 掛金月額の引上げ及び掛金月額の刻みの整理

(一) 掛金月額の最低額が一、二〇〇円から三、〇〇〇円に、最高額が一六、〇〇〇円から二〇、〇〇〇円にそれぞれ引き上げられるとともに、その刻みも三、〇〇〇円から一〇、〇〇〇円までは一、〇〇〇円刻み、一〇、〇〇〇円から二〇、〇〇〇円までは二、〇〇〇円刻みとされたこと。このため、施行日以後新たに締結される退職金共済契約の掛金月額は、新法第四条によることとされ、三、〇〇〇円を下ることができないものであること(新法第四条第二項及び第三項)。

(二) 施行日前に締結された退職金共済契約で施行日における掛金月額が三、〇〇〇円未満であるものについては、にわかに掛金月額を引き上げることが困難である事情がある場合も考えられるため、昭和六六年一一月三〇日までの五年間(以下「猶予期間」という。)は、当該三、〇〇〇円未満の掛金月額で当該退職金共済契約を継続できることとされたこと。この場合において、施行日以後当該退職金共済契約に係る掛金月額を変更しようとするときは、猶予期間中であれば、一、四〇〇円、一、六〇〇円、一、八〇〇円、二、〇〇〇円、二、五〇〇円のいずれかの額であつて当該変更前の掛金月額を上回る額とすることもできるが、いつたん三、〇〇〇円以上の額に変更した後は、猶予期間中であつても三、〇〇〇円未満に減額することはできないこと(改正法附則第二条第一項及び第二項)。

さらに、上記に該当する退職金共済契約で、猶予期間経過後においても掛金月額を三、〇〇〇円以上に増加することが著しく困難であると労働大臣(被共済者が船員であるときは、運輸大臣)が認定したものについては、労働省令(被共済者が船員であるときは、運輸省令)で定める日までの間は、当該三、〇〇〇円未満の掛金月額により当該退職金共済契約を継続することができることとされていること。この場合における掛金月額の増額の際の増額後の掛金月額の刻み及び増額後の減額の場合の制限については、上記と同様であること(改正法附則第二条第三項及び第一一項)。

(三) 施行日前に締結された退職金共済契約で施行日における掛金月額が三、五〇〇円又は四、五〇〇円であるものについても、(二)と同様の趣旨から、猶予期間中は当該三、五〇〇円又は四、五〇〇円の掛金月額で当該退職金共済契約を継続できることとされたこと。この場合において、施行日以後当該退職金共済契約に係る掛金月額を当該三、五〇〇円又は四、五〇〇円以外の額に変更した後は、猶予期間中であつても、三、五〇〇円又は四、五〇〇円に変更することはできないこと(改正法附則第二条第六項)。

さらに、上記に該当する退職金共済契約で、猶予期間経過後においても掛金月額を当該三、五〇〇円又は四、五〇〇円を超える額に増加させることが著しく困難であり、かつ、当該共済契約者が当該期間の満了後においてもなおその掛金月額を当該三、五〇〇円又は四、五〇〇円とする旨の希望を有すると労働大臣(被共済者が船員であるときは、運輸大臣)が認定したものについては、労働省令(被共済者が船員であるときは、運輸省令)で定める日までの間は、当該三、五〇〇円又は四、五〇〇円の掛金月額により当該退職金共済契約を継続することができることとされていること。この場合における変更後の掛金月額の再変更の場合の制限については、上記と同様であること(改正法附則第二条第七項及び第一一項)。

(四) 猶予期間満了の際((二)又は(三)の労働大臣(運輸大臣)の認定を受けたものについては、労働省令(運輸省令)で定める日に)現に掛金月額が三、〇〇〇円未満又は三、五〇〇円若しくは四、五〇〇円である退職金共済契約については、その時に掛金月額がそれぞれ三、〇〇〇円又は四、〇〇〇円若しくは五、〇〇〇円に増加されたものとみなされることとなつていること(改正法附則第二条第四項及び第八項)。

