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○労働基準法施行規則第一六条及び労働基準法第三六条の協定において定められる一日を超える一定の期間についての延長することができる時間に関する指針について

(昭和五七年八月三〇日)

(基発第五六九号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

労働基準法施行規則(昭和二二年八月厚生省令第二三号。以下「規則」という。)第一六条及び労働基準法第三六条の協定において定められる一日を超える一定の期間についての延長することができる時間に関する指針(昭和五七年労働省告示第六九号。平成元年労働省告示第六五号及び平成四年労働省告示第七〇号により一部改正されたものをいい、以下「指針」という。)は、労働基準法(以下「法」という。)第三六条の趣旨にかんがみ、同条の協定(労働時間の延長に係るものに限る。以下「時間外労働協定」という。)において一日を超える一定の期間についての延長することができる時間について協定し、届け出ることを義務付けるとともに、当該一日を超える一定の期間についての延長することができる時間の限度に関する目安を具体的に明らかにし、労使の自主的努力を基盤に時間外労働協定の適正化を図ろうとするものであり、労働時間対策の推進の上で重要な意義を有するものである。

ついては、下記の事項に留意の上、規則第一六条及び指針の適切な運用に遺憾なきを期されたい。

第一 規則第一六条について

一 趣旨及び内容

労働基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和五七年労働省令二五号)による改正前の労働基準法施行規則(以下「旧規則」という。)第一六条第一項及び第一七条第一項においては、法第三二条又は第四〇条の規定により労働させることができる最長の労働時間を超えて延長することができる一日についての労働時間を時間外労働協定における協定事項及び届出事項として義務付けているが、一週間、四週間、一月その他の一定の期間について法第三六条の規定により延長することができる労働時間については、当該期間及び限度となる労働時間を協定した場合のみ届出事項とされていた。

しかし、法第三六条は時間外労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであることに留意すれば、徹夜業務や交替制の連続勤務などを予想して協定時間が比較的長くなりがちな一日についての時間外労働時間だけでなく、一定の期間についての時間外労働時間をも時間外労働協定における必要協定事項とすることが適当である。これにより、労使において時間外労働協定を締結する際に、時間外労働時間の総量について事業の実態等に即した検討を行う機会を担保し、その適正な上限の設定に資することとなるものである。

このため、昭和五七年に旧規則第一六条を改正し、時間外労働協定において協定すべき事項として一日を超える一定の期間についての延長することができる時間(以下「一定期間についての延長時間」という。)が追加されるとともに、旧規則様式第九号について所要の整備が行われたものである。

二 留意事項

(一) 一定期間

イ 一定期間についての延長時間に係る一定期間(以下単に「一定期間」という。)については、労使の自主的な協議により協定されるものであるが、その際に考慮すべき目安が指針において示されていること。

ロ 一定期間の起算日は、協定上明確にされることが望ましいこと。起算日の定めのない場合は、労使慣行等から別意に解されない限り、時間外労働協定の有効期間(有効期間中時間外労働をさせることができる期間について特に制限を設けている場合にあっては、当該期間とする。以下同じ。)の初日を起算日とみなすこと。

ハ 一定期間は、起算日から有効期間の末日までを順次当該期間ごとに区切られる期間であること。

(二) 一定期間についての延長時間

イ 一定期間についての延長時間は、法第三二条から第三二条の五まで又は第四〇条の規定により労働させることができる最長の労働時間(以下「法定労働時間」という。)を超えて延長することができる時間であること。

ところが、一定期間についての延長時間として、法定労働時間を下回る事業場の所定労働時間を基準に定めた時間外労働時間の限度を協定し届け出る例、法第三五条の協定による休日又はいわゆる法定外休日における労働時間を含めて協定し届け出る例が少なからずみられるところである。これらの届出は本来適正な届出とは認められないが労使慣行への影響等を配慮して、当分の間やむを得ないものとして取扱うこと。

ロ 一定期間についての延長時間を二以上の一定期間について協定した場合(例えば、一週間一〇時間、二週間一五時間かつ一箇月三〇時間と協定した場合)においては、規則様式第九号及び第九号の二(以下「様式」という。)の「一日を超える一定の期間」の欄の上欄に、当該協定で定められたすべての期間を記入し、その下欄に、当該期間に応じ、それぞれ当該期間についての限度となる時間を記入することとなること(様式記載心得二(二))。

