添付一覧
○国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準について
(昭和五四年一一月一日)
(庁保発第三二号)
(各都道府県知事あて社会保険庁年金保険部長通知)
標記については、昭和四一年一二月一七日庁保発第二八号通知に基づき取り扱ってきたところであるが、今般国民年金障害等級認定基準の見直しに伴い別紙のとおり国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準を定めたので、その運用に遺憾のないよう取り計らわれたい。
なお、昭和四一年一二月一七日庁保発第二八号は廃止する。
国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準
目次
第一 一般的事項
第二 個別基準
一 視覚障害
二 聴覚障害
三 肢体不自由
(一) 上肢の機能障害
(二) 指の機能障害
(三) 下肢の機能障害
(四) 体幹の機能障害
四 呼吸器疾患
(一) 結核性疾患
(二) 非結核性疾患
五 精神障害
六 心臓疾患
七 腎臓疾患
八 肝臓疾患
九 血液・造血器疾患
一〇 その他の障害
国民年金において併合認定を行う場合の後発傷害認定基準
この認定基準は、「併合認定の対象となる新たに発した傷病に係る傷害の程度を定める件」(昭和三六年厚生省告示第三七六号。以下「告示」という。)に定める障害(以下「基準障害」という。)の程度の認定の基準を示すものである。
第一 一般的事項
告示一七号に規定する障害の程度は、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、告示一号から一六号までと同程度以上であって、日常生活が制限を受けるか又は日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものであるが、その程度とは、日常生活にやや制限を受ける程度、すなわち、日常生活において制限はあるが、労働により収入を得ることは不可能ではない程度をいう。
第二 個別基準
一 視覚障害
(1) 試視力表、試視力表の標準照度、屈折異常、両眼視力の和、視野狭窄及び視野欠損等の取扱いについては、国民年金障害等級認定基準(昭和五四年一一月一日庁保発第三一号社会保険庁年金保険部長通達。以下「認定基準」という。)の第二の一による。
(2) すでに視覚障害のあるものは、一眼視力が○・○四のものとしたのは、たとえば、初診日から二○歳に達する日前又は昭和三六年四月一日前である傷病による障害(以下「前発障害」という。)により、一眼の視力が○・○四以下で他眼の視力が健全であつたものが、二○歳に達した日以後又は昭和三六年四月一日以後に新たに発した傷病による障害(以下「後発障害」という。)により、その健全なる側で○・○四以下の視力となる場合は、併合認定により国民年金法別表に該当するものとして取扱うこととする趣旨に基づくものである。
(3) 両眼による視野欠損が二分の一のものには、両眼の高度の不規則な視野狭窄又は半盲性視野欠損等は該当するが、交又性半盲症等では該当しない場合がある。ただし、この際の面積は厳格に数量的に計算する必要はないが、診断書の視野表の記入は必要とするものである。
二 聴覚障害
(1) 聴力及び最良語音明瞭度の検査方法については、認定基準の第二の二による。
(2) 両耳の聴力損失が六○デシベルのものとは、話声語が耳もとで発せられた場合には、それを解することが可能な程度のものをいう。この場合、補聴器の使用により、聴音能力が増強する場合もあるが、補聴器を使用しない状態で検査するものとする。
(3) すでに聴力障害のあるものは、一耳の聴力損失が九○デジベルのものとしたのは、たとえば、前発障害により、一耳の聴力損失が九○デジベル以上、他耳の聴力が健全であつたものが、後発障害により、その健全なる側で九○デジベル以上の聴力損失となる場合につき、前記一の(二)と同様の趣旨に基づくものである。
三 肢体不自由
(1) 上肢の機能障害
ア 関節の機能に著しい障害を有するものとは、その関節が良肢位で強直している場合、関節の自動統御が円滑に行えない場合、他動運動領域が二分の一以下に制限される場合及び筋力が半減の場合等をいう。
イ 一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能に著しい障害を有するものとは、日常生活において制限はあるが、その隣接関節の代償機能及び健側上肢の補助等により、食事、洗面及び衣服の着脱等上肢本来の機能を遂行することができる程度のものをいい、特に補助用具を必要としない程度のものである。
(2) 指の機能障害
ア 指を欠くもの及び指の機能の著しい障害については、認定基準の第二の六の(1)及び(3)による。
イ ひとさし指を含めて一上肢の二指を欠くものとは、必ずひとさし指を欠き、それに加えて中指、くすり指又は小指のうち一指を欠くものをいう。
ウ ひとさし指を含めて一上肢の三指に著しい障害を有するものとは、必ずひとさし指に著しい障害があり、それに加えて、中指、くすり指又は小指のうち、二指も同じく著しい障害を有し、おや指と他指とによる把握時に、それらを有効に参加させえないものである。
エ 指の用を全く廃したものとは、指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没、又は不良肢位拘縮等により、指があつてもそれがないのと同程度の機能障害があるものをいう。
