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○労働基準法の一部改正の施行について

(平成六年一月四日)

(基発第一号)

(各都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長)

労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律(平成五年法律第七九号)の施行については、「労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律について」(平成五年七月一日労働省発基第六〇号)により労働事務次官から貴職あてその趣旨を通達されたところであり、同法により改正された労働基準法(以下「法」という。)が本年四月一日から施行されるところとなっているところ、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成六年政令第二号)、労働基準法第三七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成六年政令第五号)及び労働基準法施行規則の一部を改正する省令(平成六年労働省令第一号。以下、この省令により改正された労働基準法施行規則を「則」という。)が本日公布され、法と併せて本年四月一日から施行されることとされたところである。これらの内容の概要は下記のとおりであるので、了知の上、取扱いに万全を期されたい。

1 法定労働時間

(1) 削除

(2) 削除

(3) 法定労働時間の適用に当たっての経過措置

イ 削除

ロ 法定労働時間について、平成九年三月三一日までの猶予措置が適用されている事業については、週四〇時間の法定労働時間は、平成九年三月三一日を含む一週間が経過した時点から、また、使用者が一箇月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制又は一年単位の変形労働時間制の下で労働者を労働させている場合には、平成九年三月三一日を含む変形期間又は清算期間を経過した時点から、それぞれ適用されるものであること。

2 変形労働時間制

(1) 一年単位の変形労働時間制

イ 趣旨

年間単位で休日増を図ることが所定労働時間の短縮のために有効であり、そのためには年間単位の労働時間管理をすることができるような制度を普及させる必要があることから、年間単位の休日増による労働時間短縮が可能となるよう変形期間を三箇月から最長一年まで延長したものであり、変形期間を平均して週四〇時間労働制を実現し、適正かつ計画的な時間管理をすることで、労働時間の短縮を図るものであること。

また、あらかじめ業務の繁閑を見込んで、それに合わせて労働時間を配分するものであるので、突発的なものを除き、恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度であること。

なお、その運用に当たっては、後述の内容に従い適切に労働時間管理が行われるように、的確に指導すること。

また、一年単位の変形労働時間制の導入事業場に関する制度の導入及び運用についての指導の準拠となる留意事項について「一年単位の変形労働時間制についてのガイドライン」(平成六年三月一一日付け基発第一三二号)を別途通達しているところであるので、指導等に活用すること。

ロ 対象労働者の範囲

一年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定において、当該変形労働時間制の適用を受ける対象労働者の範囲を定めることとされているが、この対象労働者は、できる限り明確に定める必要があること、また、変形期間の最初の日から末日までの期間使用する労働者に限られることから、期間雇用者であって変形期間途中の退職が明らかである者が含まれないことはもとより、契約期間の定めのない者であっても変形期間中に定年を迎える者は含まれず、配置転換等による変形期間途中からの適用もできないものであること。

ハ 労働時間の特定

一年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を具体的に定めることを要し、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、これに該当しないものであること。

したがって、例えば貸切観光バス等のように、業務の性質上一日八時間、週四〇時間を超えて労働させる日又は週の労働時間をあらかじめ定めておくことが困難な業務又は労使協定で定めた時間が業務の都合によって変更されることが通常行われるような業務については、一年単位の変形労働時間制を適用する余地はないものであること。

また、変形期間が最長一年までとされたことから、その全期間の労働日ごとの労働時間の特定が困難な場合にも対応できるように、変形期間を三箇月以上の期間ごとに区分することができることとしたものであるが、その場合には、労使協定において、全期間の労働日を定めたうえで、当該区分した各期間のうち最初の期間については労働日ごとの労働期間を定めることとし、他の区分の期間については各期間における総労働時間をそれぞれ定め、総労働時間のみを定めた区分の期間については、その区分の期間の初日の少なくとも三〇日前に当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て、各期間における総労働時間の範囲内で労働日ごとの労働時間を書面で特定するものであること。

