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○社内預金制度の運用について

(昭和五二年一月七日)

(基発第四号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

いわゆる社内預金制度の運用に関しては、これまで、その適正な運営のため、法的規制の整備及び行政指導の充実を図ってきたところであるが、今般、賃金の支払の確保等に関する法律(昭和五一年法律第三四号。以下「賃確法」という。)により、社内預金の保全措置が法定されたことにかんがみ、同法の関係条項の施行期日である昭和五二年四月一日以後の社内預金の管理・運営については、下記によることとするのでこれが監督指導に遺憾なきを期されたい。

なお、本通達の施行をもって別表記載の社内預金関係通達は廃止する。

目次

第一 貯蓄金の管理

第二 協定の内容

一 預金者の範囲

二 預金額の限度等

三 下限利率

四 上限利率

五 預金の利子の計算方法

六 預金の受入れ及び払戻しの手続

七 預金の保全方法等

第三 協定の届出

第四 預金管理状況報告

第一 貯蓄金の管理

事業主(使用者)がその労働者の委託を受けて貯蓄金の管理を行う場合には、労働基準法(昭和二二年法律第四九号。以下「法」という。)第一八条第二項に基づく貯蓄金管理に関する協定(以下「協定」という。)の締結・届出等法に定める一定の要件を備えなければならないことはいうまでもないが、これに加え、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入れであるときは、貯蓄金の保全のため、賃確法第三条に定めるところにより、一定の措置を講じなければならないものであること。

協定の締結・届出を行うことなく、事業主が労働者の預金の受入れを行うことは、法第一八条第二項に違反するとともに、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(昭和二九年法律第一九五号)にも抵触するおそれがあることに留意すべきものであること。

なお、貯蓄金の管理のうち、労働者自らが金融機関に預け入れた預金についてその預金通帳を事業主が保管する、いわゆる通帳保管については、法第一八条第四項及び労働基準法施行規則(昭和二二年厚生省令第二三号。以下「規則」という。)第五条の二並びに賃確法第三条の適用はないものであること。

第二 協定の内容

一 預金者の範囲

法律第一八条第二項は、事業主がその労働者の委託を受けて貯蓄金を管理しようとする場合について規定したものであるので、預金者の範囲は当然、法第九条に規定する労働者に限られるものであること。したがって、次に掲げる者はこれに含まれないこと。

(一) 株式会社及び有限会社の取締役及び監査役、合資会社及び合名会社の業務執行社員、特殊法人等の総裁、理事長、組合長、会長、理事及び監事その他事業主との間に使用従属の関係にない者。ただし、代表権又は業務執行権を有しない者で、工場長、部長等の職にあって事業主から賃金の支払を受ける者を除く。

(二) 退職者

(三) 労働者の家族

(四) 社内親睦団体

なお、事業主として法第一八条第二項により労働者の貯蓄金の管理を行い得る者は、法第一〇条に規定する使用者に限られ、会社の共済会等はこれに含まれないこと。

二 預金額の限度等

(一) 貯蓄金の管理が、法第一八条第二項の規定に基づいて受け入れる預金である以上、雇用関係に基づく労働者の収入がその源資となるべきものである。したがって、預金の源資は、定期賃金、賞与等労働の対償として支払われたものに限られ、労働者の家族等が労働者名義で預金を行うことはもちろん、労働者の兼業収入、財産収入、財産処分による収入等は預金の源資として適当でないので、協定においては法第一一条に規定する賃金以外のものは受け入れない旨を明らかにすること。

(二) 協定においては、預金者一人当たりの預金残高の限度を定めなければならないこととされているが、預金残高の限度は上記の趣旨にそって、当該事業場の賃金水準、預金の目的等を考慮して具体的に決定すべきものであること。この場合、預金残高の限度を「賃金額の〇〇カ月分」とする定めも預金残高の限度の具体的な定めに該当するものであること。