(五) (二)及び(三)の労働省令で定める日及び労働大臣の認定の手続を定める省令は、今後の賃金及び退職金の水準の動向等を勘案して昭和六六年一一月三〇日までの間に定められる予定であること。

二 掛金納付月数の通算制度の拡充

(一) 改正前の中小企業退職金共済制度においては、被共済者が退職後退職金を請求しないで二年以内に再び被共済者となつた場合であつて、当該退職の理由が企業倒産、人員整理等のように自己の責に帰すべき事由又はその都合によるものでないと労働大臣が認めたときに限り、その者の申出に基づき前後の退職金共済契約に係る掛金納付月数を通算することができることとされていたが、同制度における退職金の給付水準の一層の向上を図るため、従来の場合に加え、被共済者が退職後退職金を請求しないで二年以内に再び被共済者となつた場合において、直前の退職金共経契約に係る掛金納付月数が二四月以上であるときは、当該退職の理由の如何を問わず、その者の申出に基づき前後の退職金共済契約に係る掛金納付月数を通算できることとされたこと(新法第一四条関係)。

なお、この措置は、被共済者が昭和五九年一二月一日以降に退職し、施行日以後に再び被共済者となつた場合について適用されるものであり、被共済者が同月一日前に退職した場合又は被共済者が同日以後退職し、施行日前に再び被共済者となつた場合については、なお従前と同様に取り扱われるものであること(改正法附則第七条)。

(二) 上記の措置の実施に伴い、法第一〇条第三項の規定に基づく退職金の減額は、被共済者の退職金又は解約手当金の額の計算に当たり、当該減額を申し出た共済契約者が納付した掛金の納付があつた月数(当該掛金の月額のうち三、〇〇〇円を超える部分にあつては、当該三、〇〇〇円を超える額を一、〇〇〇円ごとに区分し、当該区分ごとに、当該区分に係る掛金納付月数。以下同じ。)及び過去勤務掛金の納付があつた月数から、当該掛金の納付があつた月数及び過去勤務掛金の納付があつた月数に当該共済契約者が申し出た割合を乗じて得た月数を差し引いた月数を、当該共済契約者が納付した掛金の納付があつた月数及び過去勤務掛金の納付があつた月数とすることによつて行うこととされたこと(改正後の中小企業退職金共済法施行規則(以下「新規則」という。)第一九条第一項)。

三 加入促進等のための掛金負担軽減措置の新設

(一) 中小企業者への本制度の普及を促進し、及び退職金給付水準の向上を図るためには、本制度に新たに加入すること及び掛金引上げに伴う事業主の負担を軽減させ、新規加入及び掛金引上げの促進を図ることが有効であることにかんがみ、中小企業退職金共済事業団は次の掛金負担軽減措置を講ずることができることとされたこと(新法第一八条の二第一項)。

イ 新たに退職金共済契約の申込みをする中小企業者が退職金共済契約の効力が生じた日の属する月の翌月から二四月を経過する月までの期間(以下「助成期間」という。)の各月分として納付する掛金(助成期間の途中で当該事業主に新たに雇用され、被共済者となつた労働者について納付される掛金にあつては、当該被共済者に係る退職金共済契約の効力が生じた日の属する月の翌月から当該助成期間が満了するまでの期間の各月分として納付されるものに限る。)について、当該掛金の月額(その額が退職金共済契約の効力が生じた日の属する月における掛金月額を超えるときは当該超える額を差し引いた額)に三分の一を乗じて得た額を減額すること(新規則第三二条の二)。

なお、この措置は、すでにこの措置を講じられたことのある中小企業者が再び共済契約者となる場合には講じられないものであること(同)。

ロ 退職金共済契約の掛金月額の増加の申込みをする共済契約者が掛金月額の増加を行う月から一二月を経過する月までの期間(当該期間の途中において当該共済契約者が掛金月額の変更を行つた場合には、当該掛金月額の変更を行つた月の前月までの期間)の各月分として納付する掛金について、当該掛金の月額のうち当該掛金月額の増加を行つた月前に当該共済契約者が納付した掛金の月額の最高額を超える額に三分の一を乗じて得た額を減額すること(新規則第三二条の三)。

