○厚生年金基金の資産運用に係る事務の取扱いについて
(平成9年6月11日)
(年運発第9号)
(都道府県民生主管部(局)長あて厚生省年金局運用指導課長通知)
厚生年金基金(以下「基金」という。)の資産運用に係る掛金の払込割合の変更等に関する事務の取扱いについては、下記のとおり取り扱うこととしたので、貴管下の基金への周知及び指導について配慮されたい。
なお、「厚生年金基金の年金給付等積立金の管理及び運用に関する契約に係る規約変更等の取扱いについて(平成7年4月1日年運発第3号)」については、この通知の施行により廃止する。
記
1 掛金の払込割合の変更等に関する取扱いについて
掛金の払込割合の変更、資産の移管の額及び年金給付費等の負担割合の変更並びにそれらの時期については、運用受託機関又は資産管理機関(以下「運用受託機関等」という。)との契約の内容を踏まえ、基金自らの判断により行うこと。
なお、年金資産は長期的観点から運用されるべきものであり、政策的資産構成割合を維持するために行う場合を除き、資産の移管又は掛金の払込割合の変更を適切な評価に基づかずに頻繁に行うことは、結果として運用効率を悪化させる可能性があることに留意すること。
(1) 掛金の払込割合の変更に関する取扱いについて
厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「法」という。)第136条の3第1項から第3項までに規定する契約に係る掛金の払込割合の変更に係る規約変更について、代議員会の決定(理事長専決処分を含む。以下同じ。)を行った場合には、遅滞なく届出を行うこと。
この規約変更の届出については、変更前及び変更後の掛金の払込割合を記載した届書(別紙1)に新旧規約対照表を添付し行うこと。
(2) 年金給付等積立金の各契約に係る資産の移管(保険契約における一般勘定と特別勘定との間における資産の振替を含む。以下「資産の移管」という。)に関する取扱いについて
ア 資産の移管を行うに当たっては、各運用受託機関等と契約に基づく協議の上、基準とする契約資産額を確定するとともに、変更資産額及び変更後の資産額並びに資産の移管を行う日を決定すること。
イ 有価証券現物による移管に当たっては、その対象となる資産の範囲、移管の方法等の具体的な対応について基金と信託銀行の契約当事者間で十分調整する必要があること。
ウ 有価証券現物の移管と受管に際して、基金自らが有価証券現物を保管してはならないこと。なお、有価証券現物の移受管の実施については、移受管に要する日数が資産の種類等により異なることから、その完了には一定の日数を要することも考えられるが、この場合においても、基金自らが有価証券現物を保管することのないよう、信託銀行間において移受管される各資産について同日のうちにこれを完了する必要があること。
(3) 給付費等の各運用受託機関の負担割合の取扱いについて
ア 給付費等の各運用受託機関等の負担割合については、前事業年度1月末日の各契約ごとの資産額の総資産の額に占める割合を基準とする等、各運用受託機関と契約に基づく協議の上、定めること。
イ 資産の移管を行った場合については、例えば、給付費等の負担割合を前事業年度の1月末日の各契約ごとの資産額の総資産の額に占める割合を基準としている基金にあっては、それ以降の当該負担割合は、変更後の資産割合により取り扱い、また、資産移管の日が2月又は3月の場合は、資産の移管の日の属する事業年度の翌事業年度についても、引き続き変更後の資産割合で取り扱うこととする等、適切な取扱いを行うこと。
ウ 運用受託機関等の辞任又は契約の解約等があった場合、当該運用受託機関等が負担すべき給付費等については、当該運用受託機関等は、辞任又は契約の解約等の日以降は支払うことができないことから、当該契約資産額が変更されるまでの間、契約が残存する各運用受託機関等と協議の上、辞任又は契約の解約等となる運用受託機関等の負担割合を負担することとし、この取扱いについては規約に定めることとすること。
なお、この取扱いは、別途「運用管理規程」を定めている基金においては同規程に定めることとすること。
2 年金給付等積立金の管理及び運用に関する資産運用業務報告書について
年金給付等積立金の管理及び運用に関する資産運用業務についての報告は、次に定めるところにより行うこと。