(三) いわゆる出向社員、労働組合専従職員等であって、その者の出向前、労働組合専従前等の事業場に在籍のまま、労働提供の義務が免除される場合には、その者の貯蓄金を引き続き出向前等の事業場で管理して差し支えないが、その者の基本賃金、手当等が出向先又は労働組合等から支払われる場合にあっては、それを出向前等の事業場で預金として受け入れることは適当でないこと。ただし、出向先等に社内預金制度がない場合には、その者の受ける基本賃金、手当等を出向前の事業場において引き続き預金として受け入れることは差し支えないこと(この場合、当該事業場における協定において預金者の範囲から出向者を除く旨の定めがないときに限る。)。

出向者等が出向前等の事業場に復帰するときは、出向先等における社内預金の預金残高を出向前等の事業場が預金として受け入れることも差し支えないこと。

三 下限利率

(一) 法第一八条第四項の規定に基づき使用者が労働者の預金を受け入れる場合の利率の最低限度(以下「下限利率」という。)は、使用者が労働者の預金を受け入れる場合に必ず付けなければならない利子の利率の最低限度を定めたものであること。

(二) 下限利率は、市中金利の実勢を考慮した妥当な利率に改正していくものであることから、毎年一月に見直し作業を行い、改正の必要が認められる場合には、四月一日を施行日とし、年度単位で改正を行うこととしていること。

このため、下限利率が引き上げられた場合であって、個々の事業場における社内預金の利率が当該下限利率を下回るものであるときは、当該下限利率の施行期日までに、少なくとも当該下限利率と同率以上に引き上げなければならないこと。また、下限利率が引き下げられた場合において、個々の事業場における社内預金の利率を改定するときには、原則として、改めて労使協定を締結し届出の手続をとる必要があること。なお、労使協定において、社内預金の利率を下限利率による旨定めている場合には、下限利率の引下げに連動して社内預金の利率が変更されることとなるが、こうした場合にあっても、改めて労使協議の上、実態を踏まえた適切な利率が設定されることが望ましいこと。

四 上限利率

預金の利率について、著しく高い利率を定めることは、市中金利体系との整合性及び預金の安全性の確保の問題がある等その弊害も黙視し得ないことから、これまで、毎年度ごとに行政指導上の基準としての預金の利率の上限(以下「上限利率」という。)を示し、預金の利率を上限利率以下とするよう指導してきたところである。

しかしながら、

イ 平成六年をもって市中金利が完全に自由化されたこと

ロ 著しい高利率による預金の安全性の確保については、上限利率に係る指導による規制によってではなく、本来、保全措置の適正化によって図るべきものであり、賃金の支払の確保等に関する法律第三条に基づき、社内預金制度を実施している事業主に対して保全措置を講ずることが義務付けられており、また、当該保全措置中問題が認められている預金保全委員会方式については、従来から、その実効性に係る指導を行ってきていること

ハ 上限利率に係る指導の背景となった昭和三〇年から四〇年代に比し、現在、企業等においても金融機関からの資金調達が容易になった上に市中金利が低水準にあるなどの状況の変化により、著しい高利率の設定は予想されないこと

等現在の状況においては、上限利率を示し、それに係る指導を行う意義が乏しくなっていると認められることから、当面、上限利率を示すこと及び当該利率に係る指導は行わないものであること。

五 預金の利子の計算方法

預金の利子の計算方法については、単利、複利の別、付利単位、利息の計算期間等を協定において定めること。

六 預金の受入れ及び払戻しの手続

(一) 貯蓄金管理の適正化のためには、預金者各人につき預金額が常時明らかにされなければならないことは当然であり、協定においては、少なくとも、預金通帳等預金の受入れ額、払戻し額及び預金残高を記録した書面の交付並びにこれらの事項を預金者各人別に記録した預金元帳の備付けを明記する必要があること。

(二) 預金者に交付する書面は、通常普通預金及び積立預金の場合には預金通帳、定期預金の場合には預金証書となるが、積立預金のうち、預金の方法が法第二四条第一項ただし書の規定による協定に基づき賃金から控除して預金として受け入れるものに限定されているものについては、預金者に交付する賃金支給明細書にその月の積立金額及び積立合計額を記載し、これをもって預金通帳に代えることは差し支えないこと。

