添付一覧
○国民年金法に基く福祉年金の特別支給等について
(昭和三四年六月一五日)
(年金第五四号)
(各都道府県知事あて厚生省年金局長通知)
本月一五日をもって福祉年金支給規則(昭和三四年厚生省令第一七号)が公布され、福祉年金の特別支給に関する諸般の必要な手続が定められたので、本年一二月から裁定を開始される福祉年金の支給取扱についての法制的措置が一応完了した次第であるが、福祉年金の特別支給等に関しては、本月一日厚生省発年第六号をもって示された厚生事務次官依命通達によるのほか、次の諸事項に留意して、これが円滑かつ適確なる処理運営を図られたい。
なお、この通達においては、国民年金法を「法」と、国民年金法施行令を「令」と、福祉年金支給規則を「規則」と、それぞれ略称する。
記
第一 年金給付に関する事項
一 受給権の裁定及び請求
(1) 特別支給による福祉年金の受給権の裁定は、保険料納付との関係を考慮する必要がないので、都道府県知事が行うものとされているが(法第八三条第一項)、法第五七条第一項の規定により法第五六条第一項各号の要件に該当するものとみなされることにより支給される障害福祉年金についても、同様の事情から都道府県知事が裁定するものとされたこと(令第一条)。
(2) 特別支給による福祉年金は、本年一一月分から支給されることとなっているので(法附則第三条第二項)、都道府県知事が行う受給権の裁定は同月から開始されるのであるが、特に本年においては、初度裁定の事務処理を円滑に進める必要上一一月一日以前においても、受給権者が福祉年金の裁定請求の手続をとることができるものとされている(法附則第三条第一項)。従って、市町村に対しては、本年九月一日から裁定請求書の受理を初めることができる態勢を整備するように指導するとともに、受給権者に対しては、裁定請求書を九月一日以降努めてすみやかに提出するようにこれが趣旨の徹底を図り、市町村長は、提出された裁定請求書を敏速かつ確実に審査して都道府県知事に進達し、都道府県においては、進達された裁定請求書の審理を一一月一日以前から予備的に進め、もって裁定事務の実質的な進捗を図り、明年三月における初度裁定に係る福祉年金の支払がかりそめにも渋滞するようなことがないようにされたいこと。
(3) 福祉年金の受給権者が公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができる場合のうち、当該年金たる給付が業務上の事由による災害補償関係の給付との調整上その全額について支給が停止されている場合及び当該年金たる給付の額が福祉年金の額より高額である場合は、当該年金たる給付を受けることができる期間中はすべて福祉年金の全額について支給が停止されることとなっているが(法第六五条第一項第一号、第二号及び第三項)、このような場合に、公的年金受給者が福祉年金の基本権の裁定を請求しても、現実の給付面においては実益に乏しく、かつまた、このような関係にある公的年金受給者の地位は極めて稀れな例外を除き継続する性質のものであることを考慮し、裁定事務の簡素化を図るため、このような公的年金受給者は都道府県知事に対して裁定を請求することができないものと定めてあること(法第八三条第二項)。
(4) 裁定請求書には、支給停止該当状況に関する書類を添附することとなっているが(規則第三条第一項第三号及び第四号、第一六条第一項第四号及び第五号並びに第二一条第一項第九号及び第一〇号等)、これは福祉年金に諸種の支給停止の措置が附されている関係上、差し当り実益のない基本権たる受給権の裁定手続となることをさけようとする趣旨によるものである。なお、規則に規定する裁定請求書その他の書類の様式及びこれらの添附書類がやや煩に過ぎるとの印象を受ける向もあるようであるが、これらを定めるに当っては、福祉年金の受給権者の立場を顧慮して各様式の意義及び内容をなるべく容易に理解しやすいものとするとともに、法が規定する受給要件及び支給要件の確認のために必要最小限の項目にするに努めたものであって、規則に定められた書類の様式及びその添附書類をこれ以上簡略にすることは法の規制をこえて福祉年金の支給を濫にする結果となるので、より以上の簡略化の措置をとりかえたかった事情を了知されたいこと。
