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○事業所得の帰属者たる福祉年金の受給権者の取扱について

(昭和三四年九月四日)

(年福発第四八号)

(各都道府県国民年金課(部)長あて厚生省年金局福祉年金課長通知)

福祉年金の受給権者が子その他の親族とともに農業その他の事業を経営しているが、主として受給権者以外の者がその事業に従事しているにもかかわらず、その事業から生ずる所得が所得税又は市町村民税の課税台帳その他の賦課資料において受給権者の名義とされている場合において、法第六五条第四項の規定する所得があるものであるかどうかについて疑義が生じている向もあるようである。

しかしながら、所得税及び市町村民税は、いわゆる実質課税の原則に基き、所得が実質的に帰属する者に課税されるものであつて、単なる名義人には課税されない筈のものである(所得税法第三条の二、地方税法第二九七条参照)。従つて、法第六五条第四項に規定する所得があるかどうかについては、所得税又は市町村民税の課税台帳等において所得があるとされている限りそれによつて認定せざるを得ないものであるから、御了知ありたい。なお、所得税法第三条の二に規定する実質課税の原則については、国税庁より別紙のとおり通達されているものであるから、あわせて御了知ありたい。

(別紙)

○事業の所得者

事業の所得が何人の所得であるかについては、必ずしも事業の用に供する資産の所有権者若しくは賃借権者、免許可事業の免許可名義者若しくはその他の事業の取引名義者、当該事業に従事する形式等にとらわれることなく、実質的に当該事業を経営していると認められる者が何人であるかによりこれを判定するものとする(基本通達)。

○生計を一にし、日常の起居を共にしている親族間の事業の所得者

生計を一にして、且つ、日常の起居をともにしている親族のうち誰の事業所得であるかについては、原則として、当該事業に要する資金の調達をなし、その他当該事業経営の方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が何人であるかにより判定するものとする。この場合において、その者が何人であるか不明であるときは、生計を主宰していると認められる者がその者であるものとする。但し、左に掲げる場合においては、次の掲げる当該他の親族を、次に掲げる所得の所得者とする(基本通達)。

(1) 生計を主宰していると認められる者が一店舗における一事業を経営し、又は会社、官庁等に勤務し、他の親族が他の店舗における他の事業又は事業にもつぱら従事し、当該もつぱら従事する事業の用に供する資産の所得権者若しくは賃借権者であり、且つ、当該もつぱら従事する事業の名義者(免許可事業にあつては免許可の名義者であつて取引の名義者であり、その他の事業にあつては、取引の名義者であることをいう。)である場合における当該もつぱら従事する事業から生ずる所得

(2) 生計を主宰していると認められる者が、会社、官庁等に勤務し、又はもつぱら漁業等に従事し、他の親族が主として農耕に従事し、農耕用の田畑の所有権者若しくは賃借権者であり、且つ、当該農耕事業の名義人である場合における当該農耕から生ずる所得

(3) 他の親族が医師、歯科医師、はり、きゆう、あんま等の療術者、弁護士、税務代理士、公認会計士、著述家、映画演劇の俳優その他の自由職業者である場合は、その者が生計を主宰していると認められる者の経営に係る事業に単に従事しているにとどまると認められるときを除き、その名義に係る事業から生ずる所得

○生計の主宰者が隔地にある場合

生計を主宰していると認められる者が、隔地において勤務している等のためその親族と日常の起居をともにしていない場合において、他の親族が国許で事業又は農耕に従事しているときは、当該事業又は農耕から生ずる所得は、原則として、当該他の親族の所得とする(基本通達)。

○生計を一にしている親族間における農業の経営者の判定

生計を一にしている親族間における農業から生ずる所得がだれに帰属するかについては、最近における社会経済情勢の推移にかえりみ、所得税法に関する基本通達(昭和二六年一月一日付直所一―一通達)一五九および一六○にかかわらず、今後、左記によりその農業の経営者を判定し、その者に課税することに取り扱われたい。(昭三三直所一―一五)

一 夫婦間における農業については、両者のその農業の経営についての協力の度合、耕地の所有権の所在、農業経営についての知識経験の程度、家庭生活の状況などを総合勘案して、いずれがその農業の経営者とみるべきかを定めるべきであるが、次のような場合には、おおむね次のように取り扱うものとすること。

1 夫婦がいずれも他に職業を有しないでともに農業に従事している場合(従来農業に従事していた夫婦の一方が病気療養に専念するため、たまたまその年の農業に従事しなかつたような場合を含む。)には、生計を主宰している方がその農業の経営者であるものとすること。

2 生計を主宰している方が主として農業に従事し、他方が会社、官庁などに勤務するなど他に主たる職業を有する場合には、その農業に従事している方がその農業の経営者であるものとすること。

3 生計を主宰している方が会社、官庁、地方団体などに勤務するなど他に主たる職業を有し、他方が家庭にあつて農業に従事している場合には、その家庭にあつて農業に従事している方または会社、官庁、地方団体などに勤務している方に特別の事情があるかどうかなどの別に応じ、次のように取り扱うものとする。

(一) 家庭にあつて農業に従事している方に、次に掲げる場合のいずれかに該当するような事情があるときは、その家庭にあつて農業に従事している方がその農業の経営者であるものとすること。

(1) 家庭にあつて主として農業に従事している方がその耕地の大部分につき所有権または耕作権を有している場合。ただし、婚姻後に生計を一にする他の親族から耕作権の名義の変更を受けたため、その家庭にあつて農業に従事する方がその耕地の大部分につき耕作権または所有権を有するに至つたような場合は除く。