オ ひとさし指を含めて一上肢の二指の用を全く廃したものは、必ず、ひとさし指の用を全く廃した障害があり、それに加えて中指、くすり指又は小指のうちの一指にも同じく用を廃した障害があるものをいい、このため、おや指と他指とで物をつまむ動作のとき、若しくはにぎる動作を行なう場合、十分に機能を発揮できないものである。
(3) 下肢の機能障害
ア 関節の機能に著しい障害を有するものについては、前記(1)のアによる。
イ 一下肢の股関節、膝関節又は足関節のうち、いずれか一関節の機能に著しい障害を有するものとは、日常生活において制限はあるが、その隣接関節の代償機能又は健側下肢の補助等により、起立及び歩行動作等下肢本来の機能を遂行することができる程度のものをいい、特に補助用具を必要としない程度のものである。
ウ 下肢短縮については、腸骨前上棘より内くるぶし下端までの長さを左右下肢との比較においてみるものである。
(4) 体幹の機能障害
ア 体幹の機能障害は、体幹麻痺を遺した脊髄性小児麻痺、脳性麻痺、脊髄損傷又は強直性脊椎炎などによつて生ずるものである。
イ 体幹の機能に著しい障害を有するものとは、体幹の障害により、日常生活において制限はあるが、特に体幹用の補助具等を必要としない程度のものをいう。
四 呼吸器疾患
(1) 結核性疾患
ア 結核性疾患による病状の程度についての判定は、排菌状態、胸部X線所見、一般状態、理学的所見、自他覚症状、治療及び病状の経過、合併症の有無等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも一年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が制限をうけるか又は日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものを基準障害に該当するものとする。
イ 基準障害に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
認定の時期前六カ月以内に排菌がなく、かつ、胸部X線所見が、日本結核病学会病型分類のⅢ型(不安定非空洞型)であるもの
ウ 結核性疾患による病状の程度の判定においては、「結核の治療指針」(昭和三八年六月七日保発第一二号厚生省保険局長通達)に掲げる安静度表の五度又は六度に該当するものが、基準障害におおむね相当するので、認定にあたっては参考資料として用いるものとする。
エ 非定型抗酸菌症については、結核性疾患に準じて判定するものとする。
(2) 非結核性疾患
非結核性疾患による機能障害の程度についての判定は、予測肺活量一秒率(肺活量予測値に対する一秒量の百分率)が三〇%をこえ四〇%以下であるか動脈血ガス分析値に異常があり、かつ、認定基準の第二の七の(2)のイの呼吸器疾患活動能力区分表に掲げる活動能力がイに該当するものを基準障害に該当するものとする。
五 精神障害
(1) 精神の障害の原因となる主な傷病名は、精神分裂病、そううつ病、非定型精神病、てんかん(真性てんかん及び症状てんかん)、中毒精神病(アルコール中毒、一酸化炭素中毒等)、器質精神病(頭部外傷後遺症、脳炎後遺症、脳膜炎後遺症、進行麻痺、老年精神病、脳血管系疾患、錐体外路性疾患等)及び知的障害である。
なお、精神病質及び神経症については、原則として、基準障害に該当しないものとする。
(2) 精神の障害は、原因、症状とも複雑であるため、障害の程度の判定にあたっては、なるべく客観的資料を多数集めることに注意し、日常生活に制限を受けるか、又は日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものを基準障害に該当するものとする。
(3) 基準障害に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
ア 精神分裂病によるものにあっては、欠陥状態又は病状があるため、性格変化、思考障害、その他もう想、幻覚等の異状体験があるもの
イ そううつ病によるものにあっては、感情、欲動及び思考障害の病状があるもの
ウ 非定型精神病によるものにあっては、欠陥状態又は病状が前記ア、イに準ずるもの
エ てんかんによるものにあっては、痴呆、性格変化、その他の精神神経症状があるもの
オ 中毒精神病によるものにあっては、痴呆、性格変化及びその他異常体験があるもの
カ 器質精神病によるものにあっては、痴呆、性格変化、その他の精神神経症状があるもの
六 心臓疾患
(1) 心臓疾患の病状の程度についての判定は、呼吸困難、心悸亢進、チアノーゼ、浮腫等の臨床症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも一年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が制限を受けるか日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものを基準障害に該当するものとする。
(2) 基準障害に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
認定基準の第二の九の(2)のA表(心臓疾患重症度区分表)に掲げる重症度が一に該当し、かつ、同B表(心臓疾患検査所見等)に掲げる検査所見等のうち、いずれか一つ以上の所見等があるもの
七 腎臓疾患
(1) 腎臓疾患による病状の程度についての判定は、悪心、嘔吐等の臨床症状、腎機能検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも一年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを基準障害に該当するものとする。