(5) 法第六五条第四項並びに第六六条第四項及び第五項に規定するいわゆる所得制限条項に該当するか否かの認定は、毎年行われるべきことはもちろんであるが、明らかに右の所得制限条項に該当すると認められる者が基本権たる受給権のみの裁定を受けても、差し当り本人にとって実益がないだけでなく、このような案件の処理に時を費すことは、他のより急を要する裁定事務の敏速な処理を阻害する結果となるので、このような受給権者については、特に本年度は裁定請求書を提出しないようにあらかじめ十分これが趣旨の普及徹底を図るとともに、かりにこのような受給権者から裁定請求書が提出されても、その処理は、他のより急を要する案件の処理が終了した後に行うよう配意されたいこと。また、二五歳以上の子と生計を同じくする母子福祉年金の受給権者であって、その子が法第六七条ただし書に規定する状態にないものの裁定の請求についても、同様とすること。
(6) 法第六六条第三項の規定に該当する者の裁定請求書については、当事者の利便、事務処理の敏速並びに市町村長の審査及び都道府県知事の審理の適確を期するため、特別の事情がある場合を除くほか、夫婦の裁定請求書は同時に提出するようあらかじめ十分にこれが趣旨の徹底を図ること。なお、この場合において、必要とする添附書類も夫婦共通の場合が多いことを考慮し、同一の添附書類を夫婦双方の審査及び審理に利用する途をひらこうとする趣旨に基いて規則第四一条第五項の規定が設けられた次第であるから、同項の規定を十分に活用することとされたいこと。
(7) 都道府県は、本年一一月から初度裁定事務を処理しなければならないのであるが、多大の数にのぼる裁定請求書の量におされて裁定事務が粗雑に流れることは厳に戒めるべきであり、かかる弊に陥ることをさけるためには、市町村別に裁定請求書の進達時期を異にするとか、複雑な案件は後とし、問題のない簡明な案件を先にして急速に処理する等の措置を考慮すること。
二 老齢福祉年金
(1) 特別支給による老齢福祉年金は、本年一一月一日において七〇歳以上である者(明治二二年一一月一日以前に生まれた者)に対しては同日に支給し(法第八〇条第一項)、本年一一月一日において七〇歳未満である者のうち、昭和三六年四月一日において五〇歳をこえる者(明治二二年一一月二日から明治四四年三月三一日までの間に生まれた者)に対しては七〇歳に達したときに支給されるが(法第八〇条第二項)、法第五三条第一項ただし書に規定する国籍及び住所の要件は、前者については本年一一月一日において、後者については七〇歳に達した日において必要とするものであること。
(2) 法第八〇条第二項ただし書に規定する「老齢年金の受給権者」とは、法第七五条の規定により任意加入被保険者となった者についての規定であるから、これに該当する者は、拠出制年金の施行日たる昭和三六年四月一日以後一五年間は存在しないものであること。
(3) 法第八〇条第一項に規定する老齢福祉年金の受給権者は、場合によっては同時に法第八一条第一項の障害福祉年金の受給権及び法第八二条第一項の母子福祉年金の受給権を有することもありうるので、身体障害又は母子状態にある者についての老齢福祉年金の裁定請求書を受理するときは、障害福祉年金又は母子福祉年金の支給を受けられる旨を注意し、これが選択を行わせること(法第二〇条)。
(4) 特別支給による老齢福祉年金の額及び失権については、法第五四条及び第五五条の規定の適用があることに留意すべきであること。
三 障害福祉年金
(1) 法第八一条第一項に規定する障害福祉年金は、本年一一月一日において現に別表に定める一級に該当する程度の廃疾の状態にある者に対し、同日において二〇歳未満である者を除き、すべての者に支給されるものであって、既往における傷病がなおった日の把握が困難であるため、如何なる年齢において廃疾が固定したかを問わず、支給するものであること。
(2) 法第八一条第二項が本年一一月一日前に初診があって同日以後に傷病がなおった者又は同日以後拠出制年金の施行日たる昭和三六年四月一日前に初診日がある者に障害福祉年金を支給する旨を規定しているのは、これらの者は拠出制年金の支給要件を満たすことができないためであり、また、同条第三項は、拠出制年金が施行されても被保険者とされない高齢者については障害福祉年金を支給する趣旨の規定があるが、両者とも廃疾認定日において七〇歳以上であった者が除外されるのは、この者には法第八〇条第二項の規定による老齢福祉年金が支給されるからであること。
(3) 法第五六条第一項ただし書に規定する国籍及び住所の要件は、法第八一条第一項に該当する者については本年一一月一日において、同条第二項及び第三項に該当する者については廃疾が固定した日において必要とするものであること。
(4) 二〇歳前の初診日に係る廃疾の状態は、この法律の施行後常に発生するものであって、法第五七条第一項の規定により法第五六条第一項各号の要件に該当するものとみなされることによって支給される障害福祉年金は、本年一一月一日以降支給要件に該当する者が常に発生する性質のものであること。
