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○国民年金・厚生年金保険障害認定基準について

(昭和61年3月31日)

(庁保発第15号)

(各都道府県知事あて社会保険庁年金保険部長通知)

今般、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号。以下「改正法」という。)が本年4月1日から施行されることに伴い、国民年金法施行令等の一部を改正する等の政令(昭和61年政令第53号。以下「整備政令」という。)が本年3月28日をもつて公布され、同年4月1日から施行されることとされた。

整備政令による改正後の国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)別表並びに厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号)別表第1及び別表第2に規定する障害の程度の認定に関しては、別添「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」を定め、本年4月1日よりこれにより取り扱うこととしたので、その運用に遺憾なきを期せられたく通知する。

なお、今般の改正法施行後もなお従前の例によることとされた改正法による改正前の国民年金法(昭和34年法律第141号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の規定に基づく障害給付に係る障害の程度の認定に関しては、それぞれ国民年金障害等級認定基準(昭和54年11月1日庁保発第31号)及び国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準(昭和54年11月1日庁保発第32号)並びに厚生年金保険の障害認定要領(昭和52年7月15日庁保発第20号)により取り扱うものであるので、申し添える。

[別添]

国民年金・厚生年金保険

障害認定基準

平成25年6月1日改正

国民年金・厚生年金保険障害認定基準/目次

第1 一般的事項

1 障害の状態

2 傷病

3 初診日

4 障害認定日

5 傷病が治った状態

6 事後重症による年金

7 基準傷病、基準障害、はじめて2級による年金

第2 障害認定に当たっての基本的事項

1 障害の程度

2 認定の時期

3 認定の方法

第3 障害認定に当たっての基準

第1章 障害等級認定基準

第1節 眼の障害

第2節 聴覚の障害

第3節 鼻腔機能の障害

第4節 平衡機能の障害

第5節 そしゃく・嚥下機能の障害

第6節 言語機能の障害

第7節 肢体の障害

第1 上肢の障害

第2 下肢の障害

第3 体幹・脊柱の機能の障害

第4 肢体の機能の障害

(参考)肢体の障害関係の測定方法

第8節 精神の障害

第9節 神経系統の障害

第10節 呼吸器疾患による障害

(参考)「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」より抜粋

第11節 心疾患による障害

第12節 腎疾患による障害

第13節 肝疾患による障害

第14節 血液・造血器疾患による障害

第15節 代謝疾患による障害

第16節 悪性新生物による障害

第17節 高血圧症による障害

第18節 その他の疾患による障害

第19節 重複障害

第2章 併合等認定基準

第1節 基本的事項

第2節 併合(加重)認定

第3節 総合認定

第4節 差引認定

別表1 併合判定参考表

別表2 併合(加重)認定表

別表3 現在の活動能力減退率及び前発障害の活動能力減退率

別表4 差引結果認定表

第1 一般的事項

1 障害の状態

障害基礎年金、障害厚生年金及び障害手当金が支給される「障害の状態」とは、身体又は精神に、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)別表(厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号)第3条の8において厚生年金保険の1級及び2級の障害の状態とされる場合を含む。以下「国年令別表」という。)、厚生年金保険法施行令別表第1(以下「厚年令別表第1」という。)及び厚生年金保険法施行令別表第2(以下「厚年令別表第2」という。)に定める程度の障害の状態があり、かつ、その状態が長期にわたって存在する場合をいう。

2 傷病

(1) 「傷病」とは、疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病を総称したものをいう。

(2) 「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。

3 初診日

「初診日」とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいう。

4 障害認定日

「障害認定日」とは、障害の程度の認定を行うべき日をいい、請求する傷病の初診日から起算して1年6月を経過した日又は1年6月以内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)をいう。

5 傷病が治った場合

「傷病が治った場合」とは、器質的欠損若しくは変形又は機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき、又は、その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待し得ない状態に至った場合をいう。

6 事後重症による年金

「事後重症による年金」とは、傷病により障害の状態にあるものが、障害認定日において政令で定める障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合で、当該傷病による障害により65歳に達する日の前日までに、政令で定める障害等級に該当する程度の障害の状態に該当し、かつ、65歳に達する日の前日までに裁定請求のあった場合に支給する年金をいう。

7 基準傷病、基準障害、はじめて2級による年金

(1) 「基準傷病」とは、既に発している傷病による障害と、新たに発した傷病(既に発している傷病の初診日以後に初診日のある傷病に限る。)による障害を併合して、初めて、障害等級が1級又は2級に該当する程度の障害の状態に至った場合における新たに発した当該傷病をいう。

(2) 「基準障害」とは、基準傷病による障害をいう。

(3) 「はじめて2級による年金」とは、既に基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準障害と他の障害とを併合して障害等級が1級又は2級に該当する程度の障害の状態に至った場合に支給される障害基礎年金及び障害厚生年金をいう。

第2 障害認定に当たっての基本的事項

1 障害の程度

障害の程度を認定する場合の基準となるものは、国年令別表、厚年令別表第1及び厚年令別表第2に規定されているところであるが、その障害の状態の基本は、次のとおりである。

(1) 1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。

例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。

(2) 2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。

例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。

(3) 3級

労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。

また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)

(4) 障害手当金

「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。

2 認定の時期

障害の程度の認定時期は、次のとおりとする。

(1) 障害認定日

(2) 「事後重症による年金」については、裁定請求書を受理した日(65歳に達する日の前日までに受付けたものに限る。)

(3) 「はじめて2級による年金」については、障害の程度が2級以上に該当した日(65歳に達する日の前日までに該当したものに限る。)

(4) 「障害手当金」については、初診日から起算して5年を経過する日までの間において傷病の治った日

3 認定の方法

(1) 障害の程度の認定は、診断書及びX線フィルム等添付資料により行う。

ただし、提出された診断書等のみでは認定が困難な場合又は傷病名と現症あるいは日常生活状況等との間に医学的知識を超えた不一致の点があり整合性を欠く場合には、再診断を求め又は療養の経過、日常生活状況等の調査、検診、その他所要の調査等を実施するなどして、具体的かつ客観的な情報を収集した上で、認定を行う。

また、原則として、本人の申立等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず、必ず、その裏付けの資料を収集する。

(2) 障害の程度の認定は、第2の「障害の程度」に定めるところに加え、第3の第1章「障害等級認定基準」に定めるところにより行うものとする。

なお、同一人について、2以上の障害がある場合の障害の程度の認定は、第3の第1章「障害等級認定基準」に定めるところによるほか、第3の第2章「併合等認定基準」に定めるところにより行う。

ただし、第1章の第10節から第18節までの内科的疾患の併存している場合及び第1章各節の認定要領において特に定めている場合は、総合的に認定する。

(3) 「傷病が治らないもの」の障害の程度の認定に当たっては、障害の程度の認定時期以後おおむね1年以内に、その状態の変動が明らかに予測されるときは、その予測される状態を勘案して認定を行う。

(4) 「障害等級認定基準」及び「併合等認定基準」に明示されていない障害及び障害の程度については、その障害によって生じる障害の程度を医学的検査結果等に基づき判断し、最も近似している認定基準の障害の程度に相当するものを準用して行う。

(5) 「傷病が治らないもの」であって、3級の第14号と認定したものについては、経過観察を行い、症状が固定に達したものは、3級の第14号に該当しないものとする。

第3 障害認定に当たっての基準

第1章 障害等級認定基準

第1節/眼の障害

眼の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

眼の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの

一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの

自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの

2級

両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの

一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの

自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの

自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの

別表第2

障害手当金

両眼の視力がそれぞれ0.6以下に減じたもの

一眼の視力が0.1以下に減じたもの

両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

両眼による視野が2分の1以上欠損したもの

ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下に減じたもの

自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下に減じたもの

自動視野計による測定の結果、両眼中心視野視認点数が40点以下に減じたもの

両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

眼の障害は、視力障害、視野障害又はその他の障害に区分する。

(1) 視力障害

ア 視力は、万国式試視力表又はそれと同一の原理に基づく試視力表により測定する。

イ 視標面照度は500~1,000ルクス、視力検査室の明るさは50ルクス以上で視標面照度を上回らないこととし、試視力表から5mの距離で視標を判読することによって行う。

ウ 屈折異常のあるものについては、矯正視力により認定するが、この場合最良視力が得られる矯正レンズによって得られた視力を測定する。眼内レンズ挿入眼は裸眼と同様に扱い、屈折異常がある場合は適正に矯正した視力を測定する。

エ 両眼の視力を別々に測定し、良い方の眼の視力と他方の眼の視力とで障害の程度を認定する。

オ 屈折異常のあるものであっても次のいずれかに該当するものは、裸眼視力により認定する。

(ア) 矯正が不能のもの

(イ) 矯正により不等像視を生じ、両眼視が困難となることが医学的に認められるもの

(ウ) 最良視力が得られる矯正レンズの装用が困難であると医学的に認められるもの

カ 視力が0.01に満たないもののうち、明暗弁のもの又は手動弁のものは視力0として計算し、指数弁のものは0.01として計算する。

キ 「両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.03以下のものをいう。

ク 「一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のものをいう。

ケ 「両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.07以下のものをいう。

コ 「一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のものをいう。

サ 「両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.1以下のものをいう。

シ 「両眼の視力がそれぞれ0.6以下に減じたもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.6以下のものをいう。

ス 「一眼の視力が0.1以下に減じたもの」とは、一眼の視力が0.1以下のものをいう。

(2) 視野障害

ア 視野は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計を用いて測定する。認定は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計のどちらか一方の測定結果で行うこととし、両者の測定結果を混在させて認定することはできない。

イ ゴールドマン型視野計を用いる場合は、それぞれ以下によって測定した「周辺視野角度の和」、「両眼中心視野角度」、「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」及び「両眼による視野が2分の1以上欠損したもの」に基づき、認定を行う。なお、傷病名と視野障害の整合性の確認が必要な場合又はⅠ/4の視標で測定不能の場合は、Ⅴ/4の視標による視野を確認した上で総合的に認定する。

(ア) 「周辺視野角度の和」とは、Ⅰ/4の視標による8方向(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向)の周辺視野角度の和とする。8方向の周辺視野角度はⅠ/4視標が視認できない部分を除いて算出するものとする。

Ⅰ/4の視標で、周辺にも視野が存在するが中心部の視野と連続しない部分は、中心部の視野のみで算出する。

Ⅰ/4の視標で、中心10度以内に視野が存在しない場合は、周辺視野角度の和が80度以下として取り扱う。

(イ) 「両眼中心視野角度」とは、以下の手順に基づき算出したものをいう。

a Ⅰ/2の視標による8方向(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向)の中心視野角度の和を左右眼それぞれ求める。8方向の中心視野角度はⅠ/2視標が視認できない部分を除いて算出するものとする。

b aで求めた左右眼の中心視野角度の和に基づき、次式により、両眼中心視野角度を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。

両眼中心視野角度=(3×中心視野角度の和が大きい方の眼の中心視野角度の和+中心視野角度の和が小さい方の眼の中心視野角度の和)/4

c なお、Ⅰ/2の視標で中心10度以内に視野が存在しない場合は、中心視野角度の和は0度として取り扱う。

(ウ) 「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」とは、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標による視野の面積が、中心5度以内の視野の面積と同程度におさまるものをいう。なお、その際、面積は厳格に計算しなくてよい。

(エ) 「両眼による視野が2分の1以上欠損したもの」とは、両眼で一点を注視しつつ測定した視野が、生理的限界の面積の2分の1以上欠損している場合の意味であり、左右眼それぞれに測定したⅠ/4の視標による視野表を重ね合わせることで、両眼による視野の面積を得る。その際、面積は厳格に計算しなくてよい。なお、視野の生理的限界は、左右眼それぞれに上・内上・内・内下60度、下70度、外下80度、外95度、外上75度である。

ウ 自動視野計を用いる場合は、それぞれ以下によって測定した「両眼開放視認点数」及び「両眼中心視野視認点数」に基づき、認定を行う。

(ア) 「両眼開放視認点数」とは、視標サイズⅢによる両眼開放エスターマンテスト(図1)で120点測定し、算出したものをいう。

(イ) 「両眼中心視野視認点数」とは、以下の手順に基づき算出したものをいう。

a 視標サイズⅢによる10―2プログラム(図2)で中心10度以内を2度間隔で68点測定し、左右眼それぞれについて感度が26dB以上の検査点数を数え、左右眼それぞれの中心視野視認点数を求める。なお、dBの計算は、背景輝度31.5asbで、視標輝度10,000asbを0dBとしたスケールで算出する。

b aで求めた左右眼の中心視野視認点数に基づき、次式により、両眼中心視野視認点数を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。

両眼中心視野視認点数=(3×中心視野視認点数が多い方の眼の中心視野視認点数+中心視野視認点数が少ない方の眼の中心視野視認点数)/4

エ ゴールドマン型視野計では、中心30度内は適宜矯正レンズを使用し、30度外は矯正レンズを装用せずに測定する。

自動視野計では、10―2プログラムは適宜矯正レンズを使用し、両眼開放エスターマンテストは矯正眼鏡を装用せずに実施する。

オ 自動視野計を用いて測定した場合において、認定上信頼性のある測定が困難な場合は、ゴールドマン型視野計で測定し、その測定結果により認定を行う。

カ ゴールドマン型視野計又は自動視野計の結果は、診断書に添付する。

キ 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるものをいう。

ク 「ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの」とは、ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のものをいう。

