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○社内預金保全のための各種契約の約定書例について

(昭和五三年一月三一日)

(基発第五〇号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

賃金の支払の確保等に関する法律(昭和五一年法律第三四号。以下「賃確法」という。)第三条及び同法施行規則(昭和五一年労働省令第二六号。以下「賃確則」という。)第二条に規定する社内預金保全のための各種契約の約定書例をこのほど新たに別添のとおり取りまとめたので、関係事業場に対し、社内預金保全のための各種契約の締結及び改定に当たつては、下記事項に留意の上、本約定書例によるよう指導されたい。

なお、本通達に示す各約定書例は、それぞれ、全国銀行協会連合会、信託協会、生命保険協会、日本証券業協会及び日本興業銀行と協議ずみであるので、念のため申し添える。

目次

第一 約定書例の性格等について

一 約定書例の性格

二 暫定約定書例との関係

三 約定書例以外の書式の取扱い

第二 各約定書例に関する共通的留意事項について

一 代理人の選任等

二 代理人の変更届

三 事業主の行方不明その他やむを得ない事情による代理人の代位

四 預金債権を証する書面の添付と金融機関等の資料請求権

五 代理人への金銭の交付とその配分方法

六 各約定書例の有効期間と契約終了事由

七 他の保全措置を講じている場合の金融機関等への通知

第三 保証契約による保全のための約定書例(別添一)の留意事項について

一 約定書例の構成

二 保証をなし得る金融機関等の範囲

三 保証料等

四 第八条の趣旨

第四 預金債権を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添二)の留意事項について

一 約定書例の構成

二 第三債務者に対する対抗要件

第五 生命保険契約上の債権を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添三)の留意事項について

一 生命保険契約上の債権の範囲

二 質物の価額

三 質権の及ぶ期間及び手続期間内の甲の権利行使の制限等

四 復活請求権が存続する期間の質権の効力

五 保険証券の裏書き

六 その他

第六 信託受益権を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添四)の留意事項について

一 約定書例の性格

二 元本受益権の範囲

三 その他

第七 金融債を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添五)の留意事項について

一 金融債の性格と対抗要件

二 質物の価額

三 債券の保護預け

四 償還期日が到来した債券及び割引料又は利金の取扱い

五 質権の消滅時における質物の甲への返還

第八 公社債券及び公社債投資信託受益証券を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添六)の留意事項について

一 公社債券及び公社債投資信託受益証券(以下「公社債券等」という。)の範囲

二 その他

第九 信託契約による保全のための約定書例(別添七及び八)の留意事項について

一 約定書例の構成等

二 受益者の範囲

三 信託管理人の選任等

四 信託財産の範囲

五 元本受益権の範囲

六 解約条項

(別添)各種契約の約定書例

一 保証契約による場合

二 預金債権を質物とする場合

三 生命保険契約上の債権を質物とする場合

四 信託受益権を質物とする場合

五 金融債を質物とする場合

六 公社債券等を質物とする場合

七 合同運用指定金銭信託の場合

八 管理並びに処分有価証券信託の場合

(参考)信託契約の一部を変更する約定書例

一 合同運用指定金銭信託の場合

二 管理並びに処分有価証券信託の場合

第一 約定書例の性格等について

一 約定書例の性格

社内預金保全のための約定書例の書式については、法令上の根拠はなく、法令の趣旨に抵触しない限り、契約締結の当事者が協議の上適宜定めて差し支えないものであるが、別添の各約定書例は、賃確法及び賃確則の趣旨、契約締結の当事者の一人である金融機関等における商取引上の慣行等を十分勘案して、労働省においてそのひな型として取りまとめたものであり、保全措置を講ずる場合には、本通達に示す約定書例(以下「約定書例」という。)によることが望ましいものであること。

二 暫定約定書例との関係

昭和五二年三月一一日付け基監発第一四号通達で示した暫定約定書例は、賃確法施行に当たり、とりあえず従来用いてきた約定書例について同法第三条に適合するよう最小限度の手直しを加えたものであるので、昭和五三年四月以降の改定に当たつては、本約定書例によることが望ましいこと。

