添付一覧
二 認定要領
(一) 心疾患による障害の程度は、臨床症状(一般状態、動悸、息切れ、倦怠感、呼吸困難、心臓ぜん息症状、うつ血尿症状(尿量減少、夜間多尿)、チアノーゼ、浮腫、肺うつ血症状等)、検査成績(X線写真による心肥大(拡大)、肺野のうつ血状態、心電図、血圧、脈はく等)、治療及び症状の経過等を十分考慮し、総合的に認定するが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 |
障害の状態 |
一級 |
次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (一) 臨床症状 ア 安静時においても、心不全の症状を有し、体動不能のもの イ 著明な浮腫があるもの ウ 著明な呼吸困難があるもの (二) 検査成績 ア 心臓が拡大しているもの(心胸廓比七一%以上) イ 高度の肺野のうつ血があるもの |
二級 |
次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (一) 臨床症状 ア 軽度の労作によつて、動悸、息切れ、倦怠感、狭心痛等があるもの イ 浮腫が存続するもの ウ 呼吸困難が存続するもの エ 尿量減少及び夜間多尿の存続するもの (二) 検査成績 ア 心臓が拡大しているもの(心胸廓比六一%~七〇%) イ 肺野のうつ血が存続するもの |
三級 |
一 次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (一) 臨床症状 ア 通常の労作によつて、動悸、息切れ、倦怠感、狭心痛等があるもの イ 尿量減少及び夜間多尿のもの ウ 浮腫が出没するもの エ 呼吸困難の出没するもの オ チアノーゼがあるもの (二) 検査成績 ア 心臓が拡大しているもの(心胸廓比五六%~六〇%) イ 肺野のうつ血があるもの ウ 心電図に著明な冠不全が認められるもの(ST及びTの低下又は逆転が、肢誘導、左側胸部誘導又は両方にあるもの) 二 心臓ペースメーカーを装着したもの 三 人工弁を装着したもの |
(三) 心胸廓比は、焦点写真間距離二メートルで撮影した胸部X線写真で計測した心陰影の左右端にそれぞれ正切する鉛直線間距離を左右の横隔膜肋骨角を通る鉛直線間距離で除した百分率により算出する。
(四) 心臓ペースメーカー又は人工弁を装着したものについては、原則として次により取り扱う。
ア 心臓ペースメーカー又は人工弁を装着したものは、三級と認定するが、臨床症状及び検査成績によつては、更に上位等級に認定する。
イ 障害の程度を認定する時期は、心臓ペースメーカー又は人工弁を装着した日とする。
第一○節 腎疾患
腎疾患による障害の程度は、次により認定する。
一 認定基準
腎疾患については、次のとおりである。
法別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
法別表第一 |
一級 |
身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護とを必要とする程度の障害を有するもの |
二級 |
身体の機能に、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
|
三級 |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
二 認定要領
(一) 腎疾患による障害の程度は、臨床症状(一般状態、悪心、嘔吐、浮腫、乏尿、夜間多尿、腎痛、不眠、頭痛、高血圧症、貧血、食欲不振等)、検査成績(腎機能検査、尿所見、血液化学検査等)、治療及び症状の経過等を十分考慮し、総合的に認定するが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 全身に浮腫があるもの イ ほとんど臥床しているもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、10ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、8.0mg/dl以上のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、80mg/dl以上のもの |
2級 |
1 次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状軽い日常活動ができるもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、10ml/分以上20ml/分未満のもの イ 血液クレアチニン値が、5.0mg/dl以上8.0mg/dl未満のもの ウ 血清尿素窒素(BUN)測定値が、40mg/dl以上80mg/dl未満のもの 2 人工透析療法施行中のもので続発症のあるもの |
3級 |
1 次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 高血圧又は浮腫が常時あるもの イ 病的な顕微鏡的血尿又は蛋白尿が常時あるもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、20ml/分以上50ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、3.0mg/dl以上5.0mg/dl未満のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、25mg/dl以上40mg/dl未満のもの 2 人工透析療法施行中のもの |
(二) 人工透析療法施行中のものについては、原則として次により取り扱う。
ア 人工透析療法施行中のものは、三級と認定する。