ケ 「自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの」とは、自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下のものをいう。

コ 「ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下に減じたもの」とは、ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のものをいう。

サ 「自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下に減じたもの」とは、自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下のものをいう。

シ 「自動視野計による測定の結果、両眼中心視野視認点数が40点以下に減じたもの」とは、自動視野計による測定の結果、両眼中心視野視認点数が40点以下のものをいう。

(3) その他の障害

ア 「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、普通にまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆い得ない程度のものをいう。

イ 「調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの」とは、眼の調節機能及び輻輳機能の障害のため複視や眼精疲労による頭痛等が生じ、読書等が続けられない程度のものをいう。

ウ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 「まぶたの運動障害」のうち、眼瞼痙攣等で常時両眼のまぶたに著しい運動障害を残すことで作業等が続けられない程度のもの

(イ) 「眼球の運動障害」のうち、麻痺性斜視で複視が強固のため片眼に眼帯をしないと生活ができないため、労働が制限される程度のもの

(ウ) 「瞳孔の障害」のうち、散瞳している状態で瞳孔の対光反射の著しい障害により羞明(まぶしさ)を訴え、労働に支障をきたす程度のもの

(4) 視力障害、視野障害、まぶたの欠損障害、調節機能障害、輻輳機能障害、まぶたの運動障害、眼球の運動障害又は瞳孔の障害が併存する場合には、併合認定の取扱いを行う。

第2節/聴覚の障害

聴覚の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

聴覚の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

 

2級

両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの

 

 

身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの

別表第2

障害手当金

一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの

2 認定要領

聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定する。

(1) 聴力レベルは、オージオメータ(JIS規格又はこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定するものとする。

ただし、聴覚の障害により障害年金を受給していない者に対し、1級に該当する診断を行う場合には、オージオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査を実施する。また、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を診断書に記載し、記録データのコピー等を提出(添付)するものとする。

(2) 聴力レベルのデシベル値は、話声域すなわち周波数500、1000、2000ヘルツにおける純音の各デシベル値をa、b、cとした場合、次式により算出する。

平均純音聴力レベル値=(a+2b+c)/4

なお、この算式により得た値が境界値に近い場合には

(a+2b+2c+d)/6の算式により得た値を参考とする。

a:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

b:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

c:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

d:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

(3) 最良語音明瞭度の算出は、次によるものとする。

ア 検査は、録音器又はマイク付オージオメータにより、通常の会話の強さで発声し、オージオメータの音量を適当に強めたり、弱めたりして最も適した状態で行う。

イ 検査語は、語音弁別能力測定用語音集により、2秒から3秒に1語の割合で発声し、語音明瞭度を検査する。

なお、語音聴力表は、「57s式語表」あるいは「67s式語表」とする。

ウ 語音明瞭度は、次式により算出し、語音明瞭度の最も高い値を最良語音明瞭度(語音弁別能)とする。

語音明瞭度=(正答語音数/検査語数)×100(%)

(4) 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のものをいう。

(5) 「両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

ア 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの

イ 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの

(6) 「一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの」とは、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものをいう。

(7) 聴覚の障害により障害年金を受給していない者の障害の状態が1級に該当する場合は、オージオメータによる検査結果のほか、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査結果を把握して、総合的に認定する。

(8) 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがあるが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。

第3節/鼻腔機能の障害

鼻腔機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

鼻腔機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

厚年令別表第2

障害手当金

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

2 認定要領

(1) 「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの」とは、鼻軟骨部の全部又は大部分を欠損し、かつ、鼻呼吸障害のあるものをいう。

(2) 嗅覚脱失は、認定の対象とならない。

第4節/平衡機能の障害

平衡機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

平衡機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

2級

平衡機能に著しい障害を有するもの

厚年令

別表第1

3級

神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

別表第2

障害手当金

神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

(1) 平衡機能の障害には、その原因が内耳性のもののみならず、脳性のものも含まれるものである。

(2) 「平衡機能に著しい障害を有するもの」とは、四肢体幹に器質的異常がない場合に、閉眼で起立・立位保持が不能又は開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度のものをいう。

(3) 中等度の平衡機能の障害のために、労働能力が明らかに半減しているものは、3級と認定する。

中等度の平衡機能の障害とは、閉眼で起立・立位保持が不安定で、開眼で直線を10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す程度のものをいう。

(4) めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものは、併合判定参考表の8号(3級又は障害手当金)と認定する。

第5節/そしゃく・嚥下機能の障害

そしゃく・嚥下機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

そしゃく・嚥下機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

2級

そしゃくの機能を欠くもの

厚年令

別表第1

3級

そしゃくの機能に相当程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

そしゃくの機能に障害を残すもの

2 認定要領

(1) そしゃく・嚥下機能の障害は、歯、顎(顎関節も含む。)、口腔(舌、口唇、硬口蓋、頬、そしゃく筋等)、咽頭、喉頭、食道等の器質的、機能的障害(外傷や手術による変形、障害も含む。)により食物の摂取が困難なもの、あるいは誤嚥の危険が大きいものである。

(2) そしゃく・嚥下機能の障害の程度は、摂取できる食物の内容、摂取方法によって次のように区分するが、関与する器官、臓器の形態・機能、栄養状態等も十分考慮して総合的に認定する。

ア 「そしゃく・嚥下の機能を欠くもの」とは、流動食以外は摂取できないもの、経口的に食物を摂取することができないもの、及び、経口的に食物を摂取することが極めて困難なもの(食餌が口からこぼれ出るため常に手、器物等でそれを防がなければならないもの、または、一日の大半を食事に費やさなければならない程度のもの)をいう。

イ 「そしゃく・嚥下の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないためにゾンデ栄養の併用が必要なもの、または、全粥又は軟菜以外は摂取できない程度のものをいう。

ウ 「そしゃく・嚥下の機能に障害を残すもの」とは、ある程度の常食は摂取できるが、そしゃく・嚥下が十分できないため、食事が制限される程度のものをいう。

(3) 歯の障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。

(4) 食道の狭窄、舌、口腔、咽頭の異常等によって生じる嚥下の障害については、そしゃく機能の障害に準じて、すなわち、摂取し得る食物の内容によって認定を行う。

(5) そしゃく機能の障害と嚥下機能の障害は、併合認定しない。

第6節/音声又は言語機能の障害

音声又は言語機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

音声又は言語機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

2級

音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

厚年令

別表第1

3級

言語の機能に相当程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

言語の機能に障害を残すもの

2 認定要領

(1) 音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能又は音声言語の理解と表出に関わる機能の障害をいい、構音障害又は音声障害、失語症及び聴覚障害による障害が含まれる。

ア 構音障害又は音声障害

歯、顎、口腔(舌、口唇、口蓋等)、咽頭、喉頭、気管等の発声器官の形態異常や運動機能障害により、発音に関わる機能に障害が生じた状態のものをいう。

イ 失語症

大脳の言語野の後天性脳損傷(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷や脳炎など)により、一旦獲得された言語機能に障害が生じた状態のものをいう。

ウ 聴覚障害による障害

先天的な聴覚障害により音声言語の表出ができないものや、中途の聴覚障害によって発音に障害が生じた状態のものをいう。

(2) 「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいう。

(3) 「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つものをいう。

(4) 「言語の機能に障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいう。

(5) 構音障害、音声障害又は聴覚障害による障害については、発音不能な語音を評価の参考とする。発音不能な語音は、次の4種について確認するほか、語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果を確認する。

ア 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音等)

イ 歯音、歯茎音(さ行、た行、ら行等)

ウ 歯茎硬口蓋音(しゃ、ちゃ、じゃ等)

エ 軟口蓋音(か行音、が行音等)

(6) 失語症については、失語症の障害の程度を評価の参考とする。失語症の障害の程度は、音声言語の表出及び理解の程度について確認するほか、標準失語症検査等が行われた場合はその結果を確認する。

(7) 失語症が、音声言語の障害の程度と比較して、文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、その症状も勘案し、総合的に認定する。

(8) 喉頭全摘出手術を施したものについては、原則として次により取り扱う。

ア 手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したものについては、2級と認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、喉頭全摘出手術を施した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(9) 歯のみの障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。

(10) 音声又は言語機能の障害(特に構音障害)とそしゃく・嚥下機能の障害とは併存することが多いが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。また、音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合についても、併合認定の取扱いを行う。

第7節/肢体の障害

肢体の障害による障害の程度は、「上肢の障害」、「下肢の障害」、「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」に区分し、次により認定する。

第1 上肢の障害

1 認定基準

上肢の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の用を全く廃したもの」という。)

両上肢の全ての指を欠くもの(以下「両上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)

両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の全ての指の用を全く廃したもの」という。)

2級

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」という。)

一上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の用を全く廃したもの」という。)

一上肢の全ての指を欠くもの(以下「一上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)

一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の全ての指の用を全く廃したもの」という。)

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの

長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの(以下「一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。)

おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

長管状骨に著しい転位変形を残すもの

一上肢の2指以上を失ったもの(以下「一上肢の2指以上を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。)

一上肢のひとさし指を失ったもの(以下「一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの」という。)

一上肢の3指以上の用を廃したもの

ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの

一上肢のおや指の用を廃したもの

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

上肢の障害は、機能障害、欠損障害及び変形障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢の用を全く廃したもの」とは、両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

イ 「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一上肢の用を全く廃したもの」とは、一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。

なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。

オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。

(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。

カ 「上肢の指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「上肢の指の用を全く廃したもの」とは、指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮等により、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものをいう。

キ 「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」とは、両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいう。

ク 「指の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 指の末節骨の長さの2分の1以上を欠くもの

(イ) 中手指節関節(MP)又は近位指節間関節(PIP)(おや指にあっては、指節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

ケ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両上肢に機能障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

なお、両上肢に障害がある場合の認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

コ 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。

(ア) 一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。

ただし、そう入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。

(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

サ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一上肢に機能障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

シ 前腕の他動可動域が健側の他動可動域の4分の1以下に制限されたものは、上記サと同程度の障害を残すもの(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の10号)」)とする。

ス 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

(2) 欠損障害

ア 「上肢の指を欠くもの」とは、基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいう。

「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの」とは、必ず両上肢のおや指を基部から欠き、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指を基部から欠くものである。

イ 「指を失ったもの」とは、おや指については指節間関節(IP)、その他の指については近位指節間関節(PIP)以上で欠くものをいう。

なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。

(3) 変形障害

ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)

(ア) 上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

(イ) 橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、上腕骨、橈骨又は尺骨に偽関節を残すもの(「一上肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定する。

イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 上腕骨に変形を残すもの

(イ) 橈骨又は尺骨に変形を残すもの

ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。

(4) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。

なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位

主要な運動

肩関節

屈曲・外転

肘関節

屈曲・伸展

手関節

背屈・掌屈

前腕

回内・回外

手指

屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。

ただし、両側に障害を有する場合にあっては、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。

ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。

(ア) 筋力  (イ) 巧緻性  (ウ) 速さ  (エ) 耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から上肢の障害を総合的に認定する。

第2 下肢の障害

1 認定基準

下肢の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両下肢の用を全く廃したもの」という。)

両下肢を足関節以上で欠くもの

2級

両下肢の全ての指を欠くもの(以下「両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)

一下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一下肢の用を全く廃したもの」という。)

一下肢を足関節以上で欠くもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの

長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの

両下肢の10趾の用を廃したもの

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

一下肢を3センチメートル以上短縮したもの

長管状骨に著しい転位変形を残すもの

一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの(以下「一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)

一下肢の5趾の用を廃したもの

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

下肢の障害は、機能障害、欠損障害、変形障害及び短縮障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両下肢の用を全く廃したもの」とは、両下肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ただし、両下肢それぞれの膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように、両下肢の3大関節中単にそれぞれ1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その両下肢を歩行時に使用することができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定する。

なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

イ 「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一下肢の用を全く廃したもの」とは、一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ただし、膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように単に1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定する。

ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。

なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。

オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。

(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。

カ 「足趾の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 第1趾は、末節骨の2分の1以上、その他の4趾は遠位趾節間関節(DIP)以上で欠くもの

(イ) 中足趾節関節(MP)又は近位趾節間関節(PIP)(第1趾にあっては、趾節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

キ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

ク 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。

(ア) 一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。

ただし、そう入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。

(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

ケ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢に機能障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

コ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) 片足で立つ

(イ) 歩く(屋内)

(ウ) 歩く(屋外)

(エ) 立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ) 階段を下りる

(2) 欠損障害

ア 「足関節以上で欠くもの」とは、ショパール関節以上で欠くものをいう。

イ 「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節(MP)から欠くものをいう。

なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。

(3) 変形障害

ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)

(ア) 大腿骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

(イ) 脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、大腿骨又は脛骨に偽関節を残すもの(「一下肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定する。

イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 大腿骨に変形を残すもの

(イ) 脛骨に変形を残すもの(腓骨のみに変形を残すものについても、その程度が著しい場合はこれに該当する)

ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。

(4) 短縮障害

下肢長の測定は、上前腸骨棘と脛骨内果尖端を結ぶ直線距離の計測による。

ア 一下肢が健側の長さの4分の1以上短縮した場合は、「一下肢の用を全く廃したもの」に該当するものとして認定する。

イ 一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短縮した場合は、「一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」に該当するものとして認定する。

(5) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。

なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位

主要な運動

股関節

屈曲・伸展

膝関節

屈曲・伸展

足関節

背屈・底屈

足指

屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。

ただし、両側に障害を有する場合には、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。

ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。

(ア) 筋力  (イ) 巧緻性  (ウ) 速さ  (エ) 耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から下肢の障害を総合的に認定する。

第3 体幹・脊柱の機能の障害

1 認定基準

体幹・脊柱の機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

脊柱の機能に著しい障害を残すもの

別表第2

障害手当金

脊柱の機能に障害を残すもの

2 認定要領

(1) 体幹の機能の障害

体幹の機能障害は、高度体幹麻痺を後遺した脊髄性小児麻痺、脳性麻痺等によって生じるものである。

ア 「体幹の機能に座っていることができない程度の障害を有するもの」とは、腰掛、正座、あぐら、横すわりのいずれもができないものをいい、「体幹の機能に立ち上がることができない程度の障害を有するもの」とは、臥位又は坐位から自力のみで立ち上れず、他人、柱、杖、その他の器物の介護又は補助によりはじめて立ち上ることができる程度の障害をいう。

イ 「体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの」とは、室内においては、杖、松葉杖、その他の補助用具を必要とせず、起立移動が可能であるが、野外ではこれらの補助用具の助けをかりる必要がある程度の障害をいう。

(2) 脊柱の機能の障害

脊柱の機能障害は、脊柱の脱臼骨折又は強直性脊椎炎等によって生じるもので、荷重機能障害と運動機能障害がある。

ア 荷重機能障害は、脊柱の支持機能の障害で、日常生活及び労働に及ぼす影響が大きいので重視する必要がある。

なお、「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、日常生活における動作が一人でできるが非常に不自由な場合又はこれに近い状態をいう。

イ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい)

(イ) 靴下を履く(どのような姿勢でもよい)

(ウ) 座る(正座、横すわり、あぐら、脚なげ出し)

(エ) 深くおじぎ(最敬礼)をする

(オ) 立ち上がる

ウ 運動機能障害は、基本的には、前屈・後屈運動のみの測定で可とするが、脊柱全体の運動機能をみる必要がある場合は回旋・側屈を測定し認定する。

(ア) 「脊柱の機能に著しい障害を残すもの」とは、脊柱又は背部・軟部組織の明らかな器質的変化のため、脊柱の他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されたものをいう。

(イ) 「脊柱の機能に障害を残すもの」とは、脊柱又は背部・軟部組織の明らかな器質的変化のため、脊柱の他動可動域が参考可動域の4分の3以下に制限されている程度のものや頭蓋・上位頸椎間の著しい異常可動性が生じたものをいう。

しかし、傷病の部位がゆ合してその部位のみについてみると運動不能であっても、他の部位が代償して脊柱に運動障害は軽度あるいはほとんど認められない場合が多いので、脊柱全体の運動機能、すなわち、前記イのような日常生活における動作を考慮し認定する。

エ 脊柱可動域の測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

オ 神経機能障害との関係

認定に当たっては、単に脊柱の運動障害のみでなく、随伴する神経系統の障害を含め、総合的に認定する。

第4 肢体の機能の障害

1 認定基準

肢体の機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

(1) 肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、本節「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び「第3 体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「第4 肢体の機能の障害」として認定する。

(2) 肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。

(3) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1.一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの

2.四肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2級

1.一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2.四肢に機能障害を残すもの

3級

一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

(注) 肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定すること。

なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定すること。

(4) 日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができないが、おおむね次のとおりである。

ア 手指の機能

(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)

(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)

(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)

(エ) ひもを結ぶ

イ 上肢の機能

(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

ウ 下肢の機能

(ア) 片足で立っ

(イ) 歩く(屋内)

(ウ) 歩く(屋外)

(エ) 立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ) 階段を下りる

なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。

(5) 身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。

ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。

イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。

ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。

(別紙)肢体の障害関係の測定方法

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第8節/精神の障害

精神の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

精神の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

2級

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

厚年令

別表第1

3級

精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

別表第2

障害手当金

精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものを3級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すものを障害手当金に該当するものと認定する。

精神の障害は、多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様である。

したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。

2 認定要領

精神の障害は、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分する。

症状性を含む器質性精神障害、てんかんであって、妄想、幻覚等のあるものについては、「A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」に準じて取り扱う。

A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害

(1) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

(2) 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害の認定に当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。

ア 統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもある。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。

イ 気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。

また、統合失調症等とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

(4) 人格障害は、原則として認定の対象とならない。

(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。

なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD―10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

B 症状性を含む器質性精神障害

(1) 症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。

なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」という。)についてもこの項に含める。

また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(2) 各等級等に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級

認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの

2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

障害手当金

認知障害のため、労働が制限を受けるもの

(3) 脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定する。

(4) 精神作用物質使用による精神障害

ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とならない。

イ 精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。

(5) 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。

なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。

また、失語の障害については、本章「第6節 音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定する。

(6) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

C てんかん

(1) てんかん発作は、部分発作、全般発作、未分類てんかん発作などに分類されるが、具体的に出現する臨床症状は多彩である。

また、発作頻度に関しても、薬物療法によって完全に消失するものから、難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないものまで様々である。

さらに、てんかん発作は、その重症度や発作頻度以外に、発作間欠期においても、それに起因ずる様々な程度の精神神経症状や認知障害などが、稀ならず出現することに留意する必要がある。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの

2級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

(注1) 発作のタイプは以下の通り

A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作

C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作

D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

(注2) てんかんは、発作と精神神経症状及び認知障害が相まって出現することに留意が必要。また、精神神経症状及び認知障害については、前記「B 症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定すること。

(3) てんかんの認定に当たっては、その発作の重症度(意識障害の有無、生命の危険性や社会生活での危険性の有無など)や発作頻度に加え、発作間欠期の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定する。

様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

また、てんかんとその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

D 知的障害

(1) 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級

知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

3級

知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

(3) 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。

また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(5) 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。

したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

E 発達障害

(1) 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

(2) 発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。

また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする。

(4) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

(5) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(6) 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。

したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

第9節/神経系統の障害

神経系統の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

神経系統の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

(1) 肢体の障害の認定は、本章「第7節 肢体の障害」に示した認定要領に基づいて認定を行う。

(2) 脳の器質障害については、神経障害と精神障害を区別して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定する。

(3) 疼痛は、原則として認定の対象とならないが、四肢その他の神経の損傷によって生じる灼熱痛、脳神経及び脊髄神経の外傷その他の原因による神経痛、根性疼痛、悪性新生物に随伴する疼痛、糖尿病性神経障害による激痛等の場合は、疼痛発作の頻度、強さ、持続時間、疼痛の原因となる他覚的所見等により、次のように取り扱う。

ア 軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは、3級と認定する。

イ 一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものは、障害手当金に該当するものと認定する。

(4) 神経系の障害により次のいずれかの状態を呈している場合は、原則として初診日から起算して1年6月を経過した日以前であっても障害認定日として取り扱う。

ア 脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき。

イ 現在の医学では、根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき。

第10節/呼吸器疾患による障害

呼吸器疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

呼吸器疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

呼吸器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたり安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

また、呼吸器疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性呼吸不全によるものであり、特別な取扱いを要する呼吸器疾患として肺結核・じん肺・気管支喘息があげられる。

2 認定要領

呼吸器疾患は、肺結核、じん肺及び呼吸不全に区分する。

A 肺結核

(1) 肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。

(2) 肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。

(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

認定の時期前6月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

1 認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

2 認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

1 認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

2 認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類Ⅳ型であるもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

(4) 肺結核に他の結核又は他の疾病が合併している場合は、その合併症の軽重、治療法、従来の経過等を勘案した上、具体的な日常生活状況等を考慮するとともに、第2「1 障害の程度」及び本節「1 認定基準」を踏まえて、総合的に認定する。

(5) 肺結核及び肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。

(6) 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象とならないが、肩関節の運動障害を伴う場合には、本章「第7節 第1 上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行う。

(7) 「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも2剤以上の抗結核剤により、積極的な化学療法を施行しているものをいう。

B じん肺

(1) じん肺による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。

(2) じん肺の病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。

(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの

(4) じん肺の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。

C 呼吸不全

(1) 呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。

認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。

慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。

(2) 呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。

(3) 検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等がある。

(4) 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のとおりである。

なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。

A表 動脈血ガス分析値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

1

動脈血O2分圧

Torr

70~61

60~56

55以下

2

動脈血CO2分圧

Torr

46~50

51~59

60以上

(注)病状判定に際しては、動脈血O2分圧値を重視する。

B表 予測肺活量1秒率

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

予測肺活量1秒率

40~31

30~21

20以下

(5) 呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

前記(4)のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

前記(4)のA表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7) 慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの

2級

呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のエ又はウに該当する場合であって、プレドニゾロンに換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの

3級

喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合があり、一般状態区分表のウ又はイに該当する場合であって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とし、かつ、短時間作用性吸入β2刺激薬頓用を少なくとも週に1回以上必要とするもの

(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。

また、全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは限らず、また、必ずしも「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」に基づく治療を受けているとは限らないことに留意が必要。

(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。

(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、呼吸不全の基準で認定する。

(8) 在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として次により取り扱う。

ア 常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定する。

なお、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(9) 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記(4)のA表及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定する。

(10) 慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級と認定する。

なお、治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(11) 慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとは言えない。

(12) 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

<参考> 「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」より抜粋

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第11節/心疾患による障害

心疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

心疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

心疾患による障害の程度は、呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ、浮腫等の臨床症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) この節に述べる心疾患とは、心臓だけではなく、血管を含む循環器疾患を指すものである。(ただし、血圧については、本章「第17節 高血圧症による障害」で述べるので除く。)

心疾患による障害は、弁疾患、心筋疾患、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、難治性不整脈、大動脈疾患、先天性心疾患に区分する。

(2) 心疾患の障害等級の認定は、最終的には心臓機能が慢性的に障害された慢性心不全の状態を評価することである。この状態は虚血性心疾患や弁疾患、心筋疾患などのあらゆる心疾患の終末像である。

慢性心不全とは、心臓のポンプ機能の障害により、体の末梢組織への血液供給が不十分となった状態を意味し、一般的には左心室系の機能障害が主体をなすが、右心室系の障害も考慮に入れなければならない。左心室系の障害により、動悸や息切れ、肺うっ血による呼吸困難、咳・痰、チアノーゼなどが、右心室系の障害により、全身倦怠感や浮腫、尿量減少、頚静脈怒張などの症状が出現する。

(3) 心疾患の主要症状としては、胸痛、動悸、呼吸困難、失神等の自覚症状、浮腫、チアノーゼ等の他覚所見がある。

臨床所見には、自覚症状(心不全に基づく)と他覚所見があるが、後者は医師の診察により得られた客観的症状なので常に自覚症状と連動しているか否かに留意する必要がある(以下、各心疾患に同じ)。重症度は、心電図、心エコー図・カテーテル検査、動脈血ガス分析値も参考とする。

(4) 検査成績としては、血液検査(BNP値)、心電図、心エコー図、胸部X線、X線CT、MRI等、核医学検査、循環動態検査、心カテーテル検査(心カテーテル法、心血管造影法、冠動脈造影法等)等がある。

(5) 肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は、心疾患による障害として認定する。

(6) 心血管疾患が重複している場合には、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定する。

(7) 心疾患の検査での異常検査所見を一部示すと、次のとおりである。

区分

異常検査所見

A

安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く。)の所見のあるもの

B

負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの

C

胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの

D

心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの

E

心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの

F

左室駆出率(EF)40%以下のもの

G

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超えるもの

H

重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの

I

心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

(注1) 原則として、異常検査所見があるもの全てについて、それに該当する心電図等を提出(添付)させること。

(注2) 「F」についての補足

心不全の原因には、収縮機能不全と拡張機能不全とがある。

近年、心不全症例の約40%はEF値が保持されており、このような例での心不全は左室拡張不全機能障害によるものとされている。しかしながら、現時点において拡張機能不全を簡便に判断する検査法は確立されていない。左室拡張末期圧基準値(5―12mmHg)をかなり超える場合、パルスドプラ法による左室流入血流速度波形を用いる方法が一般的である。この血流速度波形は急速流入期血流速度波形(E波)と心房収縮期血流速度波形(A波)からなり、E/A比が1.5以上の場合は、重度の拡張機能障害といえる。

(注3) 「G」についての補足

心不全の進行に伴い、神経体液性因子が血液中に増加することが確認され、心不全の程度を評価する上で有用であることが知られている。中でも、BNP値(心室で生合成され、心不全により分泌が亢進)は、心不全の重症度を評価する上でよく使用されるNYHA分類の重症度と良好な相関性を持つことが知られている。この値が常に100pg/ml以上の場合は、NYHA心機能分類でⅡ度以上と考えられ、200pg/ml以上では心不全状態が進行していると判断される。

