添付一覧
○市町村の電子計算組織による国民年金事務処理方式に関する指導について
(昭和四八年五月八日)
(庁文発第一一〇一号)
(各都道府県民生主管部(局)国民年金課(部)長あて社会保険庁年金保険部計画・国民年金・業務課長連名通知)
年々増加する業務量と制度の充実に伴う業務の複雑化に対処するため、従来より業務処理の改善等を積極的に進めてきたところであるが、さらに、時代に即応した効率的な事務処理体制を確保するためには、長期的な展望のもとに総合的な見地から検討を行なう必要があり、現在、当庁において種々検討を進めているところである。
一方において、近年、とくに市町村における窓口事務の統合及び地域住民に関する各種情報管理の必要性と相俟つて、電子計算組織を活用している市町村は、昭和四七年度当初において全市町村の四八%に達している現状であり、国民年金関係事務についても電子計算組織による事務処理方式を採用する市町村は増加し、その実勢は、昭和四八年度実施予定のものを含め三一八市町村、対象被保険者数五七一万人に達するものと予測されている。
かかる市町村の行政事務の質的変革に伴う機械化傾向は、今後一層増加するものと見込まれ、当該市町村を管轄する社会保険事務所に与える影響も少なくないことから、このたび、現行事務処理体制に支障をきたさず、その成果を活用する方向で、しかも長期的にも将来の効率的な事務処理方式を策定する際に支障とならないよう、現段階における「市町村の電子計算組織による国民年金事務処理方式に関する指導基準」(以下「指導基準」という。)を、次のとおり定めたので、貴都道府県管下市町村における国民年金事務処理の機械化(以下「事務処理方式の変更」という。)について指導を行なう場合は、今後は、これにより取扱うこととされたい。
1 指導基準の主な考え方
この基準は、都道府県国民年金課(部)及び社会保険事務所が、管下市町村の事務処理方式の変更計画に対して適切な助言と指導を行なうとともに、その実施に伴い管轄社会保険事務所の現行事務処理体制に支障をきたさないよう、基本的な事項についての手引きとしてその取扱いを定めたものであり、その主な考えは次のとおりである。
(1) 市町村が事務処理方式の変更を実施する場合は、事前に、管轄社会保険事務所を経由し、都道府県国民年金課(部)あて協議を行なうべきものとしたこと。この場合において、その検討段階から積極的に指導し、予備的な協議に応ずることが望ましいと考えられること。
(2) 管轄社会保険事務所の事務処理に不可分な関係を有する各種出力帳票の様式、その管轄社会保険事務所へ進達される出力帳票等について、管轄社会保険事務所の事務処理上障害とならず、かつ、当該市町村の事務処理を変更したことにより生ずる成果を管轄社会保険事務所が最大限に活用する方向で積極的に市町村を指導すべきものとしたこと。
(3) 市町村において、この基準と異なる事務処理方式が既に実施されている場合は、漸次この基準に合致するよう指導すべきものとしたこと。
(4) 過般、各都道府県においてこのような状況に対処することができるよう示した「標準的な国民年金業務の機械化に伴う収録事項及びアウトプット可能な事項」については、この指導基準に同一の内容を含めたこと。
2 指導基準
事項 |
事項の説明又は指導基準 |
備考 |
(1) 事前協議 |
市町村は、その国民年金事務処理を電子計算組織により行なう場合は、次の協議事項について、事前に、管轄社会保険事務所を経由し、都道府県国民年金課(部)あて協議すること。また、事務処理方式を再度変更する場合についても、同様とすること。 |
|
(2) 協議事項 |
|
|
ア 事務処理方式の概要 |
