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○労働基準法施行規則の一部を改正する省令の施行について

(昭和五三年一一月二〇日)

(基発第六四二号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

労働基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和五三年労働省令第四三号。以下「改正省令」という。)は昭和五三年一一月一〇日公布され、昭和五四年一月一日より施行されることとなつた。改正省令の内容は、時間外労働又は休日労働に関する協定の届出様式の一部改正及び適用事業報告の一部廃止であるが、その施行については、下記事項に留意の上、遺憾なきを期されたい。

第一 時間外労働又は休日労働に関する協定の届出様式の一部改正

一 改正の経緯

労働時間対策の推進については、基本的な考え方が労働事務次官通達(昭和五三年五月二五日付け発基第五六号)によつて示され、また、具体的な進め方は、先に昭和五三年六月二三日付け基発第三五五号通達「労働時間短縮の行政指導について」によつて示したところである。

今般の様式の改正は、このような労働時間対策の一環として、労働基準法(以下「法」という。)第三六条の規定に基づき、労使の間で締結される協定(以下「三六協定」という。)の適正化に資するために行われたものであり、三六協定に対する労使の注意を喚起し、労使の自主的努力により三六協定が適正化されることをねらいとするものである。すなわち、一面三六協定に対する認識を高めることにより全体としての時間外労働及び休日労働に対する関心を呼び起こし、他面、個々の不適格な三六協定については、その是正を図ることによつて過長な時間外労働の削減を図ろうとするものである。

二 改正の趣旨及び内容

三六協定の届出の様式(労働基準法施行規則様式第九号。以下「様式第九号」という。)が別紙のとおり改められたこと(様式第九号関係)。

(一) 時間外労働の協定時間の欄の改正

イ 趣旨

三六協定において、一週間、四週間、一月その他の一定の期間について、法第三六条の規定により延長することができる労働時間の限度(以下「一定期間の延長時間の限度」という。)に関して協定をする例がかなりみられるが、このような協定をした場合、改正省令による改正前の様式第九号(以下「旧様式」という。)には、これに対応する記載欄が設けられていなかつたため、このような一定期間の延長時間の限度を定める三六協定に違反する時間外労働の規制に欠ける面があつた。しかし、本来時間外労働の限度を一定期間当たりで定めることは時間外労働の実効的な規制の上で必要と考えられるので、このような三六協定が締結された場合の時間外労働に対する監督に資するとともに、あわせてこの協定方式が一般化することを目的として、今回の改正が行われたものである。

ロ 内容

旧様式の「八時間を超える延長時間」の欄が「一日について延長することができる労働時間」の欄に改められ、新たに「一定期間について延長することができる労働時間」の欄が設けられたこと。

ハ 留意点

(イ) 旧様式の「八時間を超える延長時間」の欄が改められたのは、法第三二条第二項のいわゆる変形労働時間制等を考慮して表現を正確にするためであること。すなわち、本欄には、法第三二条又は第四〇条の規定により労働させることができる最長の労働時間(原則は、八時間)を超えて延長することができる一日当たりの労働時間の限度を記入することとなること(改正省令による改正後の様式第九号(以下「新様式」という。)記載心得の二)。

(ロ) 新様式の「一定期間について延長することができる労働時間」の欄には、一定期間の延長時間の限度に関して協定をした場合に、当該期間及び限度となる労働時間を記入することとなること(新様式記載心得の三)。この場合、例えば一週間六時間、二週間一〇時間、かつ、一月二〇時間と協定した場合には、これらを全て本欄に記入しなければならないこと。

(ハ) 一定期間の延長時間の限度について協定をした場合に、これに違反して時間外労働をさせれば、当然法違反となること。

(ニ) 一定期間の延長時間の限度について協定をする場合には、当該一定期間の起算日について協定上明確にされることが望ましいこと。

(二) 協定の労働者側の締結当事者に係る欄の改正

イ 趣旨

三六協定が有効に成立するためには、協定の締結当事者が適格性を有しなければならない。協定の労働者側の締結当事者が法第三六条の規定により労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)である場合には、その適格性に疑問のある事例が少なからずみられることにかんがみ、監督機関としてこのような観点から協定の有効性をは握し、また、締結当事者の適正化によつて、真に労働者を代表する者と使用者との合意により自主的に時間外労働・休日労働の適正化が行われることを目的として、今回の改正が行われたものである。

