添付一覧
○行政手続法等の施行に伴う社会保険労務士法の一部改正等について
(平成六年九月二九日)
(庁保発第三一号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて社会保険庁運営部長通知)
行政手続法(平成五年法律第八八号。以下「手続法」という。)が、行政手続法の施行期日を定める政令(平成六年政令第三〇二号)により、本年一〇月一日から施行されることとなったことに伴い、行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成五年法律第八九号)をもって一部改正された社会保険労務士法(昭和四三年法律第八九号。以下「社労士法」という。)の改正規定も同日から施行されることとなった。また、手続法の施行に伴い、社会保険労務士法に係る聴聞等手続規則(平成六年厚生省・労働省令第五号。以下「規則」という。)が本日公布され、本年一〇月一日から施行されることとなった。社労士法の規定に基づく不利益処分に係る聴聞及び弁明の機会の付与の手続については、これらの定めるところによることとされたので、左記に留意の上、その円滑な施行について遺憾のないようにされたい。
なお、昭和五一年四月一日付け庁文発第一、二一二号「社会保険労務士聴聞実施要領について」は、平成六年一〇月一日をもって廃止することとしたので了知されたい。
また、これらのことについては、労働省と協議済であるので、念のため申し添える。
記
第一 社労士法の一部改正
社労士法の一部改正の内容は次のとおりである(社労士法第二五条の四関係)。
1 社会保険労務士に対する戒告及び業務停止処分に係る聴聞の実施(第一項関係)
社会保険労務士に対する戒告及び業務停止処分に関する事前手続については、手続法の区分によれば、弁明の機会の付与が相当となるところであるが、社会保険労務士の業務の公共性に鑑み、当該社会保険労務士に対する処分の公正を確保するため、社労士法の規定に基づきこれまでも聴聞を実施してきたところであり、手続法の区分にかかわらず、引き続き、弁明の機会の付与よりも手厚い事前手続として、聴聞を実施するものであること。
2 特例規定の存置(第二項及び第三項関係)
社会保険労務士に対する懲戒処分に係る聴聞手続として、従来より社労士法第二五条の四で定められていた次の規定は、手続法の規定より手厚いものであるので、存置するものであること。
(1) 事前手続の一週間前までの通知
(2) 聴聞の期日及び場所の公示
(3) 聴聞の公開
第二 規則の要旨
1 社労士法に係る聴聞及び弁明の機会の付与の手続については、社労士法及び手続法の定めるほか、この規則の定めるところによるものとしたこと(第一条関係)。
2 この規則で使用する用語は、手続法で使用する用語の例によるものとしたこと(第二条関係)。
3 主宰者は、参考人に対し、聴聞に関する手続に参加することを求めることができるものとしたこと(第三条関係)。
4 当事者は、やむを得ない理由がある場合には聴聞の期日の変更を申出ることができるものとし、行政庁は、当該申出又は職権により聴聞の期日若しくは場所を変更することができるものとしたこと(第四条関係)。
5 聴聞への参加の許可を求める関係人は、聴聞の期日の四日前までに書面を聴聞の主宰者に提出するものとしたこと(第五条関係)。
6 資料の閲覧を求める当事者等は、原則として書面を行政庁に提出するものとし、閲覧を拒むことができない場合としてこれに応じた行政庁は、速やかに、閲覧の日時及び場所を指定しなければならないものとしたこと(第六条関係)。
7 行政庁の行う主宰者の指名は、聴聞の通知の時までに行うものとしたこと(第七条関係)。
8 補佐人とともに出頭することの許可を求める当事者又は参加人は、原則として聴聞の期日の四日前までに書面を主宰者に提出するものとしたこと(第八条関係)。
9 主宰者は、聴聞の審理の秩序を維持するため、適当な措置を講ずることができるものとしたこと(第九条関係)。
10 聴聞の期日における審理を公開するときは、聴聞の期日及び場所を公示しなければならないものとしたこと(第一〇条関係)。