なお、法第八九条第一項は、就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているので、一年単位の変形労働時間制を採用する場合にも、就業規則において、変形時間における各日の始業及び就業の時刻を定める必要があること。ただし、三箇月以上の期間ごとに区分を設けた場合の最初の期間以外の期間については、就業規則においては、最初の期間以外の期間における勤務の種類ごとの始業・終業時刻及び当該勤務の組合せについての考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定め、これにしたがって各日ごとの勤務割は、区分した各期間の開始三〇日前までに具体的に特定することで足りるものであること。

ニ 一日及び一週間の労働時間の限度並びに連続して労働させる日数の限度

一年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定で定める労働日及び労働日ごとの労働時間の限度は、原則として、変形期間が三箇月以内の場合は、それぞれ一日一〇時間、週五二時間以内とし、変形期間が三箇月を超える場合は、それぞれ一日九時間、週四八時間の以内にしなければならず、また、労使協定で定める労働日は一週間に一日の休日が確保できるようにしなければならないものであること。

なお、その際、本変形労働時間制は、年間単位の休日管理により休日増を図ることを目的とすることから、その採用に当たっては、採用前と比較して休日日数を増加して設定することが望ましいこと。

また、連続労働日数は注文上最長一二日間まで認められるが、これを常態とすることは連続労働日数を制限することとした趣旨に必ずしもそぐわないものであること。

ホ 変形期間における所定労働時間の総枠

一年単位の変形労働時間制は、週四〇時間労働制を前提とする制度であり、変形期間を平均し一週間の労働時間が四〇時間を超えない定めをすることが要件とされているが、その趣旨は、変形期間における労働時間の合計を次の式によって計算される時間の範囲内とすることが必要であるということであること。

ヘ 削除

ト 時間外労働となる時間(法第三七条の規定の適用を受ける時間)

一年単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間であること。

① 一日については、労使協定により八時間を超える労働時間を定めた日はその時間を超えて、それ以外の日は八時間を超えて労働させた時間

② 一週間については、労使協定により四〇時間を超える労働時間を定めた週はその時間を超えて、それ以外の週は四〇時間を超えて労働させた時間(①で時間外労働となる時間を除く。)

③ 変形期間の全期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(①又は②で時間外労働となる時間を除く。)

チ 労使協定の届出

一年単位の変形労働時間制に関する労使協定は、則様子第四号により所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

また、一年単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるもの又は労使協定において、変形期間の起算日を明らかにすることとされているものであること。

今般、労使協定の記載事項として、①対象労働者の範囲、②有効期間の定め、が追加されたことから、労使協定の受理に当たっては、①については、変形期間中に定年を迎える者や期間雇用者であって、変形期間途中の退職が明らかである者等が含まれていないことを確認すること。また、②については、本変形制は長期にわたる協定となる可能性があり、不適切な変形制が運用されることを防ぐため、その期間も一年程度とすることが望ましいが、三年程度以内のものであれば受理して差し支えないものであること。

解雇、任意退職、配置転換等により、変形期間途中に対象労働者に該当しなくなった場合において、これが生じた時期によっては、全期間就労した労働者等との均衡上賃金の清算(再計算)が必要となる場合が生じることも考えられるが、この場合、労使協定の法定の記載事項とはなっていないが、労使間において適切に清算が行われるよう、賃金の清算の事由及び方法について労使協定において事前に定めておくことが望ましいものであること。

(2) 特別の配慮を要する者に対する配慮

使用者は、一箇月単位の変形労働時間制及び一週間単位の非定型的変形労働時間制と同様、一年単位の変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をするように努めることとされていること(則第一二条の六)。その場合に、法第六七条の規定は、あくまでも最低基準を定めたものであるので、法第六六条第一項の規定による請求をせずに変形労働時間制の下で労働し、一日の所定労働時間が八時間を超える場合には、具体的状況に応じ法定以上の育児時間を与えることが望ましいものであること。