(注4) 「H」についての補足

すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く。

(8) 心疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(参考) 上記区分を身体活動能力にあてはめると概ね次のとおりとなる。

区分

身体活動能力

6Mets以上

4Mets以上6Mets未満

3Mets以上4Mets未満

2Mets以上3Mets未満

2Mets未満

(注) Metsとは、代謝当量をいい、安静時の酸素摂取量(3.5ml/kg体重/分)を1Metsとして活動時の酸素摂取量が安静時の何倍かを示すものである。

(9) 疾患別に各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりである。

① 弁疾患

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあわらす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 人工弁を装着したもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注1) 複数の人工弁置換術を受けている者にあつても、原則3級相当とする。

(注2) 抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とはしない。

② 心筋疾患

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見のFに加えて、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 EF値が50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注) 肥大型心筋症は、心室の収縮は良好に保たれるが、心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっている。したがってEF値が障害認定にあたり、参考とならないことが多く、臨床所見や心電図所見、胸部X線検査、心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断する。

③ 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全あるいは狭心症状を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

異常検査所見が2つ以上、かつ、軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

異常検査所見が1つ以上、かつ、心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上あるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注) 冠動脈疾患とは、主要冠動脈に少なくとも1ヶ所の有意狭窄をもつ。あるいは、冠攣縮が証明されたものを言い、冠動脈造影が施行されていなくとも心電図、心エコー図、核医学検査等で明らかに冠動脈疾患と考えられるものも含む。

④ 難治性不整脈

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見のEがあり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 ペースメーカー、ICDを装着したもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注1) 難治性不整脈とは、放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないものを言う。

(注2) 心房細動は、一般に加齢とともに漸増する不整脈であり、それのみでは認定の対象とはならないが、心不全を合併したり、ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象となる。

⑤ 大動脈疾患

障害の程度

障害の状態

3級

1 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

(注1)

Stanford分類A型:上行大動脈に解離がある。

Stanford分類B型:上行大動脈まで解離が及んでいないもの。

(注2) 大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となる。これのみでは認定の対象とはならないが、原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に判断する。

(注3) 胸部大動脈瘤には、胸腹部大動脈瘤も含まれる。

(注4) 難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上又は拡張期血圧が90mmHg以上のもの。

(注5) 大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はあるが、完全治癒を望める疾患ではない。従って、一般的には1・2級には該当しないが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定する。

・ 大動脈瘤の定義:嚢状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3cm)の1.5倍以上のものをいう。(2倍以上は手術が必要。)

・ 人工血管にはステントグラフトも含まれる。

⑥ 先天性心疾患

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見が2つ以上及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 Eisenmenger化(手術不可能な逆流状況が発生)を起こしているもので、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 異常検査所見のC、D、Eのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 肺体血流比1.5以上の左右短絡又は肺動脈収縮期圧50mmHg以上のもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

⑦ 重症心不全

心臓移植や人工心臓等を装着した場合の障害等級は、次のとおりとする。ただし、術後は次の障害等級に認定するが、1~2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定する。

・ 心臓移植 1級

・ 人工心臓 1級

・ CRT(心臓再同期医療機器)、CRT―D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器) 2級

(10) 心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)、又は人工弁を装着した場合の障害の程度を認定すべき日は、それらを装着した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(11) 各疾患によって、用いられる検査が異なっており、また、特殊検査も多いため、診断書上に適切に症状をあらわしていると思われる検査成績が記載されているときは、その検査成績も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

第12節/腎疾患による障害

腎疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

腎疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 腎疾患による障害の認定の対象はそのほとんどが、慢性腎不全に対する認定である。

慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいう。

すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性がある。腎疾患で最も多いものは、糖尿病性腎症、慢性腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症であるが、他にも、多発性嚢胞腎、急速進行性腎炎、腎盂腎炎、膠原病、アミロイドーシス等がある。

(2) 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、尿検査、血球算定検査、血液生化学検査(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質等)、動脈血ガス分析、腎生検等がある。

(4) 病態別に検査項目及び異常値の一部を示すと次のとおりである。

① 慢性腎不全

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

内因性クレアチニン

クリアランス

ml/分

20以上30未満

10以上20未満

10未満

血清クレアチニン

mg/dl

3以上5未満

5以上8未満

8以上

(注) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73m2)が10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能とする。

② ネフローゼ症候群

区分

検査項目

単位

異常

尿蛋白量

(1日尿蛋白量又は尿蛋白/尿クレアチニン比)

g/日又はg/gCr

3.5g以上を持続する

血清アルブミン

(BCG法)

g/dl

3.0g以下

血清総蛋白

g/dl

6.0g以下

(5) 腎疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)①の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 前記(4)①の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

2 人工透析療法施行中のもの

3級

1 前記(4)①の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

2 前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

(7) 人工透析療法施行中のものについては、原則として次により取り扱う。

ア 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。

なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(8) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(9) 糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

(10) 腎疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、前記(4)の検査成績によるほか、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(11) 腎臓移植の取扱い

ア 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第13節/肝疾患による障害

肝疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

肝疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 肝疾患による障害の認定の対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含む。)である。

肝硬変では、一般に肝は萎縮し肝全体が高度の線維化のため硬化してくる。

肝硬変で最も多いものは、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスによるウイルス性肝硬変であり、その他自己免疫性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変、アルコール性肝硬変、胆汁うっ滞型肝硬変、代謝性肝硬変(ウィルソン病、ヘモクロマトーシス)等がある。

(2) 肝疾患の主要症状としては、易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣等の自覚症状、肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、まず、血球算定検査、血液生化学検査が行われるが、さらに、肝炎ウイルス検査、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、腹腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査、肝血管造影等が行われる。

(4) 肝疾患での重症度判定の検査項目及び臨床所見並びに異常値の一部を示すと次のとおりである。

検査項目/臨床所見

基準値

中等度の異常

高度異常

血清総ビリルビン

(mg/dl)

0.3~1.2

2.0以上3.0以下

3.0超

血清アルブミン

(g/dl)

(BCG法)

4.2~5.1

3.0以上3.5以下

3.0未満

血小板数

(万/μl)

13~35

5以上10未満

5未満

プロトロンビン

時間(PT)(%)

70超~130

40以上70以下

40未満

腹水

腹水あり

難治性腹水あり

脳症(表1)

Ⅰ度

Ⅱ度以上

表1 昏睡度分類

昏睡度

精神症状

参考事項

睡眠―覚醒リズムに逆転。

多幸気分ときに抑うつ状態。

だらしなく、気にとめない態度。

あとで振り返ってみて判定できる。

指南力(時、場所)障害、

物をとり違える(confusion)

異常行動

(例:お金をまく、

化粧品をゴミ箱に捨てるなど)

ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話が出来る)

無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる。

興奮状態がない。

尿便失禁がない。

羽ばたき振戦あり。

しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる。

嗜眠状態(ほとんど眠っている)。

外的刺激で開眼しうるが、他人の指示には従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)。

羽ばたき振戦あり。

(患者の協力がえられる場合)

指南力は高度に障害。

昏眠(完全な意識の消失)。

痛み刺激に反応する。

刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる。

深昏睡

痛み刺激にもまったく反応しない。

 

(5) 肝疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

なお、障害の程度の判定に当たっては、前記(4)の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7) 検査成績は、その性質上変動しやすいので、肝疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(8) 肝硬変は、その発症原因によって、病状、進行状況を異にするので、各疾患固有の病態に合わせて認定する。アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り、認定を行うものとする。

(9) 慢性肝炎は、原則として認定の対象としないが、(6)に掲げる障害の状態に相当するものは認定の対象とする。

(10) 食道・胃などの静脈瘤については、吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果を参考とし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、総合的に認定する。特発性細菌性腹膜炎についても、同様とする。

(11) 肝がんについては、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、肝がんによる障害を考慮し、本節及び「第16節/悪性新生物による障害」の認定要領により認定する。ただし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常がない場合は、第16節の認定要領により認定する。

(12) 肝臓移植の取扱い

ア 肝臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害年金を支給されている者が肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第14節/血液・造血器疾患による障害

血液・造血器疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

血液・造血器疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする症状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

血液・造血器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び症状の経過等(薬物療法による症状の消長の他、薬物療法に伴う合併症等)、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 血液・造血器疾患は、臨床像から血液・造血器疾患を次のように大別する。

ア 赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

イ 血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

ウ 白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)

(2) 血液・造血器疾患の主要症状としては、顔面蒼白、易疲労感、動悸、息切れ、発熱、頭痛、めまい、知覚異常、紫斑、月経過多、骨痛、関節痛等の自覚症状、黄疸、心雑音、舌の異常、易感染性、出血傾向、血栓傾向、リンパ節腫脹、肝腫、脾腫等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、血球算定検査、血液生化学検査、免疫学的検査、鉄代謝検査、骨髄穿刺、リンパ節生検、骨髄生検、凝固系検査、染色体検査、遺伝子検査、細胞表面抗原検査、画像検査(CT検査・超音波検査など)等がある。

(4) 血液・造血器疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

ア 赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血をひんぱんに必要とするもの

1 中度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血を時々必要とするもの

1 軽度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血を必要に応じて行うもの

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) ヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの

(2) 網赤血球数が2万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) 白血球数が1,000/μL未満のもの

(2) 好中球数が500/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) ヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの

(2) 網赤血球数が2万/μL以上6万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) 白血球数が1,000/μL以上2,000/μL未満のもの

(2) 好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) ヘモグロビン濃度が9.0g/dL以上10.0g/dL未満のもの

(2) 網赤血球数が6万/μL以上10万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) 白血球数が2,000/μL以上3,300/μL未満のもの

(2) 好中球数が1,000/μL以上2,000/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの

イ 血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法をひんぱんに行っているもの

1 中度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法を時々行っているもの

1 軽度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法を必要に応じ行っているもの

(注) 補充療法は、凝固因子製剤(代替医薬品やインヒビター治療薬の投与を含む。)の輸注、血小板の輸血、新鮮凍結血漿の投与などを対象にする。

B表

区分

検査所見

1 APTT又はPTが基準値の3倍以上のもの

2 血小板数が2万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が1%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の2倍以上3倍未満のもの

2 血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が1%以上5%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の1.5倍以上2倍未満のもの

2 血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が5%以上40%未満のもの

(注1) 凝固因子活性は、凝固第〔Ⅱ・Ⅴ・Ⅶ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹ・ⅩⅠ・ⅩⅢ〕因子とフォンヴィレブランド因子のうち、最も数値の低い一因子を対象にする。

(注2) 血栓疾患、凝固因子欠乏症でインヒビターが出現している状態及び凝固第Ⅰ因子(フィブリノゲン)が欠乏している状態の場合は、B表(検査所見)によらず、A表(臨床所見)、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。

ウ 白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)

A表

区分

臨床所見

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫等の著しいもの

2 輸血をひんぱんに必要とするもの

3 治療に反応せず進行するもの

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫等のあるもの

2 輸血を時々必要とするもの

3 継続的な治療が必要なもの

継続的ではないが治療が必要なもの

(注1) A表に掲げる治療とは、疾病に対する治療であり、輸血などの主要な症状を軽減するための治療(対症療法)は含まない。

(注2) A表に掲げる治療に伴う副作用による障害がある場合は、その程度に応じて、A表の区分をⅡ以上とする(Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)のグレード2以上の程度を参考とする。)。

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL未満のもの

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL以上600/μL未満のもの

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が9.0g/dL以上10.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が5万/μL以上10万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が1,000/μL以上2,000/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が600/μL以上1,000/μL未満のもの

(6) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、血液・造血器疾患による障害の程度の判定に当たっては、最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて行うものとする。

特に、輸血や補充療法により検査数値が一時的に改善する場合は、治療前の検査成績に基づいて行うものとする。

(7) 血液・造血器疾患の病態は、各疾患による差異に加え、個人差も大きく現れ、病態によって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、認定に当たっては前記(5)のA表及びB表によるほか、他の一般検査、特殊検査及び画像診断等の検査成績、病理組織及び細胞所見、合併症の有無とその程度、治療及び病状の経過等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(8) 造血幹細胞移植の取扱い

ア 造血幹細胞移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、移植片対宿主病(GVHD)の有無及びその程度、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 慢性GVHDについては、日本造血細胞移植学会(ガイドライン委員会)において作成された「造血細胞移植ガイドライン」における慢性GVHDの臓器別スコア及び重症度分類を参考にして、認定時の具体的な日常生活状況を把握し、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に認定する。

ウ 障害年金を支給されている者が造血幹細胞移植を受けた場合は、移植片が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

<参考>「有害事象共通用語規準v4.0日本語訳JCOG版」より抜粋

<参考>「造血細胞移植ガイドライン」より抜粋

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第15節/代謝疾患による障害

代謝疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

代謝疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

代謝疾患による障害の程度は、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 代謝疾患は、糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝、尿酸代謝、その他の代謝の異常に分けられるが、認定の対象となる代謝疾患による障害は糖尿病が圧倒的に多いため、本節においては、糖尿病の基準を定める。