イ 人工透析療法施行中で、代謝異常、尿毒症性心包炎、心タンポナーデ、消化器出血、貧血、末梢神経麻痺等の続発症のあるものは、二級と認定する。
ウ 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して三か月を経過した日とする。
第一一節 肝疾患
肝疾患による障害の程度は、次により認定する。
一 認定基準
肝疾患については、次のとおりである。
法別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
法別表第一 |
一級 |
身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護とを必要とする程度の障害を有するもの |
二級 |
身体の機能に、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
|
三級 |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
二 認定要領
(一) 肝疾患による障害の程度は、臨床症状(一般状態、腹水、浮腫、意識障害、食道静脈瘤、腹壁静脈怒張、食欲不振、悪心、かゆみ、吐血、黄疸、発熱等)、肝機能検査成績、治療及び症状の経過等を十分考慮し、総合的に認定するが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 |
障害の状態 |
一級 |
次の臨床症状があり、肝機能検査に異常を認めるもの (一) 腹水又は浮腫が存続するもの (二) 意識障害発作を繰り返すもの |
二級 |
次の臨床症状があり、肝機能検査に異常を認めるもの (一) 腹水又は浮腫が出没するもの (二) 明らかな食道静脈瘤が証明されるもの (三) 腹壁静脈怒張のあるもの |
三級 |
一 次の臨床症状があり、肝機能検査に異常を認めるもの (一) 食欲不振、悪心、かゆみ、黄疸、発熱等の症状が長期間出没するもの (二) 全身倦怠の症状が、長期間出没するもの 二 バイオプシー検査により明らかな活動性肝炎又は肝硬変の所見があるもの |
(二) 臨床症状のなかには、肝疾患に特有でないものも含まれているので、明らかに肝疾患に起因するものであることを確認し、認定する。
(三) 肝機能検査は、「肝機能検査表」による。検査成績の診査に当たつては、一つの検査成績に偏することなく、系列の異なる数種の検査成績を参考とする。
(四) 肝機能検査成績は変動しやすいものであるから、疾患の経過中最も適切に症状を表していると思われる検査成績に基づいて認定する。
第一二節 造血器・血液疾患
造血器・血液疾患による障害の程度は、次により認定する。
一 認定基準
造血器・血液疾患については、次のとおりである。
法別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
法別表第一 |
一級 |
身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護とを必要とする程度の障害を有するもの |
二級 |
身体の機能に、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
|
三級 |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
二 認定要領
(一) 造血器・血液疾患は、その臨床像から次のように大別する。
ア 難治性貧血群(再生不良性貧血、溶血性貧血等)
イ 出血傾向群(血小板減少性紫斑症、凝固因子欠乏症等)
ウ 造血器腫瘍群(慢性白血病等)
(二) 各群による障害の程度は、臨床症状(一般状態、立ちくらみ、動悸、息切れ、出血傾向、発熱、るい痩、肝脾腫等)、血液検査成績、治療及び症状の経過等(薬物療法による症状の消長のほか、薬物療法に伴う合併症等)を十分考慮し、総合的に認定するが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
ア 難治性貧血群(再生不良性貧血、溶血性貧血等)
肝 機 能 検 査 表
系列 |
項目 |
正常値 |
備考 |
胆汁代謝 |
血清総ビリルビン |
0.2~1.0mg/dl |
Malloy―Evelyn法 |
血清ビリルビン黄疸指数 |
4~6 |
Menlengracht法 |
|
血清蛋白 |
A/G比 |
1.2~1.8 |
吉川・斉藤法 |
アルブミン |
4.0~4.4g/dl |
吉川・斉藤法 |
|
γ―グロブリン |
2.5~3.1g/dl |
|
|
膠質反応 |
硫酸亜鉛試験(ZTT) |
4~12単位 |
Kunkel―柴田法 |
チモール混濁試験(TTT) |
0~5Kunkel単位 |
Maclagn法 |
|
CCF試験 |
(-)~(+) |
Hanger法 |
|
酵素活性 |
GOT |
8~40Karmen単位 |
|
GPT |
5~35Karmen単位 |
|
|
アルカリ性ホスファターゼ(AlP) |
0.8~2.3(1.6)Bessey―Lowry法 2.7~10(5.2)King―Armstrong法 |
|
|
乳酸脱水酵素(LDH) |
50~400 Cabaud―Wrobleuski 25~190ミリ国際単位 |
|
|
ロイシンアミノペプチターゼ(LAP) |
♂142±29 Goldbarg ♀130±27 Rutenburg単位 |
|
|
肝腫の鑑別 |
α―フェトプロテイン |
(+) |
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障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