なお、右の障害福祉年金の受給権者についての国籍及び住所の要件は、症状が固定した日後に二〇歳になった者であっては二〇歳になった日において、二〇歳になった後に症状が固定した者にあってはその固定した日において必要とするものであること(法第五七条第二項)。
(5) 法第八一条の規定による障害福祉年金の額及び失権については、法第五八条及び第五九条の規定が適用され、更に業務上の障害補償給付との調整についての法第三六条の規定の適用があることに留意すべきものであること。
(6) 被用者年金各法等の被保険者等についての本年一一月一日以後の明白な事故は、当該被用者年金各法等によって保障されるべきものであるので、このような被保険者等に対しては、法第五七条第一項並びに第八一条第二項及び第三項の規定は適用されないものであること(法附則第九条)。
(7) 傷病がなおったか否かの認定については、法第三〇条の規定によりその症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至ったものも含まれるのであるが、結核性疾患、精神疾患等の内科的疾患に基く身体障害は、法別表一級第一号から第八号までのいずれかに該当するものを除き、廃疾の範囲には含まれないものであること。
なお、別表に定める廃疾の程度に関しては、別途通達するものであること。
四 母子福祉年金
(1) 法第八二条第一項の規定による母子福祉年金は、本年一一月一日現在において、既に夫と死別した妻が義務教育終了前の子の生計を維持するときに支給されるものであるが、妻の年齢は二〇歳以上であればよいこと。
(2) 法第八二条第一項ただし書各号に該当するか否かは、本年一一月一日現在における事実についてこれを決定すべきものであって、夫の死亡当時から本年一一月一日までの間はこれを問うものではないこと。
(3) 法第八二条の第二項の規定は、福祉年金の施行後拠出制年金の施行前に至る間の夫の死亡につき、同条第三項の規定は拠出制年金の施行後も被保険者とならない妻に関する夫の死亡につき、母子福祉年金を経過的に支給しようとする趣旨から設けられたものであること。この場合において、妻の年齢が二〇歳以上六〇歳未満でなければならないことに注意すること。なお、母子福祉年金については、障害福祉年金の場合と異り、法附則第九条のごとき規定が設けられていないことに留意すること。
(4) 「夫」及び「妻」には、法第五条第三項の規定により事実婚関係の者を含み、「義務教育終了前の子」には、一五歳に達した日の属する学年の末日に達した子であっても、病弱等のため義務教育の終了が遅れたため、その日以後引き続き中学校等に在学する子を含み、「子」は夫又は妻のいずれかの子(養子を含む。)であればよく、例えば、死亡した夫の先妻の子、死亡した夫の子ではないが妻の先夫の子(いわゆる連れ子)は「子」に該当するが、死亡した夫の配偶者以外の婦女の子で、死亡した夫たる父によって認知を受けていなかったものは除かれるものであること。
(5) 母子福祉年金の受給権者たる妻は、法第六一条第一項ただし書の規定によって夫の死亡日において日本の国籍及び日本国内に住所を有することが必要とされるが、「夫」及び「子」についてはこの国籍及び住所の要件は問わないものであること。
なお、法第八二条第一項に規定する母子福祉年金の受給権者が、夫の死亡日において国籍及び住所の要件をみたしていても、本年一一月一日に国籍及び住所の要件をみたしていないときは、受給権がないものであるから留意すること。
(6) 法第八二条第一項に規定する母子福祉年金の受給権者と子との「生計維持」の事実関係の認定については、おおむね、次の基準によるものとすること。
(一) 受給権者及び義務教育終了前の子のみによって構成されている世帯については、生計維持の事実があるものと認定する。
(二) 世帯の構成人員に受給権者及び義務教育終了前の子以外の者がある場合であって、
イ 世帯主が受給権者であるときは、その世帯の生計費が主として受給権者の収入によって賄われているときは、生計維持の事実があるものと認定する。
ロ 右の場合、受給権者以外の者が世帯主であるときは、受給権者及び義務教育終了前の子の生計費が主として受給権者の収入によって賄われているときに限り、生計維持の事実があるものと認定する。
ハ 当該世帯における他の世帯員が二五歳未満の受給権者若しくは配偶者の子又はその者の子のみである場合において、受給権者及び当該二五歳未満の者の勤労による収入の総額が年額一三万円にその世帯における義務教育終了前の者一人につき一万五、〇〇〇円を加算した額をこえないときは、イ又はロに該当しないときであっても、生計維持の事実があるものと認定する。ただし、二五歳未満の子が、その勤労による収入の大部分をその世帯の生計費に繰り入れている場合に限る。