(2) 糖尿病とは、その原因のいかんを問わず、インスリンの作用不足に基づく糖質、脂質、タンパク質の代謝異常によるものであり、その中心をなすものは高血糖である。

糖尿病患者の血糖コントロールの困難な状態が長年にわたると、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽等の慢性合併症が発症、進展することとなる。

糖尿病の認定は、血糖のコントロール状態そのものの認定もあるが、多くは糖尿病合併症に対する認定である。

(3) 糖尿病による障害の程度は、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。

(4) 糖尿病による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) 糖尿病については、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので、次のいずれかに該当するものを3級と認定する。

ただし、検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていることについて、確認のできた者に限り、認定を行うものとする。

なお、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

ア 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

イ 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

ウ インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

(6) 糖尿病性網膜症を合併したものによる障害の程度は、本章「第1節 眼の障害」の認定要領により認定する。

(7) 糖尿病性壊疽を合併したもので、運動障害を生じているものは、本章「第7節 肢体の障害」の認定要領により認定する。

(8) 糖尿病性神経障害は、激痛、著明な知覚の障害、重度の自律神経症状等があるものは、本章「第9節 神経系統の障害」の認定要領により認定する。

(9) 糖尿病性腎症を合併したものによる障害の程度は、本章「第12節 腎疾患による障害」の認定要領により認定する。

(10) その他の代謝疾患は、合併症の有無及びその程度、治療及び症状の経過、一般検査及び特殊検査の検査成績、認定時の具体的な日常生活状況等を十分考慮して、総合的に認定する。

第16節/悪性新生物による障害

悪性新生物による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

悪性新生物による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度もの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

悪性新生物による障害の程度は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 悪性新生物は、全身のほとんどの臓器に発生するため、現れる病状は様々であり、それによる障害も様々である。

(2) 悪性新生物の検査には、一般検査の他に、組織診断検査、腫瘍マーカー検査、超音波検査、X線CT検査、MRI検査、血管造影検査、内視鏡検査等がある。

(3) 悪性新生物による障害は、次のように区分する。

ア 悪性新生物そのもの(原発巣、転位巣を含む。)によって生じる局所の障害

イ 悪性新生物そのもの(原発巣、転位巣を含む。)による全身の衰弱又は機能の障害

ウ 悪性新生物に対する治療の効果として起こる全身衰弱又は機能の障害

(4) 悪性新生物による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) 悪性新生物による障害の程度は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものであるが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

(6) 悪性新生物そのものによるか又は悪性新生物に対する治療の結果として起こる障害の程度は、本章各節の認定要領により認定する。

(7) 悪性新生物による障害の程度の認定例は、(5)に示したとおりであるが、全身衰弱と機能障害とを区別して考えることは、悪性新生物という疾患の本質から、本来不自然なことが多く、認定に当たっては組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像診断等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(8) 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。

第17節/高血圧症による障害

高血圧症による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

高血圧症による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

高血圧症による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、一般状態、血圧検査、血圧以外の心血管病の危険因子、脳、心臓及び腎臓における高血圧性臓器障害並びに心血管病の合併の有無及びその程度等、眼底所見、年齢、原因(本態性又は二次性)、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 高血圧症とは、おおむね降圧薬非服用下で最大血圧が140mmHg以上、最小血圧が90mmHg以上のものをいう。

(2) 高血圧症により脳の障害を合併したものによる障害の程度は、本章「第8節 精神の障害」及び「第9節 神経系統の障害」の認定要領により認定する。

(3) 高血圧症により心疾患を合併したものによる障害の程度は、本章「第11節 心疾患による障害」の認定要領により認定する。

(4) 高血圧症により腎疾患を合併したものによる障害の程度は、本章「第12節 腎疾患による障害」の認定要領により認定する。

(5) 悪性高血圧症は1級と認定する。

この場合において「悪性高血圧症」とは、次の条件を満たす場合をいう。

ア 高い拡張期性高血圧(通常最小血圧が120mmHg以上)

イ 眼底所見で、Keith-Wagener分類Ⅲ群以上のもの

ウ 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全にいたる。

エ 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の増悪とともに、脳症状や心不全を多く伴う。

(6) 1年内の一過性脳虚血発作、動脈硬化の所見のほかに出血、白斑を伴う高血圧性網膜症を有するものは2級と認定する。

(7) 頭痛、めまい、耳鳴、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるものは3級と認定する。

(8) 大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧は3級と認定する。なお、症状、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(9) 動脈硬化性末梢動脈閉塞症を合併した高血圧で、運動障害を生じているものは、本章「第7節 肢体の障害」の認定要領により認定する。

(10) 単に高血圧のみでは認定の対象とならない。

第18節/その他の疾患による障害

その他の疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

その他の疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

その他の疾患による障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) その他の疾患による障害は、本章「第1節 眼の障害」から「第17節 高血圧症による障害」において取り扱われていない疾患を指すものであるが、本節においては、腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症、人工肛門・新膀胱、遷延性植物状態、いわゆる難病及び臓器移植の取扱いを定める。

(2) 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症

ア 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症とは、胃切除によるダンピング症候群等、短絡的腸吻合術による盲管症候群、虫垂切除等による癒着性腸閉塞又は癒着性腹膜炎、腸ろう等をいう。

イ 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症の障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとする。

(3) 人工肛門・新膀胱

ア 人工肛門又は新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施したものは、3級と認定する。

なお、次のものは、2級と認定する。

(ア) 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施したもの

(イ) 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの

なお、全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、次により取り扱う。

人工肛門を造設し又は尿路変更術を施した場合はそれらを行った日から起算して6月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とし、新膀胱を造設した場合はその日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

なお、(3)ア(ア)及び(イ)の場合に障害の程度を認定する時期は、次により取り扱う。

(ア) 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合は、人工肛門を造設した日から起算して6月を経過した日又は新膀胱を造設した日のいずれか遅い日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(イ) 人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合は、それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(ウ) 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態にある場合は、人工肛門を造設した日又は完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(4) 遷延性植物状態については、次により取り扱う。

ア 遷延性植物状態については、日常生活の用を弁ずることができない状態であると認められるため、1級と認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、その障害の状態に至った日から起算して3月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるとき(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(5) いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。

なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(6) 臓器移植の取扱い

ア 臓器移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過及び検査成績等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害等級に該当するものが、臓器移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間、少なくとも1年間は従前の等級とする。

なお、障害等級が3級の場合は、2年間の経過観察を行う。

(7) 障害の程度は、一般状態が次表の一般状態区分表のオに該当するものは1級に、同表のエ又はウに該当するものは2級に、同表のウ又はイに該当するものは3級におおむね相当するので、認定に当たっては、参考とする。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(8) 本章「第1節 眼の障害」から「第17節 高血圧症による障害」及び本節に示されていない障害及び障害の程度については、その障害によって生じる障害の程度を医学的に判断し、最も近似している認定基準の障害の程度に準じて認定する。

第19節/重複障害

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合の障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

 

2級

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

厚年令

別表第1

3級

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 

 

精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 

 

身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

 

別表第2

障害手当金

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 

 

精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものを3級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すものを障害手当金に該当するものと認定する。

2 認定要領

障害が重複する場合の障害の程度の認定は、「第2章 併合等認定基準」により判定する。

第2章 併合等認定基準

第1 一般的事項

第1節/基本的事項

2つ以上の障害がある場合の障害の程度の認定は、次による。

1 併合(加重)認定

併合(加重)認定は、次に掲げる場合に行う。

(1) 障害認定日において、認定の対象となる障害が2つ以上ある場合(併合認定)

(2) 「はじめて2級」による障害基礎年金又は障害厚生年金を支給すべき事由が生じた場合(併合認定)

(3) 障害基礎年金受給権者及び障害厚生年金受給権者(障害等級が1級若しくは2級の場合に限る。)に対し、さらに障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級が1級若しくは2級の場合に限る。)を支給すべき事由が生じた場合(加重認定)

(4) 併合認定の制限

同一部位に複数の障害が併存する場合、併合認定の結果が国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失する場合には、明示されている等級を超えることはできない。

2 総合認定

内科的疾患の併存している場合及び前章の認定要領において特に定めている場合は、総合的に認定する。

3 差引認定

(1) 障害認定の対象とならない障害(以下「前発障害」という。)と同一部位に新たな障害(以下「後発障害」という。)が加わった場合は、現在の障害の程度(複数の障害が混在している状態)から前発障害の障害の程度を差し引いて、後発障害の障害の程度を認定する。

(2) 同一部位とは、障害のある箇所が同一であるもの(上肢又は下肢については、それぞれ1側の上肢又は下肢)のほか、その箇所が同一でなくても眼又は耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位とする。

(3) 「はじめて2級による年金」に該当する場合には、適用しない。

第2節/併合(加重)認定

1 2つの障害が併存する場合

個々の障害について、併合判定参考表(別表1)における該当番号を求めた後、当該番号に基づき併合〔加重〕認定表(別表2)による併合番号を求め、障害の程度を認定する。

[認定例]

右手のおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃し、視力の良い方の眼の視力が0.1になった場合

併合判定参考表によれば次のとおりである。

部位

障害の状態

併合判定参考表

右手の障害

右手のおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの

7号―5

両眼の障害

視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの

6号―1

併合(加重)認定表により、上位の障害6号と下位の障害7号の併合番号4号を求め、2級と認定する。

2 3つ以上の障害が併存する場合

併合判定参考表の「障害の状態」に該当する障害を対象とし、次により認定する。

(1) 併合判定参考表から各障害についての番号を求める。

(2) (1)により求めた番号の最下位及びその直近位について、併合(加重)認定表により、併合番号を求め、以下順次、その求めた併合番号と残りのうち最下位のものとの組合せにより、最終の併合番号を求め認定する。

[認定例]

左下肢を大腿部から切断し、視力の良い方の眼の視力が0.1になり、右上肢のひとさし指、なか指及び小指を近位指節間関節より切断し、さらに、左上肢のおや指を指節間関節より切断した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

部位

障害の状態

併合判定参考表

左下肢の障害

一下肢を足関節以上で欠くもの

4号―6

両眼の障害

視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの

6号―1

右手の障害

ひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの

7号―4

左手の障害

一上肢のおや指を指節間関節以上で欠くもの

9号―8

併合(加重)認定表により、3位の障害7号と4位の障害9号の併合番号7号を求め、次に同表により、これと2位の障害6号との併合番号4号を求め、さらに同表により、これと1位の障害4号との併合番号1号を求め1級と認定する。

3 併合認定の特例

(1) 併合(加重)認定の対象となる障害の程度が、国年令別表、厚年令別表第1、厚年令別表第2に明示されている場合又は併合判定参考表に明示されている場合は、併合(加重)認定の結果にかかわらず、同令別表等により認定する。

[認定例1]

左下肢の5趾を失った後、さらに右下肢の5趾を失った場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

部位

障害の状態

併合判定参考表

左足ゆびの障害

一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの

8号―11

右足ゆびの障害

一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの

8号―11

併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、国年令別表の2級11号に「両下肢の全ての指を欠くもの」と明示されているので、併合認定の結果にかかわらず、2級と認定する。

[認定例2]

右上肢のおや指及びひとさし指と、左上肢の小指以外の4指の用を廃したものに、さらに右上肢のおや指及びひとさし指以外め3指と、左上肢の小指の用を廃した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

部位

障害の状態

併合判定参考表

右手の障害

一上肢のおや指及びひとさし指の用を廃したもの

8号―9

左手の障害

おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの

7号―5

右手の障害

おや指及びひとさし指以外の一上肢の3指の用を廃したもの

10号―13

左手の障害

一上肢の小指の用を廃したもの

すでにある障害について、併合(加重)認定表により併合し、併合番号7号となり、障害等級3級となっているものに、さらに、併合判定参考表の10号に該当する障害と併合判定参考表に明示されていない程度の障害が加わったものであるが併合判定参考表の2級3号―3の「両上肢の全ての指の用を廃したもの」に該当するので、併合認定の結果にかかわらず2級と認定する。

(2) 併合(加重)認定の結果が、国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失する場合

同一部位に障害が併存する場合に生じることがあるが、国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失うことのないよう認定する。

[認定例1]

左手関節が用を廃し、左肘関節に著しい障害が併存する場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

部位

障害の状態

併合判定参考表

左手関節の障害

一上肢の1大関節のうち、1関節の用を廃したもの

8号―3

左肘関節の障害

一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

10号―5

併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、厚年令別表第1の3級5号に「一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、上肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合認定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。

[認定例2]

左足関節が強直し、左下肢が4センチメートル短縮している場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

部位

障害の状態

併合判定参考表

左足関節の障害

一下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの

8号―4

左下肢の短縮障害

一下肢を3センチメートル以上短縮したもの

10号―7

併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級とななるが、厚年令別表第1の3級6号に「一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、下肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合判定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。

