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○保険料免除の取扱いについて

(昭和三五年六月一三日)

(年発第二〇〇号)

(各都道府県知事あて厚生省年金局長通知)

拠出制の国民年金においては、保険料の額を所得の多寡を問うことなく一率に一○○円及び一五○円と定め、保険料を負担することのできない低所得者については、これらの人々こそ年金制度による保障を最も必要とする人々であるとの趣旨から、これを本制度の適用から除外することなく適用対象に含め、これに対し保険料免除の措置を大幅にとることによつて、できるかぎり多くの人々に拠出制国民年金の支給が行なわれるよう配慮されている。しかして、どの程度の低所得の者について、保険料の納付を要しないものとして取り扱うかの認定の基準については、国民年金法(昭和三四年法律第一四一号。以下「法」という。)は、法第八九条に定める当然免除の場合のほか、第九○条各号に例示的列挙事項としてかかげているが、これらは、おおむね、市町村民税均等割を課せられていない程度の所得の人々を念頭に置いて立案せられたものである。しかしながら、市町村民税均等割の非課税の取扱いについては市町村により多少の相違がみられる実情にあり、これをそのまま全国的基準としがたい面もあるので、本制度においては、独自の基準をもつて保険料免除の処理を行なう必要があるのである。

かかる趣旨において、今般、別添の「保険料免除基準」を定めることとしたが、保険料免除事務の取扱いについては、次の諸点を基本的原則として運用せられたい。

第一 保険料の免除は、拠出能力の乏しい低所得者からの保険料納付について無理の生じないようにするための配慮であつて、本制度の強制社会保険としての性格を曖昧にさせ任意保険に甘んじさせるものではないから、保険料の拠出能力がありながら納付を怠る者については、厳正な態度をもつて臨むとともにこの免除の取扱いを受けることは、被保険者にとつて、年金給付の受給要件及び年金給付額の面において必ずしも有利な取扱いを受けたことにならないこと、及び免除の取扱いを受けるべき者が、この申請を行なわず保険料を納付しないときは、年金給付の受給要件の面において不利な取扱いを受けることとなることについて被保険者が正しい理解を持つようその趣旨の徹底を図ること。

第二 法第九○条は、その構成において、個人単位にその所得能力を判断して保険料の免除を認定するかたちをとつているが、保険料の免除の認定は、実際上は通常の家庭の生活様式の実態からみて、申請者の属する世帯の世帯員全員の所得等の状況に基づいて認定されることとなるから常に世帯全体の状況を考慮に置くこと。したがつて、また法第九○条第二号に該当する者については、すでに世帯単位の原則に基づいてその生活状況の審査が関係機関において行なわれているものであるから、本号該当者から申請があつたときは格別の審査を行なうことなく直ちに免除の認定を行なうべきであること。

第三 「保険料免除基準」は、免除制度の趣旨からみて、全国的にこれを公平に運用する見地から設けられた一般的な認定の尺度を示すものであつて、あらゆる具体的な事例についての絶対的な認定基準となる趣旨のものではないから、その運用に当たつては、機械的な処理に流れることなく運用すべきこと。特にこの基準をそのまま適用することが実情に応じないと認められるときは、「保険料免除基準二認定方法の特例」を活用することによつて、個々の実態に即した処理を行ない、具体的妥当性の確保に努めること。

第四 保険料免除申請者は、相当数のものが見込まれるので、これが事務処理に当たつては、特に迅速な処理を図るよう留意し、個々の事例について正確、入念を期するの余り、全体としての事務の運びがかりそめにも渋滞することのないよう配意すること。

第五 保険料免除の認定は都道府県知事の責任において行なわれるものであるが、実体上市町村の審査に依存する部分が多く、特に定例的に処理すべき案件は市町村における審査の結論に基づきほぼ自動的に免除の要否の決定を行なうべき筋合のものであるから、予め社会保険出張所と市町村との間における自動的事務処理の区分について十分な研究協議をとげ、両者の協力によつて迅速かつ円滑な処理を図るよう留意すること。

なお、「保険料免除基準」の運用に当たつては、さらに左記の点に留意のうえ、遺憾のないよう取り扱われたい。

1 市町村民税が賦課されていない場合の取扱い

市町村民税の均等割は、法律上応益費的な性格をもつので、所得を有する者すべてに賦課されるものであるが、財政の豊かな一部の市町村においては、所得を有する者についても一定の所得水準で非課税の措置が採られているところもあるので、これらの市町村の区域内に住所を有する場合においては、被保険者、被保険者の属する世帯の世帯主及び被保険者の配偶者のいずれにも市町村民税が賦課されていない場合であつても、「保険料免除基準一認定方法の3」の方法によつて認定することが望ましいものであること。