(2) 基準障害に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
認定基準の第二の一〇の(四)のA表に掲げるうち、いずれか一つ以上の所見があるか、または、B表に掲げるうち、いずれか一つ以上の検査成績が異常を示すもの
(3) 腎機能検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、腎臓疾患による病状の程度の判定にあっては、当該疾病の認定の時期の前後において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて行うものとする。
(4) 腎臓疾患による病状の程度の判定においては、一般状態が認定基準の第二の一〇の(四)の一般状態区分表の一に該当するものが基準障害におおむね相当するので、認定にあっては参考資料として用いるものとする。
八 肝臓疾患
(1) 肝臓疾患による病状の程度についての判定は、悪心、黄疸、腹水意識障害等の臨床症状、肝機能の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも一年以上の療養を必要とするものであつて、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が制限を受けるか又は日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものを基準障害に該当するものとする。
(2) 基準障害に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
認定基準の第二の一一の(2)のA表に掲げるうち、いずれか一つ以上の所見があるか、または、B表に掲げるうち、いずれか二系列以上の検査成績が異常を示すもの
(3) 肝機能検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、認定の時期の前後各三ケ月間における一ケ月以上の間隔をおいた二回の検査成績が、B表の肝機能異常度指表の異常を示すものを採るものとする。
(4) 肝臓疾患による病状の程度の判定においては、一般状態が認定基準の第二の一一の(4)の一般状態区分表の一に該当するものが基準障害におおむね相当するので、認定にあたつては参考資料として用いるものとする。
九 血液・造血器疾患
(1) 血液・造血器疾患による病状の程度についての判定は、臨床症状(一般状態、立ちくらみ、動悸、息切れ、出血傾向、関節症状、発熱、るい痺、リンパ節腫張、肝脾腫等)、血液検査成績、治療及び病状の経過等(薬物による症状の消長のほか、薬物療法に伴う合併症等)により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも一年以上の療養を必要とするものであつて、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が制限を受けるか又は日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものを基準障害に該当するものとする。
(2) 基準障害に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
認定基準の第二の一二の(3)のア・イまたはウのA表、Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか一つ以上の所見があるか、または、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか一つ以上の所見があるもの
(3) 血液学的検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、血液・造血器疾患による病状の程度の判定にあたつては、認定の時期の前後において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて行うものとする。
(4) 血液・造血器疾患による病状の程度の判定においては、一般状態が認定基準の第二の一二の(5)の一般状態区分表の一に該当するものが、基準障害におおむね相当するので、認定にあつては参考資料として用いるものとする。
一○ その他の障害
(1) 前各項に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状がある場合において、その状態が、告示の一号から一六号に規定する障害の程度と同程度以上であつて、日常生活が制限を受けるか又は日常生活に制限を加えることを必要とする程度のものであるときは、基準障害に該当するものとする。
(2) 人工肛門、人工膀胱または尿路変更術を施したものは、基準障害に該当するものとする。
(3) いわゆる難病については、その発病の時期が不足・不詳であり、かつ発病は緩徐であり、経過は進行性であつてほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたつているため、その認定にあたつては客観的所見に基づいた日常生活能力の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。
(4) その他の疾患による病状の程度の判定においては、一般状態が認定基準の第二の一三の(5)の一般状態区分表の一に該当するものが、基準障害におおむね相当するので、認定にあたつては参考資料として用いるものとする。