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○厚生年金基金の設立認可について
(昭和41年9月27日)
(年発第363号)
(各都道府県知事あて厚生省年金局長通知)
標記については、別紙「厚生年金基金設立認可基準」によることとするが、その運用にあたっては、基金制度が長期にわたる制度であるとともに、政府管掌相当額の年金給付については、最終的に政府が責任をもつ仕組みであることにかんがみ、適正な年金数理に基づき財政的安定性が認められるかどうかについて、十分留意のうえ、遺憾のないよう取り扱われたい。
別紙
厚生年金基金設立認可基準
この基準は、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第一一五号。以下、この基準において「法」という。)第百四十三条第一項に規定する厚生年金基金(以下、この基準において「基金」という。)の分割に伴う設立の認可にあたっての基準を示すものである。なお、法第百十五条第二項に規定する基金の規約の変更の認可及び法第百四十二条第一項に規定する合併の認可にあたっても、原則としてこの基準によるものとする。
第一 基金の設立に関する事項
一 企業(公益法人等営利を目的としない法人を含む。以下同じ。)が単独で基金を設立しようとするときは、原則として、その企業に属するすべての事業所について同一の基金を設立すること。ただし、企業の合併の場合又は特定事業所について労働組合の同意が得られず、かつ、当該事業所の不参加によって基金の設立目的ないし運営が阻害されないと認められる場合等は、この限りでないこと。
二 二以上の企業が共同して基金を設立しようとするときは、次のいずれかによるものであること。
(1) 基金を設立しようとする企業の一つが同じ基金を設立しようとする他の企業の発行済み株式若しくは出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)のおおむね二割を直接若しくは間接に保有する関係にあること又は基金を設立しようとする企業の一つが行う事業と同じ基金を設立しようとする他の企業が行う事業との人的関係が緊密であること。(連合設立)
(2) 基金を設立しようとする企業に対し強力な指導統制力を有する組織母体又は当該企業で構成されている健康保険法(大正十一年法律第七〇号)に基づく健康保険組合があり、それらの運営状況が健全かつ良好であること。(総合設立)
三 設立に必要な人員規模は、年金数理の基準となる過去の実績に照らして、将来にわたって、基金の運営に支障をきたさない程度のものでなければならず、かつ、少なくとも加入員となるべき被保険者の数は、次に該当するものでなければならないこと。
(1) 単独設立による場合は、常時雇用される者が千人以上であること。
(2) 連合設立による場合は、常時雇用される者が千人以上であること。
(3) 総合設立による場合は、常時雇用される者が五千人以上であること。
四 基金を設立しようとする企業の事業状況、財務状況及び社会保険業務の処理状況並びに設立しようとする基金の組織等に照らして、基金の事業運営が将来にわたって、長期に、かつ、健全に継続される見通しがあると認められるものでなければならないこと。
第二 標準給与に関する事項
一 標準給与の基礎となる給与の範囲は、原則として政府管掌の標準報酬月額及び標準賞与額の例によらなければならないこと。ただし、給与体系が単一又は少数である場合には、標準報酬月額及び標準賞与額の基礎となる報酬及び賞与に一定の簡明な給与を加減した給与をもってその範囲とすることができること。
二 国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第一〇四号)第八条の規定による改正前の法附則第三十条第一項又は法附則第三十二条第一項(以下「法附則第三十二条第一項等」という。)の認可を受けた基金にあっては、前記一の規定に関わらず、標準給与の基礎となる給与の範囲を、標準賞与額の例によらないことができること。
第三 年金たる給付及び一時金たる給付に関する事項
一 老齢年金給付の支給要件については、次によるものとすること。
(1) 支給開始年齢は、遅くとも六十五歳とすること。ただし、六十五歳以前に法附則第八条の規定による老齢厚生年金(以下「特別支給の老齢厚生年金」という。)の支給を受ける者については、遅くともその開始年齢とすること。
(2) 一月を超える加入員期間を支給要件としてはならないこと。