(三) 預金元帳は、本社等において一括管理して差し支えないこと。

七 預金の保全方法等

協定の定めるべき事項としての預金の保全の方法に関しては、賃確法第三条並びに昭和五一年労働省令第三一号による改正後の賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(昭和五一年労働省令第二六号。以下「賃確則」という。)第一条及び第二条に定めるところによらなければならないが、その運用は次に示すところによるものとすること。

なお、保全措置に係る各種契約の約定書例については別途通達する。

(一) 保全措置を要しない場合

イ 保全措置を要しない場合の第一は、国又は地方公共団体が事業主として貯蓄金管理を行う場合である(なお、国家公務員法(昭和二二年法律第一二〇号)附則第一六条参照)。これは、国又は地方公共団体は、その性質上、貯蓄金返還不能の事態を生ずることはないと考えられることによるものであること。

ロ 保全措置を要しない場合の第二は、いわゆる特殊法人等が貯蓄金の管理を行う場合であって、保全措置を講ずることを要しない旨の労働大臣の指定を受けたときとされているが、これは、いわゆる特殊法人及び特別の法律により地方公共団体が設立者となって設立された法人(現在のところ、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四七年法律第六六号)により設立された土地開発公社、地方道路公社法(昭和四五年法律第八二号)により設立された地方道路公社及び地方住宅供給公社法(昭和四〇年法律第一二四号)により設立された地方住宅供給公社に限る。)のうちには、法律上、その予算、事業計画、資金計画、役員の任免等が主務大臣又は地方公共団体の長の認可等にかかり、主務大臣又は地方公共団体の長が当該特殊法人等に対し、その業務に関し監督上必要な命令を発し得る等、国又は地方公共団体の厳格な監督に服することとなっているため、貯蓄金の返還不能という事態を生じることがないと考えられるものがあり、このような実態を有するものに限って指定を行う趣旨であり、特殊法人等のすべてを指定するものではないこと。

なお、この指定は貯蓄金管理を行おうとする特殊法人等からの指定の申請に対して労働大臣において審査の上行うこととするので、特殊法人等から都道府県労働基準局長又は労働基準監督署長に対し指定の申請があったときは、これを受理した上、別途指示するところにより本省あて送付すること。

(二) 保全措置の種類及び内容

賃確則第二条は、貯蓄金の保全措置として適当と認められるものを列挙したものであり、同条に定める措置の二以上を併用することは差し支えないが、同条に定める措置以外の措置を講じている場合は、賃確法に規定する保全措置として認めない趣旨であり、賃確法第四条の命令の対象となるものであること。保全措置として講ずべき措置の内容は、賃確則第二条に定めるとおりであるが、なお、次の点に留意すること。

イ 保全措置を講ずべき貯蓄金の額

保全措置を講ずべき貯蓄金の額は、賃確法第三条に定められた毎年三月三一日現在における受入預金額の全額であり、その後において受入預金額の増減があっても、法律上保全すべき貯蓄金の額には影響を及ぼさないこと。したがって、保証契約、質権設定契約又は抵当権設定契約によって貯蓄金の保全を行う場合にあっては、一定の極度額を定めた根保証、根質又は根抵当となることが通例であること。

ロ 保全措置の概要

(イ) 保証契約の締結

この方法は、預金の返還につき、金融機関又は債務の保証を業とする公益法人であって労働大臣が指定するものが事業主と連帯して保証し、これにより預金の保全を図るものであること。

債務の保証を業とする公益法人に対する指定は、労働大臣において行うこととするので、都道府県労働基準局長又は労働基準監督署長に対し指定の申請があったときはこれを受理した上、別途指示するところにより遅滞なく本省あて送付すること。