なお、信託契約による約定内容の改定に当たつては、現在締結されている暫定約定書の一部変更契約(参考一及び二)を締結することでも足りるものであること。

三 約定書例以外の書式の取扱い

約定書例以外の書式について事業主、金融機関等から相談を受けたときは、当該書式により社内預金の保全が確実に行われることになるか否かを点検のうえ、必要があれば指導を行うこととするが、疑義があるものについては、本省あてりん伺すること。

なお、賃確法第三条及び賃確則第二条に規定する社内預金の保全措置のうち、抵当権設定による保全のための約定書例については、登記手続の簡略化に関して法務省と協議中であるので、おつて通達することとしているものであること。

第二 各約定書例に関する共通的留意事項について

一 代理人の選任等

(一) 信託契約を除き、各約定により保護される債権者は個々の労働者(丙)であるが、手続簡素化のため、丙は一定の事項を丙の代理人(丁)に委任することとしたこと。丙の丁に対する委任事項は、各約定書例第一条の各号に列挙されたものに限られること。したがつて、丙の権利保護に重大な影響を与える当該契約の解除は、約定書例において委任事項から削除されていることに留意すること。

(二) 丁は、各約定書例において、金銭の受領、丙への配分方法等丙の利益の確保のために重要な役割を果すべき者であるので、その選任に当たつては、かかる役割にふさわしい者であるか否かを慎重に判断すべきものであること。

(三) 丁は丙が選任するものであるが、必ずしも労働者であることを要せず、例えば、弁護士、公認会計士等であつても差し支えないこと。また、委任関係が複雑になることを避けるために、丁は単数であることを予定しており、丁の復代理人の選任は必要な場合に限つて行うこと。

二 代理人の変更届

代理人の変更権は、委任者たる丙にあり、代理人の変更に伴い金融機関等(乙)による保証債務等の履行についてトラブルが生じないよう、乙に対する届出を新・旧代理人(丁)に義務づけたものであること。事業主(甲)の連署については、代理人の変更を承認させることにより、乙の保証債務の履行による求償権の確保を図つたものであること。

なお、届出様式を乙所定のものとしたのは、乙の商取引における事務手続上の慣行に従つたものであること。

三 事業主の行方不明その他やむを得ない事情による代理人の代位

(一) 社内預金の元金の払戻請求権の履行請求時において、甲の行方不明その他やむを得ない事情により丁に対して請求に必要な書面の作成及び交付がなされず、その結果、丁が乙から金銭の交付を受けられないこととなるのを避けるため、預金通帳等により丁が甲に代位して当該手続を行うことを認めたものであること。

(二) 「甲の行方不明その他やむを得ない事情」とは、甲の行方不明等により当該事業場の組織上、当該手続を行うことが物理的に不可能な場合をいうものであり、労使紛争等を理由に当該手続を故意に怠るような場合は含まれないこと。したがつて、これに該当するケースとしては、個人事業主の行方不明等を除いては極めて稀であると考えられること。また、「その他やむを得ない事情」とは、行方不明に準ずる程度のものであつて、例えば、甲の所在は明らかであるが、当該手続が不可能である場合(犯罪による拘留等)をいうものであること。

四 預金債権を証する書面の添付と金融機関等の資料請求権

(一) 上記三の場合において、預金通帳その他預金債権を証する書面の添付を丁に義務づけているのは、履行の請求時における社内預金の元金の額を乙が客観的に確定することができることとした趣旨であること。

(二) 「預金通帳その他預金債権を証する書面」とは、いわゆる普通預金、定期預金及び積立預金の預金通帳又は預金証書のことであるが、積立預金のうち賃金控除協定により賃金から控除して預金を受け入れる場合において、丙に交付された賃金支給明細書でその月の積立金額及び積立合計額が記載されているものも含まれること。

(三) 上記(二)のほか、乙の丁に対する預金元帳その他の資料請求権を規定したのは、乙が保証債務等の履行に関し上記(二)の添付書類だけでは不十分と考える場合等に、必要な資料を求めることができることとしたものであるが、保証債務の履行については、その免責条項との関係で必要な点検を行つたことができることとした趣旨であること。

なお、預金元帳以外の資料には、預金を電子計算機によつて処理している場合において、預金労働者ごとに預金の受入れ又は払戻しの額及びその日付け並びに預金残高が記録されている磁気テープから取り出されたデータが含まれるものであること。