(3) 支給要件としての資格喪失は、加入員が当該基金からの脱退によりその資格を喪失した場合とすること。
二 年金額の算定に用いられる標準給与を前記第二の一のただし書によって定めている場合には、個々人の年金額が代行部分相当額(法第百三十二条第二項に規定する額)を超えることを保証するため、一定の最低保証額(代行部分相当額に一定の額を加えた額)を規約で定めること。
三 プラスアルファ部分は、給付現価で代行部分の五割程度までは確保していなければならないこと。
四 プラスアルファ部分の支給について差異を設ける場合には、加入員期間、退職事由等客観的基準に基づく最少限度にとどめ、不当に差別的な取扱いをしてはならないこと。
五 当分の間、プラスアルファ相当分の一部につき本人の選択による一時金払を認めることとし、その支給開始時期については、脱退時又は老齢年金給付の開始時のいずれかを規約で定めること。
六 年金たる給付及び一時金たる給付は、適正な年金数理に基づいて算定されたものでなければならないこと。
七 給付設計の変更にあたっては給付水準が下がらないことを原則とするが、やむを得ず、給付水準が下がる場合にあっては、次の(1)~(5)の要件をすべて満たしていること。
(1) 次のア~オのいずれかの場合に該当していること。
ア 基金を設立している企業において労働協約又は退職金規程等が変更され、その変更に基づいて基金の給付設計を変更する場合
イ 基金を設立している企業の経営状況が、債務超過の状態が続く見込みであるなど著しく悪化している場合(連合設立及び総合設立の基金にあっては、設立事業所の大部分において経営状況が著しく悪化している場合)
ウ 設立時又は直近の給付水準の変更時から五年以上が経過しており、かつ、給付設計を変更しなければ掛金が大幅に上昇し掛金の負担が困難になると見込まれるなど、給付設計の変更がやむを得ないと認められる場合
エ 基金の合併、権利義務の承継又は法令の改正に伴って給付設計を変更することがやむを得ないと認められる場合
オ 基金の給付水準を引き下げることにより減少する掛金に相当する額を確定拠出年金法(平成十三年法律第八八号)第二条第二項に規定する企業型年金(以下「企業型年金」という。)の掛金として拠出することとする場合、又は、次の(ア)及び(イ)の要件をいずれも満たして、法第百四十四条の五第一項の規定に基づき、年金給付等積立金の一部を企業型年金の確定拠出年金法第二条第七項第一号ロに規定する資産管理機関(以下「資産管理機関」という。)に移換しようとする場合
(ア) 給付水準の引下げの対象者は法第百四十四条の五第二項に規定する移換加入員(以下「移換加入員」という。)となるべき者のみであり、移換加入員となるべき者以外の者の給付を引き下げないこと。
(イ) 基金の加入員又は加入員であった者が負担した掛金(徴収金を含む。)を原資とする部分(以下「本人負担分」という。)の移換に当該加入員又は加入員であった者が同意しない場合にあっては、当該本人負担分は移換しないこと。
(2) 変更後の給付設計が前記一~六を満たしていること。ただし、法第百三十八条第六項に規定する掛金の負担が困難なためやむを得ず給付設計の変更を行う場合にあっては、前記三を満たしていることを要しないものとすること。
(3) 当該変更について、次のア及びイに掲げる同意を得ていること。
ア 基金の設立事業所に使用される加入員の三分の一以上で組織する労働組合がある場合は、当該労働組合の同意
イ 全加入員の三分の二以上の同意(加入員の三分の二以上で組織する労働組合がある場合には、当該労働組合の同意で代替できる。)
(4) 給付設計の変更日における加入員に対して、受給権を保全するための経過措置を講じていること。この場合において、経過措置として支給するプラスアルファ部分の給付現価は、変更日において当該経過措置対象者について算定した、変更前の給付設計に基づくプラスアルファ部分の最低積立基準額(「厚生年金基金の財政運営について(平成八年六月二十七日年発第三三二一号)」に定める厚生年金基金財政運営基準(以下「財政運営基準」という。)の第三の六の(2)のアに定める額をいう。以下同じ。)に相当する額から、変更後の給付設計で経過措置を設けないこととしたときのプラスアルファ部分の最低積立基準額に相当する額を控除した額を下回らないものとすること。
ただし、前記(1)のエに該当している場合であって年金給付等積立金の一部を企業型年金の資産管理機関に移換しようとする場合、又は経過措置が講じられていないことを十分に説明した上で前記(3)の同意を得ている場合にはこの限りでないこと。
