添付一覧
○労働関係調整法等の一部を改正する法律の施行等について
(昭和二七年八月一日)
(労発第一三三号)
(各都道府県知事あて労政局長通達)
標記については、昭和二七年八月一日附労働省発労第二五号をもつて別途労働事務次官から通牒したところであるが、これが細部の点については、左記により、施行上万遺漏なきを期せられたい。
記
一 労働組合法関係
(1) 労働組合の資格審査に関する第五条第一項の規定の改正により、労働委員会による労働争議のあつ旋、調停及び仲裁の手続に参与するための労働組合の資格審査は不要となつたわけであるが、不当労働行為の申立、法人登記及び労働協約の地域的拡張適用の申立の手続については、従前通り資格審査を必要とすることはいうまでもない。
労働争議のあつ旋、調停及び仲裁の手続に参与する場合の資格審査を不要としたのは、労働争議の早期解決を図り、公正な労働関係を樹立することを目的とするものであつて、第二条及び第五条第二項の規定に適合する所謂民主的労働組合の発達を助成することの必要なことはいうまでもないのであるから、今後とも労働組合の民主化については十分留意せられたい。
(2)
(イ) 不当労働行為に関する第七条の規定が改正され、従来の不当労働行為の外に、新たに第四号として労働者が労働委員会に対し不当労働行為の申立をしたこと若しくは中労委に再審査の申立をしたこと又は労働委員会が不当労働行為の調査、審問をし、若しくは労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、使用者がその労働者に対して解雇し、その他不利益な取扱をすることは不当労働行為となることになつたから、この点使用者に十分周知せしめられたい。
(ロ) 本号の不当労働行為もその基本的性格は、他の不当労働行為を同趣旨のものを含むのであるが、他方使用者のかかる行為を禁止するとともに労働委員会による不当労働行為の調査、審問及び労働争議の調整が有効且つ公正に行われることを保障する意義をもつものであるから、その点も留意の上、労働委員会の機能の十全な遂行も併せ期せられたい。
(ハ) 本号の不当労働行為については、調査、審問又は調整の際に発言し、又は証拠を提示したことを理由としてその労働者が解雇その他不利益取扱を受けた当該調査、審問又は調整を行つた労働委員会に対しても申立ができるからその点注意されたい(施行令第二七条第一項)。
なお、これに伴つて従来の労調法第四〇条(労働争議調整中の発言を理由とする不利益取扱の禁止)及び第四一条(第四〇条違反の罰則)は削除されたから念の為。
(3) 労働協約に関する第一四条の規定の改正により、労働協約の効力発生要件として必ずしも「署名」を要せず、「記名押印」をもつて足りることとなつたから注意されたい。
(4)
(イ) 労働協約の期間に関する第一五条は従来は労働協約は有効期間を定めた条項を含まなければならないことを規定しており、有効期間を定めた条項を含まない労働協約の効力について明らかでなかつたが、今回の改正により有効期間の定めがない労働協約も有効であることが明文上明らかにされるとともに、かかる協約については九〇日の予告により当事者のいずれか一方が解約できることとなつたのである。これは、有効期間の定のない労働協約も直ちに無効とはせず、有効とするとともに、当事者の意思に反して無期限に存続することができないこととして、その有効期間についての調整を図つたものである。しかしながら本来労働協約の締結に当つては、その有効期間を定め、適用関係を明確にすることが望ましいことはいうまでもない。労働協約締結の促進に当つてはその点十分留意の上指導されたい。なお、期間を定める場合には、三年をこえる期間を定めることはできないこととなり、三年をこえる有効期間を定めた労働協約は、三年の有効期間を定めたものとみなされることとなる。
(ロ) 有効期間の定めのない労働協約の解約の予告は、解約しようとする当事者が署名又は記名押印した文書によつて行うのでなければ効力を生じないから注意されたい。
(ハ) 改正第一五条第三項中「一定の期間を定める労働協約であつて、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間経過後も同様とする。」とあるのは、所謂自動延長規定のある労働協約であつて、本来の有効期間が経過して自動延長に入つた後のものについては、有効期間の定のない労働協約と同一の取扱とすること、即ち、当事者の一方が署名又は記名押印した文書によつて九〇日前までに予告して解約できることとしたのである。なお自動延長規定のある労働協約でも期限を定めて延長されるものについては、この取扱いはなされないのであり、また自動更新された協約は当然その更新された期間中は有効であつて一方的に解約できないことは勿論であつて、ともに本項の規定の適用はないものである。