次の臨床症状があり、血液検査成績のアからエまでのうち3つ以上に該当するもの (1) 臨床症状 ア 治療により貧血改善はやや認められるが、なお高度の貧血を示すもの イ 貧血の補充療法として、成分輸血をひんぱんに必要とするもの (2) 血液検査成績 ア 末梢血液/mm3中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 血色素量が6.0g/dl未満(ザーリー値37.5%未満)のもの (イ) 赤血球数が200万/mm3未満のもの (ウ) 網赤血球が20/00未満のもの イ 末梢血液/mm3の白血球像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 白血球数が1500/mm3未満のもの (イ) 顆粒球数が500/mm3未満のもの ウ 末梢血液/mm3中の血小板数が1万/mm3未満のもの エ 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 有核細胞が1万/mm3未満のもの (イ) 巨核球数が15/mm3未満のもの (ウ) リンパ球が60%以上のもの (エ) 顆粒球(G)と赤血球(E)との比(G/E)が10以上のもの |
2級 |
次の臨床症状があり、血液検査成績のアからエまでのうち3つ以上に該当するもの (1) 臨床症状 ア 治療により貧血改善はやや認められるが、なお中度の貧血を示すもの イ 貧血の補充療法として、成分輸血を時々必要とするもの (2) 血液検査成績 ア 末梢血液/mm3中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 血色素量が6.0g/dl以上8.0g/dl未満(ザーリー値37.5%以上50%未満)のもの (イ) 赤血球数が200万/mm3以上300万/mm3未満のもの (ウ) 網赤血球が20/00以上90/00未満のもの イ 末梢血液/mm3中の白血球で、次のいずれかに該当するもの (ア) 白血球数が1500/mm3以上3000/mm3未満のもの (イ) 顆粒球数が500/mm3以上1000/mm3未満のもの ウ 末梢血液/mm3中の血小板数が1万/mm3以上5万/mm3未満のもの エ 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 有核細胞が1万/mm3以上5万/mm3未満のもの (イ) 巨核球数が15/mm3以上30/mm3未満のもの (ウ) リンパ球が40%以上60%未満のもの (エ) 顆粒球(G)と赤血球(E)との比(G/E)が3以上10未満のもの |
3級 |
次の臨床症状があり、血液検査成績のアからエまでのうち3つ以上に該当するもの (1) 臨床症状 ア 治療により貧血改善は少し認められるが、なお軽度の貧血を示すもの イ 貧血の補充療法として、成分輸血を必要に応じて行うもの (2) 血液検査成績 ア 末梢血液/mm3中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 血色素量が8.0g/dl以上10.0g/dl未満(ザーリー値50%以上62.5%未満)のもの (イ) 赤血球数が300万/mm3以上350万/mm3未満のもの (ウ) 網赤血球が90/00以上140/00未満のもの イ 末梢血液/mm3中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 白血球数が3000/mm3以上5000/mm3未満のもの (イ) 顆粒球数が1000/mm3以上2000/mm3未満のもの ウ 末梢血液/mm3中の血小板数が5万/mm3以上10万/mm3未満のもの エ 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの (ア) 有核細胞が5万/mm3以上10万/mm3未満のもの (イ) 巨核球数が30/mm3以上50/mm3未満のもの (ウ) リンパ球が20%以上40%未満のもの (エ) 顆粒球(G)と赤血球(E)との比(G/E)が3未満のもの |
イ 出血傾向群(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)
障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
次の臨床症状があり、病態を適切に表す検査成績に該当するもの (1) 臨床症状 ア 高度の出血傾向 イ 血小板浮遊液、AHG(AHF)又はクリオプレチピテートをひんぱんに輸注しているもの (2) 検査成績 ア 出血時間(デューク法)が10分以上のもの イ 凝固時間(リー・ホワイト法)が30分以上のもの ウ 血小板数が3万/mm3未満のもの |
2級 |
次の臨床症状があり、病態を適切に表す検査成績に該当するもの (1) 臨床症状 ア 中度の出血傾向のあるもの イ 血小板浮遊液、AHG(AHF)又はクリオプレチピテートを時々輸注しているもの (2) 検査成績 ア 出血時間(デューク法)が5分以上10分未満のもの イ 凝固時間(リー・ホワイト法)が20分以上30分未満のもの ウ 血小板数が3万/mm3以上5万/mm3未満のもの |
3級 |
次の臨床症状があり、病態を適切に表す検査成績に該当するもの (1) 臨床症状 ア 軽度の出血傾向のあるもの イ 血小板浮遊液、AHG(AHF)又はクリオプレチピテートを必要に応じ輸注するもの (2) 検査成績 ア 出血時間(デューク法)が3分以上5分未満のもの イ 凝固時間(リー・ホワイト法)が10分以上20分未満のもの ウ 血小板数が5万/mm3以上10万/mm3未満のもの |
ウ 造血器腫瘍群(慢性白血病等)
障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