五 代理人への金銭の交付とその配分方法

(一) 各約定書例においては、乙が丁に対して金銭を一括交付することとしているが、各預金労働者が確実に金銭の入手ができるよう、丁は各預金労働者から別途各人の預貯金口座番号の通知を受け、当該金銭を受領後直ちに各人の口座に振り込む方法により丙に配分することとしていること。

(二) 実際の手続きとしては、丁が乙に対して当該金銭の交付を請求する際には、丙の預貯金口座(乙からの振込みが可能な口座に限る。)振込依頼書を乙に提出し、丁は乙から現実に現金を受領することなく、乙に対して、丙の指定した丙の預貯金口座に振り込むことを依頼することが望ましいこと。この場合、振込手数料については、あらかじめ丙と丁との間で、振り込むべき各人の金銭の中から控除することを定めておくこと。

六 各約定書例の有効期間と契約終了事由

(一) 保証契約及び質権設定契約の有効期間については、労働者の採用や退職等による別冊労働者名簿記載の労働者の範囲の変更及び預金残額の変更に合わせて、保証極度額及び担保極度額を改定する必要があることから、一年とすることが望ましいこと。

なお、信託契約については、信託期間が長期であることから、預金労働者の特定、各人別の極度額の設定等を要せず、かつ、信託財産の額が毎年三月三一日現在の要保全額に不足する場合には、信託財産を追加することとされているので、保証及び質権の設定のように短期契約を繰り返す必要がないこと。

(二) 信託契約を除き、①甲が約定の有効期間内に倒産事由に該当しなかつた場合には、当該有効期間の満了したときに、②当該有効期間満了前に新たに約定が締結された場合には、新約定締結のときに、また、③当該有効期間内に倒産事由に該当した場合で、当該有効期間の満了後三カ月以内に丁が乙に対して履行の請求をしなかつたときは、当該請求できる期間の満了したときに、それぞれ当該約定書による保証及び質権の効力は消滅するものであること。

七 他の保全措置を講じている場合の金融機関等への通知

信託契約を除き、甲が丙のために複数の金融機関等との間に同種又は異種の保全措置を講じている場合において、乙に対する通知を甲に義務づけているのは、乙の商取引における事務手続上の慣行によるものであるが、甲が丙のため複数の金融機関等との間に預金残額を上回る保証による保全措置を講じている場合には、保証債務を履行する順位によつては、他の金融機関等との間に保全措置が講じられている事実を知らなかつた乙が不利益を被るおそれがあることにかんがみ、これを事前に防止するためであること。

なお、信託契約については、要保全額が管理協定に定められているものであるから、協定変更時において受託者に対する通知を委託者に義務づけているものであること。

第三 保証契約による保全のための約定書例(別添一)の留意事項について

一 約定書例の構成

(一) 本約定書は、①甲と乙との間における保証委託契約、②乙と丙との間における保証契約、③丙の丁に対する一定の事項の委任契約、④保証債務の履行請求の手続、⑤保証債務の履行手続等をあわせ規定していること。

したがつて、本約定書は、甲、乙、丙及び丁の四者間で締結されるものであること。

(二) 従来、上記(一)の③の部分を分離することによつて、契約の締結、更新に際しての労働者名簿作成等の事務手続を簡略化するため、甲、乙及び丁によるいわゆる三者間契約が認められていたところであるが、かかる三者間契約は、受入預金額の全額が預金労働者各人に確実に返還されることを担保するため、及び賃確法第三条の文言からみて、労働者名簿作成等の事務手続を省略することは好ましくないので、廃止したものであること。

二 保証をなし得る金融機関等の範囲

保証をなし得る金融機関等の範囲については、金融関係法令により業として保証を行うことができることとされている銀行その他の金融機関又は賃確則第二条第一項第一号の規定に基づき、債務の保証を業とする公益法人であつて労働大臣が指定するものに限られること。具体的に言えば、前者については、いわゆる都市銀行、地方銀行、信託銀行、相互銀行、信用金庫、長期信用銀行、商工組合中央金庫、農林中央金庫等がこれに該当し、また、後者については、現在のところ、社団法人全国食糧信用協会が指定を受けていること。