3 割増賃金率

(1) 趣旨

時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の支払いは、通常の勤務時間とは違うこれら特別の労働に対する労働者への補償を行うとともに、使用者に対し、経済的負担を課すことによってこれらの労働を抑制することを目的とするものであるが、割増率については、今後、実態をみきわめつつ時間外労働、休日労働に対する労働者の意識変化等に適切に対応して、その段階的な引上げを図っていく必要があることから、その率を法でなく政令で定めることとしたものであること。休日労働については、週休二日制普及の流れの中で週一日の法定休日確保の重要制等にかんがみ、今回、その引上げを図ったものであること。

(2) 具体的な率

時間外労働に対する割増率は現行どおり二割五分以上の率とし、休日労働については三割五分以上の率とするものであること。

(3) 具体的対応

休日労働に対する割増賃金率が今回三割五分以上の率に引き上げられたところであるが、この趣旨は法第三五条に規定する週一回又は四週間四日の法定休日に労働させたときの割増賃金率を規定したものであること。

法第三五条に規定する週一回又は四週間四日を超える日数の休日を設定している事業場において、今回の改正に伴い、休日について労働したときに一律に三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを定める場合も考えられ、また、休日のうち、週一回又は四週間四日の休日について労働をしたときには三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払い、その他の休日は三割五分未満の率で計算した割増賃金を支払う等の定めをする場合も考えられるが、後者の場合には、労働条件を明示する観点から、就業規則その他これに準ずるものにより三割五分以上の割増賃金率の対象となる休日が明確になっていることが望ましいこと。

この場合、休日のうち、最後の一回又は四日について三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを就業規則その他これに準ずるもので定めることは上記休日を明確にしていることと認められるものであること。

また、上記のように三割五分以上の割増賃金率の対象となる休日を定めた事業場において、週一回又は四週間四日の休日が確保されないこととなった場合に、三割五分以上の率で計算した割増賃金を支払うと定めた休日に当該割増賃金が実際に支払われており、これが支払われた日数と確保された休日の合計日数が週一回又は四週間四日以上である場合には、法第三七条第一項違反として取り扱わないものであること。

なお、法定休日に労働させる場合には、休日労働に関する法第三六条の規定に基づく協定の締結及び届出がなされている必要があることは言うまでもないこと。

(4) 時間外又は休日労働が深夜に及んだ場合の取扱い

時間外又は休日労働が深夜に及んだ場合には、それぞれ五割以上の率、六割以上の率となるものであること。

4 裁量労働に関するみなし労働時間制の対象業務

(1) 趣旨

昭和六三年の法改正により創設されたものであり、その対象業務については、従来、研究開発の業務その他の業務であって、当該業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこととするものとして労使の協定で定める業務としていたが、今日の経済のサービス化・情報化等の進展、また、業務の効率化から裁量労働の対象業務に対する関心の高まり等にかんがみ、今後、その運用の適正化を図る観点から、具体的な業務を省令で定めるものとし、その中から当該事業場において労働者に就かせる業務を労使の協定で定めることとしたものであること。

(2) 対象業務

対象業務は昭和六三年一月一日及び基発第一号及び婦発第一号「改正労働基準法の施行について」記3〓に規定した例示の業務を基本としつつ、以下のとおりの範囲とするものであること。

① 則第二四条の二第六項第一号の業務「新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務」

「新商品若しくは新技術の研究開発」とは、材料、製品、生産・製造工程等の開発又は技術的改善等をいうものであること。

② 則第二四条の二第六項第二号の業務「情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務」

「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。

「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、(ⅰ)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、(ⅱ)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(ⅲ)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれないものであること。

③ 則第二四条の二第六項第三号の業務「新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和二五年法律第一三二号)第二条第二八号に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務」

「新聞又は出版の事業」には、新聞、定期刊行物にニュースを提供するニュース供給業も含まれるものであること。なお、新聞又は出版の事業以外の事業で記事の取材又は編集の業務に従事する者、例えば社内報の編集者等は含まれないものであること。

「取材又は編集の業務」とは、記事の内容に関する企画及び立案、記事の取材、原稿の作成、割付け、レイアウト・内容のチェック等の業務をいうものであること。記事の取材に当たって、記者に同行するカメラマンの業務や、単なる校正の業務は含まれないものであること。