なお、上記イ及びロの措置は、当該措置が講じられている期間中に当該措置の対象となる共済契約者が中小企業者でない事業主となつたときは、当該中小企業者でない事業主となつた月をもつて打ち切られるものであること(新規則第三二条の二及び第三二条の三)。

(二) (一)の措置が講じられる月について、共済契約者が減額された額により掛金を納付した場合には、退職金又は解約手当金の額の計算に当たつては、減額される前の掛金月額により掛金の納付があつたものとみなされること(新法第一八条の二第二項)。

(三) 偽りその他不正の行為により(一)の掛金負担軽減措置を受けた共済契約者がある場合には、事業団は、当該掛金負担軽減措置を取り消すことができることとされたこと。この場合事業団は当該軽減されていた額に加えて、その額につき年一四・六%の割合で計算した割増金を納付させることができることとされたこと(新規則第三二条の四、第三四条)。

四 過去勤務通算月額の引上げ及び過去勤務掛金が完納された場合の退職金給付の水準の引上げ

(一) 退職金給付の水準の向上を図るため、掛金月額の引上げにあわせて、過去勤務通算月額についても、その最低額が一、二〇〇円から三、〇〇〇円に、その最高額が七、〇〇〇円から一四、〇〇〇円にそれぞれ引き上げられるとともに、その刻みも三、〇〇〇円から一〇、〇〇〇円までは一、〇〇〇円刻み、一〇、〇〇〇円から一四、〇〇〇円までは二、〇〇〇円刻みとされたこと。(新規則第三七条の四)

(二) 過去勤務掛金が完納された場合の退職金給付の額の計算に当たつては、従来、過去勤務期間の月数については法別表第一の第三欄を用いることとされていたが、今回の改正により、過去勤務期間の月数についても掛金納付月数と同様同表の第二欄及び第三欄を用いることとし、これにより過去勤務掛金が完納された場合の過去勤務期間に係る退職金給付の水準を過去勤務期間以外の掛金納付月数に係る退職金給付水準と同様の水準に引き上げることとされたこと(新法第二一条の四第一項)。

五 事業主団体への業務委託の範囲の拡大

事業団が事業協同組合、中小企業団体中央会、商工会議所その他の事業主の団体に対し委託できる業務の範囲に、申込金の収納等に関する業務を加えることとされたこと(新法第四六条第二項)。

これに伴い、退職金共済契約の申込先、掛金の納付先に、事業団が申込金の収納等の業務を委託した事業主の団体を加えることとされたこと(新規則第四条第一項、第三二条第一項及び第二項)。

六 掛金、退職金等の口座振替、口座振込制度の導入

掛金の納付、退職金及び解約手当金の支払等に口座振替、口座振込の制度を導入することとされたこと(新規則第五条第三項、第一四条第一項第三号、第一五条第一項、第二二条第一項第三号、第二三条第一項、第三二条、第五七条第一項第四号)。

七 退職金の減額の手続の改正

従来退職金減額の申出を行おうとする共済契約者は、労働大臣による退職金減額事由の認定を受けた上で、被共済者の退職後四〇日以内に退職金減額申出書を事業団に提出することとされていたが、これを改正し、退職金減額事由の認定申請は被共済者の退職日の翌日から起算して一〇日以内に労働大臣に対して、また退職金減額の申出は当該労働大臣の認定があつた日の翌日から起算して一〇日以内に事業団に対して行わなければならないものとされたこと(新規則第二〇条第一項、第二一条関係)。