1 報告書の様式
報告書の様式は、別紙2のとおりとすること。
2 報告書の記載方法
報告書については、全基金が当該基金の直近の事業年度末日における実績について記載することとし、その記載方法は、次のとおりとすること。
(1)政策的資産構成割合等
① 「政策的資産構成割合」の基となる期待収益率を記入すること。
小数点第二位を四捨五入したものを記入すること。
② 「政策的資産構成割合」の基となるリスクを記入すること。
小数点第二位を四捨五入したものを記入すること。
③ 政策的資産構成割合等の状況
「政策的資産構成割合(A)」の項には、厚生年金保険法第百三十六条の四第一項に規定する基本方針に記載する政策的資産構成割合と同一の内容を、「資産構成割合(実績)(B)」の項には、当該事業年度末における実績(小数点第二位を四捨五入)を記入すること。
各資産の項については以下のとおりとすること。
(Ⅰ) 「国内債券」の項には、次の資産(生命保険会社の特別勘定第一特約(以下「第一特約」という。)に係る資産については、基準価格。以下同じ。)の額の合計額の総資産額に対する割合を記入すること。
(i) 国債、地方債、特別の法律により発行する債券及び社債(新株予約権付社債(商法等の一部を改正する法律(平成13年法律第128号)による改正前の商法の規定による転換社債又は新株引受権付社債を含む。以下同じ。)を除く。)
(ii) 非居住者円貨建債券(新株引受権付社債を除く。)
(iii) 主として(i)及び(ii)の資産に運用する証券投資信託の受益証券又は投資証券
(iv) 主として(i)及び(ii)の資産に運用する年金投資基金信託の受益権
(v) 第一特約のうち主として(i)及び(ii)の資産に運用する特別勘定に係る資産
(vi) (i)から(v)までの資産に準ずる資産
(vii) 第一特約のうち資産の種類を特定しない特別勘定(以下「第一特約総合口」という。)に係る資産であって、(i)、(ii)、(iii)及び(vi)の資産に運用されている資産
(Ⅱ) 「新株予約権付社債」の項には、次の資産の額の合計額の総資産額に対する割合を記入すること。
(i) 新株引受権付社債
(ii) 非居住者円貨建債券(新株引受権付社債に限る。)
(iii) 主として(i)及び(ii)の資産に運用する証券投資信託の受益証券又は投資証券
(iv) 主として(i)及び(ii)の資産に運用する年金投資基金信託の受益権
(v) 第一特約のうち主として(i)及び(ii)の資産に運用する特別勘定に係る資産
(vi) (i)から(v)までの資産に準ずる資産
(vii) 第一特約総合口に係る資産であって、(i)、(ii)、(iii)及び(vi)の資産に運用されている資産
(Ⅲ) 「国内株式」の項には、次の資産の額の合計額の総資産額に対する割合を記入すること。
(i) 株式、新株引受権証書、新株予約権証書及び特別の法律により設立された法人の発行する出資証券
(ii) 主として(i)の資産に運用する証券投資信託の受益証券又は投資証券
(iii) 主として(i)の資産に運用する年金投資基金信託の受益権
(iv) 第一特約のうち主として(i)の資産に運用する特別勘定に係る資産
(v) (i)から(iv)までの資産に準ずる資産
(vi) 第一特約総合口に係る資産であって、(i)、(ii)及び(v)の資産に運用されている資産
(Ⅳ) 「外国債券」の項には、次の資産の額の合計額の総資産額に対する割合を記入すること。
(i) 外国の通貨をもって表示される債券
(ii) 主として(i)の資産に運用する証券投資信託の受益証券又は投資証券
(iii) 主として(i)の資産に運用する年金投資基金信託の受益権
(iv) 第一特約のうち主として(i)の資産に運用する特別勘定に係る資産
(v) (i)から(iv)までの資産に準ずる資産
(vi) 第一特約総合口に係る資産であって、(i)、(ii)及び(v)の資産に運用されている資産
(Ⅴ) 「外国株式」の項には、次の資産の額の合計額の総資産額に対する割合を記入すること。
(i) 外国の通貨をもって表示される株式、新株引受権証書及び新株予約権証書
(ii) 主として(i)の資産に運用する証券投資信託の受益証券又は投資証券
(iii) 主として(i)の資産に運用する年金投資基金信託の受益権
