添付一覧
○社会保険労務士法の施行について
(昭和四三年一二月九日)
(庁保発第二三号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて社会保険庁長官官房総務課長通達)
社会保険労務士法(昭和四三年法律第八九号。以下「法」という。)、社会保険労務士法施行令(昭和四三年政令第三二七号。以下「令」という。)、社会保険労務士法施行規則(昭和四三年厚生・労働省令第一号。以下「則」という。)及び社会保険労務士の選考に関する基準(昭和四三年厚生・労働省告示第一号。以下「告示」という。)は、昭和四三年一二月二日から施行されることとなった。これに伴い、別に厚生事務次官及び労働事務次官から依命通達(昭和四三年一二月二日厚生省発保第一九七号、労働省発総第二九号)が発せられたところであるが、法の実施については、さらに左記に留意のうえ、遺憾なきを期せられたい。
なお、このことについては、労働省と協議ずみであり、労働大臣官房長より都道府県労働基準局長あて別途通知ずみである。
記
第一 法の目的(法第一条関係)
法は、最近の労働及び社会保険関係法規の専門化と労務問題の重要性がますます高まる傾向にあることにかんがみ、労働及び社会保険に関する事務を処理し、相談指導を行なう社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もって労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的として制定されたものであること。
第二 定義(法第二条関係)
一 本条は、社会保険労務士の定義を定めるとともに、その行なう事務の範囲を定めたものであること。社会保険労務士以外の者(法第二七条ただし書に該当する者を除く。)が他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行なうことが禁止されているのは、本条第一項第一号及び第二号の事務であり(法第二七条参照)、第三号の相談、指導の事務は何人が行なってもさしつかえないところであるが、この場合においても社会保険労務士の名称を使用して行なうことは禁止されているので留意すること。
二 第一項第一号の事務は、行政機関等に提出する書類の作成事務をいい、同項第二号の事務はそれ以外の帳簿書類の作成事務をいうこと。
三 第一項第三号の「事業における労働に関する事項」とは、労働に関する法令に規定がある事項であると否とを問わず事業における労務管理に関する一切の事項をいうこと。
「労働争議に介入することとなるもの」を除いたのは、社会保険労務士が労働相談の名のもとに労働争議に介入することは、公の信用力を背景に国の免許を受けた専門家として行なうこととなり、その影響するところが大きい等のためであること。なお、「労働争議に介入することとなるもの」の解釈については、第二三を参照すること。
四 第二項の「他の法律」とは、たとえば弁護士法等であること。「療養の給付」とは、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)第一三条第一項、健康保険法第四三条第一項、日雇労働者健康保険法第一○条第一項等に定めるもので、診察、薬剤等の支給、手術その他の治療、病院等への収容、看護等をいい、「これに相当する給付」とは、健康保険法第五九条の二、日雇労働者健康保険法第一七条等に定める家族療養費等をいうこと。
「これらの給付を担当する者のなす請求に関する事務」とは、病院、診療所、薬局等療養の給付等の担当者が療養の給付等の費用を、政府その他の保険者に対して請求する事務をいうこと。
したがつて、療養に関するものであつても労災保険法第一三条第三項、健康保険法第四四条等の療養費又は同法第五九条の二第七項の家族療養費の支給について労働者ないし被保険者が保険者に対して行なう請求の事務は、これに含まれないこと。
五 社会保険労務士がその資格において行ない得る事務は、本条に規定するものに限られているので留意すること。なお、代理業務すなわち申告、申請、不服申立て等について事業主その他の本人から委任を受けて代理人として事務を処理することは、社会保険労務士の資格において行ない得る事務には含まれていないので注意すること。
第三 資格(法第三条関係)
本条は、社会保険労務士となる資格を定めたものであること。「弁護士となる資格を有する者」とは、弁護士法第四条、第五条、第八一条及び法第八二条に規定する者をいうこと。
第四 免許(法第四条関係)
本条は、社会保険労務士試験に合格した者等社会保険労務士となる資格を有する者であつても、主務大臣から免許を受けなければ社会保険労務士となることができないことを定めたものであること。なお、免許の申請は、社会保険労務士となる資格を有する者であれば、いつでも行なうことができること。