(5) 改正労働組合法第一九条第二一項及び施行令第二五条の二の規定により、別表第二の三の項に規定する労、使、公益各三人の委員をもつて構成されることとなる地方労働委員会については、その委員の数は、労働関係調整法等の一部を改正する法律附則第二項により、八月一日現在において在任する委員又は補欠の委員の在任する期間(その任期中に限る。)は、なお、労、使、公益委員各五人とし、労働組合法施行令の一部を改正する政令附則第二項により、新たに委員が任命される日の前日までは、引きつづき労、使、公益委員各五人である。
(6) 第二七条に第二項として、不当労働行為の申立は行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、労働委員会はこれを受理することができない旨の規定が加えられたが、この規定は、改正以前に申し立てられたものについては、その効力に影響を及ぼすものでなく、また、改正前の申立がなされなかつたものについては、当該不当労働行為が実際になされた日の如何を問わず、第二七条第二項の適用については、改正法施行の日に行為がなされたものとして労働者の既存の申立権の保護を図つている。従つてそのようなものについては、法改正の日から一年間は申立をなし得ることとなるから注意せられたい(労働関係調整法等の一部を改正する法律附則第三項及び第四項)。
(7) 地方労働委員会の委員の費用弁償及び改正法第二七条の二の規定による地方労働委員会に当事者、参考人、証人等として出頭を求められた者に対する費用弁償は、施行令第二四条及び第二八条の三の規定により、鉄道賃、船賃、車賃、日当、宿泊料及び食卓料の六種とし、その額及び支給方法は、それぞれ当該都道府県の条例で定めることとなつているから、貴都道府県の実情に応じて、具体的に条例で定められたい。
なお、従来は、労働争議の調停又は仲裁のために出頭を求められた者に対してのみ労調法第四四条において費用弁償を規定していたが、第二七条の二の規定により、不当労働行為の審問の際の参考人、鑑定人、証人等として出頭を求められた者等についても費用弁償をなし得ることとなつたから注意せられたい。
二 労働関係調整法関係
(1)
(イ) 第八条の二として中労委、地労委に新たに特別調整委員を任命できる旨の規定が加えられたが、特別調整委員を置き得ることとしたのは、労働争議の実情について専門的知識を有する者が労働争議の調整に参与することによつて、労働争議の調整の合理的且つ円滑な遂行を確保せんとするものであつて、特別調整委員を置くか置かないかは法律上任意になつているが、各都道府県の実情に応じて、特別調整委員の制度を活用することによつて、労働委員会による労働争議の調整機能の拡充強化を図られたい。
政令において特別調整委員を置くか置かないかは中労委にあつては労働大臣、地労委にあつては都道府県知事が、それぞれ中労委及び地労委の意見を聞いて定めることになつており、その数は労、使、公益各五人をこえない範囲内で労働大臣又は都道府県知事が中労委又は地労委の同意を得て定めることとなつているが、労働委員会の委員の数、労働委員会が取り扱う労働争議の調整件数等を考慮して決定すべきである。なお、特別調整委員の数は、原則として労、使、公益各同数であることが望ましいが、各都道府県の実情に応じてその数が異ることがあつてももとより差し支えない。
(ロ) 特別調整委員の任命の手続は、労、使の特別調整委員については、労働委員会の労、使の委員の場合と同様であつて、それぞれ労働組合又は使用者団体の推薦に基いて任命されることになつているが(施行令第一条の二、第一条の七)、この推薦手続に参与するためには、労働組合の資格審査は不要であるから、注意せられたい。
公益を代表する特別調整委員については、当該労働委員会の労働者委員及び使用者委員の同意を得て任命する。労、使の特別調整委員の同意を得て任命することとしていないのは、労、使の特別調整委員は、必らずしも任命されたおらず、公益を代表する特別調整委員のみ任命する場合も予想され、この場合には労、使の特別調整委員の同意を得ることはできないことになるからである。
特別調整委員の任命の時期は、労働委員会の委員の任命の時期と必ずしも同一にする必要はなく、必要に応じて任命することができる。