次の臨床症状があり、病態を適切に表す検査成績に該当するもの (1) 臨床症状 ア 急性転化の症状を示すもの イ 発熱、関節痛、るい痩、出血傾向、肝脾腫の増大等のあるもの ウ 全血輸血又は血小板浮遊液の輸注をひんぱんに行つているもの (2) 検査成績 ア 病的細胞の出現しているもの イ 赤血球数200万/mm3未満のもの ウ 血小板数10万/mm3未満のもの エ C反応性タンパク(CRP)の陽性のもの オ 乳酸脱水酵素(LDH)の上昇を示すもの |
2級 |
次の臨床症状があり、病態を適切に表す検査成績に該当するもの (1) 臨床症状 ア 容易に治療に反応せず、憎悪をきたしやすいもの イ 微熱、るい痩、肝脾腫のあるもの ウ 全血輸血又は血小板浮遊液の輸注を時々必要とするもの (2) 検査成績 ア 白血球数が正常化し難いもの イ 赤血球数が200万/mm3以上300万/mm3未満のもの ウ 血小板数が正常化し難いもの |
3級 |
次の臨床症状があり、検査成績に該当するもの (1) 臨床症状治療に反応はするが、肝脾腫を示しやすいもの (2) 検査成績白血球が増加しているもの |
(三) 血液検査成績の判定に当たつては、血色素量判定、赤血球容積(ヘマトクリット)測定、赤血球数算定、網赤血球数算定、白血球数算定、血液像、血小板数算定、出血時間測定、全血凝固時間測定等の検査所見を参考とするが、血液検査成績は変動しやすいものであるから、疾患の経過中最も適切に病態を表していると思われる検査成績に基づいて認定する。
第一三節 代謝疾患
代謝疾患による障害の程度は、次により認定する。
一 認定基準
代謝疾患については、次のとおりである。
法別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
法別表第一 |
一級 |
身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護とを必要とする程度の障害を有するもの |
二級 |
身体の機能に、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
|
三級 |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
二 認定要領
(一) 代謝疾患は、糖質、脂質等各代謝異常による疾患を指すものであるが、本節においては、糖尿病について基準を定める。
(二) 糖尿病による障害の程度は、合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害及び糖尿病性腎症)の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過等を十分考慮し、総合的に認定するが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
ア 糖尿病性網膜症を合併したもの
糖尿病性網膜症による障害の程度は、「第一章 眼の障害」の認定要領により認定する。
なお、眼底にうつ血及び大きな静脈の変化を認めるもの又は眼底に出血斑及び滲出斑のあるものは三級と認定する。
イ その他のもの
障害の程度 |
障害の状態 |
|
1級 |
糖尿病性腎症を合併したもの |
次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 全身に浮腫があるもの イ ほとんど臥床しているもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、10ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、8.0mg/dl以上のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、80mg/dl以上のもの |
2級 |
糖尿病性腎症を合併したもの |
1 次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状軽い日常活動ができるもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、10ml/分以上20ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、5.0mg/dl以上8.0mg/dl未満のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、40mg/dl以上80mg/dl未満のもの 2 人工透析療法施行中のもので続発症のあるもの |
3級 |
糖尿病性神経障害が長期間あるもの |
|
糖尿病性腎症を合併したもの |
1 次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 高血圧又は浮腫が常時あるもの イ 病的な顕微鏡的血尿又は蛋白尿が常時あるもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、20ml/分以上50ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、3.0mg/dl以上5.0mg/dl未満のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、25mg/dl以上40mg/dl未満のもの 2 人工透析療法施行中のもの |
|
難治性糖尿病のもの |
(三) 糖尿病性神経障害とは、疼痛、上・下肢の腱反射の減弱又は消失、上・下肢の振動覚の障害、瞳孔反射の障害、知覚の障害等を指すが、診査に当たつては、これらの症状が明らかに糖尿病に起因するものであることを確認し、認定する。
(四) 難治性糖尿病とは、薬物療法、インシュリン注射、食餌療法等によつてコントロールできない糖尿病をいう。すなわち、治療によつて空腹時血糖が二五○mg/dlを超え、尿糖が陽性の場合を指す。