(7) 法第八二条第二項及び第三項の規定による母子福祉年金の受給権者と子の「生計同一」の事実関係の認定に当っては、収入及び支出、即ち、消費生活上の家計の同一を基準とし、一時的な出稼、入院等の場合のように、住居の同一は必ずしも要求されないものと解すべきものであること。
なお、法第八二条第二項及び第三項に規定する母子福祉年金の受給権は、受給権者と子との生計維持関係の如何にかかわらず、発生するのであるが、生計維持関係がなければ直ちに失権するものであって(法第六四条)、実質的には生計維持関係が受給権の持続の要件となるものであることに注意すること。
(8) 法第八二条の規定による母子福祉年金の額、改定及び失権については、法第六二条から第六四条までの規定が適用され、更に業務上の遺族補償給付との調整について法第四一条第一項の規定の適用があることに留意すること。
なお、法第四一条第二項の規定は、公的年金各法に基く遺族年金又はこれに相当する給付が夫の保険料拠出を要件として支給されるものであることから、本法の拠出制年金における給付についての国庫負担部分を調整しようという趣旨であるが、母子福祉年金の受給権者には趣旨解釈上適用しないものであること。
(9) 規則第二一条第一項及び第二項において母子福祉年金裁定請求書に戸籍又は除かれた戸籍等の抄本を添えることとなっているが、これは例えば、死亡した夫と受給権者とが現に同一戸籍内にある場合又は死亡した夫の戸籍から受給権者が分籍して別な戸籍内にある場合、即ち、死亡した夫及び受給権者が日本国民であって戸籍法が適用されている場合には、夫の死亡日及び夫との身分関係が戸籍簿上明確にされるので、必ず戸籍又は除かれた戸籍の抄本を添えなければならないとしているのである。従って、規則第二一条第四項の規定の適用を受ける場合は、死亡した夫が日本国籍を有していなかったとき、及び死亡した夫と受給権者とが内縁関係であったときのように、夫の死亡日及び夫との身分関係が戸籍簿上に記載されない場合に限られるものであることに注意されたいこと。
五 給付関係
(1) 公的年金各法に基く年金給付との調整
(一) 福祉年金は、受給権者本人が公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができるときは、法第六五条第一項から第三項までの規定によって福祉年金の額の全部又は一部について支給停止が行われ、また、受給権者の配偶者(事実婚関係にある者を含む。)が六、〇〇〇円をこえる額の公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができるときは、法第六六条第一項の規定によって福祉年金の額の一部について支給停止が行われるのであるが、公的年金各法に基く年金たる給付の受給の有無については、市町村においてすべてを適確に把握することは期待しえない状況であるので、都道府県において資料を整備するとともに、必要に応じ法第一〇七条第一項又は第一〇八条の規定を適用してこれが事実関係の把握に遺憾なきを期せられたいこと。
(二) 公的年金各法に基く年金たる給付を受けている者についての調査及び資料の整備については、別に通達すること。
(三) 法第六五条第一項第一号に規定する「公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができるとき」には、その年金給付の全部又は一部の支給が停止されているときも含まれるが、同条第二項本文の規定によって全額支給停止の場合は、次の(四)に該当するものを除いては適用がないこと。
(四) 法第六五条第二項ただし書の規定は、公的年金各法に基く年金たる給付の支給が停止されていても、それが業務上の事由による災害補償関係の給付が行われることによるものであれば、たとえ、当該年金たる給付はされなくても、これに代る災害補償給付があるので、これとの調整をはかる趣旨から設けられたものであること。
(2) 夫婦受給の場合の調整
法第六六条第三項の規定により夫及び妻(事実婚関係にある者を含む。)がともに老齢福祉年金を受けることができるとき、又は夫及び妻の一方が老齢福祉年金を他方が障害福祉年金を受けることができるときは、三、〇〇〇円相当部分を支給停止することとしているのは、夫婦は同居して相互に生計を保持し合うものであることを考慮した結果によるものであること。
(3) 所得制限等