ハ 一定期間についての延長時間としては特定の具体的な時間数を協定し、これを届け出る必要があること。

なお、原則とする延長時間を定めた上で一定の場合等に当該時間の変更が可能である旨協定することも、変更後の延長時間の限度が明示されている限り、可能であること。

ニ 一定期間についての延長時間は、労使の自主的な協議により協定されるものであるが、その際に考慮すべき目安が指針において示されていること。

第二 指針について

一 指針策定の趣旨

法は一週四〇時間、一日八時間労働制を原則としているが、法第三六条の規定により時間外労働協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ることを要件として法定労働時間を超える時間外労働を認めている。しかし、第一の一で述べたとおり、時間外労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであり、法第三六条は労使がこのことを十分意識した上で時間外労働協定を締結することを期待しているものといえる。

このため、一定期間についての延長時間を時間外労働協定における協定事項及び届出事項として義務付けることに併せて、当該一定期間についての延長時間の限度に関する目安等を内容とする指針を示すことにより、労使がこれを十分考慮して時間外労働時間を適正に協定することを促進し、恒常的な長時間労働の改善を図ることとしているものである。

二 指針の内容及び運用上の留意事項

(一) 指針の目的等

イ 指針の目的(指針第一条第一項関係)

指針は、規則第一六条により時間外労働協定において協定することが義務付けられる一定期間についての延長時間に関し目安を示すこと等により、時間外労働協定において「一定期間についての延長時間」が適正に協定されることを促進することを目的とするものであること。

すなわち、指針は、時間外労働の上限時間等を労使の自主的協議に委ね、労使協定によってその内容を規制するという法第三六条の方式を前提にした指導基準を示し、これまでの〝過長〟な所定外労働時間の削減"に関する行政指導と同様、時間外労働協定の適正化に向けての労使の自主的努力を援助、促進しようとするものであること。

したがって、指針の目的等及び内容が広く労使に周知され、理解されることが極めて重要であることにかんがみ、その形式を告示としたものであること。

なお、指針は一定期間についての延長時間に関するものであり、一日についての延長時間及び休日労働については目安となるものは示していないこと。

ロ 労使当事者の態度(第一条第二項関係)

指針は恒常的な長時間労働の改善を図る観点から策定されたものであるので、時間外労働協定の締結当事者である労使は、指針を理由として時間外労働協定における一定期間についての延長時間を延ばしてはならないこととしたこと。

なお、経済諸条件の変動等の事情があり、当該事情に基づいて指針の適用後一定期間についての延長時間を従前より延ばす場合については本項に抵触するものではないこと。

(二) 業務区分の細分化(指針第二条関係)

労使は、時間外労働協定において、時間外労働をさせる必要のある業務の種類について協定するに当たっては、当該業務の区分を細分化することにより、当該業務の範囲を明確にするように努めなければならないこととしたこと。

これは、労働時間短縮推進計画(昭和六三年六月策定)において、「時間外・休日労働に関する協定の締結に当たっては、容易に臨時の業務などを予想して対象業務を拡大したり(中略)することのないよう業務区分の細分化(中略)を行う。」とされたことを踏まえ、新たに設けられたものであり、業務の区分を細分化することにより当該業務の種類ごとの時間外労働時間をきめ細かに協定するものとしたものであること。

したがって、労使は、時間外労働協定の締結に当たり各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分するよう努めなければならないものであること。

(三) 一定期間についての延長時間に関する目安

イ 一定期間(指針第三条第一号関係)

(イ) 一定期間については、週又は月を単位とする期間及び年を単位とする期間とし、週を単位とする期間は一週間、二週間又は四週間、月を単位とする期間は一箇月、二箇月又は三箇月、年を単位とする期間は一年間とすることとしたこと。

(ロ) 労使は、時間外労働協定において、週又は月を単位とする期間についての延長することができる時間及び一年間についての延長することができる時間の双方を協定するよう努めなければならないものであること。

なお、一定期間として一年間があることは、一年間を通じて恒常的時間外労働を認める趣旨ではないことはいうまでもないこと。

ロ 一定期間についての延長時間(指針第三条第二号及び別表関係)

(イ)

① 一定期間についての延長時間については、労使の自主的な協議により協定されるものであるが、その際に考慮すべき目安が指針において示されていること。

② 時間外労働協定の有効期間の長さについては、法律上特段の規定はなく労使の自主的決定に委ねられているが、有効期間の如何にかかわらず、労使は、一年間についての目安時間が三六〇時間とされたことを十分考慮して時間外労働時間の管理をするよう努める必要があること。