11 当事者又は参加人が出頭に代えて提出する陳述書には、事案に対する意見等を記載するものとしたこと(第一一条関係)。
12 聴聞調書には関係者の陳述の要旨等を、報告書には当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見等を記載するものとし、主宰者がこれに記名押印しなければならないものとしたこと(第一二条関係)。
13 聴聞調書及び報告書の閲覧を求める当事者又は参加人は、書面を主宰者又は行政庁に提出するものとし、これに応じた主宰者又は行政庁は、速やかに、閲覧の日時及び場所を指定しなければならないものとしたこと(第一三条関係)。
14 弁明書には事案に対する意見等を記載するものとしたこと(第一四条関係)。
第三 留意事項
1 聴聞又は弁明の機会の付与の手続の選択(手続法第一三条関係)
社労士法第一三条第一項に規定する不正受験者の受験禁止及び同条第二項に規定する不正受験者の三年以内の受験禁止に係る不利益処分をしようとする場合に、当初弁明の機会の付与の手続を執ったが、その結果、手続法第一三条第一項第一号ニに掲げる不利益処分をすることが相当であると判断したときには、改めて聴聞の手続を執る必要があること。また、不利益処分の原因となる事実が生じた場合であって、いかなる不利益処分をしようとするかあらかじめ予定できない事情があるときには、聴聞の手続をとることが適当であること。
2 参考人(規則第三条関係)
規則第三条の規定により参考人として聴聞に関する手続への参加を求めた者が、規則第五条第一項の規定に基づく関係人としての許可申請を行い、同条第二項の許可がなされた場合には、当該者は関係人として、聴聞に関する手続に参加することとなるものである。
3 聴聞の通知(手続法第一五条、社労士法第二五条の四、規則第四条関係)
(1) 手続法第一五条第一項及び社労士法第二五条の四第二項の規定による通知を郵送する場合は、配達証明郵便とすること。
(2) 手続法第一五条第三項の規定により通知を行う場合は、聴聞の期日は、掲示を始める日から二週間に同法第一五条第一項の相当な期間(社労士法第二五条の四の規定による聴聞手続については一週間以上)を加えた日数において設定すること。
(3) 規則第四条第一項の規定による聴聞の期日の変更の申出があった場合は、その申出にやむを得ない理由があれば必要な調整に努めることとするが、当該申出を受け入れることができない場合もあり得ること。
(4) 手続法第二八条第一項に規定する場合において、解任し又は除名すべきこととされている役員等は当事者の地位を取得することとなるので、法人に対して同法第一五条第一項の規定による通知を行うほか、当該役員等に対して参考までに連絡を行うか、又は当該法人に対し、速やかに通知の内容を当該役員等に対して連絡するよう指導すること。
4 代理人(手続法第一六条関係)
(1) 手続法第一六条第二項の規定により、代理人は、当事者のために聴聞に関する一切の行為をすることができるため、代理人が聴聞の期日に出頭すれば同法第二三条第一項の規定による聴聞の終結をすることはできないこと。また、同法第二二条第二項の規定による続行期日の通知等行政庁が代理人に対して行う行為についても、当事者のために行うことを示して行えば、改めて当事者に通知することを要しないこと。
(2) 代理人の人数については、代理人が多数選任され聴聞の場に入場しきれない等の事態が生じた場合には、当事者の意見の陳述を妨げないと判断される限りにおいて、聴聞の場に出頭できる人数を制限することはやむを得ないこと。
(3) 手続法第一六条第三項の規定による書面は、原則として、委任状の写しを指すものであること。また、手続法が書面での証明を義務付けていることから、代理人の選任について行政庁に対し事前に書面で届出させることは適当ではないこと。
5 関係人(手続法第一七条、規則第五条関係)
(1) 手続法第一七条第一項の規定により聴聞に参加することを許可する者の範囲については、主宰者の判断に委ねるものであること。なお、当該許可をすることとした場合には、更に同法第二〇条第三項の規定による補佐人の出頭許可申請がなされることがあるので、できる限り速やかに処分を行うこと。
