アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令の施行について

(昭和五〇年八月二八日)

(基発第五〇九号)

(各都道府県労働基準局長あて労働者労働基準局長通達)

労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令(昭和五〇年労働省令第二三号。以下「改正省令」という。)が、昭和五〇年八月二七日に公布され、同年九月一日から施行されることとなつたので、下記事項に留意のうえ、事務処理に遺漏なきを期せられたい。

一 改正の趣旨

障害等級表については、かねてから障害等級専門家会議により全般にわたる検討を行つてきたところであるが、本年二月、当面必要な措置として、聴力障害・胸腹部臓器障害等一部の障害について現行の障害等級表を改めるべき旨の報告書が提出されたので、この報告書の結論に従つて、今回、労働基準法施行規則(昭和二二年厚生省令第二三号)別表第二「身体障害等級表」及び労働者災害補償保険法施行規則(昭和三〇年労働省令第二二号)別表「障害等級表」を改正することとしたものである。

二 改正の内容

労働基準法施行規則別表第二「身体障害等級表」(以下「身体障害等級表」という。)及び労働者災害補償保険法施行規則別表「障害等級表」(以下「障害等級表」という。)の身体障害の欄の一部が、それぞれ次のとおり改正された(改正省令第一条及び第二条)。

(一) 精神神経障害

イ 第三級と第七級の間に、新たに第五級として次の障害が加えられた。神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの(第一号の二。)

ロ 従来精神障害と神経障害については、それぞれ区分して取扱われていたが、これらが精神神経障害としてあわせて取扱われることとされた。

(二) 胸腹部臓器障害

第三級と第七級の間に、新たに第五級として次の障害が加えられた。胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの(第一号の三)

また、第七級と第一一級の間に、新たに第九級として次の障害が加えられた。

胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの(第七号の三)

(三) 聴力障害

イ 聴力障害に関しては、等級又は障害等級に応じ、次に掲げる障害が新たに加えられた。

(イ) 第六級

一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四〇センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの(第三号の二)

(ロ) 第七級

一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの(第二号の二)

(ハ) 第九級

両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの(第六号の二)

一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの(第六号の三)

(ニ) 第一〇級

両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの(第三号の二)

(ホ) 第一一級

両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの(第三号の三)

(ヘ) 第一四級

一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの(第二号の二)

ロ その他聴力障害に関する障害の表現について、所要の整備が行われた。

(四) 歯牙障害

第一〇級と第一二級の間に、新たに第一一級として次の障害が加えられた。

一〇歯以上に対し歯科補てつを加えたもの(第三号の二)

また、第一二級と第一四級の間に、新たに第一三級として次の障害が加えられた。

五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの(第三号の二)

三 経過措置

改正省令は昭和五〇年九月一日(以下「施行日」という。)から施行されるが、これに伴う経過措置については、次のとおり定められた。

(一) 労働基準法(昭和二二年法律第四九号)の規定により使用者が行うべき障害補償については、改正省令の施行前に負傷・疾病が治つた場合には、改正省令の施行後に行うこととなる場合においても、改正前の身体障害等級表による身体障害の等級に応ずる障害補償を行うこととなる(改正省令附則第二項)。

(二) 改正省令の施行前に支給すべき事由の生じた障害補償年金又は障害年金については、昭和五〇年九月分から改正後の障害等級表による身体障害の障害等級に応ずる障害補償年金又は障害年金に改定されることとなる。例えば、改正前の障害等級表によれば障害等級第七級に該当するが、改正後の障害等級表によれば障害等級第五級に該当することとなる障害を有する者に対しては、昭和五〇年九月分から障害等級第五級に応ずる障害補償年金又は障害年金が支給されることとなる(改正省令附則第三項)。

また、障害補償一時金又は障害一時金については、施行日前に負傷・疾病が治つた場合には、改正省令の施行後に支給されることとなる場合においても、改正前の障害等級表による身体障害の障害等級に応ずる障害補償一時金又は障害一時金が支給されることとなる(改正省令附則第三項)。

(三) 施行日前に負傷・疾病が治り身体に障害を存する場合の労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和四九年労働省令第三〇号)の規定による障害特別支給金の額については、改正省令の施行後に支給されることとなる場合においても、改正前の障害等級表による身体障害の障害等級に応ずる額となる(改正省令附則第六項)。

(四) 遺族補償年金又は遺族年金に特別加算を行うべき妻の廃疾の状態の有無に関しては、昭和五〇年九月分の遺族補償年金又は遺族年金から改正後の障害等級表により判断することとなる。例えば、改正省令の施行前から引き続き改正前の障害等級表によれば障害等級第七級に該当するが、改正後の障害等級表によれば障害等級第五級に該当する障害を有する妻の場合には、昭和五〇年九月分の年金から、給付基礎年額の一〇〇分の四五に相当する額が支給されることとなる(改正省令附則第四項)。

(五) 障害等級表の改正により、労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)第一六条の二第一項第四号(同法第二二条の

四第三項において準用する場合を含む。)に定める廃疾の状態にある遺族の範囲が拡大されることとなるが、労働者の死亡が改正省令の施行日前である場合には、労働者の死亡の時から改正省令の施行時まで引き続き(改正前の障害等級表による)廃疾の状態にある遺族以外の者は、改正省令の施行日以後も廃疾の状態にある遺族としないこととされた。例えば、改正前の障害等級表によれば障害等級第七級に該当するが、改正後の障害等級表によれば障害等級第五級に該当する障害を有する遺族は、労働者の死亡の時が施行日前であれば、今後とも廃疾の状態にある遺族とはされないこととなる(改正省令附則第五項)。

なお、改正省令の施行の際、廃疾の状態にある遺族(労働者の死亡の時から引き続き当該廃疾の状態にある者に限る。)に該当する者に関する施行の日以後の廃疾の状態の有無については、改正後の障害等級表により判断することとなる。

四 その他

今回の改正省令の施行に伴う障害等級の認定基準の改正については、別途通達する。

また、今回の改正省令の施行に伴い、現在障害補償年金、障害年金、遺族補償年金及び遺族年金を受給している者の障害の程度・廃疾の状態について見直しを行う必要があるが、これが事務処理については、別途指示する。