三 保証料等

金融機関等は業として保証を行うものであるから、乙は甲から保証料をとり、また、乙が保証債務を履行した場合に取得する甲に対する求償権を確保するため、損害担保契約に基づき担保の提供を求めるのが通例であるが、保証料及び担保は、甲の信用度、甲と乙との間における商取引の実情等に応じて、甲乙間で適宜定められるべき性格のものであること。

四 第八条の趣旨

本条は、乙が本約定書所定の手続をふんで金銭の交付を行つたときは、その全額につき、乙は甲に対する求償権を取得することを規定した損害担保の特約であること。

第四 預金債権を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添二)の留意事項について

一 約定書例の構成

本約定書は、①甲と丙との間における質権設定契約、②丙の丁に対する一定事項の委任契約、③質権設定の成立要件である甲の丁に対する預金証書の交付及びこれの丁による占有、④質権実行の手続等をあわせ規定していること(後記第五から第八までにおいて同じ。)。

なお、上記③の丁による占有は、乙への保護預け等による保管の方法をとることとしているが、この場合の「等」とは、貸金庫等をいうものであること。

二 第三債務者に対する対抗要件

預金債権は指名債権であることから、これを質物とする質権は権利質であり、この場合の対抗要件として必要な第三債務者(質権の目的となつている債権の債務者。この場合は乙である。)の承諾は、確定日付けのある証書で行わなければならない(民法第三六四条及び第四六七条)ので、本約定書に確定日付けが付されているものであること。したがつて、本約定書は、対抗要件としての承諾証書をも兼ねているものであること。

第五 生命保険契約上の債権を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添三)の留意事項について

一 生命保険契約上の債権の範囲

本約定書による質権の目的とすることができる生命保険契約は、契約者、保険金受取人及び保険料負担者がいずれも甲であるものに限られること。具体的には、例えば、いわゆる事業保険扱いとされている養老保険及び団体保険がこれに該当すること。

事業主の生命保険契約上の債権とは、満期の到来又は被保険者の死亡による保険金受取人の保険金(以下「満期・死亡保険金」という。)請求権及び解約返戻金請求権であること。

二 質物の価額

質物の価額を評価するに際しては、質権が実行される時期までに満期・死亡保険金請求権が発生するか否かが約定締結時には不明であるので、当該生命保険契約の解約返戻金の額によること。

三 質権の及ぶ期間及び手続期間内の甲の権利行使の制限等

本約定書においては、社内預金の保全措置の実効性を期すため、質権の及ぶ期間及び手続期間内は、甲は、生命保険契約の内容を変更するいつさいの権利の行使を禁止しているものであること。ただし、当該期間内に支払事由の発生した満期・死亡保険金又は解約返戻金を甲が請求したと仮定しても残余の質物の価額が丙の担保極度額を合算した額を上回る場合は、その限度において、甲は、丁の同意を得て、当該満期・死亡保険金又は解約返戻金を請求することができることとしたものであること。

また、質物の価額が丙の担保極度額を合算した額を下回ることがないようにするため、甲が生命保険料を滞納した場合であつても、乙は生命保険料の自動振替貸付は行わないこととしたものであること。

四 復活請求権が存続する期間の質権の効力

本約定書においては、生命保険契約が保険料の滞納等の理由により失効した場合(この場合は、解約返戻金の上に質権の効力が及ぶ。)であつても、一定の期間(復活請求権が存続する期間)内に保険料及び延滞保険料を納付すること等により当該契約が復活する可能性があり、復活した場合には新たな質権設定契約を締結することを要せずして復活した生命保険契約上の債権を引き続き質権の目的物とするため、復活請求権が存続する期間についても本約定の効力が存続することとしたものであること。

五 保険証券の裏書き

本約定書においては、乙は質権の設定時及び消滅時に保険証券に裏書することとされているが、これは、質権の設定及び消滅の効力に影響を及ぼすものではなく、生命保険契約上の権利に変更が生じた場合にそれを保険証券に裏書するという生命保険業界の実務によつたものであること。

六 その他

生命保険上の債権は預金債権と同じく指名債権であることから、これを質物とする質権は権利質であるので、このほか、前記第四の二に掲げる留意事項を参照すること。

第六 信託受益権を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添四)の留意事項について

一 約定書例の性格

本約定書は、別添七及び八に示す他益信託型の信託契約による約定書例とは異なり、一般には甲が委託者として一定の財産を乙に信託するとともに、自らを受益者とする、いわゆる自益信託を設定し、その受益権に質権を設定するものであること。