(2) 関係人の認定に当たっては、手続法第一八条の規定による手続及び同法第二四条第三項の規定による報告書の作成を円滑に進めるため、その者が自己の利益を害されることとなる関係人であるか否かについても判断しておく必要があること。
6 文書等の閲覧(手続法第一八条、規則第六条関係)
(1) 当事者又は不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人が不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めるに当たっては、規則第六条第一項の規定により資料の標目等を記載した書面を提出することとなっているので、あらかじめ資料目録を作成し、その内容を教示できるようにしておくこと。
(2) 手続法第一八条第一項に規定する「その他正当な理由があるとき」とは、閲覧させることにより取締りの秘密等機密が漏れるなど公益上の支障があるとき、審理の争点に関係がないものを求められたとき、他に閲覧させた文書等(既に閲覧させた文書等である場合を含む(同条第二項に規定する場合を除く。)。)で審理の必要に応えているとき、聴聞期日においてむやみに閲覧請求を乱発する等明らかに聴聞の引き延ばしを図るための閲覧請求など手続法を適正に運用する上で著しい障害がもたらされるときをいうものであること。ただし、閲覧を拒む正当な理由がある場合であっても、当該理由に係る部分以外の部分まで閲覧を拒むことはできないことから、支障のない部分については閲覧させること。
(3) 閲覧の日時及び場所を指定する場合にあっては、閲覧の審理における当事者等の意見陳述の準備を妨げることのないよう、十分な時間的余裕をもって指定すること。また、規則第六条第三項の規定により閲覧の日時及び場所を指定したことに伴い手続法第二二条第一項の規定に基づき新たな聴聞の期日を指定する場合は、当該閲覧の日時から合理的な余裕をもって指定すること。
(4) 手続法第一八条は、資料の複写を行うことまで保障する趣旨ではないこと。なお、資料の複写の申出があった場合は、資料の保全状態、複写設備の状況等を参酌しつつ、行政庁の裁量により適正に対処すること。
7 主宰者の指名(手続法第一九条、規則第七条関係)
主宰者には、不利益処分を行う立場にある課等の組織の責任者以外の職員を指名することが望ましいこと。また、主宰者を補佐する職員には、当該聴聞に係る事案の調査検討に携わった職員以外の職員を充てることが望ましいこと。
8 聴聞の期日における審理の方式(手続法第二〇条、第二一条、社労士法第二五条の四、規則第八条から第一一条関係)
(1) 手続法第二〇条第二項が当事者又は参加人の行政庁の職員に対する質問について主宰者の許可によることとしているのは、質問権が濫用されることとなれば、聴聞の審理に混乱を来すおそれがあることに配慮したものであるが、当該質問が当事者又は参加人の意見の陳述に必要なものと疎明されれば、当然に許可することが必要であること。
(2) 手続法第二〇条第三項に規定する補佐人の出頭許可については、当事者又は参加人の意見の陳述に必要と認められる場合には、当然に許可することが必要であること。ただし、意見の陳述を妨げない限度においてその人数を制限することは可能であること。
(3) 手続法第二〇条第四項は、当事者又は参加人の主張の内容等をより明らかなものとし、もって当事者又は参加人の権利利益の保護に資するとの趣旨で規定するものであるので、主宰者は、同項の規定により、不利益処分の原因となる事実を立証することとなる証拠書類等の提出まで促すことができるものではないこと。
(4) 規則第九条に規定する主宰者の権限行使は、議事を整理するためその他聴聞の審理の秩序を維持するための必要最小限のものでなければならないこと。
(5) 規則第一〇条の規定は、社労士法第二五条の四の規定による聴聞(同法第二五条の二及び第二五条の三に規定する処分に係る聴聞)以外の聴聞の手続について適用されること。