第3節/総合認定

認定の対象となる内科的疾患が併存している場合については、併合(加重)認定の取扱いは行わず、総合的に判断して認定する。

第4節/差引認定

1 現在の障害の状態の活動能力減退率から前発障害の前発障害差引活動能力減退率を差し引いた残りの活動能力減退率(以下「差引残存率」という。)に応じて、差引結果認定表により認定する。

2 後発障害の障害の状態が、併合判定参考表に明示されている場合、その活動能力減退率が差引残存率より大であるときは、その明示されている後発障害の障害の状態の活動能力減退率により認定する。

3 「はじめて2級による年金」に該当する場合は、適用しない。

[認定例1]

厚生年金保険に加入する前に、右手のおや指の指節間関節及び小指の近位指節間関節(PIP)より切断していた者が、厚生年金保険に加入後、事故により右手のひとさし指、なか指及びくすり指を近位指節間関節(PIP)より切断した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

 

障害の状態

併合判定参考表

活動能力減退率

前発障害差引活動能力減退率

現在の障害

一上肢の5指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの

6号―8

67%

前発障害

一上肢のおや指を指節間関節で欠き、かつ、ひとさし指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの

8号―8

18%

後発障害

ひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの

7号―4

56%

1により差引認定すると差引残存率は、67%-18%=49%となり、差引結果認定表により認定すれば、障害手当金該当となるが、後発障害のみの活動能力減退率は56%であり、差引残存率より大であるため後発障害の活動能力減退率により厚年令別表第1の3級と認定する。

[認定例2]

先天性の脳性麻痺により、両下肢に機能障害がある者が、厚生年金保険に加入後、事故が原因の脊髄損傷により両下肢の機能を完全に廃した場合

併合判定参考表によれば、次のとおりである。

 

障害の状態

併合判定参考表

活動能力減退率

前発障害差引活動能力減退率

現在の障害

両下肢の用を全く廃したもの

1号―6

134%

前発障害

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

4号―7

63%

後発障害

両下肢の用を全く廃したもの

1号―6

134%

1により差引認定すると、差引残存率は134%-63%=71%となり、差引結果認定表により認定すれば、後発障害は2級となるが、後発障害の障害の状態は、前発障害の影響を受けることなく生じたものであると判断でき、その状態が併合判定参考表の1号―6に明示されていることから、その活動能力減退率(134%)は差引残存率より大であるため、後発障害の活動能力減退率により国年令別表の1級と認定する。

別表1 併合判定参考表

障害の程度

番号

区分

障害の状態

1級

1号

1

両眼が失明したもの

 

 

2

両耳の平均純音聴力レベル値が100デシベル以上のもの

 

 

3

両上肢を肘関節以上で欠くもの

 

 

4

両上肢の用を全く廃したもの

 

 

5

両下肢を膝関節以上で欠くもの

 

 

6

両下肢の用を全く廃したもの

 

 

7

体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの

 

 

8

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

 

9

精神の障害で日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

 

10

視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの、又は視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの



11

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの、又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの

 

 

12

両上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの

 

 

13

両上肢の全ての指の用を全く廃したもの

 

 

14

両下肢を足関節以上で欠くもの

2級

2号

1

視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの、又は視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの



2

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの、又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

 

 

3

平衡機能に著しい障害を有するもの

 

 

4

そしゃくの機能を欠くもの

 

 

5

音声又は言語の機能に著しい障害を有するもの

 

 

6

両上肢の全ての指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの

 

 

7

体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの

 

3号

1

両耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル以上のもの

 

 

2

両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの

 

 

3

両上肢の全ての指の用を廃したもの

 

 

4

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの

 

 

5

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの

 

 

6

両下肢をリスフラン関節以上で欠くもの

 

4号

1

一上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの

 

 

2

一上肢の用を全く廃したもの

 

 

3

一上肢の全ての指の用を全く廃したもの

 

 

4

両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

5

一下肢の用を全く廃したもの

 

 

6

一下肢を足関節以上で欠くもの

 

 

7

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

 

 

8

精神の障害で日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

5号

1

一眼の視力が0.02以下、かつ、他眼の視力が0.1以下のもの

 

 

2

両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のもの

 

 

3

両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上80デシベル未満で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの

 

6号

1

視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの



2

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のもの、又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下のもの

 

 

3

そしやく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの

 

 

4

脊柱の機能に著しい障害を残すもの

 

 

5

一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの

 

 

6

一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの

 

 

7

両上肢のおや指を基部から欠き、有効長が0のもの

 

 

8

一上肢の5指又はおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの

 

 

9

一上肢の全ての指の用を廃したもの

 

 

10

一上肢のおや指及びひとさし指を基部から欠き、有効長が0のもの

 

7号

1

両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの

 

 

2

両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの

 

 

3

長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

 

 

4

一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの、又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの

 

 

5

おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの

 

 

6

一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの

 

 

7

両下肢の10趾の用を廃したもの

 

 

8

身体の機能に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 

9

精神又は神経系統に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

3級(治らないもの)

障害手当金(治ったもの)

8号

1

一眼の視力が0.02以下のもの

 

2

脊柱の機能に障害を残すもの

 

3

一上肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの

 

4

一下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの

 

5

一下肢が5センチメートル以上短縮したもの

 

6

一上肢に偽関節を残すもの

 

7

一下肢に偽関節を残すもの

 

8

一上肢のおや指を指節間関節で欠き、かつ、ひとさし指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

9

一上肢のおや指及びひとさし指の用を廃したもの

 

 

10

おや指又はひとさし指を併せ一上肢の3指以上の用を廃したもの

 

 

 

11

一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

 

12

精神又は神経系統に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 

9号

1

視力の良い方の眼の視力が0.6以下のもの

 

 

 

2

一眼の視力が0.06以下のもの

 

 

 

3

両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

 

 

 

4

両眼による視野が2分の1以上欠損したもの、ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの、又は自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下のもの若しくは両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

 

 

 

5

一耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル以上のもの

 

 

 

6

そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

 

 

 

7

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

 

 

 

8

一上肢のおや指を指節間関節以上で欠くもの

 

 

 

9

一上肢のおや指の用を全く廃したもの

 

 

 

10

ひとさし指を併せ一上肢の2指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

 

11

おや指及びひとさし指以外の一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

 

12

一上肢のおや指を併せ2指の用を廃したもの

 

 

 

13

一下肢の第1趾を併せ2以上の趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

 

14

一下肢の5趾の用を廃したもの

 

 

10号

1

一眼の視力が0.1以下のもの

 

 

 

2

両眼の調整機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの

 

 

 

3

一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のもの

 

 

 

4

そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

 

 

 

5

一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

 

 

 

6

一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

 

 

 

7

一下肢を3センチメートル以上短縮したもの

 

 

 

8

長管状骨に著しい転位変形を残すもの

 

 

 

9

一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

 

10

おや指及びひとさし指以外の一上肢の2指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

 

11

一上肢のおや指の用を廃したもの

 

 

 

12

ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの

 

 

 

13

おや指及びひとさし指以外の一上肢の3指の用を廃したもの

 

 

 

14

一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

 

15

身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

11号

1

両眼の調節機能又は運動機能に著しい障害を残すもの

 

 

2

両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

 

 

3

一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

 

 

4

一耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの

 

 

5

一上肢のなか指又はくすり指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

6

一上肢のひとさし指の用を廃したもの

 

 

7

おや指及びひとさし指以外の一上肢の2指の用を廃したもの

 

 

8

第1趾を併せ一下肢の2趾以上の用を廃したもの

 

12号

1

一眼の調節機能に著しい障害を残すもの

 

 

2

一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

 

 

3

一上肢の3大関節のうち、1関節に機能障害を残すもの

 

 

4

一下肢の3大関節のうち、1関節に機能障害を残すもの

 

 

5

長管状骨に奇形を残すもの

 

 

6

一上肢のなか指又はくすり指の用を廃したもの

 

 

7

一下肢の第1趾又は他の4趾の用を廃したもの

 

 

8

一下肢の第2趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

9

第2趾を併せ一下肢の2趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

10

一下肢の第3趾以下の3趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

11

局部に頑固な神経症状を残すもの

 

13号

1

一眼の視力が0.6以下のもの

 

 

2

一眼の半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

 

 

3

両眼のまぶたの一部に欠損を残すもの

 

 

4

一上肢の小指を近位指節間関節以上で欠くもの

 

 

5

一上肢のおや指の指骨の一部を欠くもの

 

 

6

一上肢のひとさし指の指骨の一部を欠くもの

 

 

7

一上肢のひとさし指の遠位指節間関節の屈伸が不能になったもの

 

 

8

一下肢を1センチメートル以上短縮したもの

 

 

9

一下肢の第3趾以下の1又は2趾を中足趾節関節以上で欠くもの

 

 

10

一下肢の第2趾の用を廃したもの

 

 

11

第2趾を併せ一下肢の2趾の用を廃したもの

 

 

12

一下肢の第3趾以下の3趾の用を廃したもの

別表2 併合(加重)認定表

 

2級

3級

障害手当金

 

 

2号

3号

4号

5号

6号

7号

8号

9号

10号

11号

12号

13号

2級

2号

1

1

1

1

2

2

2

2

2

2

2

2

 

3号

1

1

1

1

2

2

2

2

2

2

2

2

 

4号

1

1

1

1

2

2

4

4

4

4

4

4

3級

5号

1

1

1

3

4

4

5

5

5

5

5

5

 

6号

2

2

2

4

4

4

6

6

6

6

6

6

 

7号

2

2

2

4

4

6

7

7

7

7

7

7

障害手当金

8号

2

2

4

5

6

7

7

7

7

8

8

8

9号

2

2

4

5

6

7

7

7

8

9

9

9

10号

2

2

4

5

6

7

7

8

9

10

10

10

 

11号

2

2

4

5

6

7

8

9

10

10

10

10

 

12号

2

2

4

5

6

7

8

9

10

10

11

12

 

13号

2

2

4

5

6

7

8

9

10

10

12

12

注1 表頭及び表側の2号から13号までの数字は、併合判定参考表(別表1)の各番号を示す。

注2 表中の数字(1号から12号まで)は、併合番号を示し、障害の程度は、次の表のとおりである。

注3 次に掲げる障害をそれぞれ併合した場合及び次の障害と併合判定参考表の5号ないし7号の障害と併合した場合は、併合認定表の結果にかかわらず、次表の併合番号4号に該当するものとみなす。

① 両上肢のおや指の用を全く廃したもの

② 一上肢のおや指及び中指を基部から欠き、有効長が0のもの

③ 一上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの

併合番号

障害の程度

1号

国年令別表1級

2号

国年令別表2級

3号

 

4号

 

5号

厚年令別表第13級

6号

 

7号

 

8号

厚年令別表第2

障害手当金

9号

10号

 

11号

厚年令別表不該当

12号

 

別表3 現在の活動能力減退率及び前発障害の活動能力減退率

併合判定参考表(別表1)

現在の活動能力減退率(%)

前発障害の活動能力減退率(%)

1号

区分1~9

134

95

 

区分10~14

119

 

2号

105

84

3号

92

74

4号

79

63

5号

73

44

6号

67

40

7号

56

34

8号

45

18

9号

35

14

10号

27

11

11号

20

8

12号

14

6

13号

9

4

別表4 差引結果認定表

差引残存率

後発障害の程度

100%

国年令別表 1級9号・11号

99%~70%

国年令別表 2級15号・17号

69%~42%(治ったもの)

厚年令別表第1 3級12号

69%~24%(治らないもの)

厚年令別表第1 3級14号

41%~24%(治ったもの)

厚年令別表第2 21号

注1 差引結果認定表による後発障害の程度が、次の表の第1欄及び第2欄の区分に応じた、第3欄に掲げる後発障害の程度と異なる場合は、後発障害の程度は同表の第3欄に掲げる等級とする。

第1欄

(現在の障害の状態

併合判定参考表(別表1))

第2欄

(前発障害の状態

併合判定参考表(別表1))

第3欄

後発障害の程度

1号

6号~13号

国年令別表 1級9号・11号

2号~4号

7号~13号

国年令別表 2級15号・17号

5号~7号

8号~13号

厚年令別表第1 3級12号

注2 同一部位に複数の障害が併存する場合の併合(加重)認定は、併合(加重)認定表を準用して認定する。

(参考資料)

(別紙)肢体の障害関係の測定方法

1 まえがき

障害認定に当たって、その正確を期するためには、正確な身体状況の把握が基礎となるものである。しかしながら、認定要素が複雑であることや、検査者、被検者の心的変動があることなどで、それは困難なことといえる。このため、検査者の主観及び被検者の心的状態の影響を受けることが比較的少ない肢体の障害関係の諸測定等(関節可動域表示並びに測定、筋力の測定、四肢囲の測定及び四肢長の測定)の方法を以下に示し、診断書の作成及び判定の便宜を図るものである。

2 関節可動域表示並びに測定

(1) この項は、関節可動域の表示並びに測定について一定の方法を示すことにより、障害基礎年金・障害厚生年金及び障害手当金の肢体の障害関係の障害認定業務を的確かつ簡素化するためのものである。

(2) 障害認定における関節可動域表示並びに測定法は、日本整形外科学会、日本足の外科学会及び日本リハビリテーション医学会において示された別添「関節可動域表示ならびに測定法」によることとする。