二 元本受益権の範囲

本約定書は、信託受益権のうち元本受益権についてのみ質権を設定しているので、丁は受益証券又は受益権証書の引渡しを受けて乙への保護預け等により保管しているが、質権の実行に当たつては、収益受益権について請求することができないことはいうまでもないこと。

三 その他

貸付信託(記名式)受益権及び合同運用指定金銭信託受益権は預金債権と同じく指名債権であることから、これを質物とする質権は権利質であるので、このほか、前記第四の二に掲げる留意事項を参照すること。

なお、貸付信託には無記名式のものもあるが、この場合は動産質となるので、これについては、別添五に示す金融債を質物とする質権設定による約定書例及び後記第七に掲げる留意事項を参照すること。

第七 金融債を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添五)の留意事項について

一 金融債の性格と対抗要件

金融債とは、日本興業銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、東京銀行、商工組合中央金庫及び農林中央金庫から発行される債券であつて、これには割引債券及び利付債券とがあるが、これらは無記名債権であることから、これを質物とする質権は動産質であり、その第三債務者に対する対抗要件は、質物の占有となる(民法第三五二条)ので、本約定書は、上記第四の場合と異なり、確定日付は必要ないものであること。

二 質物の価額

これらの金融債は、流通市場における価額が券面金額を中心に若干増減し、特に割引債券の場合は、償還期日前には券面金額を多少下回るのが通常であるので、質権設定に当たつては、券面金額ではなく、丙の担保極度額を合算した額を十分満たすことのできる合理的に推算した価額になるよう留意することが必要であること。

三 債券の保護預け

①債券を紛失した場合は質権の効力自体に影響が及ぶこと、②割引債券の場合の割引料又は利付債券の場合の利金の処理が必要であること、及び③質権の実行である当該債券の処分(償還又は売却)を乙に委任していること等の理由から、本約定書においては、当該債券を乙に保護預けすることとしたものであること。

四 償還期日が到来した債券及び割引料又は利金の取扱い

本約定書においては、償還期日が到来した債券を新規発行債券に乗り換える場合に、新たな質権設定契約を締結することを要せずして新規発行債券に質権を及ぶようにしたものであること。また、割引料又は付属利札には質権の効力は及ばないこととしたものであること。

五 質権の消滅時における質物の甲への返還

質権の消滅時において、丁に対し、乙から保護預けした債券の払戻しを受けた上で、当該債券を甲に返還することを義務づけているのは、質権の消滅後も乙が当該債権を保護預かりしていると、事実上質物の占有が継続していることになり、質権の実行をめぐつてトラブルが生じるおそれがあるため、これを防止することとした趣旨であること。

第八 公社債券及び公社債投資信託受益証券を質物とする質権設定による保全のための約定書例(別添六)の留意事項について

一 公社債券及び公社債投資信託受益証券(以下「公社債券等」という。)の範囲

本約定書において質権の質物となる公社債券等の範囲は、所得税法施行令(昭和四〇年政令第九六条)第三三条各号に定める有価証券のうち、次に掲げるものであること。

(一) 国債及び地方債

(二) 特別の法律により設立された法人の発行する債券(日本国有鉄道の鉄道債券、日本電信電話公社の電信電話債券、日本道路公団の道路債券、日本放送協会の放送債券、帝都高速度交通営団の東京交通債券等がこれに該当する。)

(三) その債務について政府が保証している社債(東北開発株式会社、石油資源開発株式会社、電源開発株式会社、日本航空株式会社、日本航空機製造株式会社の発行する債券がこれに該当する。)

(四) 内国法人の発行する社債のうち、契約により、発行に際して応募額が総額に達しない場合に証券取引法第二条第九項に規定する証券会社又は外国証券業者に関する法律第五条第三号に規定する外国証券会社の支店がその残額を取得するものとされたもの(一般事業債及び電力債で証券会社引受けの公募債がこれに該当する。)