なお、家庭にあつて農業に従事する方がその耕地の大部分につき所有権または耕作権を有していない場合であつても、婚姻前から所有している耕地、婚姻後に相続により取得した耕地のようにその家庭にあつて農業に従事している方の特有財産と認められる部分(婚姻後に生計を一にする親族から名義の変更を受けたような耕作権は、この場合の特有財産には該当しないものとする。)については、その家庭にあつて農業に従事する方がその部分の農業の経営者であるものとすること。

(2) 農業がきわめて小規模であつて、家庭にあつて主として農業に従事する方の内職の域を出ないと認められる場合

(二) 会社、官庁、地方団体などに勤務するなど他に主たる職業を有する方に次に掲げる場合のいずれかに該当するような事情があるときは、その家庭にあつて主として農業に従事している方がその農業の経営者であるものとすること。ただし、その農業が相当の規模であつて、その会社、官庁、地方団体などに勤務している方を経営者とみるを相当とする場合を除くものとすること。

(1) 主たる職業は専念しているため、その農業の経営を主宰していないと認められる場合

(2) 農業に関する知識経験がないため、その農業の経営を主宰していないと認められる場合

(3) 勤務地が遠隔の地であるため、事実上その農業の経営を主宰することができないと認められる場合

(三) (一)および(二)以外の場合には、その会社、官庁、地方団体などに勤務している方がその農業の経営者であるものとすること。

二 親子間における農業については、両者の年齢、農耕能力、耕地の所有権の所在などを総合勘案して、いずれが農業の経営者であるかを定めるべきであるが、次のような場合には、おおむね、次のように取り扱うものとすること。

1 父子がともに農業に従事している場合には、原則として、父がその農業の経営者であるものとすること。ただし、子が相当の年齢に達し生計を主宰するに至つたと認められるときは、子とすること。

2 生計を主宰している父が会社、官庁、地方団体などに勤務するなど他に主たる職業を有し、子が主として農業に従事している場合には、子がまだ若年であるときまたは父が本務のかたわらその農業の経営を主宰していると認められるときを除き、子がその農業の経営者であるものとすること。

3 生計を主宰している子が会社、官庁、地方団体などに勤務するなど他に主たる職業を有し、母が主として農業に従事している場合において、母の方に一の3の(一)の場合に該当するような事情があるときまたは、子の方に一の3の(二)のような事情があるときは、夫婦間におけるそれらの場合に準じて取り扱うものとすること。

4 1から3以外の場合には、原則として、生計を主宰していると認められる者がその農業の経営者であるものとすること。

○「生計を一にしている親族間における農業の経営者

の判定について」通達の運営

昭和三三年二月一七日付直所一―一五「生計を一にしている親族間における農業の経営者の判定について」通達(以下「判定通達」という。)の運営については、当分の間、左記によられたい。(昭三三直所一―一六)

一 判定通達「一の3の(一)の(1)」の「家庭にあつて主として農業に従事している方がその耕地の大部分につき所有権または耕作権を有している場合」とは、耕地のおおむね八○パーセント以上の所有権または耕作権を有する場合をいうものとすること。

二 判定通達「一の3の(一)の(2)」の「農業がきわめて小規模」であるかどうかは、おおむね水田三反歩(平年作における所得が、おおむね五万円程度の稲作水田三反歩を基準とするものとし、収穫量に著しい差異のある田畑または野菜畑もしくは果樹畑などについては、所得おおむね五万円程度を得る反別とする。)程度未満の規模であるかどうかによるものとすること。

三 判定通達「一の3の(二)」の(1)から(3)までに掲げる部分以外の部分のただし書の「農業が相当の規模」であるかどうかは、水田一町歩(平年作における所得が、おおむね一七万円程度の稲作水田一町歩を基準とするものとし、収穫量に著しい差異のある田畑または野菜畑もしくは果樹畑などについては、所得おおむね一七万円程度を得る反別とする。)程度の規模以上であるかどうかによるものとすること。

四 判定通達「一の3の(二)の(1)」の「主たる職業に専念しているため、その農業の経営を主宰していない」かどうか明らかでない場合には、その者の勤務が常勤(この場合の常勤とは、一日の勤務時間が八時間以上であり、かつ、日曜日、祭日などの休日を除いては、事実上農耕に従事できない勤務をいう。)であるときは、その者の現在までの農業についての経歴、勤務先の職種、家庭における地位など四囲の事情からみてその者がその農業の経営を主宰していると認めるを相当とする特別の事情がある場合を除き、その農業の経営者でないものとして取り扱うものとすること。

五 判定通達「一の3の(二)の(2)」の「農業に関する知識経験がないため、その農業の経営を主宰していない」かどうか明らかでない場合には、学校を卒業すると同時に国有鉄道、学校または会社などに奉職し、現在まで引き続き勤務しているようなときは、その者が特に農業の知識経験をもちその農業の経営を主宰していると認められる特別の事情がある場合を除き、その農業の経営者でないものとして取り扱うものとすること。

六 判定通達「一の3の(二)の(3)」の「勤務が遠隔の地であるため、事実上その農業の経営を主宰することができない」かどうか明らかでない場合には、日曜日または祭日に帰宅する程度にとどまるときは、特にその農業の経営を主宰していると認められる特別の事情がある場合を除き、その農業の経営者でないものとして取り扱うものとすること。

七 判定通達「二の1」の「子が相当の年齢」に達したかどうかは、おおむね三○歳以上となつたかどうかによるものとし、同通達「二の2」の「子がまだ若年である」かどうかは、おおむね二五歳未満であるかどうかによるものとすること。