③ 一定期間が三箇月以内の期間であるが、週又は月を単位としない場合は、次の表の左欄に掲げる一定期間の区分に応じ、それぞれ表の右欄に掲げる時間をその一定期間に係る目安時間に相当する時間とすること。

一定期間(当該期間の日数=χとする)

一定期間についての延長時間

二日を超え一週間未満の日数を単位とする期間

七分の一五χ時間(端数切上げ)

一週間を超え二週間未満の日数を単位とする期間

一四分の二七χ時間(〃)

二週間を超え四週間未満の日数を単位とする期間

二八分の四三χ時間(〃)

(ただし、二七時間未満となる場合は二七時間とする。)

一箇月を超え二箇月未満の日数を単位とする期間

六〇分の八一χ時間(〃)

(ただし、四五時間未満となる場合は四五時間とする。)

二箇月を超え三箇月未満の日数を単位とする期間

九〇分の一二〇χ時間(〃)

(ただし、八一時間未満となる場合は八一時間とする。)

④ 週又は月を単位とする期間の目安時間は、一定期間を一つだけ定めた場合を前提に、当該一定期間が長くなるに従って一週間当たりの時間を逓減させることを前提としたもので、三箇月以内の一定期間を重畳的に複数定めた場合については、そのうちの最も長い一定期間についての延長時間が目安に適合すればよいものであること。

⑤ 協定及び届出がされた一定期間についての延長時間が法定労働時間を下回る事業場の所定労働時間を基準に協定された時間である場合及び法定労働時間を基準にしているが休日における労働時間を含んで協定された時間である場合については、次の概算式により算出される「一定期間の法定超え時間外労働時間」が目安に適合すればよいものであること。

なお、この換算は、協定及び届出がされた延長時間を目安時間と比較する便宜上行うものであり、法第三二条又は第四〇条の違反の有無は換算後の時間を基準に行うものではないこと。

а 週休二日制(完全週休二日制に限らない。以下同じ。)の事業場の時間外労働協定で、所定労働時間を基準にし、かつ、当該事業場の休日におけ―る労働時間を含むものの場合

b 週休二日制の事業場の時間外労働協定で、所定労働時間を基準とし、かつ、当該事業場の休日における労働時間を含まないものの場合

c 週休一日制の事業場の時間外労働協定で、所定労働時間を基準とし、かつ、当該事業場の休日における労働時間を含むものの場合

d 週休一日制の事業場の時間外労働協定で、所定労働時間を基準とし、かつ、当該事業場の休日における労働時間を含まないものの場合

e 法定労働時間を基準とし、かつ、当該事業場の休日における労働時間を含む時間外労働協定の場合

(注) а、b、c、d、eいずれについても、法定労働時間の猶予措置の対象とされる事業場は、四〇時間を四四時間とすること。ただし、法第八条第一号から第五号まで及び第一五号の事業のうち常時九人以下の労働者を使用するものについては平成七年三月三一日までの間は、四〇時間を四六時間とすること。

また、法第四〇条の特例業種に該当する事業場は、四〇時間を四六時間とすること。ただし、法第八条第八号及び第一四号の事業のうち常時五人未満の労働者を使用するものについては平成七年三月三一日までの間は、四〇時間を四八時間とすること。

(ロ)

① 一定期間についての延長時間は目安時間以内の時間とすることが原則であるが、弾力措置として、

а 目安時間以内の時間を一定期間についての延長時間の原則(以下「原則たる延長時間」という。)として定めた上で、

b 目安時間を超えて労働時間を延長しなればならない特別の事情が生じたときに限り、一定期間ごとに、労使間において定める手続を経て、目安時間を超える一定の時間(以下「特別延長時間」という。)まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば(この場合における協定を「特別条項付き協定」という。以下同じ。)、当該一定期間についての延長時間は目安時間を超える時間とすることができることとしていること。

なお、「目安時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたとき」には、法第三三条の非常災害時等の時間外労働に該当する場合は含まれないことに留意すること。

このような弾力措置を設けた理由は、事業又は業務の態様によっては、通常の時間外労働は目安時間以内の時間に収まるが、臨時的に目安時間を超えて時間外労働を行わざるを得ない特別の事情が生ずることが予想される場合があるので、事業又は業務の運営に配慮するとともに、原則たる目安時間の意義が失われることのないようにするためであること。