(五) 糖尿病(血糖)が治療、一般生活状態の規制等によりコントロールされている場合には、障害の状態とは評価しない。
(六) 糖尿病性腎症による障害の程度の認定要領は、「第一○節 腎疾患」を参照する。
第一四節 悪性新生物
悪性新生物による障害の程度は、次により認定する。
一 認定基準
悪性新生物については、次のとおりである。
法別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
法別表第一 |
一級 |
身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護とを必要とする程度の障害を有するもの |
二級 |
身体の機能に、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
|
三級 |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
二 認定要領
(一) 悪性新生物による障害を次のように区分する。
ア 悪性新生物そのものによる全身の衰弱又は機能の障害
イ 悪性新生物に対する治療の結果として起こる全身衰弱又は機能の障害
(二) 悪性新生物による障害の程度の認定は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものであるが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
ア 悪性新生物そのものによるか又は悪性新生物に対する治療の結果として起こる全身衰弱
障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
悪性新生物による消化吸収機能障害、局所臓器の機能障害又は悪液質のため健康時体重の60%未満にるい痩したもので、次の血液検査成績に該当するもの 血液検査成績 ア 赤血球数が250万/mm3未満のもの イ 血色素量が8g/dl未満のもの ウ ヘマトクリットが20%未満のもの エ 総蛋白が4g/dl未満のもの |
2級 |
悪性新生物による消化吸収機能障害、局所臓器の機能障害又は悪液質のため健康時体重の60%以上70%未満にるい痩したもので、次の血液検査成績に該当するもの 血液検査成績 ア 赤血球数が250万/mm3以上350万/mm3未満のもの イ 血色素量が8g/dl以上10g/dl未満のもの ウ ヘマトクリットが20%以上25%未満のもの エ 総蛋白が4g/dl以上5g/dl未満のもの |
3級 |
悪性新生物による消化吸収機能障害、局所臓器の機能障害又は悪液質のため健康時体重の70%以上80%未満にるい痩したもので、次の血液検査成績に該当するもの 血液検査成績 ア 赤血球数が350万/mm3以上400万/mm3未満のもの イ 血色素量が10g/dl以上12g/dl未満のもの ウ ヘマトクリットが25%以上30%未満のもの エ 総蛋白が5g/dl以上6g/dl未満のもの |
イ 悪性新生物そのものによるか又は悪性新生物に対する治療の結果として起こる機能障害による障害の程度は、本章各節の認定要領により認定する。
(三) 悪性新生物による障害の程度の認定例は、(2)のア及びイに示したとおりであるが、全身衰弱と機能障害とを区別して考えることは、悪性新生物という疾患の本質から、本来不自然なことが多く、診査に当たつては諸症状を総合し、全体像から判断して認定する。
(四) 抗癌剤、X線、コバルト照射等治療に随伴する障害、消化器系の外科手術による消化機能障害等の発症についても障害の対象として考慮し、認定する。
(五) 残存労働能力の判定に当たつては、単に就労の有無だけで判定することなく、疾患の特殊性を十分考慮して認定する。
第一五節 高血圧
高血圧による障害の程度は、次により認定する。
一 認定基準
高血圧については、次のとおりである。
法別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
法別表第一 |
一級 |
身体の機能又は精神に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の監視又は介護とを必要とする程度の障害を有するもの |
二級 |
身体の機能又は精神に、労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
|
三級 |
身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
二 認定要領
(一) 高血圧による障害の程度は、臨床症状(一般状態、頭痛、めまい、耳鳴、手足のしびれ等の自覚症状、一過性脳虚血発作の有無並びに脳、心臓及び腎臓における合併症の有無及びその程度等)、眼底所見、年齢、性別、原因(本態性又は二次性)、治療及び症状の経過等を十分考慮し、総合的に認定するが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 |
障害の状態 |
|
1級 |
高血圧により脳の障害を合併したもの |
1 極めて高度の痴呆及び人格崩壊のため、常時の監視又は介護とを必要とするもの 2 著しい中枢神経症状があつて、常時の介護を必要とするもの 3 著しく高度の性格変化があり、公安上危険なため精神病院に入院させなければ医療及び保護が困難なもの 4 てんかん性発作に対する治療を必要とし、かつ、高度の痴呆及び性格変化があり、常時の監視又は介護を必要とするもの |
高血圧により心失患を合併したもの |
次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 安静時においても、心不全の症状を有し、体動不能のもの イ 著明な浮腫があるもの ウ 著明な呼吸困難があるもの (2) 検査成績 ア 心臓が拡大しているもの(心胸廓比71%以上) イ 高度の肺野のうつ血があるもの |