① 事務処理方式を変更する動機及び目的 ② 電子計算組織の使用形態の区分(自庁導入、外部委託の別) ③ 電子計算組織の構成 ④ 事務処理方式の区分(住民に関する各種情報を住民基本台帳法に定める記載事項等が収録されている磁気マスターファイル(以下「住民基本マスター」という。)により一元的に管理し、そのサブシステムとして国民年金被保険者の資格に関する事項及び保険料に関する事項等が収録されている磁気マスターファイル(以下「国民年金マスター」という。)により国民年金事務処理を行なう方式(以下「住民情報管理システム」という。)、市町村における他の行政的事務と切離し、独自に国民マスターを作成し、国民年金事務処理を行なう方式(以下「国民年金事務単独処理システム」という。)の別) ⑤ 電子計算組織により処理される国民年金事務の範囲 ((ア)) 適用関係事務(未適用者リストの作成、二○歳到達者リストの作成、資格得喪、諸変更・訂正等) ((イ)) 保険料関係事務(保険料免除、所得比例、保険料前納・追納・還付、保険料収滞納者一覧表の作成、納入通知書の作成等) ((ウ)) その他の事務(六○歳到達者リストの作成、六五歳・七○歳到達受給予定者リストの作成、各種統計表の作成等) ⑥ 電子計算組織に使用される入出力帳票(種類、形式、項目等) ⑦ コードの設計(入力帳票及び出力帳票においてコード化する事項) ⑧ 事務処理における正確性確保のための方法 ((ア)) 国民年金マスターの処理周期(週一回、月一回、その他の別) ((イ)) 事故データの補正方法 ((ウ)) 国民年金マスターに被保険者に関する記録を追記・更新する歳に用いるキーコード(①住民情報管理システムにおける住民コード、国民年金手帳記号番号及びそのコード番号等の錯誤を防止する附帯数字(以下「チェック・ディジット」という。)、②国民年金事務単独処理システムにおける国民年金手帳記号番号及びそのチェック・ディジット、性別、生年月日) |
|
イ 国民年金マスター等の収録事項 |
① 国民年金マスターの収録事項(国民年金手帳記号番号、被保険者の氏名、性別、生年月日、住所、被保険者資格取得年月日、被保険者種別、所得比例の申出(辞退)・該当(非該当)年月日、保険料納付記録、保険料収納年月日、保険料免除記録、その他の事項) ② 住民基本マスターの収録事項(住民コード、氏名、出生の年月日、男女の別、世帯主名及び世帯主との続柄、戸籍の表示、住民となった年月日、住所及び転居年月日、転入届出年月日、従前の住所、選挙人名簿への登録の有無、国民健康保険の被保険者資格に関する事項、国民年金の被保険者資格に関する事項、米穀類の配給に関する事項、その他の事項) ③ 法律改正等に伴う住民基本マスター及び国民年金マスターの新規事項収録の可能性 ④ 保険料納付記録の有効保存年限 ⑤ 住所変更(転出)した者、被保険者資格を喪失(ただし、被保険者期間満了による被保険者資格喪失の場合を除く。)した者、死亡した者の被保険者記録の有効保存年限 ⑥ 被保険者期間満了による被保険者資格を喪失した者の被保険者記録の有効保存年限 ⑦ 被保険者名簿の取扱い |
|
ウ 事務処理の流れ |
① 各部間、組織間の関係も含めた事務処理の流れの概要図(以下「システム・フローチャート」という。) ② 詳細に記述された電子計算組織によるデータ処理工程における作業単位の流れ図(以下「プロセス・フローチャート」という。) |
|
エ 管轄社会保険事務所へ進達される出力帳票等 |
① 出力帳票の記載事項 ② 管轄社会保険事務所に進達される出力帳票の種類、その様式及び進達時期 ③ 進達方法 ((ア)) 進達届書 (ア) 異動届(住民異動届、国民年金被保険者関係届の原本、出力帳票) (イ) 検認票(納付案内書方式、保険料収滞納者一覧表、その他) ((イ)) 進達届書等の集約区分(種類別、地域別) |
|
オ 切替方法 |
① 切替にかかるシステム・フローチャート ② 切替にかかるプロセス・フローチャート ③ 切替処理の作業計画(日程、作業体制等) ④ 市町村及び管轄社会保険事務所における事故補正方法 ⑤ 国民年金マスターの切替一覧表と管轄社会保険事務所に備えつけられた被保険者台帳、市町村に備えつけられた被保険者名簿との整合 ⑥ 切替処理に伴う経費の内容 |