免許の申請手続、免許証の様式、免許証の再交付及び免許取得者の公告については、則第一条から第三条まで及び第六条に定めていること。
第五 欠格事由(法第五条関係)
本条は、免許の欠格事由を定めたものであり、受験についてのそれではないので、本条に該当する者であつても受験することはさしつかえないこと。
「刑に処せられた者」とは、刑を言渡した判決(執行猶予の言渡があると否とを問わない。)が確定した者をいうこと。
「執行を受けることがなくなつた」とは、刑の執行が免除された場合及び執行猶予期間が満了した場合をいうこと。
第六 免許の取消し(法第六条関係)
一 本条は、社会保険労務士の免許の取消しについて規定したものであるが、本条の免許の取消しはいわゆる覊束行為であり、本条の事由に該当した場合には必ず取り消さなければならないものであること。
二 免許の取消しの手続及び免許の取消しを行なつた場合の公告については、則第四条及び第六条に定めていること。
第七 受験資格(法第八条関係)
一 本条は、社会保険労務士試験の受験資格を定めたものであること。
二 第一号、第二号及び第三号は、おおむね短期大学を卒業した程度以上の学歴を有する者であること。
「学校教育法による大学において学士の称号を得るのに必要な一般教養科目の学習を終わつた者」とは、学校教育法第六三条において「大学に四年以上在学し、一定の試験を受けこれに合格した者は学士と称することができる。」と規定しており、学士の称号を得るには一般教育科目と専門教育科目の学習を終わらなければならないこととなつているが、このうち一般教育科目の学習を終わつた者をいい、具体的には、人文科学系三科目、社会科学系三科目、外国語科目及び保健体育科目の学習を終わつた者をいう(大学設置基準(昭和三一年文部省令第二八号))こと。
三 「国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険諸法令に関する事務に従事」した者とは、国家公務員又は地方公務員として、法別表第一に掲げるいずれかの法令の施行事務に従事した者又は施行事務を関連した事務に従事した者をいうこと。したがつて、現実には、労働省及び厚生省関係の職員のうち一定の者がこれに該当し、郵政省、林野庁等の五現業の職員等で労働基準法等の適用を受ける事務に従事している者は、公務員ではあるが、これには該当しないこと。
四 本条をはじめ本法において一定の事務に従事した期間を算定する場合には、暦によつて計算するものとし、当該所定の期間が年を単位として定められているときにあつては、一月に満たない端数は切り上げて一月とするものとすること。また、所定の事務に従事した期間を通算することができる場合においては、一の事務に継続して従事した期間ごとに端数処理をした結果によつて合計するものとすること。
五 本条第五号の「行政事務」とは、行政機関の権限に属する事務のほか、立法又は司法機関に属する事務も含むものと広く解訳することとし、たとえば、国の現業の行政機関(いわゆる五現業)、地方公営企業、国会の事務局、地方議会の事務局等において行なう事務も含まれること。ただし、単なる労務の提供、特別な判断を要しない単純な事務等は含まれないこと。
六 「行政書士となる資格を有する者」とは、行政書士法第二条に定める者をいうこと。
七 「労働組合の役員」とは、労働組合法第二条に定める労働組合の執行機関又は監査機関の構成員、たとえば、執行委員長、執行委員、会計監査等をいうこと。
「労働組合の役員として労働組合の業務にもつぱら従事」する者とは、労働組合の業務に専従する者(いわゆる専従役員)をいうこと。
八 「会社その他の法人……の役員として労務を担当」とは、いわゆる労務担当の取締役、理事等をいうこと。なお、これらの者は労務担当専任でなくても、たとえば営業等と兼務であつてもさしつかえないが、名義のみで現実には事務に従事しない者は該当しないこと。
九 「労働組合の職員」とは、労働組合に雇用される者をいい、いわゆる書記局職員がこれに該当すること。
「主務省令で定める事務」とは、則第七条に定める事務をいうが、この「事務」には電話交換手、自動車運転手、用務員等は含まれないこと。
なお、同条の「特別な判断を要しない単純な事務」とは、タイプ浄書、複写等の機械的な事務をいうこと。
第八 社会保険労務士試験(法第九条関係)
本条は、社会保険労務士試験の試験科目を規定したものであるが、具体的な実施方法、内容等については、社会保険労務士試験委員が参画することとなること。
第九 試験の執行(法第一○条関係)
一 試験の執行については、則第一○条において毎年四月三○日までに官報により公告することとしているが、当面は毎年一回数会場において行なう予定であること。