「放送番組の制作のための取材の業務」とは、報道番組、ドキュメンタリー等の制作のために行われる取材、インタビュー等の業務をいうものであること。取材に同行するカメラマンや技術スタッフは含まれないものであること。

「編集の業務」とは、上記の取材を要する番組における取材対象の選定等の企画及び取材によって得られたものを番組に構成するための内容的な編集をいうものであり、音量調整、フィルムの作成等技術的編集は含まれないものであること。

④ 則第二四条の二第六項第四号の業務「衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務」

「広告」には、商品のパッケージ、ディスプレイ等広く宣伝を目的としたものも含まれるものであること。

考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者は含まれないものであること。

⑤ 則第二四条の二第六項第五号の業務「放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務」

「放送番組、映画等の制作」には、ビデオ、レコード、音楽テープ等の制作及び演劇、コンサート、ショー等の興行等が含まれるものであること。

「プロデューサーの業務」とは、制作全般について責任を持ち、企画の決定、対外折衝、スタッフの選定、予算の管理等を総括して行うことをいうものであること。

「ディレクターの業務」とは、スタッフを統率し、指揮し、現場の制作作業の統括を行うことをいうものであること。

⑥ 則第二四条の二第六項第六号の業務「前各号の外、中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する業務」

本号の規定に基づき労働基準法施行規則第二四条の二第六項第六号の規定に基づき労働大臣の指定する業務を定める告示(平成九年労働省告示第八号)が定められたものであること。

5 年次有給休暇

(1) 初年度における継続勤務要件の短縮

イ 趣旨

年次有給休暇の継続勤務要件は法制定当初から現在にいたるまで一年間とされていたが、若年労働者の年次有給休暇に対する希望が強いこと、労働力の流動化が進展していること等をかんがみ、初年度における継続勤務要件を一年から六箇月に短縮したものであること。これに伴い、六箇月以後の有給休暇についてもそれぞれ短縮され、一年六箇月、二年六箇月……一〇年六箇月にそれぞれ一一日、一二日……二〇日が付与されるものであること。

ロ 新しい継続勤務要件の改正の適用に当たっての経過措置

新しい継続勤務要件の改正規定は、六箇月を超えて継続勤務する日が平成六年四月一日以後である労働者について適用し、それ以前に六箇月を超えて継続勤務している労働者(平成五年九月三〇日以前に雇い入れられた者)については、改正前の規定を適用することとしたものであること。

また、改正規定の適用を受ける労働者のうち、四月一日前に雇い入れられた者については、改正前の規定の適用者との均衡を考慮して、一律四月一日に雇い入れられたものとして取り扱うこととしたものであること。

(2) 削除

(3) 年次有給休暇の斉一的取扱い

(1)の年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう。)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。

イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である八割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。

ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、四月一日入社した者に入社時に一〇日、一年後である翌年の四月一日に一一日付与とする場合、また、分割付与として、四月一日入社した者に入社時に五日、法定の基準日である六箇月後の一〇月一日に五日付与し、次年度の基準日は本来翌年一〇月一日であるが、初年度に一〇日のうち五日分について六箇月繰り上げたことから同様に六箇月繰り上げ、四月一日に一一日付与する場合などが考えられること。)

(4) 年次有給休暇の付与要件である八割出勤要件

法第三九条第一項は六箇月継続勤務に対する年次有給休暇の付与を規定し、その際の当該期間における八割出勤を要件としている。一方、同条第二項においては一年六箇月以上継続勤務に対する年次有給休暇の付与を規定するとともに、継続勤務年数に応じた加算日数を規定しているものであり、「(当該労働者が全労働日の八割以上出勤した一年に限る。)」との規定は当該年に有給休暇を付与するか否かを判断することを明示的に規定するものであって、加算要件は意味せず、従来(昭和二二年一一月二六日基発第三八九号)と同様であること。例えば、六箇月目八割以上、六箇月から一年六箇月に八割未満、一年六箇月から二年六箇月に八割以上出勤者に対しては、二年六箇月継続勤務で一二日の有給休暇を付与するものであること。