② 特別条項付協定においては、「特別の事情」、「手続」、「特別延長時間」それぞれの内容をあらかじめ協定することを要件としていること。

「特別延長時間」については、一定期間についての延長時間の内容として届出を行う必要があること。また、「特別の事情」及び「手続」の内容については必ずしも詳細に届出を行う必要はないものであるが、協定届においては、「特別の事情」及び「手続」が特別延長時間まで労働時間を延長できる要件である旨を明らかにし、特に「手続」についてはその概要を記載する必要があること。

③ 「特別の事情」は、時間外労働をさせる必要のある具体的事由の下において生じる特別の事情をいうものであり、労使が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定めることが望ましいこと。

④ 労使間において定める「手続」については特に制約はないが、時間外労働協定の締結当事者間の手続として労使が合意した協議、通告その他の手続であること。

また、手続は、一定期間ごとに当該特別の事情が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、原則たる延長時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となるものであること。

なお、所定の手続がとられ、原則たる延長時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出る必要はないが、労使間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要があること。

⑤ 「特別延長時間」については目安とする時間は示されておらず、労使の自主的協議に委ねられていること。

⑥ 特別条項付協定は事業又は業務の態様等に即して労使がその締結の必要性を判断するものであり、また、特定の事業又は業務に限定されるものではないが、当面、当該協定を締結する場合が比較的多い事業又は業務として次が考えられること。

а 水産食料品製造業

b 野菜かん詰・果実かん詰・農産保存食料品製造業

c 紡績業における生産部門、特に染色部門

d 染色整理業

e 加工紙製造業及び紙製容器製造業

f 印刷業

g 生コンクリート製造業

h 鉄道業における運輸部門及び技術部門

i 道路旅客運送業及び道路貨物運送業における事務員、積卸作業員等の業務

j 電気事業及びガス事業における営業所等の業務

k 警備業及びビルメンテナンス業における警備業務

また、卸売業、小売業、ホテル・旅館業においても年末・年始、夏季等の季節的繁忙期を想定して特別条項付協定を締結することが考えられること。

特別条項付協定を締結する場合は、時間外労働をさせる必要のある業務の種類を区分し、できるだけ当該協定の対象労働者の範囲を限定することが望ましいこと。

(四) 目安時間が適用されない事業又は業務(指針第四条関係)

次に掲げる事業又は業務に係る時間外労働協定については、目安時間は適用しないこととしたこと。これは、①目安時間は、基本的には全産業についての全国統一基準であるので、一部の特に過長な時間外労働を行う実態にある事業又は業務をも適用対象にして目安時間を定めると、目安時間がより長めに設定されることになり問題があること、②労働時間管理等について別途行政指導を行っている分野については、現行の指導基準の水準に到達させることが先決であること、③事業又は業務の性格から目安時間の適用になじまないものがあること、等の理由によるものであること。

なお、ニに掲げる事業又は業務に係る時間外労働協定については、指針第三条(第一号を除く。)の規定のうち、労働省労働基準局長が指定する範囲に限り、目安時間は適用されないものであること。

イ 工作物の建設等の事業(第四条第一号関係)

「工作物の建設等の事業」とは原則として法第八条第三号に該当する事業をいうものとするが、建設業に属する事業の本店、支店等であって同号に該当しないものも含むものであること。なお、建設業を主たる事業としない製造業等の事業であっても、例えば、大規模な機械・設備の据付工事等を行う場合は当該工事自体が法第八条第三号に該当する一の事業となることがあるので留意すること。また、電気事業の建設所、工事所等及びガス事業の導管管理事務所は法第八条第三号の事業に該当するものであること。

ロ 自動車の運転の業務(第四条第二号関係)

「自動車の運転の業務」とは、四輪以上の自動車の運転を主として行う業務をいい、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第七号、改正平成三年労働省告示第七九号)の対象となる自動車運転者の業務と同義であること。

ハ 新技術、新商品等の研究開発の業務(第四条第三号関係)

(イ) 「新技術、新商品等の研究開発の業務」とは、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する次の業務をいうこと。