なお、昭和四四年については、則附則第七項で暫定措置が定められていること。
二 社会保険労務士試験委員の任期等については、則第一二条に規定していること。
第一○ 試験科目の一部の免除(法第一一条関係)
試験科目の免除の申請は則第八条によつて行なわなければならないこと。同条第二項の「書面」とは、合格証の写し、在職期間を証明する書面等をいうこと。
第一一 受験手数料(法第一二条関係)
受験手数料の額は、令第一条で一、○○○円と定められており、受験申込書にその額に相当する額の収入印紙をはつて納めなければならないものであること。
第一二 合格の取消し等(法第一三条関係)
一 「不正の手段によつて社会保険労務士試験を受け」とは、受験資格を偽つて受験したり、他人に受験させたりする等不正行為を行なつた場合をいうこと。
二 第一項の「その試験を受けることを禁止する」とは、不正手段によつて試験を受けようとした者に対し、当該試験についてその受験を禁止することをいい、第二項は、前項の不正手段を行なつた者に対し同項による処分のほか、このような不信義な行為を行なつた者に対する制裁として、受験禁止期間を定めたものであり、最高を三年とし、情状によつて主務大臣の裁量で必要な期間について処分を命じ得ることとしたものであること。
前記受験禁止期間中に受験の申込があつた場合は、それを受理することはできないが、誤つて受験申込書が受理され合格した場合においても、その合格は無効となること。
第一三 試験に関する省令(法第一四条関係)
一 試験に関する諸手続は、則第二章に規定していること。
二 則第八条の試験科目の一部免除については、随時申請できるが、受験の申込み以前に試験科目の免除の決定通知を受けた場合には、受験申込書に所定事項を記入して申込み、受験の申込みと同時に試験科目の免除を申請する者は則第九条第二項第二号により受験申込書に試験科目免除申請書を添付して行なうこととしていること。
三 則第九条第二項第一号の「書面」は次によること。
(一) 法第八条第一号及び第二号に該当する者は、履修、卒業又は修了を証明する書面又はその写し
(二) 法第八条第三号に該当する者は、合格を証する書面又はその写し
(三) 法第八条第四号及び第五号に該当する者は、当該官庁等の在職期間を証明する書面。なお外地における経歴の証明については前記に代わる書面
(四) 法第八条第六号に該当する者は、行政書士となる資格を有することを証する書面又はその写し
(五) 法第八条第七号、第八号及び第九号については、それぞれ当該勤務先の証明書等とするが、すでに勤務先が消滅している場合等においては、その勤務及び勤務期間を立証するに足る書面、たとえば、当時の事業主、上司、同僚等の二人以上の証明等によること。
第一四 社会保険労務士業の届出(法第一五条関係)
一 本条は、社会保険労務士業を開業しようとする際の手続について定めたものであること。
二 「他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行なう」とは、いわゆる開業して行なうことであること。
なお、協同組合等の団体が、その構成員のために事務を行なう場合であつても、「他人」の求めに応じて行なうことに該当するものであること。
「報酬」とは、一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付をいうが、ここでは、法第二条に規定する事務の対価として支払われるものをいい、事務の対価であるか否かは、その事務と相当因果関係を有する反対給付か否かによつて判断すべきであり、会費等と称していても、それが第二条の事務を行なうことに対して支払われていると一般的に認められるような場合には報酬に該当すること。なお、報酬は、役務に対する対価であるから、用紙代、印刷費等を補填する実費弁償は、その範囲内にとどまる限り報酬には該当しないこと。
「業として」とは、一般には、一定の行為の反覆的継続的遂行が、社会通念上事業の遂行とみられるような場合をいうが、ここでは、報酬を得て第二条の事務を業とする者をいい、独立して自らの責任において第二条の事務を反覆的継続的に遂行する者をいうこと。したがつて、他人に使用され、その指揮命令に従つて労務を提供する者(会社等の従業員)は、本条の「業として」には該当しないこと。
三 「事務所」とは、継続的に社会保険労務士業を執行する場所をいい、継続的に社会保険労務士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によつて判定するものとすること。
なお、「あらかじめ」届け出なければならないので、現実に業務を開始する以前に届け出る必要があり、届出が受理されてはじめて開業が認められることになること。
