アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○定年延長の積極的推進について

(昭和五六年三月一七日)

(基発第一六〇号・職発第一一五号)

(都道府県知事、都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長、労働省職業安定局長通達)

定年延長の促進については、急速に進展する高齢化のもとにおける最重要課題として従来から特段の御努力を願つてきたところであるが、今般、本年一月一九日にかねて諮問していた定年延長の実効ある推進策について、雇用審議会より答申がなされたところである。同答申においては、昭和六〇年度までの六〇歳定年の一般化の実現をより確実なものとするため、行政指導の強力な推進などの定年延長施策を展開する必要があるとの指摘がなされている。加えて、労使の間においても定年延長についての気運が高まりつつある。これらの状況に鑑み、六〇歳定年の一般化をできうる限り早期に実現すべく、定年延長の一層の促進を図ることとしたので、貴職におかれても、左記に留意の上、特段の御努力をお願いする。

一 定年延長についての行政指導の強化

定年延長のより一層の促進を図るため、行政指導の強化を図ることとし、特に五〇〇人以上規模の全企業については、個別にその状況をは握し、六〇歳未満定年で定年延長についての取組みの十分でないものすべてに対して計画的に指導・援助を行うものとする。

(一) 個別企業の定年制の状況のは握

五〇〇人以上規模の企業の定年制の状況、定年延長の取組み状況及び六〇歳未満の定年制を有する企業における阻害要因をは握すること。

(二) 個別企業指導計画の作成

前記によりは握した個別企業の定年制の状況等を分析し、指導が必要と認められる企業についての個別の指導計画を作成し、後記指導方法、留意点を勘案の上、個別企業の実情に見合つた効果的な指導を実施すること。

(三) 集団指導及び個別指導の強化

イ 指導の方法は、業種別定年延長労使会議、定年延長研究会等の集団指導及び個別指導によること。

ロ 業種別定年延長労使会議は、業種全体として定年延長への取組みが遅れており、定年延長問題に対する労使双方の十分な理解を促す必要があるものを対象とすること。

ハ(イ) 定年延長研究会は、定年延長を阻害している賃金・退職金制度等について自主的な改善努力を行おうとする企業を対象とすること。

(ロ) 定年延長研究会の運営に当たつては、過去一年間における運営の実績をふまえ、さらに他の定年延長研究会の経験をも参考にして、より実効の上がるよう内容の充実を図るとともに、同研究会への新たな参加希望が多い場合には、地域、業種、規模等に配慮しつつ、新たな研究会を組織すること。

なお、前記(二)の個別指導計画の作成の対象となつた企業で参加を希望する企業については優先して研究会の会員とするよう配慮すること。

ニ 個別指導は、企業の阻害要因に応じてきめ細かに実施するものとするが、特に企業の幹部に対し、積極的な取組みを促すよう指導を強力に展開すること。その際、定年延長に伴う賃金・退職金制度等の改善指導については、都道府県労働基準局に設置されている賃金相談室を積極的に活用すること。

なお、業種別定年延長労使会議の出席企業に対しても、その後引き続き個別指導を実施し、具体的な取組みを促すこと。

ホ 指導は、関係行政機関の連携のもとに計画的に行うこと、特に、複数機関から重複した指導が行われた結果企業側に混乱が生じた向きもあるので、職業安定行政、労働基準行政、労政行政の各関係機関が十分連絡調整を行うよう重ねて留意されたいこと。

(四) 高年齢者雇用率の達成指導

高年齢者雇用率未達成企業に対する達成指導に当たつては、極力定年延長を導入するよう働きかけるものとし、六〇歳未満の定年制を有する企業で定年延長も行わないものに対し、重点的に個別指導を行うこと。

(五) 指導体制の強化

イ 定年延長の推進に当たつては、公共職業安定所と協力しつつ、都道府県及び都道府県労働基準局の幹部が積極的に実施すること。

ロ 労働本省においては、五、〇〇〇人以上の大企業を中心に個別指導を実施することとしているが、都道府県段階において特に本省の指導が必要と認められる企業については、本省に連絡し、連携をもつて指導を実施すること。