(iv)第一特約のうち主として(i)の資産に運用する特別勘定に係る資産
(v) (i)から(iv)までの資産に準ずる資産
(vi) 第一特約総合口に係る資産であって、(i)、(ii)及び(v)の資産に運用されている資産
(Ⅵ) 「一般勘定」の項には、生命保険会社並びに農業協同組合連合会の一般勘定の資産の額(当該契約に係る責任準備金の額をいう。)の総資産額に対する割合を記入すること。
(Ⅶ) 「オルタナティブ」の項には、株式や債券等の伝統的な資産以外の資産への投資又はデリバティブ等伝統的投資手法以外の手法を用いる投資を行う場合における当該投資に係る資産の額の合計額の総資産額に対する割合を記入すること。
(Ⅷ) 基金より払い込まれた年金信託契約及び年金特定信託契約に係る拠出金並びに厚生年金基金保険契約に係る保険料又は他契約から拠出された給付費等への支払金であって、総幹事又は副幹事等が他契約への配布又は給付の支払いを完了していない資産は、「短期資産」に含むこと。
(Ⅸ)不動産等事業年度の末日における時価の把握が困難な資産については、直近の時価によることとし、それが困難な場合には、簿価によることとしても差し支えないこと。その場合においては、その旨を明記すること。
(2) 運用状況
① 資産別残高等
(Ⅰ) 時価総額(実績)の欄には、1.(3)(Ⅰ)から(Ⅷ)までのそれぞれに掲げる資産の額の合計額を、百万円未満を四捨五入して記入すること。
(Ⅱ) オルタナティブ投資を行っている場合は、「【備考】オルタナティブの内訳」に記入すること。その際、「【投資商品名】」から該当する商品の記号を選択すること。「i.その他のヘッジファンド」、「o.その他の不動産」、「s.その他のプライベート・エクイティ」、「u.その他のコモディティ」又は「その他のオルタナティブ商品」の「aa.その他」を選択した場合は、具体的な商品名を記入すること。
構成割合(実績)の欄には、当該選択した投資商品に係る時価総額(実績)の総資産額に対する割合を、小数点第二位を四捨五入して記入すること。
なお、複数の投資資産や投資戦略を採用している商品(選択肢にないものに限る。)については、「i.その他のヘッジファンド」、「o.その他の不動産」、「s.その他のプライベート・エクイティ」、「u.その他のコモディティ」又は「その他のオルタナティブ商品」の「aa.その他」を選択した上、当該商品に含まれる投資資産又は投資戦略のうち代表的なものを三つ記入すること。
② 運用機関別資産残高及び構成割合
(Ⅰ) 時価総額(実績)の欄には、個別の信託銀行、生命保険、金融商品取引業者又は自家運用のそれぞれについて、(1)③(Ⅰ)から(Ⅷ)までに掲げる資産の額の合計額を、百万円未満を四捨五入して記入すること。
(Ⅱ) 構成割合(実績)の欄には、個別の信託銀行、生命保険、金融商品取引業者又は自家運用のそれぞれについて、(1)③(Ⅰ)から(Ⅷ)までに掲げる資産の時価総額(実績)の合計に対する当該個別の信託銀行、生命保険、金融商品取引業者又は自家運用に係る(1)③(Ⅰ)から(Ⅷ)までに掲げる資産それぞれの時価総額(実績)の割合を、小数点第二位を四捨五入して記入すること。
(3) 運用実績
① 総合収益額、修正総合利回り等
総合収益額の欄には、各運用受託機関から提出される決算報告書に記載されている当該事業年度末の総合収益の額の合計を、百万円単位(百万円未満は四捨五入)で記入すること。
修正総合利回り/時間加重収益率の欄には、いずれかを選択して丸で囲んだ上、小数点第二位を四捨五入して記入すること。
修正総合利回りは、総合収益額の欄に記入した額を期中平均残高(各運用受託機関から提出される決算報告書に記載されている期中平均残高をいう。以下同じ。)の合計額で除したものとすること。
期待収益率との差は、1(1)の期待収益率から修正総合利回り又は時間加重収益率を差し引いた数値を記入すること。
② 資産別総合収益額、修正総合利回り等
資産別総合収益額の欄には、各運用受託機関から提出される決算報告書に記載されている当該事業年度末の資産ごとの総合収益の額を、百万円単位(百万円未満は四捨五入)で記入すること。
修正総合利回り/時間加重収益率(A)の欄には、いずれかを選択して丸で囲んだ上、小数点第二位を四捨五入して記入すること。