四 本条によつて届け出なければならない事項は、則第一三条第一項に規定されていること。なお同条第三項により事務所を廃止したときも届出が必要であること。
五 本条の届出の受理の権限は、令第三条によつて都道府県知事及び都道府県労働基準局長に委任されているので留意すること。
六 本条による届出をせず、又は虚偽の届出をした者に対しては、法第三三条の罰則が適用されること。
第一五 事務所(法第一六条関係)
一 本条は、開業している社会保険労務士について、その業務を行なうための事務所を二以上設けてはならないこととし、弁護士等個人的な資格に基づく業と同様直接本人が行なわなければならないことを建前とするため事務所が一か所主義の原則を規定したものであること。
しかしながら、このことは、本人が補助者を使用することまでを禁ずるものではなく、本人が直接指揮監督する場合の補助者は、本人の手足であり、その事務は本人の事務であること。
二 社会保険労務士となることができるのは、法第三条に規定する資格を有する者でなければならないので、当該資格を有しうるのは自然人に限られ、社会保険労務士業を目的とする法人(法第二条第一項第三号の事務のみを行なうものを除く)は、法第二七条違反となり、その存立は認められないこと。
なお、社会保険労務士が共同して事務を行なう共同事務所はさしつかえないこと。
三 本条ただし書の「特に必要がある場合における主務大臣の許可」については、立法に際し本法の重要な原則として慎重に運用することが要請されているので、増設許可については追つて通知するまでの間は許可しないこととされたいこと。
なお、この場合の許可の権限は、令第三条で都道府県知事及び都道府県労働基準局長に委任されていること。
第一六 不正行為の指示等の禁止(法第一七条関係)
一 本条は、開業している社会保険労務士に対する規制であること。
二 本条は、通常の場合には労働及び社会保険に関する不正行為をした者の教唆犯又は幇助犯にとどまるものを、その行為者自身よりも重い刑罰を定めた(法第三二条第二号)ものであり、社会保険労務士の業務の公正に対する社会的信用を維持するための規定であること。
三 本条に違反した者に対しては法第三二条の罰則が適用されること。
第一七 報酬の制限(法第一八条関係)
一 「何らの名義をもつてするを問わず」とは、書類作成料、指導費、会費、書類用紙代、顧問料等その名称の如何を問わず、その事務の対価として支払われるもののすべてをいうこと。
二 第二項の報酬額の告示は追つて定める予定であること。
三 本条第一項に違反した者に対しては、法第三三条の罰則が適用されること。なお、法第三四条に両罰規定があること。
第一八 帳簿の備付け及び保存(法第一九条関係)
一 本条は、開業している社会保険労務士の適正な業務の運営を確保するため設けられたものであること。
二 第一項の規定により帳簿に記載しなければならない事項は、則第一五条に定めている五項目であること。
なお、帳簿の様式はいかなるものであつても、記載事項が明確なものであればさしつかえないこと。
三 「関係書類」とは、依頼状、領収書控、作成書類控その他当該事務に関する書類をいうこと。
なお、本条の保存義務は、廃業した場合であつても適用のあることはいうまでもないこと。
四 則第一六条は、社会保険労務士業を行なう社会保険労務士が、法第二条第一項第一号に規定する書類を作成した場合には、必ずその書類に作成年月日及び社会保険労務士何某という署名又は記名押印しなければならない旨定めているが、これは、当該書類を作成した社会保険労務士の責任を明らかにし、その業務の適正を期するためであること。
なお、署名又は記名押印の位置は作成書類のいかなる箇所であつても明確に識別しうるものであればさしつかえないこと。
五 本条に違反した者に対しては、法第三三条の罰則が適用されること。
第一九 依頼に応ずる義務(法第二○条関係)
一 「正当な理由がある場合」とは、法令に違反することとなるもの、事務処理能力からみて所定期限に間に合わないとき等信義をもつて対処しても応じることができない場合をいうこと。
二 本条に違反した者に対しては、法第三三条の罰則が適用されること。
第二○ 信用失墜行為の禁示(法第二一条関係)
「信用又は品位を害するような行為」とは、労働社会保険諸法令に違反するような行為はもちろんのこと、刑法に触れるような犯罪行為、その他の非行をいうものであること。
なお、本条は、いわゆる訓示的な規定であるが、本条に該当するような非行については、法第二五条の懲戒の対象となるものであること。
第二一 秘密を守る義務(法第二二条関係)
一 「正当な理由」のある場合とは、刑事訴訟法に基づく証人、労働委員会における証人等法令に基づく証人としての証言等秘密を漏らすことが社会的に違法視されないような場合をいうこと。