(ハ) 特別調整委員の任期は原則として一年であるが、全部又は一部の委員につき、一年をこえない期間を定めることができることとしたのは、事件処理の繁閑等に応じて任期に弾力性をもたせることが妥当であると思われるからであつて、要するに各労働委員会の実情に即応して特別調整委員制度を最も合理的に運営しその実効を挙げ得るよう考慮すべきである。
(ニ) 特別調整委員の任務は、労働委員会を行う労働争議の調整又は仲裁に参与することであつて、具体的事件の調停又は仲裁については、調停委員又は仲裁委員として、労働委員会の委員たる調停委員又は仲裁委員と同一資格においてこれに当るわけである。不当労働行為の処理及び資格審査に当る権限を有しないことはいうまでもないが、労働委員会の同意を得て労働争議の調停又は仲裁を議題とする労働委員会の会議に出席して意見を述べることができる外、平常から労働委員会の取り扱う事案、一般労働事情等について知悉しうる様な機会の与えられることが望ましい。かくすることにより労働委員会の行う労働争議の調停又は仲裁の能率的、弾力的処理が推進されることが期待される。しかし、この場合においても特別調整委員は議決権を有しないのであつて、労働委員会の一般事務処理について容啄に亘るようなことのないよう留意せしめられたい。
(ホ) 地労委の特別調整委員の身分は特別職の地方公務員であることは労働委員会の委員と同様であり、その費用弁償については、施行令第一条の九により、鉄道賃、船賃、車賃、日当、宿泊料及び食卓料の六種とし、額及び支給方法は当該都道府県の条例の定めるところによる。
(ヘ) 調停委員会及び仲裁委員会は、労働委員会の委員又は特別調整委員の中から会長が指定した者で構成されるのであつて、労働委員会の委員と特別調整委員の人数の割振りについては何等の制限はなく又特別調整委員のみで構成されることも妨げないが、その取り扱う事件の種類及び性質に応じ最も能率的な調整を行うことが可能な如く構成せらるべきである。
(2) 今回の改正により労働争議の仲裁は、労働委員会の公益を代表する委員又は特別調整委員三人から成る仲裁委員会を設け、これによつて行うこととなつたが、その趣旨は、最終的に両当事者を拘束するが如き性質をもつ仲裁裁定を決定するのは、三者構成による総会よりも少数の公益委員からなる仲裁委員会の方が妥当であるとの見地に立つのであるが、第三一条の五は仲裁裁定を決定する過程において労使委員の意見を十分反映することが、公正妥当な仲裁裁定が行われる所以であると思われるから、当事者の指名した労、使の委員又は特別調整委員に意見を述べる機会を与えようとする趣旨である。
(3)
(イ) 第一一条第二項は削られたので、斡旋員候補者と労働委員会の委員との兼職は妨げないことになつた。特別調整委員と斡旋員候補者との兼職も勿論妨げない。
(ロ) 地方労働委員会の斡旋員の費用弁償についても、鉄道賃、船賃、車賃、日当、宿泊料及び食卓料の六種とし、その額及び支給支法は当該都道府県の条例の定めるところによる。
(4)
(イ) 今回新たに設けられた緊急調整の制度は、これが公正に運営され、直にその目的を達成するためには何よりもまず労働関係の当事者たる使用者及び労働組合は勿論、国民一般によつて、本制度の意義について十分理解されなければならないのであつて、本制度が設けられた趣旨及び意義の周知徹底については格段の配慮を願いたい。
(ロ) 緊急調整の決定という事態が生じたときは、直接事件の解決に当るのは中央労働委員会であるが、事件の処理につき必要なときは関係機関に対し協力を求める等事件の迅速且つ合理的解決につき適宜の方法が講ぜられることもあるので、貴職においても、積極的に連絡協力して緊急調整の実効を確保し得るよう十二分の努力を払われたい。
(ハ) 緊急調整の決定があつたときは、その公表は、官報に告示することによつてなされるが、これとともに新聞、ラジオ等の公表方法によつて公衆に周知せしめられることとなつている。従つて、第三八条の争議行為禁止の五〇日間の超算日は官報告示の日から起算することとなる。
(5)
(イ) 公益事業に関する争議行為については、従来の所謂冷却期間制度が廃止され、予告制度に置き替えられたのであるが、これは、公益事業については抜打ストを禁じて、公衆の利益を保護せんとするものであり、争議行為の予告は、公衆に周知されなければならない。かかる見地から、その通知については、政令において、文書によつて行うこととし、その文書には争議行為をなす日時及び場所並びにその争議行為の概要を記載しなければならないこととしているから、この点労働組合に十分周知徹底せしめられたい。