(五) 公社債投資信託の受益証券

二 その他

上記一に掲げる有価証券以外の有価証券のうち、

(一) 上記一の(二)のうちの農林中央金庫の農林債券及び商工組合中央金庫の商工債券

(二) 長期信用銀行法第二条に規定する長期信用銀行又は外国為替銀行法第二条第一項に規定する外国為替銀行の発行する債券(日本長期信用銀行、日本興業銀行、日本債券信用銀行及び東京銀行の発行するいわゆる金融債がこれに該当する。)は、金融債として別添五の約定書例によるものであるが、公社債券等も金融債と同じく無記名債権であることから、これを質物とする質権は動産質であるので、このほか前記第七に掲げる留意事項を参照すること。

第九 信託契約による保全のための約定書例(別添七及び八)の留意事項について

一 約定書例の構成等

信託契約による保全については、委託者たる事業主が協定において定めるところのこの信託契約による要保全額に相当する事業主の財産を信託財産とし、預金労働者を元本受益者とする信託契約を、受託者たる信託会社(信託業務を兼営する銀行を含む。以下同じ。)との間で締結するものであつて、これにより、信託財産は、委託者の支配から分離独立し、受託者名義のものとなるので、この財産の保全が図られることとなるものであるが、この方式によるときは、他の約定とは異なり、各預金労働者は契約の当事者とはならないものであること。したがつて、契約に当たつて労働者名簿及びその押印を必要とせず、元本受益権行使時においてはじめて必要となるものであること。

二 受益者の範囲

信託財産の元本受益者は預金労働者、収益受益者は事業主であるが、元本受益者については、「貯蓄金管理に関する協定においてこの信託契約で貯蓄金が保全されることとされている社内預金者」と包括的に定められており、あらかじめ元本受益者を特定していないので、後記五による再配分条項を設けた場合には、毎年三月三一日現在の元本受益者の貯蓄金の保全に影響を及ぼさない限りにおいて、新規及び中途採用者の預金についても保全される場合があること。

三 信託管理人の選任等

信託管理人は保証、質権の設定における代理人に相当する性格のものであるが、代理人と異なり信託法(大正一一年法律第六二号)第八条の規定に基づくものであること。その選任に当たつては、代理人の場合の同様、慎重を期すことが必要であり、協定において選任手続等を定めておくなど、労働者の意思が反映されるような措置を講じることが望ましいこと。

なお、信託管理人の変更についても、新・旧信託管理人及び事業主が連署の上、書面により信託会社に届け出るものであること。

四 信託財産の範囲

信託会社に管理運用を信託できる信託財産については、信託業法(大正一一年法律第六五号)によれば、金銭、有価証券、金銭債権、動産、土地及びその定著物並びに地上権及び土地の賃借権とされている(第四条)が、換価が容易であり、価額変動の大きくないものが望ましいので、本約定書においては、金銭が信託される場合(別添七)及び有価証券が信託される場合(別添八)に限定しているものであること。

なお、信託財産が有価証券の場合は、賃確法の趣旨から受託者が毎月一回定期に及び必要と認めるときに時価を評価し、その評価額が要保全額を下回るときは、委託者は遅滞なく信託財産を追加することとなつており、かつ、元本受益者からの信託財産交付請求に対しては、受託者において有価証券を換価処分し、信託管理人に金銭にて交付することとなつているものであること。

五 元本受益権の範囲

元本受益権は、委託者たる事業主について定められた事由が発生したときにのみ行使しうるものとしており、信託契約で定められた方法により信託財産を元本受益者たる預金労働者に配分するものであること。元本受益権の範囲については、元本受益権行使時の信託元本額が被保全額に保全割合を乗じた額の範囲内で得た額の合計額を超えた場合には、未払元金の範囲内で公平に再配分される旨の条項を設けることも差し支えない。

六 解約条項

信託契約については、信託期間中の解約は、信託元本額が要保全額を超過する場合の一部解約を除いては、原則的にできないものであること。

別添1 (保証契約による場合)

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別添2(預金債権を質物とする場合)

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別添3(生命保険契約上の債権を質物とする場合)

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別添4(信託受益権を質物とする場合)

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別添5(金融債を質物とする場合)

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別添6(公社債券等を質物とする場合)

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別添7(合同運用指定金銭信託の場合)

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別添8 (管理並びに処分有価証券信託の場合)

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参考1 (合同運用指定金銭信託の場合)

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参考2 (管理並びに処分有価証券信託の場合)

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