「その業務に関して知り得た秘密」とは、社会保険労務士業を行なう社会保険労務士が、その業務を行なうにあたって知り得た一切の秘密をいうこと。したがって、労使関係に関する事項、労働社会保険諸法令に関する事項はもちろん企業の経営に関する事項等も含まれるものであること。
「他に漏らす」とは、他人に話すような場合のほか、他人が了知しうるような状態に書類等を置く場合も含まれること。
「盗用」とは、当該秘密にかかる事項を、本人の承諾を得ずに、自己又は他人のために利用することをいうこと。
二 本条の違反に対する罰則の適用にあたっては、告訴がなければ公訴の提起ができないこととしている(法第三二条第二項)のは、被害者の名誉等を考慮し、その意思を尊重することとしたものであること。
三 本条に違反し、告訴された者に対しては、法第三二条の罰則が適用されること。
第二二 労働争議に対する不介入(法第二三条関係)
一 労働争議に対する不介入については、法第二条第一項第三号と本条の二か所において規定しているが、前者は、社会保険労務士の名称を用いて行なうことができる事務の範囲を規定したものであり、本条は、開業している社会保険労務士について、その名称を用いると否とにかかわらず労働争議に介入することを禁止したものであること。
したがって、本条は、社会保険労務士業を行なう社会保険労務士のみについて規定したものであり、事業に労働者として雇用されている者で社会保険労務士の免許を持っているだけで開業していない者には適用されないこと。
二 「法令の定めによる場合を除き」とは、社会保険労務士業を行なう社会保険労務士が、たとえば弁護士、労働委員会の委員、労働委員会の指名を受けた斡旋員、公共企業体等労働委員会の委員及び地方調停委員会の調停委員のごとく法令の定めによりその職務として行なう場合を除く趣旨であること。
三 「労働争議」とは、労働関係の当事者間において労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生している状態又は発生するおそれがある状態をいうこと(労働関係調整法第六条)。
労働争議に「介入」するとは、具体的には、当事者の一方の行う争議行為の対策の検討、決定等に参与すること、当事者の一方を代表して相手方との折衝にあたること、当事者の間に立って交渉の妥結のためにあっせん等の関与をなすこと等に限られること。
なお、例えば、争議行為が発生している状態にある事業場の事業主又は労働者に対して社会保険労務士が、法第二条第一号から第二号までに掲げる事務を行うこと並びに同項第三号の事務として労働社会保険諸法令の解釈・運用について相談に応じ、又はその遵守につき指導すること及び事業における労務管理のうち当該争議行為にかかわりのない事項について相談に応じることは、一般的には、労働争議に「介入」することには該当しないものであること。
第二三 報告及び検査(法第二四条関係)
一 社会保険労務士業を行なう社会保険労務士から、その業務に関する報告等を徴収することは、施行規則において定めていないが、全国的に定期報告等の必要があると認める場合は別途通知すること。
二 本条に基づく報告の徴収及び立入検査権限については、令第三条において都道府県知事および都道府県労働基準局長に委任されていること。
三 「その業務に関係のある帳簿書類」とは、法第一九条により義務づけられている関係帳簿書類のみでなく、より広範な関係帳簿書類も含まれるものであること。
四 第二項に規定する「身分を示す証明書」は、則第一七条において所定様式を定めていること。
五 本条による立入検査の権限は重要な権限であることにかんがみ、この立入検査を行なわせる職員は、その権限を行使するにふさわしい職員を任命されたいこと。
六 本条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に答弁せず若しくは虚偽の答弁をした者に対しては、法第三三条の罰則の適用があること。
なお、法第三四条に両罰規定があること。
第二四 懲戒(法第二五条関係)
一 本条は、開業している社会保険労務士のみでなく、免許を有するすべての社会保険労務士に適用されるものであること。
二 「その業務に関して」とは、社会保険労務士業を行なう場合のみに限るものではなく、広く社会保険労務士が行なう事務全般をいうこと。
「社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行」についても、社会保険労務士業を行なう場合の業務に限ることなく、広く社会一般の道徳観念からみていちじるしく非難を受けるような行為をいうこと。
