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○厚生年金基金令及び国民年金基金令の一部を改正する政令等の施行について〔厚生年金保険法〕
(平成12年5月31日)
(年発第379号)
(地方社会保険事務局長あて厚生省年金局長通知)
国民年金法等の一部を改正する法律(平成12年法律第18号。以下「改正法」という。)は、平成12年3月31日に公布されたが、厚生年金基金等の運用規制緩和等が平成12年6月1日から施行することとされている。これに伴い厚生年金基金令及び国民年金基金令の一部を改正する政令(平成12年政令第230号。以下「政令」という。)及び厚生年金基金規則等の一部を改正する省令(平成12年厚生省令第98号。以下「省令」という。)が平成12年5月31日に各々公布され、平成12年6月1日から施行することとされたところである。
改正法の趣旨及び内容については、平成12年3月31日付け厚生省発年第39号厚生事務次官通知により通知したところであるが、このうち、平成12年6月1日に施行される改正内容その他政令及び省令の内容は、下記のとおりであるので、貴管下の厚生年金基金及び国民年金基金の指導について、遺憾のないよう配慮されたい。
記
第1 厚生年金基金、厚生年金基金連合会、国民年金基金及び国民年金基金連合会の積立金の運用に関する事項
1 改正の趣旨
今回の改正は、国民年金法等の一部を改正する法律(平成12年法律第18号)の一部の施行に伴い、厚生年金基金、厚生年金基金連合会、国民年金基金及び国民年金基金連合会(以下第1において「基金等」という。)が社会保険情勢の変化に柔軟に対応できるよう、基金等の運用方法の選択の幅を広げるために行うものである。
2 運用全般に関する事項
(1) 厚生年金基金等の運用に関する規定の整理
これまで厚生年金基金等の運用に係る契約に関しては、改正前厚生年金保険法第130条の2及び第159条の2において給付に係る契約と同じ規定を根拠としていたが、運用に係る契約と給付に係る契約の分離が可能となった実態を踏まえ、今般の改正において同法第130条の2及び第159条の2の規定は給付に係る契約のみについて規定することとし、運用に係る契約については改正後の同法第136条の3(厚生年金基金連合会においては、同条を第164条第3項において準用)において規定することにより全体の体系の整理をしたこと。(厚生年金保険法第130条の2、第136条の3、第159条の2、第164条第3項関係)
(2) 金銭信託の制限の撤廃
投資一任契約を締結する際に基金等が結ぶ、運用方法を特定する信託契約(以下「特定信託」という。)について、金銭信託(金銭で信託し、信託終了時に信託財産を金銭に換価して受益者に公布するもの)とする制限が撤廃され、基金等が結ぶすべての信託契約の金銭信託の要件が撤廃されたこと。これにより、新規の採用や引受割合の変更に伴う信託銀行間の資産の移受管、同一銀行内の信託契約の統合等に際し、有価証券現物による移受管が可能となり、信託財産の売却や購入に伴い発生する費用の節減等が期待できること。(厚生年金保険法第130条の2第2項、第136条の3第2項、厚生年金基金令第31条、第39条の4、国民年金基金令第18条第1項第2号イ、第19条関係)
(3) 運用の基本方針に関する事項
運用の基本方針において、新たに運用の目標、運用受託機関の選任に関する事項、運用受託機関の評価に関する事項を規定すること。また、自家運用を行う基金等においては、自家運用における管理運用の体制、運用実績の評価方法その他の必要な事項を規定すること。自家運用を行う基金等及び厚生年金保険法第139条第4項の規定により株式による掛金の納付を受ける厚生年金基金においては、政策的資産構成割合を定めること。(厚生年金基金規則第42条、国民年金基金及び国民年金基金連合会の財務及び会計に関する省令(以下「財会省令」という。)第14条の10関係)
(4) 運用受託機関に示す運用指針に関する事項
各基金等は運用受託機関に対して、運用の基本方針と整合的な運用指針を提示しなければならないこととしたこと。この運用指針においては、資産の構成に関する事項、運用受託機関からの報告の内容及び方法に関する事項等と合わせて、運用手法に関する事項を運用受託機関に示すこととしたこと。(厚生年金基金規則第42条第4項、財会省令第14条の10第3項関係)
(5) 経過措置
運用の基本方針及び運用受託機関に示す運用指針(以下「運用の基本方針等」という。)については、自家運用を行う基金等及び株式による掛金の納付を受ける厚生年金基金を除き、平成13年3月31日までの間は、なお、従前の例によることができること。
また、既に自家運用を行っている基金等及び株式による掛金の納付を受けている厚生年金基金がある場合については、可及的速やかに運用の基本方針等に関する所要の手続きを進めること。(附則第2項関係)
(6) 厚生年金基金及び厚生年金基金連合会による運用に係る契約の締結に関する届出の廃止