|
カ 将来の方向 |
① 電子計算組織による事務処理方式の発展性 ② 電子計算組織による事務処理方式の変更に伴う柔軟性と拡張性 |
|
(3) 指導基準 ア 事務処理方式 |
① 変更後の電子計算組織による事務処理方式は、管轄社会保険事務所において事務処理上の支障とならず、かつ、事務処理上の要請に応ずることができるものであること。 特に、住民情報管理システムの一環として国民年金事務処理を行なう方式にあつては、市町村の国民年金主管課(係)及び管轄社会保険事務所からの要請があつた場合に、国民年金事務処理が必要のつど行なわれるものであること。 ② 国民年金マスターの収録事項、管轄社会保険事務所へ進達される出力帳票等がこの基準に合致していること。 ③ 事務処理の正確性が確保されていること。 特に、 ((ア)) 各種届書に基づく記録、保険料納付記録を国民年金マスターに追記、更新する場合において、国民年金手帳記号番号に併せてサブキーコード(①住民情報管理システムにおける、住民コード生年月日、②国民年金事務単独処理システムにおける生年月日、国民年金手帳記号番号のチェック・ディジット)を設定し、その突合を同時に行なうものとすること。 ((イ)) 国民年金マスター全記録事項の一覧表を年一回作成し、管轄社会保険事務所に進達すること。この一覧表を当該市町村の被保険者名簿として取扱うことはさしつかえないものとすること。 ④ 前記③の((イ))の一覧表を当該市町村の被保険者名簿として取扱う場合は、被保険者等の相談、照会に対してすみやかにその者の被保険者記録を検索できるよう措置されている必要があること。 ⑤ 事務処理方式の再変更が容易にできる柔軟性と拡張性が確保されていること。 特に、 ((ア)) 各種ファイルには新規事項の収録のための予備欄が必ず設定されていること。 ((イ)) 事務処理方式の修正を迅速に行なうことが可能であること。 ((ウ)) 各種のコード設定に余裕が持たされていること。また、一度設定したコードを頻繁に変更することのないよう考慮されていること。 ((エ)) 外部機関に事務処理を委託して行なう場合においては、契約時に、これらシステムの修正及び拡張が容易に行ない得るよう取り決めがなされていること。 |
なお、別紙3「市町村の電子計算組織による標準的な国民年金事務処理方式(例示)」を参考とすること。 |
イ 国民年金マスターの収録事項 |
① 別紙1「国民年金事務の機械化に伴う収録事項」に定める事項が収録されていること。 ② 住民基本マスターのサブ・マスターとして用いられる国民年金マスターは、住民基本マスターのキーコードである住民コードが必ず収録されていること。 ③ 事務処理方式の再変更及び法律改正等に伴う新規事項のマスターへの収録のための予備欄が必ず設定されていること。 ④ 保険料納付記録について保険料債権の消滅時効が二年であることから、少なくとも直近二か年にわたる記録が収録されていること。 ⑤ 被保険者の他市町村への転出、被保険者資格の喪失(被保険者期間満了による被保険者資格喪失の場合を除く。)及び死亡についても前記④と同様の取扱いとされていること。 ⑥ 六○歳到達者等被保険者期間満了による被保険者資格を喪失した者については、国民年金の老齢年金受給権発生時点において、少なくとも当該市町村の区域内に現に住所を有する者の一覧表が出力できるよう措置されていること。 |
|
ウ 管轄社会保険事務所へ進達される出力帳票等 |
① 管轄社会保険事務所に進達する出力帳票については、原則として、別紙2「国民年金事務の機械化に伴うアウトプット可能な事項」に定める事項が満たされていること。 ② 管轄社会保険事務所に進達する出力帳票の様式は、その記載事項、使用コード及び記載事項の配列順序について少なくとも同一社会保険事務所が管轄する各市町村において統一された様式を用いることが望ましいこと。 ③ 管轄社会保険事務所に進達する出力帳票の記載事項の配列は、当該社会保険事務所の事務処理上支障とならない順序で作成されていること。 ④ 国民年金法施行規則第六九条の二第二項の規定による検認を行なうことに伴い、個々の被保険者の当該年度分の検認状況が一覧して確認できるよう年一回国民年金保険料収滞納者一覧表を作成し進達すること。 |