(ロ) 信託契約の締結

a この方法は、事業主と信託会社(信託業務を兼営する銀行を含む。)との間に、事業主が貯蓄金の払戻しに係る債務を履行し得なくなった場合に、信託財産から預金者に弁済するため、事業主の有する財産を信託財産とする信託契約を締結するものであること。

b 信託財産については、換価が容易であるものが望ましいこと。また、価額変動をきたすものは好ましくないので、金銭その他価額の安定したものをこれにあてることが望ましいこと。

(ハ) 質権の設定

a この方法は、預金者と事業主との間に、その貯蓄金の払戻しに係る債権を担保するため、事業主又は第三者の有する財産(債権を含む。)を質物とする質権設定契約を締結するものであること。

b 質物については、価額変動をきたすものは好ましくないので、質権設定者(事業主)が金融機関に対して有する預金債権、金融債、生命保険契約上の債権等を質物とすることが望ましいこと。

c なお、この場合、第三者に対する対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないことに留意すること。

(ニ) 抵当権の設定

a この方法は、預金者と事業主との間に、その貯蓄金の払戻しに係る債権を担保するため、事業主又は第三者の有する財産を抵当権の目的物とする抵当権設定契約を締結するものであること。

b 抵当権の目的物については、不動産の外、各種の財団抵当法による財団(工場財団、鉱業財団等)、自動車、建設機械等があること。

c 抵当権は、同一の目的物につき複数の債権の担保のために設定することができ、その抵当権相互間の優先順位は、登記の前後によって定まるものであるので、原則として第一順位の抵当権の設定が望ましいが、貯蓄金の払戻しに係る債権につき設定する抵当権が、後順位であっても、目的物の価額が当該後順位たる貯蓄金の払戻しに係る債権をも担保するに十分である限り、後順位の抵当権であっても差し支えないこと。

なお、抵当権については、その設定の登記がなければ、第三者に対抗できないことに留意すること。

(ホ) 預金保全委員会の設置

a 趣旨

預金保全委員会は、労働者の預金を貯蓄金管理勘定として経理すること等の措置をあわせ講ずることにより、貯蓄金の管理につき、預金者たる労働者の意思を反映させるとともに、自己の預金の安全性を監視させることにより、返還不能のおそれがある場合には事前に預金者の自主的な預金の払出しを期待し、実質的に預金の保全を図ろうとするものであること。したがって、預金保全委員会は、事業主に対して貯蓄金の管理につき意見を述べることができるが、預金の運用方法等につき、交渉決定する機関ではないこと。

なお、預金保全委員会は、賃確則第二条第二項の全ての要件をみたさなければ、適法な保全措置とは認められないこと。

b 設置の単位

預金保全委員会は、貯蓄金管理を企業単位で行っている場合には企業単位で、事業場単位で行っている場合には事業場単位又は企業単位で設置することとし、協定において、設置の単位を明記すること。

c 委員会の構成

賃確則第二条第二項第一号の「半数」とは、少なくとも半数の意であること。したがって、預金保全委員会の構成員の数を奇数とする場合には、その過半数を労働者代表の推せんを受けた者とすることが必要であること。

d 委員会の選出方法等

(a) 賃確則第二条第二項第一項の「労働者の過半数」とは、企業単位で預金保全委員会を設置する場合には当該企業の労働者の過半数を、事業場単位で預金保全委員会を設置する場合には当該事業場の労働者の過半数をいうものであること。ここでいう「労働者」の範囲については、法第三六条に基づく時間外・休日労働に関する協定の締結当事者を選出する場合の「労働者」の範囲と同様であること(昭和四六年一月一八日四五基収第六、二〇六号参照)。

(b) 労働者代表の推せんに係る委員は、当該事業主に現に使用されている労働者であることを要するので、労働組合役員等が構成員となる場合であっても、少なくとも、その者は当該事業主の事業に在籍する者でなければならないこと。