(5) 育児休業をした期間の取扱い

従来、育児休業等に関する法律(平成三年法律第七六号)第二条第一項に規定する育児休業をした期間については、年次有給休暇の算定基礎となる全労働日に含まないとしてきたが、今般の法改正において、当該期間については出勤率の算定上出勤したものとみなすこととしたものであること。

6 一〇人未満の商業・サービス業の特例

イ 法第八条第八号(商業)、第一〇号(映画・演劇業。映画の製作の事業を除く。)、第一三号(保健衛生業)及び第一四号(接客娯楽業)の事業のうち常時一〇人未満の労働者を使用する事業については、労働時間の特例として、一週間に四六時間、一日について八時間まで労働させることができることとしたものであること。

また、当該特例の下に、一箇月単位の変形労働時間制及びフレックスタイム制を採用することはできるが、一年単位の変形労働時間制及び一週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合には、当該特例の適用はないものであること。

ロ 削除

7 教育職員の特例

(1) 趣旨

教育職員については、学校週五日制の進捗状況とその勤務時間の取扱が密接な関係にあり、今後とも学校週五日制の動向をみていく必要があることから、すべての土曜日を学校の休業日とする学校週五日制が実施されるまでの間、労働時間の特例を置くものであること。

(2) 内容

教育職員については、当分の間、一週間に四四時間、一日について八時間まで労働させることができるものであること。

また、当該特例の下に、一箇月単位の変形労働時間制を採用することができるものであること。なお、妊産婦(妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子)である教育職員が請求した場合には、法第六六条第一項の趣旨にかんがみ、一週間について四四時間、一日について八時間を超えて労働させてはならないものであること。

「教育職員」とは、学校教育法(昭和二二年法律第二六号)第一条に規定する小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園に勤務する校長(園長を含む。)、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、講師、実習助手及び寮母をいうものであること。

8 林業の労働時間

今回の改正により、労働基準法第八条第六号のうち林業については労働時間、休憩、休日の規定が適用となること。

9 年少者の労働時間

年少者については一箇月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、一年単位の変形労働時間制及び一週間の非定型的変形労働時間制の規定は適用されないが、満一五歳以上満一八歳に満たない者についても四〇時間制に向けた猶予対象事業における各種の週休二日制に対応する必要性があること、一年単位の変形労働時間制は年間単位の休日管理による休日増を図る趣旨であり、当該年少者においても労働条件の低下を来さないことから、これらの者について、一週間について四八時間、一日について八時間を超えない範囲内において一箇月単位の変形労働時間制(法第三二条の二)又は一年単位の変形労働時間制(法第三二条の四)の規定の例により労働させることができるものであること。その際、一年単位の変形労働時間制の適用を行う場合は通常の労働者の場合と同様に労使協定の締結が必要であることに留意すること。

10 報告の義務

(1) 趣旨

改正前の法第一一〇条は、行政官庁からの個別の要求によらない一般的な報告義務を労働省令によって使用者等に課す規定としては文言が不明確であったため、行政官庁及び労働基準監督官が使用者等に必要な報告をさせ、又は出頭を命ずる根拠を法第一〇四条の二として明確に規定したものであること。

(2) 改正の内容

イ 法第一一〇条を削除するとともに、法第一〇四条の二を新設して行政官庁及び労働基準監督官の使用者又は労働者に対する、報告をさせ、又は出頭を命ずる権限を定めたものであること。

これに併せて、則第五八条により行政官庁が個別に使用者等に対して報告又は出頭を命ずる場合に理由又は聴取しようとする事項を通知しなければならないこととしたこと。なお、これは、則第五七条により使用者に報告義務が課された事項について報告を求める場合についてまで、理由等を通知しなければならないとしたものではないこと。

ロ 則第五七条において、適用事業報告、事業の附属寄宿舎労働者死傷病報告等に加えて預金管理状況報告を規定したこと。

ハ 預金管理状況報告について、使用者の利便性を考慮し、今回、様式第二四号中、預金の保全の状況欄を改正したこと(別添参照―略)。

11 罰則

罰金額について、物価上昇及び他の法律の罰金額との均衡から引き上げを行ったものであること。