ハ 指導対象が特に多い都道府県については、本省と協議の上、特別に指導体制を整備し、積極的な定年延長の推進に努めること。

(六) 本省への報告

都道府県職業安定主管課は、五〇〇人以上規模企業の名簿を作成し、それに毎年六月一日現在の各企業の定年制の実態、指導状況及び指導結果等を記入し、毎年七月末日までに労働省職業安定局業務指導課あて報告すること。

二 定年延長指導に当たつての留意点

(一) 雇用審議会答申に示された考え方の普及

雇用審議会答申(以下「答申」という。)は、定年延長問題について労使から行つたヒアリングの概要及びその結果をもととした見解が示されており、定年延長を実施するに当たつて非常に参考となるものである。このため、答申の内容の周知を図るとともに、次の点に留意して定年延長指導を実施するものとする。

イ 定年延長についての基本的コンセンサスの形成

定年延長は高齢化社会のもとで実現すべき社会的要請であるということが既に多くの労使に共通のコンセンサスとなつていることについて、定年延長の取組みの遅れている労使関係者に十分認識させること。

ロ 賃金・退職金制度の見直し

定年延長に伴う人件費コストの増大の問題は、賃金、退職金制度の見直しに関して労使双方の努力がなされるならば克服されうるものであることについて、答申のヒアリングの概要に示された対応例等を引用しつつ、周知を図ること。

ハ 一貫した人事管理の必要性

人事の停滞と、それによるモラール・ダウンを回避するためのいわゆる役職定年制の導入は、定年延長が定着するまでの暫定的な措置として考えうるものであるとしても、長期的には、定年延長に当たつての人事管理の基本は、入職から少なくとも六〇歳定年退職までを基幹労働力として活用していくといういわゆる一貫した人事管理の考え方に基づくべきであるとの認識の普及に努めること。

ニ 高年齢者の労働能力とその活用

高年齢者の労働能力は、それまでと同じ職務を続ける限り、少なくとも六〇歳までは一般的には十分なものがあるとの見解が多くの労使から示されているところであり、高年齢者の労働能力は低下するという固定観念の除去を図り、高年齢者の積極的な活用を促すこと。

(二) 今後の施策をふまえた定年延長指導の推進

昭和五六年度においては、今後の定年延長をより促進するため、中央職業安定審議会建議(昭和五五年一一月一四日)及び雇用審議会答申(昭和五六年一月一九日)を受け、次の新たな施策を講ずることとし、現在、関係法案を国会に提出しているところである。したがつて、その趣旨を十分に踏まえ、積極的な定年延長の指導に当たるものとする。

イ 高齢期における雇用の確保の観点からの各種給付金の統合・充実

高齢化社会の移行に対応して、高齢期における雇用の確保を図つていくことが極めて重要であるとの観点から、六〇歳以上の高年齢者の継続雇用の制度化を促進するために、「高年齢者雇用確保助成金(仮称)」を創設するとともに、定年延長奨励金を昭和六〇年度で廃止することとしている。

したがって、既に六〇歳定年を前提とした六〇歳台前半層の雇用が問題になつていること、定年延長奨励金支給が打ち切られることからも、六〇歳定年延長の早期実施が必要であるとの認識の徹底を図ること。

ロ 高年齢者職場改善資金融資制度(仮称)の創設

定年延長の阻害要因として、職務内容、作業環境が高年齢者向きになつていないことをあげるものが多い。このため、高年齢者向きに施設・設備を改善して定年延長の実施等高年齢者の雇用の拡大を図る事業主に対してその資金の一部を貸付ける「高年齢者職場改善資金融資制度(仮称)」を創設することとしている。

したがつて、職務内容、作業環境を定年延長の阻害要因とする事業主に対しては、高年齢者向きに職場を改善することの必要性を指摘し、その取組みを促すとともに、本融資制度の創設についての周知を図るものとする。