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○厚生年金基金制度の施行について

(昭和四一年九月二七日)

(発年第二九号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

去る第四八回通常国会において成立した厚生年金保険法の一部を改正する法律は、昭和四○年六月一日法律第一○四号をもつて公布され、このうち、厚生年金基金制度に関する部分は、政令で定める日から施行されることとなつたが、今般、厚生年金保険法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(昭和四一年政令第三二三号)により、昭和四一年一○月一日から施行され、これに伴なう厚生年金基金令(昭和四一年政令第三二四号)及び厚生年金基金規則(昭和四一年厚生省令第三四号)も昭和四一年一○月一日から施行されることとなつた。

厚生年金基金制度は、わが国における全く新しい公的年金制度として、政府管掌の厚生年金保険よりも高い給付水準の年金給付を行なうことを目的としているため、企業の事業主及び従業員にとつて将来にわたつて影響するところが少なくなく、ひいてはわが国における年金制度全体にも重大な関係があるところである。

厚生年金基金制度の施行に至るまでの経緯及び内容の基本的事項は、次のとおりであるから、企業を単位として設立される基金が長期にわたり健全に運営され、十分にその目的を達成することとなるよう、貴職におかれても、施行に万全を期せられたく、命によつて通達する。

第一 法施行に至るまでの経緯

政府は、厚生年金基金制度について、昨年五月実施を目途として当初諸般の準備を進めていたところであるが、この制度が新しい制度であるため、関係者間に十分周知徹底を図る必要がある等の理由から、国会修正により、政令で定める日から施行されることとなつた。このため、昨年八月より約一年余の間、社会保険審議会において慎重に検討審議が行なわれた結果、同審議会の答申を得て、実施に移されることとなつた次第である。

第二 厚生年金基金制度の基本的内容

一 設立

厚生年金基金(以下「基金」という。)は、健康保険組合と同様に、事業主と被保険者とをもつて組織する公法人であり、その設立に際しては、被保険者の二分の一以上の同意のほか、適用事業所に使用される被保険者の三分の一以上で組織する労働組合が存する場合には、その同意を要するものであること。

二 給付及び掛金

基金は、加入員の老齢について給付を行ない、もつて加入員の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的とし、政府が行なう厚生年金保険の老齢年金のうち報酬比例部分を代行するものである。すなわち、政府管掌の老齢年金のうち、最低保障的機能を有するとともに、所得再配分的機能をも併せ期待される定額部分については、政府が管掌し、報酬に比例した拠出と給付を行ない、在職中の生活水準に見合う給付がなされる報酬比例部分については、基金が管掌することとなるが、基金の給付は必らず政府管掌の給付水準を上廻わるものであることを要し、政府よりも高水準の年金給付が行なわれることに基金制度創設の意義があるものであること。

また、基金が支給する年金給付の額は、加入員の標準給与及び加入員であつた期間に基づいて算定されるものであるが、具体的な給付の設計については、所定の基準に従い基金がそれぞれ定めるものであること。

次に、基金の掛金は、加入員及び事業主がそれぞれ半額を負担することが原則であるが、基金が設立されないとした場合において加入員及び事業主が政府に納付すべき厚生年金の保険料相当額を上廻る部分の掛金については、自主的協議により、事業主の負担割合を増加することができるものであること。

なお、給付及び掛金については、客観的基準により算定されることを要し、特定の者につき、不当に差別的な取扱いを行なつてはならないものであること。

三 年金財政

基金制度は、長期的な制度として、特にその財政基礎が確実なものであることが肝要である。この見地から基金の設立人員規模は少なくとも千人を要するものとし、この基礎のうえで適正な年金数理に基づく財政計算を行なうものであること。また、基金の年金給付等の資産の管理運用は、信託会社又は生命保険会社の専門的運用に委ねるとともに、基金の事務の一部をこれらの機関に委託することができることとしたものであること。

四 厚生年金基金連合会

年金給付の受給権者の便宜を考慮し、かつ基金の事務の簡素化を図るため、基金が共同して設立する厚生年金基金連合会において、個別基金の中途脱退者の年金給付の支給の一元化を行なうこととし、もつて基金制度の円滑な運営を期することとしたこと。