ロ 内容

旧様式の「協定をした労働者代表」の欄が、「協定の当事者である労働組合の名称又は労働者の過半数を代表する者の職氏名」の欄に改められたこと。また、新たに「協定の当事者(労働者の過半数を代表する者の場合)の選出方法」の欄が設けられたこと。

ハ 留意点

(イ) 今回の改正により新たに様式第九号に記入しなければならないこととされたのは、過半数代表者の「職」及び「選出方法」であること。

(ロ) 過半数代表者の「職」としては、当該事業における職制上の地位を記入することとなること。ただし、過半数代表者が当該事業場の労働組合(過半数の労働者を組織していないもの)の役職者である場合には、当該役職を記入しても差し支えないこと。

(ハ) 事業場全体の労働時間等労働条件の計画・管理に関する権限を有する者は、たとえ協定の使用者側の当事者でなくても、実質的にみれば三六協定の締結に関連する事項について使用者側の立場を代表する地位にあるので、過半数代表者の適格性を有しないものであること。

(ニ) 過半数代表者の選出方法については、本来、使用者としても協定の締結に当たつて労働者側の代表者の適格性を確認するため、これをは握する必要があるものであり、「協定の当事者(労働者の過半数を代表する者の場合)の選出方法」の欄には、その際は握した選出方法を記入することとなること。

(ホ) 過半数代表者の選出方法としては選挙その他の方法があるが、具体的には次の二つの要件をみたす選出方法を適法と解すること。

① 労働者代表予定者(候補者)が労働者の過半数を代表して三六協定を締結することの適否について判断する機会が、当該事業場の労働者に与えられていること。

② 当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる手続がとられていること。この場合、必ずしも投票による方法だけでなく、挙手・回覧等による方法でもよいと解されること。また、例えば、いくつかの労働組合の話し合いとか、各職場の信任手続を事業場全体で積み上げる方式その他の間接的な選出手続も、選出された者が当該事業場の過半数の労働者の支持を得ていると認められる限りにおいて、適法な選出手続と解して差し支えないこと。

(ヘ) 「協定の当事者(労働者の過半数を代表する者の場合)の選出方法」の欄の記載例としては次のようなものが考えられること。

① 投票による選挙

② 挙手による選挙

③ 投票による信任

④ 挙手による信任

⑤ 回覧による信任

⑥ 二労働組合の話し合い(二労働組合の組合員の合計は、全労働者の過半数)

⑦ 各職場ごとに職場の代表者を選出し、これらの者の過半数の賛成を得て選出

(三) その他の改正

イ 趣旨

今般の改正の機会に、従来不明確であつた事項の明確化等のために整理が行われたものである。

ロ 内容及び留意点

(イ) 法律上時間外労働又は休日労働について制約を受ける女子又は年少者について誤つて三六協定が締結されないように、「労働者数」の欄に注意書きが設けられたこと。

(ロ) 旧様式の「始業及び終業の時刻」の欄が、「労働させることができる休日並びに始業及び終業の時刻」の欄に改められたこと。

これは、旧様式では「労働させることができる休日」を記入すべき欄が不明確であつたので、これを明確にしたものであること。

「労働させることができる休日」については、法第三五条の規定による休日のうち労働させることができる日を記入すること(新様式記載心得の四)。また、一定期間について労働させることができる休日の日数(例えば、一月のうち二日)で記入しても差し支えないこと。

「始業及び終業の時刻」については、当該休日において労働させることができる時間数の限度を記入しても差し支えないこと。

(ハ) 三六協定に係る業務のうちに法第三六条ただし書の健康上特に有害な業務(以下「有害業務」という。)がある場合には、「業務の種類」の欄に当該業務と他の業務を区別して記入することとされたこと(新様式記載心得の一)。