2 世帯の認定

世帯の認定は、通常の場合、住民登録法の取扱いに準じ、同一の住居に居住し、家計を一にしている者は、原則として同一世帯に属する世帯員として認定することとなるが、一時的な出稼ぎ者、入院患者、他に寄宿中の学生等で現に住居を一にしていない場合であつても、日常生活の資を共通にしており、法第八八条の保険料の連帯納付義務との関係において、同一の世帯の世帯員として認定することが、社会通念上適当であると認められるときは、同一の世帯に属するものとして認定し、また、たとえ同居している場合であつても、住込みの使用人、家族と同様の取扱いをうけていない同居人等は、別個の世帯を構成するものとして認定すること。この場合において、これら単身で世帯を構えている女中その他の住込み使用人等で他に事実上扶養している子等を有するときは、これら女中その他の住込み使用人等とその扶養している子等は、必ずしも住居を一にしない場合であつても、その実情に応じ同一世帯に属するものとして「保険料免除基準一認定方法の3の(一)」の方法により認定するものであること。

従つて、住民登録法による住民票は、世帯を認定する場合の重要な参考資料とはなるが、これのみによつて結論を出すことのないよう留意すること。

3 世帯主の認定

世帯主とは、「社会通念上世帯を主宰する者」とされているが、本基準においては、「主として世帯の生計を維持する者であつて、国民年金の保険料の連帯納付義務を負う者として社会通念上妥当と認められる者」をいうものであること。なお、具体的な認定に当たつては、国民健康保険における世帯主の認定に準ずるものであるが、特に名目上の世帯主にとらわれることのないよう留意すること。

4 長期療養者に係る医療費の認定

長期療養者に係る医療費については、証明書等の添付は行なわせず、申告に基づくものであるが、傷病名、診療開始年月日等によりその額が不当と認められるときは、必要に応じ、実地に調査してその確認を行なうこと。

5 審査

申請に係る事実の審査については、住所地の市町村長が当該市町村における住民票、生活保護被保護世帯票、課税台帳(市町村民税の課税台帳、国民健康保険税(料)賦課台帳、土地又は家屋名寄帳、固定資産課税台帳その他課税についての基礎資料)その他の公簿により行なうものであるが、その具体的認定に当たつては、次により行なうよう指導されたいこと。この場合において、申請者が前年において他の市町村に居住していたため、当該市町村において前年の所得等の把握ができないときは、社会保険出張所(現業事務を行なう国民年金課を含む。)において当該他の市町村へ照会する等の方法により審査することとなるから、照会を受けた市町村長は前段の方法により審査し、その結果を当該社会保険出張所へ連絡するよう指導されたいこと。

(1) 世帯員数及び世帯主については、申請時点の状況により、その確認を行なうこと。

(2) 所得額及び所得税額の確認は、一月から三月までの間に申請があつたときは、前々年分の所得額及び前々年分の所得に対して課された所得税額により行なうこと。

(3) 市町村民税額の確認は、前年分の所得に対して、賦課された市町村民税により行なうが、一月から三月までの間に申請があつたときは、前々年の所得に対して賦課された市町村民税額により行なうこと。

(4) 固定資産の価格の確認は、申請のあつた日の属する年の一月一日現在で賦課された固定資産税の課税標準となつた価格により行なうが、一月から三月までの間に申請があつたときは、前年の一月一日現在で賦課された固定資産税の課税標準となつた価格により行なうこと。

6 認定方法の特例

免除の認定は、前年の所得及び固定資産の状況により行なうこととなつているのは、申請時点における所得等の把握が困難であること及び申請時においても通常前年程度の所得があると推定されることに基づいたものであるが、これら前年の所得の状況により画一的に認定することが不適当であると認められる者について特別の考慮をしたものであること。

なお、「保険料免除基準二認定方法の特例」中「申請時の所得状況が前年度の所得状況と著しく異るとき」とは、当該年度において失業、極度の営業不振、干害、冷害等により著しく所得が減退した場合、固定資産の譲渡等により一時的所得があつた場合等をいい、「その他保険料を拠出することが困難と認められる特別の事情があるとき」とは、「保険料免除基準一認定方法の3」の方法によつて算定して得た数値が被保険者の住所地の属する級地区分に応じて第三欄に掲げる数値を超えた者に係る特例として考慮したものであつて、病弱者をかかえているため相当の支出を要する場合、賦課された公租公課及び国民年金保険料のすべてを負担することができない場合等をいうものであること。

7 免除の決定

(1) 「保険料免除基準」により算定して得た数値が、保険料免除基準1(認定方法)の(3)のアの級地区分に応じて、第二欄に掲げるものに該当する者については、市町村における審査結果に基づく市町村長の意見を基礎として、必要があれば実地調査を行なうことにより、その免除又は非免除の決定を行なうこと。

(2) 同一の世帯に属する二人以上の被保険者から免除の申請があつた場合であつて、そのうちの一部の被保険者についてだけ保険料を免除するときは、個々に事情を聴取のうえ、申請者にとつて最も有利な取扱いとなるよう免除の対象となる被保険者の決定を行なうこと。

(3) 免除の承認期間の限度を免除の申請があつた日の属する年度の末月までとしたのは、認定の基礎が、年間の所得に基づくものであることによるものであるが、特に短期間において資力の回復が見込まれる者については、実情に応じ、適宜その期間を短縮して決定するよう取り扱うこと。

8 保険料免除申請書の様式

保険料免除の申請書は、別紙様式によるものとし、これがためおつて国民年金法施行規則の一部改正が行なわれ、別紙様式が示される予定であること。

国民年金保険料免除基準 廃止