三 本条に基づく懲戒処分は、主務大臣において行なうが、都道府県知事又は都道府県労働基準局長は、本条第一項に該当するような事実があると認めた場合には、すみやかに主務大臣あて報告すること。
四 本条は、公開による聴聞制度を設けているが、行政不服審査法に基づく異議申立てを行なうことを排除するものではないこと。
五 本条の懲戒処分として社会保険労務士業を行なう社会保険労務士の業務の停止を命じた場合には、則第一八条によりその旨を官報で公告するものであること。
六 本条第一項の業務の停止命令に違反した者に対しては、法第三二条の罰則が適用されること。
第二五 名称の使用制限(法第二六条関係)
一 本条は、社会保険労務士でない者が、社会保険労務士又はこれに類似する名称を使用することを禁止したものであること。
二 本条の類似名称に、どのようなものが該当するかは、その業務の内容等をも勘案して総合的に判断すべきであるが、たとえば、「労務保険士」、「社会保険労政士」、「社会保険労務師」等がおおむねこれに該当するものと考えられること。
三 本条に違反した者に対しては、法第三三条の罰則が適用されること。
第二六 社会保険労務士業の制度(法第二七条関係)
一 本条により禁止されるのは、法第二条第一項に規定されている社会保険労務士の事務のうち、第一号及び第二号の事務についてであり、同項第三号の事務についてはこの限りでないこと。
二 本条により禁止されるのは、法第二条第一項第一号及び第二号の事務を「他人の求めに応じ」、「報酬を得て」、「業として」行なうことであり、これらの意義については、第一五に述べたのと同様であること。したがって、法第二条第一項第一号及び第二号の事務を「他人の求めに応じ、業として」行なうものであっても、商工会の組織等に関する法律第五六条に規定する小規模事業者のための経営改善普及事業として商工会又は商工会議所が中小企業経営指導員を使用して行なうものその他中小企業団体中央会、中小企業事業協同組合、経営者協議会、労働基準協会等が会員に対するサービス業務として無料又は実費弁償程度の手数料を徴収して行なうものは、「報酬を得て」行なうものではないので、本条の制限に触れないものであること。
三 「他の法律に別段の定めがある場合」とは、弁護士法第三条、労働者災害補償保険法第三四条の七、失業保険法第三八条の二五等がこれにあたること。
「政令で定める業務に附随して行なう場合」とは、令第二条により、公認会計士、会計士補または外国公認会計士が行なう公認会計士法第二条第二項に規定する業務及び税理士が行なう税理士法第二条に規定する業務を行なう際、それに附随して行なう場合であること。
なお、計理士の名称使用に関する法律(昭和四二年法律第一三〇号)第一項の規定により計理士の名称を使用している者についてもこれに準じて取り扱われたいこと。
四 中小企業指導法第六条に規定する中小企業の経営の診断を担当する者として通商産業省令で定められた中小企業診断員が行なう経営の診断及び指導の業務並びに建築士が建築士法第二一条に基づいて行なう建築物に関する法令又は条例に基づく手続の代理等の業務を行なう際に、その業務の遂行上時として法第二条第一項第一号又は同項第二号の事務を行なう場合があっても、当該業務に関連する範囲内である限り本条違反としては取り扱わないものであること。
五 本条に違反した者に対しては、法第三二条の罰則が適用されること。なお、法第三四条に両罰規定があること。
第二七 資質向上のための援助(法第二八条関係)
本条は、公的制度としての社会保険労務士制度の健全な発展を図る見地から、国が社会保険労務士の資質の向上を図るための措置について努力すべきことを定めたものであること。
第二八 主務大臣等(法第二九条及び第三〇条関係)
法は厚生大臣と労働大臣の共管であること。なお、令第三条により都道府県知事及び都道府県労働基準局長に委任された権限の具体的実施については、十分協議のうえ、行使されたいこと。
第二九 罰則(法第三二条、法第三三条及び法第三四条関係)
一 本法の違反については、司法警察権が認められていないので、違反事実を発見した場合には地方検察庁等に対し告発することにより行なわなければならないこととなるので念のため申し添える。
二 第三四条は、両罰規定であるが、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、本条に規定する違反行為を行なった場合には、当該違反行為者だけでなく、当該業務の結果の帰属する法人又は人に対してもその責任を問い、その法人又は人を処罰することとしたのみでなく、各本条の規定では従業者を罰するか否か明らかでない場合においても、本条に規定する行為に限って従業者も処罰することを明らかにしたものであること。
第三〇 施行期日(法附則第一項関係)
法の施行期日は、社会保険労務士法の施行期日を定める政令(昭和四三年政令第三二六号)により、一二月二日であること。
