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○「一年単位の変形労働時間制」の運用に当たってのガイドラインについて

(平成六年三月十一日)

(基発第一三二号)

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長)

労働基準法の一部改正の施行については、「労働基準法の一部改正の施行について」(平成六年一月四日付け基発第一号)により通達したところであるが、同通達記の2の(1)のイの一年単位の変形労働時間制の導入事業場における制度の導入及び運用についての指導の準拠となる留意事項(ガイドライン)を、別添「一年単位の変形労働時間制についてのガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)のとおり策定したので、局署においては、改正労働基準法の説明会、制度導入を検討している使用者からの相談等において、使用者にガイドラインを周知することにより、一年単位の変形労働時間制が適切に実施されるよう図られたい。

別添

一年単位の変形労働時間制についてのガイドライン

使用者は、一年単位の変形労働時間制を採用する場合には、法令が定める基準を遵守するとともに、下記の事項についても留意しつつ、適切な運用が行われるよう努める必要がある。

第一 趣旨

一年単位の変形労働時間制は、季節的な繁閑がある業務については、年間単位の労働時間管理の下に、閑散な時期に集中して休日を設定する等により、年間単位での休日増を図ることが所定労働時間の短縮のために有効であることから、従来の三箇月単位の変形労働時間制の変形期間を三箇月から最長一年まで延長したものであり、適正かつ計画的な時間管理を行うことで変形期間を平均して週四〇時間労働制を実現し、労働時間の短縮を図るものであること。

第二 対象としうる業務

本変形労働時間制においては、労使協定等により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を前もって定めることが要件とされており、最長一年までの一定期間における計画的な時間管理が可能な業務が対象となるものであり、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような業務は、対象とできないものであること。例えば、貸切観光バス等のように、業務の性質上一日八時間、週四〇時間を超えて労働させる日又は週の労働時間をあらかじめ定めておくことが困難な業務又は労使協定で定めた時間が業務の都合によって変更されることが通常行われるような業務については、本変形労働時間制を適用する余地はないものであること。

第三 対象労働者

労使協定において対象となる労働者の範囲を明確に定める必要があること。また、対象労働者は、対象期間の最初の日から末日までの期間使用する労働者に限られることから、期間雇用者であって変形期間途中の退職が明らかである者は含め得ないことはもとより、契約期間の定めのない者であっても変形期間中に定年を迎える者は含まれず、配置転換等による変形期間途中からの適用もできないものであること。

第四 休日の設定

本変形労働時間制は、年間単位の休日管理により休日増を図ることを目的とすることから、その採用に当たっては、採用前と比較して休日日数を増加して設定することが望ましいこと。

また、連続労働日数は、法文上「一週間に一日の休日が確保できる日数」とされており、最長一二日間まで認められるが、長期間の連続労働日数は好ましいものではないことから、これを常態とすることは、本制度にそぐわないものであること。

第五 時間外労働

本変形労働時間制においては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで、それに合わせて労働時間を配分するものであるので、突発的なものを除き、恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度であること。

第六 労使協定の有効期間

本変形労働時間制に関する労使協定は長期にわたるものとなる可能性があるが、状況の変化にもかかわらず不適切な変形制が長期間運用されることを防ぐため、その有効期間を一年程度とすることが望ましいものであること。

第七 特別の配慮を要する者に対する配慮

使用者は、本変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児、介護、職業訓練、教育等に必要な時間を確保できるような配慮をするように努めることとされていること。その場合に、法第六七条(育児時間)の規定は、あくまでも最低基準を定めたものであって、法第六六条(産前産後)第一項の規定による請求をせずに本変形労働時間制の下で労働し、一日の所定労働時間が八時間を超える場合には、具体的状況に応じ法定以上の育児時間を与えることが望ましいものであること。

第八 途中離脱者の賃金の清算

解雇、任意退職、配置転換等により、変形期間途中に対象労働者に該当しなくなった場合において、これが生じた時期によっては、全期間就労した労働者等との均衡上賃金の清算(再計算)が必要となる場合が生じることも考えられるが、この場合、労使協定の法定の記載事項とはなっていないが、労使間において適切に清算が行われるよう、賃金の清算の事由及び方法について労使協定において事前に定めておくことが望ましいものであること。