これは、有害業務については時間外労働等の制限がある趣旨を考慮したものであること。

なお、三六協定上は有害業務と他の業務を区別せずに協定した場合においても、様式第九号による届出の際には区別して記入しなければならないこと。

(ニ) 「期間」の欄には、時間外労働又は休日労働をさせることができる日の属する期間を記入することが明確にされたこと(新様式記載心得の五)。

協定の有効期間中で時間外労働又は休日労働をさせることができる期間について特に制限を設けた場合(例えば、一月一日から三月三一日までを有効期間とする三六協定において、休日労働は三月一日から三月三一日までの間に限つて行わせることができる旨を協定した場合)には、「期間」の欄には、協定の有効期間ではなく、当該時間外労働又は休日労働を行わせることができる期間を記入することとなること。

なお、様式第九号の改正に伴い、施行規則の規定の形式的整備も行われたこと(施行規則第一六条第一項関係)。

三 その他の留意点

(一) 施行規則第一六条及び様式第九号は、三六協定に関する最小限の必要協定事項又は記載事項を定めているものであり、これら以外の事項について協定することができない趣旨ではないこと。したがつて、三六協定の内容は、必要協定事項を具備している限り、労使が自由に定めることができるものであり、例えば「通常の週は、週何時間以内、ただし月の第四週については週何時間以内」というように、その事業場の実態に応じたきめの細かい協定を結ぶことができること。なお、このような様式の記載事項以外の協定事業がある場合には、様式の欄外にその内容を記載する等の方法により届出が行われることが望ましいこと。

(二) 施行規則第一七条第一項の規定により、法第三六条の届出は様式第九号によつて行えば足り、必ずしも三六協定の協定書そのものを提出する必要はないが、当該協定書は当該事業場に保存しておく必要があること。また、三六協定を書面で結ばずに様式第九号のみを届け出たとしても、時間外労働等を行わせることができないことはいうまでもないこと。

なお、様式第九号に労働者代表の押印等を加えることにより、これを三六協定の協定書とすることは差し支えなく、また、これを届け出ることも差し支えないが、この場合には、当該協定書の写しを当該事業場に保存しておく必要があること。

(三) 昭和四六年九月二七日付け基発第六六五号通達「労働基準法第三六条の時間外・休日労働に関する労使協定制度の運用の適正化とモデル三六協定の利用の促進について」によるモデル三六協定については、各局の実情に応じ、三六協定の適正化の目的に資するために必要である場合には、指導に利用されたいこと。

第二 適用事業報告の一部廃止

一 改正の経緯

国の許認可等の整理合理化については、かねてから行政簡素化の観点から進められているところであるが、労働基準法関係の許認可等に関しては、施行規則第五八条の規定による適用事業報告を廃止する方向で検討を進め、昨年夏には各局の意見も聴取し、廃止してもおおむね問題はないとの結論に達したため、本改正が行われたものである。

二 改正の内容

(一) 使用者が毎年報告しなければならないこととされていた適用事業報告が廃止されたこと(施行規則第五八条関係)。なお、施行規則第五七条第一項第一号の規定による適用事業報告については従来通りであること。

(二) 施行規則第五八条の規定による報告の廃止に伴い、様式第二三号の二が整備されたこと(施行規則様式第二三号の二関係)。

三 留意点

毎年提出すべき適用事業報告は廃止されたが、法の施行に関して必要な場合には、法第一一〇条の規定に基づき報告を求めることができるので、局署の実情に応じ利用して差し支えないこと。

第三 施行期日及び経過措置

一 施行期日

(一) 改正省令は、昭和五四年一月一日から施行されること(改正省令附則第一項関係)。

(二) 様式第九号に関して、改正省令は、施行期日以後の届出について適用されること。

協定の締結が施行期日前であつても、届出が施行期日以後であれば、新様式によらなければならないこと。また、協定の有効期間の開始日が施行期日以後であつても、届出が施行期日前であれば、旧様式によつて差し支えないこと。

二 経過措置

三六協定の更新に際しては、施行規則第一七条第二項の規定により、更新協定の届出によつて様式第九号による届出に代えることができるが、施行期日以後の最初の届出については様式第九号により届出なければならないこと(改正省令附則第二項関係)。

(別紙) 新様式第9号

様式第9号

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