(一) 受給権者が前年において一三万円をこえる所得を有したときは、稼得能力がある程度あるとみなして、法第六五条第四項の規定によりその年の五月分から翌年の四月分までの福祉年金を支給停止することとしているが、これは、その者はその年もその程度の所得があると通常推定されるからであること。
(二) 受給権者が法第六五条第四項かっこ書に規定する子の生計を維持するときは、一三万円に子一人について一万五、〇〇〇円の加算が行われるが、子の数及び生計維持関係の認定は、前年の末日においてこれを確定し、その後の異動にかかわらないこと。
(三) 一三万円をこえる所得を有したか否かの認定は、独自の調査を行うことなく、市町村税務当局における市町村民税の賦課資料、特にその均等割の賦課についての基礎資料を参考としてこれを把握すべきものであって、令第六条第一項の規定は、この趣旨から設けられているものであること。
なお、令第六条第二項の規定は、「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」(昭和二二年法律第一七五号)の趣旨に基くものであるので、本項の解釈運用は同法の例によるものであるが、同法は所得税が課せられた者に対する措置であるが、所得税を課せられていない福祉年金の受給権者についても、同項が適用されるものであることに注意されたいこと。
(四) 法第六六条第四項の規定による老齢福祉年金及び障害福祉年金の受給権者の配偶者の所得に係る支給停止は、その配偶者の所得について前年分の所得税額があるときは、その年の五月分から翌年の四月分までの当該福祉年金について行われるが、配偶者との身分関係についてはそのときどきの異動に伴い、現在時点において支給停止を行うべきものであること。従って、例えば、その年の七月に配偶者が死亡し、又はこれと離婚した場合には、その年の八月分から翌年の四月分までの支給停止は行われず、また、独身の受給権者が前年分の所得税額のある者と十月に婚姻をしたときは、その年の一一月分から翌年の四月分までの支給が停止されるものであること。
(五) 老齢福祉年金及び障害福祉年金については、法第六六条第五項の規定により受給権者の生計を維持する者の所得に係る支給停止が行われるが、母子福祉年金については、通常、母子福祉年金の受給権者たる母の生計を維持する者がある場合には、母が子の生計を維持するときに該当せず、母子福祉年金の支給が行われないので規定されなかったものであること。
(六) 法第六六条第五項に規定する受給権者の生計を維持する扶養義務者が二人以上ある場合においても、それらの者の所得は合算されないものであること。
(七) 給与所得の収入金額が五〇万円であり、かつ、扶養親族が五人である者が通常納付すべき所得税額は、「昭和三三年分の所得税額に関し国民年金法に基く福祉年金の支給停止の基準となる金額を定める政令」(昭和三四年政令第一八五号)により二万三、六〇〇円と定められたが、この額は、家族構成を七〇歳以上の老人一人、勤労者たる夫、無業の妻及び子供三人と想定し、勤労控除、社会保険料控除、基礎控除及び扶養控除を行って算定したものであること。
なお、法第六六条第五項は、給与所得を掲げているが、これはあくまでも政令委任の基準として例示的なものであって、扶養義務者の給与所得以外の所得による収入についても、二万三、六〇〇円以上の所得税額があれば、すべて同項が適用されるものであること。
(八) 法第六六条第五項に規定する生計維持関係の認定は、同条第四項に規定する配偶者との身分関係の変動の場合と同様に、現在時点において行うべきものであること。
(九) 母子福祉年金の受給権者が二五歳以上の子と生計を同じくするときは、法第六七条の規定により母子福祉年金の支給が停止されるが、母子世帯においても二五歳以上の子があれば、長期の疾病又は負傷、廃疾、失業等の場合を除き、その子の稼得能力に期待できるからであること。
なお、法第六七条ただし書に規定する長期の疾病、負傷又は失業とは、少くとも一月以上にわたるものと解すべきであり、また、これらに準ずる状態とは、分べん、準禁治産等の状態にある子を意味するものであること。
(4) その他
(一) 法第六五条第一項第一号、第二項及び第三項並びに第六六条第一項の規定の適用は、例えば、恩給法の規定に基き普通恩給が裁定されて恩給証書又は裁定告知書若しくは支給停止に関する書類が受給権者に交付されているときのように、現実に恩給の受給権者について支給の関係が確定しているときでなければ、実際上恩給の受給状況を把握することができないので、このような場合のみに限られることとなるのであるが、例えば、恩給法上の裁定を受けていない場合でも、普通恩給の受給要件を現に満たしていることが明確である者が、法第六五条第一項第一号、第二項及び第三項の規定に該当するときは、これらの規定を適用し、恩給証書等が交付されて普通恩給額又はその支給停止額及び支給額が恩給法上確定した結果、福祉年金の支給停止額を変更すべきときは、法第二一条第二項の規定を適用する等の措置をとること。