3 筋力の測定

(1) 測定は、徒手による筋力検査を行うことによって行う。

(2) 障害認定において必要とする筋力の段階は、「正常」「やや減」「半減」「著減」「消失」の5段階として、次の方法により区別する。

正常……検者の手で加える十分な抵抗を排して自動可能な場合

やや減……検者の手をおいた程度の抵抗を排して自動可能な場合

半減……検者の加える抵抗には抗し得ないが、自分の体部分の重さに抗して自動可能な場合

著減……自分の体部分の重さに抗し得ないが、それを排するような体位では自動可能な場合

消失……いかなる体位でも関節の自動が不能な場合

4 四肢囲の測定

障害認定において必要とする四肢囲は、上腕、前腕、大画像22 (1KB)別ウィンドウが開きます

及び下画像23 (1KB)別ウィンドウが開きます
周径であり、上肢については図1、下肢については図2である。

図1 上肢計測部位

図2 下肢計測部位

画像24 (30KB)別ウィンドウが開きます

画像25 (38KB)別ウィンドウが開きます

5 四肢長の測定

障害認定において使用する上肢長は、肩峰先端により橈骨茎状突起尖端までの長さ(図3)を測定し、下肢長は、上前腸骨棘尖端より頸骨内果尖端までの長さ(図4)を測定する。

図3 上肢長

図4 下肢長

画像26 (36KB)別ウィンドウが開きます

画像27 (35KB)別ウィンドウが開きます

2021年10月

公益社団法人 日本整形外科学会理事長

一般社団法人 日本足の外科学会理事長

公益社団法人 日本リハビリテーション医学会理事長

関節可動域表示ならびに測定法改訂について

(2022年4月改訂)

これまで使用されてきた関節可動域表示ならびに測定法は、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会の協議により1995年2月に改訂されたものである。しかし、その後の運用の中で足関節・足部・趾に関する用語の問題が指摘され、日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会、日本足の外科学会が検討してきた。

特に「内がえしinversion/外がえしeversion」と「回外supination/回内pronation」について国際的な定義と異なっていたため、文献の翻訳や引用をする際にしばしば用語の混乱を生じる原因となっていた。具体的には、1995年改訂の関節可動域表示ならびに測定法では、「内がえしinversion/外がえしeversion」を3平面での複合運動、「回外supination/回内pronation」を前額面での運動と定義していたが、英語圏及び英語文献では、「内がえしinversion/外がえしeversion」を前額面での運動、「回外supination/回内pronation」を横断面と矢状面および前額面の3平面での複合運動とするものがほとんどである。そこで、この点を含むいくつかの問題点に対し、日本整形外科学会からの要請を受けて、日本足の外科学会用語委員会が「足関節・足部・趾の運動に関する新たな用語案」を作成し、日本足の外科学会が承認した(Doya H, et al. J Orthop Sci 2010,15(4):531―9.)。これが日本整形外科学会に答申され、その承認を経て日本リハビリテーション医学会に検討が依頼された。

その後、日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会、日本足の外科学会の3学会によるワーキンググループで内容をさらに検討し、その最終案に対して、日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会の各学会でパブリックコメントを募集した。寄せられた会員の意見をもとに修正を行い、2021年7月にワーキンググループで最終合意に達した。

今回の改訂での主な変更点は以下の通りである。

1.足関節・足部における「外がえしと内がえし」および「回外と回内」の定義

外がえしと内がえし:足関節・足部に関する前額面の運動で、足底が外方を向く動きが外がえし、足底が内方を向く動きが内がえしである。

回外と回内:底屈,内転,内がえしからなる複合運動が回外、背屈,外転,外がえしからなる複合運動が回内である。母趾・趾に関しては、前額面における運動で、母趾・趾の軸を中心にして趾腹が内方を向く動きが回外、趾腹が外方を向く動きが回内である。

2.足関節・足部に関する矢状面の運動の用語

背屈と底屈:足背への動きを背屈、足底への動きを底屈とし、屈曲と伸展は使用しないこととする。ただし、母趾・趾に関しては、足底への動きが屈曲、足背への動きが伸展である。

3.足関節・足部の内転・外転運動の基本軸と移動軸

基本軸:第2中足骨長軸とする。

2021年9月に日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会および日本足の外科学会それぞれの理事会の承認を経て、今回の関節可動域表示ならびに測定法の改定が決定された。今回の改訂は2022年4月1日より発効となる。

このたび改訂された関節可動域表示ならびに測定法が、臨床などにおける評価、医学教育、医学論文や各種診断書をはじめとした公的な文書の記載などにおいて、広く活用されることが望まれる。

関節可動域ならびに測定法

Ⅰ.関節可動域表示ならびに測定法の原則

1.関節可動域表示ならびに測定法の目的

日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が制定する関節可動域表示ならびに測定法は、整形外科医、リハビリテーション科医ばかりでなく、医療、福祉、行政その他の関連職種の人々をも含めて、関節可動域を共通の基盤で理解するためのものである。したがって、実用的で分かりやすいことが重要であり、高い精度が要求される計測、特殊な臨床評価、詳細な研究のためにはそれぞれの目的に応じた測定方法を検討する必要がある。

2.基本肢位

Neutral Zero Positionを採用しているので、Neutral Zero Starting Positionに修正を加え,両側の足部長軸を平行にした直立位での肢位が基本肢位であり、概ね解剖学的肢位と一致する。ただし、肩関節水平屈曲・伸展については肩関節外転90°の肢位、肩関節外旋・内旋については肩関節外転0°で肘関節90°屈曲位、前腕の回外・回内については手掌面が矢状面にある肢位、股関節外旋・内旋については股関節屈曲90°で膝関節屈曲90°の肢位をそれぞれ基本肢位とする。

3.関節の運動

1) 関節の運動は直交する3平面、すなわち前額面、矢状面、横断面を基本面とする運動である。ただし、肩関節の外旋・内旋、前腕の回外・回内、股関節外旋・内旋、頚部と胸腰部の回旋は、基本肢位の軸を中心とした回旋運動である。また足関節・足部の回外と回内、母指の対立は複合した運動である。

2) 関節可動域測定とその表示で使用する関節運動とその名称を以下に示す。なお、下記の基本的名称以外に良く用いられている用語があれば( )内に併記する。

(1) 屈曲と伸展

多くは矢状面の運動で、基本肢位にある隣接する2つの部位が近づく動きが屈曲、遠ざかる動きが伸展である。ただし、肩関節、頚部・体幹に関しては、前方への動きが屈曲、後方への動きが伸展である。また、手関節、指、母趾・趾に関しては、手掌あるいは足底への動きが屈曲、手背あるいは足背への動きが伸展である。

(2) 背屈と底屈

足関節・足部に関する矢状面の運動で、足背への動きが背屈、足底への動きが底屈である。屈曲と伸展は使用しないこととする。

(3) 外転と内転

多くは前額面の運動であるが、足関節・足部および趾では横断面の運動である。体幹や指・足部・母趾・趾の軸から遠ざかる動きが外転、近づく動きが内転である。

(4) 外旋と内旋

肩関節および股関節に関しては、上腕軸または大腿軸を中心として外方へ回旋する動きが外旋、内方に回旋する動きが内旋である。

(5) 外がえしと内がえし

足関節・足部に関する前額面の運動で、足底が外方を向く動きが外がえし、足底が内方を向く動きが内がえしである。

(6) 回外と回内

前腕に関しては、前腕軸を中心にして外方に回旋する動き(手掌が上を向く動き)が回外、内方に回旋する動き(手掌が下を向く動き)が回内である。足関節・足部に関しては、底屈,内転,内がえしからなる複合運動が回外、背屈,外転,外がえしからなる複合運動が回内である。母趾・趾に関しては、前額面における運動で、母趾・趾の長軸を中心にして趾腹が内方を向く動きが回外、趾腹が外方を向く動きが回内である。

(7) 水平屈曲と水平伸展

水平面の運動で、肩関節を90°外転して前方への動きが水平屈曲、後方への動きが水平伸展である。

(8) 挙上と引き下げ(下制)

肩甲帯の前額面での運動で、上方への動きが挙上、下方への動きが引き下げ(下制)である。

(9) 右側屈・左側屈

頚部、体幹の前額面の運動で、右方向への動きが右側屈、左方向への動きが左側屈である。

(10) 右回旋と左回旋

頚部と胸腰部に関しては右方に回旋する動きが右回旋、左方に回旋する動きが左回旋である。

(11) 橈屈と尺屈

手関節の手掌面での運動で、橈側への動きが橈屈、尺側への動きが尺屈である。

(12) 母指の橈側外転と尺側内転

母指の手掌面での運動で、母指の基本軸から遠ざかる動き(橈側への動き)が橈側外転、母指の基本軸に近づく動き(尺側への動き)が尺側内転である。

(13) 掌側外転と掌側内転

母指の手掌面に垂直な平面の運動で、母指の基本面から遠ざかる動き(手掌方向への動き)が掌側外転、基本軸に近づく動き(背側方向への動き)が掌側内転である。

(14) 対立

母指の対立は、外転、屈曲、回旋の3要素が複合した運動であり、母指で小指の先端または基部を触れる動きである。

(15) 中指の橈側外転と尺側外転

中指の手掌面の運動で、中指の基本軸から橈側へ遠ざかる動きが橈側外転、尺側へ遠ざかる動きが尺側外転である。

* 外反、内反

変形を意味する用語であり、関節運動の名称としては用いない。

4.関節可動域の測定方法

1) 関節可動域は、他動運動でも自動運動でも測定できるが、原則として他動運動による測定値を表記する。自動運動による測定値を用いる場合は、その旨を明記する[5の2)の(1)参照]。

2) 角度計は十分な長さの柄がついているものを使用し、通常は5°刻みで測定する。

3) 基本軸、移動軸は、四肢や体幹において外見上分かりやすい部位を選んで設定されており、運動学上のものとは必ずしも一致しない。また、指および趾では角度計のあてやすさを考慮して、原則として背側に角度計をあてる。

4) 基本軸と移動軸の交点を角度計の中心に合わせる。また、関節の運動に応じて、角度計の中心を移動させてもよい。必要に応じて移動軸を平行移動させてもよい。

5) 多関節筋が関与する場合、原則としてその影響を除いた肢位で測定する。たとえば、股関節屈曲の測定では、膝関節を屈曲しハムストリングをゆるめた肢位で行う。

6) 肢位は「測定肢位および注意点」の記載に従うが、記載のないものは肢位を限定しない。変形、拘縮などで所定の肢位がとれない場合は、測定肢位が分かるように明記すれば異なる肢位を用いてもよい[5の2)の(2)参照]。

7) 筋や腱の短縮を評価する目的で多関節筋を緊張させた肢位を用いても良い[5の2)の(3)参照]。

5.測定値の表示

1) 関節可動域の測定値は、基本肢位を0°として表示する。例えば、股関節の可動域が屈曲位20°から70°であるならば、この表現は以下の2通りとなる。

(1) 股関節の関節可動域は屈曲20°から70°(または屈曲20°~70°)

(2) 股関節の関節可動域は屈曲は70°、伸展は-20°

2) 関節可動域の測定に際し、症例によって異なる測定法を用いる場合や、その他関節可動域に影響を与える特記すべき事項がある場合は、測定値とともにその旨を併記する。

(1) 自動運動を用いて測定する場合は、その測定値を( )で囲んで表示するか、「自動」または「active」などと明記する。

(2) 異なる肢位を用いて測定する場合は、「背臥位」「座位」などと具体的に肢位を明記する。

(3) 多関節筋を緊張させた肢位を用いて測定する場合は、その測定値を< >で囲んで表示するが、「膝伸展位」などと具体的に明記する。

(4) 疼痛などが測定値に影響を与える場合は、「痛み」「pain」などと明記する。

6.参考可動域

関節可動域は年齢、性、肢位、個体による変動が大きいので、正常値は定めず参考可動域として記載した。関節可動域の異常を判定する場合は、健側上下肢関節可動域、参考可動域、(付)関節可動域の参考値一覧表、年齢、性、測定肢位、測定方法などを十分考慮して判定する必要がある。

[Jpn J Rehabil Med 2021;58:1188―1200],[日本足の外科学会雑誌2021,Vol.42:S372―S385],「日整会誌2022;96:75―86」

Ⅱ.上肢測定

部位名

運動方向

参考可動域角度

基本軸

移動軸

測定肢位および注意点

参考図

肩甲帯

shoulder girdle

屈曲

flexion

0―20

両側の肩峰を結ぶ線

頭頂と肩峰を結ぶ線


画像28 (16KB)別ウィンドウが開きます

伸展

extension

0―20

挙上

elevation

0―20

両側の肩峰を結ぶ線

肩峰と胸骨上縁を結ぶ線

背面から測定する.

画像29 (16KB)別ウィンドウが開きます

引き下げ(下制)

depression

0―10

shoulder

(肩甲帯の動きを含む)

屈曲(前方挙上)

forward flexion

0―180

肩峰を通る床への垂直線(立位または座位)

上腕骨

前腕は中間位とする.