① 自然科学、人文・社会科学の分野の基礎的又は応用的な学問上、技術上の問題を解明するための試験、研究、調査

② 材料、製品、生産・製造工程等の開発又は技術的改善のための設計、製作、試験、検査

③ システム、コンピュータ利用技術等の開発又は技術的改善のための企画、設計

④ マーケティング・リサーチ、デザインの考案並びに広告計画におけるコンセプトワーク及びクリエイティブワーク

⑤ その他①から④に相当する業務

なお、③でいう「システム」とは、製品の生産、商品の販売、サービスの提供等のために、人的能力、技術、設備、情報等を有機的に関連づけて総合的に体系化することも指すものであること。

また、研究の事業にあっては、事業の目的たる研究そのものを行う業務をいうこと。

(ロ) 時間外労働協定について目安時間を適用しないこととする新技術、新商品等の研究開発の業務の具体的範囲については、労使が上記定義に即して、自主的に協議し、定めた内容を尊重するものとすること。

ニ 季節的要因等により業務活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として労働省労働基準局長が指定するもの(第四条第四号関係)

これは、当該事業又は業務の特性等により三箇月以内の期間においては一二〇時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない業務であるため、別表の上欄に掲げる一定期間の区分のうち週又は月を単位とする期間についての目安時間は適用しないものとされたものであるが、年間を通じては業務の繁閑があり、時間外労働の調整を図り得ることから、一年間についての目安時間を適用することとしたものであること。

(イ) 「季節的要因等により業務活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務」とは、事業又は業務の特性と不可分な季節的要因等により事業活動又は業務量に著しい変動があり、かつ、その結果一定期間における時間外労働が三箇月一二〇時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない事業若しくは業務をいうこと。

(ロ) 「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」とは、公益事業における業務であって、当該事業の安全な遂行等を確保する上で集中的な作業が必要とされ、かつ、その結果、一定期間における時間外労働が三箇月一二〇時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない業務をいうこと。

(ハ) 平成元年二月一五日付け基発第六四号により、「季節的要因等により業務活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務」として次の①から④までに掲げる事業又は業務、「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」として次の⑤及び⑥に掲げる業務がそれぞれ指定されていること。

① 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業(砂糖精製業を除く。)

② 造船事業における船舶の改造又は修繕に関する業務

③ 郵政事業の年末・年始における業務

④ 都道府県労働基準局長が労働省労働基準局長の承認を得て地域を限って指定する事業又は業務

⑤ 電気事業における発電用原子炉及びその附属設備の定期検査並びにそれに伴う電気工作物の工事に関する業務

⑥ ガス事業におけるガス製造設備の工事に関する業務

(五) 労働基準監督署長の助言等(第五条関係)

労働基準監督署長は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間が適正に協定されるようにするため、指針に定める事項に関し必要な助言及び指導を行うものとすること。

指針の目的は労使当事者の自主的協議を通じて達成されるべきものであるが、行政の側においても、労使の自主的努力の促進という観点から指針の実施に関して必要な助言及び指導を行うという方針を明らかにしたものであること。

この場合における助言及び指導としては、広報、集団指導等による指針の周知徹底、時間外労働協定の届出等に際しての指針の内容の説明、時間外労働協定の内容の再検討の要請等を行うものとすること。

第三 指針の適用に伴う行政指導について

三六協定の適正化等〝過度な所定外労働時間の削減〝に関する具体的対策については、昭和五三年六月二三日付け基発第三五五号及び昭和五三年一一月二〇日付け基発第六四二号において指示したところであるが、指針の適用に伴い、次に示すところにも留意の上適切な行政の展開を図ること。

一 指針の周知徹底

指針は、時間外労働協定における一定期間についての延長時間の協定の仕方に関して労使に少なからぬ影響を与えるものであるので、広く、使用者、使用者団体、労働者、労働団体等に対して、各種の広報活動、集団指導等によりその内容、留意事項等について十分周知徹底を図ること。

二 一定期間についての延長時間に関する目安の遵守

(一) 労使は一定期間についての延長時間を協定するに当たっては、指針において示された一定期間、延長時間のそれぞれに関する目安を十分考慮するよう指導すること。

(二) 指針は、恒常的な長時間労働の改善を図る観点から策定され、現実的、弾力的内容を備えているが、その性格は時間外労働協定の適正化に向けての労使の自主的努力を援助、促進しようとするものである。

したがって、指導に当たっては、指針の目的及び内容を懇切に説明し、理解を得ることを基本とし、強制にわたることのないよう配慮すること。