(c) 推せんの形式については、定めがないので、被推せん人の氏名が特定される限り、任意の方式によることができるものであること。

e 貯蓄金管理勘定

貯蓄金管理勘定とは、社内預金の受入れ、払戻しの状況について記録する貸方勘定の一つであって、これにより預金の受け払い状況を常時明らかにし、預金保全委員会の活動を実効あるものにするためのものであること。具体的には、貯蓄金として受け入れた額、払い戻した額を元帳に貯蓄金管理勘定口座を設け、これに記入すること。

なお、この勘定は、各四半期ごとに締め切るものとすること。またあわせて、各四半期における貯蓄金の運用状況を明らかにすることを要すること。ここにいわゆる元帳とは、前記第二の六の(一)の個人別に記録した預金元帳とは別のものであること。

f その他適当な措置

(a) 保全措置として預金保全委員会を採用する場合に併せて講ずべき「その他の適当な措置」とは、支払準備金制度をいうものであって、貯蓄金管理勘定の設置又は支払準備金制度のうち、いずれを採用しても差し支えないが、そのいずれを採用するかは、協定において明らかにしなければならないこと。

また、預金保全委員会の設置に併せて貯蓄金管理勘定を設けるのみでは単に受払の状況を確認するにとどまるものであることから、実質的な保全機能を高めるためには、貯蓄金管理勘定と支払準備金制度の併用が望ましいこと。

(b) 支払準備金とは、毎年三月三一日現在の受入預金額の全額(その一部を上記(イ)~(ニ)により保全する場合にはその残額)について一時的にその返還請求が行われた場合にも、これに対応しうるよう、その払戻しのための資金を準備するものであり、元本が保証され、かつ、換価の容易なもので他の債権の担保に供されていないものをもってこれにあてることを要すること。

g 苦情処理

事業主は、預金保全委員会から貯蓄金の管理について意見が掲示された場合には、これを誠実に処理しなければならないこと。また、事業主は、預金保全委員会が貯蓄金の管理に関する苦情を処理するために必要な資料の提出等の措置を講ずること等により預金保全委員会の活動を保障しなければならないこと。

h 管理状況の報告

預金保全委員会に対する事業主の預金の管理に関する状況についての報告の内容は、これによって、預金保全委員会が預金の管理及び保全の状況が十分には握できるに足る内容であって、預金保全委員会が本来の機能を有効に発揮しうるものでなければならないこと。具体的には、報告時あるいは直近の計算の締切日における受入預金総額、払戻し総額、預金の運用状況、支払準備金制度を設ける場合にあっては、以上のほか、準備金の種類、準備金の額等を報告すべきであること。

i 周知と記録の作成

(a) 労働者に周知すべき議事概要の内容には、少なくとも、開催日時、議題、出席者職氏名、各出席者の発言要旨、決定された事項を含むこと。

(b) 記録として作成すべき重要な議事の内容には、少なくとも開催日時、議題、出席者職氏名、各出席者の発言要旨のうち重要なもの、決定された事項、預金保全委員会に対し報告された労働者の預金の管理に関する状況の概要を含むこと。

(c) 議事録の保存について電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により保存する場合には、以下のいずれをも満たしていること。

(ⅰ) 電気機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により作成された預金保全委員会における議事で重要なものに係る記録を有し、かつ、画面に表示し、及び印字するための装置を備えつける等の措置を講じていること。

(ⅱ) 労働基準監督官の立入り時等預金保全委員会の記録の検査が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、その内容について報告し得るシステムとなっていること。

j その他

預金保全委員会の運営については、上記に掲げたc、d、g、h及びiを遵守することが必須のものであるため、これらの事項を踏まえた適正な運営が確実に行われるよう強力に指導すること。

第三 協定の届出

貯蓄金管理制度は、その性格上、企業全体で統一的に行われるのが通常であり、したがって、労働者の預金の受入れに係る協定の内容は、通常の場合、同一企業に属する各事業場においては同一内容の協定が締結されるものと考えられる。このような場合においても、協定の締結単位は各事業場であり、また、その届出も各事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に対して行わなければならないところであるが、これが取扱いについては次に定めるところによること。