体幹が動かないように固定する.

脊柱が前後屈しないように注意する.

画像30 (11KB)別ウィンドウが開きます

伸展(後方挙上)

backward extension

0―50

外転(側方挙上)

abduction

0―180

肩峰を通る床への垂直線(立位または座位)

上腕骨

体幹の側屈が起こらないように90°以上になったら前腕を回外することを原則とする.

画像31 (7KB)別ウィンドウが開きます
[Ⅵ.その他の検査法]参照

画像32 (14KB)別ウィンドウが開きます

内転

adduction

0

外旋

external rotation

0―60

肘を通る前額面への垂直線

尺骨

上腕を体幹に接して,肘関節を前方に90°に屈曲した肢位で行う.

前腕は中間位とする.

画像33 (7KB)別ウィンドウが開きます
[Ⅵ.その他の検査法]参照

画像34 (15KB)別ウィンドウが開きます

内旋

internal rotation

0―80

水平屈曲

horizontal flexion

(horizontal adduction)

0―135

肩峰を通る矢状面への垂直線

上腕骨

肩関節を90°外転位とする.

画像35 (15KB)別ウィンドウが開きます

水平伸展

horizontal extension

(horizontal abduction)

0―30

elbow

屈曲

flexion

0―145

上腕骨

橈骨

前腕は回外位とする.

画像36 (12KB)別ウィンドウが開きます

伸展

extension

0―5

前腕

forearm

回内

pronation

0―90

上腕骨

手指を伸展した手掌面

肩の回旋が入らないように肘を90°に屈曲する.

画像37 (14KB)別ウィンドウが開きます

回外

supination

0―90

wrist

屈曲(掌屈)

flexion

(palmar flexion)

0―90

橈骨

第2中手骨

前腕は中間位とする.

画像38 (13KB)別ウィンドウが開きます

伸展(背屈)

extension

(dorsiflexion)

0―70

橈屈

radial deviation

0―25

前腕の中央線

第3中手骨

前腕を回内位で行う.

画像39 (14KB)別ウィンドウが開きます

尺屈

ulnar deviation

0―55

Ⅲ.手指測定

部位名

運動方向

参考可動域角度

基本軸

移動軸

測定肢位および注意点

参考図

母指

thumb

橈側外転

radial abduction

0―60

示指(橈骨の延長上)

母指

運動は手掌面とする.

以下の手指の運動は,原則として手指の背側に角度計をあてる.

画像40 (14KB)別ウィンドウが開きます

尺側内転

ulnar adduction

0

掌側外転

palmar abduction

0―90

運動は手掌面に直角な面とする.

画像41 (15KB)別ウィンドウが開きます

掌側内転

palmar adduction

0

屈曲(MCP)

flexion

0―60

第1中手骨

第1基節骨


画像42 (15KB)別ウィンドウが開きます

伸展(MCP)

extension

0―10

屈曲(IP)

flexion

0―80

第1基節骨

第1末節骨


画像43 (15KB)別ウィンドウが開きます

伸展(IP)

extension

0―10

finger

屈曲(MCP)

flexion

0―90

第2―5中手骨

第2―5基節骨

画像44 (7KB)別ウィンドウが開きます
[Ⅵ.その他の検査法]参照

画像45 (16KB)別ウィンドウが開きます

伸展(MCP)

extension

0―45

屈曲(PIP)

flexion

0―100

第2―5基節骨

第2―5中節骨

画像46 (16KB)別ウィンドウが開きます

伸展(PIP)

extension

0

屈曲(DIP)

flexion

0―80

第2―5中節骨

第2―5末節骨

DIPは10°の過伸展をとりうる.

画像47 (16KB)別ウィンドウが開きます

伸展(DIP)

extension

0

外転

abduction


第3中手骨延長線

第2,4,5指軸

中指の運動は橈側外転,尺側外転とする.

画像48 (7KB)別ウィンドウが開きます
[Ⅵ.その他の検査法]参照

画像49 (14KB)別ウィンドウが開きます

内転

adduction


Ⅳ.下肢測定

部位名

運動方向

参考可動域角度

基本軸

移動軸

測定肢位および注意点

参考図

hip

屈曲

flexion

0―125

体幹と平行な線

大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)

骨盤と脊柱を十分に固定する.

屈曲は背臥位.膝屈曲位で行う.

伸展は腹臥位,膝伸展位で行う.

画像50 (17KB)別ウィンドウが開きます

伸展

extension

0―15

外転

abduction

0―45

両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線

大腿中央線(上前腸骨棘より膝蓋骨中心を結ぶ線)

背臥位で骨盤を固定する.

下肢は外旋しないようにする.

内転の場合は,反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させる.

画像51 (16KB)別ウィンドウが開きます

内転

adduction

0―20

外旋

external rotation

0―45

膝蓋骨より下ろした垂直線

下腿中央線(膝蓋骨中心より足関節内外果中央を結ぶ線)

背臥位で,股関節と膝関節を90°屈曲位にして行う.

骨盤の代償を少なくする.

画像52 (15KB)別ウィンドウが開きます

内旋

internal rotation

0―45

knee

屈曲

flexion

0―130

大腿骨

腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)

屈曲は股関節を屈曲位で行う.

画像53 (17KB)別ウィンドウが開きます

伸展

extension

0

足関節・足部

foot and ankle

外転

abduction

0―10

第2中足骨長軸

第2中足骨長軸

膝関節を屈曲位,足関節を0度で行う.

画像54 (14KB)別ウィンドウが開きます

内転

adduction

0―20

背屈

dorsiflexion

0―20

矢状面における腓骨長軸への垂直線

足底面

膝関節を屈曲位で行う.

画像55 (15KB)別ウィンドウが開きます

底屈

plantar flexion

0―45

内がえし

inversion

0―30

前額面における下腿軸への垂直線

足底面

膝関節を屈曲位,足関節を0度で行う.

画像56 (14KB)別ウィンドウが開きます

外がえし

eversion

0―20

第1趾,母趾

great toe, big toe

屈曲(MTP)

flexion

0―35

第1中足骨

第1基節骨

以下の第1趾,母趾,趾の運動は,原則として趾の背側に角度計をあてる.

画像57 (13KB)別ウィンドウが開きます

伸展(MTP)

extension

0―60

屈曲(IP)

flexion

0―60

第1基節骨

第1末節骨


画像58 (12KB)別ウィンドウが開きます

伸展(IP)

extension

0

toe, lesser toe

屈曲(MTP)

flexion

0―35

第2―5中足骨

第2―5基節骨


画像59 (12KB)別ウィンドウが開きます

伸展(MTP)

extension

0―40

屈曲(PIP)

flexion

0―35

第2―5基節骨

第2―5中節骨


画像60 (12KB)別ウィンドウが開きます

伸展(PIP)

extension

0

屈曲(DIP)

flexion

0―50

第2―5中節骨

第2―5末節骨


画像61 (12KB)別ウィンドウが開きます

伸展(DIP)

extension

0

Ⅴ.体幹測定

部位名

運動方向

参考可動域角度

基本軸

移動軸

測定肢位および注意点

参考図

頚部

cervical spine

屈曲(前屈)

flexion

0―60

肩峰を通る床への垂直線

外耳孔と頭頂を結ぶ線

頭部体幹の側面で行う.

原則として腰かけ座位とする.

画像62 (15KB)別ウィンドウが開きます

伸展(後屈)

extension

0―50

回旋

rotation

左回旋

0―60

両側の肩峰を結ぶ線への垂直線

鼻梁と後頭結節を結ぶ線

腰かけ座位で行う.

画像63 (16KB)別ウィンドウが開きます

右回旋

0―60

側屈

lateral bending

左側屈

0―50

第7頚椎棘突起と第1仙椎の棘突起を結ぶ線

頭頂と第7頚椎棘突起を結ぶ線

体幹の背面で行う.

腰かけ座位とする.

画像64 (16KB)別ウィンドウが開きます

右側屈

0―50

胸腰部

thoracic and lumbar spines

屈曲(前屈)

flexion

0―45

仙骨後面

第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線

体幹側面より行う.

立位,腰かけ座位または側臥位で行う.

股関節の運動が入らないように行う.

画像65 (7KB)別ウィンドウが開きます
[Ⅵ.その他の検査法]参照

画像66 (15KB)別ウィンドウが開きます

伸展(後屈)

extension

0―30

回旋

rotation


0―40

両側の後上腸骨棘を結ぶ線

両側の肩峰を結ぶ線

座位で骨盤を固定して行う.

画像67 (17KB)別ウィンドウが開きます


0―40

側屈

lateral bending


0―50

ヤコビー(Jacoby)線の中点にたてた垂直線

第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線

体幹の背面で行う.

腰かけ座位または立位で行う.

画像68 (16KB)別ウィンドウが開きます


0―50

Ⅵ.その他の検査法

部位名

運動方向

参考可動域角度

基本軸

移動軸

測定肢位および注意点

参考図

shoulder

(肩甲骨の動きを含む)

外旋

external rotation

0―90

肘を通る前額面への垂直線

尺骨

前腕は中間位とする.

肩関節は90°外転し,かつ肘関節は90°屈曲した肢位で行う.

画像69 (14KB)別ウィンドウが開きます

内旋

internal rotation

0―70

内転

adduction

0―75

肩峰を通る床への垂直線

上腕骨

20°または45°肩関節屈曲位で行う.

立位で行う.

画像70 (13KB)別ウィンドウが開きます

母指

thumb

対立

opposition


母指先端と小指基部(または先端)との距離(cm)で表示する.

画像71 (12KB)別ウィンドウが開きます

finger

外転

abduction


第3中手骨延長線

2,4,5指軸

中指先端と2,4,5指先端との距離(cm)で表示する.

画像72 (14KB)別ウィンドウが開きます

内転

adduction


屈曲

flexion


指尖と近位手掌皮線(proximal palmar crease)または遠位手掌皮線(distal palmar crease)との距離(cm)で表示する.

画像73 (14KB)別ウィンドウが開きます

胸腰部

thoracic and lumbar spines

屈曲

flexion


最大屈曲は,指先と床との間の距離(cm)で表示する.

画像74 (13KB)別ウィンドウが開きます

Ⅵ.顎関節計測

顎関節

temporo‐mandibular joint

開口位で上顎の正中線で上歯と下歯の先端との間の距離(cm)で表示する.

左右偏位(lateral deviation)は上顎の正中線を軸として下歯列の動きの距離を左右ともcmで表示する.

参考値は上下第1切歯列対向縁線間の距離5.0cm,左右偏位は1.0cmである.

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関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)

(付) 関節可動域参考値一覧表

関節可動域は,人種,性別,年齢等による個人差も大きい.また,検査肢位等により変化があるので,ここに参考値の一覧表を付した.

部位名及び運動方向

注1

注2

注3

注4

注5

屈曲

130

150

170

180

173

伸展

80

40

30

60

72

外転

180

150

170

180

184

内転

45

30


75

0

内旋

90

40

60

80


肩外転90°




70

81

外旋

40

90

80

60


肩外転90°




90

103

屈曲

150

150

135

150

146

伸展

0

0

0

0

4

前腕

回内

50

80

75

80

87

回外

90

80

85

80

93

伸展

90

60

65

70

80

屈曲


70

70

80

86

尺屈

30

30

40

30


橈屈

15

20

20

20


母指

外転(橈側)

50


55

70


屈曲






CM




15


MCP

50

60

50

50


IP

90

80

75

80


伸展






CM




20


MCP

10


5

0


IP

10


20

20


屈曲






MCP


90

90

90


PIP


100

100

100


DIP

90

70

70

90


伸展






MCP

45



45


PIP




0


DIP




0


屈曲

120

100

110

120

132

伸展

20

30

30

30

15

外転

55

40

50

45

46

内転

45

20

30

30

23

内旋




45

38

外旋




45

46

屈曲

145

120

135

135

154

伸展

10



10

0

背屈

15

20

15

20

26

底屈

50

40

50

50

57

母趾

屈曲






MTP


30

35

45


IP


30


90


伸展






MTP


50

70

70


IP


0


0


屈曲






MTP


30


40


PIP


40


35


DIP


50


60


伸展






MTP






PIP






DIP






頚部

屈曲


30


45


伸展


30


45


側屈


40


45


回旋


30


60


胸腰部

屈曲


90


80


伸展


30


20―30


側屈


20


35


回旋


30


45


注:

1.A System of Joint Measurements, William A. Clark, Mayo Clinic, 1920.

2.The Committee on Medical Rating of Physical Impairment, Journal of American Medical Association, 1958.

3.The Committee of the California Medical Association and Industrial Accident Commission of the State of California, 1960.

4.The Committee on Joint Motion, American Academy of Orthopaedic Surgeons, 1965.

5.渡辺英夫・他:健康日本人における四肢関節可動域について.年齢による変化.日整会誌 53:275―291,1979.

なお,5の渡辺らによる日本人の可動域は,10歳以上80歳未満の平均値をとったものである.

[Jpn J Rehabil Med 2021;58:1188―1200],[日本足の外科学会雑誌2021,Vol.42:S372―S385],「日整会誌2022;96:75―86」

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