(6) 手続法第二一条第二項の規定により陳述書又は証拠書類等を示すときは、当該陳述書等又はその写しを閲覧させること。ただし、陳述書については、これを示すよう求める者が了解する場合には、口頭で読み上げることもできること。
(7) 陳述書の提示は、その求めがあった場合には原則としてこれを拒むことはできないが、証拠書類等については、これを提示することにより提出者又は第三者の正当な利益を害するおそれがある場合には、その部分について提示を拒むこととしてもやむを得ないこと。
9 聴聞の続行と終結(手続法第二二条、第二三条関係)
(1) 聴聞を続行する必要があるかどうかは、当該事案について当事者又は参加人に意見陳述等の機会が十分に与えられたかどうか、また、不利益処分の原因となる事実に関する当事者又は参加人の主張に根拠があるかどうかをみるにはなお意見陳述等を促す必要があるかどうか等の観点に照らし判断すること。
(2) 当事者が聴聞の期日に出頭しなかった場合は、手続法第二三条の規定に該当する場合を除き、その当事者に意見陳述等の機会を与えるため、改めて聴聞の期日を定めることとなるが、その場合には同法第二二条の適用を受けること。
(3) 手続法第二三条第二項の適用に当たっては、当事者の権利利益を不当に損ない、聴聞の趣旨を没却することのないよう、当事者の意向、状況等について慎重に検討を行い判断すること。
10 聴聞調書及び報告書(手続法第二四条、規則第一二条、第一三条関係)
(1) 手続法第二四条第一項及び第三項並びに規則第一二条の規定に基づき主宰者が作成する聴聞調書及び報告書は、主宰者が責任をもって作成すべきものであって、当事者又は参加人にその訂正権まで認めるものではないこと。したがって、聴聞調書作成後に、当事者又は参加人に読み聞かせた後、署名押印させる必要はないこと。
なお、手続法第二四条第四項の規定に基づく閲覧に応じた場合に、当事者又は参加人が誤りと考える事項について当事者又は参加人が事実上申出ることは妨げられるものではない。
(2) 証拠書類等が提出された場合は、聴聞調書にその標目を記載するほか、当事者又は参加人が行った意見の陳述との対応関係を明らかにしておくこと。また、行政庁に聴聞調書及び報告書を提出するに当たっては、当該証拠書類等を添付すること。
(3) 続行期日が定められた場合における第一回目等の聴聞の期日における聴聞調書については、その作成後行政庁に提出するまでの間は、主宰者において適切に管理が行われるべきこと。また、その間、その閲覧の求めがあったときには主宰者がこれに対応すべきものであること。
11 聴聞の再開(手続法第二五条関係)
手続法第二五条に規定する「聴聞の終結後に生じた事情」とは、聴聞の終結後に、不利益処分の原因となる事実について行政庁が新たな証拠書類等を得た場合等を指すものであること。
12 不利益処分の決定(手続法第二六条、第二七条関係)
(1) 手続法第二六条では、聴聞調書の内容及び報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌して不利益処分の決定をすることとされているが、聴聞の審理の対象となった不利益処分の原因となる事実以外の事実に基づいて不利益処分をすることがあってはならず、このような事実を原因として不利益処分をしようとするときは、改めて聴聞を行うことが必要であること。
(2) 手続法第二七条第二項ただし書の規定は、同法第一五条第三項の規定による掲示を行った結果、その聴聞の期日までの間に不利益処分の名あて人となるべき者が同項に規定する書面の交付を受けた場合にあっては適用されないこと。
13 弁明の機会の付与の手続(手続法第三〇条、第三一条、規則第一四条関係)
弁明の機会の付与の手続については、聴聞の手続に準じて行うこと。
14 社会保険庁への報告等
貴都道府県内において、社労士法第一三条第一項、第二五条の二、第二五条の三及び第二五条の二〇に該当するような処分の原因となる事実が生じた場合には、当該事案の概要を速やかに本職あて報告すること。また、必要に応じて実態調査、あるいは同法第二四条に基づく報告の徴収、立入検査等を行い、その結果についても詳細に報告すること。