(二) 公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができるため、法第六五条第二項ただし書又は第三項の規定によって福祉年金の額の一部について支給を停止されている福祉年金の額の一部について支給を停止されている福祉年金の受給権者の配偶者が公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができる場合においては、法第六六条第一項の規定による支給停止の措置は再びとらないものであること。これは福祉年金と公的年金各法との調整は一度なされたら同一人については二度と行わないという趣旨によるものであって、この関係は法第六六条第三項の場合においても、同様であること。
(三) 法第六五条第二項又は第三項の規定に該当するときを除き、公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができる者は、法第八三条第二項の規定により福祉年金の受給権の裁定の請求ができないものであるが、この場合の裁定請求権の消滅時効は、当該年金たる給付を受けられなくなったため福祉年金の裁定を請求するようになったときから進行するものであることに留意すること(法第一〇二条第一項)。
(四) 支給停止の事由の発生、支給停止額の変更及び支給停止の事由が消滅したときは、規則第四条、第一七条及び第二四条の規定によって福祉年金の受給権者がそれぞれの該当時に届け出ることとされていて、この届書には、原則として当該事由を証明する書類を必要としないのであるが、都道府県知事においては、特に支給停止額の変更については、当該事由を適確に把握して支給停止額の適正な変更の措置をとること。
(五) 福祉年金の受給権者は、規則第五条、第一八条及び第二五条の規定によって毎年六月において所得状況届を提出することとなっているが、これは主として、法第六五条第四項又は第六六条第四項若しくは第五項の規定に該当しないため、福祉年金の額の全部がその年の四月まで支給されていた者が引き続いて支給されるか否かを前年の所得関係の面から把握することを目的とするものであるから、これが運用について十分意を用いられたいこと。
(六) 令第二条第一号及び第二号に規定する裁定の請求及び届出に係る事実についての市町村長の審査に関する事務は、とりあえず、規則第三条第一項第四号、第五条、第一三条第二項、第一六条第一項第五号、第一八条、第二一条第一項第一〇号及び第二項第九号並びに第二五条の規定によって提出される福祉年金所得状況届(規則様式第三号)について、住居地の市町村長が当該市町村における戸籍簿、除籍簿、住民票、課税台帳その他の公簿によって審査するものであること(規則第二八条第一項並びに第四一条第一項及び第二項)。
(七) 都道府県及び市町村における福祉年金の事務処理手続の要項については、近くその準則を示す予定であること。
第二 費用に関する事項
一 福祉年金の給付費及び事務費については、全額国庫負担であるが、市町村に対して交付する事務費の額は、「昭和三四年度における国民年金に関する事務費の額に関する政令」(昭和三四年政令第一八六号)により、本年度は、五〇円に市町村長が都道府県知事に進達した裁定請求書の数を乗じて得た額であること。なお、市町村長が進達した裁定請求書における審査が適確でないため市町村長に返戻され、これを市町村長が再審査して都道府県知事に再進達した場合でも、裁定請求書は一件として計算されるものであること。
二 法第九五条から第九八条までの規定は、福祉年金の不正受給者に対する法第二三条の規定による徴収金について適用されるものであること。
第三 審査の請求に関する事項
審査請求の対象としての法第一〇一条第一項に規定する「年金給付に関する処分」には、裁定処分のほか、支給停止及び失権に関する決定も含まれ、また、「この法律の規定による徴収金」には、福祉年金については法第二三条の規定による不正利得の場合の徴収金が含まれるものであること。
第四 その他
一 法第一〇四条の規定による戸籍に関する市町村長の無料証明は、福祉年金の受給権者の特性に鑑み、積極的にこれが措置をとられるよう管下市町村長を指導されたいこと。
二 福祉年金の支払は、法第一〇九条の規定に基き郵便局において行われるものであって、これが支払事務手続については、近く郵政省令が公布される見込であること。