第三一 行政書士に対する経過措置(法附則第三項関係)
法附則第三項の規定による行政書士が社会保険労務士の免許を申請する場合の手続は則附則第二項に定めるところによること。
第三二 選考、考査(法附則第五項関係)
法附則第五項の規定による選考申請は、則附則第三項に定めるところによること。
なお、選考手数料の額は令附則第二項により一、〇〇〇円となっており、その額に相当する額の収入印紙を選考申請書にはって納めなければならないこと。
第三三 告示(昭和四三年厚生・労働省告示第一号関係)
一 告示は、法附則第一〇項の規定により社会保険労務士の選考及び考査の基準並びに同附則第四項第四号に掲げる者の範囲を定めたものであること。
二 選考は、主務大臣が行なうこととなるが、これらの事務は主務大臣が任命した社会保険労務士選考委員がつかさどるものであること。
三 用語の定義(告示第一条関係)
(一) 本条は、この告示で用いられる用語の定義を定めたものであること。
(二) 「学校教育法による大学又は旧大学令による大学を卒業したこと」とは、「学校教育法による大学又は旧大学令による大学において学士の称号を得たこと」と同意義であること。
(三) 「労働社会保険関係法人」とは次のものをいうものであること。
イ 労働福祉事業団(労働福祉事業団法)
ロ 中小企業退職金共済事業団(中小企業退職金共済法)
ハ 建設業退職金共済組合(同 右)
ニ 清酒製造業退職金共済組合(同 右)
ホ 雇用促進事業団(雇用促進事業団法)
ヘ 建設業労働災害防止協会(労働災害防止団体等に関する法律)
ト 陸上貨物運送事業労働災害防止協会(同 右)
チ 林業労働災害防止協会(同 右)
リ 港湾貨物運送事業労働災害防止協会(同 右)
ヌ 鉱業労働災害防止協会労働災害防止協会(同 右)
ル 健康保険組合及び同連合会(健康保険法)
ヲ 厚生年金基金及び同連合会(厚生年金保険法)
ワ 年金福祉事業団(年金福祉事業団法)
カ 国民健康保険組合及び国民健康保険団体連合会(国民健康保険法)
ヨ 石炭鉱業年金基金(石炭鉱業年金基金法)
(四) 「実施事務」とは、労働社会保険関係法人の設立根拠となった法律に基づいて当該法人が行なう業務であって、公務員が行なう施行事務に相当する事務をいうものであること。
(五) 「労働又は社会保険に関する法令に関する事務」とは、法別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令に関する事務のほか、国家公務員法、地方公務員法、船員法及び各種共済組合法等に関する事務をいうこと。
(六) 「労働組合の役員がもっぱら従事した労働組合の業務」については、第七の七を参照されたいこと。
四 選考の対象(告示第二条関係)
(一) 本条は、法附則第四項第四号に掲げる者の範囲を定めたものであること。
(二) 社会保険労務士の選考は、法附則第四項第一号から第三号まで、及び本条各号に該当する者について行なわれるものであること。
(三) 本条第七号は、法附則第四項第一号から第三号まで、及び告示第一条第一号から第六号までのいずれにも該当しない者について、労働社会保険諸法令の施行事務、実施事務又は労働社会保険関係事務のうち、二以上の事務に従事した期間を通算することを認める規定であること。この場合において、労働社会保険関係事務に従事した期間は、その者の学歴に応じ、告示別表第一で定めるところにより一定の率で減じた期間をもって施行事務又は実施事務に従事した期間と通算するものであること。
(四) 「他人の求めに応じ報酬を得て、法第二条に規定する事務を業として行なっている者」については、第一四の二を参照されたいこと。
(五) 第九号は、いわゆる弾力条項であるが、具体的事例については、個別に社会保険労務士選考委員の意見をきいて選考の対象にするかどうかを認定するものであること。この対象者は、たとえば、外国における大学を卒業した者等が卒業後に法附則第四項第一号又は本条第一号に掲げる期間労働社会保険諸法令の施行事務に従事した者等が考えられること。
(六) 選考に際しての期間の計算は、第七の四と同様であること。
五 選考の基準(告示第三条関係)
(一) 本条は、選考の基準を規定したものであり、法附則第四項第一号から第三号まで、及び告示第二条に掲げる選考対象者のうち、本条各号に該当する者についての選考は書類選考によって行ない、その他の者については、考査を行なうことによって行なわれるものであること。