厚生年金基金及び厚生年金基金連合会(以下第1及び第3において「厚生年金基金等」という。)が運用に係る契約を締結し、又は契約条項に変更が生じた際の厚生大臣への届出を廃止したこと。これに伴い、基金等の設立等の際の提出書類から運用に係る契約に関する書類を削除したこと。(厚生年金保険法第176条、厚生年金基金規則第1条、第2条、第4条、第5条、第68条、第69条及び第70条、国民年金基金規則第3条、第4条、第52条及び第53条関係)
3 自家運用関係
これまで基金等の自家運用に関しては、資産規模が500億円以上であり、事前に厚生大臣の認定を受けることを法律上の要件としていたが今回の改正においてこれらの基準を撤廃したこと。(厚生年金保険法第130条の2第3項、第159条の2第3項、国民年金基金令第30条第3項関係)
(1) 契約を締結することができる金融機関等の範囲
基金等が自家運用を行うに当たり、契約を結ぶことができる金融機関等は以下のとおりであること。(厚生年金保険法第136条の3第1項第4号、厚生年金基金令第39条の4、国民年金基金令第30条第1項第4号、財会省令第14条の2関係)
① 銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、信託会社、保険会社、無尽会社、証券会社、証券投資信託委託業者及び短資業者であって、国内に本店又は主たる事務所を有する法人に限る。
② 外国証券会社
(2) 基本方針において自家運用に関する事項を定めた基金等が行える自家運用
基金等は、①に規定する積立金の管理及び運用の体制を整備したうえで、②の運用方法による自家運用を行うことができること。(厚生年金保険法第136条の3第1項第4号、国民年金基金令第30条第1項第4号関係)
① 管理及び運用の体制に関する要件
運用の基本方針において、2の(3)の自家運用に関する事項を定めていることが必要であること。(厚生年金基金規則第42条第2項及び第3項、財会省令第14条の10第2項関係)
② 運用方法
ア 証券投資信託及び外国証券投資信託の受益証券又は投資証券及び外国投資証券の売買
イ 貸付信託の受益証券の売買
ウ 預金又は貯金(譲渡性預金を含む。)
エ 特定信託による上記①から③までの運用方法又はコール資金の貸付け又は手形の割引
(3) 一定の管理及び運用の体制を整えた基金等のみが行える自家運用
基金等は、①に規定する積立金の管理及び運用の体制を整備したうえで、②の運用方法による自家運用が行うことができること。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号、国民年金基金令第30条第1項第5号)
① 管理及び運用の体制に関する要件
②に掲げる運用を行う場合の積立金の管理及び運用の体制に関する要件は、次のとおりであること。(厚生年金保険法第136条の3第4項、厚生年金基金令第39条の11、厚生年金基金規則第42条第2項、国民年金基金令第30条第3項、財会省令第14条の10第2項関係)
ア 運用の基本方針において、2の(3)の自家運用に関する事項を定めていること。
イ ②に掲げる運用業務(以下「第5号業務」という。)に係る運用執行理事を置いていること。
ウ 第5号業務の執行に係る事務を的確に遂行することができる専門的知識及び経験を有するものがあること。
② 運用方法
ア 有価証券の売買
以下に掲げる有価証券の売買。なお、社債については資産額基準及び上場企業を撤廃したこと。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号イ、厚生年金基金令第39条の6、国民年金基金令第30条第1項第5号イ、財会省令第14条の3関係)
a 債券先物(国債又は外国国債とみなされる標準物)
b 国債
c 地方債
d 特別の法律により法人の発行する債券
e 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律に基づく特定社債
f 社債(転換社債及び特定債券等に係る事業の規制に関する法律(平成4年法律第77号)に基づく特定社債を含む。)
g コマーシャルペーパー
h 外国債券
i 外国における貸付債権に係る信託受益証券
j 外国の譲渡性預金
イ 有価証券貸付け
上記アのbからfまで及びhに規定する有価証券を貸付けの対象有価証券とし、(1)のうち農林中央金庫、商工組合中央金庫、全国を地区とする信用金庫連合会、証券会社、証券金融会社、外国証券会社、短資業者又は外国証券会社に対して有価証券を貸付けること。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ロ、厚生年金基金令第39条の7、国民年金基金令第30条第1項第5号ロ、財会省令第14条の4関係)
ウ 債券オプションの取得又は付与
基金等は、上場オプション及び店頭オプション(いずれも外国での取引は除く。)を取得対象とし、当該オプションの取得又は付与を行うこと。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ハ、厚生年金基金令第39条の8、国民年金基金令第30条第1項第5号ハ、財会省令第14条の5関係)
エ 先物外国為替の売買、通貨オプションの取得又は付与