(5) 給付設計の変更日における受給者及び受給待期脱退者(以下「受給者等」という。)の変更後の年金額が変更前より下回っていないこと。
ただし、基金の存続のため受給者等の給付水準の引下げが真にやむを得ないと認められる場合であって、事業主、加入員及び受給者等の三者による協議の場を設けるなど受給者等の意向を十分に反映させる措置が講じられた上で、次のア~ウの要件をすべて満たしている場合には、この限りでないこと。
ア 全受給者等に対し、事前に、給付設計の変更に関する十分な説明と意向確認を行っていること。
イ 給付設計の変更について、全受給者等の三分の二以上の同意を得ていること。
ウ 受給者等のうち、希望する者は、当該者に係る最低積立基準額に相当する額(個々人の年金額が代行部分相当額を越えるため、代行部分相当額に一定の額を加えた年金額に相当する最低積立基準額に相当する額を除く。)を一時金として受け取ることができること。
八 法附則第七条の三第一項の規定による老齢厚生年金の支給繰上げの請求(以下「繰上請求」という。)をした者については、前記一の(1)の規定にかかわらず、当該繰上請求による老齢厚生年金の支給が開始されるときまでに、老齢年金給付の支給を開始するものであること。
九 法第四十四条の三第一項の規定による老齢厚生年金の支給繰下げの請求(以下「繰下請求」という。)をした者については、前記一の(1)の規定にかかわらず、当該繰下請求による老齢厚生年金の支給が開始されるときまでに、老齢年金給付の支給を開始するものであること。
第四 掛金に関する事項
掛金の算定方法は、財政運営基準によること。
第五 中途脱退者に関する事項
一 中途脱退者(法第百四十四条の三第一項に規定する中途脱退者(規約で定める加算年金を受けるための要件のうち、必要な加算適用加入員期間を満たす者を除く)をいう。以下同じ。)であって、老齢年金給付の支給に関する権利義務を他の基金に移転する者の範囲は、加入員期間二十年未満の範囲内で、規約で定めなければならないこと。
二 中途脱退者であって、老齢年金給付の支給に関する義務が企業年金連合会(以下「連合会」という。)に移転された者に対する老齢年金給付の支給開始年齢は、前記第三の一の(1)にかかわらず六十五歳(六十五歳前に特別支給の老齢厚生年金の支給を受ける者については、特別支給の老齢厚生年金の支給開始時)とすること。
三 前記二に規定する者が繰上請求をしたときの支給開始年齢は、前記二にかかわらず当該繰上請求による老齢厚生年金の支給開始年齢とすること。
四 繰下請求をした者については、前記二の規定にかかわらず、当該繰下請求による老齢厚生年金の支給が開始されるときまでに、老齢年金給付の支給を開始するものであること。
第六 財政に関する事項
財政に関する事項は財政運営基準に定めるところによること。
第七 解散及び清算に関する事項
残余財産は、基金が年金たる給付の支給に関する義務を負っている者(連合会又は他の基金に老齢年金給付の支給に関する義務を移転した脱退者以外の脱退者で受給中のもの及び受給待期中のもの並びに加入員)に、公平に分配するよう規約に定められていること。
第八 経過措置
一 平成十七年四月一日前に設立された基金(同日以後に当該基金が合併し、又は分割したことにより設立された基金を含む。)については、第一の二の(1)を「企業相互間に有機的連携性があること。(連合設立)」に、同三の(1)中「千人」を「五百人」に、同三の(2)中「千人以上であること。」を「八百人以上であること。ただし、主力企業において常時雇用される者が五百人以上であり、かつ、基金の安定的な運営が可能と認められる場合には、主力企業及び関連企業において常時雇用される者が八百人以上であることを要しないものとする。」に、同三の(3)中「五千人」を「三千人」に、第三の三中「五割」を「三割(平成二十六年十月一日時点において三割を下回っている基金にあっては平成二十六年十月一日時点における当該水準)」に読み替えるものとする。
二 平成十七年四月一日以降に設立する基金(平成十七年四月一日前に設立された基金が合併し、又は分割したことにより設立された場合を除く。)については、当分の間、第三の七の(2)中「やむを得ず給付設計の変更を行う場合にあっては」とあるのは「やむを得ず給付設計の変更を行う場合等特段の事情があるときには」と読み替えるものとする。
三 前記一の規定にかかわらず、解散又は代行返上の方針を議決した基金については、第一の三の(1)又は(2)中「千人」とあり、及び同三の(3)中「五千人」とあるのは「十人」と、第三の三中「五割」とあるのは「一割」と読み替えるものとする。