一 当該企業の本社の所在地を管轄する労働基準監督署長は、本社に係る協定の届出書の提出があったときは、併せて、本社以外の他のすべての事業場に係る協定の届出書についても、その提出を求め、当該企業に属する各事業場に係る協定のすべての届出書について法令及び通達に適合するか否かの点検及び措置を行うことができること。

二 上記一の点検及び措置を行った労働基準監督署長は、本社に係る協定の届出書を受理するとともに、他の事業場に係る協定の届出書については、これに「確認済」であることを明示した上、すみやかにこれを返戻すること。

三 上記二により「確認済」であることを明示された届出書については、当該企業の他の事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長は、その内容の確認を要せずに受理して差し支えないこと。

四 規則様式第一号関係について

(一) 本様式の記載事項につき、協定の写を添付する場合、必要事項を協定から抜枠添付する場合等、その内容が明らかであるときは、これをもって様式の所要事項記載にかえることは差し支えないこと。

(二) 本様式中、「預金の運用の方法」の欄には、貯蓄金の保全措置が預金保全委員会の設置である場合において、労働者の預け入れた預金の運用につき制限を付するときにその方法を記入すれば足り、預金の運用につき制限を付さない場合には記入の必要はないこと。

(三) 本様式中、「その他の方法による貯蓄金管理の場合」の「管理の方法」は、いわゆる通帳保管等の方法をいうものであること。

第四 預金管理状況報告

一 規則第五七条第三項により毎年定期に預金の管理状況を報告しなければならない事業主は、協定に基づき労働者の預金の受入れを行う事業主であって、いわゆる通帳保管のみを行う場合には適用がないこと。

二 企業を単位とする預金の管理の状況に関する報告(以下「預金管理状況報告」という。)の取扱いについては、次に定めるところによることとすること。

(一) 規則第五七条第三項の規定による預金管理状況報告については、労働者の預金の受入れを行う事業場の使用者が当該事業場の預金の管理の状況につき記入し、報告すべきものであるが、同一企業に属する各事業場(以下「支社等」という。)の預金が本社等特定の事業場(以下「本社」という。)において集中管理される等の場合にあっては、支社等の預金の管理状況について記入することが困難な場合もあることにかんがみ、預金管理状況報告は、当該事業場を管轄する労働基準監督署長に対して行うべきであることは当然であるが、その内容については、次のすべての要件を具備している限り、当該事業場に関する状況とせず、当該事業場が属する企業全体に関する状況とすることができるものとすること。

イ 協定の内容が同一企業に属する各事業場において同一であること。

ロ 預金元帳が本社において集中管理されていること。

ハ 保全措置が同一企業に属する各事業場の預金につき本社において一括講ぜられていること。

(二) 預金管理状況の内容を企業全体に関する状況とする場合においても、本社及び支社等はそれぞれの事業場を管轄する労働基準監督署長に対して報告を行わなければならないが、同一の労働基準監督署管内に二つ以上の事業場があり当該企業内の組織上、各事業場の長より上位の使用者が、とりまとめて当該労働基準監督署長に報告を行う場合においては、一の事業場の預金管理状況の内容を様式第二四号に記載し、他の事業場の内容については別添の続紙に記載しこれに添付して報告することも差し支えないものであること。

三 様式第二四号については、任意の様式を認めないこととしているため、法令で定められた様式で報告させること。

また、続紙については、別添のOCIR様式を必要に応じ事業場に交付し、これにより、報告するよう指導すること。

(別表)本通達の施行に伴い廃止する通達

一 昭和四一年三月二三日付け基発第二五一号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(いわゆる基本通達)

二 昭和四一年四月二〇日付け基発第三九四号「貯蓄金管理の取扱いについて」(昭和四二年一二月二二日付け基発第一一〇三号「社内預金に関する行政指導について」により改正)(いわゆる細部取扱通達)

三 昭和四一年七月二一日付け基発第七六〇号「企業を単位とする預金管理状況報告の取扱いについて」

四 昭和五一年六月二五日付け基発第四九〇号「いわゆる社内預金の利率の上限規制について」