|
エ 切替方法 |
① 切替処理を行なうにあたつては、事前に管轄社会保険事務所に備えつけられている被保険者台帳の記載事項と、当該市町村に備えつけられている被保険者名簿の記載事項との突合を行なうこと。 ② 国民年金マスターの作成にあたつて、管轄社会保険事務所に備えつけられている被保険者台帳のエッジ部分を利用することにより、国民年金手帳記号番号、被保険者の氏名、性別及び生年月日等の効率的な整合を行なうことができること。 ③ 国民年金マスター作成後、その国民年金マスターから収録された全被保険者にかかる記録の一覧表を作成し、これと管轄社会保険事務所に備えつけられている被保険者台帳の記載事項及び当該市町村に備えつけられている被保険者名簿の記載事項との再度の突合を行なうこと。 |
|
オ その他 |
① 市町村が届書等を電子計算組織で処理する場合にチェックする項目については、昭和四○年四月六日庁業発第八一号、昭和四三年三月九日庁業発第四○号及び四一号通知「国民年金被保険者記録進達事務の手続集」に定めるところを参考とすること。 ② 管轄社会保険事務所に提出する各種届書及び出力帳票等にコードを使用する場合についても、前記「国民年金被保険者記録進達事務の手続集」に定めるコードを参考とすること。 |
|
(4) その他の事項 ア 成果の活用 |
① 市町村からの検認報告は、毎月又は基準月ごとに行なわせるものであるが、管轄社会保険事務所における被保険者台帳への保険料納付記録の記入は、保険料収滞納者一覧表により行なうことができるものとすること。 ② 市町村における事務処理の変更の結果、作成することができるものと見込まれる各種出力帳票を、例えば次のように活用すること。 ((ア)) 被保険者期間満了者リスト、六五歳及び七○歳到達者リスト……国民年金の老齢年金、老齢福祉年金受給予定者の正確な把握 ((イ)) 保険料免除該当者一覧表の作成……保険料免除該当者の適確な把握 ((ウ)) 未適用対象者のリスト……適用対策の推進 ((エ)) 国民年金被保険者名簿索引簿……国民年金手帳記号番号の検索 |
|
イ 指導体制の確立 |
事務処理方式を変更する市町村に対して適切な助言と指導を行なうため、都道府県国民年金課(部)及び管轄社会保険事務所の指導体制を確立すること。 ① 前記事務担当職員に対する電子計算組織に関する研修等を行なうこと。 ② 電子計算組織による事務処理方式の実施前・後の効果の比較等その分析を行なうこと。 |
|
ウ 協議、指導関係文書の保存 |
事務処理の変更にあたつての協議事項及び指導事項を整理、文書化して保存すること。 |
|
3 市町村の電子計算組織による標準的な事務処理方式の例示
市町村の電子計算組織による国民年金事務処理方式は、当該市町村の財政規模等により、細部において多少の異同があるが、類型的には住民情報管理システム及び国民年金事務単独処理システムの二つの方式に区分することが可能であり、それぞれの標準的なシステムとして、その事務処理方式の概要、事務処理の手順、国民年金マスター・フォーム、各種の出力帳票の様式及び使用される各種コードを現段階において参考までに例示すれば、別紙3のとおりである。
なお、この例示は次の点を前提に行なつたものである。
(1) 届書の処理については、現行事務処理の手順に基づき被保険者が市町村長に提出するものと、都道府県知事に提出するものとにそれぞれ区分したこと。
(2) 国民年金マスター・フォームは、電子計算組織による事務処理に必要とする主たる項目を例示的に列挙したものであるから、事務処理上の必要に応じて、収録事項の追加等が適宜必要であること。
別紙 略