(二) 書類選考は、その者の学歴に応じ、本条各号に規定するところにより一定期間以上労働社会保険諸法令の施行事務又は実施事務に従事し、そのうち、一定期間以上が労働社会保険基本法令の施行事務又は実施事務に従事した者について行なわれるものであること。したがって、たとえば大学卒業の学歴を有する者にあっては、労働社会保険諸法令の施行事務又は実施事務に一〇年以上従事し、かつ、その一〇年のうち、三年以上は労働社会保険基本法令の施行事務又は実施事務に従事したものでなければならないこと。
(三) 本条第五号は、法附則第四項第一号から第三号まで、及び本条第一号から第四号までのいずれにも該当しない者について、労働社会保険諸法令の施行事務、実施事務又は労働社会保険関係事務のうち、二以上の事務に従事した期間を通算することを認める規定であること。この場合において、労働社会保険関係事務に従事した期間は、その者の学歴に応じ、告示別表第二で定めるところにより、一定の率で減じた期間をもって労働社会保険諸法令の施行事務又は実施事務に従事した期間と通算するものであること。
六 考査の基準(告示第四条関係)
(一) 本条は、選考を行なうにあたって行なう考査の基準を規定したものであること。
(二) 考査は、法附則第四項第一号から第三号まで、及び告示第二条各号に掲げる者のうち、告示第三条各号に該当する者以外の者について行なわれるものであること。
(三) 考査の方法その他考査に関しての取扱いについては、別途通知される予定であること。
第三四 社会保険労務士試験の暫定措置(則附則第七項関係)
則附則第七項は、昭和四四年に行なう社会保険労務士試験について暫定措置を定めていること。
第三五 施行機関(令附則第三項及び第四項関係)
法の施行事務は、厚生省においては社会保険庁長官官房総務課(令附則第三項)で行ない労働省においては労働大臣官房総務課(令附則第四項)の所掌事務とされているが、昭和四三年労働省訓第一四号により設置された社会保険労務士制度管理室で行なうものであること。
また、都道府県においては民生主管部の保険課(部)で所掌するようにされたく、都道府県労働基準局においては監督課で所掌する(則附則第九項)ものであること。
第三六 地方税法の一部改正(法附則第一五項関係)
法附則第一五項は、社会保険労務士を事業税の納付の対象となる事業としたものであること。
第三七 行政書士法の一部改正(法附則第一六項関係)
法附則第一六項は、行政書士について、従来どおり、他人の依頼を受け報酬を得て労働社会保険諸法令に基づいて官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することとしたものであること。
第三八 登録免許税法の一部改正(法附則第一七項関係)
法附則第一七項は、社会保険労務士の免許を受ける場合の登録免許税を一万円と定めたものであること。
第三九 事務処理の基本方針について
一 令第三条に規定する権限の委任に基づき都道府県知事及び都道府県労働基準局長が行なう事務の処理について
(一) 法第一五条に規定する届出の受理、法第一六条ただし書に規定する許可並びに法第二四条第一項に規定する報告の徴収及び立入検査の権限は都道府県知事と都道府県労働基準局長が協議して行なうものであること。
(二) 法第二四条第一項に規定する報告の徴収及び立入検査に係る事項が都道府県知事又は都道府県労働基準局長のいずれか一方の専管事項であるときは、協議の後、当該関係の都道府県知事又は都道府県労働基準局長がそれぞれの権限の行使を行なっても差し支えないが、その結果については相互に連絡することとすること。
(三) 社会保険労務士業検査職員証の発行は、都道府県の職員にあっては当該都道府県知事、都道府県労働基準局の職員にあっては当該都道府県労働基準局長が行なうこと。
(四) 社会保険労務士業開始届(様式第六号)、社会保険労務士業変更届(様式第七号)、社会保険労務士業廃止届(様式第八号)及び事務所増設許可申請書(様式第九号)の届書又は申請書は、都道府県知事又は都道府県労働基準局長のいずれか一方に提出することでさしつかえないが、その結果については相互に連絡すること。
二 則第一条第一項、第三条第二項、第四条、第五条、第八条第一項、第九条第一項、及び附則第三項の規定に基づき都道府県知事又は都道府県労働基準局長を経由する事務の処理について
(一) 前記各条の規定に基づき申請される各種申請書等(以下「申請書等」という。)は都道府県知事又は都道府県労働基準局長のいずれか一方に提出することでさしつかえないこと。
(二) 申請書等を都道府県知事が受理した場合は厚生大臣へ、都道府県労働基準局長が受理した場合は労働大臣へ送付されたいこと。
三 地方における協議及び事務連絡体制について
本法における権限の行使及びこれに伴なう事務処理について、適正かつ統一的な施行を期するため、都道府県にあっては都道府県保険課長及び失業保険課長並びに都道府県労働基準局監督課長とこれらの課の関係職員をもって協議及び事務連絡体制を確立せしめられたいこと。