金融先物取引所取引及び海外金融先物取引所取引は除き、金融機関等を契約の相手方とする相対取引において先物外国為替の売買、通貨オプションの取得又は付与を行うこと。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ニ及びホ、厚生年金基金令第39条の9、国民年金基金令第30条第1項第5号ニ及びホ、財会省令第14条の6関係)
オ 特定信託による上記アからエまでの運用
特定信託を利用して、上記アからエまでの方法により運用を行うこと。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ヘ(1)、国民年金基金令第30条第1項第5号ヘ(1)関係)
カ 株式の売買による運用
次に規定する方法により、特定信託において株価指数の変動と一致するように運用(以下「株式インデックス運用」という。)すること。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ヘ(2)、厚生年金基金令第39条の10、厚生年金基金規則第41条の2、国民年金基金令第30条第1項第5号ヘ(2)、財会省令第14条の7関係)
a 株式インデックス運用の対象となる株価指数は、証券取引法第2条第14項に基づき各証券取引所が指定する株価指数の他に、当該株価指数に準じたものとして厚生大臣が指定する指数とすること。
b 株式インデックス運用における株式の銘柄及び株式の選定は、以下の方法により行うこと。
ⅰ 上記aの株価指数に採用されている銘柄の株式のうちその全部又は一部について、以下に定める完全法、層化抽出法、最適化法、それらに類した方法又はそれらの方法の組み合わせにより株式の銘柄及びその株数の選定を行うこと。
・完全法
採用した株価指数に採用されている全銘柄について、当該株価指数に完全に一致するようにポートフォリオを構築する方法であること。
・層化抽出法
採用した株価指数に採用されている銘柄を個別銘柄の株価変動が類似する複数の銘柄群(セクター)に分類し、各銘柄群から当該株価指数の変動とできる限り一致するように銘柄を選定し、ポートフォリオを構築する方法であること。
・最適化法
採用した株価指数の予想変化率とポートフォリオの予想収益率の差(以下「超過収益率」という。)の分散を最小化するようポートフォリオを構築する方法であること。
ⅱ 電子計算機を使用して超過収益率のばらつきの程度の把握及びその要因の分析を正確に行うことができるシステムを構築し、そのシステムを利用して運用を行うこと。
キ 株価指数先物の売買又は株価指数オプションの取得又は付与
特定信託において上記カのaに規定する株価指数に係る先物の売買及びオプションの取得又は付与を行うこと。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ヘ(3)、国民年金基金令第30条第1項第5号ヘ(2)関係)
ク コール資金の貸付け又は手形の割引
特定信託においてコール資金の貸付け又は手形の割引を行うこと。(厚生年金保険法第136条の3第1項第5号ヘ(4)、国民年金基金令第30条第1項第5号ヘ(4)関係)
(4) 先物及びオプションによる運用に当たっての利益条件
債券先物、債券オプション、先物外国為替、通貨オプション、株価指数先物及び株価指数オプション(以下「デリバティブ」という。)により運用するに当たっては、現物資産の価格変動や為替変動の危険の防止又は軽減を目的とし、積立金の運用の健全性に配意し、投機的取引は行わないこと。ただし、基金等の全体の政策的資産構成割合と実際の資産配分割合との乖離が現に生じ、当該乖離を縮小することを目的とする場合にあっては、これにかかわらず、デリバティブによる運用(ポートフォリオ・オーバーレイ)が可能であること。(厚生年金基金規則第41条の3、財会省令第14条の8関係)
第2 業務上の余裕金の運用に関する事項
業務上の余裕金の運用方法として、主として国債、地方債等の確実と認められる有価証券に対する投資として運用する証券投資信託又は外国証券投資信託の受益証券による運用を加えたこと。(厚生年金基金規則第43条、財会省令第15条関係)
第3 厚生年金基金等の事業運営に関する事項
1 改正の趣旨
今回の改正は、厚生年金基金等を取り巻く状況の変化にかんがみ、厚生年金基金等の事業運営に関し、一層の規制緩和を行うものである。
2 事業運営に関する規制緩和
(1) 学識経験監事の廃止
厚生年金基金の監事のうち1名は学識経験を有する者としていたが、これを廃止したこと。これに伴い、今後、監事の職務については、残る2名の監事(設立事業所の事業主において選定した代議員及び加入員において互選した代議員から選出された監事)により行われるものであること。(厚生年金保険法第119条第4項関係)
なお、改正法の施行の際現に学識経験監事である者については、その者の当該監事としての残存期間に限り、学識経験監事としてその職務を行うことができること。(改正法附則第8条関係)
(2) 厚生年金基金等の業務委託の認可制の緩和
厚生年金基金等が業務の委託を行う際の厚生大臣の認可を廃止し、厚生年金基金等が業務の委託又はその変更を行った場合には、遅滞なく、その内容を厚生大臣に届け出ることとしたこと。(厚生年金保険法第130条第4項、第159条第5項、第176条第1項、厚生年金基金規則第32条の4、第55条、第74条関係)