争議行為の予告の文書は一定の様式を必要としないが、「日時」は、何月何日と明確になし得ない実情もあると思われるが、漠然と何月何日以降という如きでは予告の趣旨が達せられないから出来る限り具体的に日時を指定して行う如く指導されたい。「場所」も具体的に記載することを要するのであつて、例えば私鉄の場合、争議行為の行われる路線を明確に記載する等指導されたい。「争議行為の概要」とは同盟罷業、怠業等の区別、参加予定人員等、如何なる規模で如何なる種類の争議行為を行うかが明確にされるよう記載するように指導されたい。
(ロ) 右の通知があつたときは、労働大臣又は都道府県知事は、公衆に対し、いつ、どこで、いかなる争議行為が行われるか明瞭にわかるような方法で公表しなければならない。
(ハ) 争議行為の通知は、施行令第一〇条の四に定めるところに従つて、その争議行為が一の都道府県の区域内のみにかかるものであるときは当該都道府県の地方労働委員会及び都道府県知事双方に対し、その争議行為が二以上の都道府県にわたるものであるとき、又は全国的に重要な問題にかかるものであるときは、中央労働委員会及び労働大臣の双方に対し通知しなければならないことになつている。従つて、予告期間は通知をなすべき双方ともに通知が到達した日から算定されることになる。但し、都道府県知事又は地方労働委員会を経由して通知するときは、経由庁到達の時に通知があつたこととなるから、この点注意されたい。
(ニ) 争議行為の通知を中央労働委員会及び労働大臣に対してなすべきときは、関係地方労働委員会又は関係都道府県知事の一を経由してなし得ることとして労働組合の便宜を図つているが、この場合においては、その文書の進達について迅速且つ的確にされたいが、取り敢えず、電話又は電報等によつてその旨を、中央労働委員会及び労働大臣に通知されるようにせられたい。
(6) 労調法第四二条の改正により、処罰について労働委員会の請求を待つて論ぜられるのは、公益事業の争議行為についての通知義務違反の第三九条の場合であり、緊急調整の決定に係る争議行為禁止規定違反の第四〇条の処罰については、労働委員会の請求を待たずに論ぜられる。
(7) 労働委員会の委員、特別調整委員、斡旋員、労働委員会の事務のため出頭を求められた者に対する費用弁償は、それぞれ該当箇所で規定することになつたので従来の第四四条はこれを削つたが、実質的には変更はない。
三 公共企業体等労働関係法関係
(1) 公共企業体等労働関係法の名称が改められたが、基本的考え方は何等変更されていない。なお、日本電信電話公社については、八月一日から適用されることになつたが、国の経営する企業については、昭和二八年三月三一日以前の日であつて政令で定める日までは適用がないことになつているから、これらの企業における労働関係については、右政令が制定されるまでは従来と同様国家公務員法の全面的適用を受けているわけである。
(2) 適用を予定される国の企業は、第二条第一項第二号イからホまでに掲げるものに限られるのであつて、その他の所謂現業には適用されない。
蓋し、これらの五つの企業は、その職員の従事する業務は主として肉体的又は技術的性格をもち、その行う事業の経済性を有し、かつ、企業体としての統一性を有するため、公共企業体と著しく類似した性格をもつものであるからその労働関係については特に公共企業体に準ずる取扱をすることが妥当と考えられるからであつて、この点十分理解されたい。
(3) 第三条の改正により公共企業体等の労働関係についても労働組合法第七条(第一号但書を除く。)が適用されることになつたので、公共企業体等についても、一般の使用者と同様の不当労働行為が成立することとなる。ただ、その救済については、従前通り労働委員会ではなく、公共企業体等仲裁委員会がなすこととなつているから念の為。
(4) 第六条の改正により、組合は、その規約に労働組合法第五条第二項各号に掲げる事項を記載しなければ公労法に定める権利を受け手続に参与することができないこととなつたから、注意されたい。
(5) 団体交渉の対象事項に関する第八条の規定を改正したが、これは従来の条文を整理したものであつて、実体的にはその範囲は従来と大差ない。
四 追つて公共企業体等労働関係法第二条第一項第二号の国の経営する企業に関して公共企業体等労働関係法が適用された場合又は地方公営企業労働関係法が施行された場合には、それに関し必要な詳細事項はその際これを通牒する。