第二 特定業種退職金共済制度に関する改正について

一 退職金給付の引上げ

建設業退職金共済制度については、近年の収支の状況にかんがみ退職金給付の水準の向上を図ることが適当であることからその退職金カーブの見直しを行つた結果、建設業退職金共済制度に係る退職金の額の計算のための表が一表新たに設けられたが、これにより建設業退職金共済制度に係る退職金給付の水準は掛金納付年数一一年から一四年に重点を置きつつ、掛金納付月数が四三月以上のすべての場合について改善され、一般の退職金共済制度とほぼ等しい水準とされたこと(改正後の中小企業退職金共済法施行令第三条、別表第一)。

二 加入促進等のための掛金負担軽減措置

(一) 特定業種退職金共済制度についても、制度の加入促進を図るためには、本制度に新たに加入することに伴う事業主の負担を軽減させることが有効であることにかんがみ、建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合(以下「組合」という。)は、掛金負担軽減措置として、新たに特定業種退職金共済契約の被共済者となる者について、建設業にあつては五〇日、清酒製造業にあつては六〇日、林業にあつては五五日分の掛金の納付を免除することができることとされたこと(新法第八三条の二第一項、新規則第六四条の二第一項)。

なお、この措置は、すでにこの措置を講じられたことのある労働者が再び被共済者となる場合には講じられないものであること(同)。

(二) (遙)一の措置が講じられた日のある被共済者に係る退職金の額等の計算に当たつては、当該日については、掛金の納付があつたものとみなされるものであること(新法第八三条の二第二項)。

第三 共通事項

一 役員の任期の変更

事業団及び組合の理事長を除く役員の任期が現行の四年から二年に変更されたこと(新法第三七条関係)。

二 余裕金の運用方法の範囲の拡大

余裕金の一層の効率的な運用を図る観点から、その運用方法の範囲に、被共済者を被保険者とする生命保険の保険料の払込みが加えられたこと(新法第五三条第一項)。

三 退職金共済制度間での移動に伴う掛金納付月数の通算が行われる場合の繰入金額、引渡金額の算定方法等の改定

退職金共済制度間での移動に伴う掛金納付月数の通算が行われる場合に、組合の勘定間で繰り入れなければならない金額又は事業団から組合若しくは組合から事業団に引き渡さなければならない金額については、従来と同様、移動前の退職金共済制度における従前の国庫補助額相当額を除いた退職金額であるが、林業退職金共済制度を除く各退職金共済制度における被共済者の退職の動向の変化、建設業退職金共済制度における退職金カーブの改善等に伴い、所要の規定の整備が行われたこと(新令第三条の二第一項及び第三項、第五条第一項、第四項及び第六項、別表第四、別表第五、別表第七)。

四 退職金給付に対する国庫補助の廃止及び掛金の負担軽減措置に要する費用に対する国庫補助の新設

従来行われてきた退職金給付に対する国庫補助が廃止され、これに代えて第一の三及び第二の二の掛金負担軽減措置が講じられたときは、国は当該措置に要する費用を事業団及び組合に補助することができることとされたこと(新法第九五条第一号)。

なお、退職金給付に対する国庫補助を廃止しても、退職金額は従来の水準を維持することとされていること。

第四 改正内容の周知及び本制度の普及促進について

中小企業退職金共済制度は、制度発足以来二七年余を経て、現在、共済契約者数約三八万人、被共済者数約三六〇万人を数えるに至つているが、普及率という点でみればいまだ十分とは言い難い状況にある。今回の改正は、掛金月額の引上げ、掛金納付月数の通算制度の拡充、加入促進等のための掛金負担軽減措置の新設等により、本制度に既に加入している事業主のみならず、未加入の中小企業者に対して本制度を一層魅力あるものとしてその普及促進を図るとともに、労働者がより充実した退職金を受給できるようにし、もつて中小企業労働者の福祉の一層の増進と中小企業の振興に寄与することを目的としたものである。したがつて、この趣旨を十分理解の上、その周知徹底を図るとともに、本制度の普及促進及び活用の促進につき、関係行政機関、受託金融機関等と緊密な連絡をとり、また事業主団体への各種事務打合会、説明会、講習会等の機会を積極的に利用する等今後一層の尽力を願いたい。