修正総合利回りは、資産別総合収益額の欄に記入した額を資産ごとの期中平均残高で除したものとすること。
なお、修正総合利回り又は時間加重収益率の選択に当たっては、(1)における選択と同じものとすること。
ベンチマーク収益率(B)は、各基金が採用するベンチマークを明記した上で、その収益率を記入すること。
超過収益率(A)-(B)は、修正総合利回り又は時間加重収益率からベンチマーク収益率を除いたものとし、小数点第二位を四捨五入したものを記入すること。
3 株式インデックス運用の状況の記載方法
報告書については、自家運用において株式インデックス運用を行う基金が、当該事業年度における各月ごとの当該株式運用による収益率及び採用した株価指数の変化率とその差、年間のトラッキングエラーについて記載することとし、その記載方法は、次のとおりとすること。
(1) 各月の当該株式運用の収益率については、取引コスト控除後で計算すること。
(2) 各月の株価指数の変化率については、採用した株価指数の変化率に配当を加えた数値で計算すること。
(3) トラッキングエラーについては、次のとおりとすること。
① 運用期間1年以上の場合
当該年度各月の乖離率(当該株式の運用による収益率と採用した株価指数の変化率の差)と当該乖離率の年間平均(12で除する)との差の2乗の年間平均の平方根に12の平方根を乗じて得た数を記入すること。
② 運用期間1年未満の場合
当該運用期間の各月の乖離率と当該乖離率の期間平均(当該運用月数で除する)との差の2乗の期間平均の平方根に12の平方根を乗じて得た数を記入すること。ただし、運用開始月について、月の途中で運用を開始した場合は、当該株式運用による収益率と採用した株価指数の変化率を同等に比較することはできないことから記入しないこと。
(4) トラッキングエラーが1.0%を超えた場合については、備考欄において、その要因の分析を記入すること。
(5) 収益率、変化率及びトラッキングエラーは、小数点第3位を四捨五入し、小数点第2位までを記入すること。
4 提出期限
毎事業年度ごとに作成し、提出期限は翌事業年度の5月15日とする。
5 提出部数
2部(厚生労働大臣に提出するものは、1部とし、貴職においても1部保管すること。)
3 株式による掛金の納付に係る個別株式割合報告書について
株式による掛金の納付に係る個別株式割合についての報告は、次に定めるところにより行うこと。
1 報告書の様式
報告書の様式は、別紙3のとおりとすること。
2 記載方法
(1) 「株式銘柄」の項は、掛金として納付を受けた個別株式の銘柄を全て記入すること。
(2) 「基金資産総額」の項は、株式による掛金の納付があった月(以下「納付月」という。)の前月末日時点の時価により算定した額を記入すること。
(3) 「評価額」の項は、当該月において掛金として納付を受けた個別株式の価額と既に運用機関において単独運用されている当該株式に係る納付月の前月末日時点の時価により算定した額の合計額を記入すること。
(4) 「総額に対する割合」の項は、評価額を基金資産総額で除した数に百を乗じて得た数を記入すること。なお、この場合小数点第2位を四捨五入のうえ小数点第1位までの数とすること。
(5) 「保有株式数」の項は、当該月において、掛金として納付を受けた個別株式数と既に運用機関において単独運用されている当該株式にかかる納付月の前月末日時点における株式数の合計を記入すること。
(6) 「発行済み株式総数」の項は、掛金として納付を受けた個別株式に係る納付月の前月末日時点における発行済み総数を記入すること。
(7) 「株式総数に対する割合」の項は、保有株式数を発行済み株式総数で除した数に百を乗じて得た数を記入すること。なお、この場合小数点第2位を四捨五入のうえ小数点第1位までの数とする。
(8) 上記において、末日時点における時価及び株式数の把握が困難な場合は、末日の直近のものとして差し支えないこと。
(9) この報告書は、株式による掛金の納付を受けた月ごとに記入すること。
3 提出期限
毎事業年度ごとに作成し、提出期限は翌事業年度の5月15日とする。
4 提出部数
2部(厚生労働大臣に提出するものは、1部とし、貴職においても1部保管すること。)
(別紙1)
(別紙2)
(別紙3)