|
高血圧により腎失患を合併したもの |
次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 全身に浮腫があるもの イ ほとんど臥床しているもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、10ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、8.0mg/dl以上のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、80mg/dl以上のもの |
|
乳頭浮腫を伴う高血圧性網膜症を有するもの |
||
悪性高血圧 |
||
2級 |
高血圧により脳の障害を合併したもの |
1 痴呆が高度で労務に服すことができないもの 2 中枢性運動障害、失語症又はその他いわゆる巣症状のため労務に服すことができないもの 3 高度の性格変化があり、労務に服すことができないもの 4 てんかん性発作に対する治療を必要とし、かつ、痴呆及び性格変化があり、労務に服すことができないもの |
高血圧により心失患を合併したもの |
次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 軽度の労作によつて、動悸、息切れ、倦怠感、狭心痛等があるもの イ 浮腫が存続するもの ウ 呼吸困難が存続するもの エ 尿量減少及び夜間多尿の存続するもの (2) 検査成績 ア 心臓が拡大しているもの(心胸廓比61%~70%) イ 肺野のうつ血が存続するもの |
|
高血圧により腎失患を合併したもの |
1 次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状軽い日常活動ができるもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、10ml/分以上20ml/分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、5.0mg/dl以上8.0mg/dl未満のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、40mg/dl以上80mg/dl未満のもの 2 人工透析療法施行中のもので続発症のあるもの |
|
動脈硬化の所見のほかに出血、白斑を伴う高血圧性網膜症を有するもの |
||
1年内に一過性脳虚血発作のあるもの |
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3級 |
高血圧により脳の障害を合併したもの |
1 痴呆のため労働に制限を加えることを必要とするもの 2 中枢性運動障害、失語症又はその他いわゆる巣症状のため労働に制限を加えることを必要とするもの 3 性格変化があり、労働に制限を加えることを必要とするもの |
高血圧により心失患を合併したもの |
次の臨床症状があり、検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 通常の労作によつて、動悸、息切れ、倦怠感、狭心痛等があるもの イ 尿量減少及び夜間多尿のもの ウ 浮腫が出没するもの エ 呼吸困難の出没するもの オ チアノーゼがあるもの (2) 検査成績 ア 心臓が拡大しているもの(心胸廓比56%~60%) イ 肺野のうつ血があるもの ウ 心電図に著明な冠不全が認められるもの(ST及びTの低下又は逆転が、肢誘導、左側胸部誘導又は両方にあるもの) |
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高血圧により腎失患を合併したもの |
1 次の臨床症状があり、腎機能検査成績が次のいずれかに該当するもの (1) 臨床症状 ア 高血圧又は浮腫が常時あるもの イ 病的な顕微鏡的血尿又は蛋白尿が常時あるもの (2) 検査成績 ア 内因性クレアチニン・クリアランス値が、20ml/分以上50ml分未満のもの イ 血清クレアチニン値が、3.0mg/dl以上5.0mg/dl未満のもの ウ 血液尿素窒素(BUN)測定値が、25mg/dl以上40mg/dl未満のもの 2 人工透析療法施行中のもの |
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眼底に出血、白斑は認めないが、著明な動脈硬化の所見を認めるもの |
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頭痛、めまい、耳鳴、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあつたもの |
(二) 悪性高血圧とは次の条件をほぼ満たす場合をいう。
ア 高い拡張期性高血圧(通常拡張期血圧が一二○mm/Hg以上)
イ 眼底所見で、うつ血乳頭があり、少なくとも滲出性変化を伴う高血圧性網膜症を示す。
ウ 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全にいたる。
エ 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の憎悪とともに、脳症状や心不全を多く伴う。
(三) 単に高血圧のみでは障害の状態とは評価しない。
(四) 脳血管障害による器質脳疾患、心疾患及び腎疾患の廃疾の程度は、本章各節の認定要領により認定する。
第一六節 その他の疾患
一 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症
一 認定基準
腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症については、次のとおりである。