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○地方公務員法第二九条第一項の規定に基づく懲戒免職処分に対する労働基準法第二〇条の規定の適用について

(昭和四一年一〇月二七日)

(基発第一一五五号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

最近、一部の地方公共団体において、労働基準法第二〇条所定の手続を経ないで、地方公務員法第二九条第一項の規定に基づく懲戒免職処分を行なつたため、国会等において問題となつた事例が生じていること等にかんがみ、貴局管下の関係地方公共団体機関に対して、下記の事項を十分徹底させ、今後このような事態が発生しないよう、その指導方について特段の配慮をされたい。

労働基準法(以下「法」という。)が全面的に適用される公共企業体等労働関係法第二条第二項第二号の企業(いわゆる五現業)の職員については、国家公務員法第八二条の規定に基づき、懲戒免職する場合においても、法第二〇条に定める手続をとることを要することは、別添内閣法制局意見(昭和三九年八月三日)のとおりであるが、地方公務員法第二九条第一項の規定に基づく懲戒免職についても、法第二〇条に定める手続をとることを要するものと解されること。

別添

いわゆる五現業の職員に対する懲戒免職と労働基準法第二〇条との関係について

1 問題

国家公務員法第八二条の規定に基づき公共企業体等労働関係法第二条第二項第二号の職員(以下「五現業職員」という。)を免職しようとする場合においても、労働基準法第二〇条に定める手続をとることを要するか。

2 意見及び理由

労働基準法第二〇条は、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、原則として、その労働者の解雇によつて生ずる生活の困窮を緩和するため「使用者は、…少くとも三〇日前にその予告をしなければならない。三〇日前に予告をしない使用者は、三〇日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と規定し(同条第一項本文)、例外としてその解雇が行政官庁の認定を受けた「労働者の責に帰すべき事由」に基づいて行なわれる場合には、この手続をとることを要しないものとしている(同条第一項ただし書、第三項)。

ところで、労働基準法第九条の趣旨を考えれば、同条にいう労働者には、一般職の国家公務員もまた含まれることになるであろうが、一般の国家公務員については国家公務員法附則第一六条によつて労働基準法は適用しないとされているのに対し、五現業職員については同条の適用を排除する公共企業体等労働関係法第四〇条が存在するため、原則として労働基準法の適用があることが明らかである。そうであるとすれば、懲戒免職に対して労働基準法第二〇条の適用があるかどうかは、国家公務員法第八二条の趣旨がどうであるかにかかるということになろう。

そこで国家公務員法第八二条の規定による免職について考えてみると、同条の免職は、一般職の国家公務員の勤務秩序を確保するために設けられた制裁としての免職であり、私企業において設けられる制裁としての解雇とその実体においてなんら相違はないのであるから、同条は、このような制裁としての解雇をなし得べき権能を任命権者に与えたに止まり、その権限行使に際して労働基準法第二〇条の規定の適用を排除する趣旨が含まれてすると解すべき根拠はないものというべきである。したがって、五現業職員を国家公務員法第八二条の規定に基づいて免職しようとする場合には、労働基準法第二〇条所定の手続をとらなければならないものと解すべきである。

この見解に対しては、次のような二つの反論が予想される。

その一つは、懲戒免職は、そもそも当該職員がこれ以上国家公務員たる身分を保有していることは公益に反することになるという判断に基づいて即日その身分を失わせることを目的として行なわれるものであるから、もしも懲戒免職をする場合にも労働基準法第二〇条の手続をとることを要するものと解すれば公益に反する結果になるのではないかという反論である。しかしながら、労働基準法第二〇条は、すべての解雇について三〇日の予告を要求しているのではなく、不適当な場合には三〇日以上の平均賃金を支払つて即日解雇するみちも認めているのであるから、このような見解をとつたとしても、直ちに公益に反する事態が生ずることにはならないというべきである。

その二つは、仮に五現業職員の懲戒免職に労働基準法第二〇条の適用があるとしても、国家公務員法第八二条各号に掲げる懲戒事由は、一般的にいつて国家公務員の責に帰すべき事由であるから、同条に基づく五現業職員の免職は、当然に労働基準法第二〇条第一項ただし書の「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇に該当し、したがつてあらためて同条第三項の行政官庁の認定を受ける必要がないと解すべきであるという反論である。しかしながら、そもそも労働基準法第二〇条第三項が、同条第一項ただし書の「労働者の責に帰すべき事由」の有無の認定を使用者のみに委ねることなく、行政官庁の認定にも係らしめているのは、労働者保護の観点からその認定の公正を期そうとするところにあるから、五現業職員についてとくにこの手続を排除しなければならない理由は見出しがたく、しかも国家公務員法第八二条各号に掲げる事由が一般的にいつて国家公務員の責に期すべきものであるとしても、その事由と労働基準法第二〇条第一項ただし書の「労働者の責に帰すべき事由」とは、それぞれ異なる観点から規定されたものであるから、前者が当然に後者に該当すると断ずることはできないであろう。したがつて、労働基準法第二〇条第一項本文の手続をとることなく国家公務員法第八二条の規定によつて五現業職員を免職しようとする場合には、労働基準法第二〇条第三項の行政官庁の認定を受けるべきものといわなければならない。

以上の理由から、お尋ねの場合には労働基準法第二〇条所定の手続をとるべきものと解される。